説明

錠剤検査装置及びPTP包装機

【課題】安全性の向上や装置の小型化等を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供する。
【解決手段】錠剤検査装置17は、その外郭をなす外防壁37を備えると共に、当該外防壁37の内部において、PTPフィルム6のポケット部2をポケット受け孔部57に嵌め込みつつ当該PTPフィルム6の搬送に伴い回転する回転ローラ38と、当該回転ローラ38の外側に配置されかつ回転ローラ38の最上部にくるポケット受け孔部57の方に向けX線を照射するX線源41と、当該X線源41に対向して回転ローラ38の内側に配置されかつ前記ポケット受け孔部57に嵌め込まれたポケット部2を透過してくるX線を撮像するX線カメラ42とを備え、X線カメラ42により撮像された画像データを基に錠剤5の検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、錠剤を収容するPTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された容器フィルムと、その容器フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。そして、PTPシートの製造に際しては、ポケット部に収容された錠剤の有無、割れ、欠け等に関する検査が行われる。
【0003】
近年では、遮光性や防湿性等の向上を図るといった観点から、カバーフィルムに加え、容器フィルムまでもアルミニウム等により形成されることが多くなっている。かかる場合には、例えばX線検査装置等を用いて上記検査を行うことが考えられる。X線検査装置では、PTPシートに対しX線を照射し、当該PTPシートを透過するX線を撮像することにより、錠剤の有無等を検査することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなX線検査装置においては、人体や環境への影響等を考慮して、装置外部へのX線の漏洩を防止するための対策が採られている。例えば、X線検査装置の出入口に含鉛ゴム製の暖簾を設けたもの(例えば、特許文献2参照)や、ワークの搬送経路をU字状やクランク状等に曲げたもの(例えば、特許文献3参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−42172号公報
【特許文献2】特開2005−172486号公報
【特許文献3】特開2000−74856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記暖簾を備えた構成では、当該暖簾がPTPシートに接触し、ポケット部が傷ついたり変形するおそれがある。特にアルミニウム製の容器フィルム等の場合には、かかる不具合がより顕著に現れるおそれがある。また、PTPシートに鉛等の金属粉が付着するおそれもあり、衛生上好ましくない。
【0007】
一方、単に搬送経路を曲げるだけの構成では、照射されたX線が装置出入口に達するまでに十分に減衰されるよう、PTPシートの搬送経路を長くする必要があり、装置が大型化するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安全性の向上や装置の小型化等を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.PTPシートを製造するにあたり、帯状の容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容され、当該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状のカバーフィルムが取着された後の帯状のPTPフィルムにおいて前記錠剤の検査を行う錠剤検査装置であって、
前記PTPフィルムのポケット部に対応したポケット受け孔部を有し、当該ポケット受け孔部に前記ポケット部を嵌め込みつつ、前記PTPフィルムの搬送に伴い回転可能に設けられたX線遮蔽材よりなる筒状の回転体と、
前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部の方に向けX線を照射可能なように、前記回転体の内側又は外側のいずれか一方側に配置されたX線源と、
前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部に嵌め込まれた前記ポケット部を透過してくるX線を撮像可能なように、前記X線源に対向して前記回転体の内側又は外側の他方側に配置された撮像手段と、
前記回転体、前記X線源及び前記撮像手段を収容したX線遮蔽材よりなる外防壁と、
前記撮像手段により撮像された画像データを基に、前記錠剤の検査を行う検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【0011】
ここでいう「錠剤の検査」には、例えば錠剤の有無、割れ、欠け等に関する検査などが含まれる。
【0012】
上記手段1によれば、帯状の容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容され、当該ポケット部を塞ぐように容器フィルムに対し帯状のカバーフィルムが取着され、PTPフィルムとなった後、錠剤検査装置によって錠剤の検査が行われる。
【0013】
錠剤検査装置においては、PTPフィルムの掛装された回転体が、そのポケット受け孔部にポケット部を収容しつつ、PTPフィルムの搬送に伴い回転する。そして、所定のポケット受け孔部に収容されたポケット部が所定回転位置に達すると、X線源から照射され当該ポケット部を透過したX線が撮像手段により撮像され、これを基に錠剤の有無、割れ、欠け等に関する検査が行われる。
【0014】
上記構成により、本手段では、回転体と外防壁との間の隙間、すなわちX線が漏洩する間口を比較的狭く設定することができる。このため、フィルム搬送経路を比較的長く設定しなくとも、X線源から照射されたX線は反射、散乱、吸収等を繰り返しながら、外防壁のフィルム搬入口又は搬出口に達するまでに十分に減衰する。また、回転体におけるポケット受け孔部の開口面積は十分に小さく、当該回転体を通り抜けるX線の割合は非常に少ない。これにより、フィルム搬入口等からのX線漏洩を極めて少なくすることができる。ひいては、外防壁のフィルム搬入口等に暖簾等を設ける必要もなく、ポケット部の変形や傷つき、汚れの付着等といった不具合の発生を低減することができる。結果として、安全性の向上、装置の小型化・コンパクト化等を図ることができる。
【0015】
加えて、PTPフィルムのポケット部が回転体のポケット受け孔部に収容された状態でX線撮像を行うことができるため、撮像時のPTPフィルムのばたつき等を低減し、安定した状態で撮像を行うことができる。さらに、PTPフィルムの伸び縮み等に起因するPTPフィルム長手方向におけるポケット部の間隔を修正しつつ、常時一定のピッチ及びタイミングでポケット部(錠剤)を撮像手段の撮像視野中央へ送り込むことができる。つまり、所定の撮像タイミングにおける錠剤と撮像手段との位置ズレの発生を抑制することができる。結果として、ブレの少ない画像データを取得することができ、錠剤の検査における検査精度の向上を図ることができる。
【0016】
手段2.前記回転体の内側において、当該回転体内に配置された前記X線源又は前記撮像手段を囲むように配置されると共に、少なくとも前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部に対向する側が開口したX線遮蔽材よりなる内防壁を備えたことを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0017】
上記手段2によれば、外防壁、回転体及び内防壁の3層構造となり、X線の漏洩防止効果をさらに高めることができる。特に「前記回転体の外側に前記X線源が配置され、前記回転体の内側に前記撮像手段が配置された構成」においては、回転体の所定回転位置にくるポケット受け孔部を介して回転体内部に入ったX線が、前記所定回転位置とは異なる位置にあるポケット受け孔部から再び回転体の外部に漏洩してしまうおそれがあるため、かかる構成の下では、上記手段2の作用効果がより奏効することとなる。
【0018】
手段3.前記回転体の上流側で搬送される前記PTPフィルムと下流側で搬送される前記PTPフィルムとの成す角度を90°以下としたことを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0019】
上記手段3によれば、回転体と外防壁の間の間隔を比較的狭く設定可能な区間を比較的長めに設定することができると共に、X線がフィルム搬入口等に向け直進しない程度に十分に当該区間を湾曲させることが可能となる。結果として、上記手段1の作用効果をさらに高めることができる。
【0020】
手段4.前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【0021】
ここで、「アルミニウムを主材料として形成されている」とは、アルミニウム単体で形成されている場合は勿論のこと、樹脂フィルム層が介在されたアルミラミネートフィルムをも含む趣旨である。
【0022】
アルミニウムを主材料として容器フィルムを形成した場合には、ポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料から形成した場合に比べて、塑性変形しやすく元の形状に復元しにくいことから、ポケット部の潰れ変形が起こりやすくなる。また、傷も付きやすい。
【0023】
従って、上記手段4の構成下においては、上記手段1等の構成がより奏効することとなる。
【0024】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0025】
上記手段5のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。上記回転体を利用しコンパクトな錠剤検査装置は、既存のPTP包装機におけるポケット送りロール等の搬送機構と取替えることが容易であるため、導入コストの削減等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)はPTPシートを、(b)はPTPフィルムを示す斜視図である。
【図2】PTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【図4】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】回転ローラの周方向に沿って切断した錠剤検査装置を示す部分断面図である。
【図6】回転ローラの軸線方向に沿って切断した錠剤検査装置を示す部分断面図である。
【図7】画像処理装置により実行される検査ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まずPTPシートについて説明する。
【0028】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。本実施形態における容器フィルム3はアルミラミネートフィルムにより形成され、カバーフィルム4はアルミフィルムにより形成されている。各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。
【0029】
PTPシート1〔図1(a)参照〕は、帯状の容器フィルム3及びカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6〔図1(b)参照〕がシート状に打抜かれることで製造される。
【0030】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機8の概略について説明する。
【0031】
図3に示すように、PTP包装機8の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。
【0032】
PTP包装機8においては、ロール状に巻回された容器フィルム3が間欠的に移送されるようになっており、容器フィルム3の移送経路に沿って、ポケット部形成装置14が配置されている。
【0033】
このポケット部形成装置14により、容器フィルム3に上記ポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、冷間加工により、容器フィルム3の移送動作間のインターバルにて行われる。
【0034】
さらに、ポケット部2が形成された容器フィルム3の移送経路に沿って、錠剤投入装置16、フィルム受けローラ18が配設されている。
【0035】
錠剤投入装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を自由落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0036】
また、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。
【0037】
ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、フィルム受けローラ18の方へと案内されている。フィルム受けローラ18には、加熱ローラ19が圧接可能となっており、両ローラ18,19間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ローラ18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3の裏側にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム6が製造される。
【0038】
フィルム受けローラ18の下流では、PTPフィルム6の移送経路に沿って、錠剤検査装置17、ミシン目形成装置22、刻印装置23及びシート打抜装置24が順に配設されている。
【0039】
錠剤検査装置17は、各ポケット部2における錠剤5の有無、割れ、欠け等に関する検査を行うためのものである。その詳細については後述する。
【0040】
ミシン目形成装置22は、PTPフィルム6の所定位置にミシン目を形成する機能を有する。刻印装置23はPTPフィルム6の所定位置にロットナンバー等の識別情報を示す刻印を付す機能を有する。シート打抜装置24は、PTPフィルム6をPTPシート1単位に打抜く機能を有する。
【0041】
シート打抜装置24の下流側には、シート打抜装置24からの端材25を貯留するためのスクラップ用ホッパ26が設けられている。また、シート打抜装置24の下側には、打抜かれたPTPシート1を移送するためのコンベア28が設けられている。打ち抜かれたPTPシート1は、前記コンベア28によって、完成品用ホッパ29に移送される。その後、完成品用ホッパ29に収容されたPTPシート1は、2枚1組で互いのポケット部2同士を向き合うようにしてセットされた上で、複数組ずつ集積され積上げられる。最終的には、バンド(結束)工程や、製袋工程へと案内され、箱詰めされる。但し、錠剤検査装置17によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシート1は、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0042】
なお、容器フィルム3やPTPフィルム6は、図3に示すように複数のローラを介して搬送されるようになっている。これらローラのうち、ポケット部2の膨出側に面するローラ18,31,32,34,35等は、そのローラ表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、フィルム受けローラ18等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的にはポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2がフィルム受けローラ18等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0043】
PTP包装機8の概略は以上のとおりであるが、以下において錠剤検査装置17について図4〜図6を参照しつつ詳しく説明する。図4は、錠剤検査装置17の電気的構成を示すブロック図である。図5,6は、後述する回転ローラ38の周方向又は軸線方向に沿って切断した錠剤検査装置17を示す部分断面図である。
【0044】
錠剤検査装置17は、その外郭をなす外防壁37を備えると共に、当該外防壁37の内部に、回転体としての回転ローラ38、X線源41、撮像手段としてのX線カメラ42等を備えている。以下、詳しく説明する。
【0045】
外防壁37は、X線遮蔽材である厚さ2mm以上のステンレス鋼(SUS)により形成され、外部へX線を透過させない構成となっている。但し、外防壁37には、PTPフィルム6を通過させるための出入口部として、スリット状の開口部37a,37bが形成されている。
【0046】
錠剤検査装置17は、外防壁37の内部に図示しない基台を備えている。当該基台には略円筒形の支持部材51が水平方向へ延びるように固定されている。
【0047】
支持部材51の内部には、軸線Z1方向に沿って貫通した軸孔52が形成されている。軸孔52には回転軸53が挿通されている。回転軸53と軸孔52との間には、当該回転軸53を回転可能に支持するボールベアリング54が嵌め込まれている。
【0048】
回転軸53の先端側には、PTPフィルム6が掛装される円筒形の前記回転ローラ38が固定されている。回転ローラ38はX線遮蔽材であるステンレス鋼により形成されている。
【0049】
回転ローラ38の周壁部には、PTPフィルム6のポケット部2を収容可能なポケット受け孔部57が多数形成されている。各ポケット受け孔部57は、回転ローラ38の外側から内側まで貫通形成されている。
【0050】
ポケット受け孔部57は、PTPフィルム6のポケット部2に対応して、回転ローラ38の周方向及び軸線方向に沿って所定間隔で規則的に配列されている。より詳しくは、回転ローラ38の周方向に対するポケット受け孔部57の形成間隔(ピッチ)と、PTPフィルム6の長手方向に対するポケット部2の形成間隔とが同一になっている。そして、回転ローラ38は、ポケット受け孔部57内にポケット部2を収容しつつ、PTPフィルム6の搬送動作に従動して回転する。
【0051】
回転軸53の基端側には円盤体58が取付けられている。円盤体58の周囲には、回転ローラ38の周方向におけるポケット受け孔部57の形成間隔に対応して、所定間隔で図示しないスリットが形成されている。さらに、円盤体58の近傍には、前記スリットを検知可能な検知センサ59が設けられている。
【0052】
回転ローラ38の内部には前記X線カメラ42が設置されている。本実施形態では、回転ローラ38の軸線Z1方向における各ポケット受け孔部57に対応して、所定間隔に5台のX線カメラ42が設置されている。
【0053】
各X線カメラ42は、その撮像方向が真上(鉛直方向上向き)を向くように設置されている。つまり、錠剤5の充填されたポケット部2が回転ローラ38の最上点に達した際に、当該ポケット部2の真下位置となるように配置されている。
【0054】
X線カメラ42に接続された電気配線(図示略)は、回転軸53の内部に貫通形成された貫通孔53aを介して、回転ローラ38外部に引き出されている。
【0055】
さらに、回転ローラ38の内部には、上記5台のX線カメラ42を囲むように、回転ローラ38の内周面に沿って内防壁39が設けられている。但し、内防壁39は、X線カメラ42の撮像範囲に対応してその頂部が開口した断面略C字状に形成されている。
【0056】
本実施形態における内防壁39は、外防壁37と一体形成されている。つまり、外防壁37と同様、厚さ2mm以上のステンレス鋼により形成されており、X線を透過させない構成となっている。
【0057】
一方、回転ローラ38の外部(真上位置)には、X線カメラ42に対向して、前記X線源41が設置されている。X線源41は、回転ローラ38の最上部(各X線カメラ42の真上)に到達したポケット受け孔部57に向けX線を照射する。これにより、各X線カメラ42は、当該ポケット受け孔部57に嵌め込まれたPTPフィルム6のポケット部2(錠剤5)を透過してくるX線を撮像可能となる。
【0058】
ここで、錠剤検査装置17の動作態様について説明する。上述したように、容器フィルム3の各ポケット部2に錠剤5が充填され、当該容器フィルム3にカバーフィルム4が取着されて製造されたPTPフィルム6は、錠剤検査装置17へ送られる。
【0059】
錠剤検査装置17においては、PTPフィルム6が、外防壁37の開口部(入口部)37aを介して回転ローラ38へ送られ、その後、開口部(出口部)37bから搬出される。
【0060】
PTPフィルム6が掛装された回転ローラ38は、ポケット受け孔部57内にポケット部2を収容しつつ、PTPフィルム6の搬送動作に従動して回転する。
【0061】
そして、所定のポケット受け孔部57内に収容されたポケット部2が、回転ローラ38の回転に伴い、回転ローラ38の側方位置から頂上位置方向へ順次移送され、ポケット部2が回転ローラ38の最上点に達すると、当該ポケット部2の中心がその真下位置にあるX線カメラ42の撮像視野中央に位置する。そして、円盤体58の所定のスリットが検知センサ59に検知されることに基づき、X線カメラ42が作動し、当該ポケット部2内の錠剤5が撮像される。これにより、上述したように回転ローラ38のポケット受け孔部57が最上点に達するごとにX線カメラ42による撮像が行われることとなる。
【0062】
ここで、X線源41から照射されたX線は、回転ローラ38と外防壁37の間のルート(図5中の矢印β1参照)や、回転ローラ38と内防壁39の間のルート(図5中の矢印β2参照)、内防壁39の内部のルート(図5中の矢印β3参照)等において反射、散乱、吸収等を繰り返し、減衰していく。特に本実施形態では、回転ローラ38と外防壁37の間の間隔W1や、回転ローラ38と内防壁39の間の間隔W2が極めて狭く設定されているため、X線が反射等する回数が多くなり、十分に減衰する。また、回転ローラ38におけるポケット受け孔部57の開口面積も十分に小さく、当該ポケット受け孔部57を通り抜け、再度、回転ローラ38の外部に漏洩するX線の割合は非常に少ない。結果として、外防壁37の開口部37a,37bからのX線漏洩を極めて少なくすることができる。
【0063】
次に、錠剤検査装置17の電気的構成について説明する。錠剤検査装置17は検査手段としての画像処理装置43を備えている。図4に示すように、画像処理装置43は、撮像記憶部44、二値化処理部45、二値化画像記憶部46、判定値記憶部47、検査結果記憶部48、入出力ポート49、及び、中央処理装置(以下、CPUという)50を備えている。前記各記憶部及び処理部44〜48は、入出力ポート49を介して、CPU50に接続されている。
【0064】
撮像記憶部44は、X線カメラ42にて撮像された二次元画像データを記憶するためのものである。
【0065】
二値化処理部45は、前記二次元画像データから二値化画像データを生成する機能を有する。例えばX線カメラ42によりX線撮像された二次元画像データにおいては、錠剤5の明度がシート一般部(非検査対象領域)の明度よりも低くなる。
【0066】
二値化画像記憶部46は、二値化処理部45にて生成された二値化画像データを記憶するためのものである。また、判定値記憶部47は、検査に用いられる各種判定値を記憶するためのものである。検査結果記憶部48は、検査結果等を記憶するためのものである。
【0067】
CPU50は、画像処理装置43の全体の制御を司り、各種処理プログラムを実行することにより、入出力ポート49を介して、各記憶部及び処理部44〜48を制御する。またこのCPU50には、入出力ポート49を介して、PTP包装機8が接続されている。かかる構成により、例えば、PTP包装機8の不良シート排出機構などを制御することができる。
【0068】
次に錠剤5の検査手順について説明する。X線カメラ42により撮像された画像データが取得されると、画像処理装置43によって図7のフローチャートに示す検査ルーチンR1が実行される。
【0069】
画像処理装置43は、まずステップS1において、二値化処理部45によって二値化画像データを生成し、該データを二値化画像記憶部46に記憶させる(二値化処理)。例えば閾値δ1以上を1(明)、閾値δ1未満を0(暗)として、二次元画像データが二値化画像データに変換される。
【0070】
ステップS2では、二値化画像記憶部46に記憶された二値化画像データに対して塊処理を実行する。塊処理としては、二値化画像データの0(暗)について各連結成分を特定する処理と、それぞれの連結成分についてラベル付けを行うラベル付け処理とがある。ここで、それぞれ特定される各連結成分の占有面積はX線カメラ42の画素に応じたドット数で表される。
【0071】
続くステップS3において、画像処理装置43は、二値化画像データから求めた0(暗)の連結成分の中から、錠剤5に相当する連結成分すなわち錠剤領域を特定する。錠剤5に相当する連結成分は、所定の座標を含む連結成分、所定の形状である連結成分、或いは所定の面積であるところの連結成分等を判断することにより特定することができる。
【0072】
ステップS4では、画像処理装置43は、ステップS3において特定した錠剤領域を基に、錠剤の面積Sxを算出する。
【0073】
ステップS5では、ステップS4において算出した錠剤の面積Sxと、予め判定値記憶部47に設定された面積基準値Soとの差が判定許容値Px以下か否かを判定する。すなわち、錠剤の面積Sxが許容範囲内にあるか否かを判定する。なお、面積基準値Soは、例えば検査に先だって、良品(不良品でないことが明らかな錠剤5)をいくつかサンプリングして得られた値である。
【0074】
ここで、錠剤の面積Sxが許容範囲内である場合には、ステップS6へ移行し、良品判定を行う。一方、錠剤の面積Sxが許容範囲内にない場合にはステップS7へ移行し、不良判定を行う。
【0075】
なお、上記検査ルーチンR1の処理は、PTPフィルム6上の各ポケット部2について実行され、後にPTPシート1となって裁断されたときに同一シート上に一つでも不良判定されたポケット部2(錠剤5)が含まれているときは、そのシートは不良と判断され排出される。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤検査装置17においては、PTPフィルム6の掛装された回転ローラ38が、そのポケット受け孔部57にポケット部2を収容しつつ、PTPフィルム6の搬送に伴い回転する。そして、所定のポケット受け孔部57に収容されたポケット部2が回転ローラ38の最上点に達すると、X線源41から照射され当該ポケット部2を透過したX線がX線カメラ42により撮像され、これを基に錠剤5の有無、割れ、欠け等に関する検査が行われる。
【0077】
ここで、X線源41から照射されたX線は、回転ローラ38と外防壁37の間や、回転ローラ38と内防壁39の間、内防壁39の内部等において反射、散乱、吸収等を繰り返し、減衰していく。
【0078】
特に本実施形態では、回転ローラ38と外防壁37の間の間隔W1や、回転ローラ38と内防壁39の間の間隔W2が極めて狭く設定されているため、X線が反射等する回数が多くなり、十分に減衰する。
【0079】
また、回転ローラ38におけるポケット受け孔部57の開口面積も十分に小さく、当該ポケット受け孔部57を通り抜け、再度、回転ローラ38の外部に漏洩するX線の割合は非常に少ない。
【0080】
さらに、内防壁39を備えることにより、回転ローラ38の最上点にくるポケット受け孔部57を介して回転ローラ38内部に入ったX線が、最上点とは異なる位置(例えば最下点)にあるポケット受け孔部57から再び回転ローラ38の外部に漏洩してしまうといった不具合を低減することができる。
【0081】
従って、PTPフィルム6の搬送経路を比較的長く設定しなくとも、外防壁37の開口部37a,37bからのX線漏洩を極めて少なくすることができる。ひいては、外防壁37の開口部37a,37bに暖簾等を設ける必要もなく、ポケット部2の変形や傷つき、汚れの付着等といった不具合の発生を低減することができる。結果として、安全性の向上、装置の小型化・コンパクト化等を図ることができる。
【0082】
加えて、PTPフィルム6のポケット部2が回転ローラ38のポケット受け孔部57に収容された状態でX線撮像を行うことができるため、撮像時のPTPフィルム6のばたつき等を低減し、安定した状態で撮像を行うことができる。さらに、PTPフィルム6の伸び縮み等に起因するPTPフィルム長手方向におけるポケット部2の間隔を修正しつつ、常時一定のピッチ及びタイミングでポケット部2(錠剤5)をX線カメラ42の撮像視野中央へ送り込むことができる。つまり、所定の撮像タイミングにおける錠剤5とX線カメラ42との位置ズレの発生を抑制することができる。結果として、ブレの少ない画像データを取得することができ、錠剤5の検査における検査精度の向上を図ることができる。
【0083】
なお、錠剤5の充填されたポケット部2が回転ローラ38の側方位置にある場合など、最上点に達する前や後では、錠剤5の中心位置がポケット部5やこれを収容したポケット受け孔部57の中心位置から大きくずれたり、錠剤5の姿勢がポケット部2内部で傾いた状態となってしまい、錠剤5を適切な状態で撮像することができないおそれがある。
【0084】
これに対し、本実施形態では、錠剤5の充填されたポケット部2が回転ローラ38の最上点に達した際に、当該ポケット部2の真下位置となるようにX線カメラ42が配置されている。このため、錠剤5が自重によりポケット部2の膨出部側へ寄ったより適切な状態で当該錠剤5を撮像することができる。結果として、例えば錠剤5の姿勢が傾き、正確な錠剤の面積Sxを取得することができない等といった不具合の発生を抑制することができる。
【0085】
本実施形態における回転ローラ38はPTPフィルム6に従動して回転する構成となっている。したがって、PTPフィルム6の搬送に同期させて回転ローラ38を回転駆動させるための機構を必要としない。また、検知センサ59による検知に基づき、回転ローラ38のポケット受け孔部57が所定位置にくるタイミングで撮像を行えばよいため、撮像に係りPTPフィルム6の位置検出を行うエンコーダ等を省略することができる。結果として、装置の構造ひいてはその制御処理のさらなる簡素化を図ることができる。
【0086】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0087】
(a)上記実施形態では、検査対象となる錠剤5の態様例として、円盤形状の素錠を例示しているが、錠剤の種類はこれに限られるものではない。例えば、カプセル錠などであってもよい。
【0088】
(b)各フィルム3,4の材料は、アルミニウムを主材料とした金属材料に限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。また、金属材料に限らず、例えば可視光等を透過しない合成樹脂材料等を採用してもよい。
【0089】
(c)上記実施形態では、外防壁37、回転ローラ38及び内防壁39がX線遮蔽材であるステンレス鋼により形成されているが、これに限らず、X線を透過させない他の素材により形成してもよい。
【0090】
(d)外防壁の構成は、上記実施形態に係る外防壁37に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、PTPフィルム6を通過させるための出入口部として単に開口部37a,37bを形成しているだけであるが、当該開口部37a,37b付近においてPTPフィルム6の搬送経路をL字状に屈曲すると共に、当該開口部37a,37bの周囲にフランジ部を設ける等して、よりX線が漏洩しづらい構成としてもよい。
【0091】
(e)回転体の構成は、上記実施形態に係る回転ローラ38に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、回転ローラ38がPTPフィルム6に従動して回転する構成となっているが、これに限らず、駆動モータ等の駆動手段により、回転ローラ38がPTPフィルム6の搬送動作に同期して回転する構成としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、特に言及していないが、回転ローラ38の外周面に滑り止めとなるゴム層等を形成して、回転ローラ38の外周面とPTPフィルム6の一般面との摩擦抵抗を大きくすることにより、PTPフィルム6搬送時におけるポケット部2にかかる負荷を軽減する構成としてもよい。
【0093】
また、回転ローラ38からのPTPフィルム6の浮き上がりを防止するため、回転ローラ38に対しPTPフィルム6を付勢する押えローラ等を設けた構成としてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、PTPフィルム6がU字状に折れ曲がるように回転ローラ38に掛装されている。すなわち、回転ローラ38の上流側で搬送されるPTPフィルム6と下流側で搬送されるPTPフィルム6との成す角度αが0°になっているが、当該角度αはこれに限定されるものではない。但し、当該角度αは90°以下であることが好ましい。かかる構成とすることにより、PTPフィルム6の長手方向における複数個のポケット部2が同時にポケット受け孔部57に収容され、安定した掛装状態を維持することができる。加えて、回転ローラ38と外防壁37の間の間隔W1を比較的狭く設定可能な区間を比較的長めに設定することができると共に、X線が開口部37a,37bに向け直進しない程度に十分に当該区間を湾曲させることが可能となる。
【0095】
(f)内防壁の構成は、上記実施形態に係る内防壁39に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、内防壁39が外防壁37と一体形成されているが、別体で構成してもよい。
【0096】
また、内防壁39が回転ローラ38の内周面に接触する構成としてもよい。かかる構成により、回転ローラ38と内防壁39との間を介したX線漏洩をほぼなくすことができる。
【0097】
また、外防壁37や回転ローラ38等との関係によっては、内防壁39を省略した構成としてもよい。
【0098】
(g)上記実施形態では、回転ローラ38の外側にX線源41が配置され、回転ローラ38の内側にX線カメラ42が配置された構成となっているが、両者の位置関係を逆にして、回転ローラ38の内側にX線源41を配置し、回転ローラ38の外側にX線カメラ42を配置した構成としてもよい。
【0099】
(h)撮像手段の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、回転ローラ38の最上点に達したポケット部2に充填された錠剤5を撮像可能なように、X線カメラ42はその撮像方向が真上を向くように設置されているが、X線カメラ42の向きは、これに限定されず、例えば斜め上方を向くように設置された構成としてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、回転ローラ38の軸線Z1方向に沿って複数台のX線カメラ42が真っすぐに並んで設置されているが、これに限らず、各X線カメラ42の間隔が比較的狭い場合等においては、例えば回転ローラ38の周方向に対しX線カメラ42を1つおきに前後にずらし、複数台のX線カメラ42がジグザグ状に配置された構成としてもよい。さらに、回転ローラ38の軸線Z1方向における各ポケット受け孔部57に対応して、複数台のX線カメラ42を配置することが困難な場合等においては、例えば回転ローラ38を複数台用意し、PTPフィルム6の幅方向におけるポケット部2の各列ごとに、異なる回転ローラ38で撮像を行う構成としてもよい。
【0101】
(i)錠剤5の外観検査の手順は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、二値化処理を行い、当該二値化画像データを基に錠剤領域を特定する構成となっているが、これに限らず、例えば二値化処理を行わず、二次元画像データを基に所定の閾値未満の明度領域を検出し、該明度領域から錠剤領域を特定する構成としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、錠剤の面積Sxと面積基準値Soとの差が判定許容値Px以下か否かを判定することにより良否判定を行っているが、これに限らず、例えば錠剤5の周囲長が許容範囲内か否かを基に判定を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、6…PTPフィルム、8…PTP包装機、17…錠剤検査装置、37…外防壁、37a,37b…開口部、38…回転ローラ、39…内防壁、41…X線源、42…X線カメラ、43…画像処理装置、57…ポケット受け孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートを製造するにあたり、帯状の容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容され、当該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状のカバーフィルムが取着された後の帯状のPTPフィルムにおいて前記錠剤の検査を行う錠剤検査装置であって、
前記PTPフィルムのポケット部に対応したポケット受け孔部を有し、当該ポケット受け孔部に前記ポケット部を嵌め込みつつ、前記PTPフィルムの搬送に伴い回転可能に設けられたX線遮蔽材よりなる筒状の回転体と、
前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部の方に向けX線を照射可能なように、前記回転体の内側又は外側のいずれか一方側に配置されたX線源と、
前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部に嵌め込まれた前記ポケット部を透過してくるX線を撮像可能なように、前記X線源に対向して前記回転体の内側又は外側の他方側に配置された撮像手段と、
前記回転体、前記X線源及び前記撮像手段を収容したX線遮蔽材よりなる外防壁と、
前記撮像手段により撮像された画像データを基に、前記錠剤の検査を行う検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記回転体の内側において、当該回転体内に配置された前記X線源又は前記撮像手段を囲むように配置されると共に、少なくとも前記回転体の所定回転位置にくる前記ポケット受け孔部に対向する側が開口したX線遮蔽材よりなる内防壁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記回転体の上流側で搬送される前記PTPフィルムと下流側で搬送される前記PTPフィルムとの成す角度を90°以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225666(P2012−225666A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90946(P2011−90946)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】