鋼管杭及びその施工方法
【課題】鋼管杭およびその施工方法を提供すること。
【解決手段】先端が開口している中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3を有し、鋼管杭の先端に掘削ビット6を備えている。テーパー状部分4の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率が0.3〜5.5である。鋼管杭1の外径が一定の定常部の杭外径(D1)とこれに対する鋼管杭先端の外径D2との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされている。前記のような鋼管杭1を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって硬質地盤を含む地盤に回転圧入する。
【解決手段】先端が開口している中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3を有し、鋼管杭の先端に掘削ビット6を備えている。テーパー状部分4の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率が0.3〜5.5である。鋼管杭1の外径が一定の定常部の杭外径(D1)とこれに対する鋼管杭先端の外径D2との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされている。前記のような鋼管杭1を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって硬質地盤を含む地盤に回転圧入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾構造物あるいは橋梁の基礎や建物の基礎等、土木・建築分野においてに使用される鋼管杭及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭外周面の摩擦力を期待する摩擦杭であって、杭の周面摩擦力を高める手段として、杭の先端部外周面をテーパー状外周面とすること、または杭全長の外周面をテーパー状外周面とすることは知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、テーパー状外周面を有するテーパー状杭を格子状に打ち込んで地盤表層部を締め固めて液状化防止を図るようにすることも知られている(例えば、特許文献3参照)
また、負の周面摩擦力を除去するためにテーパー状杭を地盤に貫入させることも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
また、杭の先端部に、円錐状のコーンを設けて先端が閉塞した閉端杭とすると共に、テーパー状外周面とする形態も知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
前記従来のテーパー杭は、杭周面での高い摩擦力を獲得することを目的とし、杭先端支持力の獲得や、杭施工時における抵抗となる先端閉塞を低減することを目的とする技術ではない。
【0005】
なお、場所打ち鉄筋コンクリート杭や既成コンクリート杭を埋設するために、先端側をテーパー状外周面およびテーパー状内周面としたケーシングを用いることも知られている(例えば、特許文献6,7参照)。
【0006】
前記従来のテーパー状外周面およびテーパー状内周面としたケーシングは、杭周面摩擦力を大きくして杭の垂直荷重支持力を増大するとともに、掘削残土を低減することを目的としており、杭先端支持力の獲得や杭施工時の抵抗を低減することを目的とするものではなく、杭施工時における抵抗となる先端閉塞を低減することを目的とする技術ではない。
【0007】
ところで、鋼管杭には、その先端が閉塞している閉端杭と、先端が開口している開端杭とがあり、本発明は、杭先端が開口している開端杭に属する。
また、鋼管杭には、支持層まで打ち込まないで周面摩擦力を主に発揮させて支持力を期待する摩擦杭と、支持層に打ち込んで杭先端部での支持力を主に発揮させて支持力を期待する支持杭とがあり、本発明は、鋼管杭を支持層に打ち込んで杭先端部での支持力を発揮させて支持力を期待する支持杭に属する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−3465号公報
【特許文献2】特開2007−327280号公報
【特許文献3】特開2008−190116号公報
【特許文献4】特開昭57−81526号公報
【特許文献5】特開平8−284160号公報
【特許文献6】特開2008−297752号公報
【特許文献7】特開2005−248439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
杭を回転圧入施工によって地中に貫入させる際、貫入深度が大きくなるに従い、管内閉塞土の抵抗が大きく発生するため、高い押込み力・回転力が必要となる。ここで、押込み力とは、杭を地中の貫入方向に押し下げるために加える力を指す。また、回転力は、杭を回すために加える力を指す。
杭を回転圧入するための押込み力を確保するためには、反力が必要となり、反力を確保するためには、回転圧入施工機にカウンタウェイトを設置したり、アンカー等を設けたりすることが必要となるが、これらの輸送費や作業費、材料費などが必要となり、杭の施工コストが増加することになる。また、反力が大きくなると、回転圧入施工機も大能力化・大型化することになるので、杭施工コストを一段と増加させることになる。
さらに、杭の推進力を獲得するために、杭に推進用の螺旋翼あるいは羽根などの治具を取付けると、加工費および取付け費用や材料費が掛かることに加え、軟弱地盤の施工においては、逆に、螺旋翼あるいは羽根の間隔で、施工速度が制限されてしまうため、施工速度の低下に繋がる。
また、既成杭を支持層に貫入後、より高い支持力を獲得するために、既成杭の先端を確実に閉塞させる工法があるが、そのためには、杭先端の土を完全に排除した後、コンクリートを打設したり、杭先端にセメントミルクを注入して根固め部を造成したりする必要があった。
【0010】
また、先端が開口している杭であってその杭先端部に掘削ビットを設けたビット付き開端杭では、回転圧入施工時には貫入量に伴い、管内に土が流入してきて堆積し、杭先端部の閉塞度合が高まり、杭圧入時の抵抗の原因となる。前記の杭先端の閉塞は、管内に流入した砂や粘土や石といった地盤を構成する材料(土)と、杭内側の内周面との摩擦によって生じる。
特に、杭回転圧入施工時に問題となるのは、杭を地中の貫入方向に押し込む押込み力であり、これは、杭回転圧入施工時においては、反力を、通常、錘や施工用の機械自体の自重で得るため、反力を大きくするためには、錘が多く必要になり不経済である。回転方向の力は、反力を反力獲得用の棒状の治具等で他の重機などに当てるなどして取ることができるため、問題になることは少ない。
したがって、回転圧入施工により杭を施工する場合には、杭を地中の貫入方向に押し込む押込み力を小さくすることができると、杭一本当たりの施工コストの低減を図ることができ、多数本地盤に回転圧入される杭のトータルの施工コストを格段に低減する上で重要になる。
本発明は前記の課題を有利に解消した、鋼管杭およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の鋼管杭においては、先端が開口してい中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の鋼管杭において、鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の鋼管杭において、テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であることを特徴とする。
また、第4発明では、第1発明〜第3発明からのいずれかの鋼管杭において、テーパー状部分先端の外径(D2)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされていることを特徴とする
。
第5発明では、第1発明〜第4発明からのいずれかの鋼管杭において、テーパー状部分先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたことを特徴とする。
第6発明の鋼管杭の施工方法においては、第1発明〜第5発明の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入することを特徴とする。
また、第7発明では、第6発明の鋼管杭の施工方法において、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に回転圧入することを特徴とする。
第8発明の鋼管杭の施工方法では、第6発明または第7発明の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によると、先端が開口している中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えているので、前記テーパー状部分により、杭内周面の摩擦による抵抗を軽減して施工性の向上を図ることができ、また、前記テーパー状部分により、杭底面の投影面積が増加し、地盤に対して抵抗するため、容易に高い支持力を得ることができる。また、地盤の拘束圧の高い深い支持層や硬い岩盤層などでは、テーパー状部分の底面投影面積の部分で高い圧縮荷重を負担できるため、通常のストレートな開端杭よりも高い支持力を発揮することができる。
通常、打ち込み杭などで、杭先端を閉塞させるためには、一定以上支持層に杭を貫入させる必要があるが、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭では、小さい貫入量でも、支持力の獲得が可能であり、また施工時間の短縮などが可能である等の効果が得られる。
第2発明によると、第1発明の鋼管杭において、鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されているので、ストレートな鋼管杭に比べて、回転圧入鋼管杭の平面外径の小型化を図ることができ、掘削外径が小さくなる分、掘削量が少なく、および施工性を向上させることができる効果が得られる。
第3発明によると、第1発明または第2発明の鋼管杭において、テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であるので、軟弱地盤においては、ストレートな鋼管杭に比べて、杭内周面の摩擦による抵抗を軽減して施工性の向上を図ることができ、支持層においては、少ない貫入量で高い支持力を発揮することができる効果が得られる。
第4発明によると、第1発明〜第3発明からのいずれかの鋼管杭において、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)とこれに対する鋼管杭先端の外径(D2)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされているので、ストレートな鋼管杭を施工する場合に比べて、回転圧入施工機におけるカウンタウェイトを少なくしたり、杭施工機械の小型化を図ることができると共に中間層における施工性の向上を図り、また支持層における貫入量の低減を図りながら支持力の増大を図ることが可能な先端テーパー状部分付きの鋼管杭とすることができる効果が得られる。
第5発明によると、第1発明〜第4発明からのいずれかの鋼管杭において、鋼管杭先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたので、先端地盤を掘削しながら効率よく施工することが可能な鋼管杭とすることができる効果が得られる。
第6発明によると、第1発明〜第5発明の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入するので、先端部にテーパー状部分および掘削ビットを有する鋼管杭を用いて、施工コストを低減して施工することができ、また、ストレートな杭に比べて、支持層に対する貫入量が少なくても、高い支持力を有する基礎杭を施工性よく、低コストで施工することができる効果が得られる。
第7発明によると、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に
回転圧入するので、硬質地盤を含む地盤であっても、低コストで施工することができ、また、硬質地盤の支持層に貫入させる場合には、ストレートな杭に比べて、支持層に対する貫入量が少なくても、高い支持力を有する基礎杭を施工することができる等の効果が得られる。
第8発明によると、第6発明または第7発明の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようしたので、管内周面摩擦を低減しながら効率よく施工することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)はa−a断面図、(d)は(b)のb−b矢視図である。
【図2】本発明の第2実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のc−c断面図、(d)は(b)のd−d断面図である。
【図3】回転圧入施工機により、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を地盤に回転圧入している状態を示す正面図である。
【図4】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を用いて、地盤に回転圧入する場合の土の流れを示す説明図である。
【図5】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を支持層に回転圧入した状態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を支持層へ圧入した場合の圧入深さと、管内土の高さと、先端テーパー状部分付近の寸法との関係を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭と比較例としてのストレート杭について、杭の閉塞断面積あたりの押し込み力と、杭径に対する貫入量の比との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭と比較例としてのストレート杭について、杭径に対する先端沈下量の比と、杭の先端荷重度との関係を示すグラフである。
【図9】杭外径に対するテーパー状部分の長さの比と、先端テーパー状部分付き鋼管杭の必要押し込み力と、ストレート杭の必要押し込み力との比率である必要押し込み力比率との関係を示すグラフである。
【図10】テーパー状部分の縮径率(D2/D1)と必要押し込み力比率との関係を示すグラフである。
【図11】杭先端部の抵抗を示すものであって、(a)は比較例のストレート杭の場合を示す縦断正面図、(b)は本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭の場合を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のe−e断面図、(d)は(b)のf−f矢視図である。
【図13】比較例としての鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のg−g断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1(a)〜(d)には、本発明の第1実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1が示されている。
【0016】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1は、回転圧入工法により打設される鋼管杭でその先端が開口している鋼管杭であり、その先端部には、テーパー状部分4を備え、そのテーパー状部分4の外周面および内周面には、それぞれ、先端に向かって杭長手方向に漸次縮径するテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3が設けられている。また、テーパー状部分4の先端には、周方向に等角度間隔をおいて複数の掘削ビット6を備えている。複数の偶数個掘削ビット6を設ける場合には、対称に配置され、複数の奇数個配置する場合には等角度間隔をおいて設けられる。掘削ビット6は、適宜ホルダー部を介して鋼管杭先端部に固定されている。
【0017】
このように、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の先端に掘削ビット6を設けると、地盤が硬質であっても、回転圧入工法において、図3に示すような回転圧入施工機7や、杭打ち用のリーダーを備えた杭施工機械を用いて、先端部地盤を掘削しながら、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を地盤、特に、図5に示すように、硬質地盤からなる支持層8に掘削しながら貫入させることができる。
【0018】
図示の形態では、テーパー状部分4の先端部に掘削ビット6を備えており、鋼管杭の先端の掘削ビット6は、鋼管杭1の外径が一定の定常部の外周面9から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されているので、図13に示すようなストレートな鋼管杭10の先端部に掘削ビット6を設ける場合に比べて、掘削ビット付きの鋼管杭の平面外径寸法を小さくコンパクトにすることができ、複数の鋼管杭を複数段に荷積みしてトラック輸送する場合に、掘削ビット6が隣接する鋼管杭に干渉しないので、スペーサ等を介在させなくても、安定した状態で荷積みすることができ、また、地盤に回転圧入した場合に、図13に示すようなストレートな鋼管杭10の先端部に掘削ビット6を設ける場合に比べて、掘削ビット6により杭半径方向外側の地盤を大きく乱す恐れを排除することができる。
【0019】
なお、本発明において、硬質地盤とは岩盤を言い、その岩盤は、軟岩系岩盤(圧縮強度〜25MPa未満)と硬岩系岩盤(圧縮強度:25MPa以上)とに分けられるが、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1はいずれの岩盤にも適用可能である。
【0020】
前記のテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3の杭長手方向の断面形態としては、杭長手方向の片側の断面形態として、外側および内側が、図示のように直線状であってもよく、図示を省略するが、曲線状であってもよい。テーパー状外周面2およびテーパー状内周面3の杭長手方向の断面形態としては、杭中心軸上から半径方向で外側に向かって凸(半径方向で内側に向かって凹)でも、杭中心軸上から半径方向で内側に向かって凸(半径方向で外側に向かって凹)でもよい。
【0021】
前記のように、杭先端部を縮径したテーパー状部分4を設けることにより、図4に矢印で示すように、積極的に土を杭の外側に流れるようにすることで、管内に流入する土を減らすことが可能となり、また、杭先端部の開口面積を減らすことで、管内に流入する土を
減らすことが可能となり、これらにより、杭先端部が管内土による閉塞の発生を抑制し、管内土と杭内周面との摩擦を軽減し、杭押込み力の軽減を図ることを可能にしている。
【0022】
杭先端部にテーパー状部分4を設けることで、テーパー状外周面3に作用する土の抵抗は増大するが、回転圧入施工する工法を採用することで、杭周面の摩擦の増大を抑制することが可能である利点も生かしている。
【0023】
テーパー状部分4の先端の外径D2と鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率である縮径率が小さく、テーパー状部分4の杭長手方向(軸方向)の長さH1と、外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(H1/D1)が小さくなりすぎると[換言すると、テーパー状部分4のテーパー角θ(°)が大きくなりすぎると]、回転圧入施工時に、テーパー状部分4に作用する面圧による抵抗が高くなり、施工障害を生じる恐れがあるため、実施形態では、これらの比率を所定の範囲内に制限することで、良好な回転圧入施工性を図ることができるようにしている。なお、本発明では、前記のテーパー状部分4の杭長手方向(杭軸方向と同じ)の長さH1と、テーパー状部分4先端の外径D2と、外径が一定の定常部の杭外径D1と、テーパー角θとの間には、tanθ=(D1−D2)/2H1の関係がある。また施工時には、テーパー状部分4は、地盤に対して回転方向と貫入方向鉛直が組み合わされた動きをすることに加え、杭の貫入方向とテーパー角θを有するため、地盤に対してせん断力および圧縮力を同時に作用させるとともに地盤を側方に押し広げる効果が発揮され、効率良く地盤を乱すことができ、テーパー状部分4の施工時の抵抗は小さいものとなる。
【0024】
テーパー状部分4を設けることで、杭底面の投影面積が増加するため、支持層に貫入させた場合、テーパー状部分4により、確実な支持力を得ることができる。先端が開口している開端杭で支持力確保のためには、管内閉塞が不十分であっても確実な支持力を発揮することができる。テーパー状部分4の底面投影面積の部分で高い圧縮荷重を負担できるため、通常のストレートな開端杭を回転圧入施工して貫入させた場合よりも高い支持力を発揮することができる。
さらに、地盤の拘束圧が十分な硬質な地盤においては、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1は、確実に高い支持力を発揮し、先端が閉塞したストレートな鋼管杭を回転圧入施工によって貫入させた場合よりも高い支持力が期待できる。
先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を回転圧入施工する場合、その施工中に、地中で先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上動および下動を交互に繰り返すことで、上動時に、管内の土が管の下方に落下し、下動時に落下した土が管外に押しのけられるため、管内の土の高さを下げることが可能となり、鋼管杭内周面12と管内土14の接触面を少なくして管内土14との摩擦を軽減することで、施工荷重を低減することが可能となる。
【0025】
本発明では、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の外径D1との比率(H1/D1)が0.3〜5.5に設定される。すなわち、H1/D1が0.3〜5.5に設定される。
また、テーパー状部分先端の外径D2と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(D2/D1)である縮径率(D2/D1)が、0.60〜0.95の範囲の外径D2に縮径されている。
【0026】
前記のようにH1/D1を0.3〜5.5に設定した理由および先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のテーパー状部分4先端の外径D2を設定した理由について、図6〜図10を参照して説明する。
先ず、図9を参照して説明すると、縮径率(D2/D1)を0.9とした場合で、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(H1/D1)と、必要押し込み力比率(先端テーパー状部分付き鋼管杭1の必要押し込み力と
、ストレートな鋼管杭10の必要押し込み力との比率)との関係を実験により調べたグラフである。
実験に用いた先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の緒元は、定常部の外径(D1)が100mmであり、鋼管部分の肉厚(t)が4.2mmであり、テーパー状部分4先端の外径(D2)が90mmである。また、全長に渡り外径(D1)が一定のストレートな鋼管杭10の外径(D1)および鋼管部分の肉厚(t)は、前記の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1と同じである。
【0027】
図9から、H1/D1が0.3の時、必要押し込み力比率は0.9であり、また、H1/D1が0.4の時、必要押し込み力比率は0.6であり、また、H1/D1が1.35の時、必要押し込み力比率は0.6であり、また、H1/D1が5.5の時、必要押し込み力比率は0.90であることがわかる。このことから、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の外径D1との比率(H1/D1)が0.3〜5.5の時、すなわち、H1/D1が0.3〜5.5の時に、必要押し込み力比率は、0.9以下になり、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、ストレートな鋼管杭10に比べて少なくとも1割、必要押し込み力を低減することができることがわかる。
また、H1/D1が0.40〜1.35の時に、必要押し込み力比率は、0.6以下になり、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、ストレートな鋼管杭10に比べて4割、必要押し込み力を低減することができることがわかる。
【0028】
そして、図10には、実験値をプロットして結んだ曲線を示し、この図は、鋼管杭先端の外径D2と鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率である縮径率(D2/D1)を横軸にとり、各種縮径率の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1について、必要押し込み力比率を実験により調べて比較したグラフである。
【0029】
図10に示すように、縮径率(D2/D1)が0.60の時、必要押し込み力比率は0.9であり、縮径率(D2/D1)が0.75の時、必要押し込み力比率は0.6であり、縮径率(D2/D1)が0.92の時、必要押し込み力比率は0.60であり、縮径率(D2/D1)が0.95の時、必要押し込み力比率は0.90であることがわかる。
これらの図9および図10に示す下に凸のグラフから、縮径率(D2/D1)が0.60〜0.95の範囲において、必要押し込み力比率が0.90以下に低減し、必要押し込み力を少なくとも10%低減することができ、また、縮径率(D2/D1)が0.75〜0.92の範囲において、必要押し込み力比率が0.60以下になり、必要押し込み力が40%低減することができることがわかる。
したがって、H1/D1を0.3〜5.5とし、縮径率(D2/D1)が0.60〜0.95とするのが好ましく、より好ましくは、H1/D1を0.3〜5.5とし、縮径率(D2/D1)を0.75〜0.92の範囲にするのがよい。
【0030】
押し込み力比率が0.9以下に下がると、カウンタウェイト(錘)を大きく減らせることができ、例えば、必要押し込み力86t(トン),反力ウェイト66t(トン),回転圧入施工機械の重量20t(トン)の回転圧入施工設備の場合、必要押し込み力が10%低減できれば8.6t(トン)減とすることができ、カウンタウェイトを13%減らすことが可能になる。
また、図9に示すように、H1/D1が0.40〜1.35であれば、必要押し込み力比率が0.6以下にできるため、さらにカウンタウェイトを軽減できることがわかる。このように、必要押し込み力比率を0.6以下にすると、回転圧入施工機を一段下の小型の回転圧入施工機を用いて杭を回転圧入施工することができるので、特に望ましい。
【0031】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を地盤に回転圧入した場合に抵抗低減メカニズムについて、図10並びに図11を参照して説明する。
図11(a)のストレート鋼管杭10および図11(b)の先端テーパー付きの鋼管杭1において、aおよびa´を先端閉塞部での抵抗、bを先端外周面での抵抗、b´をテーパー状部分による抵抗、cおよびc´を外周面摩擦による抵抗とした場合、また、τを管内土による抵抗とする。
このような場合、図11(a)において、a=τとなるから、図11(b)のように、H1/D1を小さくする(換言すると、テーパー状部分4のテーパー角(θ)を大きくする)と、テーパー状部分による抵抗b´が増加するようになり、また、図11(b)において、テーパー状部分4の縮径率を増加させると、先端閉塞部での抵抗a´が減少し、テーパー状部分による抵抗b´が増加するようになり、図10の線図において、水平な部分(縮径率で70%程度〜80%程度の範囲)は、これらの抵抗の増減の効果により、釣り合う範囲である。
【0032】
図2には、本発明の第2実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1が示されている。
この形態では、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のテーパー状部分4のH1/D1を、前記実施より大きく(テーパー角(θ)を小さく)した形態であり、その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。本発明ではこのような形態でもよい。なお、前記実施形態と同様な部分には、同様な符号を付した。
【0033】
なお、本発明を実施する場合、図12に示す第3実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のように、テーパー状部分の先端に、図1または図2に示す掘削ビット6間に、図12に示すように、テーパー状部分の先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けるようにした形態でもよい。あるいは図示を省略するが、掘削ビット6を兼ねた掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けるようにしてもよい。
【0034】
前記の掘削方向に向かって尖らせた尖り部5としては、掘進方向に向かって尖らせた尖り部5とすればよい。前記の場合に、杭周方向に尖らせた部分を備えていてもよい。
これらの形態のように、テーパー状部分の先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けると、地盤が硬質であっても、掘削ビット6と尖り部5によりあるいは鋼管杭先端部の掘削ビット6を兼ねた尖り部5により、杭打設施工時において、先端部地盤を破壊または掘削しながら、鋼管杭を地盤に貫入させることができる。
【0035】
前記のような本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合には、従来と同様、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入すればよく、図3に示すような回転圧入施工機7により、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の周側面を把持して回転圧入施工した場合では、従来の鋼管杭10、すなわち、鋼管杭の外径D1およびその肉厚tが同じであるストレートな鋼管杭10を施工する場合に比べて、本発明の先端テーパー状部分付き鋼管杭1は、図7に示す押し込み力当たりの貫入量、図8に示す先端荷重度(kN/m2)の点で優れていることがわかる。
【0036】
さらに説明すると、図7は、図6に示すように杭径D1,テーパー状部分4先端の外径D2の杭を用いた施工時の施工荷重である杭の閉塞断面積当りの押込み力(kN/m2)−貫入量/杭径(H2/D1)の関係が示され、ストレートな鋼管杭(図7では、ストレート杭と表記した)に比べて、本発明の先端テーパー状部分付き鋼管杭1では、貫入量が大きいことがわかる。なお、符号14は、管内土、符号15は地盤である。
また、図8には、硬質地盤中に鋼管を杭径D1の3倍の長さ分、回転圧入施工した後に、静的に荷重をかけた際の、先端荷重度(kN/m2)−先端沈下量/杭径(D1)の関係が示され、ストレート杭に比べて、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、先端荷重度が大きく、高い支持力が発揮されていることがわかる。
【0037】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合には、軟質地盤下の支持層まで貫入したり、硬質地盤を含む地盤に回転圧入すればよい。
【0038】
なお、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合に、施工途中で、地中で先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させることで、鋼管杭内の土(管内土)の高さを下げるようにすると、鋼管杭内における管内土と鋼管杭内周面12との付着面積が少なくなるため、その分、抵抗が少なくなり、施工機械の負担を軽減し、効率よく施工することができる。
なお、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させる手段としては、回転圧入施工機7により先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を把持した状態で、回転圧入施工機7における液圧式等の伸縮式ジャッキ13を伸縮させると、容易に先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させることができる。
【0039】
本発明の先端部にテーパー状部分を有する鋼管杭1の鋼管本体部分を製作方法としては、1本の鋼管の先端部を、冷間曲げ成形によりテーパー状部分を形成するように製作してもよく、また、冷間プレス成型によりテーパー状部分を形成するように製作してもよく、あるいは扇状の帯鋼板を冷間曲げテーパー状に加工して両側縁部を溶接により接合して、大外径部が接続すべき鋼管とほぼ同じ外径のテーパー状の短管を製作し、そのテーパー状の短管の上端部を、1本の鋼管の先端部に溶接により固定して、テーパー状部分を有する鋼管杭本体を製作してもよい。また、1本の鋼管の先端部を、塑性加工して、先端部にテーパー状部分を有する鋼管杭本体を製作してもよい。このような各種の形態のテーパー状部分4に掘削ビット6を備えたホルダーを固定するようにして、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を製作するようにすればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 先端テーパー状部分付きの鋼管杭
2 テーパー状外周面
3 テーパー状内周面
4 テーパー状部分
5 尖り部
6 掘削ビット
7 回転圧入施工機
8 支持層
9 外径D1が一定の杭外周面
10 ストレートな鋼管杭
11 砂(または土)
12 鋼管杭内周面
13 伸縮式ジャッキ
14 管内土
15 地盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾構造物あるいは橋梁の基礎や建物の基礎等、土木・建築分野においてに使用される鋼管杭及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭外周面の摩擦力を期待する摩擦杭であって、杭の周面摩擦力を高める手段として、杭の先端部外周面をテーパー状外周面とすること、または杭全長の外周面をテーパー状外周面とすることは知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、テーパー状外周面を有するテーパー状杭を格子状に打ち込んで地盤表層部を締め固めて液状化防止を図るようにすることも知られている(例えば、特許文献3参照)
また、負の周面摩擦力を除去するためにテーパー状杭を地盤に貫入させることも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
また、杭の先端部に、円錐状のコーンを設けて先端が閉塞した閉端杭とすると共に、テーパー状外周面とする形態も知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
前記従来のテーパー杭は、杭周面での高い摩擦力を獲得することを目的とし、杭先端支持力の獲得や、杭施工時における抵抗となる先端閉塞を低減することを目的とする技術ではない。
【0005】
なお、場所打ち鉄筋コンクリート杭や既成コンクリート杭を埋設するために、先端側をテーパー状外周面およびテーパー状内周面としたケーシングを用いることも知られている(例えば、特許文献6,7参照)。
【0006】
前記従来のテーパー状外周面およびテーパー状内周面としたケーシングは、杭周面摩擦力を大きくして杭の垂直荷重支持力を増大するとともに、掘削残土を低減することを目的としており、杭先端支持力の獲得や杭施工時の抵抗を低減することを目的とするものではなく、杭施工時における抵抗となる先端閉塞を低減することを目的とする技術ではない。
【0007】
ところで、鋼管杭には、その先端が閉塞している閉端杭と、先端が開口している開端杭とがあり、本発明は、杭先端が開口している開端杭に属する。
また、鋼管杭には、支持層まで打ち込まないで周面摩擦力を主に発揮させて支持力を期待する摩擦杭と、支持層に打ち込んで杭先端部での支持力を主に発揮させて支持力を期待する支持杭とがあり、本発明は、鋼管杭を支持層に打ち込んで杭先端部での支持力を発揮させて支持力を期待する支持杭に属する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−3465号公報
【特許文献2】特開2007−327280号公報
【特許文献3】特開2008−190116号公報
【特許文献4】特開昭57−81526号公報
【特許文献5】特開平8−284160号公報
【特許文献6】特開2008−297752号公報
【特許文献7】特開2005−248439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
杭を回転圧入施工によって地中に貫入させる際、貫入深度が大きくなるに従い、管内閉塞土の抵抗が大きく発生するため、高い押込み力・回転力が必要となる。ここで、押込み力とは、杭を地中の貫入方向に押し下げるために加える力を指す。また、回転力は、杭を回すために加える力を指す。
杭を回転圧入するための押込み力を確保するためには、反力が必要となり、反力を確保するためには、回転圧入施工機にカウンタウェイトを設置したり、アンカー等を設けたりすることが必要となるが、これらの輸送費や作業費、材料費などが必要となり、杭の施工コストが増加することになる。また、反力が大きくなると、回転圧入施工機も大能力化・大型化することになるので、杭施工コストを一段と増加させることになる。
さらに、杭の推進力を獲得するために、杭に推進用の螺旋翼あるいは羽根などの治具を取付けると、加工費および取付け費用や材料費が掛かることに加え、軟弱地盤の施工においては、逆に、螺旋翼あるいは羽根の間隔で、施工速度が制限されてしまうため、施工速度の低下に繋がる。
また、既成杭を支持層に貫入後、より高い支持力を獲得するために、既成杭の先端を確実に閉塞させる工法があるが、そのためには、杭先端の土を完全に排除した後、コンクリートを打設したり、杭先端にセメントミルクを注入して根固め部を造成したりする必要があった。
【0010】
また、先端が開口している杭であってその杭先端部に掘削ビットを設けたビット付き開端杭では、回転圧入施工時には貫入量に伴い、管内に土が流入してきて堆積し、杭先端部の閉塞度合が高まり、杭圧入時の抵抗の原因となる。前記の杭先端の閉塞は、管内に流入した砂や粘土や石といった地盤を構成する材料(土)と、杭内側の内周面との摩擦によって生じる。
特に、杭回転圧入施工時に問題となるのは、杭を地中の貫入方向に押し込む押込み力であり、これは、杭回転圧入施工時においては、反力を、通常、錘や施工用の機械自体の自重で得るため、反力を大きくするためには、錘が多く必要になり不経済である。回転方向の力は、反力を反力獲得用の棒状の治具等で他の重機などに当てるなどして取ることができるため、問題になることは少ない。
したがって、回転圧入施工により杭を施工する場合には、杭を地中の貫入方向に押し込む押込み力を小さくすることができると、杭一本当たりの施工コストの低減を図ることができ、多数本地盤に回転圧入される杭のトータルの施工コストを格段に低減する上で重要になる。
本発明は前記の課題を有利に解消した、鋼管杭およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の鋼管杭においては、先端が開口してい中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の鋼管杭において、鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の鋼管杭において、テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であることを特徴とする。
また、第4発明では、第1発明〜第3発明からのいずれかの鋼管杭において、テーパー状部分先端の外径(D2)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされていることを特徴とする
。
第5発明では、第1発明〜第4発明からのいずれかの鋼管杭において、テーパー状部分先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたことを特徴とする。
第6発明の鋼管杭の施工方法においては、第1発明〜第5発明の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入することを特徴とする。
また、第7発明では、第6発明の鋼管杭の施工方法において、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に回転圧入することを特徴とする。
第8発明の鋼管杭の施工方法では、第6発明または第7発明の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によると、先端が開口している中空の鋼管杭であって、前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えているので、前記テーパー状部分により、杭内周面の摩擦による抵抗を軽減して施工性の向上を図ることができ、また、前記テーパー状部分により、杭底面の投影面積が増加し、地盤に対して抵抗するため、容易に高い支持力を得ることができる。また、地盤の拘束圧の高い深い支持層や硬い岩盤層などでは、テーパー状部分の底面投影面積の部分で高い圧縮荷重を負担できるため、通常のストレートな開端杭よりも高い支持力を発揮することができる。
通常、打ち込み杭などで、杭先端を閉塞させるためには、一定以上支持層に杭を貫入させる必要があるが、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭では、小さい貫入量でも、支持力の獲得が可能であり、また施工時間の短縮などが可能である等の効果が得られる。
第2発明によると、第1発明の鋼管杭において、鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されているので、ストレートな鋼管杭に比べて、回転圧入鋼管杭の平面外径の小型化を図ることができ、掘削外径が小さくなる分、掘削量が少なく、および施工性を向上させることができる効果が得られる。
第3発明によると、第1発明または第2発明の鋼管杭において、テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であるので、軟弱地盤においては、ストレートな鋼管杭に比べて、杭内周面の摩擦による抵抗を軽減して施工性の向上を図ることができ、支持層においては、少ない貫入量で高い支持力を発揮することができる効果が得られる。
第4発明によると、第1発明〜第3発明からのいずれかの鋼管杭において、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)とこれに対する鋼管杭先端の外径(D2)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされているので、ストレートな鋼管杭を施工する場合に比べて、回転圧入施工機におけるカウンタウェイトを少なくしたり、杭施工機械の小型化を図ることができると共に中間層における施工性の向上を図り、また支持層における貫入量の低減を図りながら支持力の増大を図ることが可能な先端テーパー状部分付きの鋼管杭とすることができる効果が得られる。
第5発明によると、第1発明〜第4発明からのいずれかの鋼管杭において、鋼管杭先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたので、先端地盤を掘削しながら効率よく施工することが可能な鋼管杭とすることができる効果が得られる。
第6発明によると、第1発明〜第5発明の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入するので、先端部にテーパー状部分および掘削ビットを有する鋼管杭を用いて、施工コストを低減して施工することができ、また、ストレートな杭に比べて、支持層に対する貫入量が少なくても、高い支持力を有する基礎杭を施工性よく、低コストで施工することができる効果が得られる。
第7発明によると、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に
回転圧入するので、硬質地盤を含む地盤であっても、低コストで施工することができ、また、硬質地盤の支持層に貫入させる場合には、ストレートな杭に比べて、支持層に対する貫入量が少なくても、高い支持力を有する基礎杭を施工することができる等の効果が得られる。
第8発明によると、第6発明または第7発明の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようしたので、管内周面摩擦を低減しながら効率よく施工することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)はa−a断面図、(d)は(b)のb−b矢視図である。
【図2】本発明の第2実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のc−c断面図、(d)は(b)のd−d断面図である。
【図3】回転圧入施工機により、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を地盤に回転圧入している状態を示す正面図である。
【図4】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を用いて、地盤に回転圧入する場合の土の流れを示す説明図である。
【図5】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を支持層に回転圧入した状態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を支持層へ圧入した場合の圧入深さと、管内土の高さと、先端テーパー状部分付近の寸法との関係を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭と比較例としてのストレート杭について、杭の閉塞断面積あたりの押し込み力と、杭径に対する貫入量の比との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭と比較例としてのストレート杭について、杭径に対する先端沈下量の比と、杭の先端荷重度との関係を示すグラフである。
【図9】杭外径に対するテーパー状部分の長さの比と、先端テーパー状部分付き鋼管杭の必要押し込み力と、ストレート杭の必要押し込み力との比率である必要押し込み力比率との関係を示すグラフである。
【図10】テーパー状部分の縮径率(D2/D1)と必要押し込み力比率との関係を示すグラフである。
【図11】杭先端部の抵抗を示すものであって、(a)は比較例のストレート杭の場合を示す縦断正面図、(b)は本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭の場合を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のe−e断面図、(d)は(b)のf−f矢視図である。
【図13】比較例としての鋼管杭を示すものであって、(a)は正面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のg−g断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1(a)〜(d)には、本発明の第1実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1が示されている。
【0016】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1は、回転圧入工法により打設される鋼管杭でその先端が開口している鋼管杭であり、その先端部には、テーパー状部分4を備え、そのテーパー状部分4の外周面および内周面には、それぞれ、先端に向かって杭長手方向に漸次縮径するテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3が設けられている。また、テーパー状部分4の先端には、周方向に等角度間隔をおいて複数の掘削ビット6を備えている。複数の偶数個掘削ビット6を設ける場合には、対称に配置され、複数の奇数個配置する場合には等角度間隔をおいて設けられる。掘削ビット6は、適宜ホルダー部を介して鋼管杭先端部に固定されている。
【0017】
このように、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の先端に掘削ビット6を設けると、地盤が硬質であっても、回転圧入工法において、図3に示すような回転圧入施工機7や、杭打ち用のリーダーを備えた杭施工機械を用いて、先端部地盤を掘削しながら、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を地盤、特に、図5に示すように、硬質地盤からなる支持層8に掘削しながら貫入させることができる。
【0018】
図示の形態では、テーパー状部分4の先端部に掘削ビット6を備えており、鋼管杭の先端の掘削ビット6は、鋼管杭1の外径が一定の定常部の外周面9から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されているので、図13に示すようなストレートな鋼管杭10の先端部に掘削ビット6を設ける場合に比べて、掘削ビット付きの鋼管杭の平面外径寸法を小さくコンパクトにすることができ、複数の鋼管杭を複数段に荷積みしてトラック輸送する場合に、掘削ビット6が隣接する鋼管杭に干渉しないので、スペーサ等を介在させなくても、安定した状態で荷積みすることができ、また、地盤に回転圧入した場合に、図13に示すようなストレートな鋼管杭10の先端部に掘削ビット6を設ける場合に比べて、掘削ビット6により杭半径方向外側の地盤を大きく乱す恐れを排除することができる。
【0019】
なお、本発明において、硬質地盤とは岩盤を言い、その岩盤は、軟岩系岩盤(圧縮強度〜25MPa未満)と硬岩系岩盤(圧縮強度:25MPa以上)とに分けられるが、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1はいずれの岩盤にも適用可能である。
【0020】
前記のテーパー状外周面2およびテーパー状内周面3の杭長手方向の断面形態としては、杭長手方向の片側の断面形態として、外側および内側が、図示のように直線状であってもよく、図示を省略するが、曲線状であってもよい。テーパー状外周面2およびテーパー状内周面3の杭長手方向の断面形態としては、杭中心軸上から半径方向で外側に向かって凸(半径方向で内側に向かって凹)でも、杭中心軸上から半径方向で内側に向かって凸(半径方向で外側に向かって凹)でもよい。
【0021】
前記のように、杭先端部を縮径したテーパー状部分4を設けることにより、図4に矢印で示すように、積極的に土を杭の外側に流れるようにすることで、管内に流入する土を減らすことが可能となり、また、杭先端部の開口面積を減らすことで、管内に流入する土を
減らすことが可能となり、これらにより、杭先端部が管内土による閉塞の発生を抑制し、管内土と杭内周面との摩擦を軽減し、杭押込み力の軽減を図ることを可能にしている。
【0022】
杭先端部にテーパー状部分4を設けることで、テーパー状外周面3に作用する土の抵抗は増大するが、回転圧入施工する工法を採用することで、杭周面の摩擦の増大を抑制することが可能である利点も生かしている。
【0023】
テーパー状部分4の先端の外径D2と鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率である縮径率が小さく、テーパー状部分4の杭長手方向(軸方向)の長さH1と、外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(H1/D1)が小さくなりすぎると[換言すると、テーパー状部分4のテーパー角θ(°)が大きくなりすぎると]、回転圧入施工時に、テーパー状部分4に作用する面圧による抵抗が高くなり、施工障害を生じる恐れがあるため、実施形態では、これらの比率を所定の範囲内に制限することで、良好な回転圧入施工性を図ることができるようにしている。なお、本発明では、前記のテーパー状部分4の杭長手方向(杭軸方向と同じ)の長さH1と、テーパー状部分4先端の外径D2と、外径が一定の定常部の杭外径D1と、テーパー角θとの間には、tanθ=(D1−D2)/2H1の関係がある。また施工時には、テーパー状部分4は、地盤に対して回転方向と貫入方向鉛直が組み合わされた動きをすることに加え、杭の貫入方向とテーパー角θを有するため、地盤に対してせん断力および圧縮力を同時に作用させるとともに地盤を側方に押し広げる効果が発揮され、効率良く地盤を乱すことができ、テーパー状部分4の施工時の抵抗は小さいものとなる。
【0024】
テーパー状部分4を設けることで、杭底面の投影面積が増加するため、支持層に貫入させた場合、テーパー状部分4により、確実な支持力を得ることができる。先端が開口している開端杭で支持力確保のためには、管内閉塞が不十分であっても確実な支持力を発揮することができる。テーパー状部分4の底面投影面積の部分で高い圧縮荷重を負担できるため、通常のストレートな開端杭を回転圧入施工して貫入させた場合よりも高い支持力を発揮することができる。
さらに、地盤の拘束圧が十分な硬質な地盤においては、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1は、確実に高い支持力を発揮し、先端が閉塞したストレートな鋼管杭を回転圧入施工によって貫入させた場合よりも高い支持力が期待できる。
先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を回転圧入施工する場合、その施工中に、地中で先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上動および下動を交互に繰り返すことで、上動時に、管内の土が管の下方に落下し、下動時に落下した土が管外に押しのけられるため、管内の土の高さを下げることが可能となり、鋼管杭内周面12と管内土14の接触面を少なくして管内土14との摩擦を軽減することで、施工荷重を低減することが可能となる。
【0025】
本発明では、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の外径D1との比率(H1/D1)が0.3〜5.5に設定される。すなわち、H1/D1が0.3〜5.5に設定される。
また、テーパー状部分先端の外径D2と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(D2/D1)である縮径率(D2/D1)が、0.60〜0.95の範囲の外径D2に縮径されている。
【0026】
前記のようにH1/D1を0.3〜5.5に設定した理由および先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のテーパー状部分4先端の外径D2を設定した理由について、図6〜図10を参照して説明する。
先ず、図9を参照して説明すると、縮径率(D2/D1)を0.9とした場合で、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の杭外径D1との比率(H1/D1)と、必要押し込み力比率(先端テーパー状部分付き鋼管杭1の必要押し込み力と
、ストレートな鋼管杭10の必要押し込み力との比率)との関係を実験により調べたグラフである。
実験に用いた先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の緒元は、定常部の外径(D1)が100mmであり、鋼管部分の肉厚(t)が4.2mmであり、テーパー状部分4先端の外径(D2)が90mmである。また、全長に渡り外径(D1)が一定のストレートな鋼管杭10の外径(D1)および鋼管部分の肉厚(t)は、前記の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1と同じである。
【0027】
図9から、H1/D1が0.3の時、必要押し込み力比率は0.9であり、また、H1/D1が0.4の時、必要押し込み力比率は0.6であり、また、H1/D1が1.35の時、必要押し込み力比率は0.6であり、また、H1/D1が5.5の時、必要押し込み力比率は0.90であることがわかる。このことから、テーパー状部分4の杭長手方向の長さH1と、外径が一定の定常部の外径D1との比率(H1/D1)が0.3〜5.5の時、すなわち、H1/D1が0.3〜5.5の時に、必要押し込み力比率は、0.9以下になり、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、ストレートな鋼管杭10に比べて少なくとも1割、必要押し込み力を低減することができることがわかる。
また、H1/D1が0.40〜1.35の時に、必要押し込み力比率は、0.6以下になり、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、ストレートな鋼管杭10に比べて4割、必要押し込み力を低減することができることがわかる。
【0028】
そして、図10には、実験値をプロットして結んだ曲線を示し、この図は、鋼管杭先端の外径D2と鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径D1との比率である縮径率(D2/D1)を横軸にとり、各種縮径率の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1について、必要押し込み力比率を実験により調べて比較したグラフである。
【0029】
図10に示すように、縮径率(D2/D1)が0.60の時、必要押し込み力比率は0.9であり、縮径率(D2/D1)が0.75の時、必要押し込み力比率は0.6であり、縮径率(D2/D1)が0.92の時、必要押し込み力比率は0.60であり、縮径率(D2/D1)が0.95の時、必要押し込み力比率は0.90であることがわかる。
これらの図9および図10に示す下に凸のグラフから、縮径率(D2/D1)が0.60〜0.95の範囲において、必要押し込み力比率が0.90以下に低減し、必要押し込み力を少なくとも10%低減することができ、また、縮径率(D2/D1)が0.75〜0.92の範囲において、必要押し込み力比率が0.60以下になり、必要押し込み力が40%低減することができることがわかる。
したがって、H1/D1を0.3〜5.5とし、縮径率(D2/D1)が0.60〜0.95とするのが好ましく、より好ましくは、H1/D1を0.3〜5.5とし、縮径率(D2/D1)を0.75〜0.92の範囲にするのがよい。
【0030】
押し込み力比率が0.9以下に下がると、カウンタウェイト(錘)を大きく減らせることができ、例えば、必要押し込み力86t(トン),反力ウェイト66t(トン),回転圧入施工機械の重量20t(トン)の回転圧入施工設備の場合、必要押し込み力が10%低減できれば8.6t(トン)減とすることができ、カウンタウェイトを13%減らすことが可能になる。
また、図9に示すように、H1/D1が0.40〜1.35であれば、必要押し込み力比率が0.6以下にできるため、さらにカウンタウェイトを軽減できることがわかる。このように、必要押し込み力比率を0.6以下にすると、回転圧入施工機を一段下の小型の回転圧入施工機を用いて杭を回転圧入施工することができるので、特に望ましい。
【0031】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を地盤に回転圧入した場合に抵抗低減メカニズムについて、図10並びに図11を参照して説明する。
図11(a)のストレート鋼管杭10および図11(b)の先端テーパー付きの鋼管杭1において、aおよびa´を先端閉塞部での抵抗、bを先端外周面での抵抗、b´をテーパー状部分による抵抗、cおよびc´を外周面摩擦による抵抗とした場合、また、τを管内土による抵抗とする。
このような場合、図11(a)において、a=τとなるから、図11(b)のように、H1/D1を小さくする(換言すると、テーパー状部分4のテーパー角(θ)を大きくする)と、テーパー状部分による抵抗b´が増加するようになり、また、図11(b)において、テーパー状部分4の縮径率を増加させると、先端閉塞部での抵抗a´が減少し、テーパー状部分による抵抗b´が増加するようになり、図10の線図において、水平な部分(縮径率で70%程度〜80%程度の範囲)は、これらの抵抗の増減の効果により、釣り合う範囲である。
【0032】
図2には、本発明の第2実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1が示されている。
この形態では、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のテーパー状部分4のH1/D1を、前記実施より大きく(テーパー角(θ)を小さく)した形態であり、その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。本発明ではこのような形態でもよい。なお、前記実施形態と同様な部分には、同様な符号を付した。
【0033】
なお、本発明を実施する場合、図12に示す第3実施形態の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1のように、テーパー状部分の先端に、図1または図2に示す掘削ビット6間に、図12に示すように、テーパー状部分の先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けるようにした形態でもよい。あるいは図示を省略するが、掘削ビット6を兼ねた掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けるようにしてもよい。
【0034】
前記の掘削方向に向かって尖らせた尖り部5としては、掘進方向に向かって尖らせた尖り部5とすればよい。前記の場合に、杭周方向に尖らせた部分を備えていてもよい。
これらの形態のように、テーパー状部分の先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部5を設けると、地盤が硬質であっても、掘削ビット6と尖り部5によりあるいは鋼管杭先端部の掘削ビット6を兼ねた尖り部5により、杭打設施工時において、先端部地盤を破壊または掘削しながら、鋼管杭を地盤に貫入させることができる。
【0035】
前記のような本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合には、従来と同様、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入すればよく、図3に示すような回転圧入施工機7により、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1の周側面を把持して回転圧入施工した場合では、従来の鋼管杭10、すなわち、鋼管杭の外径D1およびその肉厚tが同じであるストレートな鋼管杭10を施工する場合に比べて、本発明の先端テーパー状部分付き鋼管杭1は、図7に示す押し込み力当たりの貫入量、図8に示す先端荷重度(kN/m2)の点で優れていることがわかる。
【0036】
さらに説明すると、図7は、図6に示すように杭径D1,テーパー状部分4先端の外径D2の杭を用いた施工時の施工荷重である杭の閉塞断面積当りの押込み力(kN/m2)−貫入量/杭径(H2/D1)の関係が示され、ストレートな鋼管杭(図7では、ストレート杭と表記した)に比べて、本発明の先端テーパー状部分付き鋼管杭1では、貫入量が大きいことがわかる。なお、符号14は、管内土、符号15は地盤である。
また、図8には、硬質地盤中に鋼管を杭径D1の3倍の長さ分、回転圧入施工した後に、静的に荷重をかけた際の、先端荷重度(kN/m2)−先端沈下量/杭径(D1)の関係が示され、ストレート杭に比べて、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1では、先端荷重度が大きく、高い支持力が発揮されていることがわかる。
【0037】
本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合には、軟質地盤下の支持層まで貫入したり、硬質地盤を含む地盤に回転圧入すればよい。
【0038】
なお、本発明の先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を施工する場合に、施工途中で、地中で先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させることで、鋼管杭内の土(管内土)の高さを下げるようにすると、鋼管杭内における管内土と鋼管杭内周面12との付着面積が少なくなるため、その分、抵抗が少なくなり、施工機械の負担を軽減し、効率よく施工することができる。
なお、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させる手段としては、回転圧入施工機7により先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を把持した状態で、回転圧入施工機7における液圧式等の伸縮式ジャッキ13を伸縮させると、容易に先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を上下動させることができる。
【0039】
本発明の先端部にテーパー状部分を有する鋼管杭1の鋼管本体部分を製作方法としては、1本の鋼管の先端部を、冷間曲げ成形によりテーパー状部分を形成するように製作してもよく、また、冷間プレス成型によりテーパー状部分を形成するように製作してもよく、あるいは扇状の帯鋼板を冷間曲げテーパー状に加工して両側縁部を溶接により接合して、大外径部が接続すべき鋼管とほぼ同じ外径のテーパー状の短管を製作し、そのテーパー状の短管の上端部を、1本の鋼管の先端部に溶接により固定して、テーパー状部分を有する鋼管杭本体を製作してもよい。また、1本の鋼管の先端部を、塑性加工して、先端部にテーパー状部分を有する鋼管杭本体を製作してもよい。このような各種の形態のテーパー状部分4に掘削ビット6を備えたホルダーを固定するようにして、先端テーパー状部分付きの鋼管杭1を製作するようにすればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 先端テーパー状部分付きの鋼管杭
2 テーパー状外周面
3 テーパー状内周面
4 テーパー状部分
5 尖り部
6 掘削ビット
7 回転圧入施工機
8 支持層
9 外径D1が一定の杭外周面
10 ストレートな鋼管杭
11 砂(または土)
12 鋼管杭内周面
13 伸縮式ジャッキ
14 管内土
15 地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開口している中空の鋼管杭であって、
前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えていることを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
テーパー状部分先端の外径(D2)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項5】
鋼管杭先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に回転圧入することを特徴とする請求項6に記載の鋼管杭の施工方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を回転させながら、あるいは回転を加えずに、または、それらを組合せながら上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようにしたことを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項1】
先端が開口している中空の鋼管杭であって、
前記鋼管杭の先端部に、先端へ向かって外周面および内周面がそれぞれ漸次縮径するテーパー状外周面およびテーパー状内周面を有し、鋼管杭の先端に掘削ビットを備えていることを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
鋼管杭の先端の掘削ビットは、鋼管杭の外径が一定の定常部の外周面から鋼管杭の半径方向で中心よりに離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
テーパー状部分の杭長手方向の長さ(H1)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(H1/D1)が0.3〜5.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
テーパー状部分先端の外径(D2)と、鋼管杭の外径が一定の定常部の杭外径(D1)との比率(D2/D1)である縮径率が、0.60〜0.95の範囲とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項5】
鋼管杭先端に、掘削方向に向かって尖らせた尖り部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管杭を、鋼管杭に回転力および押込み力を付与する回転圧入工法によって地盤に圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管杭を、硬質地盤を含む地盤に回転圧入することを特徴とする請求項6に記載の鋼管杭の施工方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7の鋼管杭の施工方法において、施工途中において、地中で鋼管杭を回転させながら、あるいは回転を加えずに、または、それらを組合せながら上下動させることで、鋼管杭内の土の高さを下げるようにしたことを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−242465(P2010−242465A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95732(P2009−95732)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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