説明

錠剤容器

【課題】収納錠剤の移動或いは衝突の防止を図ることができ、その結果、錠剤の破損等の不都合を防止でき、しかも構造は極めて簡単であり、その取り扱いも容易な錠剤容器を提案する。
【解決手段】保形性の外容器体A1と、可撓性の内容器体A2との二重構造をなす容器体Aと、口頸部12外周に着脱可能に嵌合させた周壁30上端縁より頂壁31を延設したキャップBとを備え、外容器体に吸気孔14を設け、また、キャップ頂壁に内容器体内へ空気を吸引するための窓孔32を穿設し、更に、吸引後に窓孔を閉塞する栓体34を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錠剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤容器として、収容錠剤の破損防止の目的のため、緩衝体を備えたものが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
上記錠剤容器は、雄ねじが外周面に螺設された筒状開口部を有し、内部に錠剤を収容する容器本体と、筒状開口部に螺着される蓋体とを備え、また、緩衝体を備えている。緩衝体はほぼ筒形状で、底部と側壁部とこの側壁部の上部に連設されたフランジ部とを有し、筒状開口部から容器本体内へと挿入され、筒状開口部の端部に係止されるように構成してある。
【0004】
この容器は、輸送中の振動や衝撃によって錠剤がわれることを防止できるとともに、内部に収容した錠剤が意図せずに外部へとこぼれてしまうことを防止でき、更に、衛生面での向上を図ることができる等の種々の効果を発揮する優れたものである。
【特許文献1】特開2003−292012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記錠剤容器では、錠剤が入った容器に対して上方から緩衝体を押し込む形態をとっているため、緩衝体を押し込む前の最初に錠剤を充填した状態の善し悪しによって、緩衝体を装着した後にもその状態の善し悪しの変化が生じる場合がある。例えば、錠剤は球形に限らず、円盤形状とう種々の形態が存在し、それらを単に容器体内に充填した場合に、均一な充填が必ずしも発生しない虞れがある。これらを補正するためには容器体に振動を与えたり、容器体を上下に振ったりすれば均一な充填が得られるが、その場合には錠剤相互が衝突して破損が生じる虞れが充分考えられる。
【0006】
従って、充填時の錠剤の状態がかならずしも良くない状態で緩衝体を装着すると、良くない状態がそのままの状態となり、運搬時にそれがくずれて錠剤相互の衝突が生じる虞れがある。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、充填状態が一部悪い状態を含んでいても、減圧により悪い状態を補正することができて均一で緻密な充填状態を確保でき、その状態を維持できるため、収容錠剤の形状に拘わらず移動,衝突のない充填を行えて収納錠剤の破損を防止でき、しかも、その構造も極めてシンプルな錠剤容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に於ける容器体は、胴部上に口頸部を起立した形態で、外容器体と内容器体との二重構造をなしている。外容器体は合成樹脂等により形成され、保形性を備えたものが使用される。内容器体も同様に合成樹脂等により形成され、外容器体内に収納可能であり、減圧により収縮が可能な可撓性材質のものを採用する。二重構造の具体例としては、外容器体の内面に内容器体を積層した所謂デラミタイプのものであっても、或いは、外容器体内に別に形成した内容器体を収納させる形態のものであっても良い。前者の場合には合成樹脂により一体に形成でき、後者の場合は外容器体の口頸部に内容器体の口頸部を嵌着,接着,溶着等の適宜固着手段により固着することで二重構造を現出することができる。
【0009】
口頸部には着脱可能にキャップを装着している。キャップの口頸部への係止手段としては、螺合の他、L字型の溝に突部を係脱させる所謂ツイストロックを採用しても良く、或いは突条相互の乗り越え係合等の係止手段を採用しても良い。キャップも合成樹脂等により形成される。また、キャップを容器体に嵌着した際に、容器体口頸部とキャップとの間は気密にシールされる如く構成する。その具体例としは、種々の形態を採用でき、例えば、口頸部上面とキャップ頂壁との密接により現出することができるし、両者間にパッキンを介在させても良く、或いはキャップ頂壁から垂設したシール筒を口頸部内面に気密に嵌合させる等を採用できる。
【0010】
本発明では、キャップ頂壁に窓孔を穿設し、また、窓孔を塞ぐ栓体を備えている。窓孔は内容器体内に錠剤を充填した後、ここから余分な空気を排除することで内容器体内の錠剤相互を出来るだけ隙間無く,それらの移動や衝突を極力少なくできる如く配置させるためのものであり、栓体は空気排除後に窓孔を閉塞して内容器体内の状態を維持するためのものである。空気の排除には真空ポンプ等の公知の機械を使用でき、例えば、キャップの上端部周囲に端部を嵌着して吸引することで、簡単に行える。
【0011】
栓体はキャップと一体に形成されていも別体であっても良いが、一体に形成することで形成上のロスを無くし安価に製造できる。栓体は別体に形成する場合には窓孔を閉塞できる構成を備えていれば良いが、一体に形成する場合には、それに加えて連通孔も必要となる。
【0012】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、胴部10上に口頸部12を起立した形態をなし、且つ、保形性の外容器体A1と、可撓性の内容器体A2との二重構造をなす容器体Aと、口頸部12外周に着脱可能に嵌合させた周壁30上端縁より頂壁31を延設したキャップBとを備え、外容器体A1に吸気孔14を穿設するとともに、キャップ頂壁31に内容器体A2内の空気を吸引するための窓孔32を穿設し、且つ、吸引後に窓孔32を閉塞する栓体34を備えている。
【0013】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、栓体34を、窓孔32の周縁部に易切断性の破断部38を介して下端縁を連結した周壁部35の上端より頂壁部36を延設し、周壁部35に連通孔37を穿設して構成した。
【0014】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、窓孔32周縁より下方に案内筒33を垂設した。
【0015】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、容器体Aが、外容器体A1の内面に剥離可能な内容器体A2を積層した形態をなす。
【発明の効果】
【0016】
本発明の錠剤容器は、錠剤を充填後に内容器体A2内のエアーを抜くことで内容器体A2内の錠剤の充填を緻密に配置でき、その移動,衝突等の不都合を防止できる。しかも内容器体A2の収縮に伴って内容器体A2と外容器体A1との間には空気が導入され、収縮した内容器体A2が安定的に支持される。また、窓孔32には栓体34を気密に嵌着するため、収縮した内容器体A2が再び膨張する等の不都合はなく、流通時には錠剤の破損を確実に防止することができ、錠剤容器の安心した運搬等が行える。
【0017】
栓体34を、窓孔32の周縁部に易切断性の破断部38を介して下端縁を連結した周壁部35の上端より頂壁部36を延設し、周壁部35に連通孔37を穿設して構成した場合には、キャップBと栓体34との成形が一遍に行える利点があり、栓体34を紛失する等の不都合を解消できる利点がある。また、空気吸気後に栓体34を押し込んだ際に、その頂面がキャップBの頂面と面一となって違和感のない外観を備えたキャップとして形成することができる利点もある。
【0018】
窓孔32周縁より下方に案内筒33を垂設した場合には、栓体34の嵌着がズレたり外れたりする不都合を防止でき、安定した窓孔32の閉塞を行える利点がある。
【0019】
容器体Aが、外容器体A1の内面に剥離可能な内容器体A2を積層した形態をなす場合には、収納容積を最大に活用できる利点がある。また、内容器体A2及び外容器体A1を一体に形成できるため、製造,組み付けが簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1乃至2は錠剤容器1の一例を示し、該錠剤容器1は、容器体Aと、キャップBとを備えている。
【0022】
容器体Aは、保形性を備えた外容器体A1と、可撓性の内容器体A2とから構成している。外容器体A1は、筒状の胴部10上端より肩部11を介して口頸部12を起立したボトルタイプをなしている。また、底壁部13中央には吸気孔14を穿設しており、また、口頸部12の外周に螺条を周設している。内容器体A2は外容器体A1の内面に剥離可能に積層したもので、外容器体A1と同様形状をなしているが、外容器体A1から剥離させると剥離部分が不定形となる。従って、全体として、所謂デラミタイプの容器体として構成している。尚、本例では、底壁部13中央に吸気孔14を穿設しているが、吸気孔14を設ける位置はこれに限られたものではなく、外容器体A1と内容器体A2との間に外気を導入することができる形態であれば種々採用できる。例えば、外容器体A1の口頸部12位置や、外容器体A1の胴部10位置に吸気孔14を穿設しても良い。
【0023】
キャップBは周壁30上端縁より頂壁31を延設した形態をなし、周壁30の内周に螺条を周設するとともに、頂壁31の中央に窓孔32を穿設している。窓孔32は頂壁31を貫通して下方へ垂設した案内筒33内に画成されている。また、キャップBには栓体34を一体に連結している。栓体34は、周壁部35上端縁より頂壁部36を延設した下端開口の伏せ皿状をなし、周壁部35に連通孔37を穿設している。図示例の連通孔37は、周壁部35の下端部に、それぞれ等間隔に円弧帯状に4箇所穿設している。そして、周壁部35の下端縁を、窓孔32の内周縁上端部に、破断部38を介して連結している。
【0024】
上記の如く説明した錠剤容器1は、まず容器体A内に錠剤を充填した後キャップBを装着する。この際容器体A内には、例えば図1に示す如く、その口頸部12部分が空白となる如く錠剤を充填しておく。この状態から吸引装置(図示せず)を使用して栓体34の連通孔37から内容器体A2内を減圧させる。内容器体A2内の空気が窓孔32,連通孔37を介して外部に吸引され、余分な空気を除外された容器体A内には、図2に示す如く、口頸部12内の上部まで錠剤が満弁なく行き渡る状態となっている。同時に内容器体A2が外容器体A1から剥離して両者間に隙間が発生するとともに、吸気孔14から内容器体A2と外容器体A1の間に外気が導入される。次いで栓体34を押し下げて窓孔32に栓体34を嵌着すれば、内容器体A2は減少したままの状態を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】吸気前の錠剤容器の半断面図である。(実施例1)
【図2】錠剤容器の半断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0026】
1…錠剤容器
A…容器体
A1…外容器体
10…胴部,11…肩部,12…口頸部,13…底壁部,14…吸気孔
A2…内容器体
B…キャップ
30…周壁,31…頂壁,32…窓孔,33…案内筒,34…栓体,35…周壁部,
36…頂壁部,37…連通孔,38…破断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部10上に口頸部12を起立した形態をなし、且つ、保形性の外容器体A1と、可撓性の内容器体A2との二重構造をなす容器体Aと、口頸部12外周に着脱可能に嵌合させた周壁30上端縁より頂壁31を延設したキャップBとを備え、外容器体A1に吸気孔14を穿設するとともに、キャップ頂壁31に内容器体A2内の空気を吸引するための窓孔32を穿設し、且つ、吸引後に窓孔32を閉塞する栓体34を備えていることを特徴とする錠剤容器。
【請求項2】
栓体34を、窓孔32の周縁部に易切断性の破断部38を介して下端縁を連結した周壁部35の上端より頂壁部36を延設し、周壁部35に連通孔37を穿設して構成した請求項1記載の錠剤容器。
【請求項3】
窓孔32周縁より下方に案内筒33を垂設した請求項1又は請求項2のいずれかに記載の錠剤容器。
【請求項4】
容器体Aが、外容器体A1の内面に剥離可能な内容器体A2を積層した形態をなす請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の錠剤容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−286430(P2009−286430A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140516(P2008−140516)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】