説明

鋼帯の製造設備及び溶融めっき設備

【課題】 鋼帯の焼鈍後の溶融めっき処理の有無を選択可能にし,設備の小型化,設備の低コスト化を図り,さらに製造効率を向上する。
【解決手段】 梱包ライン21が通る第2精整棟12と溶融めっきライン22との間に,搬送通路15を設ける。冷延・焼鈍ライン20の出側の鋼帯Hを中継ラインAにより搬送し,中継ラインAから搬送通路15を通じて溶融めっきライン22に搬送する第1の搬送ラインR1と,溶融めっきライン22で溶融めっきの終了した鋼帯Hを搬送通路15を通じて梱包ライン21に搬送する第2の搬送ラインR2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,鋼帯の製造設備と,鋼帯に対する溶融めっき設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鋼板の製造プロセスには,例えば最終製品の態様や工場の設備状況に応じて,鋼板の冷延工程,焼鈍工程が行われ,その後運び出しのための梱包工程が行われるものと,鋼板の冷延工程と焼鈍工程の後に,溶融めっき工程が行われ,その後に梱包工程が行われるものがある。
【0003】
前者の鋼板の製造プロセスは,例えば冷延と焼鈍を連続的に行う冷延・焼鈍ラインと,それに隣接した梱包ラインを有する製造ラインを用いて行われている。
【0004】
後者の鋼板の製造プロセスは,例えば冷延を行う冷延ラインと,焼鈍と溶融めっきを連続的に行う連続溶融めっきラインと,それに隣接した梱包ラインを有する製造ライン,或いは冷延・焼鈍ラインと,溶融めっきのみを行う溶融めっきラインと,それに隣接した梱包ラインを有する製造ラインを用いて行われている(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭56−122611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上述のように焼鈍後に溶融めっきを行うものと行わないもので,別々の製造ラインが用いられると,2系統の製造ラインが必要になり,鋼板の製造設備全体が大型化して,広大な設置スペースが必要になる。加えて製造設備のコストも増大する。さらに,いずれかの製造プロセスの受注のみがあった場合には,その期間一方の製造ラインが全く使用されず,工場全体から見て製造効率が悪く,またスペースの有効利用も図れない。
【0007】
本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,鋼板などの鋼帯の焼鈍後の溶融めっき処理の有無が選択可能で,なおかつ設備の小型化,低コスト化が図られ,さらに製造効率を向上できる設備を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明によれば,鋼帯の焼鈍を行う焼鈍ラインと,前記焼鈍ラインで焼鈍の終了した鋼帯の梱包を行う梱包ラインと,前記焼鈍ラインで焼鈍の終了した鋼帯を溶融めっきラインに搬送する第1の搬送ラインと,前記溶融めっきラインで溶融めっきの終了した鋼帯を前記梱包ラインに搬送する第2の搬送ラインを有することを特徴とする鋼帯の製造設備が提供される。
【0009】
本発明によれば,溶融めっきラインに通じる第1の搬送ラインと第2の搬送ラインを設けたので,焼鈍の終了した鋼帯を溶融めっきラインに搬送し溶融めっき処理し,その後梱包ラインに戻すことができる。このように,焼鈍後に溶融めっき処理を行う鋼帯と行わない鋼帯を共通の焼鈍ラインと梱包ラインを用いて処理することができるので,従来のように製造ラインを2系統設ける必要がなく,設備全体の小型化,低コスト化が図られる。また,焼鈍ラインと梱包ラインが常時使用されるので,製造設備の稼働率を上げて,製造効率を向上できる。
【0010】
前記鋼帯の製造設備は,前記焼鈍が終了し梱包される前の鋼帯を収容する収容部をさらに有し,前記収容部と前記溶融めっきラインとの間に,鋼帯の搬送通路が設けられ,前記第1の搬送ラインと第2の搬送ラインは,前記収容部と前記搬送通路を通るように形成されていてもよい。
【0011】
前記第1の搬送ラインは,前記焼鈍ラインの出側の鋼帯を,前記梱包ラインに通じる中継ラインに搬送し,当該中継ライン上の鋼帯を前記収容部に搬送し,前記収容部の鋼帯を前記搬送通路を通じて前記溶融めっきラインの入側に搬送するように形成され,前記第2の搬送ラインは,前記溶融めっきラインの出側の鋼帯を前記収容部に搬送し,前記収容部の鋼帯を前記梱包ライン上に戻すように形成されていてもよい。
【0012】
前記溶融めっきラインは,鋼帯の搬入装置と,溶融めっき装置と,鋼帯の搬出装置を有し,前記搬入装置と前記搬出装置は,近接して配置され,前記第1の搬送ラインは,前記搬入装置に通じ,前記第2の搬送ラインは,前記搬出装置に通じていてもよい。
【0013】
また,前記搬入装置と前記搬出装置は,前記焼鈍ライン及び前記梱包ラインと同程度の高さに配置されていてもよい。なお,ここでいう「同程度の高さ」には,例えば同じ高さの階であって,鋼帯を搬送するにあたり異なる階への昇降を伴わない程度のものが含まれる。
【0014】
前記溶融めっきラインは,前記搬入装置側の入側ルーパと,前記搬出装置側の出側ルーパを有し,前記入側ルーパと前記出側ルーパは,横型ルーパであり,上下に積層されて配置されていてもよい。
【0015】
前記入側ルーパと前記出側ルーパは,前記搬入装置と前記搬出装置の上方に積層されていてもよい。
【0016】
前記溶融めっきラインは,溶融めっきの直前に鋼帯を加熱する加熱装置を有し,前記加熱装置は,鋼帯を通電させて加熱するものであってもよい。
【0017】
前記溶融めっきライン上の前記加熱装置と溶融めっき装置は,前記搬入装置と同程度の高さに設けられていてもよい。なお,ここでいう「同程度の高さ」には,例えば同じ階のものが含まれる。
【0018】
前記溶融めっきラインは,焼鈍機能を備えていなくてもよい。
【0019】
別の観点による本発明は,鋼帯の溶融めっき設備であって,鋼帯の搬入装置と,前記搬入装置側の入側ルーパと,溶融めっき装置と,鋼帯の搬出装置と,前記搬出装置側の出側ルーパを有し,前記搬入装置と前記搬出装置が近接して配置され,前記入側ルーパと出側ルーパは,横型ルーパであり,上下に積層されて配置されていてもよい。
【0020】
前記入側ルーパと出側ルーパは,前記搬入装置と前記搬出装置の上方に積層されていてもよい。
【0021】
前記溶融めっき設備は,溶融めっきの直前に鋼帯を加熱する加熱装置を有し,前記加熱装置は,鋼帯を通電させて加熱するものであってもよい。
【0022】
前記加熱装置及び前記溶融めっき装置は,前記搬入装置と同程度の高さに設けられていてもよい。
【0023】
また,前記溶融めっき設備は,鋼帯の焼鈍機能を備えていなくてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば,鋼帯の製造設備の小型化,低コスト化と,製造効率の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本実施の形態にかかる鋼帯の製造設備1の構成を示す模式図である。
【0026】
鋼帯の製造設備1は,例えば冷延・焼鈍棟10と,第1精整棟11と,第2精整棟12と,倉庫13と,溶融めっき設備としての溶融めっき棟14を備えている。冷延・焼鈍棟10,第1精整棟11,第2精整棟12及び倉庫13は,X方向正方向(図1の右方向)に向けて順に直線状に設置されている。溶融めっき棟14は,第2精整棟12のY方向正方向(図1の下方向)側に設置されている。第2精整棟12と溶融めっき棟14は,搬送通路15によって接続されている。
【0027】
冷延・焼鈍棟10には,鋼帯Hの冷延と焼鈍を連続的に行う冷延・焼鈍ライン20が形成されている。冷延・焼鈍ライン20は,X方向負方向側(図1の左方向側)から第1精整棟11側に向けて鋼帯Hが移送されるように形成されている。冷延・焼鈍ライン20の出側は,例えば第1精整棟11内に設置されている。
【0028】
例えば第1精整棟11から第2精整棟12にかけて,コイル状の鋼帯Hを移送する中継ラインAが形成されている。中継ラインAは,例えばローラコンベアにより構成されている。中継ラインAの入側は,第1精整棟11内の冷延・焼鈍ライン20の出側に並設されている。中継ラインAは,焼鈍ライン20の出側の鋼帯HをX方向正方向側に向けて第2精整棟12内まで移送できる。
【0029】
例えば第2精整棟12から倉庫13にかけて,鋼帯Hを搬送し梱包する梱包ライン21が形成されている。梱包ライン21の入側は,第2精整棟12内に設置され,中継ラインAの出側に接続されている。梱包ライン21は,例えばローラコンベアにより形成され,コイル状の鋼帯HをX方向正方向側に向かって移送でき,倉庫13内の梱包ライン21上の梱包機(図示せず)により鋼帯Hを梱包できる。
【0030】
溶融めっき棟14には,後述する溶融めっきライン22が形成されている。溶融めっきライン22は,例えば長手方向がX方向に向くように形成されている。つまり溶融めっきライン22は,冷延・焼鈍ライン20と梱包ライン21に平行に形成されている。
【0031】
例えば第1精整棟11には,冷延・焼鈍ライン20の出側と中継ラインAの入側の上方をY方向に移動可能な搬送装置であるクレーン30が設けられている。このクレーン30により,冷延・焼鈍ライン20において冷延・焼鈍が終了した鋼帯Hのコイルを中継ラインAの入側に搬送できる。
【0032】
第2精整棟12には,コイル状の多数の鋼帯Hを一次的に収容できる収容部31が設けられている。収容部31は,例えば梱包ライン21及び中継ラインAと,搬送通路15との間に配置されている。第2精整棟12内には,例えば梱包ライン21,中継ラインA及び収容部31の上方をY方向に移動可能な搬送装置であるクレーン32が設けられている。このクレーン32によって,中継ラインA上或いは梱包ライン21上の鋼帯Hを収容部31に搬送し収容できる。また,クレーン32によって,収容部31の鋼帯Hを梱包ライン21上に搬送できる。なお,梱包ライン21と中継ラインAとの連結部には,中継ラインAとクレーン32との間と,梱包ライン21とクレーン32との間の鋼帯Hの移送を行う移載機が設けられていてもよい。
【0033】
例えば搬送通路15には,収容部31の上方から搬送通路15内にわたりY方向に移動可能な搬送装置であるクレーン33が設けられている。また,搬送通路15には,コイル状の鋼帯Hを搬送する搬送装置である複数の台車34が設けられている。第2精整棟12の収容部31の鋼帯Hをクレーン33によって搬送通路15内に搬送し,その搬送通路15の鋼帯Hを台車34によって溶融めっき棟14の溶融めっきライン22の入側まで搬送できる。また,溶融めっきライン22の出側の鋼帯Hを台車34により搬送通路15内に搬送し,当該鋼帯Hをクレーン33により収容部31まで搬送できる。
【0034】
本実施の形態においては,例えばクレーン30,中継ラインA,クレーン32,33及び台車34によって,冷延・焼鈍ライン20の出側から溶融めっきライン22に鋼帯Hを搬送する第1の搬送ラインR1が形成されている。また,台車34及びクレーン32,33によって,溶融めっきライン22から梱包ライン21に鋼帯Hを搬送する第2の搬送ラインR2が形成されている。
【0035】
第2精整棟12から第1精整棟11にわたり,例えば鋼帯Hの幅方向の長さを調整する精整ライン36が形成されている。この精整ライン36は,例えば入側がクレーン32の移動範囲内に設けられており,出側がクレーン30の移動範囲内に設けられている。したがって,例えば溶融めっき処理が終了した鋼帯Hをクレーン32によって精整ライン36に搬送し,精整ライン36で調整された鋼帯Hをクレーン30によって中継ラインAの入側に戻すことができる。なお,精整ライン36は,鋼帯Hの欠陥部除去やトリムを行う機能をさらに有するものであってもよい。
【0036】
次に,溶融めっきライン22について詳しく説明する。図2は,溶融めっきライン22の構成の概略を示す模式図である。
【0037】
溶融めっきライン22の搬入装置としての巻戻し機40と,搬出装置としての巻取り機41とが同じ高さで近接して設けられている。巻戻し機40と巻取り機41は,例えば上述の冷延・焼鈍ライン20,梱包ライン21と同じ高さの階に設けられている。
【0038】
巻戻し機40から巻取り機41までのライン上には,シャーや溶接機などの入側設備42と,入側ルーパ43と,圧延液の除去などの鋼帯Hの洗浄などを行う前処理設備44と,ニッケルをめっきするプレめっき設備45と,溶融めっき直前に鋼帯Hを加熱する加熱装置46と,溶融めっき装置47と,鋼帯Hの合金化処理を行う合金化炉設備48と,鋼帯Hの厚みを調節するスキンパスミル49と,鋼帯Hの表面処理などを行う後処理設備50と,出側ルーパ51と,トリマー,オイラー及びシャーなどの出側設備52が上流側から下流側に向けて順に設けられている。この溶融めっきライン22は,鉛直面内の略環状に形成されている。
【0039】
例えば入側ルーパ43は,水平方向に伸縮する横型ルーパであり,巻戻し機40と巻取り機41の上方に配置されている。出側ルーパ51も,横型ルーパであり,入側ルーパ43の上方に配置されている。このように入側ルーパ43と出側ルーパ51は,巻戻し機40と巻取り機41の上方に積層されて配置されている。なお,本実施の形態においては,入側ルーパ43と出側ルーパ51の間を階の境界とし,入側ルーパ43側を下階,出側ルーパ51側を上階とする。
【0040】
入側ルーパ43の出側にある前処理設備44,プレめっき設備45,加熱装置46及び溶融めっき装置47は,巻戻し機40と同じ下階の同程度の高さに設けられている。また,これらの巻戻し機40,処理設備44,プレめっき設備45,加熱装置46及び溶融めっき装置47は,平面から見て直線状に配置されている。溶融めっき装置47は,入側ルーパ43から水平方向の距離で最も遠くなる位置に配置され,巻戻し機40から溶融めっき装置47までが略環状の溶融めっきライン22の往路になっている。
【0041】
合金化炉設備48は,溶融めっき装置47の上方に配置されている。合金化炉設備48の出側にあるスキンパスミル49と後処理設備50は,例えば溶融めっき装置47までの往路の上方に並設され,同程度の高さの出側ルーパ51に通じている。出側ルーパ51の出側は,後処理設備50の反対側に設けられ,下方の出側設備52に通じている。出側設備52は,巻取り機41と同じ上階の同程度の高さに設置されている。
【0042】
次に,溶融めっきの直前の加熱を行う加熱装置46の構成について説明する。図3は,加熱装置46と溶融めっき装置47の構成の概略を示す説明図である。
【0043】
加熱装置46は,変圧器効果型通電加熱法の加熱方式を採用したものである。加熱装置46は,例えば鋼帯Hに沿って上流側から順に導電ロール70,シールロール71及びターンロール72を有している。ターンロール72の出側は,溶融めっき装置47のめっき槽73内のターンロール74に通じている。
【0044】
シールロール71からめっき槽73までの鋼帯Hの周辺は,例えば包囲体75によって包囲されている。これにより,加熱からめっきまでの間,鋼帯Hを所定の不活性雰囲気内に維持できる。
【0045】
シールロール71とターンロール72との間には,例えば鋼帯Hと包囲体75の周りを囲むリング状の鉄心76が設けられている。鉄心76には,一次コイル77が巻きつけられており,一次コイル77には,交流電源78が接続されている。
【0046】
包囲体75の先端部は,めっき槽73内のめっき金属に接触している。この包囲体75の先端部には,導電ロール70との間を電気的に接続するブスバー79が接続されている。これにより,導電ロール70,鋼帯H,めっき槽73内のめっき金属,包囲体75の先端部及びブスパー79によって鉄心76を巻く二次コイル80が形成される。交流電源78により,一次コイル77に電圧を印加し電流を流すことによって,二次コイル80側に電力を誘起し,鋼帯Hに高電流を流すことができる。この電流により,鋼帯Hを発熱させ,鋼帯Hを加熱することができる。
【0047】
次に,以上のように構成された鋼帯Hの製造設備1における鋼帯Hの製造プロセスについて説明する。
【0048】
溶融めっき処理が不要な鋼帯Hについては,先ず,例えば図1に示すように鋼帯Hが冷延・焼鈍ライン20において,冷延され焼鈍される。その後,冷延・焼鈍ライン20の出側のコイル状の鋼帯Hがクレーン30により中継ラインAの入側に搬送される。中継ラインAに載せられた鋼帯Hは,第1精整棟11から第2精整棟12に移送される。その後鋼板Hは,第2精整棟12において梱包ライン21に移され,その後倉庫13に移送され梱包される。こうして鋼帯Hは,工場から搬出可能な状態になる。
【0049】
なお,必要に応じて,焼鈍の終了した鋼帯Hを,クレーン32によって中継ラインAから精整ライン36に搬送し,精整ライン36において鋼帯Hの幅などを調整してもよい。この場合,調整された鋼帯Hは,第1精整棟11においてクレーン30により中継ラインAに戻され,その後梱包ライン21によって倉庫13側に移送されて梱包される。
【0050】
溶融めっき処理が必要な鋼帯Hについては,先ず,冷延と焼鈍が終了したコイル状の鋼帯Hがクレーン30により中継ラインAに載せられる。続いて,鋼帯Hは,中継ラインAにより第2精整棟12まで搬送される。第2の精整棟12まで搬送された鋼帯Hは,クレーン32により例えば中継ラインAの出側から収容部31に搬送され収容される。その後,鋼帯Hは,クレーン33によって搬送通路15内に搬送され,台車34によって溶融めっき棟14内に搬送される。こうして,鋼帯Hは,図2に示す溶融めっきライン22の巻戻し機40に設置される。
【0051】
巻戻し機40に設置された鋼帯Hは,入側設備42を通過し,上方の入側ルーパ43に送られ,その後,前処理設備44,プレめっき設備45に送られる。その後,鋼帯Hは,加熱装置46において通電により急速低温加熱され,連続して溶融めっき装置47においてめっき金属がめっきされる。めっきされた鋼帯Hは,合金化炉設備48,スキンパスミル49,後処理設備50を通過し,出側ルーパ51に送られる。その後,鋼帯Hは,出側設備52を通過し,巻取り機41に巻き取られる。
【0052】
巻取り機41で巻き取られたコイル状の鋼帯Hは,例えば図1に示すように台車34により搬送通路15内に搬送され,クレーン33により第2精整棟12の収容部31に収容される。その後,鋼帯Hは,クレーン32により梱包ライン21上に搬送される。梱包ライン21に戻された鋼帯Hは,梱包ライン21によって倉庫13側に搬送され,梱包される。
【0053】
なお,必要に応じて,収容部31の鋼帯Hをクレーン32によって精整ライン36に搬送し,精整ライン36において鋼帯Hの幅などを調整してもよい。この場合,調整された鋼帯Hは,第1精整棟11においてクレーン30により中継ラインAに戻され,その後梱包ライン21によって倉庫13側に移送されて梱包される。
【0054】
以上の実施の形態によれば,冷延・焼鈍ライン20の出側から溶融めっきライン22に鋼帯Hを搬送する第1の搬送ラインR1と,溶融めっきの終了した鋼帯Hを梱包ライン21の入側に搬送する第2の搬送ラインR2が形成されたので,冷延・焼鈍後に溶融めっき処理を行う鋼帯Hと行わない鋼帯Hを同じ冷延・焼鈍ライン22と梱包ライン21を用いて製造することができる。この結果,別個の製造ラインが設けられていた従来に比べて,鋼帯の製造設備1の小型化と低コスト化が図られる。また,溶融めっき処理の有無にかかわらず,冷延・焼鈍ライン20と梱包ライン21が常に使用されるので,製造ラインの稼働率が上がり,製造効率が向上する。
【0055】
第1の搬送ラインR1と第2の搬送ラインR2が同じ搬送通路15を通るように形成されたので,各搬送ライン毎に搬送通路15を設ける必要がなく,その分設備の小型化が図られる。また,溶融めっきライン22の巻戻し機40と巻取り機41が近接配置されているので,巻戻し機40と巻取り機41に通じる搬送通路15の幅を狭くすることができる。
【0056】
中継ラインA上から溶融めっきライン22に鋼帯Hが搬送されるので,既存のラインを用いて溶融めっきライン22への鋼帯Hの搬送を実現でき,その分設備コストを低減できる。
【0057】
溶融めっきライン22への搬送途中に収容部32が配置されたので,コイル状の鋼帯Hを一旦蓄積して,溶融めっきライン22への供給タイミングを調整することができる。この収容部32において,冷延・焼鈍ライン20と溶融めっきライン22の所要時間の差を吸収できる。
【0058】
巻戻し機40と巻取り機41が,冷延・焼鈍ライン20及び梱包ライン21と同じ高さの階に設置されたので,冷延・焼鈍ライン20から溶融めっきライン22までの鋼帯Hの搬送と,溶融めっきライン22から梱包ライン21までの鋼帯Hの搬送を,高低差が少なくスムーズに行うことができる。
【0059】
溶融めっきライン22において,水平方向に場所をとる2つのルーパ43,51が積層されているので,溶融めっきライン22を小型化し,その設置スペースを低減できる。また入側ルーパ43と出側ルーパ51が,巻戻し機40と巻取り機41の直上に積層されたので,例えば巻戻し機40と巻取り機41に常駐している管理者によって,入側ルーパ43と出側ルーパ51の不具合も発見できる。特に,入側ルーパ43と出側ルーパ51は,ロール数が多く不具合が生じやすいので,その効果は大きい。
【0060】
溶融めっきライン22の加熱装置46に,鋼帯Hに通電させて加熱させるものを用いたので,炉を用いるものに比べて加熱装置46の長さが非常に短くなる。これにより,溶融めっきライン22が短縮し,小型化されて,溶融めっきライン22の設置スペースを低減できる。
【0061】
また,環状の溶融めっきライン22のうちの上流側から溶融めっき装置47までが巻戻し機40と同じ階に設けられているので,溶融めっきライン22の省スペース化のための最適な装置配置を実現できる。なお,溶融めっきライン22は,焼鈍機能をもたないものなので,その分ラインの短縮が図られる。
【0062】
以上の実施の形態では,精整ライン36が第2精整棟12から第1精整棟11に流れるように形成されていたが,図4に示すように第1精整棟11と第2精整棟12との間で鋼帯Hの搬送を行う棟間台車100を配置し,精整ライン36を第1精整棟11側から第2精整棟12側に流れるように形成してもよい。かかる場合,溶融めっき処理が終了した鋼帯Hは,例えば収容部31から棟間台車100に載せられて第1精整棟11まで搬送され,精整ライン36により鋼帯Hの幅の調整が行われる。その後精整ライン36の出側の鋼帯Hは,クレーン32によって梱包ライン21の入側に戻される。また,溶融めっき処理が不要の鋼帯Hについては,焼鈍後,クレーン30によって精整ライン36に搬送され,精整ライン36において鋼帯Hの幅などの調整が行われる。そして,鋼帯Hは,クレーン32により梱包ライン21に戻される。
【0063】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば,以上の実施の形態で記載した第1の搬送ラインR1,第2の搬送ラインR2は,クレーン30,32,33や台車34を用いて実現されていたが,クレーンの数,台車の数や配置は,任意に選択できる。また,クレーンや台車以外の搬送装置を用いてもよい。上記実施の形態では,冷延と焼鈍を連続して行う冷延・焼鈍ライン20であったが,冷延と焼鈍を別個のラインで行うものであってもよい。また焼鈍前の圧延は,冷延に限られず熱延であってもよい。溶融めっきライン22の溶融めっき前の加熱装置46は,変圧器効果型通電加熱法を用いたものであったが,直接通電加熱法や誘導加熱法などの他の通電加熱法を用いたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は,鋼帯の製造設備の小型化,低コスト化を図り,さらに製造効率を向上する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】鋼帯の製造設備の構成の概略を示す模式図である。
【図2】溶融めっきラインの構成の概略を示す模式図である。
【図3】加熱装置と溶融めっき装置の構成の概略を示す説明図である。
【図4】棟間台車を有する鋼帯の製造設備の構成の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1 鋼帯の製造設備
12 第2精整棟
15 搬送通路
20 冷延・焼鈍ライン
21 梱包ライン
22 溶融めっきライン
H 鋼帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯の焼鈍を行う焼鈍ラインと,
前記焼鈍ラインで焼鈍の終了した鋼帯の梱包を行う梱包ラインと,
前記焼鈍ラインで焼鈍の終了した鋼帯を溶融めっきラインに搬送する第1の搬送ラインと,
前記溶融めっきラインで溶融めっきの終了した鋼帯を前記梱包ラインに搬送する第2の搬送ラインを有することを特徴とする,鋼帯の製造設備。
【請求項2】
前記焼鈍が終了し梱包される前の鋼帯を収容する収容部をさらに有し,
前記収容部と前記溶融めっきラインとの間に,鋼帯の搬送通路が設けられ,
前記第1の搬送ラインと第2の搬送ラインは,前記収容部と前記搬送通路を通るように形成されていることを特徴とする,請求項1に記載の鋼帯の製造設備。
【請求項3】
前記第1の搬送ラインは,前記焼鈍ラインの出側の鋼帯を,前記梱包ラインに通じる中継ラインに搬送し,当該中継ライン上の鋼帯を前記収容部に搬送し,前記収容部の鋼帯を前記搬送通路を通じて前記溶融めっきラインの入側に搬送するように形成され,
前記第2の搬送ラインは,前記溶融めっきラインの出側の鋼帯を前記収容部に搬送し,前記収容部の鋼帯を前記梱包ライン上に搬送するように形成されていることを特徴とする,請求項2に記載の鋼帯の製造設備。
【請求項4】
前記溶融めっきラインは,鋼帯の搬入装置と,溶融めっき装置と,鋼帯の搬出装置を有し,
前記搬入装置と前記搬出装置は,近接して配置され,
前記第1の搬送ラインは,前記搬入装置に通じ,
前記第2の搬送ラインは,前記搬出装置に通じていることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の鋼帯の製造設備。
【請求項5】
前記搬入装置と前記搬出装置は,前記焼鈍ライン及び前記梱包ラインと同程度の高さに配置されていることを特徴とする,請求項4に記載の鋼帯の製造設備。
【請求項6】
前記溶融めっきラインは,前記搬入装置側の入側ルーパと,前記搬出装置側の出側ルーパを有し,
前記入側ルーパと前記出側ルーパは,横型ルーパであり,上下に積層されて配置されていることを特徴とする,請求項3〜5のいずれかに記載の鋼帯の製造設備。
【請求項7】
前記入側ルーパと前記出側ルーパは,前記搬入装置と前記搬出装置の上方に積層されていることを特徴とする,請求項6に記載の鋼帯の製造設備。
【請求項8】
前記溶融めっきラインは,溶融めっきの直前に鋼帯を加熱する加熱装置を有し,
前記加熱装置は,鋼帯を通電させて加熱するものであることを特徴とする,請求項3〜7のいずれかに記載の鋼帯の製造設備。
【請求項9】
前記溶融めっきライン上の前記加熱装置と溶融めっき装置は,前記搬入装置と同程度の高さに設けられていることを特徴とする,請求項8に記載の鋼帯の製造設備。
【請求項10】
前記溶融めっきラインは,焼鈍機能を備えていないことを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の鋼帯の製造設備。
【請求項11】
鋼帯の溶融めっき設備であって,
鋼帯の搬入装置と,前記搬入装置側の入側ルーパと,溶融めっき装置と,鋼帯の搬出装置と,前記搬出装置側の出側ルーパを有し,
前記搬入装置と前記搬出装置が近接して配置され,
前記入側ルーパと出側ルーパは,横型ルーパであり,上下に積層されて配置されていることを特徴とする,溶融めっき設備。
【請求項12】
前記入側ルーパと出側ルーパは,前記搬入装置と前記搬出装置の上方に積層されていることを特徴とする,請求項11に記載の溶融めっき設備。
【請求項13】
溶融めっきの直前に鋼帯を加熱する加熱装置を有し,
前記加熱装置は,鋼帯を通電させて加熱するものであることを特徴とする,請求項11又は12のいずれかに記載の溶融めっき設備。
【請求項14】
前記加熱装置及び前記溶融めっき装置は,前記搬入装置と同程度の高さに設けられていることを特徴とする,請求項13に記載の溶融めっき設備。
【請求項15】
鋼帯の焼鈍機能を備えていないことを特徴とする,請求項11〜14のいずれかに記載の溶融めっき設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−307294(P2006−307294A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132320(P2005−132320)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】