説明

鋲打機用留具

【課題】 鋲打機を使用して確実に取付面へ取り付けることのできる鋲打機用留具を提供することにある。
【解決手段】 鋲打機用留具10は、固定部20と支持部40とを備える。固定部20は、取付面に締着して鋲打機用留具10を固定する部分であり、鋲打機から射出される鋲を挿通するための挿通孔21と、挿通孔21の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内する案内部30とを有する。そして、案内部30は、鋲打機の射出口外周部と当接するために挿通孔21を中心とした円周上に環状に形成された突起体31である。また、支持部40は、固定部20に連接して鋲打機用留具10の支持する支持部材を支持する部分であり、支持部材である全ネジを支持するためにバーリングタップ41を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、全ネジや配管・配線等を支持するために、鋲打機を使用して取付面へ取り付ける鋲打機用留具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記鋲打機用留具に関する先行技術文献としては、特許文献1および特許文献2に示すものが挙げられる。
【0003】
特許文献1は、図7に示すものである。詳しくは、釘打機の先端のノーズ部10を良好にガイドするとともに、ピン11の障害になることが無く、またコンクリート面にも安定的に接面することを目的として、取付部材のファス11の挿通孔3が形成された留付け具において、上記取付部材のファスの挿通孔3に、合成樹脂製のガイド部材6を取り付け、このガイド部材6の基部を上記挿通孔3に嵌め、先端側のガイド部7を、釘打機のノーズ部の先端部を外側からややきつめに嵌め込み可能な大きさに形成し、ガイド部7の内側には上記ファス11の軸部の外径よりも大きいファス打込み用のガイド孔8を形成したものが開示されている。
【0004】
特許文献2は、図8に示すものである。詳しくは、釘打機の先端のノーズ部に確実に保持され、ファスナーの打込みを良好にガイドすることができるとともに、天井コンクリート等に強く固定することを目的として、釘打機のノーズ部から打ち出されたファスナーにより被打ち込み材に固定される留付け具であって、上記ファスナーを挿通する挿通孔4に、上記ノーズ部の内側に挿入されて上記ファスナーをガイドするためのガイド部材7を設けるとともに、上記ガイド部材7には、一端が上記挿通孔4に固定されたガイド軸部8と、ガイド軸部8の他端側から放射状に形成されて可撓性を有する案内羽根9とを備え、かつ上記案内羽根9の先端を結んだ円の径を上記釘打機のノーズ部の内径よりも大きくしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151272号公報
【特許文献2】特開2008−224024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記する特許文献1及び特許文献2は、釘打機の先端のノーズ部を良好にガイドできるかもしれないが、以下のような問題を有している。
(1)釘打機の先端のノーズ部を良好にガイドするガイド部材は樹脂製であり(特許文献1請求項1、特許文献2明細書[0029]等)、このガイド部材のガイド孔・ガイド穴をピンが通過する際にガイド部材を破壊し、余分な樹脂ごみを発生させるおそれがある。
(2)また、取付部材(吊下金具)とピンとの間にガイド部材が残り(特許文献1図3及び図4、特許文献2明細書[0040]第1文等)、ピンの固定力不足につながるおそれがある。
(3)さらに、ガイド部材の製造とガイド部材の取付部材(吊下金具)への取付などその製造工程が複雑・増加するとともに、製造に係る高コストの要因にもなる。
(4)また、ガイド部材があることで、製品管理が煩雑になる。具体的には、ガイド部材は固定片から突起しているので製品をコンパクトに重ね合わせること(梱包)ができず、在庫管理や製品搬送に難がある。また、ガイド部材は本体(固定片及び取付片)と一体ではなく取り付けているので、製品の重ね合わせ(梱包)によってはその取り付けに不具合(ガイド部材の外れ等)の生じるおそれがある。
【0007】
これに対して、本願発明者は、上記特許文献1及び特許文献2とは全く異なる発想で、鋲打機を使用して確実に取付面へ取り付けることのできる鋲打機用留具を提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、鋲打機を使用して取付面へ取り付ける鋲打機用留具であって、取付面に締着して鋲打機用留具を固定するための固定部と、固定部に連接して鋲打機用留具の支持する支持部材を支持する支持部とを備え、固定部は、鋲打機から射出される鋲を挿通するための挿通孔と、挿通孔の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内する案内部とを有することを特徴とするものである。
第2の発明は、案内部が、鋲打機の射出口外周部と当接する突起体であることを特徴とする同鋲打機用留具である。
第3の発明は、案内部が、挿通孔を中心にした円周上に環状に形成された突起体であることを特徴とする同鋲打機用留具である。
第4の発明は、案内部が、挿通孔を中心にした円周上に切欠のある環状に形成された突起体であることを特徴とする同鋲打機用留具である。
第5の発明は、案内部が、挿通孔を中心にした円周上に点状に形成された突起体であることを特徴とする同鋲打機用留具である。
第6の発明は、固定部が、支持部の片側又は両側に連接していることを特徴とする同鋲打機用留具である。
第7の発明は、支持部が、支持部材である全ネジを支持するためにバーリングタップ又はナットを設けたことを特徴とする同鋲打機用留具である。
第8の発明は、支持部が、支持部材である配管又は配線を支持するために湾曲状に形成されたことを特徴とする同鋲打機用留具である。
【発明の効果】
【0009】
上記した本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明は、固定部に挿通孔の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内する案内部を有することで、鋲打機から射出される鋲が固定部の挿通孔へ挿通されて、鋲打機を使用して鋲打機用留具を確実に取付面へ取り付けることができる。
(2)また、固定部に有する案内部が鋲打機の射出口外周部と当接する突起体であることで、挿通孔の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内することを容易にする。
(3)さらに、突起体はプレス加工や鋳造加工等で容易に形成できるので、鋲打機用留具の製造工程を複雑・増加することなく、低コストで製造できる。
(4)また、案内部(突起体)は固定部と一体であるので(プレス加工・鋳造加工等によるため)、製品管理が簡易である。具体的には、鋲打機用留具をコンパクトに重ね合わせること(梱包)ができ、在庫管理や製品搬送を良好に行える。また、案内部(突起体)は固定部と一体であるので、製品の重ね合わせ(梱包)による案内部(突起部)の不具合(案内部の外れ等)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の実施形態を示す説明図(1)。
【図2】本願発明の実施形態を示す説明図(2)。
【図3】本願発明の実施形態を示す説明図(3)。
【図4】本願発明のその他の実施形態を示す説明図(1)。
【図5】本願発明のその他の実施形態を示す説明図(2)。
【図6】本願発明のその他の実施形態を示す説明図(3)。
【図7】特許文献1に開示された先行技術を示す説明図。
【図8】特許文献2に開示された先行技術を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本願発明に係る鋲打機用留具の第1実施形態を示す説明図である。図1は、同第1実施形態の全体構造を示す斜視図である。図1に示すように、鋲打機用留具10は、固定部20と支持部40とを備える。固定部20は、取付面に締着して鋲打機用留具10を固定する部分であり、鋲打機から射出される鋲を挿通するための挿通孔21と、挿通孔21の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内する案内部30とを有する。そして、図1に示す案内部30は、鋲打機の射出口外周部と当接するために挿通孔21を中心とした円周上に環状に形成された突起体31である。
【0012】
また、支持部40は、固定部20に連接して鋲打機用留具10の支持する支持部材を支持する部分である。そして、図1に示す支持部40は、支持部材である全ネジを支持するためにバーリングタップ41を設けている。
なお、図示省略するが、支持部材である全ネジを支持するために、支持部40をバーリングタップ41の代わりにナット溶接を施してもよい。同様に、図示省略するが、支持部40には穿孔又は切欠溝などを形成し、当該部分に全ネジを通して公知の締結手段(ナットによる締結等)によって締結して全ネジを支持してもよい。
【0013】
図2及び図3は、同第1実施形態の使用状態を示す斜視図である。図2に示すように、鋲打機用留具10は、鋲打機60を使用して天井等の取付面70へ取り付けて全ネジや配管・配線等の支持部材80を支持するためものである。詳しくは、まず、鋲打機用留具10を固定部20の裏面側が取付面70に接するように配置する。次に、鋲打機60の射出口61を固定部20の案内部30である突起体31に当接させる。このとき、図3に示すように、突起体31の内周部32を鋲打機60の射出口外周部62と合致する寸法にすることで、天井への取付という作業性の悪い状況下で確実に鋲打機60の射出口61を案内できる。すなわち、仮に固定部20に案内部30(突起体31)が無いものとすると、鋲打機60の射出口61を固定部20の挿通孔21へ迅速・確実に位置決めできず(センターを拾えない)、極めて作業性が悪いとともに、鋲が挿通孔21を挿通せずに留具や鋲を無駄にする。
【0014】
そして、図示省略する鋲を射出する。すると、図2に示すように、突起体31は挿通孔21の延長線上から挿通孔21へ鋲を射出できるように鋲打機60の射出口61を案内しているので、射出された鋲は挿通孔21を挿通して取付面70へ打ち込まれる。これによって、固定部20は取付面70に締着して鋲打機用留具10を固定する。また、取付面70に固定された鋲打機用留具10の支持部40には、支持部材80である全ネジを螺合させて全ネジを支持するものである。なお、ここでは鋲打機60はガス式のものを使用するが、これに限られるものではない。
【0015】
図4〜図6は、本願発明に係る鋲打機用留具のその他の実施形態を示す説明図である。
まず、図4(A)は、同第2実施形態の全体構造を示す斜視図である。第2実施形態は案内部30が、挿通孔21を中心にした円周上に切欠34のある環状に形成された突起体33であることを特徴とするものである。案内部30は、第1実施形態の突起体31のように完全な環状ではなく第2実施形態の突起体33のような切欠34を備えていても、鋲打機60の射出口61を当接させて、迅速・確実に射出口61を案内できる。なお、第1実施形態及び第2実施形態の突起体31,33は、プレス加工(図示するリブ加工及び半抜き加工の双方を含む)・鋳造加工又は溶接加工で形成してもよい。また、その他の構造については第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0016】
図4(B)は、同第3実施形態の全体構造を示す斜視図であり、第3実施形態は案内部30が、挿通孔21を中心にした円周上に点状に形成された突起体35によって構成されていることを特徴とするものである。同じく、図4(C)は、同第4実施形態の全体構造を示す斜視図であり、第4実施形態も案内部30が、挿通孔21を中心にした円周上に点状に形成された突起体37によって構成されていることを特徴とするものである。案内部30は、第1実施形態の突起体31や第2実施形態の突起体33のように線状に連続するものでなく第3実施形態の突起体35や第4実施形態の突起体37のように点状に連続するものであっても、鋲打機60の射出口61を当接させて、迅速・確実に射出口61を案内できる。
【0017】
ここで、第3実施形態の突起体35はプレス加工・鋳造加工又は溶接加工で形成されたものであるのに対して、第4実施形態の突起体37は切り起こし加工で形成されたものである。例えば、この突起体37としては、挿通孔21を中心にした円周の内側に略コ字形に切り込みを入れて切り起こし加工した突起体37a、同円周の外側に略コ字形に切り込みを入れて切り起こし加工した突起体37bを形成できる。また、固定部20の余白(糊代)がある場合にはそれを利用して高さのある突起体37c又は37d等を形成できる。この高さのある突起体37cや37dであれば、突起体37(案内部30)と鋲打機60の射出口61との当接をより確実なものできる。
なお、その他の構造については第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0018】
図5は、本願発明に係る鋲打機用留具の第5実施形態を示す説明図である。図5に示すように、鋲打機用留具10は、固定部20を支持部40の両側に連接したものである。このように固定部20を支持部40の左右両側に備えることで、取付面70への取り付けが強固なものとなる。一般に固定部20を支持部40の左右両側に備えた留具の場合、2本目の鋲打ちには時間の無駄が出やすいが、本願発明に係る鋲打機用留具10は、固定部20に案内部30(突起体)を設けていることで、2本目の鋲打ちでも迅速・確実に射出口61を案内できる(センターが拾える)。すなわち、鋲打機60の射出口61で鋲を打つ場所に収まっている確認ができる。
【0019】
図6は、本願発明に係る鋲打機用留具の第6実施形態を示す説明図である。図6に示すように、鋲打機用留具10は、支持部40を支持部材80である配管又は配線を支持するために湾曲状に形成したものである。このように支持部40を湾曲状に形成することで、取付面70に沿って配管や配線を敷設することが可能になる。なお、支持部40は、全ネジを支持する第1実施形態のようなものや配管・配線等を支持する第6実施形態のものに限定されずに、支持部材を支持できるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明に係る鋲打機用留具は、全ネジや配管・配線等を支持するために、鋲打機を使用して取付面へ取り付ける鋲打機用留具に広く利用できるものである。取付面は、天井に限らず、壁面や床面等、支持部材のために取り付ける必要がある場所であれば、どこでもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 鋲打機用留具
20 固定部
21 挿通孔
30 案内部
31 突起体(第1実施形態)
32 内周部
33 突起体(第2実施形態)
34 切欠
35 突起体(第3実施形態)
37 突起体(第4実施形態)
40 支持部
41 バーリングタップ
60 鋲打機
61 射出口
62 外周部
70 取付面
80 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋲打機を使用して取付面へ取り付ける鋲打機用留具であって、
取付面に締着して鋲打機用留具を固定するための固定部と、固定部に連接して鋲打機用留具の支持する支持部材を支持する支持部とを備え、
固定部は、鋲打機から射出される鋲を挿通するための挿通孔と、挿通孔の延長線上から挿通孔へ鋲を射出できるように鋲打機の射出口を案内する案内部とを有することを特徴とする鋲打機用留具。
【請求項2】
案内部は、鋲打機の射出口外周部と当接する突起体であることを特徴とする請求項1記載の鋲打機用留具。
【請求項3】
案内部は、挿通孔を中心にした円周上に環状に形成された突起体であることを特徴とする請求項2記載の鋲打機用留具。
【請求項4】
案内部は、挿通孔を中心にした円周上に切欠のある環状に形成された突起体であることを特徴とする請求項2記載の鋲打機用留具。
【請求項5】
案内部は、挿通孔を中心にした円周上に点状に形成された突起体であることを特徴とする請求項2記載の鋲打機用留具。
【請求項6】
固定部は、支持部の片側又は両側に連接していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鋲打機用留具。
【請求項7】
支持部は、支持部材である全ネジを支持するためにバーリングタップ又はナットを設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の鋲打機用留具。
【請求項8】
支持部は、支持部材である配管又は配線を支持するために湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の鋲打機用留具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252576(P2011−252576A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128380(P2010−128380)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(391039302)株式会社昭和コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】