説明

鋼材表面欠陥の発生条件の特定方法

【課題】 連続鋳造から圧延工程の間で発生する鋼材の表面欠陥である表面疵の発生条件を温度と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)との関係に着目して特定する方法を提供することである。
【解決手段】 鋼材の使用に当たり有害な表面欠陥である表面疵について、疵近傍に生成するサブスケール層(図1)を構成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)から鋼材の表面欠陥である表面疵が発生した温度域を推定する。この場合、上記の粒状酸化物が第1相酸化物および第2相酸化物の2種類の相からなるもので、第1相酸化物の析出によって酸化物粒子を生成し、この第1相酸化物の酸化物粒子を析出核として第2相酸化物を析出することで粗大化が進行する構造用鋼の表面疵近傍に生成する粒状酸化物であり、この粒状酸化物から、対象とする表面疵の発生した温度域を推定する鋼材表面疵の発生条件の特定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の表面に生成する欠陥である表面疵の発生条件の特定に関し、特に連続鋳造から圧延工程の間で鋼材表面に発生した表面欠陥部である表面疵を防止するために、表面疵の近傍に現出するサブスケール層を構成する粒状酸化物の平均粒子半径と温度との関係から鋼材の表面欠陥部の発生条件を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造から圧延工程の間で発生する鋼材に発生する表面欠陥部である表面疵を防止するためには、その表面疵が発生した工程を特定する必要がある。この方法として鋼材のサブスケール層の厚みで特定する方法がある(例えば、非特許文献1あるいは非特許文献2参照。)。しかし、これらはいずれもサブスケール層の厚みで特定する方法であるため、圧延等を行った加工材では、サブスケール層の厚みが変化しているために定量的評価による特定が難しい問題がある。
【0003】
さらに、出願人は、鋼材の表面欠陥部に生成した粒状酸化物から、鋼材が経た加熱条件である加熱時間および加熱時間を正確に判定する方法を提案している(例えば、特許文献1参照。)。ところで、この方法では、加熱温度の上昇および保持時間の増加とともに平均粒子半径は増加するため、ある平均粒子径を持った表面疵がどの温度およびどの保持時間に当てはまるのかについての判断が難しい問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「鉄と鋼」鉄鋼協会、81巻(1995)、52、草野外著
【非特許文献2】「鉄と鋼」鉄鋼協会、81巻(1995)、35、草野外著
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−357575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、連続鋳造から圧延工程の間で発生する鋼材の表面欠陥である表面疵の発生条件を特定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋼材の表面疵の近傍で、内部酸化が起こることにより、サブスケール層が生成する。発明者らは、このサブスケール層を構成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)について着目した。この平均粒子半径(rave.)は酸化初期の一定期間は増加し、その後は酸化温度に応じた値に収束する。これより、鋼材に発生した表面疵の粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)から、その疵が曝された温度域を推定し、この温度域と鋼材の製造熱履歴とを比較することで疵の発生工程が特定できることを見出した。
【0008】
そこで、本願の発明が解決しようとする手段は、請求項1の発明では、鋼材として使用するに当たり有害な表面欠陥である表面疵について、表面疵近傍に生成するサブスケール層を構成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)から鋼材の表面欠陥である表面疵が発生した温度域を推定することを特徴とする鋼材表面疵の発生条件の特定方法である。
【0009】
請求項2の発明では、表面疵近傍に生成するサブスケール層を構成する粒状酸化物は第1相酸化物および第2相酸化物の2種類の相からなり、第1相酸化物の析出によって酸化物粒子を生成し、この第1相酸化物の酸化物粒子を析出核として第2相酸化物を析出することで粗大化が進行する構造用鋼の表面疵近傍に生成する粒状酸化物の平均粒子半径から、対象表面疵の発生した温度域を推定することを特徴とする請求項1の手段の鋼材表面疵の発生条件の特定方法である。
【0010】
請求項3の発明では、対象表面疵の発生した温度域を推定する方法は、予め、加熱温度と表面疵近傍に生成するサブスケール層を構成する粒状酸化物の平均粒子半径との関係を求めておき、この求めた関係に、発生温度域を知りたい対象疵の粒状酸化物の平均粒子半径を照合して対象疵の発生した温度域を推定することを特徴とする請求項2の手段の鋼材表面疵の発生条件の特定方法である。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1乃至3の鋼材表面疵の発生条件の特定方法により鋼材表面疵の発生温度域を推定し、その推定した温度域とその表面疵の発生した鋼材の実工程における製造熱履歴とを比較することにより、表面疵の発生した工程を特定することを特徴とする製造工程内での鋼材表面疵の発生工程の特定方法である。
【発明の効果】
【0012】
鋼材表面疵に対し、発生温度域を定量的に推定して特定することが可能となり、さらにその推定した温度域とその表面疵の発生していた鋼材の実工程における製造熱履歴とを比較することで、表面疵の発生した工程を特定できるようになったことで、表面疵の発生防止対策を的確に製造工程において実施でき、効果的に鋼材の表面疵が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】SEMで観察した鋼材表面疵近傍に生成していたサブスケール層の一例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図2】サブスケール層生成時における酸素濃度と溶質元素濃度分布の模式図を示す。
【図3】JIS SCr420鋼でのサブスケール層近傍の溶質元素濃度分布のEPMAによる実測値を示す。
【図4】加熱時間と平均粒子半径(rave.)との関係を示す。
【図5】JIS SCr420鋼の温度に応じた値に収束後の平均粒子半径(rave.)と加熱温度との関係を示す。
【図6】JIS S50C鋼の温度に応じた値に収束後の平均粒子半径(rave.)と加熱温度との関係を示す。
【図7】JIS SCM435鋼の温度に応じた値に収束後の平均粒子半径(rave.)と加熱温度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願の発明は、出願人の別途出願の発明(特2008−041)と技術的背景は似ているものである。この別途出願の発明では、酸化温度に応じて粒状酸化物の組成が変化する粒子半径が異なることに着目しているのに対し、本願の発明では、温度と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)との関係に着目しているものである。
【0015】
本発明の実施の形態について、以下に図面を参照して説明する。連続鋳造から分塊圧延で鋼片を製造する工程の間に、鋼片の表面疵の近傍で、内部酸化が起こることにより、サブスケール層が生成する。そこで、このサブスケール層を生成した分塊圧延後の鋼材から磁探で検出した表面疵部を採取して表面疵のサンプルとし、このサンプルを切断してその表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。例えば、この鋼材がJISに規定するSCr420からなる場合、前記のように試料調整した鋼材の表面疵近傍に生成したサブスケール層の一例をSEM(走査電子顕微鏡)で観察した状態を図1に示す。図1において、内部酸化フロントとは、サブスケール層の厚み方向先端部において、SEMで観察可能な半径0.05μm以上の大きさの粒状酸化物が析出を開始した位置とした。
【0016】
さらに、サブスケール層の生成時における、酸素濃度および溶質元素濃度の分布と構造用鋼とスケールの界面からの距離の関係をグラフで模式的に図2で示す。図2における析出する酸化物相について、第1相を構成する溶質元素をA、第1相の酸化物をAnOとする。さらに第2相を構成する溶質元素をB、第2相の酸化物をBnOとする。ここで、NO(S)は溶解酸素濃度、NOは酸素濃度、NA(O)およびNB(O)は溶質Aおよび溶質Bの初期濃度(バルク濃度)、NAおよびNBは溶質Aおよび溶質Bの濃度、ξはサブスケール層の厚み、ξBは酸化物BnOの析出開始位置である。ξは内部酸化フロントの位置でもあり、酸化物AnOの析出開始位置である。すなわち、図2において、ξの右側は非酸化層であり、左側は内部酸化層であるサブスケール層である。第1相の酸化物AnOは、ξで析出し、ξBで酸化物BnOが析出を開始するまで酸化物AnO組成のまま粗大化する。加熱温度の上昇により、ξとξBとの距離が大きくなり、酸化物AnO相の単独組成からなる粒状酸化物が大きくなる。
【0017】
すなわち、第1相の酸化物AnOは、内部酸化フロントξの位置で析出し、第2相の酸化物BnOは、ξBの位置で析出を開始する。ただし、酸化物BnOは単独で粒状酸化物を生成するのではなく、既に内部酸化フロントで析出している第1相の酸化物AnOを核としてその酸化物粒子の周囲に析出する。これらは、請求項2に記載したように、粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)が温度に応じた大きさに収束するための必要条件である。つまり、粒状酸化物の酸化物相が単一であったり、第1相と第2相の酸化物とが別々に酸化物粒子を生成したりする場合には、平均粒子半径(rave.)は収束しない。
【0018】
上記について、例えば構造用鋼をJIS SCr420鋼により説明すると、第1相がMnO−SiO2系酸化物であり、第2相がMnO−Cr23系酸化物である。この場合、JIS SCr420鋼におけるサブスケール層近傍の溶質元素の濃度分布の電子ブローブ微量分析であるEPMAによる実測値を図3に示す。第1相および第2相ともに、MnOが40〜60mol%含まれることから、図中、矢印で示している位置がξおよびξBに相当する。酸素については、鋼中への溶解酸素濃度(NA(O))は、1200℃で10ppm程度である。 JIS SCr420鋼では、第1相がMnO−SiO2系酸化物、第2相がMnO−Cr23系酸化物であり、両方の相は共にMnOが40〜60mol%含まれることから、図中、矢印で示している位置がξおよびξBに相当する。酸素について、鋼中への溶解酸素濃度(N0(S))は、1200℃で10ppm程度であるので、図3に示したEPMAによる酸素濃度の測定値は、大部分が析出した酸化物中の酸素に相当する。なお、EPMAの測定条件は、島津製のEPMA1600で、加速電圧15kV、電流値100nAである。
【0019】
図4にJIS SCr420鋼における粒状酸化物について、1100℃、1200℃、1300℃で加熱した保持時間(ks)と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)(μm)との関係を示す。図4に見られるように、粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)は酸化初期の一定期間増加し、その後は酸化温度に応じた値に収束する。この場合、平均粒子半径(rave.)の収束値は、酸化温度が高い条件ほど大きくなった。
【0020】
図5にJIS SCr420鋼、図6にS50C鋼、図7にJIS SCM435鋼における、温度に応じた値に収束後の粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)と加熱温度との関係をそれぞれ示す。図5〜図7に示すように、粒状酸化物の平均粒子半径は加熱温度に直線的に比例する関係を有するので、この図5〜図7の関係を用いることで、鋼材の表面疵の平均粒子半径(rave.)から表面疵の発生温度域を推定し、これを製造工程内の温度履歴と比較することで表面疵の発生工程が特定できる。
【実施例1】
【0021】
例えば、JIS SCr420鋼について、加熱温度と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)との関係を以下の手順で求める。1)鋼材の表面疵を模擬するため、予め亀裂を付与した人工疵を有する試験片を用いて高温酸化実験を行った。2)この高温酸化試験片を切断してその表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。3)作製した試料をSEMを用いて3000倍で観察および写真撮影した。4)得られたSEMの写真に対して画像解析を行って、粒子数や粒子ごとの大きさから平均粒子半径(rave.)を求めた。
【0022】
ついで、上記に続き、実際の製造工程における鋼材に発生した表面疵の発生工程を特定した。すなわち、5)連続鋳造乃至分塊圧延工程で製造された鋼片に発生していた表面疵のサンプルAおよびサンプルBを採取した。6)これらの採取したサンプルから、それぞれ切断してそれらの表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。7)表面疵の平均粒子半径(rave.)を測定した。8)それぞれの表面疵の平均粒子半径(rave.)は、表面疵Aが0.30μm、表面疵Bが0.18μmであった。9)上記の1)〜4)で得られた温度と平均粒子半径(rave.)との関係と8)の結果とを比較することにより、それぞれの表面疵が曝された温度域は、表面疵Aが1300℃程度で、表面疵Bが1150℃程度と推定できた。
【0023】
以上の実際の製造工程における主な温度域は、連続鋳造後の加熱炉の温度域が1300℃程度、分塊圧延の温度域が1150℃程度であった。鋼材が辿ったこれらの熱履歴と上記の平均粒子半径(rave.)から推定された温度域との比較により、それぞれの表面疵の発生工程は次のように特定できた。すなわち、表面疵Aは分塊圧延前の加熱炉装入以前に発生していた鋳片の割れを起源として発生した。また、表面疵Bは分塊圧延時に発生した。
【0024】
以上に説明した工程により、鋼材の表面疵近傍に生成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)の値から、その表面疵の発生温度域を推定し、この温度域と製造工程内での温度履歴との比較によって表面疵の発生工程を特定することができた。
【実施例2】
【0025】
次いで、JIS S50C鋼について、実施例1と同様に、加熱温度と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)との関係を以下の手順で求める。1)鋼材の表面疵を模擬するため、予め亀裂を付与した人工疵を有する試験片を用いて高温酸化実験を行った。2)この高温酸化試験片を切断してその表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。3)作製した試料をSEMを用いて3000倍で観察および写真撮影した。4)得られたSEMの写真に対して画像解析を行って、粒子数や粒子ごとの大きさから平均粒子半径(rave.)を求めた。
【0026】
ついで、上記に続き、実際の製造工程における鋼材に発生した表面疵の発生工程を特定した。すなわち、5)連続鋳造乃至分塊圧延工程で製造された鋼片に発生していた表面疵のサンプルAおよびサンプルBを採取した。6)これらの採取したサンプルから、それぞれ切断してそれらの表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。7)表面疵の平均粒子半径(rave.)を測定した。8)それぞれの表面疵の平均粒子半径(rave.)は、表面疵Aが0.20μm、表面疵Bが0.13μmであった。9)上記の1)〜4)で得られた温度と平均粒子半径(rave.)との関係と8)の結果とを比較することにより、それぞれの表面疵が曝された温度域は、表面疵Aが1300℃程度で、表面疵Bが1150℃程度と推定できた。
【0027】
以上の実際の製造工程における主な温度域は、連続鋳造後の加熱炉の温度域が1300℃程度、分塊圧延の温度域が1150℃程度であった。鋼材が辿ったこれらの熱履歴と上記の平均粒子半径(rave.)から推定された温度域との比較により、それぞれの表面疵の発生工程は次のように特定できた。すなわち、表面疵Aは分塊圧延前の加熱炉装入以前に発生していた鋳片の割れを起源として発生した。また、表面疵Bは分塊圧延時に発生した。
【0028】
以上に説明した工程により、この実施例2の場合も、鋼材の表面疵近傍に生成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)の値から、その表面疵の発生温度域を推定し、この温度域と製造工程内での温度履歴との比較によって表面疵の発生工程を特定することができた。
【実施例3】
【0029】
例えば、JIS SCM435鋼について、実施例1〜2と同様に、加熱温度と粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)との関係を以下の手順で求める。1)鋼材の表面疵を模擬するため、予め亀裂を付与した人工疵を有する試験片を用いて高温酸化実験を行った。2)この高温酸化試験片を切断してその表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。3)作製した試料をSEMを用いて3000倍で観察および写真撮影した。4)得られたSEMの写真に対して画像解析を行って、粒子数や粒子ごとの大きさから平均粒子半径(rave.)を求めた。
【0030】
ついで、上記に続き、実際の製造工程における鋼材に発生した表面疵の発生工程を特定した。すなわち、5)連続鋳造乃至分塊圧延工程で製造された鋼片に発生していた表面疵のサンプルAおよびサンプルBを採取した。6)これらの採取したサンプルから、それぞれ切断してそれらの表面疵部を含んだ試験片を樹脂に埋め込んで鏡面研磨することにより試料を調整した。7)表面疵の平均粒子半径(rave.)を測定した。8)それぞれの表面疵の平均粒子半径(rave.)は、表面疵Aが0.31μm、表面疵Bが0.18μmであった。9)上記の1)〜4)で得られた温度と平均粒子半径(rave.)との関係と8)の結果とを比較することにより、それぞれの表面疵が曝された温度域は、表面疵Aが1300℃程度で、表面疵Bが1150℃程度と推定できた。
【0031】
以上の実際の製造工程における主な温度域は、連続鋳造後の加熱炉の温度域が1300℃程度、分塊圧延の温度域が1150℃程度であった。鋼材が辿ったこれらの熱履歴と上記の平均粒子半径(rave.)から推定された温度域との比較により、それぞれの表面疵の発生工程は次のように特定できた。すなわち、表面疵Aは分塊圧延前の加熱炉装入以前に発生していた鋳片の割れを起源として発生した。また、表面疵Bは分塊圧延時に発生した。
【0032】
以上に説明した工程により、この実施例3の場合も、鋼材の表面疵近傍に生成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)の値から、その表面疵の発生温度域を推定し、この温度域と製造工程内での温度履歴との比較によって表面疵の発生工程を特定することができた。この様に、本発明の方法は低炭素のはだ焼鋼のみならず高炭素や中炭素の構造用鋼などに本発明の方法は幅広く適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材として使用するに当たり有害な表面欠陥である表面疵について、表面疵近傍に生成するサブスケール層を構成する粒状酸化物の平均粒子半径(rave.)から鋼材の表面欠陥である表面疵が発生した温度域を推定することを特徴とする鋼材表面疵の発生条件の特定方法。
【請求項2】
表面疵近傍に生成するサブスケール層を構成する粒状酸化物は第1相酸化物および第2相酸化物の2種類の相からなり、第1相酸化物の析出によって酸化物粒子を生成し、この第1相酸化物の酸化物粒子を析出核として第2相酸化物を析出することで粗大化が進行する構造用鋼の表面疵近傍に生成する粒状酸化物の平均粒子半径から、対象表面疵の発生した温度域を推定することを特徴とする請求項1に記載の鋼材表面疵の発生条件の特定方法。
【請求項3】
対象表面疵の発生した温度域を推定する方法は、予め、加熱温度と粒状酸化物の平均粒子半径との関係を求めておき、この求めた関係に、発生温度域を知りたい対象表面疵の粒状酸化物の平均粒子半径を照合して対象表面疵の発生した温度域を推定することを特徴とする請求項2に記載の鋼材表面疵の発生条件の特定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の鋼材表面疵の発生条件の特定方法により鋼材表面疵の発生温度域を推定し、その推定した温度域とその表面疵の発生した鋼材の実工程における製造熱履歴とを比較することにより、表面疵の発生した工程を特定することを特徴とする製造工程内での鋼材表面疵の発生工程の特定方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−266252(P2010−266252A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116008(P2009−116008)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】