鋼板の形状矯正方法及び形状矯正装置
【課題】従来技術では,矯正が困難である鋼板の板幅方向の両端部の反りを適切に矯正する。
【解決手段】形状矯正装置20は電磁石40〜48,50〜58を矯正対象である鋼板Iと対向して配置している。各電磁石40〜48,50〜58にはセンサ70が設けられている。鋼板Iの形状矯正を行う際に,各センサ70が検出した被検出部60〜66のうちで,鋼板Iの板幅方向Yの両端部75,76に最近接する被検出部60,66については,その板厚方向Zの位置に基づいて算出される矯正方向αが,鋼板Iの両端部75,76の板厚方向Zの位置の情報から決定される参照用の矯正方向βと異なる場合には,この参照用の矯正方向βと各々一致するように形状矯正を行う。
【解決手段】形状矯正装置20は電磁石40〜48,50〜58を矯正対象である鋼板Iと対向して配置している。各電磁石40〜48,50〜58にはセンサ70が設けられている。鋼板Iの形状矯正を行う際に,各センサ70が検出した被検出部60〜66のうちで,鋼板Iの板幅方向Yの両端部75,76に最近接する被検出部60,66については,その板厚方向Zの位置に基づいて算出される矯正方向αが,鋼板Iの両端部75,76の板厚方向Zの位置の情報から決定される参照用の矯正方向βと異なる場合には,この参照用の矯正方向βと各々一致するように形状矯正を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,亜鉛等の溶融めっきラインにおける鋼板の形状矯正方法及び形状矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融めっき鋼板を製造する場合には,まず,鋼板を溶融めっき浴内で走行させ,その表裏面にめっきを付着させる。次いで,めっきの付着した鋼板を溶融めっき浴の外に退出させ,走行させながらその表裏面に向けてワイピングノズルから空気等の高圧ガスを吹付け,鋼板に付着しためっきを吹飛ばすことによって,めっきの付着量を調整する。その後,めっきの付着した鋼板に合金化処理を施すことによって,溶融めっき鋼板を製造する。
【0003】
めっきの付着量が均一な溶融めっき鋼板を製造するためには,ワイピングノズルと鋼板の表裏面との間隔をできるだけ一定にする必要がある。このため,一般には,溶融めっき浴内の出側付近に,鋼板を板厚方向に押圧し鋼板形状を平坦化するサポートロールが設置されている。しかしながら,このサポートロールだけでは,鋼板形状を十分に矯正することができず,溶融めっき浴の外に退出した鋼板には,板幅方向の軸に対する反り(いわゆるC反り,W反り等)が生じてしまう。
【0004】
従来から例えば特許文献1に示すように,このような反りを矯正するために複数の電磁石を用いた形状矯正技術が用いられている。
【0005】
より詳述すると,図1は,鋼板の反りを適切に矯正できない場合の一例を示す上記特許文献1の形状矯正装置100の構成図であり,図1に示すように,上記特許文献1に記載の形状矯正装置100は,図示しない溶融めっき浴から退出し,搬送方向X(図1の紙面に対して手前側から向こう側に向かう方向)に走行する鋼板Iを板厚方向Zに挟むように対向配置した電磁石101,102の組を,板幅方向Yに沿って所定間隔をあけて9組設けた構成を有する。各電磁石101,102は,鋼板Iに対向する側において板幅方向Yの中央位置に,各々センサ110が設けられている。各センサ110は,対向する鋼板Iが板幅方向Yにおける検出範囲Wにある場合に,この鋼板Iを検出し,検出した鋼板I部分(以下,被検出部と称する)120の板厚方向Zの位置を測定できるように構成されている。
【0006】
形状矯正装置100は,各センサ110が各被検出部120を検出した場合に,その板厚方向Zの位置を測定し,測定した被検出部120の板厚方向Zの位置を所定の目標矯正ラインM(図1において,対向する電磁石101,102の両方から板厚方向Zに等距離にあるセンターラインM)の方に矯正するべく電磁石101,102を励磁するように設定されている。即ち,被検出部120の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインMから見て電磁石101側にある場合には,電磁石102を用いて被検出部120を目標矯正ラインM側(即ち,電磁石102側)に磁気吸引し,被検出部120の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインMから見て電磁石102側にある場合には,電磁石101を用いて被検出部120を目標矯正ラインM側(即ち,電磁石101側)に磁気吸引するようになっている。しかし,後述するように,板幅が適正でなく大きな反り(いわゆるC反り,W反り)が有る鋼板がこの形状矯正装置100を通過しても十分な矯正ができなかった。従って,従来はめっきの前工程で反りを慎重に管理することが求められていた。
【0007】
このように,板幅が適正でなく大きな反りが有る鋼板の反りを矯正する形状矯正技術は,特許文献2及び特許文献3に開示されている。特許文献2には,ワイピングノズルの下流に配置した電磁石を用いて鋼板の反りを矯正することが記載されている。この電磁石はセンサと共に,走行する鋼板に対向して板幅方向に沿って複数配置されている。これら複数の電磁石及びセンサは,予め取得した鋼板の板幅方向の長さ情報に基づいて,通板される鋼板の最大板幅よりも大きい範囲に亘って,鋼板の板幅方向に並べて構成した電磁石をONにして,板幅方向の鋼板を引張り,鋼板の反りを矯正することが述べられている。
【0008】
特許文献3に開示された技術においても特許文献2と同様に,ワイピングノズルの下流に複数配置した電磁石及びセンサを用いて鋼板の反りの矯正を行うようにしているが,さらに,電磁石及びセンサは板幅方向に移動可能に構成されている。また,電磁石及びセンサの下流に,鋼板の表裏面に付着しためっきの付着量を測定することが可能なX線測定装置を設けている。このX線測定装置で測定しためっきの付着量に基づいて,鋼板の板厚方向の位置を板幅方向に亘って算出し,鋼板の反り形状を求めた上で,複数の電磁石及びセンサを板幅方向に沿って移動させ,各々をより効果的な板幅方向の位置に配置した状態で鋼板の反りを矯正するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−246594号公報
【特許文献2】特開平7−256341号公報
【特許文献3】特開平8−199323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,特許文献1に記載の鋼板の形状矯正技術では,例えば,鋼板の板幅方向の両端部が板幅方向においてセンサ(及び電磁石)同士の間に位置する等,矯正する鋼板の位置及び形状の条件が悪い場合には,C反り等の鋼板の反りを適切に矯正することができない。
【0011】
これを具体的に説明すると,鋼板Iの板幅方向Yの両端部130は,図1に示すように,板幅方向Yにおいてセンサ110の間に位置し,両端部130とも目標矯正ラインMから見て電磁石102側に位置している。一方,各センサ110が検出し,その板厚方向Zの位置を測定する被検出部120は全て,目標矯正ラインMから見て電磁石101側にある。このため,図1に示すような状況では,上記特許文献1の形状矯正方法を用いると,図1中にON(出力小)と記載して示すように,電磁石101の出力が小さく且つ電磁石102の出力が大きくなるように設定され,鋼板I全体が電磁石102側に磁気吸引されることになる。即ち,鋼板Iの両端部130の電磁石102側に突出した形状を矯正することができない。このため,鋼板Iのめっき付着量は,板幅方向Yの両側の最端部130で不均一になり,形状矯正装置100の下流に配置した合金化炉(図示せず)で合金化する際に,合金化されない(いわゆる未アロイ)部分が生じてしまう。その上,鋼板I全体が電磁石102側に磁気吸引されて平行移動するため,突出した両端部130が,図1に点線で示したように,電磁石102又はセンサ110に擦過したり衝突したりして,鋼板端部に擦り傷状の表面欠陥を発生させたり,最悪の場合には電磁石102又はセンサ110を損傷させてしまう恐れすらある。
【0012】
一方,特許文献2に記載の鋼板の形状矯正技術では,鋼板を板幅方向に引張る必要があり,C反りの矯正をするためには,かなり強い電磁石を用いる必要があり,例えば大型の電磁石を用意しなければならない。従って,特許文献2を適用するためには,電磁石の大幅な交換と電源の改造をしないと鋼板形状を調整するのは困難である。また,特許文献2では鋼板の板幅方向の長さに応じて矯正に必要な電磁石(及びセンサ)だけをONにしているため,鋼板の板幅方向の両端部が板幅方向においてONにした電磁石(及びセンサ)に対して条件が悪い場合(例えば,鋼板の板幅方向の最端部が板幅方向においてONにした電磁石の外側に位置している場合等)には,C反り等の鋼板の反りに応じた適切な矯正ができない。
【0013】
また,特許文献3に記載の鋼板の形状矯正技術では,電磁石及びセンサを板幅方向に移動可能に構成した形状矯正装置を用いて,鋼板の両側の最端部にも変位計と電磁石を移動させて設置するか,或いは極短い間隔で変位計と電磁石を設置するようにしているので,上述したように,鋼板の板幅方向の両側の最端部が板幅方向においてセンサ(及び電磁石)同士の間に位置してしまう事態を回避できるが,電磁石及びセンサを移動可能にするためには,設備費用がかかってしまう上に,設備構成が複雑化してしまう可能性が高い。また,設置したセンサが,鋼板の板幅方向端部付近の被検出部を適切に検出できなかった場合には,上述した特許文献2の場合の問題と同様の問題が発生する恐れがある。更に,極短い間隔で変位計と電磁石を設置すると設備費用が過大になってしまう。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,従来の鋼板の形状矯正技術では,矯正が困難である場合にも,鋼板の反りを適切に矯正し,合金化されない部分の発生を防止することが可能な鋼板の形状矯正方法及び形状矯正装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために,本発明によれば,溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向して電磁石及びセンサを板幅方向に沿って複数配置し,前記センサで測定した前記鋼板の各被検出部の板厚方向の反りに基づいて,前記電磁石で前記各被検出部を各々所定の矯正方向に磁気吸引する,鋼板の形状矯正方法が提供される。この鋼板の形状矯正方法では,まず,鋼板を検出した前記センサで各被検出部の板厚方向の位置を測定し,前記測定した板厚方向の位置に基づいて,前記各被検出部の矯正方向を決定する。次に,前記センサとは異なるセンサを用いて鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求め,該求めた最端部の板厚方向の位置に基づいて,最端部の各々に最近接する前記被検出部の参照用の矯正方向を決定する。そして,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記電磁石で前記参照用の矯正方向に磁気吸引することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば,前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を考慮した矯正を行うことができ,前記鋼板の板幅方向の最端部をセンサ及び電磁石で直接的に矯正することが困難である場合にも,従来よりも適切に鋼板の形状矯正を行うことができる。
【0017】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないようにしてもよい。
【0018】
上記鋼板の形状矯正方法において,鋼板に付着しためっきの付着量に基づいて,前記鋼板の板幅方向の両端部の板厚方向の位置を求めるようにしてもよい。
【0019】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記測定した鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定するようにしてもよい。
【0020】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさは,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定するようにしてもよい。
【0021】
また,本発明によれば,鋼板の形状矯正装置は,溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向するように板幅方向に沿って複数配置された電磁石と,該電磁石の各々に設けられ,対向する鋼板の各被検出部の板厚方向の位置を測定可能なセンサと,鋼板の表裏面に付着しためっき付着量を測定するめっき付着量測定装置と,前記電磁石,前記センサ及び前記めっき付着量測定装置に接続され,前記めっき付着量測定装置が測定しためっき付着量に基づいて,前記電磁石及び前記センサを個別に制御する制御装置とを有する。前記制御装置は,前記センサの測定結果に基づいて前記各被検出部の矯正方向を決定し,さらに,前記めっき付着量測定装置の測定結果に基づいて前記鋼板の板幅方向の両側の最端部に各々最近接する被検出部の参照用の矯正方向を決定する。そして,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の両側の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記参照用の矯正方向に磁気吸引されるように前記電磁石を制御することを特徴とする。
【0022】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないようにしてもよい。
【0023】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記制御装置は,さらに,前記測定した鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定するようにしてもよい。
【0024】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記制御装置は,さらに,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の両端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,鋼板の板幅方向の両側の最端部をセンサ及び電磁石で直接的に矯正することができない場合にも,鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置の情報を参照した矯正を行うことによって,従来よりも適切に鋼板の反りを矯正することができる。これにより,鋼板の板幅方向の両側の最端部において,めっきの付着量が不均一化し,合金されない部分が発生してしまうことを防止する。また,鋼板の板幅方向の最端部が板厚方向のいずれかの側に突出している場合に,該板幅方向の最端部に発生する摺り疵を防止することができ,さらに電磁石等の設備に衝突させて破損してしまう不適切な矯正を防止できる。また,設備構成の複雑化及び設備費用の肥大化を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について説明をする。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
図2は,本発明の実施の形態に係る形状矯正方法を実施するのに適した溶融めっきライン1の構成図である。図2に示すように,溶融めっきライン1は,鋼板Iが矢印方向に進行し,溶融めっき浴槽2に亜鉛等の溶融めっきを満たした溶融めっき浴3内を走行してから退出するように構成されている。溶融めっき浴3内には,軸方向を水平にして回転自在に軸止され,鋼板Iを案内するシンクロール4及びサポートロール5が設けられている。サポートロール5は,シンクロール4の上方の溶融めっき浴内の出側付近に対で設けられ,鋼板Iを板厚方向Zに押圧することによって,鋼板Iの形状を矯正するように構成されている。
【0028】
サポートロール5の上方の溶融めっき浴3外の出側付近には,板厚方向Zの両側から鋼板Iに空気を吹付け,鋼板Iに付着しためっきの付着量を調整する一対のガスワイピングノズル10,11が対向配置されている。ガスワイピングノズル10,11の上方には,鋼板Iの板幅方向Yの軸に対する反り(いわゆるC反り,W反り等)を矯正する本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正装置20が設けられている。なお,溶融めっき浴3から退出した鋼板Iは,搬送方向X(即ち,鉛直方向上向き)に走行し,ガスワイピングノズル10,11及び形状矯正装置20を通過するように構成されている。本実施の形態では,図2に示すように,搬送方向X,板幅方向Y及び板厚方向Zがいずれも互いに直交するように構成されている。
【0029】
本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正装置20は,ガスワイピングノズル10,11から退出して搬送方向Xに走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側に対向配置され,鋼板Iを各々磁気吸引する電磁石群22,23を有する。電磁石群22,23の上方には,走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側に対向配置しためっき付着量測定装置24,25が設けられている。本実施の形態では,鋼板Iの表裏面に各々X線を照射し,付着しためっきから放射される蛍光X線量を測定することによって,鋼板Iの表裏面に付着しためっきの付着量を各々測定することが可能な蛍光X線装置をめっき付着量測定装置24,25として用いている。
【0030】
めっき付着量測定装置24,25及び電磁石群22,23は,制御装置30に接続されている。制御装置30は,めっき付着量測定装置24,25から入力された鋼板Iの表裏面のめっきの付着量の測定結果の情報から,予め保持する経験的な相関データに基づいて鋼板Iの板幅方向Yに沿った各被検出部の板厚方向Zの位置を算出し,算出した各被検出部の板厚方向Zの位置に基づいて,電磁石群22,23を制御し,鋼板Iを形状矯正するように構成されている。
【0031】
図3は,図2のP−P矢視図である。図3に示すように,電磁石群22は,板幅方向Yに沿って所定間隔で配置した9個の電磁石40〜48を有し,電磁石群23は,板幅方向Yに沿って所定間隔で配置した9個の電磁石50〜58を有する。電磁石群22の電磁石40と電磁石群23の電磁石50は,搬送方向Xに走行する鋼板Iを板厚方向Zに挟むように対向配置されている。同様に,電磁石群22の残りの各電磁石41〜48と電磁石群23の残りの各電磁石51〜58も各々,1対1で対向配置されている。本実施の形態では,電磁石群22と電磁石群23は,板厚方向Zに距離2Lだけ離間している。なお,図3に示すように,電磁石群22及び電磁石群23から板厚方向Zに等距離Lにある中間位置を示すセンターラインを目標矯正ラインMとする。なお,本明細書中では,説明の簡略化を目的として,目標矯正ラインMがセンターラインであるものとして説明するが,めっきの付着量を均一化するように,ワイピングノズル10の部分で鋼板Iがフラットになるように制御し,電磁石群22,23の部分では,敢えて少量の反りが出るように目標矯正ラインMを設定してもよい。
【0032】
電磁石群22の各電磁石40〜48及び電磁石群23の各電磁石50〜58は,各々,鋼板Iと対向する側の中央に,鋼板Iを検出し,鋼板Iの対向する部分(以下,被検出部と称する)60〜66の板厚方向Zの位置を測定可能なセンサ70を備えている。本実施の形態では,センサ70として,鋼板Iに発生した渦電流によるセンサコイルのインピーダンス変化に基づいて,鋼板I(被検出部)の板厚方向Zの位置を測定する渦流式変位計を用いている。
【0033】
図4及び図5は,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70を拡大した図である。図4は,電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できる場合を示している。図4に示すように,電磁石42のセンサ70は,対向する鋼板Iがセンサ70の板幅方向Yの中心から両側に距離W/2までの検出範囲W全域に亘って存在する場合に,対向する鋼板Iの被検出部61を検出し,その板厚方向Zの位置を測定することが可能である。これに対して,図5に示すように,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が検出範囲W内に存在し,センサ70に対向する鋼板Iが検出範囲W全域に亘って存在しない場合には,電磁石42のセンサ70は,対向する鋼板I(被検出部61)を検出できない。なお,本実施の形態では,電磁石42のセンサ70の検出範囲Wは,電磁石42の板幅方向Yの長さHよりも大きな値に設定されている。
【0034】
上記では電磁石42のセンサ70について説明したが,電磁石群22,23のその他の各電磁石40,41,43〜48,50〜58の各センサ70についても同様である。また,各センサ70は,後述する制御装置30によって起動及び停止を個別に設定可能である。本実施の形態では,後述する制御装置30が,搬送方向Xに走行する鋼板Iの板幅方向Yの長さの情報を予め取得し,この長さ情報に基づいて,複数のセンサ70のうち,鋼板Iが検出範囲Wを通過する(即ち,鋼板Iと対向する)センサ70だけが予め起動されるようになっている。
【0035】
既述したように1対1で対向配置された電磁石群22の各電磁石40〜48及び電磁石群23の各電磁石50〜58は,各々が備えるセンサ70が鋼板Iを検出した場合に,同じ幅方向Yの位置で互いに対向する電磁石の各対のいずれか一方側に鋼板Iを磁気吸引するように設定されている。本実施の形態では,図3に示すように,同じ板幅方向Yの位置の電磁石の対42,52が各々備えるセンサ70によって対向する鋼板Iを検出すると,これらの電磁石の対42,52のうちで,対向する鋼板Iからより遠い側にある電磁石52の出力が,より近い側にある電磁石42の出力よりも大きくなるように設定され,検出した鋼板Iを目標矯正ラインMの方に磁気吸引し,目標矯正ラインMの方に矯正するように設定されている。なお,電磁石の対42,52が対向する鋼板Iから等距離にある場合(即ち,目標矯正ラインM上にある場合)には,検出した鋼板Iを矯正する必要がないため,電磁石42,52の出力が等しくなるように設定される。
【0036】
上述した制御を行うように,各センサ70は,測定した各被検出部(図3の場合,60〜66)の板厚方向Zの位置の情報を制御装置30に入力するように構成されている。また,制御装置30は,電磁石群22,23の各センサ70から入力された各被検出部(図3の場合,60〜66)の板厚方向Zの位置の情報と,既述しためっき付着量測定装置24,25から入力された鋼板Iの表裏面のめっきの付着量の測定結果の情報とに基づいて,対向する各被検出部(図3の場合,60〜66)を検出した2つの電磁石(図3の場合,41と51,42と52,・・・,47と57)の出力の大小を調整するように設定されている。各被検出部(図3の場合,60〜66)は,各々,より出力が大きい方の電磁石(図3の場合,41,47,52〜56)の側に,板厚方向Zに平行に磁気吸引される。ただし,各被検出部の両側の電磁石の出力が等しい場合には,鋼板Iはいずれの方向にも磁気吸引されず,不動の状態になる。なお,本明細書中では,各被検出部が各々磁気吸引される方向(図3に実線矢印で示す各方向)を各々の「矯正方向」と称する。
【0037】
形状矯正装置20は以上のように構成されており,次にこの形状矯正装置20を用いて実施する実施の形態に係る形状矯正方法を図2及び図3を用いて説明する。
【0038】
まず,溶融めっきライン1上で鋼板Iを走行させる手順について説明する。図2に示すように,溶融めっきライン1上において,鋼板Iを矢印方向に走行させ,溶融めっき浴3内に上方から下方に所定の傾斜角度で進入させる。進入させた鋼板Iを溶融めっき浴3内で走行させることによって,溶融めっきをその表裏面に付着させる。溶融めっき浴3内を進行させる鋼板Iは,シンクロール4及びサポートロール5を介して,溶融めっき浴3外から鉛直方向上向きの搬送方向Xに退出させる。退出させた鋼板Iを,搬送方向Xに沿って走行させ,対向配置したガスワイピングノズル10,11の間を進行させる。この際に,走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側にあるガスワイピングノズル10,11から空気を吹付け,鋼板Iの両面に付着しためっきを吹飛ばし,めっきの付着量を調整する。
【0039】
ガスワイピングノズル10,11から退出させた鋼板Iを搬送方向Xに沿って走行させ,形状矯正装置20の電磁石群22,23,めっき付着量測定装置24,25の間を順に進行させ,さらに下流に配置した合金化炉(図示せず)で合金化処理を施す。
【0040】
次に,上述のように溶融めっきライン1上を走行する鋼板Iに対して,実施の形態に係る形状矯正方法を実施する際の手順の一例を図6及び図7を用いて説明する。図6は,鋼板Iの形状矯正手順を示す図2のP−P矢視図である。図7は,本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正方法の手順を示すフロー図である。
【0041】
鋼板Iの形状矯正方法を開始(ステップ0)すると,制御装置30は,図示しない上位の制御装置から溶融めっきライン1上を走行する鋼板Iの板幅方向Yの長さを取得する。制御装置30は,取得した鋼板Iの板幅方向Yの長さの情報に基づいて,形状矯正装置20の全てのセンサ70のうち,鋼板Iと対向するセンサ70だけを起動し,鋼板Iと対向しないセンサ70は停止させておくように制御する。図6に示すように,本実施の形態では,電磁石群22,23の各センサ70のうち,図6中に網掛けで示すように,鋼板Iと対向する電磁石41〜47,51〜57に設けた各センサ70だけが制御装置30によって起動され,鋼板Iと対向しない両端の電磁石40,48,50,58に設けた各センサ70は起動されない(図6中で示すOFF)。なお,図6において,電磁石41〜47,51〜57中に表示したON(出力小),ON(出力大)は,各電磁石41〜47,51〜57が起動された状態であることを,各々の出力の大きさの情報と共に示したものである。また,各センサ70については,網掛けのあるものがON状態,網掛けのないものがOFF状態を各々示している。
【0042】
ガスワイピングノズル10,11を退出し,形状矯正装置20の電磁石群22,23の間を進行する鋼板Iを,起動させた電磁石41〜47,51〜57の各センサ70で検出し(ステップ1),各々が対向する各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を各々測定する(ステップ2)。例えば,図6に示すように,電磁石42に設けたセンサ70の場合には,センサ70と対向する被検出部61との板厚方向Zの距離がJであると測定する。測定された各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置の情報は,各センサ70から制御装置30に入力される。
【0043】
制御装置30は,入力された各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置に基づいて,鋼板Iの各被検出部60〜66の矯正方向αを各々決定する(ステップ3)。本実施の形態では,各被検出部60〜66の矯正方向αを,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を目標矯正ラインMに近付ける向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定する。図6の場合には,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が,いずれも目標矯正ラインMに対して電磁石群22側に位置しているので,各被検出部60〜66の矯正方向αは全て,図6の点線矢印及び実線矢印で示すように,電磁石群22から目標矯正ラインMに向かう向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定される。なお,上記では,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上になく,各被検出部60〜66を矯正する必要がある場合について説明したが,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上にある場合には,各被検出部60〜66を矯正する必要がないため,矯正方向αは,例外的な選択肢として,鋼板Iをいずれの方向にも矯正しない「方向なし」と決定される。
【0044】
形状矯正装置20の電磁石群22,23を退出し,めっき付着量測定装置24,25の間を進行する鋼板Iの表裏面に,めっき付着量測定装置24,25から各々X線を照射し,鋼板Iの表裏面に付着しためっきの付着量を測定する(ステップ4)。測定した鋼板Iのめっきの付着量の測定結果の情報は,めっき付着量測定装置24,25から制御装置30に入力される。
【0045】
制御装置30は,入力された鋼板Iのめっき付着量の測定結果の情報に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置を各々算出する(ステップ5)。本実施の形態では,制御装置30は,鋼板Iに付着しためっき付着量と,鋼板Iの反り量(即ち,鋼板Iの板厚方向Zの位置)とに関する経験的な相関データ(又は近似式)を予め保持し,この相関データを参照する(又は近似式に基づいて計算する)ことによって,入力された鋼板Iのめっき付着量の測定結果の情報に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置を各々算出する。
【0046】
次いで,制御装置30は,上記ステップ3で矯正方向αを決定した手順と同様にして,算出した鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βを各々決定する(ステップ6)。図6の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板幅方向Zの位置は,いずれも目標矯正ラインMに対して電磁石群23側に位置しているので,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βはいずれも,図6の点線矢印で示すように,電磁石群23から目標矯正ラインMに向かう向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定される。なお,上記では,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上になく,最端部75,76を矯正する必要がある場合について説明したが,最端部75,76の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上にある場合には,最端部75,76を矯正する必要がないため,矯正方向βは,例外的な選択肢として,鋼板Iをいずれの方向にも矯正しない「方向なし」と決定される。
【0047】
次いで,制御装置30は,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66以外の被検出部61〜65について,最終的な矯正方向を各矯正方向αに各々決定する(ステップ7)。一方,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66については,これら被検出部60,66の各矯正方向αを,各々が最近接する両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βと比較する。そして,被検出部60,66の各矯正方向αが,対応する参照用の矯正方向βと同じ場合には,その最終的な矯正方向を矯正方向αに設定し,被検出部60,66の各矯正方向αが,対応する参照用の矯正方向βと異なる場合には,その最終的な矯正方向を矯正方向βに設定する(ステップ8)。
【0048】
なお,被検出部60,66の各矯正方向αが既述した「方向なし」と決定され,且つ参照用の矯正方向βが「方向なし」以外に決定されている場合には,被検出部60,66の最終的な矯正方向としては参照用の矯正方向βが設定される(即ち,磁気吸引による矯正が行われる)。これに対し,被検出部60,66の各矯正方向αが「方向なし」以外に決定され,且つ参照用の矯正方向βが「方向なし」に決定されている場合には,被検出部60,66の最終的な矯正方向としては参照用の矯正方向βと同じ「方向なし」が設定される(即ち,磁気吸引による矯正が行われない)。ここで,「方向なし」を方向の1つとみなしてしまえば,被検出部60,66の各矯正方向αが参照用の矯正方向βが異なる場合に,被検出部60,66の最終的な矯正方向に参照用の矯正方向βを設定するという手順をそのまま適用することも可能である。
【0049】
図6の場合には,被検出部60の矯正方向αは,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75の参照用の矯正方向βと反対向きで方向が異なるので,被検出部60の最終的な矯正方向は,最端部75の参照用の矯正方向βに設定される。同様に,被検出部66の矯正方向αは,鋼板Iの板幅方向Yの最端部76の参照用の矯正方向βと反対向きで方向が異なるので,鋼板66の最終的な矯正方向は,最端部76の参照用の矯正方向βに設定される。
【0050】
次いで,制御装置30は,対向する電磁石群22,23が各々有する磁石40〜48,50〜58のうちで,各被検出部60〜66を上述のように設定した最終的な矯正方向に磁気吸引できる各電磁石41,47,52〜56を各々励磁し,各被検出部60〜66を図6の実線矢印で示すように,最終的な矯正方向に磁気吸引する(ステップ9)。本実施の形態では,電磁石41,47,52〜56を用いて,各被検出部60〜66を磁気吸引する際の吸引力の強さは,目標矯正ラインMから各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置までの距離が大きくなるにつれ,強くなるように設定されている。また,上記ステップ8において,被検出部60(66)の最終的な矯正方向を矯正方向αではなく矯正方向βに設定する場合には,被検出部60(66)を磁気吸引する際の吸引力の強さは,目標矯正ラインMから鋼板Iの両端部75(76)までの板厚方向Zの距離A(B)から,各々,目標矯正ラインMから被検出部60(66)までの板厚方向Zの距離a(b)を減じた値A−a(B−b)に依存するように設定されている。
【0051】
以上の手順により,鋼板Iは,形状矯正装置20の電磁石群22,23の電磁石40〜48,50〜58の一部又は全部によって最終的な矯正方向に磁気吸引され,実線で示す矯正前の位置Oから点線で示す矯正後の位置Qに矯正される。これにより本発明の実施の形態に係る形状矯正方法の手順が終了する(ステップ10)。
【0052】
以上の実施の形態によれば,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66の矯正を行う際に,該被検出部60,66の矯正方向αを,鋼板Iの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置の情報から決定される参照用の矯正方向βと各々一致させるように,被検出部60,66の最終的な矯正方向を決定するようにしたことによって,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76付近での反りの度合いが大きい,両側の最端部75,76付近のセンサ70が故障している等の種々の要因から,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できない場合に,設備構成を複雑化させたり,設備費用を肥大化させることなく,鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能になる。また,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76が各センサ70の検出範囲Wから外れた位置にあって,従来の形状矯正技術では適切な矯正が困難である場合についても,鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能になる。さらに,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76が形状矯正装置20の電磁石40〜48,50〜58又はセンサ70に擦過したり,衝突したりして形状矯正装置20を損傷させてしまうことを防止できる。
【0053】
以上のように説明した本発明の実施の形態に係る形状矯正方法について,いくつか具体例を挙げて,その作用を説明する。図8〜12は,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75側の形状が種々の反り形状である場合に,本発明の形状矯正方法を適用した場合の説明図である。図8〜12では,矯正前の鋼板Iの形状を実線で示し,電磁石による磁気吸引によって矯正された後の鋼板Iの形状を点線で示した。
【0054】
図8に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図6に示した場合と同様に,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が,目標矯正ラインMの一方の側(−側)に配置され,この最端部75に最近接する被検出部60が,目標矯正ラインMの他方の側(+側)に各々配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向α(+側から−側に向かう向き)が,最端部75の板厚方向Zの位置に基づく上向きの参照用の矯正方向β(−側から+側に向かう向き)と異なるため,既述したように,被検出部60の最終的な矯正方向は,図8の上向き実線矢印で示すように,参照用の矯正方向βに設定される。被検出部61の矯正方向は+側から−側に向かう向きであり,鋼板Iは矯正後,図8の点線に示す形状になる。
【0055】
図9に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が,目標矯正ラインMの一方の側(−側)に配置され,被検出部60が目標矯正ラインM上に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αは「方向なし」であり,参照用の矯正方向β(−側から+側に向かう向き)と異なるため,被検出部60の最終的な矯正方法は,図9の上向き実線矢印で示すように,参照用の矯正方向βに設定される。被検出部61も目標矯正ラインM上にあるため,その矯正方向が「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図9の点線に示す形状になる。
【0056】
図10に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75と,この最端部75に最近接する被検出部60とが,目標矯正ラインMの同じ側(−側)に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αと最端部75に基づく参照用の矯正方向βが同じ(−側から+側に向かう向き)であるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,図9の上向き実線矢印で示すように,矯正方向αに設定される。被検出部61は目標矯正ラインM上にあるため,その矯正方向が「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図10の点線に示す形状になる。矯正後のこの形状は,図9に示す矯正前の形状と同じであるので,その後,図9について上記で説明した矯正がなされる。
【0057】
図11に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図8及び図9の矯正後の形状と同じ形状になっている。即ち,図11は,図8及び9の矯正が行われた後の鋼板Iに対してなされる矯正を示している。図811に示す矯正前の鋼板Iの板幅方向Yの最端部75は,目標矯正ラインM上に配置されている。また,最端部75に最近接する被検出部60が,目標矯正ラインMの一方の側(+側)に配置されている。従って,被検出部60の矯正方向α(+側から−側に向かう向き)は,「方向なし」である参照用の矯正方向βと異なるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,「方向なし」に設定される。被検出部61の矯正方向も「方向なし」であるので,被検出部60及び61は矯正されず,鋼板Iの形状がそのまま保持される。
【0058】
図12に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図11に示す鋼板Iの形状が変化した形状と同じ形状になっている。図12に示す鋼板Iの板幅方向Yの最端部75と,この最端部75に最近接する被検出部60とは,目標矯正ラインMの同じ側(+側)に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αが,最端部75に基づく参照用の矯正方向βと同じ(+側から−側に向かう向き)であるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,図12の下向き実線矢印で示すように,矯正方向αに設定される。被検出部61の矯正方向は「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図11の点線に示す形状になる。矯正後のこの形状は,図9に示す矯正前の形状と同じであるので,その後,図9について上記で説明した矯正がなされる。
【0059】
以上,図8〜12を用いて鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が種々の反り形状である場合について,本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を説明したが,鋼板Iの形状を矯正する際には,鋼板Iの形状に対応した矯正が周期的に繰返され,振動が発生してしまう恐れがあるため,このような事態を防止するため,鋼板Iの形状矯正の制御に関する時定数及び制御定数を適正に設定する必要がある。この時定数及び制御定数は,操業に先駆けて適切に設定し,操業中も適宜調整する必要がある。
【0060】
なお,上述した実施形態では,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できない場合について説明したが,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できる場合についても,本発明の実施の形態に係る形状矯正方法によって,従来公知の形状矯正方法と同様に鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能である。
【0061】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
上述した実施形態においては,溶融めっきライン1上に,鋼板Iの搬送方向Xに沿って,ガスワイピングノズル10,11,形状矯正装置20の電磁石群22,23,めっき付着量測定装置24,25が順に配置されている場合について説明したが,溶融めっきライン1は,その他の配置構成であってもよい。
【0063】
上述した実施形態においては,電磁石群22,23が各々9個の電磁石40〜48,50〜58で構成される場合について説明したが,電磁石群22,23を構成する電磁石の個数は9以外であってもよい。
【0064】
上述した実施形態においては,被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を測定するセンサ70として渦流式センサを用いる場合について説明したが,その他のセンサが用いられてもよい。
【0065】
上述した実施形態においては,センサ70が,電磁石群22及び電磁石群23の両方の各電磁石40〜48,50〜58の鋼板Iと対向する側において板幅方向Yの中央位置に各々設けられている場合について説明したが,センサ70は,その他の位置に設けられていてもよい。また,センサ70は,電磁石群22の各電磁石40〜48又は電磁石群23の各電磁石50〜58のいずれか一方だけに設けられていてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては,めっき付着量測定装置24,25として蛍光X線装置を用いる場合について説明したが,β線又はγ線を用いてめっき付着量を測定する測定装置等,その他のめっき付着量測定装置が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は,例えば溶融めっき鋼板を製造する溶融めっきラインに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】鋼板の反りを適切に矯正できない場合の一例を示す従来公知の形状矯正装置100の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る形状矯正方法を実施するのに適した溶融めっきライン1の構成図である。
【図3】図2のP−P矢視図である。
【図4】電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できる場合における,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70の拡大図である。
【図5】電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できない場合における,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70の拡大図である。
【図6】鋼板Iの形状矯正手順を示す図2のP−P矢視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正方法の手順を示すフロー図である。
【図8】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図9】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図10】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図11】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図12】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 溶融めっきライン
2 溶融めっき浴槽
3 溶融めっき浴
4 シンクロール
5 サポートロール
10,11 ガスワイピングノズル
20,100 形状矯正装置
22,23 電磁石群
24,25 めっき付着量測定装置
30 制御装置
40〜48,50〜58,101,102 電磁石
60〜68,120 被検出部
70,110 センサ
75,76,130 鋼板の板幅方向の両端部
A,B 鋼板の板幅方向の両端部の板厚方向の位置
a,b 鋼板の板幅方向の両端部に最近接する被検出部の板厚方向の位置
H 電磁石の板幅方向の長さ
I 鋼板
J センサと被検出部との板厚方向の距離(の一例)
L 電磁石群22(23)とセンターラインMとの距離
M センターライン(目標矯正ライン)
W 検出範囲(距離)
X 搬送方向
Y 板幅方向
Z 板厚方向
α 被検出部の矯正方向
β 被検出部の板幅方向の両端部の参照用の矯正方向
+,− 目標矯正ラインの両側
【技術分野】
【0001】
本発明は,亜鉛等の溶融めっきラインにおける鋼板の形状矯正方法及び形状矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融めっき鋼板を製造する場合には,まず,鋼板を溶融めっき浴内で走行させ,その表裏面にめっきを付着させる。次いで,めっきの付着した鋼板を溶融めっき浴の外に退出させ,走行させながらその表裏面に向けてワイピングノズルから空気等の高圧ガスを吹付け,鋼板に付着しためっきを吹飛ばすことによって,めっきの付着量を調整する。その後,めっきの付着した鋼板に合金化処理を施すことによって,溶融めっき鋼板を製造する。
【0003】
めっきの付着量が均一な溶融めっき鋼板を製造するためには,ワイピングノズルと鋼板の表裏面との間隔をできるだけ一定にする必要がある。このため,一般には,溶融めっき浴内の出側付近に,鋼板を板厚方向に押圧し鋼板形状を平坦化するサポートロールが設置されている。しかしながら,このサポートロールだけでは,鋼板形状を十分に矯正することができず,溶融めっき浴の外に退出した鋼板には,板幅方向の軸に対する反り(いわゆるC反り,W反り等)が生じてしまう。
【0004】
従来から例えば特許文献1に示すように,このような反りを矯正するために複数の電磁石を用いた形状矯正技術が用いられている。
【0005】
より詳述すると,図1は,鋼板の反りを適切に矯正できない場合の一例を示す上記特許文献1の形状矯正装置100の構成図であり,図1に示すように,上記特許文献1に記載の形状矯正装置100は,図示しない溶融めっき浴から退出し,搬送方向X(図1の紙面に対して手前側から向こう側に向かう方向)に走行する鋼板Iを板厚方向Zに挟むように対向配置した電磁石101,102の組を,板幅方向Yに沿って所定間隔をあけて9組設けた構成を有する。各電磁石101,102は,鋼板Iに対向する側において板幅方向Yの中央位置に,各々センサ110が設けられている。各センサ110は,対向する鋼板Iが板幅方向Yにおける検出範囲Wにある場合に,この鋼板Iを検出し,検出した鋼板I部分(以下,被検出部と称する)120の板厚方向Zの位置を測定できるように構成されている。
【0006】
形状矯正装置100は,各センサ110が各被検出部120を検出した場合に,その板厚方向Zの位置を測定し,測定した被検出部120の板厚方向Zの位置を所定の目標矯正ラインM(図1において,対向する電磁石101,102の両方から板厚方向Zに等距離にあるセンターラインM)の方に矯正するべく電磁石101,102を励磁するように設定されている。即ち,被検出部120の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインMから見て電磁石101側にある場合には,電磁石102を用いて被検出部120を目標矯正ラインM側(即ち,電磁石102側)に磁気吸引し,被検出部120の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインMから見て電磁石102側にある場合には,電磁石101を用いて被検出部120を目標矯正ラインM側(即ち,電磁石101側)に磁気吸引するようになっている。しかし,後述するように,板幅が適正でなく大きな反り(いわゆるC反り,W反り)が有る鋼板がこの形状矯正装置100を通過しても十分な矯正ができなかった。従って,従来はめっきの前工程で反りを慎重に管理することが求められていた。
【0007】
このように,板幅が適正でなく大きな反りが有る鋼板の反りを矯正する形状矯正技術は,特許文献2及び特許文献3に開示されている。特許文献2には,ワイピングノズルの下流に配置した電磁石を用いて鋼板の反りを矯正することが記載されている。この電磁石はセンサと共に,走行する鋼板に対向して板幅方向に沿って複数配置されている。これら複数の電磁石及びセンサは,予め取得した鋼板の板幅方向の長さ情報に基づいて,通板される鋼板の最大板幅よりも大きい範囲に亘って,鋼板の板幅方向に並べて構成した電磁石をONにして,板幅方向の鋼板を引張り,鋼板の反りを矯正することが述べられている。
【0008】
特許文献3に開示された技術においても特許文献2と同様に,ワイピングノズルの下流に複数配置した電磁石及びセンサを用いて鋼板の反りの矯正を行うようにしているが,さらに,電磁石及びセンサは板幅方向に移動可能に構成されている。また,電磁石及びセンサの下流に,鋼板の表裏面に付着しためっきの付着量を測定することが可能なX線測定装置を設けている。このX線測定装置で測定しためっきの付着量に基づいて,鋼板の板厚方向の位置を板幅方向に亘って算出し,鋼板の反り形状を求めた上で,複数の電磁石及びセンサを板幅方向に沿って移動させ,各々をより効果的な板幅方向の位置に配置した状態で鋼板の反りを矯正するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−246594号公報
【特許文献2】特開平7−256341号公報
【特許文献3】特開平8−199323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,特許文献1に記載の鋼板の形状矯正技術では,例えば,鋼板の板幅方向の両端部が板幅方向においてセンサ(及び電磁石)同士の間に位置する等,矯正する鋼板の位置及び形状の条件が悪い場合には,C反り等の鋼板の反りを適切に矯正することができない。
【0011】
これを具体的に説明すると,鋼板Iの板幅方向Yの両端部130は,図1に示すように,板幅方向Yにおいてセンサ110の間に位置し,両端部130とも目標矯正ラインMから見て電磁石102側に位置している。一方,各センサ110が検出し,その板厚方向Zの位置を測定する被検出部120は全て,目標矯正ラインMから見て電磁石101側にある。このため,図1に示すような状況では,上記特許文献1の形状矯正方法を用いると,図1中にON(出力小)と記載して示すように,電磁石101の出力が小さく且つ電磁石102の出力が大きくなるように設定され,鋼板I全体が電磁石102側に磁気吸引されることになる。即ち,鋼板Iの両端部130の電磁石102側に突出した形状を矯正することができない。このため,鋼板Iのめっき付着量は,板幅方向Yの両側の最端部130で不均一になり,形状矯正装置100の下流に配置した合金化炉(図示せず)で合金化する際に,合金化されない(いわゆる未アロイ)部分が生じてしまう。その上,鋼板I全体が電磁石102側に磁気吸引されて平行移動するため,突出した両端部130が,図1に点線で示したように,電磁石102又はセンサ110に擦過したり衝突したりして,鋼板端部に擦り傷状の表面欠陥を発生させたり,最悪の場合には電磁石102又はセンサ110を損傷させてしまう恐れすらある。
【0012】
一方,特許文献2に記載の鋼板の形状矯正技術では,鋼板を板幅方向に引張る必要があり,C反りの矯正をするためには,かなり強い電磁石を用いる必要があり,例えば大型の電磁石を用意しなければならない。従って,特許文献2を適用するためには,電磁石の大幅な交換と電源の改造をしないと鋼板形状を調整するのは困難である。また,特許文献2では鋼板の板幅方向の長さに応じて矯正に必要な電磁石(及びセンサ)だけをONにしているため,鋼板の板幅方向の両端部が板幅方向においてONにした電磁石(及びセンサ)に対して条件が悪い場合(例えば,鋼板の板幅方向の最端部が板幅方向においてONにした電磁石の外側に位置している場合等)には,C反り等の鋼板の反りに応じた適切な矯正ができない。
【0013】
また,特許文献3に記載の鋼板の形状矯正技術では,電磁石及びセンサを板幅方向に移動可能に構成した形状矯正装置を用いて,鋼板の両側の最端部にも変位計と電磁石を移動させて設置するか,或いは極短い間隔で変位計と電磁石を設置するようにしているので,上述したように,鋼板の板幅方向の両側の最端部が板幅方向においてセンサ(及び電磁石)同士の間に位置してしまう事態を回避できるが,電磁石及びセンサを移動可能にするためには,設備費用がかかってしまう上に,設備構成が複雑化してしまう可能性が高い。また,設置したセンサが,鋼板の板幅方向端部付近の被検出部を適切に検出できなかった場合には,上述した特許文献2の場合の問題と同様の問題が発生する恐れがある。更に,極短い間隔で変位計と電磁石を設置すると設備費用が過大になってしまう。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,従来の鋼板の形状矯正技術では,矯正が困難である場合にも,鋼板の反りを適切に矯正し,合金化されない部分の発生を防止することが可能な鋼板の形状矯正方法及び形状矯正装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために,本発明によれば,溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向して電磁石及びセンサを板幅方向に沿って複数配置し,前記センサで測定した前記鋼板の各被検出部の板厚方向の反りに基づいて,前記電磁石で前記各被検出部を各々所定の矯正方向に磁気吸引する,鋼板の形状矯正方法が提供される。この鋼板の形状矯正方法では,まず,鋼板を検出した前記センサで各被検出部の板厚方向の位置を測定し,前記測定した板厚方向の位置に基づいて,前記各被検出部の矯正方向を決定する。次に,前記センサとは異なるセンサを用いて鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求め,該求めた最端部の板厚方向の位置に基づいて,最端部の各々に最近接する前記被検出部の参照用の矯正方向を決定する。そして,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記電磁石で前記参照用の矯正方向に磁気吸引することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば,前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を考慮した矯正を行うことができ,前記鋼板の板幅方向の最端部をセンサ及び電磁石で直接的に矯正することが困難である場合にも,従来よりも適切に鋼板の形状矯正を行うことができる。
【0017】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないようにしてもよい。
【0018】
上記鋼板の形状矯正方法において,鋼板に付着しためっきの付着量に基づいて,前記鋼板の板幅方向の両端部の板厚方向の位置を求めるようにしてもよい。
【0019】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記測定した鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定するようにしてもよい。
【0020】
上記鋼板の形状矯正方法において,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさは,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定するようにしてもよい。
【0021】
また,本発明によれば,鋼板の形状矯正装置は,溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向するように板幅方向に沿って複数配置された電磁石と,該電磁石の各々に設けられ,対向する鋼板の各被検出部の板厚方向の位置を測定可能なセンサと,鋼板の表裏面に付着しためっき付着量を測定するめっき付着量測定装置と,前記電磁石,前記センサ及び前記めっき付着量測定装置に接続され,前記めっき付着量測定装置が測定しためっき付着量に基づいて,前記電磁石及び前記センサを個別に制御する制御装置とを有する。前記制御装置は,前記センサの測定結果に基づいて前記各被検出部の矯正方向を決定し,さらに,前記めっき付着量測定装置の測定結果に基づいて前記鋼板の板幅方向の両側の最端部に各々最近接する被検出部の参照用の矯正方向を決定する。そして,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の両側の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記参照用の矯正方向に磁気吸引されるように前記電磁石を制御することを特徴とする。
【0022】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないようにしてもよい。
【0023】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記制御装置は,さらに,前記測定した鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定するようにしてもよい。
【0024】
上記鋼板の形状矯正装置において,前記制御装置は,さらに,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の両端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば,鋼板の板幅方向の両側の最端部をセンサ及び電磁石で直接的に矯正することができない場合にも,鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置の情報を参照した矯正を行うことによって,従来よりも適切に鋼板の反りを矯正することができる。これにより,鋼板の板幅方向の両側の最端部において,めっきの付着量が不均一化し,合金されない部分が発生してしまうことを防止する。また,鋼板の板幅方向の最端部が板厚方向のいずれかの側に突出している場合に,該板幅方向の最端部に発生する摺り疵を防止することができ,さらに電磁石等の設備に衝突させて破損してしまう不適切な矯正を防止できる。また,設備構成の複雑化及び設備費用の肥大化を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について説明をする。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
図2は,本発明の実施の形態に係る形状矯正方法を実施するのに適した溶融めっきライン1の構成図である。図2に示すように,溶融めっきライン1は,鋼板Iが矢印方向に進行し,溶融めっき浴槽2に亜鉛等の溶融めっきを満たした溶融めっき浴3内を走行してから退出するように構成されている。溶融めっき浴3内には,軸方向を水平にして回転自在に軸止され,鋼板Iを案内するシンクロール4及びサポートロール5が設けられている。サポートロール5は,シンクロール4の上方の溶融めっき浴内の出側付近に対で設けられ,鋼板Iを板厚方向Zに押圧することによって,鋼板Iの形状を矯正するように構成されている。
【0028】
サポートロール5の上方の溶融めっき浴3外の出側付近には,板厚方向Zの両側から鋼板Iに空気を吹付け,鋼板Iに付着しためっきの付着量を調整する一対のガスワイピングノズル10,11が対向配置されている。ガスワイピングノズル10,11の上方には,鋼板Iの板幅方向Yの軸に対する反り(いわゆるC反り,W反り等)を矯正する本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正装置20が設けられている。なお,溶融めっき浴3から退出した鋼板Iは,搬送方向X(即ち,鉛直方向上向き)に走行し,ガスワイピングノズル10,11及び形状矯正装置20を通過するように構成されている。本実施の形態では,図2に示すように,搬送方向X,板幅方向Y及び板厚方向Zがいずれも互いに直交するように構成されている。
【0029】
本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正装置20は,ガスワイピングノズル10,11から退出して搬送方向Xに走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側に対向配置され,鋼板Iを各々磁気吸引する電磁石群22,23を有する。電磁石群22,23の上方には,走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側に対向配置しためっき付着量測定装置24,25が設けられている。本実施の形態では,鋼板Iの表裏面に各々X線を照射し,付着しためっきから放射される蛍光X線量を測定することによって,鋼板Iの表裏面に付着しためっきの付着量を各々測定することが可能な蛍光X線装置をめっき付着量測定装置24,25として用いている。
【0030】
めっき付着量測定装置24,25及び電磁石群22,23は,制御装置30に接続されている。制御装置30は,めっき付着量測定装置24,25から入力された鋼板Iの表裏面のめっきの付着量の測定結果の情報から,予め保持する経験的な相関データに基づいて鋼板Iの板幅方向Yに沿った各被検出部の板厚方向Zの位置を算出し,算出した各被検出部の板厚方向Zの位置に基づいて,電磁石群22,23を制御し,鋼板Iを形状矯正するように構成されている。
【0031】
図3は,図2のP−P矢視図である。図3に示すように,電磁石群22は,板幅方向Yに沿って所定間隔で配置した9個の電磁石40〜48を有し,電磁石群23は,板幅方向Yに沿って所定間隔で配置した9個の電磁石50〜58を有する。電磁石群22の電磁石40と電磁石群23の電磁石50は,搬送方向Xに走行する鋼板Iを板厚方向Zに挟むように対向配置されている。同様に,電磁石群22の残りの各電磁石41〜48と電磁石群23の残りの各電磁石51〜58も各々,1対1で対向配置されている。本実施の形態では,電磁石群22と電磁石群23は,板厚方向Zに距離2Lだけ離間している。なお,図3に示すように,電磁石群22及び電磁石群23から板厚方向Zに等距離Lにある中間位置を示すセンターラインを目標矯正ラインMとする。なお,本明細書中では,説明の簡略化を目的として,目標矯正ラインMがセンターラインであるものとして説明するが,めっきの付着量を均一化するように,ワイピングノズル10の部分で鋼板Iがフラットになるように制御し,電磁石群22,23の部分では,敢えて少量の反りが出るように目標矯正ラインMを設定してもよい。
【0032】
電磁石群22の各電磁石40〜48及び電磁石群23の各電磁石50〜58は,各々,鋼板Iと対向する側の中央に,鋼板Iを検出し,鋼板Iの対向する部分(以下,被検出部と称する)60〜66の板厚方向Zの位置を測定可能なセンサ70を備えている。本実施の形態では,センサ70として,鋼板Iに発生した渦電流によるセンサコイルのインピーダンス変化に基づいて,鋼板I(被検出部)の板厚方向Zの位置を測定する渦流式変位計を用いている。
【0033】
図4及び図5は,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70を拡大した図である。図4は,電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できる場合を示している。図4に示すように,電磁石42のセンサ70は,対向する鋼板Iがセンサ70の板幅方向Yの中心から両側に距離W/2までの検出範囲W全域に亘って存在する場合に,対向する鋼板Iの被検出部61を検出し,その板厚方向Zの位置を測定することが可能である。これに対して,図5に示すように,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が検出範囲W内に存在し,センサ70に対向する鋼板Iが検出範囲W全域に亘って存在しない場合には,電磁石42のセンサ70は,対向する鋼板I(被検出部61)を検出できない。なお,本実施の形態では,電磁石42のセンサ70の検出範囲Wは,電磁石42の板幅方向Yの長さHよりも大きな値に設定されている。
【0034】
上記では電磁石42のセンサ70について説明したが,電磁石群22,23のその他の各電磁石40,41,43〜48,50〜58の各センサ70についても同様である。また,各センサ70は,後述する制御装置30によって起動及び停止を個別に設定可能である。本実施の形態では,後述する制御装置30が,搬送方向Xに走行する鋼板Iの板幅方向Yの長さの情報を予め取得し,この長さ情報に基づいて,複数のセンサ70のうち,鋼板Iが検出範囲Wを通過する(即ち,鋼板Iと対向する)センサ70だけが予め起動されるようになっている。
【0035】
既述したように1対1で対向配置された電磁石群22の各電磁石40〜48及び電磁石群23の各電磁石50〜58は,各々が備えるセンサ70が鋼板Iを検出した場合に,同じ幅方向Yの位置で互いに対向する電磁石の各対のいずれか一方側に鋼板Iを磁気吸引するように設定されている。本実施の形態では,図3に示すように,同じ板幅方向Yの位置の電磁石の対42,52が各々備えるセンサ70によって対向する鋼板Iを検出すると,これらの電磁石の対42,52のうちで,対向する鋼板Iからより遠い側にある電磁石52の出力が,より近い側にある電磁石42の出力よりも大きくなるように設定され,検出した鋼板Iを目標矯正ラインMの方に磁気吸引し,目標矯正ラインMの方に矯正するように設定されている。なお,電磁石の対42,52が対向する鋼板Iから等距離にある場合(即ち,目標矯正ラインM上にある場合)には,検出した鋼板Iを矯正する必要がないため,電磁石42,52の出力が等しくなるように設定される。
【0036】
上述した制御を行うように,各センサ70は,測定した各被検出部(図3の場合,60〜66)の板厚方向Zの位置の情報を制御装置30に入力するように構成されている。また,制御装置30は,電磁石群22,23の各センサ70から入力された各被検出部(図3の場合,60〜66)の板厚方向Zの位置の情報と,既述しためっき付着量測定装置24,25から入力された鋼板Iの表裏面のめっきの付着量の測定結果の情報とに基づいて,対向する各被検出部(図3の場合,60〜66)を検出した2つの電磁石(図3の場合,41と51,42と52,・・・,47と57)の出力の大小を調整するように設定されている。各被検出部(図3の場合,60〜66)は,各々,より出力が大きい方の電磁石(図3の場合,41,47,52〜56)の側に,板厚方向Zに平行に磁気吸引される。ただし,各被検出部の両側の電磁石の出力が等しい場合には,鋼板Iはいずれの方向にも磁気吸引されず,不動の状態になる。なお,本明細書中では,各被検出部が各々磁気吸引される方向(図3に実線矢印で示す各方向)を各々の「矯正方向」と称する。
【0037】
形状矯正装置20は以上のように構成されており,次にこの形状矯正装置20を用いて実施する実施の形態に係る形状矯正方法を図2及び図3を用いて説明する。
【0038】
まず,溶融めっきライン1上で鋼板Iを走行させる手順について説明する。図2に示すように,溶融めっきライン1上において,鋼板Iを矢印方向に走行させ,溶融めっき浴3内に上方から下方に所定の傾斜角度で進入させる。進入させた鋼板Iを溶融めっき浴3内で走行させることによって,溶融めっきをその表裏面に付着させる。溶融めっき浴3内を進行させる鋼板Iは,シンクロール4及びサポートロール5を介して,溶融めっき浴3外から鉛直方向上向きの搬送方向Xに退出させる。退出させた鋼板Iを,搬送方向Xに沿って走行させ,対向配置したガスワイピングノズル10,11の間を進行させる。この際に,走行する鋼板Iの板厚方向Zの両側にあるガスワイピングノズル10,11から空気を吹付け,鋼板Iの両面に付着しためっきを吹飛ばし,めっきの付着量を調整する。
【0039】
ガスワイピングノズル10,11から退出させた鋼板Iを搬送方向Xに沿って走行させ,形状矯正装置20の電磁石群22,23,めっき付着量測定装置24,25の間を順に進行させ,さらに下流に配置した合金化炉(図示せず)で合金化処理を施す。
【0040】
次に,上述のように溶融めっきライン1上を走行する鋼板Iに対して,実施の形態に係る形状矯正方法を実施する際の手順の一例を図6及び図7を用いて説明する。図6は,鋼板Iの形状矯正手順を示す図2のP−P矢視図である。図7は,本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正方法の手順を示すフロー図である。
【0041】
鋼板Iの形状矯正方法を開始(ステップ0)すると,制御装置30は,図示しない上位の制御装置から溶融めっきライン1上を走行する鋼板Iの板幅方向Yの長さを取得する。制御装置30は,取得した鋼板Iの板幅方向Yの長さの情報に基づいて,形状矯正装置20の全てのセンサ70のうち,鋼板Iと対向するセンサ70だけを起動し,鋼板Iと対向しないセンサ70は停止させておくように制御する。図6に示すように,本実施の形態では,電磁石群22,23の各センサ70のうち,図6中に網掛けで示すように,鋼板Iと対向する電磁石41〜47,51〜57に設けた各センサ70だけが制御装置30によって起動され,鋼板Iと対向しない両端の電磁石40,48,50,58に設けた各センサ70は起動されない(図6中で示すOFF)。なお,図6において,電磁石41〜47,51〜57中に表示したON(出力小),ON(出力大)は,各電磁石41〜47,51〜57が起動された状態であることを,各々の出力の大きさの情報と共に示したものである。また,各センサ70については,網掛けのあるものがON状態,網掛けのないものがOFF状態を各々示している。
【0042】
ガスワイピングノズル10,11を退出し,形状矯正装置20の電磁石群22,23の間を進行する鋼板Iを,起動させた電磁石41〜47,51〜57の各センサ70で検出し(ステップ1),各々が対向する各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を各々測定する(ステップ2)。例えば,図6に示すように,電磁石42に設けたセンサ70の場合には,センサ70と対向する被検出部61との板厚方向Zの距離がJであると測定する。測定された各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置の情報は,各センサ70から制御装置30に入力される。
【0043】
制御装置30は,入力された各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置に基づいて,鋼板Iの各被検出部60〜66の矯正方向αを各々決定する(ステップ3)。本実施の形態では,各被検出部60〜66の矯正方向αを,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を目標矯正ラインMに近付ける向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定する。図6の場合には,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が,いずれも目標矯正ラインMに対して電磁石群22側に位置しているので,各被検出部60〜66の矯正方向αは全て,図6の点線矢印及び実線矢印で示すように,電磁石群22から目標矯正ラインMに向かう向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定される。なお,上記では,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上になく,各被検出部60〜66を矯正する必要がある場合について説明したが,各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上にある場合には,各被検出部60〜66を矯正する必要がないため,矯正方向αは,例外的な選択肢として,鋼板Iをいずれの方向にも矯正しない「方向なし」と決定される。
【0044】
形状矯正装置20の電磁石群22,23を退出し,めっき付着量測定装置24,25の間を進行する鋼板Iの表裏面に,めっき付着量測定装置24,25から各々X線を照射し,鋼板Iの表裏面に付着しためっきの付着量を測定する(ステップ4)。測定した鋼板Iのめっきの付着量の測定結果の情報は,めっき付着量測定装置24,25から制御装置30に入力される。
【0045】
制御装置30は,入力された鋼板Iのめっき付着量の測定結果の情報に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置を各々算出する(ステップ5)。本実施の形態では,制御装置30は,鋼板Iに付着しためっき付着量と,鋼板Iの反り量(即ち,鋼板Iの板厚方向Zの位置)とに関する経験的な相関データ(又は近似式)を予め保持し,この相関データを参照する(又は近似式に基づいて計算する)ことによって,入力された鋼板Iのめっき付着量の測定結果の情報に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置を各々算出する。
【0046】
次いで,制御装置30は,上記ステップ3で矯正方向αを決定した手順と同様にして,算出した鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置に基づいて,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βを各々決定する(ステップ6)。図6の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板幅方向Zの位置は,いずれも目標矯正ラインMに対して電磁石群23側に位置しているので,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βはいずれも,図6の点線矢印で示すように,電磁石群23から目標矯正ラインMに向かう向きで且つ板厚方向Zに平行な方向として決定される。なお,上記では,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上になく,最端部75,76を矯正する必要がある場合について説明したが,最端部75,76の板厚方向Zの位置が目標矯正ラインM上にある場合には,最端部75,76を矯正する必要がないため,矯正方向βは,例外的な選択肢として,鋼板Iをいずれの方向にも矯正しない「方向なし」と決定される。
【0047】
次いで,制御装置30は,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66以外の被検出部61〜65について,最終的な矯正方向を各矯正方向αに各々決定する(ステップ7)。一方,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66については,これら被検出部60,66の各矯正方向αを,各々が最近接する両側の最端部75,76の参照用の矯正方向βと比較する。そして,被検出部60,66の各矯正方向αが,対応する参照用の矯正方向βと同じ場合には,その最終的な矯正方向を矯正方向αに設定し,被検出部60,66の各矯正方向αが,対応する参照用の矯正方向βと異なる場合には,その最終的な矯正方向を矯正方向βに設定する(ステップ8)。
【0048】
なお,被検出部60,66の各矯正方向αが既述した「方向なし」と決定され,且つ参照用の矯正方向βが「方向なし」以外に決定されている場合には,被検出部60,66の最終的な矯正方向としては参照用の矯正方向βが設定される(即ち,磁気吸引による矯正が行われる)。これに対し,被検出部60,66の各矯正方向αが「方向なし」以外に決定され,且つ参照用の矯正方向βが「方向なし」に決定されている場合には,被検出部60,66の最終的な矯正方向としては参照用の矯正方向βと同じ「方向なし」が設定される(即ち,磁気吸引による矯正が行われない)。ここで,「方向なし」を方向の1つとみなしてしまえば,被検出部60,66の各矯正方向αが参照用の矯正方向βが異なる場合に,被検出部60,66の最終的な矯正方向に参照用の矯正方向βを設定するという手順をそのまま適用することも可能である。
【0049】
図6の場合には,被検出部60の矯正方向αは,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75の参照用の矯正方向βと反対向きで方向が異なるので,被検出部60の最終的な矯正方向は,最端部75の参照用の矯正方向βに設定される。同様に,被検出部66の矯正方向αは,鋼板Iの板幅方向Yの最端部76の参照用の矯正方向βと反対向きで方向が異なるので,鋼板66の最終的な矯正方向は,最端部76の参照用の矯正方向βに設定される。
【0050】
次いで,制御装置30は,対向する電磁石群22,23が各々有する磁石40〜48,50〜58のうちで,各被検出部60〜66を上述のように設定した最終的な矯正方向に磁気吸引できる各電磁石41,47,52〜56を各々励磁し,各被検出部60〜66を図6の実線矢印で示すように,最終的な矯正方向に磁気吸引する(ステップ9)。本実施の形態では,電磁石41,47,52〜56を用いて,各被検出部60〜66を磁気吸引する際の吸引力の強さは,目標矯正ラインMから各被検出部60〜66の板厚方向Zの位置までの距離が大きくなるにつれ,強くなるように設定されている。また,上記ステップ8において,被検出部60(66)の最終的な矯正方向を矯正方向αではなく矯正方向βに設定する場合には,被検出部60(66)を磁気吸引する際の吸引力の強さは,目標矯正ラインMから鋼板Iの両端部75(76)までの板厚方向Zの距離A(B)から,各々,目標矯正ラインMから被検出部60(66)までの板厚方向Zの距離a(b)を減じた値A−a(B−b)に依存するように設定されている。
【0051】
以上の手順により,鋼板Iは,形状矯正装置20の電磁石群22,23の電磁石40〜48,50〜58の一部又は全部によって最終的な矯正方向に磁気吸引され,実線で示す矯正前の位置Oから点線で示す矯正後の位置Qに矯正される。これにより本発明の実施の形態に係る形状矯正方法の手順が終了する(ステップ10)。
【0052】
以上の実施の形態によれば,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76に最近接する被検出部60,66の矯正を行う際に,該被検出部60,66の矯正方向αを,鋼板Iの両側の最端部75,76の板厚方向Zの位置の情報から決定される参照用の矯正方向βと各々一致させるように,被検出部60,66の最終的な矯正方向を決定するようにしたことによって,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76付近での反りの度合いが大きい,両側の最端部75,76付近のセンサ70が故障している等の種々の要因から,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できない場合に,設備構成を複雑化させたり,設備費用を肥大化させることなく,鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能になる。また,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76が各センサ70の検出範囲Wから外れた位置にあって,従来の形状矯正技術では適切な矯正が困難である場合についても,鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能になる。さらに,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76が形状矯正装置20の電磁石40〜48,50〜58又はセンサ70に擦過したり,衝突したりして形状矯正装置20を損傷させてしまうことを防止できる。
【0053】
以上のように説明した本発明の実施の形態に係る形状矯正方法について,いくつか具体例を挙げて,その作用を説明する。図8〜12は,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75側の形状が種々の反り形状である場合に,本発明の形状矯正方法を適用した場合の説明図である。図8〜12では,矯正前の鋼板Iの形状を実線で示し,電磁石による磁気吸引によって矯正された後の鋼板Iの形状を点線で示した。
【0054】
図8に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図6に示した場合と同様に,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が,目標矯正ラインMの一方の側(−側)に配置され,この最端部75に最近接する被検出部60が,目標矯正ラインMの他方の側(+側)に各々配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向α(+側から−側に向かう向き)が,最端部75の板厚方向Zの位置に基づく上向きの参照用の矯正方向β(−側から+側に向かう向き)と異なるため,既述したように,被検出部60の最終的な矯正方向は,図8の上向き実線矢印で示すように,参照用の矯正方向βに設定される。被検出部61の矯正方向は+側から−側に向かう向きであり,鋼板Iは矯正後,図8の点線に示す形状になる。
【0055】
図9に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が,目標矯正ラインMの一方の側(−側)に配置され,被検出部60が目標矯正ラインM上に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αは「方向なし」であり,参照用の矯正方向β(−側から+側に向かう向き)と異なるため,被検出部60の最終的な矯正方法は,図9の上向き実線矢印で示すように,参照用の矯正方向βに設定される。被検出部61も目標矯正ラインM上にあるため,その矯正方向が「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図9の点線に示す形状になる。
【0056】
図10に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,鋼板Iの板幅方向Yの最端部75と,この最端部75に最近接する被検出部60とが,目標矯正ラインMの同じ側(−側)に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αと最端部75に基づく参照用の矯正方向βが同じ(−側から+側に向かう向き)であるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,図9の上向き実線矢印で示すように,矯正方向αに設定される。被検出部61は目標矯正ラインM上にあるため,その矯正方向が「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図10の点線に示す形状になる。矯正後のこの形状は,図9に示す矯正前の形状と同じであるので,その後,図9について上記で説明した矯正がなされる。
【0057】
図11に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図8及び図9の矯正後の形状と同じ形状になっている。即ち,図11は,図8及び9の矯正が行われた後の鋼板Iに対してなされる矯正を示している。図811に示す矯正前の鋼板Iの板幅方向Yの最端部75は,目標矯正ラインM上に配置されている。また,最端部75に最近接する被検出部60が,目標矯正ラインMの一方の側(+側)に配置されている。従って,被検出部60の矯正方向α(+側から−側に向かう向き)は,「方向なし」である参照用の矯正方向βと異なるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,「方向なし」に設定される。被検出部61の矯正方向も「方向なし」であるので,被検出部60及び61は矯正されず,鋼板Iの形状がそのまま保持される。
【0058】
図12に示す鋼板Iの矯正前の形状の場合には,図11に示す鋼板Iの形状が変化した形状と同じ形状になっている。図12に示す鋼板Iの板幅方向Yの最端部75と,この最端部75に最近接する被検出部60とは,目標矯正ラインMの同じ側(+側)に配置されている。即ち,被検出部60の矯正方向αが,最端部75に基づく参照用の矯正方向βと同じ(+側から−側に向かう向き)であるため,被検出部60の最終的な矯正方向は,図12の下向き実線矢印で示すように,矯正方向αに設定される。被検出部61の矯正方向は「方向なし」であり,鋼板Iは矯正後,図11の点線に示す形状になる。矯正後のこの形状は,図9に示す矯正前の形状と同じであるので,その後,図9について上記で説明した矯正がなされる。
【0059】
以上,図8〜12を用いて鋼板Iの板幅方向Yの最端部75が種々の反り形状である場合について,本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を説明したが,鋼板Iの形状を矯正する際には,鋼板Iの形状に対応した矯正が周期的に繰返され,振動が発生してしまう恐れがあるため,このような事態を防止するため,鋼板Iの形状矯正の制御に関する時定数及び制御定数を適正に設定する必要がある。この時定数及び制御定数は,操業に先駆けて適切に設定し,操業中も適宜調整する必要がある。
【0060】
なお,上述した実施形態では,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できない場合について説明したが,鋼板Iの板幅方向Yの両側の最端部75,76の反りを適切に検出できる場合についても,本発明の実施の形態に係る形状矯正方法によって,従来公知の形状矯正方法と同様に鋼板Iの形状を適切に矯正することが可能である。
【0061】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
上述した実施形態においては,溶融めっきライン1上に,鋼板Iの搬送方向Xに沿って,ガスワイピングノズル10,11,形状矯正装置20の電磁石群22,23,めっき付着量測定装置24,25が順に配置されている場合について説明したが,溶融めっきライン1は,その他の配置構成であってもよい。
【0063】
上述した実施形態においては,電磁石群22,23が各々9個の電磁石40〜48,50〜58で構成される場合について説明したが,電磁石群22,23を構成する電磁石の個数は9以外であってもよい。
【0064】
上述した実施形態においては,被検出部60〜66の板厚方向Zの位置を測定するセンサ70として渦流式センサを用いる場合について説明したが,その他のセンサが用いられてもよい。
【0065】
上述した実施形態においては,センサ70が,電磁石群22及び電磁石群23の両方の各電磁石40〜48,50〜58の鋼板Iと対向する側において板幅方向Yの中央位置に各々設けられている場合について説明したが,センサ70は,その他の位置に設けられていてもよい。また,センサ70は,電磁石群22の各電磁石40〜48又は電磁石群23の各電磁石50〜58のいずれか一方だけに設けられていてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては,めっき付着量測定装置24,25として蛍光X線装置を用いる場合について説明したが,β線又はγ線を用いてめっき付着量を測定する測定装置等,その他のめっき付着量測定装置が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は,例えば溶融めっき鋼板を製造する溶融めっきラインに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】鋼板の反りを適切に矯正できない場合の一例を示す従来公知の形状矯正装置100の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る形状矯正方法を実施するのに適した溶融めっきライン1の構成図である。
【図3】図2のP−P矢視図である。
【図4】電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できる場合における,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70の拡大図である。
【図5】電磁石42のセンサ70が対向する鋼板Iの被検出部61を検出できない場合における,電磁石群22の電磁石42及びそのセンサ70の拡大図である。
【図6】鋼板Iの形状矯正手順を示す図2のP−P矢視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る鋼板Iの形状矯正方法の手順を示すフロー図である。
【図8】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図9】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図10】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図11】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【図12】種々の形状の鋼板Iに対して本発明の実施の形態に係る鋼板の形状矯正方法を適用した場合の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 溶融めっきライン
2 溶融めっき浴槽
3 溶融めっき浴
4 シンクロール
5 サポートロール
10,11 ガスワイピングノズル
20,100 形状矯正装置
22,23 電磁石群
24,25 めっき付着量測定装置
30 制御装置
40〜48,50〜58,101,102 電磁石
60〜68,120 被検出部
70,110 センサ
75,76,130 鋼板の板幅方向の両端部
A,B 鋼板の板幅方向の両端部の板厚方向の位置
a,b 鋼板の板幅方向の両端部に最近接する被検出部の板厚方向の位置
H 電磁石の板幅方向の長さ
I 鋼板
J センサと被検出部との板厚方向の距離(の一例)
L 電磁石群22(23)とセンターラインMとの距離
M センターライン(目標矯正ライン)
W 検出範囲(距離)
X 搬送方向
Y 板幅方向
Z 板厚方向
α 被検出部の矯正方向
β 被検出部の板幅方向の両端部の参照用の矯正方向
+,− 目標矯正ラインの両側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向する電磁石及びセンサを板幅方向に沿って複数配置し,前記センサで測定した前記鋼板の各被検出部の板厚方向の反りに基づいて,前記電磁石で前記各被検出部を各々所定の矯正方向に磁気吸引する,鋼板の形状矯正方法であって,
まず,鋼板を検出した前記センサで各被検出部の板厚方向の位置を測定し,前記測定した板厚方向の位置に基づいて,前記各被検出部の矯正方向を決定し,
一方,前記センサとは異なるセンサを用いて鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求め,該求めた最端部の板厚方向の位置に基づいて,最端部の各々に最近接する前記被検出部の参照用の矯正方向を決定し,
次に,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記電磁石で前記参照用の矯正方向に磁気吸引することを特徴とする,鋼板の形状矯正方法。
【請求項2】
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないことを特徴とする,請求項1に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項3】
鋼板に付着しためっきの付着量に基づいて,前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求めることを特徴とする,請求項1又は2に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項4】
前記測定した鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項5】
前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさは,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定することを特徴とする,請求項4に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項6】
溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向するように板幅方向に沿って複数配置された電磁石と,
該電磁石の各々に設けられ,対向する鋼板の各被検出部の板厚方向の位置を測定可能なセンサと,
鋼板の表裏面に付着しためっき付着量を測定するめっき付着量測定装置と,
前記電磁石,前記センサ及び前記めっき付着量測定装置に接続され,前記めっき付着量測定装置が測定しためっき付着量に基づいて,前記電磁石及び前記センサを個別に制御する制御装置とを有し,
前記制御装置は,前記センサの測定結果に基づいて前記各被検出部の矯正方向を決定し,さらに,前記めっき付着量測定装置の測定結果に基づいて前記鋼板の板幅方向の両側の最端部に各々最近接する被検出部の参照用の矯正方向を決定し,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の両側の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記参照用の矯正方向に磁気吸引されるように前記電磁石を制御することを特徴とする,鋼板の形状矯正装置。
【請求項7】
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないことを特徴とする,請求項6に記載の鋼板の形状矯正装置。
【請求項8】
前記制御装置は,さらに,前記測定した鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定することを特徴とする,請求項6又は7に記載の鋼板の形状矯正装置。
【請求項9】
前記制御装置は,さらに,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定することを特徴とする,請求項6〜8のいずれかに記載の鋼板の形状矯正装置。
【請求項1】
溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向する電磁石及びセンサを板幅方向に沿って複数配置し,前記センサで測定した前記鋼板の各被検出部の板厚方向の反りに基づいて,前記電磁石で前記各被検出部を各々所定の矯正方向に磁気吸引する,鋼板の形状矯正方法であって,
まず,鋼板を検出した前記センサで各被検出部の板厚方向の位置を測定し,前記測定した板厚方向の位置に基づいて,前記各被検出部の矯正方向を決定し,
一方,前記センサとは異なるセンサを用いて鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求め,該求めた最端部の板厚方向の位置に基づいて,最端部の各々に最近接する前記被検出部の参照用の矯正方向を決定し,
次に,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記電磁石で前記参照用の矯正方向に磁気吸引することを特徴とする,鋼板の形状矯正方法。
【請求項2】
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないことを特徴とする,請求項1に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項3】
鋼板に付着しためっきの付着量に基づいて,前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置を求めることを特徴とする,請求項1又は2に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項4】
前記測定した鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項5】
前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさは,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定することを特徴とする,請求項4に記載の鋼板の形状矯正方法。
【請求項6】
溶融めっき浴から退出して走行する鋼板に対向するように板幅方向に沿って複数配置された電磁石と,
該電磁石の各々に設けられ,対向する鋼板の各被検出部の板厚方向の位置を測定可能なセンサと,
鋼板の表裏面に付着しためっき付着量を測定するめっき付着量測定装置と,
前記電磁石,前記センサ及び前記めっき付着量測定装置に接続され,前記めっき付着量測定装置が測定しためっき付着量に基づいて,前記電磁石及び前記センサを個別に制御する制御装置とを有し,
前記制御装置は,前記センサの測定結果に基づいて前記各被検出部の矯正方向を決定し,さらに,前記めっき付着量測定装置の測定結果に基づいて前記鋼板の板幅方向の両側の最端部に各々最近接する被検出部の参照用の矯正方向を決定し,前記矯正方向を決定した前記各被検出部のうち,前記鋼板の板幅方向の両側の最端部の各々に最近接する被検出部については,前記測定した板厚方向の位置に基づいて決定した矯正方向が前記参照用の矯正方向と異なる場合に,前記参照用の矯正方向に磁気吸引されるように前記電磁石を制御することを特徴とする,鋼板の形状矯正装置。
【請求項7】
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を参照用の矯正方向に磁気吸引し,
前記最近接する被検出部の板厚方向の位置が矯正を必要とする位置にあり,且つ前記鋼板の板幅方向の最端部の板厚方向の位置が矯正を不要とする位置にある場合には,前記最近接する被検出部を磁気吸引しないことを特徴とする,請求項6に記載の鋼板の形状矯正装置。
【請求項8】
前記制御装置は,さらに,前記測定した鋼板の板幅方向の両側の最端部の板厚方向の位置に基づいて,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを決定することを特徴とする,請求項6又は7に記載の鋼板の形状矯正装置。
【請求項9】
前記制御装置は,さらに,前記最近接する被検出部を前記参照用の矯正方向に磁気吸引する力の大きさを,前記対向する電磁石同士から板厚方向に等距離にあるセンターラインから鋼板の板幅方向の最端部までの板厚方向の距離と,前記センターラインから前記最近接する被検出部までの板厚方向の距離との差に依存して決定することを特徴とする,請求項6〜8のいずれかに記載の鋼板の形状矯正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−296559(P2007−296559A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127290(P2006−127290)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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