説明

長寿命および高色座標保持率のランプ

本発明は、特定の蛍光体を含む長寿命および高色座標保持率ランプ、より具体的にはβアルミナ相を有する蛍光体表面にマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体を用いたランプを提供する。前記βアルミナ相を有する蛍光体は、BAM蛍光体[(MII、Eu2+)MgAll017]または[(MII、Eu2+)(Mg、Mn)All017](ここで、MIIはBa、Ca、Sr、またはこれらの混合物であり、前記Alは全部または一部がGaに置換された組成を有することができる)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の蛍光体を含む長寿命および高色座標保持率のランプ、さらに具体的にはβアルミナ相を有する蛍光体表面にマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体を用いたことを特徴とするランプに関するものである。本出願は2005年3月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2005−0026517号の出願日の利益を主張し、その内容の全部は本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
バリウムマグネシウムアルミン酸塩(BAM;[(Ba、Eu2+)MgAll017])蛍光体は、3波長蛍光灯やLCDのBLU(Back Light Unit)に用いられるCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)で用いられている。
【0003】
3波長ランプ(CCFLまたはEEFL)に用いられる他の蛍光体(赤色−Y:Euまたは緑色−(La、Ce)PO:Tb)とは異なり、BAM蛍光体は、実際応用製品製作時の熱処理過程、例えば、蛍光灯、CCFLまたはEEFLの場合、700〜750℃でバインダとして用いられる有機物を焼く過程(Binder Burn−Out Step=BBO Step)で発光特性低下という劣化が激しく発生する。このようなBAM蛍光体の劣化は、適用された製品を用いる間、ガス放電下に現れる全体蛍光体の劣化の主要原因になり、特にBAM蛍光体の発光特性の劣化(色座標の変化)が3波長ランプの劣化にともなう色座標の変化に大きい影響を与えるということがすでによく知られている。
【0004】
蛍光体の劣化が進行するにつれて、ランプの輝度と色座標は点灯初期と比較して順次減少するようになり、特に色座標の変化はランプの色温度を変化させ、ディスプレイ製品の性能低下の主要要因になる。
【0005】
このようなBAM蛍光体自体の性能劣化を最小化するために下記のような多くの努力がなされている。
【0006】
特開2003−82345号には、外部で別途の化合物の添加なしにEu2+の一部をEu3+に酸化する方法、または外部でAl、SiまたはLaを添加して、酸化物膜またはフッ化物膜を形成する方法が記載されている。特開2003−82344号には、AlまたはMgを4価の元素(Ti、Zr、Hf、Si、Sn、Ge、Ce)で置き換えて+電荷を増大させる方法によって劣化を改善する方法が記載されている。また、特開2003−82343号には、BAMの伝導層に存在する酸素欠乏による水や二酸化炭素の吸着防止をSiO、Al、ZnO、MgAl、Ln、LaPO、ZnSiOなどの酸化物やSi(OF)、La(OF)、Al(OF)などのフッ化物でコーティングした後、300〜600℃の温度で空気中で熱処理して防止することができると記載されている。
【0007】
一方、特開2002−348570号には、ケイ素が含まれていたBAM蛍光体の真空紫外線下での劣化特性を向上するために、空気中で500〜800℃で熱処理する技術が開示されている。大韓民国公開特許第2003−14919号には、蛍光体の表面を選択的な部分のみ表面処理することによって、被覆による性能低下を最小化する技術が記載されている。大韓民国公開特許第2002−0025483号には、5〜40nmの厚さでSiO層をBAM蛍光体の表面に連続被覆して覆う劣化防止技術が記載されている。米国特許第5、998、047号には、BAM蛍光体の表面をカテナポリリン酸塩(catena polyphosphates)で被覆して、紫外線による劣化を防止する技術が記載されている。特開2000−303065号には真空紫外線用蛍光体のBAM蛍光体をBaまたはSrを陽イオンにするホウ酸塩(Borates)、リン酸塩(Phosphates)、ケイ酸塩(Silicates)、ハロゲン(Halogens)、硝酸塩(Nitrates)、硫酸塩(Sulfates)および炭酸塩(Carbonates)化合物で被覆して、熱的な性能低下を防止する技術が記載されている。特開2002−080843号は、第1のBAM蛍光体に紫外線を出射する第2の蛍光体粉体を被覆させ、第1の蛍光体の性能低下を防止する技術などを開示している。
【0008】
その他にも、具体的な製品適用の例としてランプの輝度保持率の改善のための蛍光体の特性改善に関する研究は、次の通りである。
【0009】
特開平11−172244、特開平9−231944、特開2002−348570、特開2003−147350、特開2003−226872、特開2004−244604などは、蛍光体表面を硝酸とLa、Y、SiO、Gdなどの金属酸化物で処理して、蛍光体粒子表面に厚さ5−100nmの希土類酸化物被膜を形成したり(特開平11−172244)、蛍光体表面に希土類の炭酸塩をコーティング(特開2003−147350、特開2003−226872、特開2004−244604)したりすれば、真空紫外線による輝度の劣化が減ると発表した。しかし、このような研究では、コーティングによる蛍光体自体の初期輝度低下に関する内容がなく、輝度低下率に関する内容のみを報告し、また色座標保持率に対する言及もない。
【0010】
蛍光体表面に保護膜を形成した場合には被覆される量により発光効率が変わるようになり、表面処理量が多ければそれにより効率低下が大きいが、輝度保持率は優秀である。また、表面処理する物質が保護膜機能の正機能以外に前記物質のバインダの役割によって、蛍光体粒子間の凝集を発生させる逆機能も起こすことができる。このように凝集した蛍光体は、実際使用の際、分散性が良くなくて均一な塗布膜形成をなすことができず、これは不均一な色座標や輝度の原因を提供することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するために初期輝度が高くて、輝度および色座標の保持率に優れた蛍光体を用いたランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、βアルミナ相を有する蛍光体表面にマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体を用いるランプを提供する。
【0013】
前記βアルミナ相を有する蛍光体としては、BAM蛍光体、具体的に[(MII、Eu2+)MgAll017]または[(MII、Eu2+)(Mg、Mn)All017]を使用でき、ここでMIIはBa、Ca、Srまたはこれらの混合物であり、前記Alは全部または一部がGaに置換された組成を有することができる。
【0014】
前記マグネットプランバイト相は、別途の化合物の添加なしに、またはマグネットプランバイト(MP)構造を有する物質を化学的に結合させて形成することができる。
【0015】
前記ランプは蛍光表示板、X線撮影管、LCD、PDP、およびCRTのような表示装置に用いられるBLUランプ、例えばCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)、または照明装置用ランプとして用いることができる。
【0016】
前記マグネットプランバイトは、βアルミナ相と非常に類似する構造を有する物質であって、下記化学式1で表示されるものであってもよい。
(II)M’(III)l219(化学式1)
【0017】
前記化学式1の式で、M(II)は、Ca、Sr、Pb、またはEuであり、M’(III)は、Al、Gaまたはこれらの混合物である。
【0018】
また、前記マグネットプランバイトは、下記化学式2で表示されるものであってもよい。
(III)M”(II)M’(III)1119(化学式2)
【0019】
前記化学式2で、M(III)は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、またはGdのようなランタン族金属であり、M”(II)は、Ni、Co、Fe、Mn、またはMgであり、M’(III)は、Al、Gaまたはこれらの混合物である。
【0020】
また、前記マグネットプランバイトは、下記化学式3で表示されるものであってもよい。
(III)M’(III)1118(化学式3)
【0021】
前記化学式3で、M(III)は、La、Ce、またはこれらの混合物であり、M’(III)は、Al、Gaまたはこれらの混合物である。
【0022】
前記マグネットプランバイト相は、βアルミナ相の蛍光体、特にBAM蛍光体の特定の結晶面、すなわちc軸と平行した結晶面のみを選択的に化学的な表面改質をする。
【0023】
組成が変化したBAM蛍光体を熱処理して輝度保持率のみの向上を試みたり、好ましい発光色を有する本来の組成を有するBAM蛍光体に単純保護膜が形成された蛍光体のような従来技術とは異なり、本発明は、βアルミナ相の蛍光体、特にBAM蛍光体と化学的結合をし、蛍光体の結晶構造のβアルミナ相と物理化学的に非常に類似するマグネットプランバイト結晶構造であってβアルミナ相の蛍光体の特定の結晶面、すなわちc軸と平行する面のみを選択的に表面改質する蛍光体を用いることを特徴とする。本発明で用いられる蛍光体の長所および効果は次の通りである。
【0024】
第1に、本発明で用いる蛍光体は、実際のCCFLのような応用製品に適用時、すなわちランプ製品の製作工程時に要求される高温熱処理工程にともなう蛍光体特性劣化がほぼない。例えば、CCFLランプ製造時の高温過程(700−750℃)における蛍光体結晶構造内への水分浸透による蛍光特性低下にともなう発光効率低下および発光色純度低下が少ない。例えば、本発明によれば濃い青色から緑がかった青色への発光色変化(C.I.E.色座標でy値増加)がないため、高輝度でかつ色座標の変化が少ないCCFL/EEFLランプの製作が可能である。
【0025】
第2に、前記蛍光体を用いた応用製品において、時間の経過に従う性能的低下、すなわち輝度低下および色座標移動が既存のBAM蛍光体を用いた場合より大幅に改善されるため、長寿命化を可能にする。
【0026】
第3に、本発明で用いる蛍光体は、保護膜のマグネットプランバイト相とβアルミナ相との間に強い化学的な結合のため、従来技術によって作られた単純保護膜があるBAM蛍光体の場合とは異なって、機械的損傷に強いため、実際の蛍光体の使用時に伴う機械的な破損の恐れがなく、高品位の応用製品製作を可能にする。
【0027】
本発明で用いられる特定の蛍光体は、次のような方法によって製造される。以下では便宜上、BAM蛍光体のM’(III)がAlの場合を基準として説明するが、他の場合にも同様に適用される。
【0028】
(製法I)
本製法は、別途物質の添加なしにβアルミナ相を有するBAM蛍光体を酸化の雰囲気下で熱処理して、前記BAM蛍光体上にマグネットプランバイト相を形成する方法を提供する。
【0029】
本製法を反応式として簡単に示せば下記反応式1のようである。
【0030】
【化1】

【0031】
前記反応式1で、MはCa、Sr、Ba、またはこれらの混合物である。前記O/N比率は、0.01〜100%であることが好ましく、0.01〜10%であることがさらに好ましく、0.1〜5%であることが最も好ましい。加熱温度(T)は、800〜1200℃であることが好ましく、950〜1050℃であることがさらに好ましい。加熱時間(t)は、1分〜10時間であることが好ましく、0.5〜3時間であることがさらに好ましい。加熱温度(T)および加熱時間(t)は、処理しようとするβアルミナ相のBAMの量、O/N比率および加熱温度により最適化される。このような方法によって形成されたマグネットプランバイト相の厚さは、0.5〜5nmであることが好ましく、0.5〜2nmであることがさらに好ましい。
【0032】
(製法II)低温でマグネットプランバイト相の形成
(製法II−1)
本製法は、BAM蛍光体に金属フッ化塩を加えて混合した後、O/N比率が0.01〜100%である酸化雰囲気で650〜850℃の温度で0.5〜2時間熱処理してBAM蛍光体の表面上にマグネットプランバイト相を形成する方法を提供する。
【0033】
前記金属フッ化塩としては、MgF、ZnF、またはSnFの2価の金属フッ化塩またはAlFまたはGaFの3価の金属フッ化塩を用いることができる。前記金属フッ化塩は、1gのBAM蛍光体当たり0.001〜0.02gで用いることが好ましく、0.001〜0.01gで用いることがさらに好ましい。
【0034】
(製法II−2)
本製法は、βアルミナ相、すなわちスピネル層(MgAll016)と伝導層[(MII、Eu2+)O]が連続して積層した層状構造を有するBAM蛍光体の伝導層に存在するBaまたはEuイオンをマグネットプランバイト相を形成できる陽イオン(M)に交換し、酸化雰囲気下で熱処理してBAM蛍光体の表面上にマグネットプランバイト相を形成する方法を提供する。前記酸化雰囲気のO/N比率は、0.01〜100%であることが好ましく、前記熱処理は650〜850℃で0.5〜2時間行うことが好ましい。この時、熱処理温度を低くするためにイオン交換時のマグネットプランバイト相を形成できる陽イオンのフッ化塩を用いることができる。前記陽イオンのフッ化塩を用いる場合、熱処理温度を650〜750℃まで低くできる。
【0035】
前記陽イオン(M)としては、Ca2+、Sr2+、Eu3+、La3+またはGd3+を使用することができ、1gのBAM蛍光体当たり0.001〜0.02gの陽イオンフッ化塩を用いることが好ましい。
【0036】
本製法は、BAM蛍光体とイオン交換物質とを混合した後、調節された酸素分圧下で昇温速度10℃/min、650〜750℃間の温度で1〜2時間熱処理した後、10℃/min速度で温度を低くすることによって水分抵抗力を有する蛍光体を製造することができる。
【0037】
本製法は、下記反応式2のように示すことができる。
【0038】
【化2】

【0039】
(1)BAM蛍光体とMFを一定比率で混ぜて、650〜750℃の温度で一定酸素分圧を保持した状態で熱処理する。
【0040】
(2)(1)のMFは、次の方法によって製造される。
M(NOyHO+xNHF→MF+xNHNO+yH
【0041】
(製法II−3)
本製法は、βアルミナ相のBAM蛍光体に金属フッ化塩と金属硝酸塩を加えて混合した後、不活性の雰囲気下で650〜750℃の温度で0.5〜2時間熱処理してBAM蛍光体の表面上にマグネットプランバイト相を形成する。
【0042】
すなわち、金属フッ化塩を用いる方法(製法II−1)とBAM蛍光体伝導層のBaまたはEuイオンをマグネットプランバイト相が可能な陽イオンにイオン交換する方法(製法II−2)を同時に用いて、耐水性に優れた、すなわち劣化特性が少ない蛍光体の製造方法を提供する。
【0043】
前記金属フッ化塩としては、MgF、ZnF、またはSnFの2価の金属フッ化塩またはAlFまたはGaFの3価の金属フッ化塩を用いることができる。この金属フッ化塩は、1gのBAM蛍光体当たり0.001〜0.02gとして用いることが好ましい。本製法では、用いるMgFやAlFのようなMFの量を調節することによって、熱処理温度を変化させることができる。
【0044】
前記金属硝酸塩の金属(L)としては、Ca2+、Sr2+、Eu3+、La3+、またはGd3+を用いることができる。金属硝酸塩は、1gのBAM蛍光体当たり0.001〜0.02gとして用いる。
【0045】
前記不活性の雰囲気は、窒素、アルゴン、またはこれらの混合気体によって保持することができる。
【0046】
本製法は、BAM蛍光体と添加される物質を均一に混合した後、乾燥して混ざり合った蛍光体を得て、このように混ざり合った蛍光体を調節された不活性の雰囲気で昇温速度10℃/min、650〜850℃間の温度で0.5〜2時間熱処理した後、10℃/min速度で温度を低くすることによって、本発明に用いられる蛍光体を製造することができる。
【0047】
本製法は、マグネットプランバイト相の形成促進のための製法であって、II−1、II−2を同時に用い、下記反応式3のように示すことができる。
【0048】
【化3】

【0049】
前記反応式3で、MはMg2+またはAl3+であり、LはCa2+、Sr2+、Eu3+、La3+、またはGd3+などの3価のランタン族金属である。
【0050】
(1)BAM蛍光体とMF(1〜20mmol/gBAM、好ましくは18mmol/gBAM)およびL(NOyHO(1〜10mmol/gBAM、好ましくは6〜9mmol/gBAM)を一定比率で混ぜて、650〜850℃で窒素の雰囲気下のような不活性の雰囲気下で熱処理する。
【0051】
(2)(1)のMFおよびL(NOyHOは、次の原液を用いて製造することができる。
M(NOyHO、x(NH)F、L(NOzHOの原液
【0052】
(製法III)
本製法は、BAM蛍光体にマグネットプランバイト相を有する物質を加えて混合した後、不活性の雰囲気で熱処理する方法である。
【0053】
前記マグネットプランバイト相を有する物質は、M、M(NOおよびAl(OR)を混合して製造され、ここでMはEu3+、Ce3+、またはLa3+などのランタン族金属イオンであり、XはClまたはNO3−であり、MはMg2+で、ORはアルコキシドである。前記MはBAM蛍光体1g当たり0.002〜0.05mmolを用いることが好ましい。
【0054】
前記不活性の雰囲気は、窒素、アルゴン、またはこれらの混合気体であり、熱処理温度が800〜1000℃である。
【0055】
本製法は、外部でマグネットプランバイト相を有する物質を投入して、熱処理を介してβアルミナ相のBAM蛍光体の表面上にマグネットプランバイト相の保護膜を形成するようにする製法であって、化学式としては簡単に下記化学式4のように表現される。
【0056】
【化4】

【0057】
前述したβアルミナ相を有する蛍光体、特にBAM蛍光体[(MII、Eu2+)MgAll017]の表面にマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体は青色または緑色の蛍光体として用いることができる。本発明に係る前記蛍光体を用いるランプは、前記蛍光体のみを用いた単色ランプであるか、他の1以上の蛍光体をさらに用いた単色または多色ランプであってもよい。前記蛍光体は当技術分野に知られている方法を用いてランプに適用することができる。
【0058】
本発明に係るランプは、例えば蛍光表示板、X線撮影管、LCD、PDP、およびCRTのような表示装置に用いられるBLUランプまたは照明装置用ランプであってもよい。前記BLUランプは、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)であってもよい。
【0059】
本発明は、また、前記ランプを含む蛍光表示板、X線撮影管、LCD、PDP、およびCRTのような表示装置または照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0060】
本発明に係るランプは、従来のものに比較して初期輝度および機械的物性に優れている。また、前述した通り、βアルミナ相を有する蛍光体、特にBAM蛍光体の表面に保護層としてマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体は、ランプ製造過程で伴う熱的劣化と水銀放電のための真空紫外線による劣化に対する優れた抵抗力を有することによって、ランプ製造過程と点灯中のランプの輝度低下および色座標変化を抑制する特性を示す。したがって、前記蛍光体が適用されたランプは、長寿命、高色座標保持率を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
<製造例1>
Baが0.9、Euが0.1、Mgが1.0、Alが10のモル比になるように混合し、フラックスとしてAlFを適当量添加して、この混合物を95:5体積比の窒素/水素の混合ガスの雰囲気下で1400℃で2時間焼成した。
【0063】
焼成が終わった蛍光体をボールミルした後、水洗および乾燥してBa0.9Eu0.1MgAl1017(BAM:Eu2+)組成の蛍光体を得た。
【0064】
<製造例2>
前記製造例1で製造したBAM:Eu2+蛍光体200gをるつぼに入れてN+O(体積比99.9:0.1)の混合気体を流しながら、5℃/minの速度で昇温して950℃で2時間保持した後、5℃/minの速度で温度を下げて所望する蛍光体を得た。
【0065】
<製造例3>
前記製造例1で製造したBAM:Eu2+蛍光体500gとAlFの1.25gを混合してるつぼに入れて、N+Air(2.5wt%Air/N+Air混合ガス)の混合気体を流しながら、5℃/minの速度で昇温して750℃で1時間保持した後、5℃/minの速度で温度を下げて所望する蛍光体を得た。
【0066】
<製造例4>
前記製造例1で製造した1gのBAM:Eu2+蛍光体と0.2975mmol(0.0608g)のアルミニウムイソプロポキシド(aluminum isopropoxide;Al(OPr))、0.0035mmol(0.00152g)の硝酸セリウム(cerium nitrate;Ce(NO・(6HO))、0.0215mmol(0.0093g)の硝酸ランタン(lanthanum nitrate;La(NO・(6HO))を10mlの蒸溜水と攪拌した後、加熱して溶媒を除去した。乾燥された蛍光体粉末を窒素の雰囲気下で2時間900℃で熱処理(昇温速度10℃/min)して所望する蛍光体を製造した。
【0067】
<実験例1>
(単色CCFLランプの真空紫外線による劣化テスト)
前記で製造した本発明に係る蛍光体の粉末状態の色座標とBBO工程(Binder Burn−Out Step)を含むCCFLランプ製造後の色座標を、保護膜がない既存のBAM蛍光体の色座標変化と比較して、発光特性低下の程度を測定(熱的劣化)して相対的に評価し、その変化幅(Δx、Δy)が小さいほど色座標保持率に優れると判断した。
【0068】
ランプ製造時の蛍光体は、各々前記製造例1および製造例2の蛍光体を用い、青色蛍光体500gにIPA(Isopropyl Alcohol)とBA(Butyl Acetate)の50:50混合液250ml、結着剤スラリー40ml、中和液2mlを混ぜて、NC(Nitrocellulose)溶液を用いて粘度を10Secとして合わせた。混合液を72時間ローリングした後、ランプに塗布した。実験用ランプの規格はφ=2.4mm、L=400mmを用いた。
【0069】
前記製造例1と製造例2で製造された蛍光体で青色単色CCFLランプを製造して発光特性を検討した結果は、表1の通りである。製造例2で製造された蛍光体を適用した特性が、既存のBAM蛍光体(製造例1)を適用して製造したものと比較して優れたことを確認できる。
【0070】
このような結果は、ランプ製造直後(0時間)に測定した値を粉末状態の測定値と比較したものであって、まだ水銀蒸気下の真空紫外線による劣化は排除された結果であるため、製造例2の蛍光体がランプ製造工程(BBO工程)から誘発される熱的劣化に既存の蛍光体(製造例1)より抵抗力があるということを示す。
【0071】
【表1】

【0072】
<実験例2>
(単色CCFLランプの寿命テスト)
前記実験例1で製造されたCCFLランプの寿命テスト(700時間)を実施した結果は、表2の通りである。色座標の変化量(Δx、Δy)は、初期ランプの色座標と700時間後の色座標との差を示す。したがって、実験例1と異なり、実験例2で観察される色座標の差は、水銀蒸気下の真空紫外線による蛍光体の劣化であって、これもまたその差が小さいほど色座標保持率が良いと判断した。
【0073】
製造例2で製造された蛍光体の特性(輝度/色座標保持率)は、既存のBAM蛍光体(製造例1)と比較して、輝度保持率は13%以上高く、色座標変化量(△x、△y)の値は各々45%と50%の値を示した。このような結果は、製造例2の蛍光体が真空紫外線による蛍光体の劣化に抵抗力があることを示す。
【0074】
【表2】

【0075】
<実験例3>
(3色CCFLランプの寿命テスト)
本発明に係る蛍光体と既存のBAM蛍光体が3色ランプ(CCFL)の劣化に及ぼす影響を評価するために、各々同一の赤色−Y:Euと緑色−(La、Ce)PO:Tbの蛍光体を用いて3色ランプを製造して、寿命テスト(2000時間)を実施した。
【0076】
ランプ製造時の青色蛍光体は、各々前記製造例1、製造例2の蛍光体を用い、赤色と緑色蛍光体は既在用いる蛍光体(赤色の場合Y:Eu、緑色の場合(La、Ce)PO:Tb)を用いた。3色蛍光体の混合比率は、重量比で赤色:43.60%、緑色:33.20%、青色:23.20%であった。スラリー製造は、蛍光体総量500gにIPA+BA混合液250ml、結着剤スラリー40ml、中和液2mlを混ぜて、NC(Nitrocellulose)溶液を用いて粘度を10Secとして合わせた。混合液を72時間ローリングした後、ランプに塗布した。実験用ランプの規格はφ=2.4mm、L=400mmとし、ランプの中央色座標値はx=0.3、y=0.3として製造された。
【0077】
初期ランプの色座標は同一に(x、y=0.3)調整され、同一の赤色/緑色の蛍光体を用いたため、ランプの劣化特性は用いられた青色蛍光体の劣化特性に応じて決定されると判断した。色座標の変化量は初期ランプの色座標と2000時間後の色座標との差を示し、その差が小さいほど色座標保持率が良いと判断した。
【0078】
前記製造例2で製造された蛍光体と既存のBAM蛍光体(製造例1)とを用いて作った3色CCFLの寿命テスト(2000時間)の結果は、表3の通りである。製造例2で製造された蛍光体の特性(輝度/色座標保持率)が既存のBAM蛍光体(製造例1)と比較して、輝度保持率は4%高く、色座標変化量(Δx、Δy)の値は各々31%と36%の値を示した。したがって、製造例2で製造された蛍光体を用いた3色CCFLランプの特性(輝度/色座標保持率)が、既存のBAM蛍光体を用いたランプと比較して優れていることを確認した。
【0079】
【表3】

【0080】
<実験例4>
(3色EEFLランプの寿命テスト)
本発明に係る蛍光体と既存のBAM蛍光体の3色ランプ(EEFL)の劣化に及ぼす影響を評価するために、実験例3と同様に比較実験を実施した。
【0081】
ランプ製造時の青色蛍光体は、各々前記製造例1、製造例2の蛍光体を用い、赤色と緑色蛍光体は既存用いる蛍光体(赤色の場合Y:Eu、緑色の場合(La、Ce)PO:Tb)を用いた。3色蛍光体の混合比率は、重量比で赤色:25.8%、緑色:27.7%、青色:45.5%であった。スラリー製造は、蛍光体総量500gにIPA(Isopropyl alcohol)+BA(Butyl acetate)50:50混合液250ml、結着剤スラリー40ml、中和液2mlを混ぜて、NC(Nitrocellulose)溶液を用いて粘度を9.6Secで合わせた。混合液を72時間ローリングした後、ランプに塗布した。実験用ランプの規格は、φ=4.0mm、L=600mmとし、ランプの中央色座標値はx=0.248、y=0.224として製造された。
【0082】
初期ランプの色座標は同一に調整され、同一の赤色/緑色の蛍光体を用いたため、ランプの劣化特性は用いられた青色蛍光体の劣化特性に応じて決定されると判断した。色座標の変化量は、初期ランプの色座標と1000時間後の色座標の差を示し、その差が小さいほど色座標保持率が良いと判断した。
【0083】
前記製造例2で製造された蛍光体と既存のBAM蛍光体(製造例1)を用いて作った3色EEFLの寿命テスト(1000時間)の結果は、表4の通りである。製造例2で製造された蛍光体の特性(輝度/色座標保持率)が既存のBAM蛍光体(製造例1)と比較して、輝度保持率は1.6%高く、色座標変化量(Δx、Δy)値は各々41.7%と36.4%の値を示した。したがって、製造例2で製造された蛍光体を用いた3色EEFLランプの特性(輝度/色座標保持率)が既存のBAM蛍光体を用いたランプと比較して優れていることを確認した。
【0084】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るランプは従来と比較して、初期輝度および機械的物性に優れる。また、前述した通り、βアルミナ相を有する蛍光体、特にBAM蛍光体表面に保護層としてマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体はランプ製造過程で伴う熱的劣化と水銀放電のための真空紫外線による劣化に対する優れた抵抗力を有することによって、ランプ製造過程と点灯中のランプの輝度低下および色座標変化を抑制する特性を示す。したがって、前記蛍光体が適用されたランプは、長寿命、高色座標保持率を有することができる。このような結果は同一の赤色/緑色蛍光体を用いて製造した、3色CCFL/EEFLランプの寿命および色座標保持にも多くの影響を与え、よって前記蛍光体が適用されたCCFL/EEFLランプは、長寿命、高色座標保持率を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
βアルミナ相を有する蛍光体表面にマグネットプランバイト相がエピタキシャルに形成された蛍光体を用いるランプ。
【請求項2】
前記βアルミナ相を有する蛍光体は、BAM蛍光体[(MII、Eu2+)MgAll017]または[(MII、Eu2+)(Mg、Mn)All017](ここで、MIIはBa、Ca、Sr、またはこれらの混合物であり、前記Alは全部または一部がGaに置換された組成を有することができる)である請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
前記βアルミナ相を有する蛍光体は、青色または緑色蛍光体である請求項1に記載のランプ。
【請求項4】
前記ランプは、単色または多色ランプである請求項1に記載のランプ。
【請求項5】
前記ランプが表示装置のBLU用である請求項1に記載のランプ。
【請求項6】
前記表示装置は、蛍光表示板、X線撮影管、LCD、PDP、およびCRTからなる群より選択される請求項5に記載のランプ。
【請求項7】
前記ランプがCCFLまたはEEFLである請求項5に記載のランプ。
【請求項8】
前記ランプが照明装置用である請求項1に記載のランプ。
【請求項9】
前記マグネットプランバイト相は、下記化学式1、化学式2、または化学式3の物質からなる請求項1に記載のランプ:
[化学式1]
(II)M’(III)l219
[化学式2]
(III)M”(II)M’(III)1119
[化学式3]
(III)M’(III)1118
前記式で、
(II)はCa、Sr、Pb、またはEuで、
M’(III)はAl、Ga、またはこれらの混合物で、
(III)はLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、またはGdのランタン族金属で、
M”(II)はNi、Co、Fe、Mn、またはMgであり、
(III)はLa、Ce、またはこれらの混合物である。
【請求項10】
前記マグネットプランバイト相の厚さは、0.5〜5nmである請求項1に記載のランプ。
【請求項11】
前記マグネットプランバイト相が前記βアルミナ相を有する蛍光体結晶のc軸と平行した結晶面のみを選択的に化学的表面改質した請求項1に記載のランプ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載のランプを含む表示装置。
【請求項13】
前記表示装置は、蛍光表示板、X線撮影管、LCD、PDP、およびCRTからなる群より選択される請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
請求項1乃至4、及び、9乃至11の何れか1項に記載のランプを含む照明装置。

【公表番号】特表2008−517092(P2008−517092A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536624(P2007−536624)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001150
【国際公開番号】WO2006/109938
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】