説明

録画装置及び方法

【課題】入力される映像データを録画するための記憶装置の容量が映像データの録画に必要な容量に対して不足する場合でも、画質の低下をできるだけ抑えて映像データを録画することが可能な録画装置及び録画方法を提供する。
【解決手段】録画のために使用可能な記憶装置(153、154)の容量を取得する第1取得部(152)と、録画に必要な記憶装置の容量を取得する第2取得部(1092)と、録画対象の映像データの一部の領域をクロップ処理により切り出し、前記録画対象の映像データよりも画素数の少ない映像データを生成する切り出し部(110)と、前記切り出し部により生成される映像データを記憶装置に録画する録画部(151)と、を備え、前記切り出し部は、前記録画対象の映像データから切り出す領域を、該切り出した映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量が前記使用可能な容量以下になるように決定する(1093)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ放送番組を録画する録画装置及び録画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送ではハイビジョン映像(画素数1920×1080。2k、HDともいう)が一般的となっており、今後さらに高解像度の4k映像(画素数4096×2160)やスーパーハイビジョン映像(画素数7680×4320。8k、SHVともいう)といった超高精細映像の放送(以下、SHV放送という)も検討されている。SHV放送は、その伝送及び記録に従来のHD放送と比較して大幅に広い帯域を必要とする。現在検討されている高度衛星デジタル放送のビットレートは最大140Mbpsを想定しており、SHV放送もこの範囲のビットレートで行われることが想定される。そのため、SHV放送番組をレコーダで録画するには、大きな記録容量が必要となる。例えば、ビットレート140MbpsのSHV放送番組を1時間録画する場合、記録容量は60GB以上必要になり、現在一般的に入手できるDVDやBDのような記録メディアでは記録容量が足りない。また、記憶装置として大容量HDDを搭載するレコーダで録画する場合でも、HDDの残容量が足りない場合や、より少ない容量で番組を録画したいというユーザニーズも考えられる。
【0003】
特許文献1には、記憶装置の残容量が番組録画に必要な容量に足りない場合に、放送映像からフレームを間引き、ダウンコンバートを行い、再エンコード処理を行った映像を録画する録画方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−228837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでSHV放送の視聴環境としては、従来のHD放送を想定した表示装置よりも大画面の表示装置が想定されているため、従来のHD放送の視聴を想定した表示装置で表示するためにSHV放送映像を縮小すると見難い映像になってしまう可能性がある。また、上記特許文献1に記載の方法をSHV放送番組の録画に適用した場合、ダウンコンバート処理に起因して画質が著しく低下し、特にHD放送を想定した表示装置で視聴した場合に見難い映像になってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、入力される映像データを録画するための記憶装置の容量が映像データの録画に必要な容量に対して不足する場合でも、画質の低下をできるだけ抑えて映像データを録画することが可能な録画装置及び録画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力される映像データを記憶装置に録画する録画装置であって、
録画のために使用可能な前記記憶装置の容量を取得する第1取得部と、
録画対象の映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量を取得する第2取得部と、
前記第2取得部により取得される前記必要な容量が前記第1取得部により取得される前記使用可能な容量を超えている場合、前記録画対象の映像データの一部の領域を切り出し、前記録画対象の映像データよりも画素数の少ない映像データを生成する切り出し部と、
前記切り出し部により生成される映像データを前記記憶装置に録画する録画部と、
を備え、
前記切り出し部は、前記録画対象の映像データから切り出す領域を、該切り出した映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量が前記使用可能な容量以下になるように決定することを特徴とする録画装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力される映像データを録画するための記憶装置の容量が映像データの録画に必要な容量に対して不足する場合でも、画質の低下をできるだけ抑えて映像データを録画することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のTV装置の構成図
【図2】実施例1の放送局指定切り出し領域情報の例
【図3】実施例1の放送局指定切り出し領域と録画用切り出し領域の例
【図4】実施例1の録画モード選択画面例
【図5】実施例1の切り出し録画処理を表すフローチャート
【図6】実施例2の放送局指定切り出し領域と録画用切り出し領域の例
【図7】実施例2の放送局指定切り出し領域情報の例
【図8】実施例2の放送局指定切り出し領域の組み合わせ例
【図9】実施例2の切り出し録画処理を表すフローチャート
【図10】MPEGデータに放送局指定切り出し領域情報を格納する例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照しながら、本発明の一実施例について説明する。本実施例は、SHV放送を受信及び録画する機能を有するデジタルテレビ放送受信装置(以下、TV装置ともいう)へ本発明を適用した例である。本実施例のTV装置は、SHV放送の受信及び録画ができるが、表示性能はHDサイズとする。以下の説明において「サイズ」という用語は、特に断らない限り画素数(ドット数)で表した解像度を意味するものとする。
【0011】
(実施例1)
図1(A)は本実施例に係るTV装置全体のブロック図である。
アンテナ101は、複数の映像、音声及び各種データ(番組情報データ、マルチメディアデータ等)が多重化されデジタル変調されたデジタルテレビ放送信号を受信する。
チューナ部102は、アンテナ101より受信したデジタルテレビ放送信号の増幅及び選局を行い、映像、音声及び各種データが多重化されたTSデータを復調する。チューナ部102は、SHV放送を受信できる性能を有している。チューナ部102は本発明の「受信部」を構成する。
分離部103は、前記TSデータを、映像及び音声データ、後述するコンポーネント記述子を含む番組情報データ、データ放送データ(データ放送コンテンツ、制御文書、その他データ放送用データ)等に分離する。分離部103は、映像及び音声データを後述のデコーダ部104へ出力し、番組情報データ及びデータ放送データを内部バスS199経由で後述する録画領域制御部109へ出力する。また、分離部103は、録画再生用の録画データの送信を行い、後述する録画再生部151へ出力する。
デコーダ部104は、分離部103により分離された映像及び音声の符号化データを映像データ及び音声データに復号(デコード)し、それぞれ音声制御部105及び表示制御部107へ出力する。
音声制御部105は、デコーダ部104及び内部バスS199よりの音声データを、切り替え又は合成するとともに、その音量、音質及び音場効果処理(臨場感付加など)を制御し、後述する音声出力部106へ出力する。
音声出力部106は、音声制御部105より入力された音声信号を増幅し、音声を出力するスピーカである。
表示制御部107は、デコーダ部104よりの映像データと、内部バスS199より送られる映像データ、OSDやGUIなどのグラフィックデータ、データ放送データ等を合成するとともに、輝度や色合い等の画像処理を制御し、表示部108へ出力する。
表示部108は、表示制御部107よりの映像データを表示する表示装置である。
録画領域制御部109は、分離部103により分離された番組情報と、番組を録画するための記憶装置の容量の情報(記録メディア容量情報)とを内部バスS199経由で取得する。そして、後述する切り出し領域を制御するための情報(切り出し領域制御情報)を生成し、切り出し部110を制御する。切り出し領域とは、SHVサイズの映像データの一部の領域をクロップ処理により切り出し、HDサイズやSDサイズその他のSHVサイズの映像データよりも画素数の少ない(低解像度)映像データを生成するための領域である。詳細は後述する。録画領域制御部109は本発明の「切り出し部」を構成する。
切り出し部110は、録画領域制御部109よりの切り出し領域制御情報に基づき、デコーダ部104よりの映像データから切り出し領域の映像データを切り出し、エンコーダ部111へ出力する。
エンコーダ部111は、記憶装置への記録のために切り出し部110により切り出された映像データをエンコードするもので、本実施例ではHDサイズまでの映像データを複数ストリーム同時にエンコード可能な処理能力を有するものとする。切り出し部110は本発明の「切り出し部」を構成する。
録画再生部151は、分離部103及びエンコーダ部111より録画データを受信し、記録メディア153及び/又はHDD装置154へ記録する。記録メディア153は録画データ記録用の外部記録メディアであり、DVDやBD等である。HDD装置154はTV装置に搭載された固定ディスクである。なお、HDD装置154は、外部メディアと同様に取り外し及び交換可能に構成されていても良い。記録メディア153及びHDD装置154は本発明の「記憶装置」を構成する。録画再生部151は、記録メディア153又はHDD装置154に記録された録画データを読み出し、デコーダ部104へ出力し、再生を行う。録画再生部151は本発明の「録画部」を構成する。
【0012】
メディア容量検出部152は、録画再生部151へセットされた記録メディア153やHDD装置154の記録容量の残量(記録可能容量)を監視し、記憶している。メディア容量検出部152が記憶している記録メディア153やHDD装置154の記録可能容量は、システム制御部199よりの制御により録画領域制御部109等へ読み出される。メディア容量検出部152は本発明の「第1取得部」を構成する。また、本実施例でいう記録可能容量は本発明の「使用可能な容量」に相当する。
UI部191は、リモコン、本TV装置のスイッチ、ボタンの押下により本TV装置の制御信号を発生させ、該制御信号はシステム制御部199へ送られる。
メモリ部192は、分離部103よりのデータ放送データ、番組情報データ等の放送関連データ、システム制御部199が実行するプログラム、また該プログラム実行のために必要な各種テーブルの格納領域である。また、前記プログラムの動作に必要なワークメモリも含まれる。
システム制御部199は、本TV装置の各部を統括的に制御する。システム制御部199はCPU、主記憶、バス制御部、プログラム格納部、パラメータ保存部、時計部、タイマ部(以上不図示)を有しており、以下の制御を行う。すなわち、放送受信及び選局においては、チューナ部102及び分離部103の制御を行い、チャネル切り替え指示を行う。そして、復調して得られたTSデータからの映像及び音声データと、番組情報データ、データ放送データとの分離及びデコードを制御する。そして、音声制御部105及び表示制御部107へのデータ転送を制御し、音声出力部106による音声出力及び表示部108による映像表示を制御する。また、TSデータからの番組情報データ及びデータ放送データなどの番組付加データの分離及びメモリ部192への格納、該データの必要に応じた
読み出し、それに基づくTV装置の制御を行う。また、データ放送表示、2画面表示又は電子番組表表示といったTV装置に備わるアプリケーションの起動及び実行を制御する。また、録画領域制御部109及び録画再生部151を制御し、放送番組の録画を制御する。また、録画再生部151を制御し、記録メディア153やHDD装置154に記録された録画データ(映像及び音声データ)のデコーダ部104による再生を制御する。また、本TV装置自体の出力するユーザへのメッセージやユーザ操作用のGUIの生成及び表示を制御する。また、前記アプリケーションやGUI、EPG等において表示すべきデータを生成し、内部バスS199経由で表示制御部107へ出力する。また、UI部191のリモコン、スイッチ、ボタン操作により発生する制御信号の送受信を制御し、本TV装置の制御信号を取得する。
内部バスS199は、上記説明した各部の制御、各部への情報の転送に使用される、本TV装置内の内部制御バスである。尚、本TV装置は、2つの放送受信が可能なようになっている。
【0013】
図1(B)は、上記録画領域制御部109の詳細を示した図である。
切り出し指定検出部1091は、分離部103より出力される番組情報を内部バスS199経由で取得し、番組情報の中に放送局がSHV映像から切り出す領域として指定する領域(放送局指定切り出し領域)の情報が含まれるか調べる。そして、放送局指定切り出し領域情報が含まれる場合はその内容を切り出し領域決定部1093へ送る。切り出し指定検出部1091は本発明の「第3取得部」を構成する。本実施例の放送局指定切り出し領域情報は、本発明の「映像データに関連付けられ、映像データから切り出すべき領域を指定する情報」であって、特に「テレビ放送番組に関連付けられてテレビ放送により送信される情報」である場合に相当する。
必要容量検出部1092は、分離部103より出力される番組情報に基づいて録画対象番組のビットレート及び放送時間を検出し、録画対象番組を録画するために必要な記録容量を算出し、切り出し領域決定部1093に送る。必要容量検出部1092は本発明の「第2取得部」を構成する。
切り出し領域決定部1093は、内部バスS199経由で、録画再生部151にセットされる記録メディア153及び/又はHDD装置154の記録可能容量(残量)を検出する。そして、切り出し指定検出部1091よりの放送局指定切り出し領域情報と、必要容量検出部1092よりの録画対象番組のビットレート及び放送時間と、に基づき、実際の録画の対象とする切り出し領域(録画用切り出し領域)を決定する。そして、それに基づいて、SHV映像から録画用切り出し領域を切り出すための制御情報(録画用切り出し制御情報)を切り出し制御部1094へ出力する。切り出し領域決定部1093は本発明の「切り出し部」を構成する。
切り出し制御部1094は、切り出し領域決定部1093よりの録画用切り出し制御情報に基づき、切り出し部110を制御し、前記デコーダ部104よりの映像データからの録画用切り出し領域の切り出しを指示する。切り出し制御部1094は本発明の「切り出し部」を構成する。
【0014】
図2は、上述した放送局指定切り出し領域情報の具体例を示したものである。この例では、放送局指定切り出し領域情報は、切り出し有無、切り出し形状、切り出し基準位置、切り出しサイズ、ビットレートの各項目で構成される。
切り出し有無は、番組内の放送局指定切り出し領域の存在数を示しており、存在しない場合の値は‘0’であり、存在する場合の値はその存在数である。
切り出し形状は、放送局指定切り出し領域の形状が記述される。図2の例では放送局指定切り出し領域は領域A、領域B及び領域Cの3つがあり、その形状はすべて矩形である。後述するように矩形以外の形状(楕円など)もあり得る。
切り出し基準位置及び切り出しサイズは、放送局指定切り出し領域を特定するために必要なパラメータが記述され、切り出し形状によって内容が変わる。切り出し形状が矩形の
場合、図2に示すように、矩形領域の左上の頂点座標(Xs,Ys)がそれぞれ「切り出し基準位置1」及び「切り出し基準位置2」に格納される。また、矩形領域の水平サイズ(横方向切り出しサイズ)及び垂直サイズ(縦方向切り出しサイズ)がそれぞれ「切り出しサイズ1」及び「切り出しサイズ2」に格納される。矩形の切り出し領域の左上頂点の座標Xsを「横方向切り出し位置」、座標Ysを「縦方向切り出し位置」ともいう。後述するように、切り出し形状が楕円の場合、2つの焦点座標及び2焦点からの距離の和が放送局指定切り出し領域を特定するために必要なパラメータとして「切り出し基準位置」及び「切り出しサイズ」に格納される。
ビットレートは、各切り出し領域を単独で送信した場合の帯域である。
本実施例では、以上説明したような放送局指定切り出し領域情報は、日本国内のデジタル放送の標準規格であるARIB(電波産業会)規格に規定された番組情報データを拡張して伝送されるものとする。ARIB規格によるデジタル放送においては、映像や音声、番組に関する種々の情報をPSI/SIデータ内に各種テーブルとして埋め込み、送出することができる。本実施例では、上記放送局指定切り出し領域情報のうち、切り出し有無、切り出し形状、切り出しサイズ及びビットレートの各項目は、EITに挿入されるコンポーネント記述子と拡張形式イベント記述子、PMTを拡張して伝送されるものとする。ここでEIT(Event Information Table)及びPMT(Program Map Table)は、番組名、放送日時、放送時間、番組内容など番組に関する情報を送る情報テーブルとしてARIB規格で規定されている。EITにはSHV放送の映像情報(解像度、ビットレートなど)も格納される。
【0015】
図3(A)は、SHV放送映像の全画面(7680×4320)における、図2で例示した3つの放送局指定切り出し領域A(1920×1080)、領域B(720×480)及び領域C(320×240)の位置関係を示している。図3(A)では、領域A,領域B及び領域Cが領域A⊃領域B⊃領域Cの包含関係にある場合を例示しているが、放送局指定切り出し領域が常にこのような包含関係にあるとは限らない。
【0016】
図3(B)は、本実施例において、放送局指定切り出し領域の位置に応じて録画用切り出し領域を決定する例を示した図である。本実施例では、録画先として選択された記憶装置(記録メディア153及び/又はHDD装置154)の残量(メディア容量検出部152により検出。以下「記録可能容量」と称する)内で録画対象番組を録画する場合に可能な最大ビットレートを算出する。例えば記録可能容量が20GBで録画対象番組が2時間であれば最大約20Mbpsで録画することができる。なお、ユーザが録画のために使用したい容量を指定できるようなユーザインターフェースを備え、該指定された容量を「記録可能容量」としても良い。
放送局指定切り出し領域のうち、そのビットレートが前記記録可能容量に応じて算出した最大ビットレート以内であるような切り出し領域を、録画用切り出し領域を決定するための基準となる領域(録画用切り出し領域ベース)とする。図2の例では、録画可能最大ビットレート20Mbps以内でビットレート最大の放送局指定切り出し領域は12Mbpsの領域Aである。
そして、録画可能最大ビットレートに基づいて録画可能な最大の画面サイズ(録画可能最大切り出しサイズ)を算出する。録画可能最大ビットレートが20Mbpsで、放送局指定切り出し領域Aと同一のエンコード設定を用いる場合、録画可能最大切り出しサイズはSHV放送番組と同じアスペクト比では2464×1386である。この録画可能最大切り出しサイズの領域であって、前記決定した録画用切り出し領域ベースを包含する領域を、実際に録画するために切り出す領域である「録画用切り出し領域」として決定する。すなわち、録画用切り出し領域は、録画用切り出し領域ベースを録画可能最大切り出しサイズまで拡張した領域として決定される。この処理は、本発明において、切り出した映像データを全て録画するために必要な容量が使用可能な容量以下になるように切り出し領域を決定することに相当する。
【0017】
図3(B)には、録画用切り出し領域ベース(領域A)が画面中央部にあるケース1(切り出し基準位置(Xs1,Ys1))と、録画用切り出し領域ベースが画面右上にあるケース2(切り出し基準位置(Xs12,Ys12))との2つの例を示している。図3(B)において破線の矩形は録画用切り出し領域ベースを示し、その回りの実線の矩形は当該録画用切り出し領域ベースに応じて定められた録画用切り出し領域を示す。図3(B)において、SHV放送番組の縦サイズをYZ、横サイズをXZとする。また、録画用切り出し領域ベース(領域A)の縦サイズ(図2のテーブルの「切り出しサイズ1」の値)をYG、横サイズ(同「切り出しサイズ2」の値)をXGとする。また、録画可能最大切り出しサイズの縦の値をYK、横の値をXKとする。座標の原点は左上とする。
【0018】
ケース1では、録画用切り出し領域ベースがSHV放送画面の中央付近にあるので、図3(B)に示すように、録画用切り出し領域ベースを録画可能最大切り出しサイズまで横方向及び縦方向に均等に拡張した領域をSHV放送画面内に確保することができる。この場合、録画用切り出し領域ベースを横方向及び縦方向に当該均等に拡張した領域を録画用切り出し領域とする。例えば、録画可能最大切り出しサイズ(XK×YK)が2464×1386、録画用切り出し領域ベースのサイズ(XG×YG)が1920×1080の場合、横方向に272画素ずつ、縦方向に153画素ずつ拡張した領域を録画用切り出し領域とする。ケース1は、本発明における「指定される領域が切り出す領域の中央に位置するように切り出す領域を決定する」場合に相当する。
【0019】
一方、ケース2では、録画用切り出し領域ベースがSHV放送画面の右上端にあるので、図3(B)に示すように、録画用切り出し領域ベースをSHV放送画面内で録画可能最大切り出しサイズまで拡張する場合、上方向と右方向には拡張できない。この場合、録画用切り出し領域ベースからSHV放送画面の端方向にはSHV放送画面内で可能な範囲で最大限拡張し、残りを反対方向に拡張する。例えば、ケース1の例で録画用切り出し領域ベースがSHV放送画面右上端にある場合、左方向に545画素、下方向に306画素拡張した領域を録画用切り出し領域とする。ケース2は、本発明おける「指定される領域が切り出す領域の中央に位置するように切り出す領域を決定した場合該切り出す領域の一部が録画対象の映像データのフレーム外に出る場合」に相当する。図3(B)の例では、「切り出す領域が越えることになるフレームの端部」は、SHV放送画面の上辺及び右辺である。従って、図3(B)の例では、SHV放送画面の上辺及び右辺を基準として録画用切り出し領域を決定している。
【0020】
このように、本実施例のTV装置では、ユーザは、放送局が指定する切り出し領域に基づいて録画対象番組の画面の一部の領域を切り出して録画するオプションを選択することができる。その他、従来通り録画対象番組の画面全域をダウンコンバートにより縮小して録画するオプションも選択することができる。放送局指定切り出し領域情報が存在しない番組では、画面中央部を切り出して録画するオプションも選択できる。
従って、ユーザは、録画対象番組を放送ビットレートのまま録画するためには記録可能容量が不足する場合や、ユーザが指定する記録容量以内で録画対象番組を録画したい場合に、上記複数のオプションのうちから選択して録画を行うことができる。
【0021】
そのために、本実施例のTV装置は、図4に示すような録画オプションの選択をユーザに行わせるGUIを表示する。図4(A)は放送局指定切り出し領域情報が有る場合の録画オプション選択画面例である。図4(B)は放送局指定切り出し領域情報が無い場合の録画オプション選択画面例である。図4において、「放送局指定ぴったり録画」は、放送局指定切り出し領域情報に基づいて録画用切り出し領域を決定して切り出し録画するモードである。「中央切り出しぴったり録画」は、放送画面の中央部を切り出し領域として切り出し録画するモードである。図4に示すように、この録画モードは、放送局指定切り出
し領域情報の有無によらず選択可能にすることもできる。「全体縮小ぴったり録画」は、放送画面全体をダウンコンバートして縮小して録画するモードであり、これは従来記録可能容量が不足する場合等に行われている一般的な録画方法である。
【0022】
図5は本実施例のTV装置による放送番組録画処理を説明するためのフローチャートである。
まず、ユーザは録画したいチャンネルを選局し、録画操作を実行する。事前にユーザが行った録画予約やユーザの指定した検索用語にマッチする番組の自動予約などに従ってTV装置が自動で録画処理を開始する場合も、以下の処理は同様である。
ユーザが録画操作すると、アンテナ101及びチューナ部102で放送受信が行われ、分離部103でEIT及びPMTを含む録画対象番組の付加情報が抽出される(St701)。
次に、付加情報のEITより、録画対象番組のビットレート情報及び放送時間を検出し、これらの積を演算し、該録画対象番組を放送ビットレートのまますべて記録するのに必要な記録容量(全画面記録容量)を算出する(St703)。
次に、記録可能容量又はユーザ指定の記録容量を調査する(St704)。本実施例のTV装置は、番組録画操作時に、ユーザが当該番組録画のために使用する記録容量を指定することが可能な機能を有しているとする。ユーザ指定の記録容量は、当該機能によりユーザが指定した記録容量である。以下、誤解の虞の無い場合は、メディア容量検出部152によって検出される記録メディア153及びHDD装置154の記録可能容量とユーザ指定の記録容量とを総称して記録可能容量という場合がある。
次に、前記全画面記録容量が、記録可能容量以内かどうか判定し(St705)、記録可能容量以内であれば録画対象番組の全画面を放送ビットレートのまま記録する(St751)。一方、記録可能容量を超える場合は、前記付加情報のEITのコンポーネント記述子を調査し、放送局指定切り出し領域情報が存在するか否か判定する(St711)。
【0023】
放送局指定切り出し領域情報が存在する場合(St711:Yes)、EITのコンポーネント記述子及び拡張形式イベント記述子より、切り出し領域の形状、サイズ、ビットレートを取得する。また、PMTの切り出し情報記述子より切り出し領域の基準位置を取得する(St712)。
次に、前記記録可能容量と前記録画対象番組の放送時間に基づいて録画可能最大ビットレートを算出する(St713)。
次に、放送局指定切り出し領域の中に、そのビットレートが前記St713で算出した録画可能最大ビットレート以内のものが存在するかどうかを調査する(St714)。存在する場合、ユーザに図4で例示したように、放送局指定切り出し領域に基づく切り出し録画モードを含む録画オプションの選択画面を提示する(St715)。ユーザが放送局指定切り出し録画を選択した場合(St716:Yes)、放送局指定切り出し領域情報に含まれる、録画可能最大ビットレート以内のビットレートの領域が複数有るか否か調査する(St717)。録画可能最大ビットレート以内の放送局指定切り出し領域が1つだけである場合は、該放送局指定切り出し領域を録画用切り出し領域ベースとする。一方、録画可能最大ビットレート以内の放送局指定切り出し領域が複数存在する場合、本実施例では、その中のビットレート最大の領域を録画用切り出し領域ベースとする(St718)。
【0024】
尚、図3(A)の例では、複数の放送局指定切り出し領域はビットレートの大きさに応じた包含関係にあり、録画可能最大ビットレート以内でビットレート最大の領域は1つのみであるから、St718における選択は一意に定まる。しかしながら、放送局指定切り出し領域情報によっては、録画可能最大ビットレート以内でビットレート最大の放送局指定切り出し領域が複数存在する場合もあり得る。そこで、放送局指定切り出し領域情報に、優先順位の情報を含ませるようにし、優先順位の高い領域を録画用切り出し領域ベース
とするようにしても良い。あるいは、録画可能最大ビットレート以内でビットレート最大の放送局指定切り出し領域の一部又は全てを選択肢としてユーザに提示するGUIを出力し、ユーザに当該複数のうちの一の放送局指定切り出し領域を選択させるようにしても良い。
【0025】
次に、記録可能容量内に出来る限り最大限録画されるように、録画用切り出し領域ベースを拡張して録画用切り出し領域を決定する処理を行う。まず、録画用切り出し領域ベースとして選択された放送局指定切り出し領域と同一のアスペクト比で録画可能最大ビットレートでエンコード可能な画素数を算出する。そして、St718で決定した録画用切り出し領域ベースと同じアスペクト比になるように縦と横のサイズを決定し、録画可能最大切り出しサイズを決定する(St720)。
次に、録画用切り出し領域の左上頂点座標(XsK,YsK)を決定する。まず、録画用切り出し領域ベースの各辺からSHV放送画面の端までのサイズが、すべての方向で
(録画可能最大切り出しサイズ−録画用切り出し領域ベースのサイズ)/2
以上あるかどうか調査する(St721)。具体的には、縦方向に関しては、録画用切り出し領域ベースの上辺からSHV放送画面の上端までのサイズ及び録画用切り出し領域ベースの下辺からSHV放送画面の下端までのサイズが両方とも(YK−YG)/2以上か判定する。また、横方向に関しては、録画用切り出し領域ベースの右辺からSHV放送画面の右端までのサイズ及び録画用切り出し領域ベースの左辺からSHV放送画面の左端までのサイズが両方とも(XK−XG)/2以上か判定する。
【0026】
録画用切り出し領域ベースの上下左右全ての辺について上記判定が肯定判定される場合、録画用切り出し領域ベースが録画用切り出し領域の中央に位置するように録画用切り出し領域ベースを録画可能最大切り出しサイズまで各辺均等に拡張可能である。この場合、録画用切り出し領域の左上頂点座標(XsK,YsK)は、以下の式で算出される。
XsK=Xs1−((XK−XG)/2)
YsK=Ys1−((YK−YG)/2)
この座標から横方向XK、縦方向YKのサイズの領域が録画用切り出し領域となる(St722)。
【0027】
一方、録画用切り出し領域ベースの上下左右のいずれかの辺について上記判定が否定判定される場合、当該否定判定された辺に対応するSHV放送画面端から録画可能最大切り出しサイズの領域を録画用切り出し領域とする(St723)。例えば、図3(B)のケース2では、録画用切り出し領域ベースの上辺からSHV放送画面上端までのサイズが0であり、(YK−YG)/2未満である。従って、録画用切り出し領域の縦方向は、SHV放送画面上端から録画可能最大切り出しサイズ(YK)の領域として決定する。また、録画用切り出し領域ベースの右辺からSHV放送画面の右端までのサイズが0であり、(XK−XG)/2未満であるので、録画用切り出し領域の横方向は、SHV放送画面の右端から録画可能最大切り出しサイズ(XK)の領域として決定する。従って、録画用切り出し領域の左上頂点座標(XsK2,YsK2)は、以下の式で算出される。
XsK2=XZ−Xs12
YsK2=0
この座標から横方向XK、縦方向YKのサイズの領域が録画用切り出し領域となる。
【0028】
次に、切り出し制御部1094は、以上のように決定された録画用切り出し領域の情報に基づいて切り出し部110を制御し、SHV放送画面から録画用切り出し領域の映像の切り出し指示を行う。該指示を受けた切り出し部110が切り出し処理を行った後、エンコーダ部111が該切り出した映像をエンコードし、録画再生部151へ記録する(St724)。
St711で放送局指定切り出し領域情報が無い場合及びSt714でビットレートが
録画可能最大ビットレートの放送局指定切り出し領域が無い場合、図4と同様に、放送局指定切り出し領域に基づく録画以外の録画オプションをユーザに提示する。例えば、SHV放送画面の中央部から録画可能最大ビットレートになるよう録画用切り出し領域を切り出して録画する録画モード(中央切り出しぴったり録画)を選択肢としてユーザに提示する。更に、SHV放送画面全体を録画可能最大ビットレートになるようダウンコンバートして録画する録画モード(全体縮小ぴったり録画)を選択肢としてユーザに提示する(St761)。
中央切り出しぴったり記録が選択された場合(St762:Yes)、SHV放送画面の中央部から録画可能最大ビットレートになるよう録画用切り出し領域を決定し(St764)、前述と同様に切り出し、エンコード及び記録を行う(St724)。
全体縮小ぴったり録画が選択された場合(St762:No)、SHV放送画面全体をダウンコンバート後、エンコード及び記録を行う(St763)。
このようにして、放送局指定切り出し領域を拡張した領域、あるいは全画面中央を中心として、指定された記録容量ぴったりになるように記録する。
【0029】
従来ある全画面をダウンコンバートして縮小録画する方法では、特に超高精細映像であるSHV放送の場合、例えば文字がつぶれて読みにくくなったり人物が小さくなり過ぎてしまったりするため、ユーザに良好な視聴体験を提供できない可能性がある。特に、HD解像度の表示装置に表示させて視聴する場合、この問題はより顕著である。一方、超高精細映像の中から放送局指定切り出し領域や中央部の領域を切り出して録画する場合、画質劣化の要因となる縮小処理が入らないので、見難い映像になることを抑制できる。画面中央部には映像の中の重要なコンテンツが写っていることが多く、また、放送局が映像制作段階で重要なコンテンツ部分を切り出し領域として指定しておけば、視聴者は放送画面の一部を切り出した映像であっても、番組を十分に楽しむことがでる。よって、放送画面全体をダウンコンバートして縮小する場合よりも良好な視聴体験をユーザに提供することが可能になる。
【0030】
(実施例2)
次に本発明の第2の実施例を説明する。上述の実施例1では、SHV放送画面から1つの領域を録画用切り出し領域として切り出して録画する例について説明したが、実施例2では、SHV放送画面から複数の領域を録画用切り出し領域として切り出して録画する例について説明する。本実施例において実施例1と同等の構成要素については実施例1と同じ名称及び符号を用い、詳細な説明を割愛する。
本実施例では、録画対象のSHV放送番組は、放送時間2時間、ビットレート140Mbpsとする。この番組を放送ビットレートのまま全て記録するために必要な記録容量は約140GBである。一方、記録メディア153又はHDD装置154の残容量(記録可能容量)は20GBとする。該記録可能容量内で2時間番組を録画する場合、録画可能最大ビットレートは約20Mbpsである。従って、該記録可能容量内でSHV放送番組を放送ビットレートでそのまま記録することはできない。
【0031】
図6(A)に示すように、このSHV放送番組には、6つの放送局指定切り出し領域(領域A、領域B、領域C、領域D、領域E及び領域F)が定められているものとする。放送局指定切り出し領域の数はあくまで例示であり、これに限らない。
【0032】
図7(A)は、このSHV放送番組の番組付加情報に含まれる放送局指定切り出し領域情報を示す。本実施例の放送局指定切り出し領域情報には、図2で例示した項目に加えて、「優先順位」の項目が含まれる。優先順位は、その数字の少ないものほど、優先順位が高く、重要な切り出し領域であることを示している。図7(A)の例では、領域A、領域B及び領域Cの3つの放送局指定切り出し領域は優先順位1、領域D及び領域Eは優先順位2、領域Fは優先順位3である。
【0033】
図9は本実施例のTV装置による放送番組録画処理を説明するためのフローチャートである。
まず、録画したい番組を選局及び受信し、記録可能容量を調査し、放送ビットレートでそのまま番組全体を録画できない場合は放送局指定切り出し領域情報の有無を確認する(St1101)。この処理は図5で説明した実施例1のSt701、St703、St704、St705及びSt711の処理と同じである。
放送局指定切り出し領域情報が存在する場合(St711:Yes)、該放送局指定切り出し領域情報を確認し、録画可能な放送局切り出し領域が複数存在するか否か調査する(St1111)。
録画可能な放送局指定切り出し領域が1つだけの場合は、実施例1と同様の処理を行う。すなわち、当該放送局指定切り出し領域を録画用切り出し領域ベースとし、録画可能最大切り出しサイズに基づいて録画用切り出し領域ベースを拡張して録画用切り出し領域を決定する。そして、SHV放送映像からの切り出し、エンコード及び録画を行う(St1118、St1120)。
一方、録画可能な放送局切り出し領域が複数ある場合、録画可能最大ビットレート内で可能な複数の放送局切り出し領域の組み合わせを決定する。まず、各放送局指定切り出し領域の優先順位と、画面上の包含関係(2つの領域のどちらかがどちらかの領域を包含しているか)を調査する。
そして、優先順位が同じ放送局指定切り出し領域で、包含関係にある領域を同一グループとして優先順位別にグルーピングを行う(St1112)。本実施例では、放送局指定切り出し領域の組み合わせパターンを作成する場合に、1つのグループの中からは1つの放送局指定切り出し領域のみを選択する。図6(A)及び図7(A)の例では、領域A、領域B及び領域Cは同一の優先順位1で包含関係にあるので、領域A、領域B及び領域Cは1つのグループに属し、この中から1つのみ選択して放送局指定切り出し領域の組み合わせを作る。
次に、優先順位1の放送局指定切り出し領域を含み、且つ合計ビットレートが録画可能最大ビットレート以内となる放送局指定切り出し領域の組み合わせを決定し、ユーザに提示し、その中の一の組み合わせをユーザに選択させる(St1113、St1114)。
【0034】
図8は、録画可能最大ビットレート(本実施例では20Mbps)内で可能な複数の放送局指定切り出し領域の組み合わせを示している。図8(A)は、ユーザに可能な組み合わせの選択肢を提示し、選択させるためのGUIの例を示す。図8(B)は、各可能な組み合わせ毎に、放送局指定切り出し領域のみを録画する場合に必要なビットレート(必要ビットレート)、録画可能最大ビットレートと必要ビットレートとの差分(余剰ビットレート)及び拡張対象領域を示す。拡張対象領域は、実施例1において録画用切り出し領域ベースを拡張して録画用切り出し領域を決定したように、録画用切り出し領域の決定において放送局指定切り出し領域に対して行う拡張処理の対象となる領域である。
【0035】
次に、ユーザが選択した組み合わせにおいて余剰ビットレートがあるか否か調査し(St1115)、余剰ビットレートがある場合は、組み合わせの中で優先順位の高い放送局指定切り出し領域を拡張対象領域に決定する(St1116、St1117)。
次に、拡張対象として決定された放送局指定切り出し領域に対して、実施例1で録画用切り出し領域ベースを拡張したのと同様の方法で拡張を行い、切り出しサイズと切り出し位置(左上頂点座標)を決定する(St1118)。
例えば、領域A(14Mbps)+領域D(3.5Mbps)+領域F(1Mbps)の組み合わせが選択された場合、必要ビットレートは18.5Mbpsであり、録画可能最大ビットレート20Mbpsに対する余剰ビットレートは1.5Mbpsである。よって、この3つの放送局指定切り出し領域の中で優先順位が最も高い領域Aが拡張対象領域に決定される。従って、録画用切り出し領域=(領域A+周辺)+領域D+領域Fとなる
。この場合、領域Aの座標及びサイズ、領域AとSHV放送画面端との距離、余剰ビットレートに応じて領域Aをベースとする拡張領域の座標及びサイズを決定する。そして、該拡張された領域A、領域D及び領域FをSHV放送映像から切り出し、それぞれエンコードし、複数の映像ストリームを有する録画ファイルとして多重化し、記録メディア153及び/又はHDD装置154に記録する(St1120)。
【0036】
以上説明したように、本実施例に係るTV装置によれば、放送局指定切り出し領域が複数存在する場合に、記録可能容量(録画可能最大ビットレート)を最大限使用できるように放送局指定切り出し領域を組み合わせて切り出し録画を行う。これにより、例えば、SHV解像度で放送されるスポーツ中継映像において、放送局は選手が写っている領域とスコアボードが写っている領域とを切り出し領域として指定して放送することができる。TV装置は、録画可能最大ビットレート内で両方の切り出し領域を録画できる場合、両方を録画することにより、両方の切り出し領域をダウンコンバート無しに録画することができる。これを再生する場合に、例えば選手の領域の映像にスコアボードの領域の映像をピクチャー・イン・ピクチャーのような画像処理を施せば、両方の映像を画質劣化を抑えて視聴することができる。このようなSHV放送映像全体をダウンコンバートにより縮小して録画すると、スコアボードのような文字部分は画質劣化により判読困難になってしまうことも考えられるが、本実施例に係る切り出し録画を行えばそのような画質劣化を抑制できる。よって、ユーザに良好な視聴体験を提供することが可能になる。
【0037】
尚、実施例2では、拡張対象の放送局指定切り出し領域を優先順位に基づいて決定する例を説明したが、グループ化される放送局指定切り出し領域を拡張処理対象に決定しても良い。これは、包含関係にある複数の放送局指定切り出し領域が存在する領域は重要な領域であると判断出来るからである。
また、実施例2では、拡張対象の放送局指定切り出し領域を1つ選択する例を説明したが、選択された組み合わせに係る複数の放送局指定切り出し領域それぞれに対して余剰ビットレートを分配するようにしても良い。その場合、各放送局指定切り出し領域のサイズに比例して余剰ビットレートを分配すると良い。
また、実施例2では、複数の放送局指定切り出し領域の可能な組み合わせの一覧をTV装置が作成してユーザに提示する例を説明したが、ユーザが自由に組み合わせることができるようにしても良い。その場合、各放送局指定切り出し領域のビットレートと録画可能最大ビットレートの情報を提示するGUIを表示する等してユーザの選択を支援するようにすると良い。
また、実施例2では、選択された組み合わせに係る複数の放送局指定切り出し領域を別個の映像ストリームとしてエンコードして多重化して録画する例を説明した。これに対し、選択された組み合わせに係る複数の放送局指定切り出し領域を全て包含するような単一の領域を録画用切り出し領域ベースとし、この録画用切り出し領域ベースを元に実施例1と同様に録画用切り出し領域を決定しても良い。図6(B)に、領域A、領域D及び領域Fの組み合わせが選択された場合に、この方法で決定される録画用切り出し領域ベース及び録画用切り出し領域の例を示す。この例は、本発明において、指定される切り出し領域が複数存在する場合に、指定される領域の一部又は全部を含む単一の領域として切り出し領域を決定することに相当する。
また、実施例1及び実施例2では、アンテナ101から放送波を受信する構成を例に説明したが、インターネットなどのIPネットワーク網からコンテンツ(番組)を受信して録画する装置にも本発明は適用可能である。その場合、当該コンテンツに埋め込まれる制作者指定切り出し領域情報をチューナやパソコンのような受信機、録画機で検出、処理すれば良い。
また、実施例1及び実施例2では、放送局指定切り出し領域の形状が矩形の場合のみ説明したが、形状は矩形に限定されるものではない。例えば、形状が楕円の場合の放送局指定切り出し領域情報の例を図7(B)に示す。楕円を特定する場合、2つの焦点の座標と
楕円上の点から2つの焦点までの距離の和という3つの値が必要となる。従って、図7(B)の例では、第1の焦点の座標が「切り出し基準位置1」及び「同2」で特定され、第2の焦点の座標が「切り出し基準位置3」及び「同4」で特定され、2つの焦点までの距離の和が「切り出しサイズ」で特定されている。放送局指定切り出し領域の形状が楕円の場合、録画用切り出し領域は当該楕円を包含する矩形領域として決定することができる。図6(C)は、楕円形状の放送局指定切り出し領域G204に応じて切り出し領域決定部1093が算出する録画用切り出し領域K204の例を示す図である。図6(C)の例では、SHV放送画面G201から録画用切り出し領域K204が切り出されて録画される。
また、実施例1及び実施例2では、放送局からの切り出し領域情報がEIT及びPMTに記述されて伝送される例を説明したが、放送局指定切り出し領域情報は映像に関連付けられて伝送・送信される場所であればどこに格納されても良い。例えば、PMTに全ての情報を格納しても良いし、メタデータとして映像とは別途伝送するようにしても良い。また、映像データのヘッダに付加することも可能である。図10は、MPEGストリームとして圧縮された映像データに放送局指定切り出し領域情報を付加する例を示す。図10は、MPEGストリームのシーケンス層及びその下のGOP層、ピクチャ層を示している。放送局指定切り出し領域情報は、ピクチャ層の拡張領域EIPに付加情報として記述することができる。図10の例は、本発明において映像データが制御情報を格納可能な符号化方式により符号化されており、当該符号化データの制御情報の中に映像データから切り出すべき領域を指定する情報が格納される場合に相当する。
また、実施例1及び実施例2は、SHV放送番組を録画する場合の処理を説明したが、放送番組の解像度はSHVに限らない。また、HD解像度の表示装置を備えたTV装置を例に説明したが、表示装置の解像度はHDに限らない。また、録画する場合に限らず、SHV放送番組をHD解像度の表示装置で表示させる場合に、放送局指定切り出し領域情報に基づいてSHV映像からHDサイズの映像を切り出して表示するようにしても良い。これにより、HD解像度の表示装置でSHV放送番組を視聴する場合にも見難くならないようにすることができる。
【符号の説明】
【0038】
109:録画領域制御部、110:切り出し部、111:エンコーダ部、151:録画再生部、152:メディア容量検出部、1092:必要容量検出部、1093:切り出し領域決定部、1094:切り出し制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される映像データを記憶装置に録画する録画装置であって、
録画のために使用可能な前記記憶装置の容量を取得する第1取得部と、
録画対象の映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量を取得する第2取得部と、
前記第2取得部により取得される前記必要な容量が前記第1取得部により取得される前記使用可能な容量を超えている場合、前記録画対象の映像データの一部の領域を切り出し、前記録画対象の映像データよりも画素数の少ない映像データを生成する切り出し部と、
前記切り出し部により生成される映像データを前記記憶装置に録画する録画部と、
を備え、
前記切り出し部は、前記録画対象の映像データから切り出す領域を、該切り出した映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量が前記使用可能な容量以下になるように決定することを特徴とする録画装置。
【請求項2】
前記録画対象の映像データに関連付けられた情報であって、該映像データから切り出すべき領域を指定する情報を取得する第3取得部を備え、
前記切り出し部は、前記第3取得部が取得した情報において切り出すべき領域として指定される領域を含むように前記切り出す領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の録画装置。
【請求項3】
前記切り出し部は、前記指定される領域が前記切り出す領域の中央に位置するように前記切り出す領域を決定することを特徴とする請求項2に記載の録画装置。
【請求項4】
前記切り出し部は、前記指定される領域が前記切り出す領域の中央に位置するように前記切り出す領域を決定した場合該切り出す領域の一部が録画対象の映像データのフレーム外に出る場合、該切り出す領域が越えることになるフレームの端部を基準として前記切り出す領域を決定することを特徴とする請求項2に記載の録画装置。
【請求項5】
前記切り出し部は、前記指定される領域が複数存在する場合、該複数の指定される領域の一部又は全部を含む単一の領域を前記切り出す領域として決定することを特徴とする請求項2に記載の録画装置。
【請求項6】
前記切り出し部は、前記指定される領域が複数存在する場合、該複数の指定される領域の一部又は全部をそれぞれ含む複数の領域を前記切り出す領域として決定し、前記録画対象の映像データから該決定した複数の領域をそれぞれ切り出し、前記録画対象の映像データよりも画素数の少ない複数の映像データを生成し、
前記録画部は、前記切り出し部により生成される複数の映像データを前記記憶装置に録画することを特徴とする請求項2に記載の録画装置。
【請求項7】
前記切り出し部は、前記複数の指定される領域の組み合わせであって、該組み合わせに含まれる領域を前記録画対象の映像データから切り出して生成した映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量が前記使用可能な容量以下になるような組み合わせを、ユーザに提示し、ユーザが選択した組み合わせに含まれる領域を前記切り出す領域として決定することを特徴とする請求項6に記載の録画装置。
【請求項8】
テレビ放送を受信する受信部を備え、
前記入力される映像データは前記受信部が受信するテレビ放送番組の映像データであり、
映像データから切り出すべき領域を指定する前記情報は、前記テレビ放送番組に関連付
けられてテレビ放送により送信される情報であることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の録画装置。
【請求項9】
前記入力される映像データは制御情報を格納可能な符号化方式により符号化されており、
映像データから切り出すべき領域を指定する前記情報は、前記入力される映像データの符号化データに制御情報として格納されていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の録画装置。
【請求項10】
入力される映像データを記憶装置に録画する録画方法であって、
録画のために使用可能な前記記憶装置の容量を取得する第1取得工程と、
録画対象の映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程において取得される前記必要な容量が前記第1取得工程において取得される前記使用可能な容量を超えている場合、前記録画対象の映像データの一部の領域を切り出し、前記録画対象の映像データよりも画素数の少ない映像データを生成する切り出し工程と、
前記切り出し工程において生成される映像データを前記記憶装置に録画する録画工程と、
を含み、
前記切り出し工程において、前記録画対象の映像データから切り出す領域を、該切り出した映像データを全て録画するために前記記憶装置に必要な容量が前記使用可能な容量以下になるように決定されることを特徴とする録画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142450(P2011−142450A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1284(P2010−1284)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】