説明

【課題】 省スペース化及び省エネルギー化を可能とした鍋を提供する。
【解決手段】 鍋本体1と、鍋本体1の外壁を覆うように形成される袴体4を備えた鍋であり、袴体4は互いに重なるように連結する二以上の袴片3によって構成されている。袴片3のそれぞれは鍋本体1の外壁と接する上辺部分を軸に回動可能であり、また、この回動運動を調節できる開閉調節部9を有することを特徴とする。これにより、調理時には袴体4を開いて熱効率や安全性を高め、収納時には袴体4を閉じて省スペース化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋に関し、特に鍋本体の外壁を覆うように形成される袴体とを備えた鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、鍋本体とこれを覆うように固定された袴体との間の空洞に熱気流を滞留させることによって熱効率を良くした省エネルギー型鍋が公知である。さらに、特許文献2に示されるように、袴体が開いた状態で鍋本体に固定された省エネルギー型鍋も公知である。また、特許文献3に示されるように、鍋本体との着脱を容易にした省エネルギー型鍋用袴も公知である。さらに、特許文献4に示されるように、鍋本体に不燃性のバンド体を巻き締めて装着し、当該バンド体の掛止部に複数の不燃性袴片を吊り下げることで、鍋本体の径の大きさに合わせて鍋本体の外周を一周するように袴体を形成できる被加熱容器用燃焼補助具も公知である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−5049号公報
【特許文献2】実公昭56−125128号公報
【特許文献3】特開2006−238992号公報
【特許文献4】特開2002−219056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献3、特許文献4に示される従来技術では、着脱機能や鍋本体の径に合わせた袴体の拡縮機能を有するという違いはあるものの、いずれも鍋本体の外壁に並行するように袴体が形成されており、鍋本体と袴体の間の空間が狭かった。このため、ガス熱を逃がしてしまい、鍋本体と袴体との間にガス熱を十分に滞留させることが難しく、十分な熱効率を得られないという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献2のような従来技術では、袴体は常に開かれた状態で鍋本体に固定されているため、収納の際、鍋本体よりかなり広範囲の収納スペースが必要になるという不都合があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題点を解決して、調理時の熱効率や安全性を高め、収納時の省スペース化も可能とする鍋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、鍋本体と、前記鍋本体の外壁を覆うように形成される袴体とを備えた鍋において、前記袴体が、それぞれが前記鍋本体の外壁に接する上辺部分を軸に上下回動できる複数の袴片を有し、前記各袴片の上下回動運動を調節して前記袴体の開閉を調節する開閉調節部を備えるものである。
【0008】
これにより、各袴片の上下回動運動が調節されて、収納時には下方位置にして鍋本体の外壁に沿わせて袴体を閉じさせ、調理時には上方位置にして羽根を広げたように袴体を開かせることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記複数の袴片が、互いに連動して上下回動し、各回動位置において互いに重なり合う部分を生じる形状であることを特徴とするものである。袴片が互いに連動するので袴体の開閉調節が容易になる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記複数の袴片が、少なくとも所定の位置よりも上方の回動位置において互いに重なり合う部分を生じる形状であることを特徴とするものである。互いに重なり合う部分が生じることから、例えばガス熱のような熱を滞留させ易くできる。
【0011】
請求項4に係る発明は、鍋本体と、前記鍋本体の外壁を覆うように形成される袴体とを備えた鍋において、前記袴体が、それぞれが前記鍋本体の外壁に接する上辺部分を軸に上下回動できる複数の袴片を有し、前記鍋本体の外壁と対向する位置に配置されて前記袴片のそれぞれが取り付けられる環状部材と、前記環状部材の内側に形成される面積を可変させ、前記各袴片の上下回動運動を調節して前記袴体の開閉を調節する開閉調節部とを備えるものである。
【0012】
このように、環状部材の内側に形成される面積を可変させる動きにより、各袴片にはその可変に応じた向きの力が加わり、各袴片が鍋本体の外壁に接する上辺部分を軸に上下回動する。そして、その運動が調節されるという機構として簡易な構造によって、収納時には下方位置にして鍋本体の外壁に沿わせて袴体を閉じさせ、調理時には上方位置にして羽根を広げたように袴体を開かせることができる。
【0013】
なお、環状部材は例えば金属性のワイヤーなどの不燃性の棒状部材を環状にしたものであってもよく、その場合には連続しない部分を広げることにより、環状部材の内側に形成される面積を可変できる。また、環状部材は弾性部材でもよいが、その場合には耐熱性を有する素材を用い、内側に形成される面積を大きくした状態を維持するようなストッパー構造を有するようにすればよい。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかにおいて、前記開閉調節部を前記鍋本体の取手部に設けたものである。取手部という手が握る部分に開閉調節部が設けられて、袴体の開閉操作の操作性が高い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る鍋を使用すれば、調理時には袴体を開いて広げることで熱効率を良くして光熱費の節約を図ることができる。また、鍋本体に例えば加熱にガスが用いられている場合に鍋内に油が用いられているような場合に広げられた袴体によって火と油が接触することにより炎が急に大きくなることも防ぐことで安全性を高めることができる。さらに、調理対象などに応じて炎の大きさが調整されるのと同じように袴体の開閉度合いも調節できる。さらに、収納時には袴体を閉じることによって通常の鍋とほぼ同じ収納スペースで収納可能となり、省スペース化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る鍋の収納時の全体斜視図である。
【0018】
複数の袴片3は、袴片3に個々に取り付けられた固定部7で係止されたワイヤー5によって互いに重なるように連結され、鍋本体1の外壁を一周して覆うように並べられている。収納時には、このように袴体4を閉じることによって、通常の鍋とほぼ同じ収納スペースで収納できるようになる。
【0019】
図2は図1の鍋のII−IIラインの断面図である。
【0020】
図1の各袴片3は、図2に示すように、例えば袴片3bの一方の端部は隣り合う袴片3aが下になるように重なって配置され、袴片3bの他方の端部は隣り合う袴片3cが上になるように重なって配置される。このようにして、二以上の袴片が互いに規則正しい順序で重なるように並べられ、全体として一つの袴体4を形成している。
【0021】
図3は図1の鍋の収納時の開閉調節部の拡大図である。また、図4は図1の鍋の収納時の袴片部分の拡大図である。
【0022】
開閉調節部9のつまみ11を図3の矢印で示す方向に手で動かすことにより、2つの調節軸13の間に係止される弾性体15が縮み、2つの調節軸13は互いに近づく。これに連動してワイヤー5はその端部同士が近づくように引き寄せられる。その結果、図4に示すように、袴片3の下辺の互いの重なり部分が大きくなって袴体4は閉じ、図1の状態になる。なお、袴体4が閉じた状態で、ワイヤー5の内側に形成される面積は小さい。
【0023】
弾性体15には、例えばバネが用いられればよい。
【0024】
図5は図1の鍋の調理時の開閉調節部の拡大図である。また、図6は図1の鍋の調理時の袴片部分の拡大図である。図5は図3に対応する図であり、図6は図4に対応する図である。
【0025】
開閉調節部9のつまみ11を図5の矢印で示す方向に手で動かすことにより、2つの調節軸13の間に係止される弾性体15が伸び、2つの調節軸13は互いに離れる。これに連動してワイヤー5はその端部同士が離れるように引き離される。その結果、図6に示すように、袴片3の下辺の互いの重なり部分が小さくなって袴体4は開く。なお、袴体4が開いた状態で、ワイヤー5の内側に形成される面積は大きい。
【0026】
なお、開閉調節部9は、図3及び図5に示すつまみ式のものの他、レバー式等でも良い。
【0027】
図7は図1の鍋の調理時の全体斜視図である。
【0028】
調理時のために、図5及び図6に示したような動きによって、ワイヤー5の内側に形成される面積が大きくなって各袴片3の上辺部が鍋本体1に接するとともに上下回動可能になっており、袴体4を上に回動させて開くことができる。これによって、鍋内に油が用いられているような場合にガスコンロ17の火が油が接触することにより炎が急に大きくなることも防ぐことで安全性を高めることができるとともに、熱効率を良くして光熱費の節約を図っている。
【0029】
図8は図7の鍋のVIII−VIIIラインの断面図である。
【0030】
調理時に開閉調節部9を操作することで袴体4が開き、袴体4と鍋本体1の外壁との間の空間にガス熱等の燃焼熱を効率良く滞留させることができる。
【0031】
なお、袴片3の形状は鍋本体1の断面がリング状の外壁の形に沿うべく円弧を描くように湾曲したものであれば、開閉時の動きをスムーズにできる。
【0032】
また、袴片3の形状は、長方形のほか、台形、円形、楕円等でもよい。開閉時等の各位置において互いに重なる部分が生じる必要はないが、下方側の大きさが大きいほうが開いたときにも互いに重なる部分が生じ、熱効率と安全性から好ましい。
【0033】
また、上記では、ワイヤー5の内側に形成される面積を増減させることによって袴片3の上下回動を連動させたが、必ずしも連動させる必要はない。例えば、回動軸を兼ねる円形のリングにそれぞれ袴片の上辺部分が取り付けられ、それぞれを手動で上下に回動させてもよい。
【0034】
さらに、袴体4は鍋本体1に固定されるものの他、鍋本体1と着脱可能なものでも良い。
【0035】
さらに、鍋本体1の外壁の上端を軸とした袴片3の回動は、図8等に示した第1の実施の形態のようなワイヤー5にかかる横方向の力を利用するものの他、袴片3の外側から袴片3を引き上げる力を利用するものであっても良い。例えば、図9の第2の実施の形態に示すように、袴片3に固定された不燃性の紐18を管19を通して引っ張ったり緩めたりすることで、袴片3を外側から吊り挙げたり、元に戻したりすることが考えられる。
【0036】
さらに、鍋本体1の外壁の上端を軸とした袴片3の回動は、図8等に示した第1の実施の形態に示すようなワイヤー5にかかる横方向の力を利用するものの他、袴片3の内側から袴片3を押し上げる力を利用するものであっても良い。例えば、図10の第3の実施の形態に示すように、袴片3の内側に設けられた溝20に沿って、一方を鍋本体に固定された支柱21をスライドさせて、袴片3を内側から押し上げたり、元に戻したりすることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る鍋の収納時の全体斜視図である。
【図2】図1の鍋のII−IIラインの断面図である。
【図3】図1の鍋の収納時の開閉調節部の拡大図である。
【図4】図1の鍋の収納時の袴片部分の拡大図である。
【図5】図1の鍋の調理時の開閉調節部の拡大図である。
【図6】図1の鍋の調理時の袴片部分の拡大図である。
【図7】図1の鍋の調理時の全体斜視図である。
【図8】図7の鍋のVIII−VIIIラインの断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る鍋の調理時の全体斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る鍋の調理時の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 鍋本体
3,3a,3b,3c 袴片
4 袴体
5 ワイヤー
9 開閉調節部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体と、前記鍋本体の外壁を覆うように形成される袴体とを備えた鍋において、
前記袴体は、それぞれが前記鍋本体の外壁に接する上辺部分を軸に上下回動できる複数の袴片を有し、
前記各袴片の上下回動運動を調節して前記袴体の開閉を調節する開閉調節部を備える鍋。
【請求項2】
前記複数の袴片は、互いに連動して上下回動し、各回動位置において互いに重なり合う部分を生じる形状であることを特徴とする、請求項1記載の鍋。
【請求項3】
前記複数の袴片は、少なくとも所定の位置よりも上方の回動位置において互いに重なり合う部分を生じる形状であることを特徴とする、請求項1記載の鍋。
【請求項4】
鍋本体と、前記鍋本体の外壁を覆うように形成される袴体とを備えた鍋において、
前記袴体は、それぞれが前記鍋本体の外壁に接する上辺部分を軸に上下回動できる複数の袴片を有し、
前記鍋本体の外壁と対向する位置に配置されて前記袴片のそれぞれが取り付けられる環状部材と、
前記環状部材の内側に形成される面積を可変させ、前記各袴片の上下回動運動を調節して前記袴体の開閉を調節する開閉調節部とを備える鍋。
【請求項5】
前記開閉調節部を前記鍋本体の取手部に設けた、請求項1から4のいずれかに記載の鍋。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−272006(P2008−272006A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115754(P2007−115754)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(505142470)
【Fターム(参考)】