説明

鋼製地中連続壁用壁部材及び鋼製地中連続壁構築方法並びに鋼製地中連続壁

【課題】原地盤や改良地盤等の地盤条件に応じて、最適で無駄のない環境にも優しい壁部材構造を実現し、しかも壁材料の費用を低減可能にすることにある。
【解決手段】H形フランジ2a,2a端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手5(6)を有し、隣接配置されるもの同士が前記継手を介し連結可能な鋼製地中連続壁用壁部材1において、長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、該H形のフランジ2a,2a端部に前記雄又は雌形の継手5(6)を有した本体2Aと、前記本体の上端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ前記本体の対応継手延長線上に配されるガイド用継手(図2の継手18)を形成している治具10を着脱する取付部(8,9)を有している上鋼材4とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製地中連続壁を構成して隣接配置されるもの同士が継手を介し連結可能な壁部材、及び先行壁部材に対し後続の壁部材を互いの継手を介して連結する鋼製地中連続壁構築方法、並びにその構築方法で築造された鋼製地中連続壁に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製地中連続壁構築方法としては、特許文献1や2に例示されるごとく、連続壁構築部に沿って地盤掘削と共にソイルセメントやセメントミルク等の地盤改良体を形成し、地盤改良体の固化前に先行壁部材に対し後続の壁部材を互いの継手を介して連結しながら建込む構成がある。ここで、該構築方法に用いられる壁部材は、「NS−BOX」と称されており、長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、該H形のフランジ端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手を有し、隣接配置される壁部材同士が前記継手を介し連結可能となっている。また、構築された鋼製地中連続壁は、各壁部材がH形の対向したフランジの両側を互いの継手を介して嵌合した状態で建込まれるため二重の継手構造となり、しかも前記地盤改良体中に建込まれている関係で優れた耐久性及び止水性が得られる。
【0003】
図10(a),(b)は以上の鋼製地中連続壁構築方法にて所定間隔を保って作製され鋼製地中連続壁70同士の間を開削すると共に、鋼製地中連続壁70同士の間に地下構造物60を築造した一例を示している。この施工手順は、本発明の展開例である図6及び図7に示したように、両側の鋼製地中連続壁70を構築した後、鋼製地中連続壁70同士の間を所定深さまで開削し、開削した箇所に地下構造物60を鋼製地中連続壁70を仮設兼用本体壁として築造する。その後、地下構造物60の上部を土砂65で埋め戻す。すなわち、各鋼製地中連続壁70は、隣接配置された各壁部材71が互いの継手(一方壁部材の雄形継手と他方壁部材の雌形継手)を介し連結されており、地下構造物60の仮設兼用本体壁として利用される。地下構造物70は、地下道路、地下駅舎、立抗などである。符号72はソイルセメント等の固化した地盤改良体である。
【特許文献1】特開2001−288738号公報
【特許文献2】特開2003−55960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の鋼製地中連続壁用壁部材71は、特許文献1,2からも分かるように、継手部の止水性や建込み時の作業性に工夫をこらしているものもあるが、一般的には地下構造物60の支持地盤内に根入れされる部分から地表側部分まで同形状のものが使用されている。ところが、鋼製地中連続壁70ないしは各壁部材71のうち、地下構造物60の底版61から天版64までの間の箇所Fは、開削により土圧分布が最も高くなる部分であり、かつ地下構造物60の側面に一体化(これは製地中連続壁70ないしは各壁部材71が仮設兼用本体壁と)されるため、最大応力に耐える強度剛性と止水性を必要とする。これに対して、鋼製地中連続壁70ないしは各壁部材71のうち、地下構造物60の下方の支持地盤内に根入れする部分は、土圧がさほど加わらないため箇所Fより小さな強度剛性でよい場合が多く、また、地下構造物60の天版64から地表面GLまでの間は土圧が順次低減するため箇所Fより小さな強度剛性でよい場合が多く、しかも埋め殺したままでは却って障害物となることもある。
【0005】
換言すると、従来の鋼製地中連続壁構築方法では、各壁部材71として、前記最大応力に耐える強度剛性を満たす大断面のものを用いていたため、材料費が高くなるだけではなく、深さが数十メートル以上となる箇所に地中連続壁を造成する場合には壁部材一本当りの重量も重くなり、施工用重機の負担も高く、施工費の増大要因となる。なお、例えば、各壁部材71として、表層側、深層側の壁部材の対応部分を一ランク小さな断面つまり単純に強度剛性を低くすると、地盤改良体中に建込むとき先行壁部材に対し後続の壁部材を互いの継手を介して連結することが困難となる。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するものであり、その目的は、鋼製地中連続壁及びその構成壁部材として、原地盤や改良地盤等の地盤条件に応じて、最適で無駄のない環境にも優しい構造を実現し、しかも壁材料の費用を低減可能にすることにある。鋼製地中連続壁構築方法として、本発明の壁部材を使用しても建込み作業性を損なうことなく行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、図8及び図9の例で特定すると、略H形のフランジ2a,2a端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手5(6)を有し、隣接配置されるもの同士が前記継手を介し連結可能な鋼製地中連続壁用壁部材1において、長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、該H形のフランジ2a,2a端部に前記雄又は雌形の継手5(6)を有した本体2Aと、前記本体の上端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ前記本体の対応継手延長線上に配されるガイド用継手(図2の継手18)を形成している治具10を着脱する取付部(8,9)を有している上鋼材4とからなることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、図1及び図2の例で特定すると、略H形のフランジ2a,2a端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手5(6)を有し、隣接配置されるもの同士が前記継手を介し連結可能な鋼製地中連続壁用壁部材1において、長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、該H形のフランジ2a,2a端部に前記雄又は雌形の継手5(6)を有した本体2と、前記本体の上端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ前記本体の対応継手延長線上に配されるガイド用継手18を形成している治具10を着脱する取付部(8,9)を有している上鋼材4と、前記本体の下端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ下側部に突設されて前記本体2の対応継手5と同軸線上に配置されたガイド用継手部7を有した下鋼材3とからなることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記上鋼材4の取付部(8,9)は、下側に設けられて前記治具10の引き抜き操作により係止解除可能な第1係合部(8a)と、上側に設けられて前記治具10の引き抜き操作により係止解除不能な固定手段(B,N)用の第2係合部(9)とを有していることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、図8及び図9の例で特定すると、経時的に固化するソイルセメント等の地盤改良体51中に建込むとき先行壁部材1に対し後続の壁部材1を互いの継手(5,6)を介して連結する鋼製地中連続壁構築方法において、前記壁部材1として請求項1又は3に記載のものを使用し、前記先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を、前記本体2Aの継手(5,6)を先行壁部材側上鋼材4に取り付けられた前記治具10の継手(図2の継手18)に嵌合した状態で建込むことにより、後続壁部材側本体2Aの継手(5,6)が先行壁部材側本体2Aの継手(5,6)に嵌合し前記本体同士を連結する建込み工程と、前記建込まれた壁部材1の上鋼材4から前記治具10を取り外す治具回収工程とを経ることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、図1〜図4の例で特定すると、経時的に固化するソイルセメント等の地盤改良体51中に建込むとき先行壁部材1に対し後続の壁部材1を互いの継手(5,6)を介して連結する鋼製地中連続壁構築方法において、前記壁部材1として請求項2又は3に記載のものを使用し、前記先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を、前記下鋼材3のガイド用継手部7を先行壁部材側上鋼材4に取り付けられた前記治具10の継手(図2の継手18)に嵌合した状態で建込むことにより、後続の壁部材側本体2の継手(5,6)が先行壁部材側本体2の継手(5,6)に嵌合し前記本体同士を連結する建込み工程と、前記建込まれた壁部材1の上鋼材4から前記治具10を取り外す治具回収工程とを経ることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4又は5により構築された鋼製地中連続壁50を特定したものであり、前記隣接配置された各壁部材1が前記本体2又は2A同士を前記継手(5,6)を介し連結されていることを特徴としている。
【0013】
以上の壁部材を構成している本体は、「NS−BOX」と称されているものを想定しているが、H形のフランジ端部に沿って設けらた雄又は雌形の継手を有していれば「NS−BOX」と類似するものでもよい。すなわち、壁部材の本体に設けられる継手は、図1(b)に示されるごとくフランジの両側の継手が同一形状(雌形継手又は雄形継手)のタイプに限られず、異形状(一方が雌形継手、他方が雄形継手)のタイプでも差し支えない。前者の構成では、雄形継手を有した壁部材と、雌形継手を有した壁部材とが交互に建込まれる。後者の構成では、例えば、先行壁部材の雄形継手に対し後続の壁部材が雌形継手を嵌合しながら建込まれる。上鋼材や下鋼材は、本体に比べて断面が小さく強度剛性が低くなっている。好ましくは、図1(a)に示されるごとく本体の上端や下端に溶接等で剛接合し易い形状、具体的には本体のH形ウエブに接合するウエブ、及び本体のH形フランジの一部に接合する本体側より短いフランジを有した形状である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、鋼製地中連続壁用壁部材を本体と該本体より断面の小さな上鋼材とで構成するため、本体に対する上鋼材の断面設定により従来(全寸が本発明の本体だけからなる構成)に比べ小さくした分だけ鋼総重量を減少し、必要な強度剛性を本体を主、上鋼材で従として維持しながら、材料費を低減したり軽量化及びそれに伴う取扱性を向上できるようにする。また、本発明は、上鋼材が本体の対応継手延長線上に配置されるガイド用継手を形成している治具を着脱する取付部を有しているため、請求項4の鋼製地中連続壁構築方法に好適なものとなる。
【0015】
請求項2の発明では、鋼製地中連続壁用壁部材を本体と該本体より断面の小さな上鋼材及び下鋼材とで構成するため、本体に対する上・下鋼材の断面設定により従来(全寸が本発明の本体だけからなる構成)に比べ小さくした分だけ鋼総重量を減少し、必要な強度剛性を本体を主、上・下鋼材を従として維持しながら、材料費を低減したり軽量化及びそれに伴う取扱性、更に鋼壁設計の自由度をより拡大できるようにする。また、本発明は、下鋼材が本体の対応継手と同軸線上に配置されたガイド用継手部を有していることと、上鋼材が本体の対応継手延長線上に配置されるガイド用継手を形成している治具を着脱する取付部を有しているため、請求項5の鋼製地中連続壁構築方法に好適なものとなる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1又は2の壁部材として、上鋼材の取付部に対しガイド継手用の治具が下側を引き抜き可能な第1係合部つまり仮止めないしは差込方式を採用し、上側を治具の引き抜きで係止解除不能な固定手段(例えば、ボルト−ナット又はそれに類似の固定構造)用の第2係合部つまり本止めないしは結合方式を採用することにより、図4(d)から推察されるごとく壁部材の建込み状態で、該壁部材の上鋼材から治具を取り外して回収容易となる。これにより、請求項4や5の鋼製地中連続壁構築方法を効率よく施工可能にする。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1の鋼製地中連続壁用壁部材を用いて、建込み工程及び治具回収工程を経ることにより図9(d)の途中状態から推察されるごとく、鋼製地中連続壁として、各壁部材が下側の本体同士を互いの継手を介して連結し、かつ、上側の上鋼材同士を間隔を保って配置した壁構造を確実容易に構築することができ、これにより上記課題を解消して施工費を低減したり施工用重機の負担を減じて作業性も良好に維持できる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項2の鋼製地中連続壁用壁部材を用いて、建込み工程及び治具回収工程を経ることにより図4(d)の途中状態から推察されるごとく、鋼製地中連続壁として、各壁部材が上下中間にある本体同士を互いの継手を介して連結し、かつ、上側の上鋼材同士及び下側の下鋼材同士を共に間隔を保って配置した壁構造を容易に構築することができ、これにより上記課題をより総合的に解消して施工費の大幅な低減、施工用重機の負担を軽減して作業性も改善できる。
【0019】
請求項6の発明では、従来の鋼製地中連続壁に比べ、請求項4又は5の利点を具備した理想的な鋼製地中連続壁を提供でき、この種の鋼製地中連続壁としての用途拡大を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1〜図7に示した形態例及び図8と図9に示した変形例について、鋼製地中連続壁用の壁部材1と2、治具、鋼製地中連続壁構築方法1と2、鋼製地中連続壁及びその架設兼用本体壁としての利用例の順で説明する。
【0021】
(壁部材1)図1(a),(b)は請求項2に対応した壁部材及び該壁部材同士の連結構造を示している。図1(a)において、この壁部材1は、上記「NS−BOX」に比べて、その「NS−BOX」とほぼ同じ形状の本体2と共に、本体2の上端に接合一体化されて断面が本体2より小さい上鋼材4、及び本体2の下端に接合一体化されて断面が本体2より小さい下鋼材3を有している点で相違している。
【0022】
ここで、本体2は、長手方向と交差する方向の断面が略H形つまりH形鋼と同形か類似形からなり、該H形の対向したフランジ2a,2aがウエブ2bの両端に結合していると共に、各フランジ2a端部に沿って設けられた雌形継手5又は雄形継手6を有している。雌形継手5は円筒の外側部にスリットを形成している。雄形継手6は略T形からなり、前記スリットを通じて雌形継手5の内側に嵌合される。そして、各壁部材1は、本体2同士の継手5,6を交互に嵌合連結しつつ連続的に接続される。以上の本体2は、例えば、既存のH形鋼に継手部材を溶接により接合して作製される。なお、図1(a)には雌形継手5を備えた壁部材1のみが示されているが、雄形継手6を備えた壁部材でも継手形状が異なるのみで、その他は同一構造、同一寸法に設定される。
【0023】
上鋼材4は、断面が本体2より小さく、かつ本体2の対応継手5(6)の延長線上に配置されるガイド用継手(図2の継手18)を形成している治具10を着脱する取付部(8,9)を有している。これに対し、下鋼材3は、上鋼材4と同様に断面が本体2より小さく、かつ下側部のうち上鋼材4の治具取付部と反対側(建込み時に先行壁部材1を向く下側部に突設されたガイド用継手部7を有している。
【0024】
すなわち、下鋼部3及び上鋼材4は、長手方向と交差する断面が本体2の断面と比較して、本体側のH形ウエブ2bに接合するウエブ3b,4bと、本体側のH形フランジ2a,2aの一部に接合する本体側より短いフランジ3a,4aを有した形状である。厚さは、本体2とほぼ同じであるが、必要に応じて薄くしたり、フランジ3a,4aをより短くしたり省略するようにしてもよい。要は、本体2に接合する上で好適な形状であることと、従来壁部材(全寸が本発明の本体だけからなる構成)に比べ鋼総重量を減少しながら、必要な強度剛性を本体2を主、下壁部3及び上鋼材4で従として維持しながら、材料費の低減を図る構成である。なお、この例では、下鋼部側ウエブ3b及び上鋼材側ウエブ4bの幅寸法は本体側ウエブ2bの幅寸法に等しく、フランジ3a,4aの幅寸法は本体側フランジ2aの幅寸法の1/2以下としたものである。
【0025】
なお、図1において、本体2と下鋼材3及び上鋼材4の長さ寸法L1,L2,L3は、対象鋼製地中連続壁の施工深度などに応じて設計される。その場合、特に本体2の長さ寸法L2は、事前調査などによる地下水位の高さや耐久性、更に後述する地下構造物の高さなどを考慮して設計されるもので、例えば、図7の架設兼用本体壁仕様においては地下構造物60における底版61直下の支持地盤から天版64の上端よりやや上の位置までをカバーする程度の長さに設定される。また、壁部材1の全寸は工事規模によっても異なるが、実寸で20〜30m程度、或いはそれ以上が想定される。また、本体2と下鋼材3とは鋼製地中連続壁として埋め殺されるため所定の接合強度が要求されるが、本体2と上鋼材4とは地下構造物を構築した後に縁切り容易な仮接合構造とすることもできる。
【0026】
また、上記ガイド用継手部7は、下鋼材3の各フランジ3a,3aの同じ側の下部端面に突設され、本体2の対応継手5と同軸線上に配置されている。この構成は、壁部材1の建込み工程において、先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を、下側の継手部7を先行壁部材側上鋼材4に取り付けられた治具10の継手18に嵌合した状態で建込み可能にする。
【0027】
これに対し、上鋼材4の治具用取付部は、図2のごとくH形のウエブ4bのうち、建込み時に先行壁部材1と逆、つまり建込み進行方向に配置されるウエブ面の下側に突設されて治具10の引き抜き操作により係止解除可能な第1係合部8と、上側に設けられて治具10の引き抜き操作により係止解除不能なボルトBとナットN等の固定手段用の第2係合部9とを有している。第1係合部8は、図3(b)のごとく治具10の位置決め軸16に対応して設けられたブラケットであり、該ブラケットの中央に上下貫通した円錐台形の位置決め用テーパ孔8aである。該テーパ孔8aには、治具側位置決め軸16の下側に設けられた下向きに細くなるテーパー部16aが嵌合される。第2係合部9は、固定手段であるボルトBを挿通する複数の孔である
【0028】
(壁部材2)図8(a),(b)は請求項1に対応した壁部材及び該壁部材同士の連結構造を示している。図8(a)において、この壁部材1は、図1の壁部材1に対して本体2Aと上鋼材4で構成され、下鋼材3が省略されている。本体2Aは、図1の本体2に比べて下鋼材3を省略した分だけ長くなっているが、上記本体2の説明がそのまま当てはまる。また、上鋼材4は図1のものと同じである。このため、図8の壁部材自体の説明は省く。
【0029】
(治具)以上の治具10は、壁部材1が略H形の本体2及該本体2より小さな断面の上鋼材4を有していると、建込み工程において、先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を嵌合した状態で建込むことができないため工夫されたものである。
【0030】
すなわち、この治具10は、図2に示されるごとく上鋼材4の長さL3よりやや長めのもので、吊りピース11を上向きに突設している天板12と、天板12の一側部に垂設された取付板14と、取付板14の下内側に一体化されて天板12の真下にある水平板15と、水平板15の下面に一体に垂設された位置決め軸16と、三角枠状からなり位置決め軸16の外周にその三角枠状の対応頂点を接合した状態で上下多段に設けられた複数の枠材17(図3を参照)と、各枠材17の他の両頂部及び天板12や水平板15の対応部に接合した状態に設けられた一対のガイド用継手18と、継手18同士の間に設けられた差込片20とからなる。
【0031】
このうち、取付板14には、上鋼材側の第2係合部9である複数の孔と一致する孔19が設けられている。位置決め軸16の下端は上述したごとく下向きに細くなるテーパー部16aとなっている。各ガイド用継手18は、治具10が上鋼材4に装着された状態で、本体2の各フランジ2端部の対応継手5(6)延長線上、つまり本体側の各継手5(6)頂部に対応継手18の下端が同一軸線状に重ね合わされる。差込片20は、治具10が上鋼材4に装着された状態で、本体側の継手5(6)同士の間に嵌合される。なお、治具10の継手18としては、本体2の継手に対応して、雌形からなるものと雄形からなるものとが用意される。
【0032】
次に、上鋼材4に対する治具10の着脱操作について説明する。まず、装着操作では、例えば図2(a)及び図3のごとく、上鋼材4に対し治具10が上鋼材の対応ウエブ面に沿って移動されると、差込片20が本体側の両継手5の基部に沿って嵌合すると共に、位置決め軸16の下端側テーパ部16aがテーパ孔8aに嵌合することで位置決めされ、この状態から、図2(b)のごとく孔9,19にボルトBを差込み、裏面側からナットNを締付ける。すると、治具10は上鋼材4に正確に位置決め固定される。なお、図2(a),(b)では、吊りピース11にワイヤWを玉掛し、吊り込んだ状態で行われているが、これは便宜的に示したもので、通常は壁部材1の吊り上げ前に地表部で壁部材1を横に配置したままの状態で治具10を簡単に装着操作できる。
【0033】
治具10を外して回収する場合は、図2(c)のごとくボルトBをナットNから分離した後、上鋼材4のフランジ端面間に反力板21を設置し、該反力板21に油圧ジャッキ22を載置した状態で、ジャッキ側プランジャにより天板12を押上げる。すると、治具10は、位置決め軸16のテーパ部16aがテーパ孔8aに対し自重により強固に圧着していても、該テーパー孔8aから抜けて上鋼材4より縁切りされ、以後はワイヤWの吊上げ作業により取外しが可能となる。
【0034】
(鋼製地中連続壁構築方法1)図4(a)〜(d)は請求項5に対応した鋼製地中連続壁構築方法の主要部を示している。同図において、この構築方法では、図1の複数の壁部材1(雌形継手5を有した壁部材1と雄形継手6を有した壁部材1)及びH形の基準鋼34が使用される。使用機器や設備としては、従来と同様に、カッター装置30、セメントミルク製造プラント32、クローラクレーン35等が用意される。カッター装置30は、ベースマシンと接続され、壁構築予定部に沿って横方向に移動させて、溝31を掘削形成すると共に、セメントミルク等の固化液の注入、現位置土との混合・攪拌を行って、壁構築予定部の地中に連続した地盤改良体51を造成するものである。セメントミルク製造プラント32は、例えば、セメント用サイロから導入されるセメント等の固化材原料と水槽側から導入される水とを混合し所定のセメントミルクを製造したり、そのセメントミルクをカッター装置30に供給する。クローラクレーン35は壁部材1の建込み用でありベースマシンにより移動される。
【0035】
図4の構築方法では、建込まれた先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を、下鋼材3のガイド用継手部7を先行壁部材側上鋼材4に取り付けられた治具10の継手18に嵌合した状態で建込んで、後続の壁部材側本体2の継手(5又は6)が先行壁部材側本体2の継手(6又は5)に嵌合し各壁部材1の本体同士を連結する建込み工程と、建込み工程で建込まれた壁部材1の上鋼材4から治具10を外す治具回収工程と少なくとも経る。この場合、治具回収工程は、通常、壁部材1の所定本数を建込んだ後に行うが、目的の鋼製地中連続壁50に対応する壁部材1の総本数を建込んだ後に行ってもよい。
【0036】
すなわち、建込みに際しては、まず、図4(a)のごとくカッター装置30により所定幅及び深さの溝31を掘削する。この作業では、例えば、地中に掘削液を注入して地盤Eを軟化させつつ、カッター装置30を掘削出発位置から壁構築予定部に沿って移動させながら、無端状のカッター30aを駆動して地盤Eを掘削し、設計深さ及び施工長さに到達したなら、セメントミルク製造プラント32で製造されたセメントミルクを供給する。すると、セメントミルクが掘削された現位置土に攪拌混合されながら、同一施工区域の移動を繰返すことにより、溝31内がほぼ均一な地盤改良体51としてのソイルセメントにより満たされる。なお、符号33は、建込み出発位置側地表部の溝31に沿って設置された建込みガイド用の定規33である。この定規33は一部省略している。
【0037】
次に、基準鋼34が建込み出発位置の地盤改良体51中に定規33を介して建込まれる。この基準鋼34は、H形鋼のフランジの一端部に最初の壁部材1の継手に嵌合される不図示の継手が形成されている。この建込み時には、地盤改良体51としてのソイルセメントは泥濘化している状態なので、クローラクレーン35などで吊り込むことにより基準鋼34は自重により貫入され、かつ定規33で建て込み位置が規制されることによって、鉛直度を保ちつつ精度よく建込まれる。
【0038】
その後、図4(b),(c)のごとく、予め治具10を組付けた壁部材1を順に建込むことになる。この建込み要領は、基準鋼34の継手に対し、最初の壁部材1がその上鋼材4の治具10の吊りピース11にワイヤを玉掛してクローラクレーン35で吊り上下動しつつ、その下鋼材3に設けられた下端側継手部7を嵌合しながら建込み操作される。すると、壁部材1は、基準鋼34の継手に対し、該壁部材側下鋼材の継手部7が嵌合した状態で下降された後、該壁部材側本体の対応継手5(6)が嵌合するので精度良く建込まれる。
【0039】
以後は、図4(d)のごとく、建込みを完了した先行壁部材側上鋼材4の治具10の継手18に対し、後続の壁部材1がその上鋼材4の治具10の吊りピース11にワイヤを玉掛してクローラクレーン35で吊り上下動しつつ、その下鋼材3の下端側継手部7を嵌合しながら建込まれる。すると、後続の壁部材1は、先行壁部材側本体2の対応継手5(6)に対し、該壁部材側下鋼材の継手部7が嵌合した状態で下降された後、該壁部材側本体2の対応継手6(5)が嵌合されて建込まれる。この建込み工程において、壁部材1及び治具10は雄形継手を有したものと、雌形継手を有したものとを交互に連結しながら溝31の進行方向沿って建込まれる。なお、この建込み作業の進捗度に応じて定規33の長さも順次延すか、定規33の位置を変更する。
【0040】
治具回収工程では、治具10が前述したごとく固定手段であるボルトBの取外し作業(図2(c)を参照)によって上鋼材4の取付部から縁切りされた後、吊上げて回収し、洗浄後に次の壁部材1の建込み用に転用されるようにする。勿論、この治具回収作業は、溝31内の地盤改良体51としてのソイルセメント等が完全に固化しない前に行うことが好ましい。この回収時期は、施工規模や施工条件等に応じて適宜に決めることができる。
【0041】
また一日の作業終了時点、或いは作業の一時休止時点では、図4(c)に示したごとく保護カバー36を付設した壁部材1を建込むことにより、該保護カバー36で壁部材側本体の継手5(6)及び上鋼材側治具10の継手18を覆うことで後に行われる継手同士の嵌合が損なわれないようにしたり、更には次にカッター装置30により拡張施工される溝31内の土砂や水分が施工済み地盤改良体51内に混入すること抑える。
【0042】
(鋼製地中連続壁構築方法2)図9(a)〜(d)は請求項4に対応した鋼製地中連続壁構築方法の主要部を図4に対応して示している。この構築方法では、上記した鋼製地中連続壁構築方法1と次の点で変更される。ここでは、重複記載を避けるため極力変更点だけ説明する。
【0043】
図9の構築方法では、建込まれた先行壁部材1に対し、後続の壁部材1を、図8に示した本体2の継手5(6)を先行壁部材側上鋼材4に取り付けられた治具10の継手18に嵌合した状態で建込んで、後続の壁部材側本体2の継手(5又は6)が先行壁部材側本体2の継手(6又は5)に嵌合し各壁部材1の本体同士を連結する建込み工程と、建込み工程で建込まれた壁部材1の上鋼材4から治具10を外す治具回収工程と少なくとも経る。
【0044】
まず、最初の壁部材1は、建込まれた基準鋼34の継手に対し、その上鋼材4の治具10の吊りピース11にワイヤを玉掛してクローラクレーン35で吊り上下動しつつ、その本体2の対応継手5(6)を嵌合しながら建込み操作される。すると、壁部材1は、基準鋼34の継手に対し、該壁部材側本体2の継手5(6)が嵌合した状態で下降されながら精度よく建込まれる。以後は、図9(d)のごとく、建込みを完了した先行壁部材側上鋼材4の治具10の継手18に対し、後続の壁部材1がその上鋼材4の治具10の吊りピース11にワイヤを玉掛してクローラクレーン35で吊り上下動しつつ、その本体2の対応継手5(6)を嵌合しながら建込まれる。すると、後続の壁部材1は、先行壁部材側本体2の対応継手5(6)に対し、該壁部材側本体2の対応継手6(5)が嵌合した状態で下降されながら建込まれる。
【0045】
(鋼製地中連続壁)図5(a)は上記した鋼製地中連続壁構築方法1により作製された鋼製地中連続壁を示した模式縦断面図である。この鋼製地中連続壁50は従来連続壁構造に比べて次のような点で相違している。すなわち、鋼製地中連続壁50において、隣接配置された壁部材1同士は、上下中間部を構成している本体2と本体2とが互いの継手(5と6)を介して連結され、上部を構成している上鋼材4と上鋼材4及び下部を構成している下鋼材3と下鋼材3とがそれぞれ所定の間隔を保って非連結となっている。そして、この構造では、鋼製地中連続壁50を構成している各壁部材1が本体2同士を前記各継手を介して連結された状態で地盤改良体51であるソイルセメント等の中に埋設されているため、上鋼材4同士、及び下鋼材3同士は固化された地盤改良体51を介在してそれぞれ拘束一体化されている。なお、図5(a)では、各壁部材1の上鋼材4が地上面GLより少し突出している。これは、後述するごとく上鋼材4を分離し撤去することを想定しているためであるが、上鋼材4は地上面より下になるよう設計されることもある。
【0046】
また、上記した鋼製地中連続壁構築方法2により構築された鋼製地中連続壁については図示を省いたが、図9から推察されるごとく構築方法1で構築された鋼製地中連続壁50に比べて、隣接配置された壁部材1同士は本体2と本体2とが互いの継手(5と6)を介して連結され、上部を構成している上鋼材4と上鋼材4とがそれぞれ所定の間隔を保って非連結となっている。また、この構造でも、各壁部材1が本体2同士を前記各継手を介して連結された状態で地盤改良体51であるソイルセメント等の中に埋設されているため、上鋼材4同士は固化された地盤改良体51を介在してそれぞれ拘束一体化されている。
【0047】
(架設兼用本体壁としての利用例)図5〜図7は、以上の鋼製地中連続壁50を地下構造物60の架設兼用本体壁として用いた一例を示している。すなわち、この築造では、上記鋼製地中連続壁50,50同士の間の地盤を開削し、該開削された箇所に地下構造物60を、該地下構造物60の両側壁62を対応する鋼製地中連続壁側H形の対応フランジ2aに接合一体化すると共に、各壁部材1の本体2が地下構造物60の底壁下部61から天壁上部60までの高さ寸法に対応した長さになっている。なお、以下の施工例は、図1〜図4で構築された鋼製地中連続壁50で説明するが、図8と図9で構築される鋼製地中連続壁の場合も同様である。
【0048】
すなわち、以上の鋼製地中連続壁50は、図5及び図6の各(a)のごとく所定の間隔を保って左右ないしは前後に平行に構築されると共に、各壁部材1の内部および外側部は上記した溝31に応じた幅の地盤改良体51が充填固化されている。両鋼製地中連続壁50の配置間隔は、図7のごとく対象の地下構造物60に応じて設定される。
【0049】
まず、鋼製地中連続壁50同士の間の地盤は図6(b)のごとく地表から所定深度まで開削される。この場合、開削設計は、計画に応じて各壁部材の本体2の最下端部よりやや上部とし、この部分を地下構造物60の支持地盤面とする。また、鋼製地中連続壁50同士の対向面のうち、壁部材側本体2及び上鋼材4の内側フランジはソイルセメント等の地盤改良体51が付着しているが、それらの付着物は除去される。
【0050】
なお、開削作業では、開削深度が深くなるにしたがって、必要に応じて腹起し、切梁などからなる仮設支保工52を鋼製地中連続壁50間の上側に張架される。ところで、この開削による土圧Pの分布は、各壁部材側本体2の高さ方向中間位置近傍で最大となるが、上記鋼製地中連続壁50の壁構造において、壁部材側本体2の剛性及び該本体2外側の地盤改良体51により土圧Pに充分抗することができる。また、地盤内に地下水があったとしても、事前調査等によって壁部材側本体2の位置を地下水位より高い位置に設定すれば、内外2重の継手構造及び本体2外側の地盤改良体51により止水性も満足できる。
【0051】
開削作業の終了後は、図7(a)のごとく、鋼製地中連続壁50の構築方向に沿って支持地盤上に地下構造物60の底版61、側壁62、隔壁63及び天版64を適宜な型枠工法により築造する。その際は、底版61の両側、両側壁62並びに天版64の両側と本体2間を鉄筋などを介して接合した状態で必要に応じてコンクリートを打設する。これにより、地下構造物60は、両側壁62が各壁部材側本体2と結合一体化し、側壁62が薄壁であっても、鋼製地中連続壁50及び該本体2外側の地盤改良体51により十分な剛性と止水性に優れた構造物となる。
【0052】
その後は、仮設支保工などを撤去した上で、図7(b)のごとく、地下構造物60の上部を土砂65などで埋め戻し、表面を敷き均すことにより、全工程を終了する。なお、地下構造物60の施工終了後に、各壁部材1の本体2と上鋼材4とを縁切りしておき、上鋼材4を引抜くと共に土砂65を引抜き後に充填するようにすれば、例えば障害物としての上鋼材4の影響を受けない。
【0053】
以上のように本発明は請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部は各形態を参考にして更に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は形態例の鋼製地中連続壁用壁部材を示す斜視図、(b)は前記壁部材同士を連結した状態で示す断面図である。
【図2】(a)は上記壁部材を構成している上鋼材と治具の関係を示す斜視図、(b)と(c)は上記治具を上鋼材に取付けたり、取外すときの要領を示す斜視図である。
【図3】(a)は上記壁部材同士の連結状態及び上記治具の取付け状態を示す断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】(a)〜(d)は形態例の鋼製地中連続壁構築方法の手順を示す模式図である。
【図5】(a)は上記構築方法で作られた鋼製地中連続壁の模式縦断面図、(b)は前記鋼製地中連続壁間に地下構造物を築造した状態を示す模式縦断面図である。
【図6】(a)は図5(a)のB−B線断面図、(b)は同断面における開削状態を示す断面図である。
【図7】(a)は図5(b)のC−C線断面図、(b)は地下構造物上を埋め戻した状態を示す断面図である。
【図8】(a),(b)は変形例の鋼製地中連続壁用壁部材を図1に対応して示す斜視図と断面図である。
【図9】(a)〜(d)は図8の壁部材を用いた場合の鋼製地中連続壁構築方法の手順を図4に対応して示す模式図である。
【図10】従来例を説明するため図であり、(a)は鋼製地中連続壁間に地下構造物を築造した状態を示し、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…壁部材
2…壁部材の本体(2aはフランジ、2bはウエブ)
3…下鋼材(7はガイド用継手部)
4…上鋼材(8と9は取付部に設けられた第1係合部と第2係合部)
5…継手(雌形継手)
6…継手(雄形継手)
10…ガイド用継手を形成している治具(12は天板、14は当接板)
16…位置決め軸
18…ガイド用継手
21…反力板
22…油圧ジャッキ
30…カッター装置
31…溝
32…セメントミルク製造プラント
34…基準鋼
50…地中連続壁
51…地盤改良体
60…地下構造物(61は底版、62は側壁、63は隔壁、64は天版)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略H形のフランジ端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手を有し、隣接配置されるもの同士が前記継手を介し連結可能な鋼製地中連続壁用壁部材において、
長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、略H形のフランジ端部に前記雄又は雌形の継手を有した本体と、
前記本体の上端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ前記本体の対応継手延長線上に配されるガイド用継手を形成している治具を着脱する取付部を有している上鋼材とからなることを特徴とする鋼製地中連続壁用壁部材。
【請求項2】
略H形のフランジ端部に沿って設けられた雄又は雌形の継手を有し、隣接配置されるもの同士が前記継手を介し連結可能な鋼製地中連続壁用壁部材において、
長手方向と交差する方向の断面が略H形からなり、該H形のフランジ端部に前記雄又は雌形の継手を有した本体と、
前記本体の上端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ前記本体の対応継手延長線上に配されるガイド用継手を形成している治具を着脱する取付部を有している上鋼材と、
前記本体の下端に接合されて断面が前記本体より小さく、かつ下側部に突設されて前記本体の対応継手と同軸線上に配置されたガイド用継手部を有した下鋼材とからなることを特徴とする鋼製地中連続壁用壁部材。
【請求項3】
前記上鋼材の取付部は、下側に設けられて前記治具の引き抜き操作により係止解除可能な第1係合部と、上側に設けられて前記治具の引き抜き操作により係止解除不能な固定手段用の第2係合部とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製地中連続壁用壁部材。
【請求項4】
経時的に固化するソイルセメント等の地盤改良体中に建込むとき先行壁部材に対し後続の壁部材を互いの継手を介して連結する鋼製地中連続壁構築方法において、
前記壁部材として請求項1又は3に記載のものを使用し、
前記先行壁部材に対し、後続の壁部材を、前記本体の継手を先行壁部材側上鋼材に取り付けられた前記治具の継手に嵌合した状態で建込むことにより、後続壁部材側本体の継手が先行壁部材側本体の継手に嵌合し前記本体同士を連結する建込み工程と、
前記建込まれた壁部材の上鋼材から前記治具を取り外す治具回収工程とを経ることを特徴とする鋼製地中連続壁構築方法。
【請求項5】
経時的に固化するソイルセメント等の地盤改良体中に建込むとき先行壁部材に対し後続の壁部材を互いの継手を介して連結する鋼製地中連続壁構築方法において、
前記壁部材として請求項2又は3に記載のものを使用し、
前記先行壁部材に対し、後続の壁部材を、前記下鋼材のガイド用継手部を先行壁部材側上鋼材に取り付けられた前記治具の継手に嵌合した状態で建込むことにより、後続の壁部材側本体の継手が先行壁部材側本体の継手に嵌合し前記本体同士を連結する建込み工程と、
前記建込まれた壁部材の上鋼材から前記治具を取り外す治具回収工程とを経ることを特徴とする鋼製地中連続壁構築方法。
【請求項6】
請求項4又は5により構築されて、前記隣接配置された各壁部材が前記本体同士を前記継手を介し連結されていることを特徴とする鋼製地中連続壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−37882(P2010−37882A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204907(P2008−204907)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【出願人】(503364146)本間技建株式会社 (6)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】