説明

銅板と鋼板のレーザ接合方法

【課題】銅板と鋼板のレーザ接合おいて、安定した重ね接合を可能にする。
【解決手段】上板を銅板Cu、下板を鋼板SUSで構成する2枚の金属板の重ね接合において、予め銅板Cu側にレーザビームLbを受け入れる導入穴Wpを設けておく。照射するレーザビームLbは半導体レーザであり、その波長は1ミクロン以下にある。レーザビームを銅板Cu側から照射し、導入穴Wpを通して鋼板SUSに照射する。レーザビームが照射されると鋼板SUSの加熱が主体的に行われ、同時に2枚の材料が密着して重ねられているためその熱伝導にて銅板Cuが加熱される。同時に、レーザビームLbのエネルギー分布の外周裾野部分が効果的に銅板Cuの導入穴Wpの壁面、および外周面にてレーザビームを吸収し加熱、昇温する。この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーWireを供給しレーザビームLbにて溶融させるので高強度の溶融接合が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッドカーおよび電気自動車等の電気系統を効率的に製造するためのレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に従来接合技術1である電気抵抗溶接方法を示す。従来接合技術1の電気抵抗溶接方法銅板と鋼板の両側にプラス電極Pv+とマイナス電極Pv-を付けて電流を流し、その電流にて発生するジュール熱により被溶接材を加熱・溶融する方法である。銅板Cuと鋼板SUSの溶接においては、鋼板は銅板に比べ、電気伝導率が約6分の1と低い。電気抵抗率では鋼板が約6倍であるから、発熱量であるジュール熱は36倍になり銅板が僅か加熱される状態で鋼板は通電部Hzが溶融してしまいます。この様に電気抵抗溶接方法は銅板を溶融すること無く、鋼板が溶け落ちてしまい銅板と鋼板を接合する事は出来ない。この様に従来接合技術1の電気抵抗溶接方法での銅板と鋼板の接合は不可能である。
図4に従来接合技術2であるCO2レーザ、YAGレーザおよび半導体レーザによるレーザ溶接方法を示す。
銅板の表面におけるCO2レーザ、YAGレーザおよび半導体レーザの波長では反射率は95パーセントを超えている。
レーザ加工ヘッドLBphからレーザビームLBinを銅板に照射する。銅板はレーザビームに対して反射率が高く多くのレーザビームLBoutが反射する銅板に対する加熱に寄与するレーザビームは全体の5パーセント以下である。
この様に従来接合記述2のレーザ溶接法は本目的の銅板と鋼板を接合する事は困難ある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(1)機械的な固定方法での低生産性
(2)銅板表面の高反射率
(3)振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保、
(4)加速および高速充電に対応した大電流値の確保。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は、
(1)機械てきな固定方法での低生産性
銅板と鋼板の重ね接合は現状において困難な状態である。その結果、銅板と鋼板の重ね貫通穴を設けてカシメルかボルト締めを実施している。しかし、この方法は、銅板と鋼板の両面側よりの加工が必要であり、加工物の形状などに制限がある。この様な機械的方法は時間が掛かると共に、本来での電気接合を達成させる為の接合部での電気抵抗率を小さく安定にする事が困難である。本出願のレーザ溶接法はこれらを解決する方法である、銅板側の片側より加工が可能になり金属接合と成るので安定して低い電気抵抗率を確保する事ができるレーザ溶接方法を提供するものである。
【0005】
(2)銅板表面の高反射率
銅板と鋼板の重ね接合において、銅板の表面ではレーザビームの反射率は95パーセント以上と高いので殆どのレーザビームは反射して銅板の加熱・溶融に寄与する事は無い。
本出願のレーザ溶接方法は予め銅板側にレーザビームを受け入れる導入穴を設ける。この穴は、鋼板側に達しても問題ない。導入穴を介して、鋼板の加熱が行われ、その熱の伝導にて銅板が加熱される。
レーザビームが照射されている間は鋼板の加熱・溶融および熱伝播での銅板の加熱と同時に銅板でのレーザビームの吸収による銅板の導入穴の壁面を加熱する。この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーを供給しレーザビームにて溶融させるので濡れ性に優れたロウ付けが完成する。本出願のレーザ溶接法はこれらを解決する方法である、銅板側の片側より加工が可能になり金属接合と成るので安定して低い電気抵抗率を確保するレーザ溶接方法を提供するものである。
【0006】
(3)振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保、
本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数とその配置にて振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保が可能である。
本出願のレーザ溶接法は振動および引張、曲げにたいする機械的強度の高い接合方法を提供するものである。
【0007】
(4)加速および高速充電に対応した大電流値の確保。
本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数と拡大にて接合点の総合面積の拡大する事が可能であり、加速および高速充電に対応した大電流値の確保が可能である。本出願のレーザ溶接法は低い電気抵抗率を確保し、加速および高速充電に対応した大電流値に対応した接合を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
(1)高生産性を達成するレーザ溶接技術を提供する。
機械的な固定方法での従来技術の低生産性を大幅に改善するレーザ溶接技術である。銅板と鋼板の重ね接合は現状において困難な状態である。その結果、銅板と鋼板の重ね貫通穴を設けてカシメルかボルト締めを実施している。しかし、この方法は、銅板と鋼板の両面側よりの加工が必要であり、加工物の形状などに制限がある。この様な機械的方法は時間が掛かると共に、本来での電気接合を達成させる為の接合部での電気抵抗率を小さく安定にする事が困難である。
本出願のレーザ溶接法はこれらを解決する方法である、銅板側の片側より加工が可能になり金属接合と成るので安定して低い電気抵抗率を確保する事ができるレーザ溶接方法を提供するものである。
【0009】
(2)高反射率である銅板と鋼板の溶接を達成するレーザ溶接技術を提案する。
銅板と鋼板の重ね接合において、銅板の表面ではレーザビームの反射率は95パーセント以上と高いので殆どのレーザビームは反射して銅板の加熱・溶融に寄与する事は無い。本出願のレーザ溶接方法は予め上板の銅板側にレーザビームを受け入れる導入穴を設ける。この穴は、下板の鋼板側に達しても問題ない。レーザビームを銅板側から照射し、導入穴を通して鋼板に照射する。レーザビームが照射されると鋼板の加熱が主体的に行われ、同時に2枚の材料が密着して重ねられているためその熱伝導にて銅板が加熱される。レーザビームが照射されている間、熱伝播での銅板の加熱と同時に、レーザビームのエネルギー分布の外周裾野部分が効果的に銅板の導入穴の壁面、および外周面にてレーザビームを吸収し加熱、昇温する。この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーを供給しレーザビームにて溶融させるので濡れ性に優れたロウ付けを伴う高強度の溶融接合が完成する。本出願のレーザ溶接法はこれらを解決する方法である、銅板側の片側より加工が可能になり金属接合と成るので安定して低い電気抵抗率を確保するレーザ溶接方法を提供するものである。
【0010】
(3)振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保を可能とするレーザ溶接技術を提案する。
本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数とその配置にて振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保が可能である。本出願のレーザ溶接法は振動および引張、曲げにたいする機械的強度の高い接合方法を提供するものである。
【0011】
(4)加速および高速充電に対応した大電流値の確保するレーザ溶接技術を提案する。
本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数と拡大にて接合点の総合面積の拡大する事が可能であり、加速および高速充電に対応した大電流値の確保が可能である。本出願のレーザ溶接法は低い電気抵抗率を確保し、加速および高速充電に対応した大電流値に対応した接合を提供するものである。この様にして、本出願のレーザ溶接技術は、銅板と鋼板の接合を可能とするレーザ溶接技術である。すなわち、極めて容易に正確で安定的に強度の高い銅板と鋼板の重ね接合を達成し、ハイブリッドカーおよび電気自動車の動力電気系統を効率的に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本特許を構成するレーザによる銅板と鋼板の重ね接合の関係を示す説明図
【図2】本特許による実施例および接合部の断面の状況を示す説明図
【図3】従来溶接法1の抵抗加熱による銅板と鋼板の重ね接合の状況と接合部の断面の関係を示す説明図
【図4】従来溶接法2のレーザによる銅板と鋼板の重ね接合の概念と接合部の断面の関係を示す説明図
【図5】銅板にレーザビーム導入穴を作った状態の関係を示す説明図
【図6】銅板にレーザビーム導入穴を作りこの導入穴が鋼板まで達する状態の関係を示す説明図
【図7】レーザビームの導入穴への照射にて導入穴の内面部が加熱する関係を示す説明図
【図8】レーザビームを導入穴に照射し、導入穴の加熱後にレーザビーム照射と同時にロウ材のワイヤーを供給し、接合を実施する関係を示す説明図
【図9】本特許の製造方法にて銅板と鋼板を接合部材の引張強度試験を行う試験用の試料を示す説明図
【図10】本特許による銅板と鋼板を接合した部材の引張強度試験結果を示す説明図
【図11】本特許による接合部材の強度および通電能力の増加方法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、図1に本特許を構成するレーザ加工ヘッドLBphとロウ材を供給するワイヤー供給ヘッドWireによる銅板Cuと鋼板SUSの重ね接合の関係を示す。そして、3箇所の接合完了後の接合点Wpを示す。
【0014】
従来の技術の項にて、従来の接合技術にて銅板と鋼板の重ね接合は困難である事を説明した。現状において接合は困難な状態であるために、銅板と鋼板の重ね貫通穴を設けてカシメルかボルト締めを実施している。
【0015】
しかし、この機械的な固定方法は、銅板と鋼板の両面側よりの加工が必要であり、加工物の形状などに制限があると共に生産性が低い。本出願のレーザ溶接法はこれらを解決する方法である、銅板側の片側より加工が可能になり金属接合と成るので安定して低い電気抵抗率を確保する事ができるレーザ溶接方法を提供するものである。
【0016】
図2に本特許であるレーザ溶接方法による銅板と鋼板の接合後の接合部の状況を示す。
銅板と鋼板の2枚の金属板を重ね合せて接合する方法において、半導体レーザLbを用いて銅板側から銅板Cuに設けたレーザビームの導入穴Holeを介してレーザ照射すると同時にロウ付け用のワイヤーWireを供給して接合を行う。完了した接合の状況である接合点Wpを示す。
(図1から図11までを説明する。)
【0017】
銅板と鋼板の重ね接合において、銅板の表面ではレーザビームの反射率は95パーセント以上と高いので殆どのレーザビームは反射して銅板の加熱・溶融に寄与する事は無い。
【0018】
本出願の図1に示すように、予め銅板側にレーザビームを受け入れる導入穴を設ける。図5および図6に銅板Cuと鋼板SUSとレーザビームの導入穴の関係を示す。図6に示す如く、レーザビームの導入穴Holeは、鋼板側に達しても接合には問題ない。 この導入穴の加工後にレーザビームLbを導入穴に照射する。こうしてレーザビームLbは導入穴Holeを介して、鋼板SUSの加熱が行われる。その熱の伝導にて銅板Cuが加熱され、導入穴Holeの内部Hwが加熱される。レーザビームLbが導入穴Holeに照射されている間は図7に示すように、鋼板SUSの加熱・溶融および熱伝播での銅板Cuの加熱と同時に銅板でのレーザビームの吸収による銅板の導入穴の壁面を加熱する。
【0019】
ここで、照射するレーザビームは半導体レーザであり、その波長は1ミクロン以下にある。波長808nmの半導体レーザの場合、銅板表面でのレーザビームの吸収率はYAGレーザの2倍から3倍であり、導入穴内では、銅板の壁が僅かであるが、直接の銅板の加熱もある。この様にレーザビームが照射されている間は鋼板の加熱・溶融および熱伝播での銅板の加熱と同時に銅板でのレーザビームの吸収による銅板の導入穴の壁面を加熱する。
【0020】
図8に示す様に、この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーを供給しレーザビームにて溶融させるので、導入穴内壁が既に加熱状態にあるので、溶融したロウ材はこの内壁に融着が開始する。この状況がロウ付け接合法にて重要である濡れ性に優れている状態である。
【0021】
図9に示すように接合点Wpが2個形成されロウ付けによる銅板と鋼板の接合が完成した状況を示す。この接合した試料を用いて接合点Wpの強度試験を実施した。銅板と鋼板の重ね接合において、予め銅板側にレーザビームを受け入れる導入穴を設ける。この穴は、鋼板側に達しても問題ない。照射するレーザビームは半導体レーザであり、その波長は1ミクロン以下にある。波長808nmの半導体レーザの場合、銅板でのレーザビームの吸収率はYAGレーザの2倍から3倍であり、僅かであるが、直接の銅板の加熱もある。レーザビームを銅板側から照射し、導入穴を通して鋼板に照射する。レーザビームが照射されると鋼板の加熱が主体的に行われ、同時に2枚の材料が密着して重ねられているため、その熱伝導にて銅板が加熱される。レーザビームが照射されている間、熱伝播での銅板の加熱と同時に、レーザビームのエネルギー分布の外周裾野部分が効果的に銅板の導入穴の壁面、および外周面にてレーザビームを吸収し加熱、昇温する。この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーを供給しレーザビームにて溶融させるので濡れ性に優れたロウ付けを伴う高強度の溶融接合が完成する。図9銅板と鋼板の接合した試験試料を引っ張り強度試験の試料とした。素材である銅板の引張強度200N/mm2、銅板の引張強度は450N/mm2のである。図10に接合した試験片を引張した結果試験結果を示す。接合点Wpは2点であり、試験開始後の一点目の破断時の強度が642N/mm2、接合点の2点目の破断時の強度420N/mm2である。接合点の直径は1mm以下である。その面積を1mm2と大きく設定した場合でも、接合点の引張強度は450N/mm2以上であると言える。図11に接合点を増やし、振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保そして、加速および高速充電に対応した大電流値の確保を可能にした様子を示す。振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保に関しては、図11に示すように、本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数とその配置にて振動および引張、曲げにたいする機械的強度の確保が可能である。本出願のレーザ溶接法は振動および引張、曲げにたいする機械的強度の高い接合方法を提供するものである。加速および高速充電に対応した大電流値の確保に関しては、図11に示すように、本出願のレーザ溶接法にて接合した接合点の個数と拡大にて接合点の総合面積の拡大する事が可能であり、加速および高速充電に対応した大電流値の確保が可能である。本出願のレーザ溶接法は低い電気抵抗率を確保し、加速および高速充電に対応した大電流値に対応した接合を提供するものである。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の代表的な構成図である。本特許を構成するレーザ加工ヘッドLBphとロウ材を供給するワイヤー供給ヘッドWireによる銅板Cuと鋼板SUSの重ね接合の関係を示す。そして、3箇所の接合完了後の接合点Wpを示す。
【0023】
銅板と鋼板の重ね接合において、予め銅板側にレーザビームを受け入れる導入穴を設ける。この穴は、鋼板側に達しても問題ない。照射するレーザビームは半導体レーザであり、その波長は1ミクロン以下にある。
波長808nmの半導体レーザの場合、銅板でのレーザビームの吸収率はYAGレーザの2倍から3倍であり、僅かであるが、直接の銅板の加熱もある。導入穴を介して、鋼板の加熱が行われ、その熱の伝導にて銅板が加熱される。
レーザビームが照射されている間は鋼板の加熱・溶融および熱伝播での銅板の加熱と同時に銅板でのレーザビームの吸収による銅板の導入穴の壁面を加熱する。この両板の加熱状態に蝋材になるワイヤーを供給しレーザビームにて溶融させるので濡れ性に優れたロウ付けを伴う高強度の溶融接合が完成する。ワイヤーの銅成分は90%以上である。レーザ出力は1kW、照射時間は2秒である。この様にして、極めて容易に正確で安定的に強度の高い銅板と鋼板の重ね接合を達成し、ハイブリッドカーおよび電気自動車の動力電気系統を効率的に製造することが可能となった。
【符号の説明】
【0024】
Cu:銅板、 SUS:鋼板、 Hole:導入穴、 B−Hole:導入穴の底、Lb:レーザビーム、
Wire:ロウ付けワイヤー、 Bond:接合部、 Pv+:プラス電極、 Pv-:マイナス電極、 Hz:加熱域、
LBph:レーザ加工ヘッド、 LBin:入射レーザビーム、 LBout:反射レーザビーム、
Hw:導入穴の内部加熱域、 Wp:接合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅板と鋼板の2枚の金属板を重ね合せて接合する方法において、半導体レーザを用いて銅板側から銅板に設けたレーザビーム導入穴を介してレーザ照射する事を特徴とする(半導体)レーザ溶接方法。
【請求項2】
銅板と鋼板の2枚の金属板を重ね合せて接合する方法において、半導体レーザを用いて銅板側から銅板に設けたレーザビーム導入穴を介してレーザ照射すると同時にロウ付け用のワイヤーを供給して接合する事を特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項3】
銅板と鋼板の2枚の金属板を重ね合せて接合する方法において、半導体レーザを用いて銅板側から銅板に必要強度値、必要電流値を確保する為に複数のレーザビーム導入穴を設け、この導入穴を介してレーザ照射すると同時にロウ付け用のワイヤーを供給して接合する事を特徴とするレーザ溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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