長尺ブラシ状CNTの製造方法及び同製造装置
【課題】本発明の目的は、触媒化学的気相成長法により長尺のブラシ状CNTを高効率に製造することである。
【構成】本発明は、原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、ブラシ状CNTを製造する方法及び装置において、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgを前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上である長尺ブラシ状CNT製造方法及び同製造装置である。
【構成】本発明は、原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、ブラシ状CNTを製造する方法及び装置において、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgを前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上である長尺ブラシ状CNT製造方法及び同製造装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称す)の長さが長い、いわゆる長尺なブラシ状のCNT(「長尺ブラシ状CNT」と称す)を製造する方法及び同製造装置に関し、更に詳細には、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガスを反応室に供給し、前記原料ガスと前記反応室に配置された触媒を加熱して長尺ブラシ状CNTを成長させる際に、高スループットを達成できる製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺ブラシ状CNTを製造する方法として、触媒を利用して炭化水素などの原料ガスを分解し、触媒表面にCNTを成長させる触媒化学的気相成長法(CCVD法、Catalyst Chemical Vapor Deposition)がある。国際公開第WO2008/007750号(特許文献1)、末金 皇, 長坂岳志, 野坂俊紀, 中山喜萬 著, 応用物理13,第73巻,(2004), 第5号(非特許文献1)及びKenji Hata, Don N. Futaba, Kohei Mizuno, Tatsunori Namai, Motoo Yumura, Sumio Iijima著「Water-assisted highly efficient synthesis of impurity-free single-walled carbon nanotubes」Science, 2004, VOL306, pp1362-4(非特許文献2)には、前記CCVD法により触媒基板表面に長尺ブラシ状CNTを成長させる方法が記載されている。非特許文献1には、原料ガスのエチレンとキャリアガスのヘリウムに還元性ガスとして水素ガスを、酸化性ガスとして水を添加した混合ガスを反応室に供給しながら、反応室に設置された触媒を抵抗加熱方式による伝導電熱で加熱して長尺ブラシ状CNTを製造する方法が記述されている。
【0003】
一般的なブラシ状CNTの成長過程は、初期の急速な成長による第1成長段階と、比較的緩やかに連続的に成長する第2成長段階があることが知られている。CNTの成長メカニズムは、様々な研究機関によって鋭意研究がおこなわれており、近い将来完全に解明されつつある状況にある。
【0004】
本願における「長尺ブラシ状CNT」とは、CNTが基板上に一定方向に林立したものであって、基板上に一定方向に成長したCNTの長さの平均値が1mm以上の長さを有するものをいう。CNTの成長過程において、初期の急速な成長段階が終了した後、CNTの長さは300μmを超え、比較的緩やかな成長段階に移行する。このような成長速度が減速した段階でCNTをさらに成長させることにより、長尺CNTが得られる。尚、触媒体表面上に成長したCNTは略均一の長さとなって先端の包絡面が基板に対し平行な平面を形成するため、基板から上記包絡面との間隔をCNT高さとも称している。厳密には配向している長尺ブラシ状CNTが縮れている場合、基板に対し斜めに倒れている場合には長さと高さが異なる場合もあるが、基板に垂直に略同長さに長尺ブラシ状CNTが成長しておれば、CNTの平均長さとCNT高さは同じである。
【0005】
長尺ブラシ状CNTは、基板上に成膜された金属触媒、本願では鉄触媒を用いて製造される。基板上に成膜された触媒金属は、昇温工程においてナノサイズの微粒子を形成する。触媒上の触媒微粒子に対して750℃以上の高温雰囲気において原料ガスを接触させることにより、CNTの成長が開始される。最適な条件においては、成長モードは第1成長段階を経て300μmを超えて第2段階に移行し、いわゆる長尺ブラシ状CNTが形成される。
【0006】
図13に示すように、非特許文献1では、長尺に限らず一般的なブラシ状CNTの成長において、ブラシ状CNTが初期に急速に成長する第1段階、比較的緩やかに連続的に成長する第2段階があることが記載されている。図13は、非特許文献1に記載されるブラシ状CNTの平均高さと原料ガス供給時間の相関図である。原料ガスとしてC2H2ガスが用いられ、タイプ1〜3では、キャリアガスに対するC2H2濃度の時間変化が異なり、成長したブラシ状CNTの平均高さに違いがあるが、C2H2ガスの供給時間に対する平均高さの変化は、略同じような傾向を示している。即ち、図13では、C2H2の供給時間が経過して、第1段階におけるブラシ状CNTの急速な成長が鈍化すると成長が緩やかな第2段階に移行し、第2段階ではブラシ状CNTの成長速度が遅くなる現象が見られる。図13から明らかなように、特許文献1に記載されるブラシ状CNTの製造方法によって1mm以上の長尺ブラシ状CNTを製造する場合、非常に長い成長時間が必要となる、さらに製造途中で成長が停止するという問題があった。非特許文献1には、その要因として、触媒表面に過剰に生成された原料ガス由来の炭素が堆積し、原料ガスと触媒表面との接触を妨げる現象が起こることが記述されている。即ち、非特許文献1に記述されている一般的なブラシ状CNTの製造方法では、第2段階が触媒表面の炭素の拡散律速となり、遂にはカーボンナノ構造の成長が止まるという問題点があった。
【0007】
非特許文献2では、上記第2段階において、触媒表面に炭素が堆積することを抑制するために、水などの酸化性成分をCVD時に原料ガスに添加して、第2段階の成長時に、原料ガス由来の余分なアモルファスカーボンが触媒表面に堆積することを防止している。この方法により、長尺ブラシ状CNTにおける高効率な成長速度(2.4mm/10分)が達成されている。しかしながら、水などの酸化性成分を添加することにより原料由来の余分な炭素を酸化消失させることは、必要な原料炭素分を消失させる可能性があり問題があった。また、酸化性成分を原料ガスと同時に添加した場合、基板上に成長したCNTの密度が低下するという問題があった。
【0008】
特許文献1では、酸化性ガスによる原料炭素の消失を目指すだけでなく、原料ガスの過度な分解を抑制するために還元性ガスを添加し、触媒量及び酸化性ガスと還元性ガスの量比を最適化することで効率の良い長尺ブラシ状CNTの製造を行うことが提案されている。
還元性ガスにより原料ガスの分解反応が抑制されることから、炭素が過剰に供給されることを抑制することができ、触媒活性が長時間に亘って保持される。例えば、炭化水素からなる原料ガスは、還元性ガスとして水素ガスが添加されることにより炭化水素の分解を直接的に抑制する働きがあることが示されている。即ち、長尺CNTを成長させるためには、添加した酸化性ガスと還元性ガスのガス量比をコントロールして、それぞれの働きを適度に調整することで触媒活性が途中で失活することを防止する必要があった。しかしながら、特許文献1においては、非特許文献1の製造方法にくらべて長尺ブラシ状CNTの成長速度がやや不足するという問題があった。
【0009】
特許文献2には、CVD法によりCNTをより高効率に製造する方法が提案されている。特許文献2に記載されるCNTの作製方法では、反応室に原料ガスを導入しながら触媒基板を急速加熱する手段として赤外線イメージ炉を用いることが提案されている。しかし、触媒基板のみを赤外イメージ炉によって急速加熱する製造方法および製造装置においては、現に触媒のみを加熱することができるが、反応ガスの温度が上がらず長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。
【0010】
特許文献3には、電熱により触媒基板を加熱し、金属触媒に原料ガス接触する前段階に原料ガスを予熱するCCVD法が提案されている。しかしながら、抵抗加熱方式で触媒基板を加熱し、550℃以下の低温で成長させるため、本願の目的である長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。特許文献3は基板上のCNTを電解放出型ディスプレイ用電極に用いるものであり、ガラス基板の軟化点500℃以下でのCNTの成長が必要であることから原料ガスの予熱が必要であり、本願目的と根本的に異なる。
【0011】
長尺ブラシ状CNTは、触媒基板からCNTを剥離することで、長さの比較的均一なCNTが得られ、カーボン繊維などに利用することが可能である。CNTの長さが1mm以上に成長した長尺ブラシ状CNTを効率よく製造し、基板からCNTのみを剥離することで、簡単に長尺のCNTから構成されるカーボン繊維を得ることができる。長尺CNTから構成されるカーボン繊維は、機械的特性が優れ、糸、織物、ロープ及び炭素繊維強化プラスチック等の用途に適している。さらに長尺ブラシ状CNTは、CNTの長さが1mm以上であるから、人が気管や肺に吸い込んでも人体に害を及ぼす危険性が少なく、物差し等を用いて肉眼によりおよその長さを確認することができるから、生産時、使用時において比較的取扱いが簡単である。従って、長尺ブラシ状CNTを高効率・高スループットで製造可能な製造方法および製造装置の開発が要望されていた。
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2008/007750号
【特許文献2】特開2006−062882号公報
【特許文献3】特開2005−279624号公報
【非特許文献1】末金 皇, 長坂岳志, 野坂俊紀, 中山喜萬, 応用物理13,第73巻,(2004), 第5号
【非特許文献2】Kenji Hata, Don N. Futaba, Kohei Mizuno, Tatsunori Namai, Motoo Yumura, Sumio Iijima著「Water-assisted highly efficient synthesis of impurity-free single-walled carbon nanotubes」Science, 2004, VOL306, 1362-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のことから、従来のCCVD法では、次のような課題があった。即ち、非特許文献1に記述されている一般的なブラシ状CNTの製造方法では、第2段階が触媒表面の炭素の拡散律速となり、遂にはカーボンナノ構造の成長が止まるという問題点があった。非特許文献2では、水などの酸化性成分を添加することにより原料由来の余分な炭素を酸化消失させることは、必要な原料炭素分を消失させる可能性があり問題があった。また、酸化性成分を原料ガスと同時に添加した場合、基板上に成長したCNTの密度が低減化するという問題があった。また、特許文献1に記載される酸化性ガスと還元性ガスを原料ガスに添加する長尺ブラシ状CNTの製造方法では、非特許文献1の製造方法にくらべて長尺ブラシ状CNTの成長速度が十分でないという問題があった。
【0014】
更に、特許文献2に記載されるCNTの製造方法では、反応室に原料ガスを導入しながら触媒基板を急速加熱する手段として赤外線イメージ炉を用いているが、触媒基板のみを赤外イメージ炉によって急速加熱する製造方法および製造装置においては、現に触媒のみを加熱することができるが、反応ガスの温度が上がらず長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。特許文献3は、基板上のCNTを電解放出型ディスプレイ用電極に用いるものであり、ガラス基板の軟化点500℃以下でCNTを成長させるため、原料ガスの予熱を行うものであり、本願目的と根本的に異なる。即ち、550℃以下の低温で成長させるため、長尺ブラシ状CNTを製造することは不可能であった。
【0015】
更に、長尺ブラシ状CNTをバッチ処理で製造する場合、反応室内に新たな触媒基板が逐次導入されるため、毎回、触媒基板を反応温度まで短時間で加熱する必要がある。しかしながら、抵抗加熱方式による伝導電熱によりガス加熱を行って、触媒基板を加熱するCCVD法においては、原料ガスを予熱しても触媒基板が反応温度に達するまでの時間が長く、触媒基板を大量にCVD処理を行うには複数の反応室が必要となる問題があった。
【0016】
また、長尺ブラシ状CNTを成長させるためには反応温度を750℃以上に設定することが好ましいが、従来の長尺ブラシ状CNT製造方法を行った場合、昇温速度が遅く、高スループットを実現できない問題があった。CNTの長さが300μmを越えると成長速度が急激に低下するために成長時間が大幅に増加することから、特に、CNTの長さが1mm以上の長尺CNTを製造する場合の長尺ブラシ状CNTを安定に成長させることができる製造方法及び装置の開発が求められていた。
【0017】
更に、基板上に長尺ブラシ状CNTを製造する場合、触媒金属を塗布した基板を750℃以上の高温に加熱し、長尺ブラシ状CNTが成長するために必要な触媒微粒子を基板上の触媒膜から形成させる必要がある。その際、触媒基板の温度が常温又は比較的低温の状態で反応室に導入すると触媒表面が急速に加熱されることにより、長尺ブラシ状CNTの成長に適したサイズや形状を有する触媒微粒子が形成され難く、均一な形状の長尺ブラシ状CNTを製造することが困難である問題があった。あわせて、常温ならびに比較的低温の触媒基板を750℃程度の高温の反応室にいきなり導入すると、基板材質が急激な熱応力により変形するなどの問題があった。
【0018】
特許文献1に記載されるような赤外線加熱装置を用いた場合、触媒基板を常温の状態から750℃程度の高温まで、比較的一様に高速昇温することが可能である。しかしながら、原料ガスの赤外線吸収率は低く赤外線により原料ガスを反応温度まで直接的に加熱することが困難であることから、バッチ処理における長尺ブラシ状CNTの製造時間すなわちスループットを短縮することはできなかった。結果として、赤外線加熱により触媒基板が反応温度に到達していた場合においても、原料ガスが触媒に接触する時点で長尺ブラシ状CNTの成長に適した温度に達していない場合、赤外線加熱装置を用いても長尺ブラシ状CNTを短時間に繰り返し製造することは困難であるという結論に至った。
【0019】
本発明は、長尺ブラシ状CNTの製造時間を短縮すると共に、繰り返し急速に長尺ブラシ状CNTの作製に適した高温にてCVDができるように、触媒基板の高速昇温を実現し、結果として、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる長尺ブラシ状CNTの製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
換言すれば、長尺ブラシ状CNTをバッチ処理である熱CVDにより製造する際に、1回の工程にかかる時間を短縮し、単位時間あたりの製品を処理する量、すなわちスループットを増大させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、長尺ブラシ状CNTを製造する方法において、前記原料ガスがアセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記キャリアガスがヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記酸化性ガスが水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記還元性ガスが水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上である長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0021】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記触媒温度TCが750℃〜900℃の範囲に設定される長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0022】
本発明の第3の形態は、第1又は2の形態において、前記原料ガスがエチレンである長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0023】
本発明の第4の形態は、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、酸化性ガス、還元性ガス及びキャリアガスの混合ガスを反応室に供給する混合ガス供給手段と前記反応室に配置された触媒を加熱する加熱手段を有する長尺ブラシ状CNTの製造装置において、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離が100cm以下に設定される長尺ブラシ状CNTの製造装置である。
【0024】
本発明の第5の形態は、第4の形態において、前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線加熱手段である長尺ブラシ状CNTの製造装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の形態によれば、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に、前記混合ガスをガス予熱温度Tg(℃)に加熱するから、高速の昇温速度を実現することができると共に、均一な長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。即ち、混合ガスを予熱し、触媒を赤外線加熱することにより、昇温待ち時間が短縮して、長尺ブラシ状CNTの製造効率を向上させることができる。更に、前記ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整されるから、混合ガスが触媒に到達するとCNTの成長が開始されると共に、長尺ブラシ状CNTを安定に成長させることができ、且つ、高効率に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCよりも50℃以上低い場合、混合ガスが触媒を冷やすことになり、混合ガスが触媒と接触した場合、混合ガスに含まれる原料ガスを好適に炭素分解する条件から外れるため、十分な炭素が触媒に供給されず、CNTの成長速度が低下する。ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCよりも50℃以上高い場合、前記原料ガスが触媒に接触したとき、過剰に炭素ラジカルが供給され、非結晶性カーボン(アモルファスカーボン)が触媒上に堆積することで触媒活性が低下することが考えられる。
【0026】
この温度範囲は、ガス予熱温度Tg、触媒温度TC及びCNTの成長の関係について、本発明者らが行った実験の結果に基づいて得られた値であり、その詳細については後述する。実験では、前記ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲にあるとき、CNTの成長が行われることが確認されている。従って、赤外線加熱と予備加熱により長尺ブラシ状CNTの製造時間を短縮すると共に、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。換言すれば、均一な長尺ブラシ状CNTを製造する1回の工程にかかる時間を短縮し、単位時間あたりの製品を処理する量、すなわちスループットを増大させることができる。本発明によれば、繰り返し触媒基板を急速に750℃以上の高温に加熱する高速昇温を実現することができる。
【0027】
ガスの予熱装置には、電熱、赤外線加熱や金属製容器を用いた誘導加熱を利用することができる。反応室とは別に、予熱路として予熱装置が設置された予熱室を配設して予備加熱(以下、単に「予熱」と称する)を行う場合、混合ガスを前記ガス予熱温度Tgまでほぼ一様に加熱することができる。更に、前記反応室と前記予熱室との接続部に開閉機構を設ければ、触媒基板の交換時に混合ガスの供給を停止することができる。従って、熱量の損失を低減化することができる。また、混合ガス配給管を前記予熱路とする場合、混合ガス供給配管に前記電熱機構又は前記誘導加熱機構を設けることができる。更に、反応室内に予熱装置を設置して供給される混合ガスの予熱を行うこともでき、この方法によれば製造装置の構造を簡単化することができる。
【0028】
アセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガである原料ガスは、長尺ブラシ状CNTの構成物質となる炭素原子を供給する働きがある。原料ガスは、触媒との接触により熱分解されることで炭素が簡単に排出される。炭素を排出する際に、熱分解時に水素ガスが生成される、還元性ガスが分解を抑制する働きをする。これらの原料ガスは、安価であり、長尺ブラシ状CNTの製造コストを低減することができる。
【0029】
ヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであるキャリアガスは不活性であり、長尺ブラシ状CNTの生成を阻害しない。これらのガスの内、特にヘリウムが高熱伝導性を有するため、ガス予熱に適しており最も好ましい。
【0030】
更に、本発明の第1の形態によれば、原料ガスを含む混合ガス中に還元性ガスと酸化性ガスが共存しているので長時間活性が持続させることができる。酸化性ガスは、水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである。これらの酸化性ガスは、酸素原子を供給するので、触媒上に堆積したアモルファスカーボンと反応し、堆積物を一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスとして酸化排出・除去することができる。特に、水は安価でかつ750℃以上でアモルファスカーボンを選択的に酸化し、長尺ブラシ状CNTや原料ガス及び還元性ガスと反応しないため安全であり最も好ましい。還元性ガスは、水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである。この還元性ガスから水素ガスが生成され、この水素ガスにより原料ガスの熱分解反応において原料ガスの分解を抑制して、カーボンの過剰な生成を抑制することができる。特に、水素ガスを還元性ガスとして用いた場合、原料ガスの分解を直接抑制する方向に作用するため、効率的であり最も好ましい。
【0031】
更に、本発明の第1の形態によれば、長尺ブラシ状CNTの最終成長高さが1mm以上であるから、糸、織物、ロープ及び維強化プラスチック等のカーボン繊維材料として好適なCNTを高効率に製造することができる。尚、最終成長高さとは、反応時間の終了時における長尺ブラシ状CNTの平均長さを意味している。前述のように、本発明によれば、比較的短時間に長尺ブラシ状CNTを成長させることができることから、最終成長高さが1mm以上になる長尺ブラシ状CNTをバッチ処理により効率よく製造することができ、好適なカーボン繊維材料として用いることができる。
【0032】
本発明の第2の形態によれば、反応温度が750℃〜900℃の範囲に設定されるから、赤外線加熱による触媒基板の高速昇温により、短時間に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。更に、長尺ブラシ状CNTを成長させる場合においても繰り返し短時間で結晶度の高い長尺ブラシ状CNTを製造することができる。
本発明者らの鋭意研究の結果、赤外線加熱の場合は電熱加熱に比べて高温で反応を起こすことができることを明らかにした。電熱加熱の場合815℃以上になると急激に長尺ブラシ状CNTの成長速度が低下し、860℃になると長尺ブラシ状CNTの成長がほぼ停止する。
【0033】
一方、赤外線加熱の場合、750℃以上でCNTの成長速度が増大し約800〜850℃においては750℃よりも反応性が高く成長速度が更に増大する。後述するように、少なくとも900℃程度までは成長速度が増大することが確認されており、750℃〜900℃の範囲に設定されることことによって効率的な成長が可能になる。特に、長尺ブラシ状CNTをより高効率に成長させるには、赤外線加熱を用いて反応温度を800℃〜900℃の範囲に設定すれば良く、より高効率に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。
【0034】
本発明の第3の形態によれば、前記原料ガスとしてエチレンを原料とすることで副産物が発生し難く、原料ガスが高効率で長尺ブラシ状CNTとなり、原料利用効率の高い製造方法を提供することができる。原料ガスとしては、アセチレン、エチレン及びメタンが使用できるが、これらの中で、エチレンが一番効率がよい。アセチレンの反応性は高いが、アモルファスカーボンなどの副産物が発生し易く、エチレンよりも低温での反応温度が選択されるため、生成される長尺ブラシ状CNTに構造欠陥ができ易かった。一方、メタンは副産物の発生がほぼ無く、高品質の長尺ブラシ状CNTが得られるが、反応性が低く、反応温度がエチレンよりも高い問題がある。従って、前記原料ガスとしてエチレンを使用することにより、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができ、原料ガスコストを低減化することができる。
【0035】
本発明の第4の形態によれば、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられるから、触媒を赤外線により長尺ブラシ状CNTの合成に適した触媒温度TCまで高速昇温できると共に、前記混合ガスを合成に適した前記触媒温度TC程度まで予備加熱することができる。即ち、予熱路において設定される前記混合ガスのガス予熱温度Tgは、触媒温度TC程度又はそれに近い温度に設定することが好ましく、前記混合ガスが前記触媒に到達すると同時に、より好適な条件で長尺ブラシ状CNTの合成が開始される。従って、長尺ブラシ状CNTの成長速度や生成効率を向上させることができ、長尺ブラシ状CNTを容易に製造することができる。
【0036】
更に、前記予熱路の終端と前記触媒の距離Lが100cm以下に設定されるから、ガス予熱温度Tg(℃)に設定された前記混合ガスは、ほぼそのままの温度で前記触媒まで到達することができ、前記距離Lは50cm以下であることがより好ましい。上述のように、ガス予熱温度Tgは、触媒温度TC程度又はそれに近い温度に設定されることが好ましく、より具体的には、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整される場合、より長尺のブラシ状CNTが製造できることが実験的に明らかにされている。
【0037】
赤外線加熱手段としては、イメージ炉が好ましい。イメージ炉は、凹面鏡を使用して赤外線を狭い範囲に集中させる赤外線炉であり、高温及び毎秒80℃の高昇温率が得られる。前記ガス予熱手段としては、電熱、赤外線加熱や金属製容器を用いた誘導加熱を利用することができる。反応室とは別に、予熱路として予熱装置が設置された予熱室を配設して予熱を行う場合、混合ガスを前記ガス予熱温度Tgまでほぼ一様に加熱することができ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離Lが100cm以下に設定されるから、前記温度範囲に設定された混合ガスを供給し、高効率により均一な長尺ブラシ状CNTを製造することができる。また、前記反応室と前記予熱室との接続部に開閉機構を設ければ、触媒基板の交換時に混合ガスの供給を停止することができる。従って、熱量の損失を低減化することができる。また、混合ガス配給管を前記予熱路とする場合、混合ガス配給管に前記電熱機構又は前記誘導加熱機構を設けることができる。更に、反応室内に予熱装置を設置して予熱路を設けても良く、供給される混合ガスの予熱を行うこともでき、この方法によれば製造装置の構造を簡略化することができる。
【0038】
本発明の第5の形態によれば、前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線手段であるから、従来の加熱装置を利用して、比較的安価で信頼性の高い長尺ブラシ状CNT製造装置を提供することができる。即ち、電熱加熱は既に確立された技術であり、予熱路を管状炉とすることによりガスを比較的迅速に予熱することができる。ガス予熱手段として赤外線加熱を用いる場合、触媒の加熱手段と同じであるため、制御装置及び加熱電源を単一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に示す実施例では、高速加熱を実施する為に、触媒加熱が赤外線加熱炉を用いて行われている。これにより、毎秒80℃の昇温速度が得られた。また、実施例においては、原料ガス、キャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスが触媒に達する以前に予熱されている。触媒として、鉄を基板上に蒸着して昇温工程において水と反応させ、鉄酸化物、中でも主としてマグネタイトの微粒子を形成した。所定の時間に到達した後、混合ガスの供給が行われる。長尺ブラシ状CNT生成時において、原料ガスである炭化水素CaHb(エチレンはa=2、b=4)は次の反応に従う。
CaHb → Ca(非結晶性) + (b/2)H2 (1)
Ca(非結晶性) → Ca(ナノチューブ) (2)
式(1)における反応は触媒との接触による原料ガスの熱分解であり、式(2)における反応は、カーボンのCNTへの結晶化である。式(1)と式(2)を比べると、長尺CNTの成長過程では、前記第2段階の成長において原則的に(2)が遅くなるため、結果的にアモルファスカーボンの供給過剰となり、アモルファスカーボンに覆われた触媒は不活性となるため反応停止に到る。即ち、アモルファスカーボンが触媒上に堆積して触媒を不活性化させていることが判明している。前記還元性ガスとして水素ガスを添加すると、ルシャトリエの原理により、式(1)に示した分解反応の平衡は、分解が進むのを抑制する方向に働く。従って、アモルファスカーボンの供給過剰を抑制することができる。但し、前記水素ガスを添加し過ぎると、CNTが生成されなくなる。
【0040】
加えて、触媒上に堆積するアモルファスカーボン量を抑制するために、酸化性ガスによりアモルファスカーボンを酸化消失させる必要がある。式(3)及び(4)に示されるように、カーボンに酸素原子を付加して一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスとして反応場から排気することができる。
Ca(非結晶性) + aH2O → aCO + aH2 (3)
Ca(非結晶性) + (2・a)H2O →
aCO2 + (2・a)H2 (4)
本願においては、酸化性ガスとして水を添加しているため、反応式(4)に従って、還元性ガスとして作用する水素ガスが生成される。この水素ガスは還元性ガスとして機能する。従って、混合ガスは、還元性ガスと酸化性ガスの添加量を好適なバランスに調整することが重要である。酸化性ガスとしては、前記原料ガス、前記還元性ガス及び生成された長尺ブラシ状CNTとは反応せず、アモルファスカーボンのみと反応するガスを選択することが好ましい。
【0041】
[実施例1]
図1は、長尺ブラシ状CNT製造装置2(以下、単に「反応装置」とも称す)の構成概略図である。長尺ブラシ状CNT製造装置2は、反応室4と予熱路12を有し、反応室4には触媒体6の触媒を加熱する赤外線加熱手段10が設置され、この赤外線加熱手段10により前記触媒が触媒温度TCまで加熱される。尚、触媒温度TCは、熱電対付Siウェハからなる温度センサ8により測定され、温度センサ8が接続された温度コントローラ18により、赤外線強度を調整して温度制御がなされる。前記赤外線加熱手段10としては、イメージ炉(アルバック理工RHL−P610CN)を使用した。尚、触媒体6の構造については後述する。
【0042】
前記赤外線加熱手段10の上流には、ガス予熱部14には、ガス予熱手段16を装備した予熱路12があり、図1の製造装置では、このガス予熱手段16として抵抗加熱方式による電熱手段が使用されている。この電熱手段であるガス予熱手段16は、管状炉となっていて、混合ガス3が予熱路12の終端13に到達したときの温度をガス予熱温度Tgとしている。図示していないが、前記終端13の近傍に設けられた温度センサと赤外線加熱手段10に接続された温度コントローラによって、ガス予熱温度Tgが調節される。前記予熱路12の終端12aと触媒体6を構成する触媒膜との距離Lは、約50cmに設定されてり、この距離Lが100cmを越えると、前記混合ガス3が触媒付基板6に到達するまでに前記混合ガスの温度が比較的大きく下がり、後述する所望の温度範囲からずれることがあった。尚、反応室を通過した混合ガス3は、排気ガス5として排気される。
【0043】
図2は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法と従来の製造時の触媒基板温度のタイムチャート図である。縦軸は、触媒基板の温度、横軸は時間を示している。(2A)は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法のタイムチャート図であり、触媒体の昇温工程P1における昇温速度を赤外線加熱により80℃/secに設定される。反応温度を850℃に設定し、触媒温度TCを850℃まで加熱するためには、昇温時間が約10.6secとなる。原料ガスを含有する混合ガスは、ガス予熱温度TgがTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように前記予熱室で予熱されているため、混合ガスが供給されると反応工程P2で好適なCNTの成長が行われる。従って、長尺ブラシ状CNTを製造する1サイクルの時間TRが大幅に短縮される。尚、混合ガスは、触媒に到達したときに、前記予熱路の終端でTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲にあれば良く、反応工程P2の開始時点に前記予熱路から触媒に混合ガスが供給される。また、以下に示す実施例では、触媒温度TCが850℃に設定されているが、触媒温度TCが750℃以上であれば、混合ガスを予熱して前記温度範囲に設定することにより、長尺ブラシ状CNTを製造できることが確認されている。
【0044】
比較例として示した(2B)は、抵抗加熱による電熱装置を用いた従来のタイムチャートである。従来の抵抗加熱による製造方法では、昇温速度が30℃/min程度であるため、昇温時間は26分以上となり、仮に混合ガスを予熱していても、1サイクルの時間TRが長く、効率的な長尺ブラシ状CNTの製造を行うことが困難であった。前述のように、(2A)に示す長尺ブラシ状CNT製造方法では、冷却工程P3の後、触媒体を交換し、繰り返し長尺ブラシ状CNTの製造を行い、大量の長尺ブラシ状CNTを短時間に製造することが可能である。また、成長工程P2の時間を長く設定すれば、最終成長高さが1mm以上の長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。
【0045】
図3は、本発明に係る触媒体の一例を示す構成概略図である。触媒体6は、触媒膜21、反応防止層22及び基板23から構成される。基板23は、珪素基板に酸化膜が形成され、SiO2/Siで表される14×17cmの長方形シリコン基板を用い、基板23上に反応防止層22としてAl2O3(厚さ:約10nm)が蒸着され、さらに触媒膜21として鉄膜(厚さ:約1nm)を蒸着した。実施例では、この触媒体6を図1の前記反応室4に設置し、予熱された混合ガスを供給し、長尺CNTの成長を行った。尚、混合ガスの構成は次の通りである。エチレン90sccm、水素ガス240sccm、ヘリウム630sccm、水蒸気300ppm。赤外線加熱は850℃で行い、ガス予熱も850℃で行った。反応時間は10分であった。図4は、成長した長尺ブラシ状CNTを横から見た光学写真である。長尺ブラシ状CNTの最終成長高さは2.4mmであり、平均0.24mm/minの成長速度が得られることが分かる。
【0046】
図5は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの予熱温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。ガス予熱温度を変化させて、長尺ブラシ状CNTの合成を行った。ガス予熱温度は、750℃、815℃、850℃及び880℃であり、このときの触媒温度TCは850℃である。これらの条件では、予熱温度Tgが850℃の場合に最終成長高さが最大となっている。最終成長高さの予熱温度依存性は、明らかに850℃のときに極大となる凸状関数の傾向を示している。即ち、800℃付近から急激に立ち上がり、約850℃付近で極大となり、予熱温度が850℃を越えると急激に最終成長高さが減少している。この依存性は、半値半幅が50℃程度のピーク構造であることが測定値から予測される。従って、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるとき、最終成長高さが急激に増大している。製品として利用可能な長さの長尺ブラシ状CNTを製造するためには、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるように調整されることが必要であることが判明している。尚、図示していないが、触媒温度TCが750℃の場合においても、同様の実験を行っており、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるとき、長尺ブラシ状CNTが成長することが確認されている。
【0047】
次に、水分濃度を変化させ、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。具体的には、水分濃度が0、100、300、500、700ppmのときの最終成長高さの測定を行った。図6は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状CNTの最終成長高さと水分濃度の関係を示すグラフである。300ppm以上の水蒸気を添加すれば、2mmの長尺CNTが生成されることが分かる。水分濃度が100ppmの場合、最終成長高さは0.8mmであった。また、水分濃度が0ppmにおいて、CNTは全く成長しなかった。水蒸気は、触媒を不活性化するアモルファスカーボンを分解する。分解は300ppmで飽和状態に達する。また、比較的高い水分濃度である700ppmでも成長の低下は起こらなかった。これは、水はCNTの分解ならびに、長尺ブラシ状CNTの生成を阻害しないことを示している。
【0048】
触媒となる基板上の鉄膜の厚さを変化させて、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。触媒膜は、触媒体の加熱により触媒微粒子を形成し、この触媒微粒子を核としてCNTが成長する。各触媒体に形成された鉄膜の厚さは、0.5nm、1.0nm、1.5nm、2.0nmであった。図7は、鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状CNTを横から見た光学写真像である。これらの試料では、鉄膜の厚みが1.0nmの場合、最終成長高さが最大となっている。従って、触媒膜の厚さは、0.5nm〜1.5nmの範囲にあることが好ましい。図8の走査型電子顕微鏡(SEM)像では、(8A)に示した鉄膜の厚さが0.5nmのときのSEM像から、1044μmの長尺CNTが成長し、(8B)に示した鉄膜の厚さが0.5nmのときのSEM像から、1500μmの長尺CNTが成長していることが分かる。
【0049】
図9には、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTのラマン散乱スペクトルである。長尺CNTの直径に依存した特徴的な振動モードが観測されており、ラマン散乱スペクトルの測定結果からCNTの直径が0.7〜0.8nmであることが確認された。一般的にCNTの直径は、前記鉄膜が加熱されて形成される酸化鉄微粒子の直径と同程度であることが知られている。従って、鉄膜の厚みが1.0nmの場合に、CNTの直径に対応する粒径0.7〜0.8nm程度の酸化鉄微粒子が発生しやすいことが判明している。鉄膜の厚みが0.5nm、1.5nm、2.0nmの場合においても、長尺ブラシ状CNTは成長している。即ち、鉄膜の厚みが0.5〜2.0nmの場合、一般的に鉄膜の厚みが厚くなれば内径の大きなCNTが成長することが判明している。
【0050】
[比較例1]
比較例として、実施例1の触媒体を使用して、混合ガスを予熱せずに、前記触媒の赤外線加熱のみでブラシ状CNTの成長を行った。混合ガスの構成は次の通り設定した。エチレン15sccm、水素ガス80sccm、ヘリウム105sccm、水蒸気350ppm。反応温度は790、815及び865℃であり、成長時間は30分であった。図10は、比較例であり、混合ガスを予熱しない場合における反応温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。最終成長高さは0.11mm(790℃)、0.25mm(815℃)及び0.30mm(865℃)となっており、長尺ブラシ状CNTを製造することができなかった。比較例の結果は、混合ガスを予熱せずに触媒加熱を赤外線で行う場合、長尺ブラシ状CNTを製造することが困難であることを示している。
【0051】
[実施例2]
混合ガス及び触媒付基板の構成を実施例1と同様にして、予熱を赤外線加熱により実施して、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。反応温度は30分、反応温度は815℃であった。
図11は、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。尚、図1と共通の部材については、同一の符号を付与しており、共通部材に関する詳細な説明は省略する。図11では、無触媒の基板17a〜17dを混合ガス上流に設置して、前記基板17a〜17dを赤外線で加熱することにより混合ガスを加熱する。赤外線加熱手段10により混合ガスを予熱する場合、触媒体6の加熱用に設置された1つの赤外線加熱装置で予熱を行うことが可能である。また、予熱室12用と反応室4用の赤外線加熱装置を個別に設置する場合においても、1つの温度コントローラ18で加熱温度を制御することができる。図12には、比較例として、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置を用いて製造されたブラシ状CNT(12A)と予熱をせずに成長させたブラシ状CNT(12B)のSEM像を示す。(12A)において、CNTの成長高さは0.47mmであるが、反応温度が750℃未満に設定されていることによるものである。しかしながら、予熱を行っていない(12B)に比べてCNTの成長高さが大きくなっている。これは、赤外線加熱手段10により混合ガスを予熱する場合においても、CNTの成長を改善する効果があることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る長尺ブラシ状CNTの製造方法及び製造装置によれば、赤外線加熱により触媒の高速昇温が可能になると共に、原料ガスを含有する混合ガスを反応温度に対し適切温度に予熱することにより、長尺ブラシ状CNTをCCVD法により高効率に製造することができる。従って、長尺ブラシ状CNTを大量に生産することができ、カーボン繊維材料、電子材料などに好適な長尺CNTを安定供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る実施例1の長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。
【図2】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法と従来の方法のチャート図である。
【図3】本発明に係る触媒体の一例を示す構成概略図である。
【図4】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察した光学写真像である。
【図5】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの予熱温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの水蒸気濃度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察した光学写真像である。
【図8】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察したSEM像である。
【図9】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTのラマン散乱スペクトルである。
【図10】比較例1の製造方法において、混合ガスの予熱を行わない場合の反応温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係る製造方法において、予熱を赤外線加熱により行う実施例2の長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。
【図12】比較例として示した、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置を用いて製造されたブラシ状CNTと予熱をせずに成長させたブラシ状CNTのSEM像である。
【図13】非特許文献1に記載されるブラシ状CNTの平均高さと原料ガス供給時間の相関図である。
【符号の説明】
【0054】
2 長尺ブラシ状CNT製造装置
3 混合ガス
4 反応室
5 排気ガス
6 触媒体
8 温度センサ
10 赤外線加熱手段
12 予熱路
13 終端
14 ガス予熱部
16 ガス予熱手段
17a〜17d 基板
18 温度コントローラ
21 触媒膜
22 反応防止層
23 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称す)の長さが長い、いわゆる長尺なブラシ状のCNT(「長尺ブラシ状CNT」と称す)を製造する方法及び同製造装置に関し、更に詳細には、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガスを反応室に供給し、前記原料ガスと前記反応室に配置された触媒を加熱して長尺ブラシ状CNTを成長させる際に、高スループットを達成できる製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺ブラシ状CNTを製造する方法として、触媒を利用して炭化水素などの原料ガスを分解し、触媒表面にCNTを成長させる触媒化学的気相成長法(CCVD法、Catalyst Chemical Vapor Deposition)がある。国際公開第WO2008/007750号(特許文献1)、末金 皇, 長坂岳志, 野坂俊紀, 中山喜萬 著, 応用物理13,第73巻,(2004), 第5号(非特許文献1)及びKenji Hata, Don N. Futaba, Kohei Mizuno, Tatsunori Namai, Motoo Yumura, Sumio Iijima著「Water-assisted highly efficient synthesis of impurity-free single-walled carbon nanotubes」Science, 2004, VOL306, pp1362-4(非特許文献2)には、前記CCVD法により触媒基板表面に長尺ブラシ状CNTを成長させる方法が記載されている。非特許文献1には、原料ガスのエチレンとキャリアガスのヘリウムに還元性ガスとして水素ガスを、酸化性ガスとして水を添加した混合ガスを反応室に供給しながら、反応室に設置された触媒を抵抗加熱方式による伝導電熱で加熱して長尺ブラシ状CNTを製造する方法が記述されている。
【0003】
一般的なブラシ状CNTの成長過程は、初期の急速な成長による第1成長段階と、比較的緩やかに連続的に成長する第2成長段階があることが知られている。CNTの成長メカニズムは、様々な研究機関によって鋭意研究がおこなわれており、近い将来完全に解明されつつある状況にある。
【0004】
本願における「長尺ブラシ状CNT」とは、CNTが基板上に一定方向に林立したものであって、基板上に一定方向に成長したCNTの長さの平均値が1mm以上の長さを有するものをいう。CNTの成長過程において、初期の急速な成長段階が終了した後、CNTの長さは300μmを超え、比較的緩やかな成長段階に移行する。このような成長速度が減速した段階でCNTをさらに成長させることにより、長尺CNTが得られる。尚、触媒体表面上に成長したCNTは略均一の長さとなって先端の包絡面が基板に対し平行な平面を形成するため、基板から上記包絡面との間隔をCNT高さとも称している。厳密には配向している長尺ブラシ状CNTが縮れている場合、基板に対し斜めに倒れている場合には長さと高さが異なる場合もあるが、基板に垂直に略同長さに長尺ブラシ状CNTが成長しておれば、CNTの平均長さとCNT高さは同じである。
【0005】
長尺ブラシ状CNTは、基板上に成膜された金属触媒、本願では鉄触媒を用いて製造される。基板上に成膜された触媒金属は、昇温工程においてナノサイズの微粒子を形成する。触媒上の触媒微粒子に対して750℃以上の高温雰囲気において原料ガスを接触させることにより、CNTの成長が開始される。最適な条件においては、成長モードは第1成長段階を経て300μmを超えて第2段階に移行し、いわゆる長尺ブラシ状CNTが形成される。
【0006】
図13に示すように、非特許文献1では、長尺に限らず一般的なブラシ状CNTの成長において、ブラシ状CNTが初期に急速に成長する第1段階、比較的緩やかに連続的に成長する第2段階があることが記載されている。図13は、非特許文献1に記載されるブラシ状CNTの平均高さと原料ガス供給時間の相関図である。原料ガスとしてC2H2ガスが用いられ、タイプ1〜3では、キャリアガスに対するC2H2濃度の時間変化が異なり、成長したブラシ状CNTの平均高さに違いがあるが、C2H2ガスの供給時間に対する平均高さの変化は、略同じような傾向を示している。即ち、図13では、C2H2の供給時間が経過して、第1段階におけるブラシ状CNTの急速な成長が鈍化すると成長が緩やかな第2段階に移行し、第2段階ではブラシ状CNTの成長速度が遅くなる現象が見られる。図13から明らかなように、特許文献1に記載されるブラシ状CNTの製造方法によって1mm以上の長尺ブラシ状CNTを製造する場合、非常に長い成長時間が必要となる、さらに製造途中で成長が停止するという問題があった。非特許文献1には、その要因として、触媒表面に過剰に生成された原料ガス由来の炭素が堆積し、原料ガスと触媒表面との接触を妨げる現象が起こることが記述されている。即ち、非特許文献1に記述されている一般的なブラシ状CNTの製造方法では、第2段階が触媒表面の炭素の拡散律速となり、遂にはカーボンナノ構造の成長が止まるという問題点があった。
【0007】
非特許文献2では、上記第2段階において、触媒表面に炭素が堆積することを抑制するために、水などの酸化性成分をCVD時に原料ガスに添加して、第2段階の成長時に、原料ガス由来の余分なアモルファスカーボンが触媒表面に堆積することを防止している。この方法により、長尺ブラシ状CNTにおける高効率な成長速度(2.4mm/10分)が達成されている。しかしながら、水などの酸化性成分を添加することにより原料由来の余分な炭素を酸化消失させることは、必要な原料炭素分を消失させる可能性があり問題があった。また、酸化性成分を原料ガスと同時に添加した場合、基板上に成長したCNTの密度が低下するという問題があった。
【0008】
特許文献1では、酸化性ガスによる原料炭素の消失を目指すだけでなく、原料ガスの過度な分解を抑制するために還元性ガスを添加し、触媒量及び酸化性ガスと還元性ガスの量比を最適化することで効率の良い長尺ブラシ状CNTの製造を行うことが提案されている。
還元性ガスにより原料ガスの分解反応が抑制されることから、炭素が過剰に供給されることを抑制することができ、触媒活性が長時間に亘って保持される。例えば、炭化水素からなる原料ガスは、還元性ガスとして水素ガスが添加されることにより炭化水素の分解を直接的に抑制する働きがあることが示されている。即ち、長尺CNTを成長させるためには、添加した酸化性ガスと還元性ガスのガス量比をコントロールして、それぞれの働きを適度に調整することで触媒活性が途中で失活することを防止する必要があった。しかしながら、特許文献1においては、非特許文献1の製造方法にくらべて長尺ブラシ状CNTの成長速度がやや不足するという問題があった。
【0009】
特許文献2には、CVD法によりCNTをより高効率に製造する方法が提案されている。特許文献2に記載されるCNTの作製方法では、反応室に原料ガスを導入しながら触媒基板を急速加熱する手段として赤外線イメージ炉を用いることが提案されている。しかし、触媒基板のみを赤外イメージ炉によって急速加熱する製造方法および製造装置においては、現に触媒のみを加熱することができるが、反応ガスの温度が上がらず長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。
【0010】
特許文献3には、電熱により触媒基板を加熱し、金属触媒に原料ガス接触する前段階に原料ガスを予熱するCCVD法が提案されている。しかしながら、抵抗加熱方式で触媒基板を加熱し、550℃以下の低温で成長させるため、本願の目的である長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。特許文献3は基板上のCNTを電解放出型ディスプレイ用電極に用いるものであり、ガラス基板の軟化点500℃以下でのCNTの成長が必要であることから原料ガスの予熱が必要であり、本願目的と根本的に異なる。
【0011】
長尺ブラシ状CNTは、触媒基板からCNTを剥離することで、長さの比較的均一なCNTが得られ、カーボン繊維などに利用することが可能である。CNTの長さが1mm以上に成長した長尺ブラシ状CNTを効率よく製造し、基板からCNTのみを剥離することで、簡単に長尺のCNTから構成されるカーボン繊維を得ることができる。長尺CNTから構成されるカーボン繊維は、機械的特性が優れ、糸、織物、ロープ及び炭素繊維強化プラスチック等の用途に適している。さらに長尺ブラシ状CNTは、CNTの長さが1mm以上であるから、人が気管や肺に吸い込んでも人体に害を及ぼす危険性が少なく、物差し等を用いて肉眼によりおよその長さを確認することができるから、生産時、使用時において比較的取扱いが簡単である。従って、長尺ブラシ状CNTを高効率・高スループットで製造可能な製造方法および製造装置の開発が要望されていた。
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2008/007750号
【特許文献2】特開2006−062882号公報
【特許文献3】特開2005−279624号公報
【非特許文献1】末金 皇, 長坂岳志, 野坂俊紀, 中山喜萬, 応用物理13,第73巻,(2004), 第5号
【非特許文献2】Kenji Hata, Don N. Futaba, Kohei Mizuno, Tatsunori Namai, Motoo Yumura, Sumio Iijima著「Water-assisted highly efficient synthesis of impurity-free single-walled carbon nanotubes」Science, 2004, VOL306, 1362-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のことから、従来のCCVD法では、次のような課題があった。即ち、非特許文献1に記述されている一般的なブラシ状CNTの製造方法では、第2段階が触媒表面の炭素の拡散律速となり、遂にはカーボンナノ構造の成長が止まるという問題点があった。非特許文献2では、水などの酸化性成分を添加することにより原料由来の余分な炭素を酸化消失させることは、必要な原料炭素分を消失させる可能性があり問題があった。また、酸化性成分を原料ガスと同時に添加した場合、基板上に成長したCNTの密度が低減化するという問題があった。また、特許文献1に記載される酸化性ガスと還元性ガスを原料ガスに添加する長尺ブラシ状CNTの製造方法では、非特許文献1の製造方法にくらべて長尺ブラシ状CNTの成長速度が十分でないという問題があった。
【0014】
更に、特許文献2に記載されるCNTの製造方法では、反応室に原料ガスを導入しながら触媒基板を急速加熱する手段として赤外線イメージ炉を用いているが、触媒基板のみを赤外イメージ炉によって急速加熱する製造方法および製造装置においては、現に触媒のみを加熱することができるが、反応ガスの温度が上がらず長尺ブラシ状CNTの成長速度が高まらない問題があった。特許文献3は、基板上のCNTを電解放出型ディスプレイ用電極に用いるものであり、ガラス基板の軟化点500℃以下でCNTを成長させるため、原料ガスの予熱を行うものであり、本願目的と根本的に異なる。即ち、550℃以下の低温で成長させるため、長尺ブラシ状CNTを製造することは不可能であった。
【0015】
更に、長尺ブラシ状CNTをバッチ処理で製造する場合、反応室内に新たな触媒基板が逐次導入されるため、毎回、触媒基板を反応温度まで短時間で加熱する必要がある。しかしながら、抵抗加熱方式による伝導電熱によりガス加熱を行って、触媒基板を加熱するCCVD法においては、原料ガスを予熱しても触媒基板が反応温度に達するまでの時間が長く、触媒基板を大量にCVD処理を行うには複数の反応室が必要となる問題があった。
【0016】
また、長尺ブラシ状CNTを成長させるためには反応温度を750℃以上に設定することが好ましいが、従来の長尺ブラシ状CNT製造方法を行った場合、昇温速度が遅く、高スループットを実現できない問題があった。CNTの長さが300μmを越えると成長速度が急激に低下するために成長時間が大幅に増加することから、特に、CNTの長さが1mm以上の長尺CNTを製造する場合の長尺ブラシ状CNTを安定に成長させることができる製造方法及び装置の開発が求められていた。
【0017】
更に、基板上に長尺ブラシ状CNTを製造する場合、触媒金属を塗布した基板を750℃以上の高温に加熱し、長尺ブラシ状CNTが成長するために必要な触媒微粒子を基板上の触媒膜から形成させる必要がある。その際、触媒基板の温度が常温又は比較的低温の状態で反応室に導入すると触媒表面が急速に加熱されることにより、長尺ブラシ状CNTの成長に適したサイズや形状を有する触媒微粒子が形成され難く、均一な形状の長尺ブラシ状CNTを製造することが困難である問題があった。あわせて、常温ならびに比較的低温の触媒基板を750℃程度の高温の反応室にいきなり導入すると、基板材質が急激な熱応力により変形するなどの問題があった。
【0018】
特許文献1に記載されるような赤外線加熱装置を用いた場合、触媒基板を常温の状態から750℃程度の高温まで、比較的一様に高速昇温することが可能である。しかしながら、原料ガスの赤外線吸収率は低く赤外線により原料ガスを反応温度まで直接的に加熱することが困難であることから、バッチ処理における長尺ブラシ状CNTの製造時間すなわちスループットを短縮することはできなかった。結果として、赤外線加熱により触媒基板が反応温度に到達していた場合においても、原料ガスが触媒に接触する時点で長尺ブラシ状CNTの成長に適した温度に達していない場合、赤外線加熱装置を用いても長尺ブラシ状CNTを短時間に繰り返し製造することは困難であるという結論に至った。
【0019】
本発明は、長尺ブラシ状CNTの製造時間を短縮すると共に、繰り返し急速に長尺ブラシ状CNTの作製に適した高温にてCVDができるように、触媒基板の高速昇温を実現し、結果として、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる長尺ブラシ状CNTの製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
換言すれば、長尺ブラシ状CNTをバッチ処理である熱CVDにより製造する際に、1回の工程にかかる時間を短縮し、単位時間あたりの製品を処理する量、すなわちスループットを増大させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、長尺ブラシ状CNTを製造する方法において、前記原料ガスがアセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記キャリアガスがヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記酸化性ガスが水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記還元性ガスが水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上である長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0021】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記触媒温度TCが750℃〜900℃の範囲に設定される長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0022】
本発明の第3の形態は、第1又は2の形態において、前記原料ガスがエチレンである長尺ブラシ状CNTの製造方法である。
【0023】
本発明の第4の形態は、長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、酸化性ガス、還元性ガス及びキャリアガスの混合ガスを反応室に供給する混合ガス供給手段と前記反応室に配置された触媒を加熱する加熱手段を有する長尺ブラシ状CNTの製造装置において、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離が100cm以下に設定される長尺ブラシ状CNTの製造装置である。
【0024】
本発明の第5の形態は、第4の形態において、前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線加熱手段である長尺ブラシ状CNTの製造装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の形態によれば、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に、前記混合ガスをガス予熱温度Tg(℃)に加熱するから、高速の昇温速度を実現することができると共に、均一な長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。即ち、混合ガスを予熱し、触媒を赤外線加熱することにより、昇温待ち時間が短縮して、長尺ブラシ状CNTの製造効率を向上させることができる。更に、前記ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整されるから、混合ガスが触媒に到達するとCNTの成長が開始されると共に、長尺ブラシ状CNTを安定に成長させることができ、且つ、高効率に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCよりも50℃以上低い場合、混合ガスが触媒を冷やすことになり、混合ガスが触媒と接触した場合、混合ガスに含まれる原料ガスを好適に炭素分解する条件から外れるため、十分な炭素が触媒に供給されず、CNTの成長速度が低下する。ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCよりも50℃以上高い場合、前記原料ガスが触媒に接触したとき、過剰に炭素ラジカルが供給され、非結晶性カーボン(アモルファスカーボン)が触媒上に堆積することで触媒活性が低下することが考えられる。
【0026】
この温度範囲は、ガス予熱温度Tg、触媒温度TC及びCNTの成長の関係について、本発明者らが行った実験の結果に基づいて得られた値であり、その詳細については後述する。実験では、前記ガス予熱温度Tgが前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲にあるとき、CNTの成長が行われることが確認されている。従って、赤外線加熱と予備加熱により長尺ブラシ状CNTの製造時間を短縮すると共に、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。換言すれば、均一な長尺ブラシ状CNTを製造する1回の工程にかかる時間を短縮し、単位時間あたりの製品を処理する量、すなわちスループットを増大させることができる。本発明によれば、繰り返し触媒基板を急速に750℃以上の高温に加熱する高速昇温を実現することができる。
【0027】
ガスの予熱装置には、電熱、赤外線加熱や金属製容器を用いた誘導加熱を利用することができる。反応室とは別に、予熱路として予熱装置が設置された予熱室を配設して予備加熱(以下、単に「予熱」と称する)を行う場合、混合ガスを前記ガス予熱温度Tgまでほぼ一様に加熱することができる。更に、前記反応室と前記予熱室との接続部に開閉機構を設ければ、触媒基板の交換時に混合ガスの供給を停止することができる。従って、熱量の損失を低減化することができる。また、混合ガス配給管を前記予熱路とする場合、混合ガス供給配管に前記電熱機構又は前記誘導加熱機構を設けることができる。更に、反応室内に予熱装置を設置して供給される混合ガスの予熱を行うこともでき、この方法によれば製造装置の構造を簡単化することができる。
【0028】
アセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガである原料ガスは、長尺ブラシ状CNTの構成物質となる炭素原子を供給する働きがある。原料ガスは、触媒との接触により熱分解されることで炭素が簡単に排出される。炭素を排出する際に、熱分解時に水素ガスが生成される、還元性ガスが分解を抑制する働きをする。これらの原料ガスは、安価であり、長尺ブラシ状CNTの製造コストを低減することができる。
【0029】
ヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであるキャリアガスは不活性であり、長尺ブラシ状CNTの生成を阻害しない。これらのガスの内、特にヘリウムが高熱伝導性を有するため、ガス予熱に適しており最も好ましい。
【0030】
更に、本発明の第1の形態によれば、原料ガスを含む混合ガス中に還元性ガスと酸化性ガスが共存しているので長時間活性が持続させることができる。酸化性ガスは、水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである。これらの酸化性ガスは、酸素原子を供給するので、触媒上に堆積したアモルファスカーボンと反応し、堆積物を一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスとして酸化排出・除去することができる。特に、水は安価でかつ750℃以上でアモルファスカーボンを選択的に酸化し、長尺ブラシ状CNTや原料ガス及び還元性ガスと反応しないため安全であり最も好ましい。還元性ガスは、水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスである。この還元性ガスから水素ガスが生成され、この水素ガスにより原料ガスの熱分解反応において原料ガスの分解を抑制して、カーボンの過剰な生成を抑制することができる。特に、水素ガスを還元性ガスとして用いた場合、原料ガスの分解を直接抑制する方向に作用するため、効率的であり最も好ましい。
【0031】
更に、本発明の第1の形態によれば、長尺ブラシ状CNTの最終成長高さが1mm以上であるから、糸、織物、ロープ及び維強化プラスチック等のカーボン繊維材料として好適なCNTを高効率に製造することができる。尚、最終成長高さとは、反応時間の終了時における長尺ブラシ状CNTの平均長さを意味している。前述のように、本発明によれば、比較的短時間に長尺ブラシ状CNTを成長させることができることから、最終成長高さが1mm以上になる長尺ブラシ状CNTをバッチ処理により効率よく製造することができ、好適なカーボン繊維材料として用いることができる。
【0032】
本発明の第2の形態によれば、反応温度が750℃〜900℃の範囲に設定されるから、赤外線加熱による触媒基板の高速昇温により、短時間に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。更に、長尺ブラシ状CNTを成長させる場合においても繰り返し短時間で結晶度の高い長尺ブラシ状CNTを製造することができる。
本発明者らの鋭意研究の結果、赤外線加熱の場合は電熱加熱に比べて高温で反応を起こすことができることを明らかにした。電熱加熱の場合815℃以上になると急激に長尺ブラシ状CNTの成長速度が低下し、860℃になると長尺ブラシ状CNTの成長がほぼ停止する。
【0033】
一方、赤外線加熱の場合、750℃以上でCNTの成長速度が増大し約800〜850℃においては750℃よりも反応性が高く成長速度が更に増大する。後述するように、少なくとも900℃程度までは成長速度が増大することが確認されており、750℃〜900℃の範囲に設定されることことによって効率的な成長が可能になる。特に、長尺ブラシ状CNTをより高効率に成長させるには、赤外線加熱を用いて反応温度を800℃〜900℃の範囲に設定すれば良く、より高効率に長尺ブラシ状CNTを製造することができる。
【0034】
本発明の第3の形態によれば、前記原料ガスとしてエチレンを原料とすることで副産物が発生し難く、原料ガスが高効率で長尺ブラシ状CNTとなり、原料利用効率の高い製造方法を提供することができる。原料ガスとしては、アセチレン、エチレン及びメタンが使用できるが、これらの中で、エチレンが一番効率がよい。アセチレンの反応性は高いが、アモルファスカーボンなどの副産物が発生し易く、エチレンよりも低温での反応温度が選択されるため、生成される長尺ブラシ状CNTに構造欠陥ができ易かった。一方、メタンは副産物の発生がほぼ無く、高品質の長尺ブラシ状CNTが得られるが、反応性が低く、反応温度がエチレンよりも高い問題がある。従って、前記原料ガスとしてエチレンを使用することにより、長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができ、原料ガスコストを低減化することができる。
【0035】
本発明の第4の形態によれば、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられるから、触媒を赤外線により長尺ブラシ状CNTの合成に適した触媒温度TCまで高速昇温できると共に、前記混合ガスを合成に適した前記触媒温度TC程度まで予備加熱することができる。即ち、予熱路において設定される前記混合ガスのガス予熱温度Tgは、触媒温度TC程度又はそれに近い温度に設定することが好ましく、前記混合ガスが前記触媒に到達すると同時に、より好適な条件で長尺ブラシ状CNTの合成が開始される。従って、長尺ブラシ状CNTの成長速度や生成効率を向上させることができ、長尺ブラシ状CNTを容易に製造することができる。
【0036】
更に、前記予熱路の終端と前記触媒の距離Lが100cm以下に設定されるから、ガス予熱温度Tg(℃)に設定された前記混合ガスは、ほぼそのままの温度で前記触媒まで到達することができ、前記距離Lは50cm以下であることがより好ましい。上述のように、ガス予熱温度Tgは、触媒温度TC程度又はそれに近い温度に設定されることが好ましく、より具体的には、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整される場合、より長尺のブラシ状CNTが製造できることが実験的に明らかにされている。
【0037】
赤外線加熱手段としては、イメージ炉が好ましい。イメージ炉は、凹面鏡を使用して赤外線を狭い範囲に集中させる赤外線炉であり、高温及び毎秒80℃の高昇温率が得られる。前記ガス予熱手段としては、電熱、赤外線加熱や金属製容器を用いた誘導加熱を利用することができる。反応室とは別に、予熱路として予熱装置が設置された予熱室を配設して予熱を行う場合、混合ガスを前記ガス予熱温度Tgまでほぼ一様に加熱することができ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離Lが100cm以下に設定されるから、前記温度範囲に設定された混合ガスを供給し、高効率により均一な長尺ブラシ状CNTを製造することができる。また、前記反応室と前記予熱室との接続部に開閉機構を設ければ、触媒基板の交換時に混合ガスの供給を停止することができる。従って、熱量の損失を低減化することができる。また、混合ガス配給管を前記予熱路とする場合、混合ガス配給管に前記電熱機構又は前記誘導加熱機構を設けることができる。更に、反応室内に予熱装置を設置して予熱路を設けても良く、供給される混合ガスの予熱を行うこともでき、この方法によれば製造装置の構造を簡略化することができる。
【0038】
本発明の第5の形態によれば、前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線手段であるから、従来の加熱装置を利用して、比較的安価で信頼性の高い長尺ブラシ状CNT製造装置を提供することができる。即ち、電熱加熱は既に確立された技術であり、予熱路を管状炉とすることによりガスを比較的迅速に予熱することができる。ガス予熱手段として赤外線加熱を用いる場合、触媒の加熱手段と同じであるため、制御装置及び加熱電源を単一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に示す実施例では、高速加熱を実施する為に、触媒加熱が赤外線加熱炉を用いて行われている。これにより、毎秒80℃の昇温速度が得られた。また、実施例においては、原料ガス、キャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスが触媒に達する以前に予熱されている。触媒として、鉄を基板上に蒸着して昇温工程において水と反応させ、鉄酸化物、中でも主としてマグネタイトの微粒子を形成した。所定の時間に到達した後、混合ガスの供給が行われる。長尺ブラシ状CNT生成時において、原料ガスである炭化水素CaHb(エチレンはa=2、b=4)は次の反応に従う。
CaHb → Ca(非結晶性) + (b/2)H2 (1)
Ca(非結晶性) → Ca(ナノチューブ) (2)
式(1)における反応は触媒との接触による原料ガスの熱分解であり、式(2)における反応は、カーボンのCNTへの結晶化である。式(1)と式(2)を比べると、長尺CNTの成長過程では、前記第2段階の成長において原則的に(2)が遅くなるため、結果的にアモルファスカーボンの供給過剰となり、アモルファスカーボンに覆われた触媒は不活性となるため反応停止に到る。即ち、アモルファスカーボンが触媒上に堆積して触媒を不活性化させていることが判明している。前記還元性ガスとして水素ガスを添加すると、ルシャトリエの原理により、式(1)に示した分解反応の平衡は、分解が進むのを抑制する方向に働く。従って、アモルファスカーボンの供給過剰を抑制することができる。但し、前記水素ガスを添加し過ぎると、CNTが生成されなくなる。
【0040】
加えて、触媒上に堆積するアモルファスカーボン量を抑制するために、酸化性ガスによりアモルファスカーボンを酸化消失させる必要がある。式(3)及び(4)に示されるように、カーボンに酸素原子を付加して一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスとして反応場から排気することができる。
Ca(非結晶性) + aH2O → aCO + aH2 (3)
Ca(非結晶性) + (2・a)H2O →
aCO2 + (2・a)H2 (4)
本願においては、酸化性ガスとして水を添加しているため、反応式(4)に従って、還元性ガスとして作用する水素ガスが生成される。この水素ガスは還元性ガスとして機能する。従って、混合ガスは、還元性ガスと酸化性ガスの添加量を好適なバランスに調整することが重要である。酸化性ガスとしては、前記原料ガス、前記還元性ガス及び生成された長尺ブラシ状CNTとは反応せず、アモルファスカーボンのみと反応するガスを選択することが好ましい。
【0041】
[実施例1]
図1は、長尺ブラシ状CNT製造装置2(以下、単に「反応装置」とも称す)の構成概略図である。長尺ブラシ状CNT製造装置2は、反応室4と予熱路12を有し、反応室4には触媒体6の触媒を加熱する赤外線加熱手段10が設置され、この赤外線加熱手段10により前記触媒が触媒温度TCまで加熱される。尚、触媒温度TCは、熱電対付Siウェハからなる温度センサ8により測定され、温度センサ8が接続された温度コントローラ18により、赤外線強度を調整して温度制御がなされる。前記赤外線加熱手段10としては、イメージ炉(アルバック理工RHL−P610CN)を使用した。尚、触媒体6の構造については後述する。
【0042】
前記赤外線加熱手段10の上流には、ガス予熱部14には、ガス予熱手段16を装備した予熱路12があり、図1の製造装置では、このガス予熱手段16として抵抗加熱方式による電熱手段が使用されている。この電熱手段であるガス予熱手段16は、管状炉となっていて、混合ガス3が予熱路12の終端13に到達したときの温度をガス予熱温度Tgとしている。図示していないが、前記終端13の近傍に設けられた温度センサと赤外線加熱手段10に接続された温度コントローラによって、ガス予熱温度Tgが調節される。前記予熱路12の終端12aと触媒体6を構成する触媒膜との距離Lは、約50cmに設定されてり、この距離Lが100cmを越えると、前記混合ガス3が触媒付基板6に到達するまでに前記混合ガスの温度が比較的大きく下がり、後述する所望の温度範囲からずれることがあった。尚、反応室を通過した混合ガス3は、排気ガス5として排気される。
【0043】
図2は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法と従来の製造時の触媒基板温度のタイムチャート図である。縦軸は、触媒基板の温度、横軸は時間を示している。(2A)は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法のタイムチャート図であり、触媒体の昇温工程P1における昇温速度を赤外線加熱により80℃/secに設定される。反応温度を850℃に設定し、触媒温度TCを850℃まで加熱するためには、昇温時間が約10.6secとなる。原料ガスを含有する混合ガスは、ガス予熱温度TgがTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように前記予熱室で予熱されているため、混合ガスが供給されると反応工程P2で好適なCNTの成長が行われる。従って、長尺ブラシ状CNTを製造する1サイクルの時間TRが大幅に短縮される。尚、混合ガスは、触媒に到達したときに、前記予熱路の終端でTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲にあれば良く、反応工程P2の開始時点に前記予熱路から触媒に混合ガスが供給される。また、以下に示す実施例では、触媒温度TCが850℃に設定されているが、触媒温度TCが750℃以上であれば、混合ガスを予熱して前記温度範囲に設定することにより、長尺ブラシ状CNTを製造できることが確認されている。
【0044】
比較例として示した(2B)は、抵抗加熱による電熱装置を用いた従来のタイムチャートである。従来の抵抗加熱による製造方法では、昇温速度が30℃/min程度であるため、昇温時間は26分以上となり、仮に混合ガスを予熱していても、1サイクルの時間TRが長く、効率的な長尺ブラシ状CNTの製造を行うことが困難であった。前述のように、(2A)に示す長尺ブラシ状CNT製造方法では、冷却工程P3の後、触媒体を交換し、繰り返し長尺ブラシ状CNTの製造を行い、大量の長尺ブラシ状CNTを短時間に製造することが可能である。また、成長工程P2の時間を長く設定すれば、最終成長高さが1mm以上の長尺ブラシ状CNTを高効率に製造することができる。
【0045】
図3は、本発明に係る触媒体の一例を示す構成概略図である。触媒体6は、触媒膜21、反応防止層22及び基板23から構成される。基板23は、珪素基板に酸化膜が形成され、SiO2/Siで表される14×17cmの長方形シリコン基板を用い、基板23上に反応防止層22としてAl2O3(厚さ:約10nm)が蒸着され、さらに触媒膜21として鉄膜(厚さ:約1nm)を蒸着した。実施例では、この触媒体6を図1の前記反応室4に設置し、予熱された混合ガスを供給し、長尺CNTの成長を行った。尚、混合ガスの構成は次の通りである。エチレン90sccm、水素ガス240sccm、ヘリウム630sccm、水蒸気300ppm。赤外線加熱は850℃で行い、ガス予熱も850℃で行った。反応時間は10分であった。図4は、成長した長尺ブラシ状CNTを横から見た光学写真である。長尺ブラシ状CNTの最終成長高さは2.4mmであり、平均0.24mm/minの成長速度が得られることが分かる。
【0046】
図5は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの予熱温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。ガス予熱温度を変化させて、長尺ブラシ状CNTの合成を行った。ガス予熱温度は、750℃、815℃、850℃及び880℃であり、このときの触媒温度TCは850℃である。これらの条件では、予熱温度Tgが850℃の場合に最終成長高さが最大となっている。最終成長高さの予熱温度依存性は、明らかに850℃のときに極大となる凸状関数の傾向を示している。即ち、800℃付近から急激に立ち上がり、約850℃付近で極大となり、予熱温度が850℃を越えると急激に最終成長高さが減少している。この依存性は、半値半幅が50℃程度のピーク構造であることが測定値から予測される。従って、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるとき、最終成長高さが急激に増大している。製品として利用可能な長さの長尺ブラシ状CNTを製造するためには、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるように調整されることが必要であることが判明している。尚、図示していないが、触媒温度TCが750℃の場合においても、同様の実験を行っており、前記ガス予熱温度Tgが触媒温度TCに対してTC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲内にあるとき、長尺ブラシ状CNTが成長することが確認されている。
【0047】
次に、水分濃度を変化させ、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。具体的には、水分濃度が0、100、300、500、700ppmのときの最終成長高さの測定を行った。図6は、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状CNTの最終成長高さと水分濃度の関係を示すグラフである。300ppm以上の水蒸気を添加すれば、2mmの長尺CNTが生成されることが分かる。水分濃度が100ppmの場合、最終成長高さは0.8mmであった。また、水分濃度が0ppmにおいて、CNTは全く成長しなかった。水蒸気は、触媒を不活性化するアモルファスカーボンを分解する。分解は300ppmで飽和状態に達する。また、比較的高い水分濃度である700ppmでも成長の低下は起こらなかった。これは、水はCNTの分解ならびに、長尺ブラシ状CNTの生成を阻害しないことを示している。
【0048】
触媒となる基板上の鉄膜の厚さを変化させて、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。触媒膜は、触媒体の加熱により触媒微粒子を形成し、この触媒微粒子を核としてCNTが成長する。各触媒体に形成された鉄膜の厚さは、0.5nm、1.0nm、1.5nm、2.0nmであった。図7は、鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状CNTを横から見た光学写真像である。これらの試料では、鉄膜の厚みが1.0nmの場合、最終成長高さが最大となっている。従って、触媒膜の厚さは、0.5nm〜1.5nmの範囲にあることが好ましい。図8の走査型電子顕微鏡(SEM)像では、(8A)に示した鉄膜の厚さが0.5nmのときのSEM像から、1044μmの長尺CNTが成長し、(8B)に示した鉄膜の厚さが0.5nmのときのSEM像から、1500μmの長尺CNTが成長していることが分かる。
【0049】
図9には、本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTのラマン散乱スペクトルである。長尺CNTの直径に依存した特徴的な振動モードが観測されており、ラマン散乱スペクトルの測定結果からCNTの直径が0.7〜0.8nmであることが確認された。一般的にCNTの直径は、前記鉄膜が加熱されて形成される酸化鉄微粒子の直径と同程度であることが知られている。従って、鉄膜の厚みが1.0nmの場合に、CNTの直径に対応する粒径0.7〜0.8nm程度の酸化鉄微粒子が発生しやすいことが判明している。鉄膜の厚みが0.5nm、1.5nm、2.0nmの場合においても、長尺ブラシ状CNTは成長している。即ち、鉄膜の厚みが0.5〜2.0nmの場合、一般的に鉄膜の厚みが厚くなれば内径の大きなCNTが成長することが判明している。
【0050】
[比較例1]
比較例として、実施例1の触媒体を使用して、混合ガスを予熱せずに、前記触媒の赤外線加熱のみでブラシ状CNTの成長を行った。混合ガスの構成は次の通り設定した。エチレン15sccm、水素ガス80sccm、ヘリウム105sccm、水蒸気350ppm。反応温度は790、815及び865℃であり、成長時間は30分であった。図10は、比較例であり、混合ガスを予熱しない場合における反応温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。最終成長高さは0.11mm(790℃)、0.25mm(815℃)及び0.30mm(865℃)となっており、長尺ブラシ状CNTを製造することができなかった。比較例の結果は、混合ガスを予熱せずに触媒加熱を赤外線で行う場合、長尺ブラシ状CNTを製造することが困難であることを示している。
【0051】
[実施例2]
混合ガス及び触媒付基板の構成を実施例1と同様にして、予熱を赤外線加熱により実施して、長尺ブラシ状CNTの成長を行った。反応温度は30分、反応温度は815℃であった。
図11は、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。尚、図1と共通の部材については、同一の符号を付与しており、共通部材に関する詳細な説明は省略する。図11では、無触媒の基板17a〜17dを混合ガス上流に設置して、前記基板17a〜17dを赤外線で加熱することにより混合ガスを加熱する。赤外線加熱手段10により混合ガスを予熱する場合、触媒体6の加熱用に設置された1つの赤外線加熱装置で予熱を行うことが可能である。また、予熱室12用と反応室4用の赤外線加熱装置を個別に設置する場合においても、1つの温度コントローラ18で加熱温度を制御することができる。図12には、比較例として、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置を用いて製造されたブラシ状CNT(12A)と予熱をせずに成長させたブラシ状CNT(12B)のSEM像を示す。(12A)において、CNTの成長高さは0.47mmであるが、反応温度が750℃未満に設定されていることによるものである。しかしながら、予熱を行っていない(12B)に比べてCNTの成長高さが大きくなっている。これは、赤外線加熱手段10により混合ガスを予熱する場合においても、CNTの成長を改善する効果があることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る長尺ブラシ状CNTの製造方法及び製造装置によれば、赤外線加熱により触媒の高速昇温が可能になると共に、原料ガスを含有する混合ガスを反応温度に対し適切温度に予熱することにより、長尺ブラシ状CNTをCCVD法により高効率に製造することができる。従って、長尺ブラシ状CNTを大量に生産することができ、カーボン繊維材料、電子材料などに好適な長尺CNTを安定供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る実施例1の長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。
【図2】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法と従来の方法のチャート図である。
【図3】本発明に係る触媒体の一例を示す構成概略図である。
【図4】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察した光学写真像である。
【図5】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの予熱温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTの水蒸気濃度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察した光学写真像である。
【図8】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により鉄膜の厚さが異なる触媒体を用いて成長させた長尺ブラシ状長尺CNTを側面側から観察したSEM像である。
【図9】本発明に係る長尺ブラシ状CNT製造方法により成長させた長尺ブラシ状長尺CNTのラマン散乱スペクトルである。
【図10】比較例1の製造方法において、混合ガスの予熱を行わない場合の反応温度と最終成長高さの関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係る製造方法において、予熱を赤外線加熱により行う実施例2の長尺ブラシ状CNT製造装置の構成概略図である。
【図12】比較例として示した、予熱を赤外線加熱により行う長尺ブラシ状CNT製造装置を用いて製造されたブラシ状CNTと予熱をせずに成長させたブラシ状CNTのSEM像である。
【図13】非特許文献1に記載されるブラシ状CNTの平均高さと原料ガス供給時間の相関図である。
【符号の説明】
【0054】
2 長尺ブラシ状CNT製造装置
3 混合ガス
4 反応室
5 排気ガス
6 触媒体
8 温度センサ
10 赤外線加熱手段
12 予熱路
13 終端
14 ガス予熱部
16 ガス予熱手段
17a〜17d 基板
18 温度コントローラ
21 触媒膜
22 反応防止層
23 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称す)の原料となる炭素を含む原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、長尺ブラシ状CNTを製造する方法において、前記原料ガスがアセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記キャリアガスがヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記酸化性ガスが水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記還元性ガスが水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上であることを特徴とする長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項2】
前記触媒温度TCが750℃〜900℃の範囲に設定される請求項1に記載の長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項3】
前記原料ガスがエチレンである請求項1又は2に記載の長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項4】
長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、酸化性ガス、還元性ガス及びキャリアガスの混合ガスを反応室に供給する混合ガス供給手段と前記反応室に配置された触媒を加熱する加熱手段を有する長尺ブラシ状CNTの製造装置において、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離が100cm以下であることを特徴とする長尺ブラシ状CNTの製造装置。
【請求項5】
前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線加熱手段である請求項4に記載の長尺ブラシ状CNTの製造装置。
【請求項1】
カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称す)の原料となる炭素を含む原料ガス、前記原料ガスを搬送するキャリアガス、酸化性ガス及び還元性ガスを混合した混合ガスを形成し、前記混合ガスを触媒が配置される反応室に供給することにより、長尺ブラシ状CNTを製造する方法において、前記原料ガスがアセチレン、エチレン及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記キャリアガスがヘリウム、アルゴン、ネオン、N2、CO2、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記酸化性ガスが水、酸素、アセトン、炭素数が5以下のアルコール、ジメチルホルムアミド、CO2、CO、O3及びH2O2からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記還元性ガスが水素、アンモニア及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種のガスであり、前記触媒を赤外線により触媒温度TC(℃)に加熱し、前記混合ガスを前記触媒に到達する以前にガス予熱温度Tg(℃)に加熱し、前記ガス予熱温度Tgは、前記触媒温度TCに対し、TC−50≦Tg≦TC+50の温度範囲になるように調整され、前記長尺ブラシ状CNT最終成長高さが1mm以上であることを特徴とする長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項2】
前記触媒温度TCが750℃〜900℃の範囲に設定される請求項1に記載の長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項3】
前記原料ガスがエチレンである請求項1又は2に記載の長尺ブラシ状CNTの製造方法。
【請求項4】
長尺ブラシ状CNTの原料となる炭素を含む原料ガス、酸化性ガス、還元性ガス及びキャリアガスの混合ガスを反応室に供給する混合ガス供給手段と前記反応室に配置された触媒を加熱する加熱手段を有する長尺ブラシ状CNTの製造装置において、前記加熱手段が赤外線により前記触媒を加熱する赤外線加熱手段であり、前記混合ガスが前記触媒に到達する前に前記混合ガスをガス予熱手段により加熱する予熱路が設けられ、前記予熱路の終端と前記触媒の距離が100cm以下であることを特徴とする長尺ブラシ状CNTの製造装置。
【請求項5】
前記ガス予熱手段が電熱手段又は赤外線加熱手段である請求項4に記載の長尺ブラシ状CNTの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図4】
【図7】
【図8】
【図12】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図4】
【図7】
【図8】
【図12】
【公開番号】特開2010−126373(P2010−126373A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299676(P2008−299676)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、大阪府地域結集型共同研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、大阪府地域結集型共同研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】
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