鋼管コンクリート複合杭用鋼管、鋼管コンクリート複合杭及び杭頭結合構造
【課題】鋼管コンクリート複合杭でありながら工事現場で定着鉄筋をボルト接合できる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管1は、杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板3を有し、内端板3よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋23をボルト接合するためのボルト穴5が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とするものである。
【解決手段】本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管1は、杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板3を有し、内端板3よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋23をボルト接合するためのボルト穴5が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管コンクリート複合杭用鋼管、該鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いた鋼管コンクリート複合杭、該鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造に関する。
なお、杭と結合される鉄筋コンクリート構造物とは、杭と直接結合されるものが鉄筋コンクリート造であることを意味しており、その上部の構造物まで鉄筋コンクリートであることを意味するものではない。
【背景技術】
【0002】
鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物を結合する杭頭結合構造の従来例として、例えば図12に示されるように、鋼管コンクリート複合杭51の杭頭部内周部に中詰め補強筋53を配置して、該中詰め補強筋53を介して基礎スラブ55と杭頭部を結合するという道路橋示方書に方法Bとして示された杭頭結合方法がある。しかし、この方法では杭本体の強度に対して、十分な杭頭結合部の強度を得ることは難しく、結合部の強度不足により基礎構造全体が不安定となってしまう懸念がある。
【0003】
また、道路橋示方書に記載の方法Bを強化した杭頭結合構造として、図13に示されるような、鋼管コンクリート複合杭51の杭頭外周に定着鉄筋57を現場溶接する方法があるが、この方法は建設現場において鉄筋を鋼管コンクリート複合杭51の鋼管部に溶接する作業を行うことから、雨天や強風などの悪天候時作業や溶接技術水準の差異により、溶接部の強度や耐久性が損なわれる恐れがある。
【0004】
現場作業性の向上や品質のバラツキを抑える方法として、定着鉄筋57を杭頭部にボルト接合可能にした「鉄筋の結合金具」が特許文献1に提案されている。特許文献1に提案された鉄筋の結合金具59は、図14に示すように、一端側が定着鉄筋57の端部を挿入できる筒状になっており、他端側がボルト穴61を有する板状部63となっている。特許文献1においては、このような鉄筋の結合金具59を用いることで、図14に示すように、鋼管杭65の杭頭部に定着鉄筋57をボルト67及びナット69によって接合できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-2492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行文献1に記載のものは、工事現場において、杭頭部に結合金具59を介して定着鉄筋57をボルト・ナットで接合するものである。そのため、杭頭部にボルト67を相通することができ、かつ相通したボルト67に対してナット69で固定できることが必要である。
しかしながら、鋼管内部にコンクリートを充填した鋼管コンクリート複合杭の場合、内部コンクリートが存在するため、工事現場においてボルトを相通することができず、それ故にボルト接合ができない。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼管コンクリート複合杭でありながら工事現場で定着鉄筋をボルト接合できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用鋼管は、杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板を有し、該内端板よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
(2)本発明に係る鋼管コンクリート複合杭は、上記(1)記載の鋼管コンクリート複合杭用鋼管の内部であって、前記内端板よりも下方側にコンクリートを充填してなることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものであって、前記鋼管コンクリート複合杭は、コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した外殻鋼管付きコンクリート杭であることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、鋼管の先端部に鋼管の形状を保持する形状保持部材を有することを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明に係る杭頭結合構造は、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを定着鉄筋を介して結合する杭頭結合構造であって、前記定着鉄筋の一端側にボルトを挿通できる挿通孔を有する接合板を固着し、該接合板の挿通孔と前記鋼管コンクリート複合杭の杭頭部に形成したボルト穴に接合用ボルトを挿通してボルト接合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用鋼管は、鋼管の杭頭部となる端部に杭頭部の外側に設ける定着鉄筋をボルト接合するためのボルト接合部を備えてなるので、本発明の鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いて鋼管コンクリート複合杭を製造すれば、鋼管コンクリート複合杭でありながら、従来不可能であった定着鉄筋のボルト接合が可能なものとなり、杭頭結合構造の施工に際して、従来の現場溶接による定着鉄筋の取り付け作業を不要にでき、その結果、施工性、品質信頼性の高い杭頭結合構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の説明図であって、鋼管における杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の他の態様の説明図であって、鋼管における杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図3】図2に示した鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の平面図である。
【図4】図2に示した鋼管コンクリート複合杭用の鋼管における形状保持部材の他の態様の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭の説明図であって、杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭の他の態様の説明図であって、杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】従来例の説明図である。
【図14】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管1は、図1に示すように、杭頭部となる端部の内側に内端板3を有し、該内端板3よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴5が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなるものである。
ボルト穴5は、鉄筋径やボルト径に応じて、鋼管1の周囲に所定のピッチ、例えば80mm〜400mm程度のピッチで設けられる。
実施の形態2で説明するように鋼管1にコンクリートを注入して遠心力成形する場合、内端板3は、鋼管1の支持部として機能する。なお、内端板3には、コンクリート充填が可能なように開口部が設けられている(図示なし)。
【0016】
上記のように構成された本実施の形態の鋼管1は、実施の形態2で説明するように、鋼管内部における端板よりも下方部分にコンクリートが充填され、鋼管コンクリート複合杭11となる(図5参照)。
本実施の形態の鋼管1を用いて鋼管コンクリート複合杭を製造すれば当該鋼管コンクリート複合杭には、杭頭部となる鋼管端部にボルト接合可能なボルト穴5が形成されているので、鋼管コンクリート複合杭でありながら、従来不可能であった定着鉄筋のボルト接合が可能となる。
【0017】
なお、鋼管1を運搬する際や、鋼管1にコンクリートを充填して鋼管コンクリート複合杭とした場合において、該杭を運搬する際や地中に打設する際、内端板3の上方のコンクリート非充填部位(鋼管のみで構成される部位)の損傷を防止し、杭の形状保持をするため、図2、図3に示すように、鋼管1の先端部にリング状板からなる形状保持部材7を設置するようにしてもよい。
形状保持部材7の形状は特に限定されるものではなく、図4に示すように、十字形状のものであってもよい。もっとも、鋼管1の端部に形成したボルト穴5を用いて定着鉄筋のボルト接合作業をする必要があるので、作業に必要な開口を設ける必要はある。
【0018】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭11は、実施の形態1で説明した鋼管1の内部にコンクリートを充填してなるものであり、その一例が図5に示されている。図5において、図1と同一部分には同一の符号を付してある。図6〜図11において同じ。
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭11は、鋼管1における内端板3の下方側にコンクリートを注入して遠心成形することによって、鋼管1の内面に所定の厚みのコンクリート層15を形成した遠心力成形の外殻鋼管付コンクリート杭としたものである。
【0019】
上記のように構成された本実施の形態の鋼管コンクリート複合杭11においては、内端板3の先端側にはボルト穴5が形成されているので、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、定着鉄筋をボルト接合可能な構造となっている。それ故に、定着鉄筋をボルト接合することに伴う種々の効果、例えば現場溶接が不要となり、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生せず、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」を実現できる。
【0020】
なお、図5には本発明の鋼管コンクリート複合杭の一例として遠心力成形の外殻鋼管付コンクリート杭を示したが、本発明の鋼管コンクリート複合杭はこれに限られるものではなく、図6に示す鋼管コンクリート複合杭12のように、鋼管1の内部に中実になるようにコンクリート17を充填したものであってもよい。
【0021】
[実施の形態3]
本実施の形態は杭頭結合構造に関するものである。図7に基づいて本発明の実施の形態3を説明する。
本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造19は、図7に示すように、鋼管コンクリート複合杭11と鉄筋コンクリート構造物である基礎梁21とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管コンクリート複合杭11の杭頭部にボルト接合された定着鉄筋23を備えたものである。
以下、詳細に説明する。
【0022】
<鋼管コンクリート複合杭>
鋼管コンクリート複合杭11は、鋼管端部に周方向に所定間隔で形成した複数のボルト穴5と、ボルト穴5の下方側に設置した内端板3とを有する鋼管1の内端板3よりも下方側の鋼管内部にコンクリートを注入して遠心成形した外殻鋼管付コンクリート杭である。
【0023】
<基礎梁>
基礎梁21は、本発明の鉄筋コンクリート構造物に相当するものである。
なお、本発明の鉄筋コンクリート構造物は、鋼管コンクリート複合杭11と直接結合する部分を指している。したがって、鋼管コンクリート複合杭11と直接結合される部分が鉄筋コンクリート構造物であれば、その上部構造物が例えば鉄骨造などの鉄筋コンクリート構造物ではない構造物であってもよい。
【0024】
<定着鉄筋>
定着鉄筋23はその下端部が杭頭部にボルト接合されている。ボルト接合を可能にするため、定着鉄筋23の下端部に接合用ボルト25を挿通するための挿通孔27を有する接合板29が設けられている。そして、接合板29に設けた挿通孔27に接合用ボルト25をボルト穴5を介して杭頭部の外側から内側に向って挿入し、杭頭部内面でナット31に螺合させて定着している。
【0025】
上記のように構成された本実施の形態においては、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、定着鉄筋23をボルト接合した構造であり、現場溶接を用いていないことから、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生していないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」になっている。
【0026】
なお、本実施の形態の杭頭結合構造を構築するにあたり、設計要素となる(i)「杭(鋼管1)および鋼管1の杭頭部に設けたボルト穴5の強度」、(ii)「接合板29および接合板29に設けた挿通孔27の強度」、(iii)「接合用ボルト25および鋼管内面側に設置するナット31の定着強度」、(iv)「定着鉄筋23の引張り強度」の4つの部位のうち,(iv)「定着鉄筋23の引張り強度」が最も小さくなるよう設計することが、杭頭結合部の性能安定上望ましい。
【0027】
次に上記のように構成された杭頭結合構造19の施工方法について説明する。
鋼管コンクリート複合杭11を地盤に打設する。鋼管コンクリート複合杭11を打設する際にボルト穴5が塞がれないようにシール部材を設置するようにしてもよい。
杭が打設されると、定着鉄筋23をボルト接合する。定着鉄筋23のボルト接合は、定着鉄筋23の下端に設けた接合板29の挿通孔27を杭頭部のボルト穴5に位置合わせし、その状態で接合用ボルト25を杭頭部の外側から内側に向って挿入し、ナット31で定着する。
杭頭部の全周に亘って定着鉄筋23をボルト接合した後、定着鉄筋23を囲むように型枠を設置して基礎梁用のコンクリートを打設する。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態の施工方法においては、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、工事現場で定着鉄筋23を溶接することなく定着鉄筋23を杭頭部に設置でき、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生しないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」を実現できる。
【0029】
なお、上記の説明では、鋼管コンクリート複合杭11を打設後に定着鉄筋23をボルト接合する例を示したが、定着鉄筋23を予め杭頭部にボルト接合した後、定着鉄筋23がボルト接合された鋼管コンクリート複合杭11を地盤に打設するようにしてもよい。
【0030】
また、上記の実施の形態3では、鋼管コンクリート複合杭として外殻鋼管付コンクリート杭を用いた例を示したが、杭頭部にボルト穴5を有する鋼管コンクリート複合杭であれば、鋼管内にコンクリートを中実になるように充填してなる鋼管コンクリート複合杭12(図6参照)を用いても同様の構造が実現できることは言うまでもない(図8参照)。
また、杭頭部の先端に形状保持部材7を設置したものであっても、図9に示すように、同様の構造が実現できる。
【0031】
実施の形態3で示した杭頭結合構造19は、鋼管コンクリート複合杭を対象としているが、鋼管コンクリート複合杭構造の合理化を追及した場合、杭の鋼管部を薄肉化することが最適構造となる場合が多い。そのため、実施の形態3で示したように定着鉄筋23をボルト・ナットで接合する構造にすると、薄肉化した杭頭部の鋼管部が弱点となる可能性がある。
そこで、この弱点を補って薄肉化した杭頭部の鋼管部が破壊すること防止するため、図10に示すように、杭頭部内周に、接合用の接合ボルトが挿通できるボルト挿通孔33を設けた補強バンド35を巻きつけて補強するようにしてもよい。なお、補強バンド35と杭の鋼管部は溶接や接着材などの何らかの方法で固定しておくのが望ましい。補強バンド35は杭頭部の内周部を一周するように連続するものであるが、そのような補強バンド35に代えて杭頭部に設けた各ボルト穴5の周辺部を各周辺部ごとに補強する例えば略矩形状の補強部材であってもよい。
補強バンドまたは補強部材は、図11に示すように、鋼管部の外周部に設けるようにしてもよい。
図10、図11には、接合用ボルト25を杭頭部の内側から外側に向って挿入し、ナット31で定着する例を示したが、補強バンド35を設ける場合においても、図7〜図9に示したように接合用ボルト25を杭頭部の外側から内側に向って挿入し、ナット31で定着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 鋼管
3 内端板
5 ボルト穴
7 形状保持部材
11、12 鋼管コンクリート複合杭
15 コンクリート層
17 コンクリート
19 杭頭結合構造
21 基礎梁
23 定着鉄筋
25 接合用ボルト
27 挿通孔
29 接合板
31 ナット
33 ボルト挿通孔
35 補強バンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管コンクリート複合杭用鋼管、該鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いた鋼管コンクリート複合杭、該鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造に関する。
なお、杭と結合される鉄筋コンクリート構造物とは、杭と直接結合されるものが鉄筋コンクリート造であることを意味しており、その上部の構造物まで鉄筋コンクリートであることを意味するものではない。
【背景技術】
【0002】
鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物を結合する杭頭結合構造の従来例として、例えば図12に示されるように、鋼管コンクリート複合杭51の杭頭部内周部に中詰め補強筋53を配置して、該中詰め補強筋53を介して基礎スラブ55と杭頭部を結合するという道路橋示方書に方法Bとして示された杭頭結合方法がある。しかし、この方法では杭本体の強度に対して、十分な杭頭結合部の強度を得ることは難しく、結合部の強度不足により基礎構造全体が不安定となってしまう懸念がある。
【0003】
また、道路橋示方書に記載の方法Bを強化した杭頭結合構造として、図13に示されるような、鋼管コンクリート複合杭51の杭頭外周に定着鉄筋57を現場溶接する方法があるが、この方法は建設現場において鉄筋を鋼管コンクリート複合杭51の鋼管部に溶接する作業を行うことから、雨天や強風などの悪天候時作業や溶接技術水準の差異により、溶接部の強度や耐久性が損なわれる恐れがある。
【0004】
現場作業性の向上や品質のバラツキを抑える方法として、定着鉄筋57を杭頭部にボルト接合可能にした「鉄筋の結合金具」が特許文献1に提案されている。特許文献1に提案された鉄筋の結合金具59は、図14に示すように、一端側が定着鉄筋57の端部を挿入できる筒状になっており、他端側がボルト穴61を有する板状部63となっている。特許文献1においては、このような鉄筋の結合金具59を用いることで、図14に示すように、鋼管杭65の杭頭部に定着鉄筋57をボルト67及びナット69によって接合できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-2492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行文献1に記載のものは、工事現場において、杭頭部に結合金具59を介して定着鉄筋57をボルト・ナットで接合するものである。そのため、杭頭部にボルト67を相通することができ、かつ相通したボルト67に対してナット69で固定できることが必要である。
しかしながら、鋼管内部にコンクリートを充填した鋼管コンクリート複合杭の場合、内部コンクリートが存在するため、工事現場においてボルトを相通することができず、それ故にボルト接合ができない。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼管コンクリート複合杭でありながら工事現場で定着鉄筋をボルト接合できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用鋼管は、杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板を有し、該内端板よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
(2)本発明に係る鋼管コンクリート複合杭は、上記(1)記載の鋼管コンクリート複合杭用鋼管の内部であって、前記内端板よりも下方側にコンクリートを充填してなることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものであって、前記鋼管コンクリート複合杭は、コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した外殻鋼管付きコンクリート杭であることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、鋼管の先端部に鋼管の形状を保持する形状保持部材を有することを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明に係る杭頭結合構造は、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを定着鉄筋を介して結合する杭頭結合構造であって、前記定着鉄筋の一端側にボルトを挿通できる挿通孔を有する接合板を固着し、該接合板の挿通孔と前記鋼管コンクリート複合杭の杭頭部に形成したボルト穴に接合用ボルトを挿通してボルト接合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鋼管コンクリート複合杭用鋼管は、鋼管の杭頭部となる端部に杭頭部の外側に設ける定着鉄筋をボルト接合するためのボルト接合部を備えてなるので、本発明の鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いて鋼管コンクリート複合杭を製造すれば、鋼管コンクリート複合杭でありながら、従来不可能であった定着鉄筋のボルト接合が可能なものとなり、杭頭結合構造の施工に際して、従来の現場溶接による定着鉄筋の取り付け作業を不要にでき、その結果、施工性、品質信頼性の高い杭頭結合構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の説明図であって、鋼管における杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の他の態様の説明図であって、鋼管における杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図3】図2に示した鋼管コンクリート複合杭用の鋼管の平面図である。
【図4】図2に示した鋼管コンクリート複合杭用の鋼管における形状保持部材の他の態様の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭の説明図であって、杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭の他の態様の説明図であって、杭頭部側の端部の断面を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】従来例の説明図である。
【図14】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭用の鋼管1は、図1に示すように、杭頭部となる端部の内側に内端板3を有し、該内端板3よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴5が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなるものである。
ボルト穴5は、鉄筋径やボルト径に応じて、鋼管1の周囲に所定のピッチ、例えば80mm〜400mm程度のピッチで設けられる。
実施の形態2で説明するように鋼管1にコンクリートを注入して遠心力成形する場合、内端板3は、鋼管1の支持部として機能する。なお、内端板3には、コンクリート充填が可能なように開口部が設けられている(図示なし)。
【0016】
上記のように構成された本実施の形態の鋼管1は、実施の形態2で説明するように、鋼管内部における端板よりも下方部分にコンクリートが充填され、鋼管コンクリート複合杭11となる(図5参照)。
本実施の形態の鋼管1を用いて鋼管コンクリート複合杭を製造すれば当該鋼管コンクリート複合杭には、杭頭部となる鋼管端部にボルト接合可能なボルト穴5が形成されているので、鋼管コンクリート複合杭でありながら、従来不可能であった定着鉄筋のボルト接合が可能となる。
【0017】
なお、鋼管1を運搬する際や、鋼管1にコンクリートを充填して鋼管コンクリート複合杭とした場合において、該杭を運搬する際や地中に打設する際、内端板3の上方のコンクリート非充填部位(鋼管のみで構成される部位)の損傷を防止し、杭の形状保持をするため、図2、図3に示すように、鋼管1の先端部にリング状板からなる形状保持部材7を設置するようにしてもよい。
形状保持部材7の形状は特に限定されるものではなく、図4に示すように、十字形状のものであってもよい。もっとも、鋼管1の端部に形成したボルト穴5を用いて定着鉄筋のボルト接合作業をする必要があるので、作業に必要な開口を設ける必要はある。
【0018】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭11は、実施の形態1で説明した鋼管1の内部にコンクリートを充填してなるものであり、その一例が図5に示されている。図5において、図1と同一部分には同一の符号を付してある。図6〜図11において同じ。
本実施の形態に係る鋼管コンクリート複合杭11は、鋼管1における内端板3の下方側にコンクリートを注入して遠心成形することによって、鋼管1の内面に所定の厚みのコンクリート層15を形成した遠心力成形の外殻鋼管付コンクリート杭としたものである。
【0019】
上記のように構成された本実施の形態の鋼管コンクリート複合杭11においては、内端板3の先端側にはボルト穴5が形成されているので、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、定着鉄筋をボルト接合可能な構造となっている。それ故に、定着鉄筋をボルト接合することに伴う種々の効果、例えば現場溶接が不要となり、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生せず、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」を実現できる。
【0020】
なお、図5には本発明の鋼管コンクリート複合杭の一例として遠心力成形の外殻鋼管付コンクリート杭を示したが、本発明の鋼管コンクリート複合杭はこれに限られるものではなく、図6に示す鋼管コンクリート複合杭12のように、鋼管1の内部に中実になるようにコンクリート17を充填したものであってもよい。
【0021】
[実施の形態3]
本実施の形態は杭頭結合構造に関するものである。図7に基づいて本発明の実施の形態3を説明する。
本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造19は、図7に示すように、鋼管コンクリート複合杭11と鉄筋コンクリート構造物である基礎梁21とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管コンクリート複合杭11の杭頭部にボルト接合された定着鉄筋23を備えたものである。
以下、詳細に説明する。
【0022】
<鋼管コンクリート複合杭>
鋼管コンクリート複合杭11は、鋼管端部に周方向に所定間隔で形成した複数のボルト穴5と、ボルト穴5の下方側に設置した内端板3とを有する鋼管1の内端板3よりも下方側の鋼管内部にコンクリートを注入して遠心成形した外殻鋼管付コンクリート杭である。
【0023】
<基礎梁>
基礎梁21は、本発明の鉄筋コンクリート構造物に相当するものである。
なお、本発明の鉄筋コンクリート構造物は、鋼管コンクリート複合杭11と直接結合する部分を指している。したがって、鋼管コンクリート複合杭11と直接結合される部分が鉄筋コンクリート構造物であれば、その上部構造物が例えば鉄骨造などの鉄筋コンクリート構造物ではない構造物であってもよい。
【0024】
<定着鉄筋>
定着鉄筋23はその下端部が杭頭部にボルト接合されている。ボルト接合を可能にするため、定着鉄筋23の下端部に接合用ボルト25を挿通するための挿通孔27を有する接合板29が設けられている。そして、接合板29に設けた挿通孔27に接合用ボルト25をボルト穴5を介して杭頭部の外側から内側に向って挿入し、杭頭部内面でナット31に螺合させて定着している。
【0025】
上記のように構成された本実施の形態においては、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、定着鉄筋23をボルト接合した構造であり、現場溶接を用いていないことから、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生していないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」になっている。
【0026】
なお、本実施の形態の杭頭結合構造を構築するにあたり、設計要素となる(i)「杭(鋼管1)および鋼管1の杭頭部に設けたボルト穴5の強度」、(ii)「接合板29および接合板29に設けた挿通孔27の強度」、(iii)「接合用ボルト25および鋼管内面側に設置するナット31の定着強度」、(iv)「定着鉄筋23の引張り強度」の4つの部位のうち,(iv)「定着鉄筋23の引張り強度」が最も小さくなるよう設計することが、杭頭結合部の性能安定上望ましい。
【0027】
次に上記のように構成された杭頭結合構造19の施工方法について説明する。
鋼管コンクリート複合杭11を地盤に打設する。鋼管コンクリート複合杭11を打設する際にボルト穴5が塞がれないようにシール部材を設置するようにしてもよい。
杭が打設されると、定着鉄筋23をボルト接合する。定着鉄筋23のボルト接合は、定着鉄筋23の下端に設けた接合板29の挿通孔27を杭頭部のボルト穴5に位置合わせし、その状態で接合用ボルト25を杭頭部の外側から内側に向って挿入し、ナット31で定着する。
杭頭部の全周に亘って定着鉄筋23をボルト接合した後、定着鉄筋23を囲むように型枠を設置して基礎梁用のコンクリートを打設する。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態の施工方法においては、内部にコンクリートが充填された鋼管コンクリート複合杭でありながら、工事現場で定着鉄筋23を溶接することなく定着鉄筋23を杭頭部に設置でき、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生しないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」を実現できる。
【0029】
なお、上記の説明では、鋼管コンクリート複合杭11を打設後に定着鉄筋23をボルト接合する例を示したが、定着鉄筋23を予め杭頭部にボルト接合した後、定着鉄筋23がボルト接合された鋼管コンクリート複合杭11を地盤に打設するようにしてもよい。
【0030】
また、上記の実施の形態3では、鋼管コンクリート複合杭として外殻鋼管付コンクリート杭を用いた例を示したが、杭頭部にボルト穴5を有する鋼管コンクリート複合杭であれば、鋼管内にコンクリートを中実になるように充填してなる鋼管コンクリート複合杭12(図6参照)を用いても同様の構造が実現できることは言うまでもない(図8参照)。
また、杭頭部の先端に形状保持部材7を設置したものであっても、図9に示すように、同様の構造が実現できる。
【0031】
実施の形態3で示した杭頭結合構造19は、鋼管コンクリート複合杭を対象としているが、鋼管コンクリート複合杭構造の合理化を追及した場合、杭の鋼管部を薄肉化することが最適構造となる場合が多い。そのため、実施の形態3で示したように定着鉄筋23をボルト・ナットで接合する構造にすると、薄肉化した杭頭部の鋼管部が弱点となる可能性がある。
そこで、この弱点を補って薄肉化した杭頭部の鋼管部が破壊すること防止するため、図10に示すように、杭頭部内周に、接合用の接合ボルトが挿通できるボルト挿通孔33を設けた補強バンド35を巻きつけて補強するようにしてもよい。なお、補強バンド35と杭の鋼管部は溶接や接着材などの何らかの方法で固定しておくのが望ましい。補強バンド35は杭頭部の内周部を一周するように連続するものであるが、そのような補強バンド35に代えて杭頭部に設けた各ボルト穴5の周辺部を各周辺部ごとに補強する例えば略矩形状の補強部材であってもよい。
補強バンドまたは補強部材は、図11に示すように、鋼管部の外周部に設けるようにしてもよい。
図10、図11には、接合用ボルト25を杭頭部の内側から外側に向って挿入し、ナット31で定着する例を示したが、補強バンド35を設ける場合においても、図7〜図9に示したように接合用ボルト25を杭頭部の外側から内側に向って挿入し、ナット31で定着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 鋼管
3 内端板
5 ボルト穴
7 形状保持部材
11、12 鋼管コンクリート複合杭
15 コンクリート層
17 コンクリート
19 杭頭結合構造
21 基礎梁
23 定着鉄筋
25 接合用ボルト
27 挿通孔
29 接合板
31 ナット
33 ボルト挿通孔
35 補強バンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板を有し、該内端板よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭用鋼管。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管コンクリート複合杭用鋼管の内部であって、前記内端板よりも下方側にコンクリートを充填してなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭。
【請求項3】
前記鋼管コンクリート複合杭は、コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した外殻鋼管付きコンクリート杭であることを特徴とする請求項2記載の鋼管コンクリート複合杭。
【請求項4】
鋼管の先端部に鋼管の形状を保持する形状保持部材を有することを特徴とする請求項2又は3記載の鋼管コンクリート複合杭。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを定着鉄筋を介して結合する杭頭結合構造であって、
前記定着鉄筋の一端側にボルトを挿通できる挿通孔を有する接合板を固着し、該接合板の挿通孔と前記鋼管コンクリート複合杭の杭頭部に形成したボルト穴に接合用ボルトを挿通してボルト接合してなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いた杭頭結合構造。
【請求項1】
杭頭部となる鋼管端部の内側に内端板を有し、該内端板よりも先端側の鋼管部に定着鉄筋をボルト接合するためのボルト穴が鋼管周方向に所定間隔で複数形成されてなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭用鋼管。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管コンクリート複合杭用鋼管の内部であって、前記内端板よりも下方側にコンクリートを充填してなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭。
【請求項3】
前記鋼管コンクリート複合杭は、コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した外殻鋼管付きコンクリート杭であることを特徴とする請求項2記載の鋼管コンクリート複合杭。
【請求項4】
鋼管の先端部に鋼管の形状を保持する形状保持部材を有することを特徴とする請求項2又は3記載の鋼管コンクリート複合杭。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の鋼管コンクリート複合杭と鉄筋コンクリート構造物とを定着鉄筋を介して結合する杭頭結合構造であって、
前記定着鉄筋の一端側にボルトを挿通できる挿通孔を有する接合板を固着し、該接合板の挿通孔と前記鋼管コンクリート複合杭の杭頭部に形成したボルト穴に接合用ボルトを挿通してボルト接合してなることを特徴とする鋼管コンクリート複合杭用鋼管を用いた杭頭結合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−47250(P2011−47250A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199036(P2009−199036)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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