説明

鋳造用金型

【課題】 バリの発生を抑制することができる鋳造用金型を提供する。
【解決手段】 ガス抜きランナを備えた鋳造用金型において、複数のガス抜きランナ11,12,13,14を合流させる場合に、合流前の各ガス抜きランナ11,12,13,14の断面積の合計よりも、合流後のガス抜きランナ15,16の断面積を小さくした。深さと幅で決まる合流後のガス抜きランナ15,16の断面積は、深さを一定に保ったまま幅を調整することにより設定される。合流後のガス抜きランナ15,16の断面積は、合流前の各ガス抜きランナ11,12,13,14の断面積の合計の0.6〜0.9倍が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガス抜きランナを備えた鋳造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイキャストにおいては、キャビティに溶湯を充填する際に、背圧が掛からないようにするため、ガス抜きランナを設けて、キャビティ内のガス(空気)をキャビティ外へ排出することが知られている。また、溶湯がガス抜きランナを通過する速度が速いと、チルベント周辺でバリが発生する虞があることから、充填時間が延びても品質に悪影響を及ぼさない範囲で溶湯の通過速度を下げるようにしている。
【0003】
特許文献1には、キャビティ内のガスをキャビティ全周から均一に外部へ排出するために、キャビティとガス抜き通路を連通するゲートの断面積が吸引源から遠のくにつれて大きくなるように形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−1546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、吸引源から遠のくにつれてガス抜き断面積が大きくなると、各ガス抜き断面積が変化してしまうため、溶湯の通過速度が各ガス抜きでバラバラになり、溶湯を同時且つ均一にキャビティに充填することができない。また、吸引源から遠のくにつれてガス抜き断面積が大きくなるように形成されていると、溶湯がガス抜きランナを通過する際に、断面積が小さくなるにつれて溶湯の通過速度が速くなり、バリが発生する虞がある。更に、溶湯の通過速度が速いまま合流すると、サージ圧によりバリが発生してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バリの発生を抑制することができる鋳造用金型を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、ガス抜きランナを備えた鋳造用金型において、複数のガス抜きランナを合流させる場合に、合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計よりも、合流後のガス抜きランナの断面積を小さくしたものである。
【0008】
深さと幅で決まる前記合流後のガス抜きランナの断面積は、深さを一定に保ったまま幅を調整することにより設定することができる。
【0009】
また、前記合流後のガス抜きランナの断面積は、前記合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計の0.6〜0.9倍であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計よりも、合流後のガス抜きランナの断面積を小さくしたので、バリが発生することなく製品の品質が向上する。バリが発生しないので、連続鋳造が可能になり稼働率が向上する。更に、バリによる金型の損傷が発生しないので、金型のメンテナンス工数も削減することができる。
【0011】
また、合流後のガス抜きランナの断面積を、深さを一定に保ったまま幅を調整して設定すれば、ガス抜きランナの表面積を増やすことによりガス抜きランナの抜熱量を増やし、ガス抜きランナを通過中の溶湯の凝固を促進させてバリの発生を防ぐことができる。
【0012】
また、合流後のガス抜きランナの断面積は、合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計の0.6〜0.9倍にすれば、合流後のガス抜きランナを通過する溶湯の速度が急激に上昇することがないので、バリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る鋳造用金型の概要断面図
【図2】可動型の概要平面図
【図3】合流前のガス抜きランナの断面図
【図4】合流後のガス抜きランナの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る鋳造用金型1は、図1に示すように、固定型2と可動型3からなり、固定型2と可動型3を合わせることでキャビティ4、オーバフロー5、ガス抜き手段6やゲート7などが形成される。また、固定型2にはスリーブ8が設けられている。鋳造用金型1は、同一形状の製品を同一品質で2個取りできるよう形成されている。
【0015】
ガス抜き手段6は、図2に示すように、一方の1つの製品(キャビティ4)について4つのガス抜きランナ11,12,13,14を設け、ガス抜きランナ11とガス抜きランナ12を合流させてガス抜きランナ15とし、ガス抜きランナ13とガス抜きランナ14を合流させてガス抜きランナ16として構成されている。更に、ガス抜きランナ15とガス抜きランナ16は、夫々チルベント17に接続されている。
【0016】
同様に、他方の製品についても4つのガス抜きランナ21,22,23,24を設け、ガス抜きランナ21とガス抜きランナ22を合流させてガス抜きランナ25とし、ガス抜きランナ23とガス抜きランナ24を合流させてガス抜きランナ26として構成されている。更に、ガス抜きランナ25とガス抜きランナ26は、夫々チルベント27に接続されている。
【0017】
ガス抜きランナ11,12,13,14,15,16は、図3及び図4に示すように、断面が幅Wと深さDからなる四角形状に形成されている。例えば、ガス抜きランナ11,12,13,14の幅Wを8mm、深さDを7.5mmに設定すると、断面積Sは夫々60mmとなる。すると、ガス抜きランナ11とガス抜きランナ12、及びランナ13とランナ14の合計断面積は、120mmとなる。また、ガス抜きランナ11とガス抜きランナ12を合流させたガス抜きランナ15の幅Wを12mm、深さDを7.5mmに設定すると、断面積Sは90mmとなる。
【0018】
従って、1つの製品(キャビティ4)からチルベント17に向かうガス抜きランナの断面積は、ガス抜きランナ11,12,13,14による240mm(60mm×4)から、ガス抜きランナ15,16による180mm(90mm×2)に変化するので、合流後の断面積は25%減少している。また、チルベント17のガス抜き断面積は、一箇所当たり幅を55mm、深さを0.69mmとして38mmに設定している。
【0019】
このように、1つの製品についてのガス抜き断面積の変化は、ガス抜きランナが4つの時:240mm(60mm×4)→合流によるガス抜きランナが2つの時:180mm(90mm×2)→チルベント17が2箇所:76mm(38mm×2)となる。他方の製品についてのガス抜きランナ21,22,23,24,25,26やチルベント27も同様に構成されている。
【0020】
合流後のガス抜きランナ15,16の断面積を合流前のガス抜きランナ11,12,13,14の断面積と同一に設定すると、合流後の溶湯の通過速度が合流前の溶湯の通過速度の2倍に急上昇してバリ発生の虞がある。また、チルベント17で断面積が急激に小さくなると溶湯速度の急上昇によりサージ圧が発生しバリ張りの虞がある。そこで、チルベント17に流入させる前に、段階的にガス抜きランナの断面積を減少させている。
【0021】
また、合流後のガス抜きランナ15,16の断面積の設定は、図4に示すように、深さDを一定(例えば、7.5mm)に保ったまま幅Wのみ広げる(例えば、12mm)ことにより行う。ガス抜きランナ15,16の表面積を増やすことによってガス抜きランナ15,16の抜熱量を増やし、ガス抜きランナ15,16を通過中の溶湯の凝固を促進させてバリの発生を防ぐことになる。
【0022】
また、キャビティ4からチルベント17に至るガス抜きランナの流動長を同じにすれば、各ガス抜きランナ11,12,13,14,15,16の断面積が統一されているため、溶湯のランナ通過速度が夫々等しくなり、溶湯の充填タイミングを同時にすることが容易にできる。
【0023】
チルベント17には、ガス抜きランナ15,16が夫々接続されているが、チルベント17内に仕切りを配設してガス抜きランナ15とガス抜きランナ16を独立させることにより、ガス抜きランナ15とガス抜きランナ16が互いに干渉しないようにしている。
【0024】
ガス抜きランナ15とガス抜きランナ16を干渉させなければ、背圧が立たず、ガス抜きランナの充填完了のタイミングも同時になり、製品の品質にばらつきが生じない。また、ガス抜きランナ11,12,13,14,15,16を通過する溶湯に背圧が掛かると背圧により出口が塞がれバリが発生するが、ガス抜きランナ15とガス抜きランナ16を干渉させなければ、バリ発生の虞もない。
【0025】
また、オーバフロー5を出たガス抜きランナ11,12,13,14,15,16は、図2に示すように、シール幅Eが50mm以上を確保できるようレイアウトされている。ここで、シール幅Eとは、ガス抜きランナ11,12,13,14,15,16からキャビティ4の端面までの幅をいう。例えば、ガス抜きランナの周囲に幅5mm程でバリが発生した場合に、次のショットでは幅5mmよりも広い範囲でバリが進展しようとする。この時、金型のシール幅Eが50mm未満であるとバリが進展し易く、シール幅Eが50mm以上であるとバリが進展し難い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、バリの発生が抑制されるので製品の品質が向上すると共に、バリ張りが抑制されるので連続鋳造が可能になるため稼働率が向上する鋳造用金型を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…鋳造用金型、2…固定型、3…可動型、4…キャビティ、5…オーバフロー、6…ガス抜き手段、7…ゲート、11,12,13,14,15,16,21,22,23,24,25,26…ガス抜きランナ、17,27…チルベント、E…シール幅、D…深さ、W…幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス抜きランナを備えた鋳造用金型において、複数のガス抜きランナを合流させる場合に、合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計よりも、合流後のガス抜きランナの断面積を小さくしたことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造用金型において、深さと幅で決まる前記合流後のガス抜きランナの断面積は、深さを一定に保ったまま幅を調整することにより設定されることを特徴とする鋳造用金型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋳造用金型において、前記合流後のガス抜きランナの断面積は、前記合流前の各ガス抜きランナの断面積の合計の0.6〜0.9倍であることを特徴とする鋳造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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