説明

鋼板の精整ライン搬送方法

【課題】退避位置に鋼板を退避させ、また搬送経路を変更することもできる鋼板の搬送方法の提供。
【解決手段】剪断後の鋼板を搬送する精整ラインであり、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%未満の場合は第2搬送テーブル列に鋼板を搬送し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上で且つ、第1搬送テーブル列の後方に設定された第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%以上の場合は第1仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第2トランスファー以降第2搬送テーブル列前方に設定された第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%以上の場合は第2仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%未満の場合は第2搬送テーブル列に鋼板を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に精整ラインにおける鋼板の搬送に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板製品の製造においては、圧延から精整まで製造ラインが連続しているので、搬送テーブルの渋滞が発生すると生産停止や仕掛処理の停滞を招き生産効率の大幅な低下につながる。そのため、搬送テーブルの渋滞を回避し、生産停止等を生じない効率的な鋼板の搬送方法が求められている。
【0003】
特許文献1には剪断ライン上を搬送される鋼板の数を調節して最適化し、剪断ライン及び製造ライン全体を安定化させることが可能な厚鋼板の製造設備が開示されている。
【0004】
当該設備は、剪断ラインの所定の位置に到達した鋼板を剪断ライン外の退避位置に移送可能な移送機構を備えた厚鋼板の製造設備であり、移送機構は、剪断ライン上における鋼板の分布状態を判定し、鋼板の分布状態が密であると判定した場合は、前記移送位置に到達した鋼板を前記退避位置に移送するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、移送機構が剪断ライン上における鋼板の分布状態を判定し、鋼板の分布状態が密であると判定した場合に、鋼板を退避位置に移送するだけでは、退避位置の置き場能力には限界があるので、その後に退避できない鋼板が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、退避位置に鋼板を退避させることに加えて、搬送経路を変更することもできる鋼板の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)剪断後の鋼板を搬送する精整ラインであって、第1搬送テーブル列と第2搬送テーブル列が平行配置され、前記テーブル列の間に第1トランスファーと第2トランスファーが渡され、各テーブル列に対応して第1仮置場と第2仮置場を有する精整ラインにおいて、第1搬送テーブル列から第2搬送テーブル列に鋼板を搬送する際に、自動で、第1トランスファーから第2搬送テーブル列前方に設定された第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%未満の場合は第1トランスファーを経由して第2搬送テーブル列に鋼板を搬送し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上で且つ、第1搬送テーブル列の後方に設定された第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%以上の場合は第1仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第2トランスファー以降第2搬送テーブル列前方に設定された第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%以上の場合は第2仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%未満の場合は第2トランスファーを経由して第2搬送テーブル列に鋼板を搬送することを特徴とする鋼板の精整ライン搬送方法である。
【0010】
(2)前記鋼板占有率A、B、Cをいずれも50〜100%の範囲で設定することを特徴とする(1)記載の鋼板の精整ライン搬送方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鋼板の搬送方法を用いることにより、精整ラインにおける鋼板搬送テーブルの渋滞が減少し、鋼板を仮置場に仮置きする回数も減少するので、製品のリードタイムが短縮でき、生産能率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鋼板の精整ラインの配置を説明する図である。
【図2】鋼板の搬送経路を選択するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態を図1、図2を用いて説明する。
図1は鋼板の精整ラインの配置例を説明する図である。
剪断ライン1と精整ライン12とは接続しており、剪断ライン1で剪断された鋼板は剪断ライン1を搬送されて、精整ライン12の第1搬送テーブル列2に送られてくる。なお、搬送テーブルは各々、鋼板の最大長さと最大幅を積載可能な大きさを有する。
【0014】
精整ライン12は第1搬送テーブル列2と第2搬送テーブル列8が並列配置されており、第1搬送テーブル列2から第2搬送テーブル列8への鋼板の搬送は、両テーブル列の間に渡された第1トランスファー5と第2トランスファー6とによって行われる。また、各搬送テーブル列の外側には鋼板をラインオフして仮置きする場所として、第1搬送テーブル列2側には第1仮置場4が、第2搬送テーブル列8側には第2仮置場7が設置されている。
【0015】
第1搬送テーブル列2にはNo.F01からNo.F17の17個の搬送テーブル3が配置されている。同じく、第2搬送テーブル列8にはNo.G01からNo.G23の23個の搬送テーブル3が設置されている。
【0016】
次に本発明における鋼板の搬送方法を図1、図2を用いて説明する。なお、以下は全てプロセスコンピュータを用いた自動制御で行う。
剪断ライン1から精整ライン12に送られてきた鋼板は、ライン渋滞や仮置き等が発生しない場合は、第1搬送テーブル列2の搬送テーブルNo.F17からNo.F10の方向に搬送され、第1トランスファー5を経由して第2搬送テーブル列8を搬送テーブルNo.G16からNo.G23の方向に搬送されて行くのが基本の搬送ルートである。
【0017】
本発明の鋼板の搬送方法においては、渋滞判定ゾーンと鋼板占有率という概念を用いている。
【0018】
渋滞判定ゾーンは、そのゾーンに鋼板が滞留すると後続の鋼板の搬送経路を変更する必要が生じるという鋼板搬送上重要なルートが対象となる。本発明の精整ライン12には、3箇所の渋滞判定ゾーンを設けている。第1渋滞判定ゾーン9は図1で、第1トランスファー5と第2搬送テーブル列8のNo.G16搬送テーブルからNo.G23搬送テーブルを実線で囲った範囲である。
【0019】
第2渋滞判定ゾーン10は図1で、第1搬送テーブル列2のNo.F06搬送テーブルからNo.F01搬送テーブルを破線で囲った範囲である。
【0020】
第3渋滞判定ゾーン11は図1で、第2トランスファー6と第2搬送テーブル列8のNo.G09搬送テーブルからNo.G23搬送テーブルを一点鎖線で囲った範囲である。
【0021】
鋼板占有率は搬送テーブル上にどれくらいの量の鋼板が搬送されているかを示す指標であり、例えば、第1渋滞判定ゾーン9は、第1トランスファー5(2個の搬送テーブルを有する)と第2搬送テーブル列8のNo.G16搬送テーブルからNo.G23搬送テーブルを実線で囲った範囲であるから、搬送テーブルは10個あり、10個の搬送テーブルが鋼板で占有されている場合が鋼板占有率100%であり、全く鋼板が存在しない場合が鋼板占有率0%となり、10個の搬送テーブルのうち5個の搬送テーブルが鋼板で占有されている場合が鋼板占有率50%となる。本発明は、この鋼板占有率を把握して精整ライン12における鋼板の搬送経路を制御するものである。
【0022】
鋼板占有率は、各搬送テーブルに鋼板の荷重が掛かっているか否かを荷重計で計測する手段や、ゾーン内の各搬送テーブルに鋼板が存在するか否かをCCDカメラで判定する映像処理手段を用いて検出し、算出することができる。
【0023】
鋼板占有率は時々刻々更新されていれば、鋼板が、剪断ライン1を搬送されて、精整ライン12の第1搬送テーブル列2に送られてきた段階で、各渋滞判定ゾーンにおける鋼板占有率を精整ラインプロセスコンピュータ等で判定し、当該鋼板の精整ラインにおける搬送ルートを決定することができる。
【0024】
図2を用いて、精整ライン12における鋼板搬送ルートの決定方法を説明する。
【0025】
まず、第1〜第3渋滞判定ゾーン9〜11の各ゾーンについて鋼板占有率が何%以上になったら上述した基本ルートから鋼板搬送ルートを変更するかを設定しておく。例えば、第1渋滞判定ゾーン9ではA%、第2渋滞判定ゾーン10ではB%、第3渋滞判定ゾーン11ではC%とする。このA、B、Cの数値はそれぞれのゾーンの特性や生産品種、生産時間帯によって設定を変更することが可能となっている。この設定は、オペレータが行ってもよく、プロセスコンピュータの上位に設置されるビジネスコンピュータから設定してもよい。
【0026】
例えば、鋼板占有率の設定は50%を下限とする場合、50%未満であれば搬送テーブルは渋滞していないと判断するため、鋼板搬送経路を変更したり仮置場に仮置きする必要はない。但し、50%を超える場合は渋滞していると判断し、鋼板搬送経路を変更したり仮置場に仮置きする必要が生じる。鋼板占有率の設定は、任意に可能とし、仮置場の鋼板枚数を考慮して設定する。ここで、仮置場の鋼板枚数が多い場合は、鋼板占有率の設定値を高くしてテーブル列上を鋼板で占有させ、仮置場の鋼板枚数が少ない場合は、渋滞判定ゾーンの鋼板占有率の設定値を低くして、仮置場を活用してテーブル列上の鋼板の搬送を優先させることにより精整ライン全体を安定化させることが可能となる。
【0027】
次に、鋼板の搬送経路の変更手順の例を説明する。
【0028】
ステップ1(S1)
剪断ライン1を搬送されて、精整ライン12の第1搬送テーブル列2の搬送テーブルNo.F17に鋼板が到着すると本シミュレーションを行う。
【0029】
第1渋滞判定ゾーン9の鋼板占有率がA%以上か否かを判定する。A%以上の場合はステップ3(S3)へ、A%未満の場合はステップ2(S2)に進む。
【0030】
ステップ2(S2)
鋼板占有率がA%未満の場合は、ライン渋滞の問題は生じていないので、第1トランスファーを経由して第2搬送テーブルに鋼板は搬送される。
【0031】
ステップ3(S3)
第1搬送テーブル列の後方にある第2渋滞判定ゾーン10の搬送テーブルNo.F06からNo.F01の鋼板占有率がB%以上の場合はステップ4(S4)へ、B%未満の場合はステップ5(S5)へ進む。
【0032】
ステップ4(S4)
この場合は第2搬送テーブル列に進むことはできないので第1仮置場に鋼板をラインオフする。そして、次の鋼板が搬送テーブルNo.F17に到達すると、再度ステップ1(S1)から実行する。
【0033】
ステップ5(S5)
第3渋滞判定ゾーン11にある搬送テーブルNo.G09からNo.G23及び第2トランスファーの鋼板占有率がC%以上か否かを判定する。C%以上の場合は、ステップ6(S6)へ、C%未満の場合は、ステップ7(S7)へ進む。
【0034】
ステップ6(S6)
第2搬送テーブル列へ進めないので、第2仮置場に鋼板をラインオフする。そして、次の鋼板が搬送テーブルNo.F17に到達すると、再度ステップ1(S1)を実行する。
【0035】
ステップ7(S7)
鋼板占有率がC%未満の場合は、第2搬送テーブル列は渋滞していないので、第2トランスファーを経由して第2搬送テーブル列に進むことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 剪断ライン
2 第1搬送テーブル列
3 搬送テーブル
4 第1仮置場
5 第1トランスファー
6 第2トランスファー
7 第2仮置場
8 第2搬送テーブル列
9 第1渋滞判定ゾーン
10 第2渋滞判定ゾーン
11 第3渋滞判定ゾーン
12 精整ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断後の鋼板を搬送する精整ラインであって、第1搬送テーブル列と第2搬送テーブル列が平行配置され、前記テーブル列の間に第1トランスファーと第2トランスファーが渡され、各テーブル列に対応して第1仮置場と第2仮置場を有する精整ラインにおいて、第1搬送テーブル列から第2搬送テーブル列に鋼板を搬送する際に、自動で、第1トランスファーから第2搬送テーブル列前方に設定された第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%未満の場合は第1トランスファーを経由して第2搬送テーブル列に鋼板を搬送し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上で且つ、第1搬送テーブル列の後方に設定された第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%以上の場合は第1仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第2トランスファー以降第2搬送テーブル列前方に設定された第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%以上の場合は第2仮置場に鋼板を仮置し、第1渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がA%以上、第2渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がB%未満且つ、第3渋滞判定ゾーンの鋼板占有率がC%未満の場合は第2トランスファーを経由して第2搬送テーブル列に鋼板を搬送することを特徴とする鋼板の精整ライン搬送方法。
【請求項2】
前記鋼板占有率A、B、Cをそれぞれ50〜100%の範囲で設定することを特徴とする請求項1記載の鋼板の精整ライン搬送方法。

【図2】
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【図1】
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