説明

鍋底温度検出装置

【課題】 温度センサーが燃焼ガスから直接影響を受けず、故障しにくいとともに、過昇温度になりにくく、信頼性の高い鍋底温度検出装置を提供する。
【解決手段】 下方から照射されるガス炎によって熱せられる鍋底に当接可能な集熱板29と、上方開口縁部を前記鍋底に当接して前記集熱板29を包囲するとともに、前記集熱板29の下面から放射される赤外線が通過する空間を前記ガス炎から仕切る上方,下方防熱筒26,22と、前記上方,下方防熱筒26,22の下方側に位置し、前記上方,下方防熱筒26,22を通過した赤外線を受光して温度を検出する非接触温度センサー30と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋底温度検出装置、特に、ガスコンロの内炎式ガスバーナーで加熱される鍋底の温度を赤外線検出素子等からなる非接触温度センサーで検出する鍋底温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスコンロのガスバーナーで加熱される鍋底の温度を検出する装置としては、例えば、下記のようなガスコンロの鍋底温度検出装置がある(特許文献1)。
【0003】
すなわち、リング状ガスバーナー1の中央上方にセンサー保持体2を上下移動自在に配置し、該センサー保持体2の上部に鍋底温度を検出する接触式温度センサー3を設けることにより、鍋底の温度を検出する鍋底温度検出装置がある。特に、前記鍋底温度検出装置では、ガスバーナー1のガス炎に温度センサー3が直接晒されないように、前記センサー保持体2の周囲に防熱筒5が配置されている。
【特許文献1】特開平7−269872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のガスバーナー1は、そのガス炎が中央に向かって形成されているため、外炎式バーナーに比べ、温度センサー3自身に燃焼ガスの熱気が直接伝達しやすい。このため、前記鍋底温度検出装置は、前記温度センサー3が故障しやすいだけでなく、検出温度が実際の鍋の温度よりも高い過昇温度になりやすく、高い信頼性を得にくいという問題点がある。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑み、温度センサーが燃焼ガスから直接影響を受けず、故障しにくいとともに、過昇温度になりにくく、信頼性の高い鍋底温度検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる鍋底温度検出装置は、前記課題を解決すべく、下方から照射されるガス炎によって熱せられる鍋底に当接可能な集熱板と、上方開口縁部を前記鍋底に当接して前記集熱板を包囲するとともに、前記集熱板の下面から放射される赤外線が通過する空間を前記ガス炎から仕切る防熱筒と、前防熱筒の下方側に位置し、前記防熱筒を通過した赤外線を受光して温度を検出する非接触温度センサーと、からなる構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非接触温度センサーが内炎式ガスバーナーから離れた下方側に配置されているので、非接触温度センサー自身が高温のガス炎に直接晒されることがない。このため、故障が少ないとともに、過昇温度になりにくく、信頼性の高い温度検出が可能な鍋底温度検出装置が得られる。
【0008】
本発明にかかる実施形態としては、前記集熱板および前記防熱筒が、上下動自在に支持されていてもよい。
本実施形態によれば、集熱板が防熱筒の上方開口縁部で内炎式ガスバーナーのガス炎から常に仕切られるので、過昇温度になりにくく、より一層信頼性の高い鍋底温度検出装置が得られる。
【0009】
本発明にかかる他の実施形態としては、前記集熱板の下面に、赤外線の放射率を高める処理膜を形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、感度が良くなるとともに、防熱筒から放射された赤外線の反射を抑制し、検出精度がより一層向上する。
【0010】
本発明にかかる別の実施形態としては、集熱板と赤外線受光素子とを結ぶ光路に、ガス炎から放射される短波長の赤外線をカットするフィルターを配置しておいてもよい。
本実施形態によれば、ガス炎から放射される短波長の赤外線をカットすることにより、ガス炎のノイズを除去でき、検出誤差を少なくできる。
【0011】
本発明にかかる異なる実施形態としては、集熱板と赤外線受光素子とを結ぶ光路に、赤外線を集光するレンズや、反射面を形成する集光部品を配置することにより、検出する赤外線を効率的に集めてもよい。
本実施形態によれば、非接触温度センサーを集熱板からより一層遠い位置に配置できる。このため、非接触温度センサーに対する周囲の温度による影響を防止でき、検出精度の高い鍋底温度検出装置が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にかかる鍋底温度検出装置の実施形態を図1ないし図8の添付図面に従って説明する。
第1実施形態は、図1ないし図4に示すように、ガスコンロの筐体10の中央部に上下に貫通する収納空間11を設け、前記収納空間11内に温度検出装置を組み込んである。
【0013】
すなわち、前記筐体10の上面のうち、前記収納空間11の上方開口縁部に環状の保護カバー12を配置してあるとともに、その外側に固定した位置決めリング13を介して五徳14を配置してある。さらに、図3に示すように、前記収納空間11の内周面には、所定のピッチで炎孔15aが環状に配置され、内炎式ガスパーナー15が形成されているとともに、前記炎孔15aの下方側に位置決め用環状リブ16が突設されている。
【0014】
前記位置決め用環状リブ16の下方側には、十文字形の取付具20を介して非接触温度センサー30が配置されている。本実施形態では、前記非接触温度センサー30が後述する受け皿21から離れて下方側に位置しているので、前記非接触温度センサー30の周囲の温度が異常に高くなることがなく、検出誤差が小さいという利点がある。
【0015】
前記非接触温度センサー30は、図4に示すように、金属ステム31の上面に、測定対象物から放射される赤外線を受光し、電圧に変換して出力する赤外線受光素子32と、前記赤外線受光素子32からの出力信号を増幅,補正する特定用途向け集積回路33(ASIC)とを、図示しないワイヤーボンディングで接続し、リード端子34を介して外部回路に接続する。そして、前記金属ステム31に金属カバー35を抵抗溶接で一体化し、前記赤外線受光素子32等を封入してある。
【0016】
前記金属カバー35は上面中央部に設けた受光窓36にフィルター37(および/またはレンズ38)を取り付け、検出波長を限定してもよい。例えば、ガス炎を分光放射スペクトルで示すと、図8に示すように、波長8μm以下の短波長のものが多いことが判る。このため、前記フィルター37で8μm以下の赤外線をカットし、ガス炎から放射される赤外線の影響を除去すれば、鍋底の温度だけを確実に検出できる。したがって、例えば、Si等からなるフィルター37の内側表面に、フッ化マグネシウム等を真空蒸着し、8μm以上のロングパス機能を有する赤外線透過膜を積層することにより、ガス炎から放射される短波長の赤外線を除去し、検出精度を高めることができる。
【0017】
また、前記金属カバー35の受光窓36にレンズ38(図示せず)を設けることにより、被検出対象物の検出領域を絞ることができ、検出精度をより一層高めることができる。このため、計測距離を長くできるので、ガス炎の影響を受けにくい位置に前記非接触温度センサー30を配置できる。
【0018】
なお、前記金属ステム31および金属カバー35の材質は、金属カバーからの内面放射および電気的ノイズの影響を受けにくくするため、例えば、冷間圧延鋼(SPCC)のような熱伝導率の大きいものが好ましい。また、前記金属カバー35の表面は、ガス炎等のノイズの影響を受けないように、耐腐食性に優れたNi等でメッキすることにより、反射率を高めておいてもよい。
【0019】
前記位置決め用環状リブ16には噴き溢れた煮汁等を受けるための受け皿21が嵌め込まれている。さらに、前記受け皿21の中央孔21aには赤外線の放射光路をガス炎から遮蔽する下方防熱筒22の下端部が密に嵌合している。このため、噴き溢れた煮汁等が前記非接触温度センサー30に付着することがなく、検出不良を防止できる。そして、前記下方防熱筒22の側壁に所定のピッチで設けたピン孔22aに支持ピン23がそれぞれ圧入固定され、前記支持ピン23を介して支持リング24が支持されている。
【0020】
前記支持リング24に載置した下方コイルバネ25を介して上方防熱筒26を上下動自在に支持してある。さらに、前記上方防熱筒26の内周面に突設した環状リブ26aに上方コイルバネ27を載置し、さらに、リング状断熱材28を介して集熱板29が支持されている。このため、前記集熱板29の直下に非接触温度センサー30が位置することになる。さらに、前記下方コイルバネ25および上方コイルバネ27のバネ力を介して前記集熱板29だけでなく、上方防熱筒26の上方開口縁部が鍋底に圧接するように上方に付勢されている。この結果、鍋19(図1B)が五徳14上に載置される前の状態では、前記集熱板29は五徳14よりも上方に位置している。しかし、鍋19が五徳14上に載置されることにより、前記集熱板29の上面および上方防熱筒26の上方開口縁部が鍋19の鍋底に圧接し、前記集熱板29は下方防熱筒22および上方防熱筒26によってガスバーナー15の炎孔15aから噴出するガス炎18から保護される。
【0021】
前記集熱板29は、検出精度を高めるため、熱伝導率が高い金属で形成され、熱容量を小さくするために薄くなっているとともに、その上面は鍋底との密着性を高めるために高い平面度を有している。さらに、集熱板29の下面は、赤外線放射率を高めるため、アルマイト等での表面処理、黒体塗料の塗布、艶消し塗料の塗布を施しておいてもよい。本実施形態によれば、加熱する鍋の種類によって放射率が相違しても、集熱板29の下面からの放射率が温度に対して一定であるので、検出精度が安定する。さらに、集熱板29の放射率を高めることにより、防熱筒22,26から放射された赤外線の反射率が低くなり、検出精度がより一層向上するという利点がある。
【0022】
次に、前述の内部構造を有する検出装置で温度を検出する方法について説明する。図1Bに示すように、五徳14に鍋19を乗せると、鍋底に集熱板29および上方防熱筒26の上方開口縁部が圧接する。そして、ガスバーナー15を点火することにより、炎孔15からガス炎18が斜め上方に噴出して鍋19の鍋底を加熱する。この際、集熱板29の周囲は上方防熱筒26の上端部で被覆されているので、ガス炎18の熱気が集熱板29に直接当たりにくい。このため、前記集熱板29に鍋底の温度が正確に伝達され、その温度に基づいて赤外線が集熱板29から放射される。放射された赤外線17は非接触温度センサー30のフィルター37を通過し、赤外線受光素子32に受光されて電圧に変換された後、特定用途向け集積回路33で増幅,補正されて外部回路に出力される。
【0023】
第2実施形態は、図5および図6に示すように、前述の第1実施形態と基本的構造はほぼ同一であり、集熱板29の支持構造が相違する。
すなわち、受け皿21の中央孔21aに第1防熱筒40の下端部を挿入して立設し、前記下端部の下端縁部近傍に設けたピン孔40aに支持ピン41を圧入する。そして、図6に示すように、前記第1防熱筒40の下端部に第2防熱筒体42を挿入して支持するとともに、前記第1防熱筒40に下方コイルバネ43を挿入する。さらに、前記第1防熱筒40に第3防熱筒44を挿入して下方コイルバネ43で支持するとともに、前記第2防熱筒42の上方開口縁部に上方コイルバネ45を配置する。ついで、前記上方コイルバネ45の上端部にリング状断熱材46を介して集熱板47を組み付けて支持する。したがって、前記集熱板47の直下に非接触温度センサー30が位置することになる。さらに、前記集熱板47および第3防熱筒44は上下動自在に支持され、鍋底に常時圧接可能に付勢されている。そして、第1実施形態と同様に、前記集熱板47が前記第3防熱筒44の上方開口縁部によって保護される。なお、前述の第1実施形態と同一部分には同一番号を附して説明を省力する。
【0024】
本実施形態によれば、第2防熱筒42と第1,第3防熱筒40,44との間に空気層が形成され、ガス炎の熱気をより確実に遮蔽できるので、ガス炎のノイズが少なくなり、検出精度の高い鍋底温度検出装置が得られる。
【0025】
なお、前記非接触温度センサー30は、前述の形式のものに限らず、例えば、図7に示すように、汚れを防止する集光部品50に組み込んでもよい。前記集光部品50は、4分の1の球殻形状からなる外殻51の底面に前記非接触温度センサー30を取り付け可能な取付用空間部52を有している。さらに、前記外殻51の内周面にはアルミニウムを蒸着させた反射面53を形成することにより、反射率を高めてある。さらに、前記外殻51の反射面53に対向する側面には所定の波長のみを透過させるシリコン等からなるフィルター54が嵌め込まれている。このため、前記集熱板29,47から放射された赤外線はフィルター54を通過した後、反射面53で反射して集光され、非接触温度センサー30のフィルター37を通過した後、赤外線受光素子32に到達して電圧に変換される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る鍋底温度検出装置は、前述のガスコンロだけでなく、他のタイプのガスコンロにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1Aは本発明に係る鍋底温度検出装置の第1実施形態を示す斜視図であり、図1Bは第1実施形態の概略模式図である。
【図2】図1Aで示した第1実施形態の分解斜視図である。
【図3】図1Aで示した第1実施形態の縦断面図である。
【図4】図2で示した非接触温度センサーの分解斜視図である。
【図5】本発明に係る鍋底温度検出装置の第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】図5で示した第2実施形態の縦断面図である。
【図7】図7Aは集光部品の断面図、図7Bは前記集光部品に非接触温度センサーを装着した状態を示す断面図である。
【図8】ガス炎の分光放射スペクトルを示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0028】
10:ガスコンロの筐体
11:収納空間
12:保護カバー
13:位置決めリング
14:五徳
15:ガスバーナー
15a:炎孔
16:位置決め用環状リブ
17:赤外線
18:ガス炎
19:鍋
【0029】
20:取付具
21:受け皿
22:下方防熱筒
23:支持ピン
24:支持リング
25:下方コイルバネ
26:上方防熱筒
27:上方コイルバネ
28:リング状断熱材
29:集熱板
【0030】
30:非接触温度センサー
31:金属ステム
32:赤外線受光素子
33:特定用途向け集積回路(ASIC)
34:リード端子
35:金属カバー
36:受光窓
37:フィルター
38:レンズ
【0031】
40:第1防熱筒
41:支持ピン
42:第2防熱筒
43:下方コイルバネ
44:第3防熱筒
45:上方コイルバネ
46:リング状断熱材
47:集熱板
【0032】
50:集光部品
51:外殻
52:取付用空間部
53:反射面
54:フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から照射されるガス炎によって熱せられる鍋底に当接可能な集熱板と、上方開口縁部を前記鍋底に当接して前記集熱板を包囲するとともに、前記集熱板の下面から放射される赤外線が通過する空間を前記ガス炎から仕切る防熱筒と、前防熱筒の下方側に位置し、前記防熱筒を通過した赤外線を受光して温度を検出する非接触温度センサーと、からなることを特徴とする鍋底温度検出装置。
【請求項2】
前記集熱板および前記防熱筒が、上下動自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の鍋底温度検出装置。
【請求項3】
前記集熱板の下面に、赤外線の放射率を高める処理膜を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の鍋底温度検出装置。
【請求項4】
集熱板と赤外線受光素子とを結ぶ光路に、ガス炎から放射される短波長の赤外線をカットするフィルターを配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の鍋底温度検出装置。
【請求項5】
集熱板と赤外線受光素子とを結ぶ光路に、赤外線を集光する集光部品を配置したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鍋底温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−170954(P2006−170954A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367737(P2004−367737)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】