説明

鋼板等の切断方法および切断機用定盤装置

【課題】これまでの切断定盤装置では排気装置を用いても、被切断材周辺の開口部が多きすぎ、十分な排気が出来ないことから、これを回避するために大掛かりな設備でこれを覆い隠す必要があった。また、これらの方法を用いても、排気に関しては大幅に改善されるものの、被切断材下部にヒュームが滞留または流動するため、被切断材の裏側にそのヒュームが付着し易く、被切断材の下面を著しく汚損する問題があった。
【解決手段】問題点を解決するため、
切断機用定盤の上面に、可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷き、その上に被切断材を載置して熱切断することを特徴とする鋼板等の切断方法、
被切断鋼板を載置するための切断機用定盤において、定盤の上面に可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷くことを特徴とする切断機用定盤装置、
を提供することを手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板等を熱切断する方法およびその際に使用する切断機用定盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ切断機、レーザー切断機等を使用して被切断材である鋼材、鋼板等を熱切断する際には、被切断材を載置するとともに、切断中に発生するヒュームを含めた切断ガスを排出する手段を備えた切断定盤装置が使用される。
【0003】
これら切断定盤装置、切断定盤装置に具備される排気装置及び切断方法には、たとえば、特開平6−134573や特開平8−318367、特開2002−103032に示される装置があり、切断方法としては特開平5−305446に示される切断方法が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平6−134573の切断定盤装置や特開平8−318367の排気装置を用いても、前者では開口部が多きすぎ十分な排気が出来ないし、後者の技術では、設備が大がかりになるという問題があった。
【0005】
特開2002−103032に示される技術も排気に関しては大幅に改善されるものの、被切断材下部にヒュームが滞留または流動するため、被切断材の下側にそのヒュームが付着し易く、被切断材の下面を著しく汚損する問題があった。特開平5−305446に示される切断方法でも被切断材の下面を汚損する問題は存在する。
【0006】
本発明は上記問題点を解決する効果的な熱切断方法およびその際に使用する切断機用定盤装置を提供するもので、漏れの少ない効率的な排煙、ヒュームの排除が図れるほか被切断材に付着する汚れを防止することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題点を解決するため、
切断機用定盤の上面に、可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷き、その上に被切断材を載置して熱切断することを特徴とする鋼板等の切断方法、
被切断鋼板を載置するための切断機用定盤において、定盤の上面に可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷くことを特徴とする切断機用定盤装置、
を提供することを手段とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、載置定盤上の被切断材を熱切断機本体により熱切断する場合に、被切断材周辺を含め開口部分を概ね皆無にすることが可能であり、ヒュームを含む切断ガスを排出口から外部に効率よく排出することができ、ヒュームを含む切断ガスの漏れを無くし又は低減して熱切断作業時の作業環境を良好なものとすることができるとともに、被切断材下面にヒューム等の汚れが付着しにくい切断方法および熱切断機用切断定盤装置を提供できる。
【0009】
また、切断ガスの排出能を高めることが可能になることから、集塵機の能力を縮小することが可能になり、省エネルギー化が可能となる。
【0010】
特に、プラズマを用いた切断においては発生するヒュームの量が多いことから、被切断材の下面を汚損する。塗装等表面処理を施した被切断材には当該ヒュームが条件によってはより一層付着しやすく、また、塗装等の色合いによっては目立ちやすく外観品質を大きく損なう。本発明法によれば、熱切断する時点まで被切断材の下面はシートまたはフィルムにより、切断定盤の下方に滞留または流動するヒュームから隔離され汚損されることがない。被切断材が熱切断される部分では当該のシートまたはフィルムが切断熱により焼損または溶損するが、非延焼性の素材を用いることにより切断熱が作用した部分のみが除去されるため、開放部は最小限に抑えられ、これに伴うヒュームを含む切断ガスの漏洩をきわめて微量にとどめることが可能であり、被切断材の汚損も切断に伴う熱影響部分を大幅に上回ることはない。
【0011】
使用するシートまたはフィルムは、切断に伴い部分的に損傷するが、全体の面積に対して損傷による開口部の割合はきわめて小さい。また、切断線が集中することにより大きくシートまたはフィルムが欠落した場合には、部分的にシートまたはフィルムを重ねて覆えば簡単に補修することが出来、ランニングコストもきわめて小さく抑えることが可能である。全体的にシートまたはフィルムが損傷した場合には、切断定盤上の全面に敷設しなおす必要があるが、切断そのもののランニングコストに対しきわめて安価であり、また、切断定盤側辺にシートまたはフィルムのロールを設置しておくことにより、作業を安易に行うことが可能である。
【0012】
シートまたはフィルムは、熱切断の火炎、レーザー等のビーム、プラズマ気流等が透過すべく焼損または溶損する必要があり、その範囲は限定的であることが望ましい。また、熱により延焼すると機能を損なうため、これらを満足する必要がある。また、切断ガスの排気能を高めるべく気体遮断性と一定の強度が必要であり、たとえばポリエステルのシートまたはフィルムは上記機能のいずれにも満足する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
集塵排気装置を有する箱型の切断定盤と厚さ50ミクロン程度以上のポリエステル製のロール状フィルムを用いると、強度及び集塵性、汚れ保護に有効であり、取り扱いも容易である。
【実施例】
【0014】
厚さ75ミクロン幅1540mmのポリエステル製のロール状フィルム原反を用い、集塵排気装置を有する箱型の切断定盤の上面に2cm程度以上の重ね部分を設けて全面に敷設する。今回は図1に例示される切断装置と同様な構成を有するプラズマ切断機を用い、図2に示される架台に側壁板が配設された箱型構造の定盤に箱型内部の切断ガスを吸引排出する集塵機を設けた設備を使用した。上記構造の切断定盤には、その上面に図3に示すような位置関係にてSS400A 厚さ27mm幅1000mm長さ3000mmの厚鋼板を載置して、前記プラズマ切断機により縦350mm幅500mm中抜きφ100mmの切断部材を切り出した。切断定盤周辺からのフュームを含む切断ガスの漏れは皆無で、切断後の当該鋼板下面に汚れはまったく付着しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】発明を実施するための最良の形態を示す図である。
【図2】本発明を実施するに際しシートまたはフィルムを敷く前の定盤架台の一例を示す図である。
【図3】本発明を実施する際のシートまたはフィルムと被切断材、架台の位置関係を側面から示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 シート又はフィルム
2a,2b レール
3 NC切断機
4 被切断材
5 架台
6 起立部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機用定盤の上面に、可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷き、その上に被切断材を載置して熱切断することを特徴とする鋼板等の切断方法。
【請求項2】
被切断鋼板を載置するための切断機用定盤において、定盤の上面に可燃、非延焼性のシート又はフィルムを敷くことを特徴とする切断機用定盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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