説明

鍵盤楽器

【課題】 電子ピアノ等において、鍵盤の操作時においても演奏者の視界を妨げることなく、スピーカから放音される楽音を良好な音質で演奏者に到達させるようにする。
【解決手段】 鍵盤蓋20は、点Pを回転中心として、実線で示す蓋閉位置から蓋開位置Aまで、約「180°」回動する。蓋開状態において鍵盤蓋先端部20−10の高さは図示せぬ天板部の高さに一致する。従って、この天板部に設けられたスピーカから放音された音は、鍵盤蓋20に遮られることなく演奏者に到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノ等の鍵盤楽器に関し、特にこれらの鍵盤蓋の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ピアノ等の鍵盤楽器には、鍵盤を保護するために鍵盤蓋が設けられている。この鍵盤蓋は、一般的には単なる開閉式の蓋であり、蓋閉時から100°ないし120°程度鍵盤蓋を回動させることにより、鍵盤を露出させるものである。このような鍵盤蓋は、鍵盤楽器が使用されていないときには鍵盤を保護するという役割を果たすが、鍵盤楽器の演奏中においては特に役に立たないものであった。このため、特許文献1においては、鍵盤楽器の筐体内部に鍵盤蓋をスライドさせ収納する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第2571343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単なる開閉式の蓋を鍵盤蓋として用いた場合は、以下のような問題が生じる。まず、鍵盤蓋は演奏中は演奏者の前方視界を遮るため、アンサンブルなどを行う場合に鍵盤楽器の演奏者と他の楽器の演奏者とが意思疎通を図ることが困難になる。また、多くの電子ピアノ等においては、鍵盤楽器の上面後方部分にスピーカが配置されるが、かかる鍵盤楽器に対して鍵盤蓋を開状態にしたとき、スピーカから演奏者に向かう音を遮断するため、音質が悪化するという問題が生じる。また、特許文献1のように鍵盤楽器の内部に鍵盤蓋を収納するようにすると、鍵盤楽器全体の構造が複雑になるとともに鍵盤楽器が大型化するという問題が生じる。
また、何れの場合においても、鍵盤楽器の演奏中において鍵盤蓋は実用的な機能をほとんど発揮しないものであった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、演奏時においても鍵盤蓋の実用価値を高めることができる鍵盤楽器を提供することを第1の目的としている。さらに、鍵盤の操作時においても演奏者の視界を妨げることなく、スピーカから放音される楽音を良好な音質で演奏者に到達させる鍵盤楽器を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明にあっては、下記構成を具備することを特徴とする。なお、括弧内は例示である。
請求項1記載の鍵盤楽器にあっては、2枚の側板(10−1)間に配設された複数の鍵から成る鍵盤部(22)と、前記鍵盤部(22)の後方に回転中心(P)を有し蓋閉時に前記鍵盤部(22)を覆う回動自在の鍵盤蓋(20)と、該鍵盤部(22)の後方上部に位置する天板部(34)とを備えた鍵盤楽器であって、前記天板部(34)と前記鍵盤部(22)との間に設けられる収納部(30)であって、前記鍵盤部(22)の蓋開時に前記2枚の側板(10−1)の上面と前記鍵盤蓋(20)の裏面(20−11)とを露出させつつ前記鍵盤蓋(20)を収納する収納部(30)を具備することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の構成にあっては、請求項1記載の鍵盤楽器において、前記収納部(30)は、前記2枚の側板(10−1)間に設けられた凹部(30−1,30−2)を有し、前記鍵盤蓋(20)は平板状に形成された鍵盤蓋平面部(20−1)と該鍵盤蓋平面部(20−1)から前方に突出し蓋閉時に前記鍵盤部(22)の前方を覆う鍵盤蓋前方部(20−2)とを有し、蓋開時に前記鍵盤蓋(20)を前記凹部(30−1,30−2)に収納したとき、前記鍵盤蓋平面部(20−1)の裏面(20−11)が、前記2枚の側板上面(10−1a)と同一高か該側板上面(10−1a)よりも低くなるように前記凹部(30−1,30−2)を形成し、前記鍵盤蓋前方部(20−2)の高さ(hc)は、前記天板部(34)の高さと前記凹部の底面部(30−1)の高さとの差(hv)以下であって、前記鍵盤部(22)の露出部分の高さ(hk)以上に設定されていることを特徴とする。
さらに、請求項3記載の構成にあっては、請求項2記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋前方部(20−2)は、前記鍵盤蓋平面部(20−1)から湾曲しつつ前方に突出していることを特徴とする。
さらに、請求項4記載の構成にあっては、請求項2記載の鍵盤楽器において、前記凹部(30−1,30−2)は、該凹部の底面部(30−1)と前記天板部(34)との間に、蓋開時に前記鍵盤蓋前方部(20−2)に重なる立上り縁部(30−2)を有し、前記2枚の側板(10−1)の上面のうち該立上り縁部(30−2)に隣接する部分の上面(10−1b)は、該立上り縁部(30−2)に沿った形状に形成されていることを特徴とする。
さらに、請求項5記載の構成にあっては、請求項1記載の鍵盤楽器において、前記収納部(30)は、前記2枚の側板(10−1)間に設けられた凹部(30−1,30−2)を有し、前記凹部(30−1,30−2)は所定高(hv)の段差を成す立上り縁部(30−2)と、該立上り縁部(30−2)の下端に接合された平坦な底面部(30−1)とを有し、前記側板の上面(10−1a)は前記鍵盤部(22)の側方位置から後方に向かって延設され、前記所定高(hv)よりも低い段差(hs)を有しつつ前記凹部の底面部(30−1)の奥行き方向に向かって設けられていることを特徴とする。
さらに、請求項6記載の構成にあっては、請求項1ないし5の何れかに記載の鍵盤楽器において、前記回転中心(P)に沿って前記鍵盤蓋(20)に形成され、蓋開時において上方に向かって突出する突条部(20−4)をさらに有することを特徴とする。
さらに、請求項7記載の構成にあっては、請求項1ないし6の何れかに記載の鍵盤楽器において、前記天板部(34)上に、前記鍵盤部(22)の鍵並び方向に沿って配列された複数のスピーカ(36,36)をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このように、天板部と鍵盤部との間に設けられ、鍵盤部の蓋開時に2枚の側板の上面と鍵盤蓋の裏面とを露出させつつ鍵盤蓋を収納する構成によれば、蓋開時において鍵盤蓋の裏面に譜面等を載置することができ、鍵盤蓋の実用価値を高めることができる。
さらに、鍵盤蓋平面部から湾曲しつつ突出し蓋閉時に前記鍵盤の前方を覆う鍵盤蓋前方部を有する構成によれば、鍵盤蓋に譜面等を載置したとき譜面等が斜めになるから、譜面等が読みやすくなる。
さらに、2枚の側板の上面のうち立上り縁部に隣接する部分を該立上り縁部に沿った形状に形成した構成によれば、譜面等を側板まではみ出して載置することができるようになる。
【0007】
さらに、蓋開時において上方に向かって突出する突条部を回動中心に沿って鍵盤蓋に形成する構成によれば、鍵盤蓋の裏面に載置された譜面や筆記具等を該突条部によって係止し、これらの落下を防止することができる。
さらに、蓋開時に鍵盤蓋を収納する収納部を天板部と鍵盤部との間に設ける構成によれば、鍵盤の操作時においても演奏者の視界を妨げることなく、スピーカから放音される楽音を良好な音質で演奏者に到達させることができる。
また、側板の上面が凹部の成す所定高よりも低い段差を有する構成によれば、この低い段差部分によって側面視がほぼフラットになるために圧迫感がなくなり、演奏者と観客との一体感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.実施例の全体構成
次に、本発明の一実施例の電子ピアノの全体構成を図1を参照し説明する。
図において10は楽器本体部であり、横長の略直方体状に構成されている。12,14は柱状の支持脚であり、楽器本体部10の前方部の左右両端付近から下方に向かって突出している。16は横長の略長方形板状の中央支持部であり、楽器本体部10の後方部中央から下方に突出している。そして、これら支持脚12,14および中央支持部16によって、楽器本体部10が支持される。18はペダル群であり、中央支持部16の下部正面から前方に向かって突出している。
【0009】
20は鍵盤蓋であり、その中央部分である平面部20−1は平板状に形成されている。また、鍵盤蓋20の前方部20−2は、鍵盤蓋平面部20−1から前方に向かって突出し、その先端が下方向に向かうように円弧状に湾曲している。また、鍵盤蓋20の後方端部には、上方向に突出する突条部20−4が左右方向に亘って形成されている。この突条部20−4の両端部20−5,20−6において、鍵盤蓋20は楽器本体部10に回動自在に軸支されている。楽器本体部10においては、鍵盤蓋前方部20−2の先端部が接する箇所に口棒17,17が形成されている。口棒17,17は、幅数センチメートル程度の棒状の部材であり、各々楽器本体部10の左端および右端から内側に向かって突出し、その長さは楽器本体部10の全幅のほぼ「1/3」である。これにより、口棒17,17の間には、演奏者が手を挿入して鍵盤蓋20を把持するための切欠部19が形成されている。34は楽器本体部10の最上面を成す天板部であり、その両端にはスピーカ36,36が装着されている。30は鍵盤蓋収納部であり、鍵盤蓋平面部20−1の上面とほぼ同程度の高さの上面を有する収納本体部30−1と、該収納本体部30−1に接合され鍵盤蓋前方部20−2と同様の曲率で湾曲し天板部34に達する立上り縁部30−2とから構成されている。そして、これら収納本体部30−1および立上り縁部30−2によって凹部が形成されている。
【0010】
次に、鍵盤蓋20を開いた状態における電子ピアノの外観を図2に示す。鍵盤蓋20は図1に示した蓋閉状態から「180°」回動した状態で鍵盤蓋収納部30上に収納され、鍵盤22と、その両端の拍子木24,24が露出している。ここで、鍵盤蓋平面部20−1は、その裏面20−11が上方に向き、水平になる。鍵盤蓋平面部20−1は、楽器本体部10の左右の端面を形成する側板10−1の上面よりも数mm低い高さに位置し、側面視においては鍵盤蓋平面部20−1が見えなくなる。本実施例ではかかる状態を「収納」と呼ぶ。一方、蓋開状態において、鍵盤蓋20の先端部20−10が天板部34の上面とが同一の高さになるように、該鍵盤蓋20および鍵盤蓋収納部30の各部の寸法が設定されている。
【0011】
上述した構成は、換言すれば、左右の側板10−1において、蓋開状態における鍵盤蓋平面部20−1に隣接する部分の上面10−1aは、鍵盤蓋平面部20−1に対してほぼ同一の高さになるように(数mm高くなるように)構成されている。さらに、左右の側板10−1において、鍵盤蓋前方部20−2に隣接する部分の上面10−1bは、蓋開状態における鍵盤蓋前方部20−2の上面(すなわち鍵盤蓋前方部20−2の裏面)の形状に沿って同一の湾曲面を形成するように構成されている。
【0012】
2.鍵盤蓋20および鍵盤蓋収納部30の詳細構成
次に、鍵盤蓋20および鍵盤蓋収納部30の詳細構成を図3を参照し説明する。
図3に示す側板10−1は、楽器本体部10の左側の側板である。42は回転軸であり、略直方体状に形成され、鍵盤蓋20を軸支するために側板10−1から内側に向かって突出している。なお、図3においては、左側の側板10−1から突出した回転軸42を図示しているが、右側の側板からも同様の回転軸が突出している(図示せず)。各回転軸の長さは10センチメートル程度である。40は制動部であり、側板10−1の内部に埋設されるとともに固定され、回転軸42を回動自在に支持する。また、制動部40は、鍵盤蓋20が完全に蓋開状態または蓋閉状態になる前の所定範囲において、演奏者の指挟みを防止するために回転軸42の回動動作を制動する。
【0013】
鍵盤蓋20の突条部20−4においては、断面が略「コ」字状の凹部20−7が形成されている。また、凹部20−7の開口部付近の内側面には、ゴムキャップを嵌合するための嵌合溝20−8,20−8が形成されている。そして、突条部20−4のうち開口していない側の一辺からは約「45°」の角度で鍵盤蓋平面部20−1が突出している。回転軸42の側面にはネジ穴42−1,42−1が形成され、端部20−5の対応する箇所には、貫通孔20−9,20−9が形成されている。かかる構成において、回転軸42を凹部20−7に嵌合し、貫通孔20−9,20−9を介してネジ穴42−1,42−1にネジを螺合し、他方の端部20−6も同様にネジによって回転軸に固定すると、鍵盤蓋20と回転軸42とが固着され、鍵盤蓋20は回転軸42を中心として回動自在になる。
【0014】
ところで、通常の鍵盤楽器においては、鍵盤蓋の回転中心は蓋閉状態の鍵盤蓋の平面部分(本実施例の平面部20−1に相当する部分)よりも下方に設けられている場合が多い。かかる鍵盤蓋において「180°」の回動を可能ならしめると、鍵盤蓋が下方に沈み込むような状態になる。従って、鍵盤蓋の沈み込む深さだけ余裕を持たせて鍵盤楽器の筐体を構成する必要があり、鍵盤楽器の筐体が大型化せざるを得なくなる。これに対して、この実施例のものは、平板状の鍵盤蓋平面部20−1の延長線上に回転中心Pを有し、その回転中心Pを囲むように突条部20−4が設けられているため、鍵盤蓋20を「180°」回動させた蓋開状態においても、鍵盤蓋平面部20−1の高さは蓋閉時の高さとほとんど変わらない。これにより、本実施例によれば、従来の鍵盤楽器と比較して、楽器本体部10をよりスリムなものに構成できるという利点もある。
【0015】
以上のように、鍵盤蓋20をネジによって回転軸42に固定した状態における鍵盤蓋20等の断面図を図4に示す。この図においては、ネジ44が突条部20−4の壁面を介して回転軸42に螺合されており、凹部20−7の開口部はゴムキャップ26によって封鎖され、鍵盤蓋20は蓋閉位置にまで回動している。鍵盤蓋先端部20−10は、略「L」字状に内側に折れ曲がっている。これは、鍵盤蓋20を蓋開状態にしたとき、演奏者が鍵盤蓋20を把持する際の取っ手になる。また、鍵盤蓋収納部30のうち突条部20−4の下方に位置する部分には、鍵盤蓋20の回動を妨げないように、断面略台形状の溝部30−3が形成されている。また、鍵盤蓋収納部30の先端部30−4は、拍子木24に固定される。
【0016】
なお、鍵盤蓋前方部20−2の高さは、蓋閉状態において鍵盤蓋20が鍵盤22に接触しない程度の高さを確保する必要がある。その一方、鍵盤蓋前方部20−2があまり高すぎると、これに応じて立上り縁部30−2の高さも高くしなければならず、演奏者の視界を遮るという問題が生じる。このため、鍵盤蓋前方部20−2の高さは、鍵盤22の実装状態によっても異なるが、図示のように「15mm〜60mm」程度の高さにすると好適である。
【0017】
次に、本実施例における各部の寸法関係を図5を参照し説明する。まず、鍵盤22は、複数の白鍵22Wおよび黒鍵22Bとから構成され、白鍵22Wの前方にその下部を覆う鍵前板10−4が楽器本体部10から上方に向かって突出している。鍵前板10−4の上端から黒鍵22Bの上端までの高さが鍵盤22の露出部分の高さである鍵盤高hkになる。鍵盤蓋前方部20−2の高さhcは、この鍵盤高hk以上になっている。鍵盤蓋20の蓋開状態(破線)においては、鍵盤蓋平面部20−1の裏面20−11は、側板上面10−1aと同一高か該側板上面10−1aよりも低くなるように、鍵盤蓋収納部30の各部が構成されている。ここで、収納本体部30−1の高さと天板部34の高さとの差である収納高hvは、鍵盤蓋前方部20−2の高さhc以上になっている。また、側板10−1は鍵盤22の側方位置から後方に向かって延設されている。側板10−1の上面10−1aは、収納本体部30−1の上面よりも高くなっているから、段差部分の側板上面10−1bの高さhsは、収納高hvよりも低くなっている。
【0018】
3.実施例の動作
上記構成において、演奏者が切欠部19に手を入れて鍵盤蓋20を持ち上げると、鍵盤蓋20は鍵盤蓋平面部20−1が水平になる位置、すなわち図4の一点鎖線で示す蓋開位置Aまで回動する。蓋開位置Aにおいては、収納本体部30−1が鍵盤蓋平面部20−1に重なり、鍵盤蓋前方部20−2が立上り縁部30−2に重なるため、鍵盤蓋20は広い面積に渡って鍵盤蓋収納部30に支持される。従って、鍵盤蓋20を図4に示すような薄い素材で形成したとしても、鍵盤蓋20がきわめて安定し、鍵盤蓋20に力を加えても鍵盤蓋20が撓みにくくなる。従って、かかる蓋開状態においては、鍵盤蓋平面部20−1にメトロノーム、筆記具、譜面など様々な物品を安定して載置することができる。さらに、この蓋開状態においても、突条部20−4は鍵盤蓋平面部20−1よりも上方向に向かって突出する。これにより、蓋開状態において鍵盤蓋20に譜面や筆記具等を載置したとき、これらが鍵盤22に落下することを防止することができる。
【0019】
ここで、図2に示した蓋開状態において、鍵盤蓋20の裏面に譜面52,54を載置した状態を図6に示す。この状態において譜面52は鍵盤蓋20の裏面に収まっているが、譜面54は右側の側板10−1にまではみ出している。しかし、図2において説明したように、鍵盤蓋平面部20−1および鍵盤蓋前方部20−2に各々隣接する側板上面10−1a,10−1bは、蓋開状態における鍵盤蓋平面部20−1および鍵盤蓋前方部20−2の裏面とほぼ同一面を成すように構成されているため、側板10−1の上面に譜面54がはみ出しても、譜面54を支障なく保持することができる。
【0020】
4.変形例
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施例においては、蓋開状態において鍵盤蓋先端部20−10と天板部34とが同一の高さになるように、鍵盤蓋20の寸法が設定されたが、蓋開状態において鍵盤蓋先端部20−10が天板部34よりも低くなるようにしてもよい。このように、鍵盤蓋先端部20−10の高さが天板部34の高さ以下になるようにしておくと、スピーカ36,36から放音された音が反射されることなく演奏者に届くため、音質が良好になるという効果が得られる。また、天板部34に紙を置いて文字などを書く際には、天板部34よりも手前側に障害になるものがないから、文字などが書きやすくなるという利点もある。
【0021】
(2)また、逆に、蓋開状態において鍵盤蓋先端部20−10が天板部34よりも高くなるようにしてもよい。これにより、鍵盤蓋20の裏面に譜面などを置いた際、譜面の角度が直角に近くなるため、譜面が読みやすくなるという利点が生じる。
【0022】
(3)また、鍵盤蓋20とは別に、天板部34の上に譜面台を設けてもよい。その一例を図7に示す。図7において38は長方形板状の譜面台であり、天板部34の上面から、若干傾きつつ上方向に突出している。また、図示の例では、蓋開状態において鍵盤蓋先端部20−10は天板部34の上面よりも若干突出している。かかる構成によれば、譜面50を譜面台38に立てかけた際、譜面50の下端が鍵盤蓋前方部20−2によって係止されるため、譜面50の落下を防止することができる。この図7に対応する天板部34の位置を図5の一点鎖線Bによって示す。この変形例においては、収納高hv1は、鍵盤蓋前方部20−2の高さhcよりも低くなる。
【0023】
(4)また、上記実施例においては、蓋開状態における鍵盤蓋平面部20−1に隣接する部分の上面10−1aは、鍵盤蓋平面部20−1よりも数mm高くなるように構成されていた。しかし、完全に同一の高さになるように両者を構成してもよい。さらに、鍵盤蓋平面部20−1が蓋開状態において側板上面10−1aよりも高くなるようにしてもよい。但し、両者の高さの差は、図6に示した譜面54が支障なく載置できる程度(例えば「±8mm」程度)にしておくことが望ましい。同様に、鍵盤蓋前方部20−2に隣接する部分の上面10−1bは、蓋開状態における鍵盤蓋前方部20−2の上面の形状に完全に沿うように形成されていたが、上面10−1bおよび鍵盤蓋前方部20−2の高さについても、同程度の差があってもよい。
【0024】
5.実施態様
本発明には、以下のような実施態様がある。
(1)蓋開時における前記鍵盤蓋前方部(20−2)の先端部(20−10)の高さが、前記天板部(34)の高さ以上になるように前記鍵盤蓋(20)を構成したことを特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器。
(2)蓋開時における前記鍵盤蓋前方部(20−2)の先端部(20−10)の高さが、前記天板部(34)の高さ以下になるように前記鍵盤蓋(20)を構成したことを特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器。
(3)蓋閉時における前記鍵盤蓋前方部(20−2)の先端部(20−10)に衝合するとともに、空隙(19)を形成するように水平方向に隔てられた一対の口棒(17,17)をさらに有することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の鍵盤楽器。
(4)前記2枚の側板(10−1)の内部の前記回転中心(P)の位置に埋設され、前記鍵盤蓋(20)の回動動作を制動する制動部(40)をさらに有することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の鍵盤楽器。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の電子ピアノの蓋閉位置の斜視図である。
【図2】一実施例の電子ピアノの蓋開状態の斜視図である。
【図3】突条部20−4の端部20−5周辺の分解斜視図である。
【図4】突条部20−4の断面図である。
【図5】電子ピアノの各部の寸法関係を示す側面図である。
【図6】鍵盤蓋20に譜面52,54を載置した使用状態を示す図である。
【図7】譜面台38を有する変形例の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10:楽器本体部、10−1:側板、10−1a,10−1b:側板上面、12,14:支持脚、16:中央支持部、17,17:口棒、18:ペダル群、19:切欠部、20:鍵盤蓋、20−1:鍵盤蓋平面部、20−2:鍵盤蓋前方部、20−4:突条部、20−5,20−6:端部、20−7:凹部、20−8:嵌合溝、20−9:貫通孔、20−10:鍵盤蓋先端部、20−11:鍵盤蓋平面部裏面、22:鍵盤、24:拍子木、26:ゴムキャップ、30:鍵盤蓋収納部、30−1:収納本体部、30−2:立上り縁部、30−3:凹部、30−4:先端部、34:天板部、36,36:スピーカ、38:譜面台、40:制動部、42:回転軸、42−1:ネジ穴、44:ネジ、50:譜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の側板間に配設された複数の鍵から成る鍵盤部と、前記鍵盤部の後方に回転中心を有し蓋閉時に前記鍵盤部を覆う回動自在の鍵盤蓋と、該鍵盤部の後方上部に位置する天板部とを備えた鍵盤楽器であって、
前記天板部と前記鍵盤部との間に設けられる収納部であって、前記鍵盤部の蓋開時に前記2枚の側板の上面と前記鍵盤蓋の裏面とを露出させつつ前記鍵盤蓋を収納する収納部
を具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記収納部は、前記2枚の側板間に設けられた凹部を有し、
前記鍵盤蓋は平板状に形成された鍵盤蓋平面部と該鍵盤蓋平面部から前方に突出し蓋閉時に前記鍵盤部の前方を覆う鍵盤蓋前方部とを有し、
蓋開時に前記鍵盤蓋を前記凹部に収納したとき、前記鍵盤蓋平面部の裏面が、前記2枚の側板上面と同一高か該側板上面よりも低くなるように前記凹部を形成し、
前記鍵盤蓋前方部の高さは、前記天板部の高さと前記凹部の底面部の高さとの差以下であって、前記鍵盤部の露出部分の高さ以上に設定されていること
を特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記鍵盤蓋前方部は、前記鍵盤蓋平面部から湾曲しつつ前方に突出していることを特徴とする請求項2記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記凹部は、該凹部の底面部と前記天板部との間に、蓋開時に前記鍵盤蓋前方部に重なる立上り縁部を有し、
前記2枚の側板の上面のうち該立上り縁部に隣接する部分の上面は、該立上り縁部に沿った形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記収納部は、前記2枚の側板間に設けられた凹部を有し、
前記凹部は所定高の段差を成す立上り縁部と、該立上り縁部の下端に接合された平坦な底面部とを有し、
前記側板の上面は前記鍵盤部の側方位置から後方に向かって延設され、前記所定高よりも低い段差を有しつつ前記凹部の底面部の奥行き方向に向かって設けられていること
を特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
前記回転中心に沿って前記鍵盤蓋に形成され、蓋開時において上方に向かって突出する突条部をさらに有することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の鍵盤楽器。
【請求項7】
前記天板部上に、前記鍵盤部の鍵並び方向に沿って配列された複数のスピーカをさらに有することを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−199673(P2007−199673A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304761(P2006−304761)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】