説明

長時間の眼圧低下効果を有するアルファ−2アドレナリンアゴニスト

【課題】本発明は、眼圧を有する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールまたはその塩を含む治療上有効な量の医薬組成物を患者の患眼に単一用量として投与することを含む眼圧を低下させる方法であって、患眼が少なくとも8時間、ベースライン眼圧よりも低い眼圧を有する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年1月21日に出願された米国特許仮出願第61/296、912号の利益を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、治療上有効な量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを含む組成物を患者の患眼に投与することを含む、それを必要とする患者の眼圧を低下させる方法に関し、治療される眼への眼圧低下効果は、少なくとも8時間、ベースラインの眼圧未満を維持する。
【0003】
関連技術の要約
アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、眼房水形成調節および房水流出促進に重要な役割を果たす;結果として、これらの化合物は、緑内障患者の眼圧を低下させる。緑内障は一般に眼内の圧力の上昇により、視神経の損傷および視覚の消失を引き起こし得る状態である。眼圧低下のために処方されるアルファ‐2アドレナリン薬は2つしかない。一般的に酒石酸ブリモニジンとして知られ、ALPHAGAN(登録商標)Pの商標で販売される(Allergan、 Inc.より入手可能)化合物(5-ブロモ-キノキサリン-6-イル)-イミダゾリジン-2-イリデン-アミンが、現在、緑内障患者の長期間の治療に処方される。酒石酸ブリモニジンは、上昇した眼圧を低下させるのに有効ではあるが、緑内障患者の眼圧を効果的に管理するために、1日に3回の投与計画のみが認められている。高齢の緑内障患者の人口を考慮すると、1日に3回の投与頻度は、最適とは言い難く、患者コンプライアンスが悪くなり得る。
【0004】
他のアルファ-2アドレナリンの薬は、一般的に塩酸アプラクロニジンとして知られ、IOPIDINE(登録商標)の商標で販売される(Alcon Pharmaceuticalsより入手可能)化合物2、6-ジクロロ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-ベンゼン-1、4-ジアミンである。塩酸アプラクロニジンは、アルゴンレーザー線維柱帯形成術、アルゴンレーザー虹彩切開またはNd:YAG後嚢切開後、患者に起こる術後の眼圧上昇を制御または予防するために短期間のみ認められている。塩酸アプラクロニジンは重篤なアレルギー反応のような副作用を引き起こすことが知られている。
【0005】
ブリモニジンおよびアプラクロニジンは、2-イミダゾリジニルエネアミノアルファ-2アゴニスト構造分類の2つの化合物である。
【化1】

ブリモニジン アプラクロニジン
【0006】
記載の通り、これらの化合物は一過性に眼圧を低下させる。以前の薬物動態学的研究(Acheampong et al.(Drug Metabolism and Disposition、 1995 Vol 23、 No. 7、 p 708-712およびChein et al. (Curr. Eye Res. 1990 9(11):1051-9)の発表データは、ブリモニジンおよびアプラクロニジンが局所投与後、容易に角膜および強膜を透過し、急速に眼房水から取り除かれることを証明した。
【発明の概要】
【0007】
我々は、今、化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンが、予想外に延長された時間眼圧を低下させ、1日に3回未満、例えば、1日に1回または2回の投与で十分に眼圧を管理することを発見した。化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンは、2-イミダゾリジニルエネアミノ誘導体でもあるが、驚くべきことに文献またはその構造から予測できないような長時間の働きをする。
【0008】
4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの構造は以下の通りである:
【化2】

【0009】
化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンは、米国特許第6、495、583B1号(その全体が参照により組み込まれる)の開示に従って調製し得る。Acheampong et al.は、Xenobiotica、 February 2007、 Vol. 37(2)、 pages 205-220中、この化合物が、酒石酸ブリモニジンの経口投与後、ラットの尿中に微量に発見されたことを示した。
【0010】
正常血圧のウサギに局所的に投与する際、この化合物は、他のアルファ-2アゴニストと比較すると、全身性の副作用なしに、予想外の長時間の働きで(すなわち、8時間以上に至るまで)眼圧を低下させる。この分類の薬物は、いくらかの患者に疲労および/または眠気を引き起こし得る。加えて、この化合物は、高血圧のサルに局所的に投与する際、予想外に長い眼圧低下を示す。
【0011】
驚くべきことに、ブリモニジンおよびアプラクロニジンとの構造上の高い類似性にも関わらず、本発明の2-イミダゾリジニルエネアミノアルファ-2アゴニストは、ブリモニジンとは異なり、長時間薬物のレベルの維持を持続した。それにも関わらず、薬物動態学的分析は、本発明の2-イミダゾリジニルエネアミノアルファ-2アゴニストの眼房水中のレベルが、ブリモニジンとは異なり、単回投与後、延長された時間、少なくとも8時間、容易に維持されることを示す。Acheampong et alによる発表データ(Drug Metabolism and Disposition、 Vol 23、 No. 7、 p 708-712)は、ブリモニジンの量を増加させても眼房水中の半減期を改善せず、本発明の化合物とは異なり、全身性の暴露が増加することを示す。薬物動態学的分析は、本発明のアルファ-2アゴニストは、全身循環中検出不能なレベルであり、前記2-イミダゾリジニルエネアミノアルファ-2アゴニストは全身性の副作用が少ないことを示唆することも示した。ブリモニジンおよびアプラクロニジンがそのメラニン色素への高い結合により、虹彩と毛様体に蓄積することが発見された。逆に、未発表の薬物動態学的データは、本発明の2-イミダゾリジニルエネアミノアルファ-2アゴニストが虹彩と毛様体にほとんど蓄積を示さず、メラニン結合の兆候を示さないことを示した。従って、前記化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンは、緑内障患者の上昇した眼圧への利用を可能にする独特で予想外の特性を有する。化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの使用は、ブリモニジンおよびアプラクロニジンとは異なり、副作用なしに延長された時間および長時間管理するような莫大な利益を示す。
【0012】
本発明は、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンまたはその薬剤的に許容される塩の投与により、緑内障の眼圧を低下させるための方法を提供する。
【0013】
本発明に記載の用語「薬剤的に許容される塩」は、化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンが形成できる、治療上活性で非毒性の塩基または酸性塩の形体を含む。
【0014】
塩基としてのその遊離型に生じる4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの酸付加塩形体は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等;または、例えば、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、クエン酸、メチルスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ギ酸等といった有機酸のような適切な酸と遊離塩基を処置することにより得られる(Handbook of Pharmaceutical Salts、 P.Heinrich Stahal& Camille G. Wermuth (Eds)、 Verlag Helvetica Chemica Acta- Zuich、 2002、 329-345)。
【0015】
4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンおよびその薬剤的に許容される塩は、眼圧低下におけるアルファ-2アドレナリンアゴニスト活性を拡大し、異なる経路(局所的な点眼、直接注入、眼の後部への投与または長時間の働きをさらに増強し得る製剤、例えば、ゆっくりと放出するペレット、懸濁液、ゲル、または、当該技術分野において周知である任意の適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)のような徐放性送達装置を含むがそれらに限定されない)を通じて投与され得る。
【0016】
局所的な投与が好ましいが、この化合物は、米国公開特許出願第20050244463号(参照により組み込まれる)に記載のような眼内移植片にも使用され得る。このような生体適合性の眼内移植片には、延長された時間、眼へのその放出を促進させるため、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンおよび4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンと結合したポリマーが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの1%溶液が、ブリモニジンの0.15%溶液と比較する際、予想外の長時間の働きで(つまり、8時間を超えて)、明らかな副作用なく、ウサギの眼圧を低下させることを示す図である。
【図2】4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの0.2%溶液が、予想外の長時間の働きで(つまり、6時間を超えて)、明らかな副作用なく、ウサギの眼圧を低下させることを示す図である。
【図3】A.眼房水中の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの濃度が、ブリモニジンとは異なり、延長された時間、容易に維持されることを示す薬物動態学的分析の結果を示す図である。B.複数の眼球組織中の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミン濃度が、延長された時間(>8時間)容易に維持されることを示す薬物動態学的分析の結果を示す図である。
【図4】4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの0.5%溶液が、プラセボと比較する際、予想外の長時間の働きで(つまり24時間に至るまで)サルの眼圧を低下させることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明の一態様において、それを必要とする患者の眼圧を低下させる方法(その方法は、治療上有効な量の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンまたはその塩を含むか、本質的にそれからなるか、または、それからなる治療上有効な量の医薬組成物を、前記患者の患眼に単一用量として投与することを含むか、本質的にそのことからなるか、または、そのことからなる)の提供があり、患眼は、投与の時間から少なくとも8時間、好ましくは少なくとも10時間、さらに好ましくは少なくとも12時間、ベースライン眼圧より低い眼圧を維持する。
【0019】
用語「ベースライン」は、本明細書中に使用される際、治療されない眼について測定された眼圧を意味する。
【0020】
本発明の別の態様において、上昇した眼圧を有する患者を眼圧を下げるためにアルファ-2アドレナリンアゴニストで治療する方法の提供があり、改善は、前記患者の患眼に単一用量の組成物(治療上有効な量の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含むか、本質的にそれからなるか、または、それからなる組成物)を投与することにより、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも10時間、さらに好ましくは少なくとも12時間の延長された時間、上昇した眼圧を低下させることを含むか、本質的にそのことからなるか、または、そのことからなる。
【0021】
本発明のさらなる態様において、それを必要とする患者の眼圧を低下させる方法(その方法は、前記患者の患眼に、1日に1回または2回、好ましくは1回、治療上有効な量の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物を投与することを含む)の提供があり、患眼は1日中、ベースライン眼圧より低い眼圧を維持する。
【0022】
本発明のある方法において、投与後少なくとも8時間、前記眼圧を低下させる。
【0023】
本発明の好ましい方法において、投与後少なくとも10時間、前記眼圧を低下させる。
【0024】
本発明のさらに好ましい方法において、投与後少なくとも12時間、前記眼圧を低下させる。
【0025】
本発明に記載の方法において、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも10時間、さらに好ましくは少なくとも12時間、眼圧を低下させるために単一用量として使用される組成物は、薬剤的に許容される溶媒中0.01〜5重量パーセント、好ましくは、0.01〜2重量パーセント、さらに好ましくは0.05〜2重量パーセントの4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含み得る。前記組成物は、好ましくは局所投与に適した点眼薬として製剤化される。
【0026】
局所投与のために生成する組成物の中で、医薬組成物は、好ましくはpH5.5〜8.0、例えば約6.9の水溶液として製剤化される。正確な投与計画は臨床医の裁量に委ねられるが、溶液を局所的に各眼に1日に1回または2回、好ましくは1回、1滴さすことによって与えることが推奨される。本発明の方法に使用される眼科用薬剤において使用が望ましいであろう他の成分には、保存料、補助溶媒および増粘剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム六水和物、ホウ酸およびホウ酸ナトリウム十水和物(緩衝剤として)ならびに精製水が含まれる(Clinical Ocular Pharmacology By Jimmy D. Bartlett、 Siret D. Jaanus、 2008、 p 266)。
【0027】
保存料は、従って、使用中の微生物汚染を予防するために必要である。適切な保存料には、安定化オキシクロロ複合体(Purite(商標)の商標で販売される)、安定化二酸化塩素、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Onamer M、または当業者に周知の他の薬剤が含まれる(Review of Ophthalmology、 June 2001、 Robert Noecker、 MD)。これらの保存料の一般的な副作用は灼熱感である。本発明の方法は、上昇した眼圧を制御するために、1日に3回の投与が必要な先行技術のアルファ-2アドレナリンアゴニストと異なり、組成物を含む4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンが、1日に1回のみ、多くても2回、投与されるので、患者をより少ない保存料に曝すという改善を提供する。典型的には、本発明の方法に使用される組成物に対し、保存料の有効な濃度は0.001〜1重量%、好ましくは、0.01〜0.5重量%の範囲であろう。特定の安定化オキシクロロ複合体(Purite(登録商標))は、0.001〜0.01重量%の範囲にわたるであろう。
【0028】
本組成物の成分の溶解度は、組成物中の界面活性剤または他の適切な補助溶媒によって増強し得る。そのような補助溶媒にはポリソルベート20、60、および80、Pluronic(登録商標)F-68、F-84およびP-103、シクロデキストリン、Solutolまたは当業者に周知の他の薬剤が含まれる。典型的には、そのような補助溶媒は0.01〜2重量%のレベルで使用される。
【0029】
単純な水溶液の粘度より増加した粘度は、活性な化合物の眼球での吸収の増加、製剤の分配における可変性の減少、製剤の懸濁液または乳濁液の成分の物理的分離の減少および/または、その他点眼用の製剤の改善に望ましいであろう。そのような増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたは当業者に周知の他の薬剤が含まれる。そのような薬剤は典型的には0.01〜2重量%のレベルで使用される。
【0030】
以下の製剤は、緑内障に関連した眼圧の上昇を治療することが示唆される際の、局所的な使用のための本発明の代表的な点眼用の組成物である。ある実施例において、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの遊離塩基を滅菌蒸留水に溶解し、塩酸を添加し、化合物の塩酸塩をin situで形成させた。溶液のpHが8.0に達するまで、溶液を水酸化ナトリウムで滴定した。4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの最終濃度は1重量%である。別の実施例において、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの遊離塩基を滅菌蒸留水にホウ酸、塩化ベンザルコニウムおよびグリセリンとともに溶解した。
【0031】
例示された実施形態によって本発明は範囲を限定されず、本発明の特定の面を説明することのみを意図する。本発明の種々の変更は、本明細書中に開示されたものに加えて請求の範囲を含む出願時の明細書を慎重に読むことにより当業者には明らかであろう。すべてのそのような変更は添付の請求の範囲に含まれ得ることを意図する。
【0032】
実施例1
本実施例は、ブリモニジンを含む組成物と比較する際の、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物の眼圧低下効果を示す。4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの遊離塩基を滅菌蒸留水に溶解し、塩酸を添加し、化合物の塩酸塩をin situで形成させた。溶液のpHが8.0に達するまで、溶液を水酸化ナトリウムで滴定した。4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの最終濃度は1重量%である。使用された実験用動物は正常血圧のダッチベルテッド系のオスのウサギであった。薬物製剤の一滴(50μl)を、およそ午前7時に右眼(治療される眼)にピペットで局所的に投与した。ウサギ(治療される眼および治療されない眼)の眼圧を局所的な点眼薬の単回投与0時間前、および0.5、1、2、3、4、6および8時間後に測定した。点眼薬の投与の前(0時間)にとられた眼圧をベースライン値として使用した。眼圧検査の測定の前に、0.05%のプロパラカイン(50μl)を各眼に投与した。眼圧検査の眼圧測定をMentor Pneumontonmeterで得た。加えて、すべての研究をマスクした。すべての動物を鎮静作用、眼球の刺激作用、および瞳孔径の変化について、実験の過程を通して試験した。これらの効果は化合物の高投与量で観察されなかった。従って、全身性の効果の欠如が確認された。薬物動態学的研究は、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの血漿レベルは低いことを示し、この化合物の全身性暴露が低いことを確認した。
【0033】
結果は、図1に報告される。図1に示されるように、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物で治療されたウサギの眼圧は8時間を超える間、眼圧の減少を維持する一方で、組成物を含むブリモニジンで治療されたウサギの眼圧は6時間未満でベースラインに戻る。
【0034】
実施例2
本実施例は、ブリモニジンを含む組成物と比較する際の、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物の眼圧低下効果を示す。4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの遊離塩基を滅菌蒸留水に溶解し、塩酸を添加し、化合物の塩酸塩をin situで形成させた。溶液のpHが8.0に達するまで、溶液を水酸化ナトリウムで滴定した。4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンの最終濃度は0.2重量%である。使用された実験用動物は正常血圧のダッチベルテッド系のオスのウサギであった。薬物製剤の一滴(50μl)を、およそ午前7時に右眼(治療される眼)にピペットで局所的に投与した。ウサギ(治療される眼および治療されない眼)の眼圧を局所的な点眼薬の単回投与0時間前、および、2、4、6時間後に測定した。点眼薬の投与の前(0時間)にとられた眼圧をベースライン値として使用した。眼圧検査の測定の前に、0.05%のプロパラカイン(50μl)を各眼に投与した。眼圧検査の眼圧測定をMentor Pneumontonmeterで得た。加えて、すべての研究をマスクした。すべての動物を鎮静作用、眼球の刺激作用、および瞳孔径の変化について実験の過程を通して試験した。これらの効果は化合物の高投与量では観察されなかった。従って、全身性の効果の欠如が確認された。
【0035】
結果は、図2に報告される。図2に示されるように、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物で治療されたウサギの眼圧は6時間を超える間、眼圧の減少を維持する一方で、組成物を含むブリモニジンで治療されたウサギの眼圧は6時間未満でベースラインに戻る。実施例1および2の前記化合物は、明らかに、Alphagan(登録商標)Pよりも長い時間である延長された時間中、眼圧(IOP)がより低い傾向にある。
【0036】
実施例3
本実施例は、眼房水中の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンのレベルが、ブリモニジンとは異なり、延長された時間、容易に維持されることを示す薬物動態学的分析を記載する。
【0037】
23匹の約1.75〜2.34kgの重さのダッチベルテッド系のメスのウサギ(群1)を、左眼に、35μLの製剤を服用させた。安楽死の前の異なる時点で、耳中心動脈を介して約0.5mLの血液を回収し、EDTAチューブに入れた。血液サンプルをサンプル回収の間、氷上に保存し、血漿を採取するために遠心分離した。動物を、1mLのユーサゾル(Euthasol)の静脈内注射で安楽死させ、眼球組織(眼房水、角膜、結膜、虹彩と毛様体、網膜、および強膜)を左右の眼から回収した。すべての眼球組織サンプルをバイアルに入れ、サンプル回収の間ドライアイス上に保存した。眼球組織は、投与を受けていないコントロール群(群2)からも回収した。これらの眼球組織は分析のコントロールとして働く。すべての眼球組織および血漿サンプルは、生物分析まで-60°C以下で保管した。眼房水の分析は、図3A/Bに報告される。本研究の結果は、以前に0.15%ブリモニジンに対して行われた同様の研究の結果と比較される。加えて、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンレベルは複数の眼球組織で8時間を超えて維持されるが、血漿レベルは低く、検出レベル未満であった。
【0038】
眼房水中のブリモニジンレベルは実質的に3時間で減少し、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンは眼房水中8時間を超えて持続したレベルを維持することを示す結果が図3Aに報告される。発表データは、投与量に関わらず、3時間で眼房水中のブリモニジンレベルが減少することを示した(Acheampong et al. (Drug Metabolism and Disposition、Vol 23、No. 7、p 708-712)。
【0039】
実施例4
本実施例は、4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンが角膜上皮細胞を浸透しにくいが、ブリモニジンは中程度に浸透することを示す、角膜浸透アッセイを記載する。これらの結果は以下の表1に報告される。
【表1】

Papp=透過係数
【0040】
透過性に基づけば、本発明の化合物は角膜に浸透しにくいため、より短い持続時間を有すると期待される。しかしながら、予想外に、この化合物は延長された時間、眼圧を減少させることによりその逆を示した。この特定の発見は、ブリモニジンと比較して独特の特徴を示した。化合物4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンは、ウサギやサルにおいて延長された時間、眼圧を制御することを可能にする特有の特性を有し;さらに重要なことに、本発明の前記化合物はヒトにおいて眼圧(IOP)を制御することを可能にする特有の特性を有する。
【0041】
実施例5
本実施例は、プラセボと比較する際の、実施例1の4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンを含む組成物の眼圧低下効果を示す。結果は、図4に報告される。図4に示されるように、組成物を含む4-ブロモ-N-イミダゾリジン-2-イリデン-1-H-ベンズイミダゾール-5-アミンで治療したサルの眼圧は、24時間に至るまで、眼圧の低下を維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールまたはその塩を含む治療上有効な量の医薬組成物を患者の患眼に単一用量として局所的に投与することを含む眼圧を低下させる方法であって、患眼が少なくとも8時間、ベースライン眼圧よりも低い眼圧を有する方法。
【請求項2】
患眼が少なくとも10時間、ベースライン眼圧よりも低い眼圧を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患眼が少なくとも12時間、ベースライン眼圧よりも低い眼圧を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が0.01〜5重量%の4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールまたはその塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が0.15〜1重量%の4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールまたはその塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組成物がさらに0.001〜1重量%の保存料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記組成物がさらに0.01〜0.5重量%の保存料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記組成物がさらに0.001〜0.01重量%の保存料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記組成物がさらに0.01〜1重量%の補助溶媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がさらに0.01〜2重量%の増粘剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールが投与後、全身循環中に検出不能である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールが少なくとも10時間、眼房水に維持される、請求項7記載の方法。
【請求項13】
4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールまたはその塩を含む治療上有効な量の医薬組成物を患者の患眼に1日に1回または2回、局所的に投与することを含む、それを必要とする患者の眼圧を低下させる方法であって、患眼が1日中、ベースライン眼圧よりも低い眼圧を維持する方法。
【請求項14】
前記組成物が1日に1回投与される、請求項3記載の方法。
【請求項15】
包装資材および前記包装資材内に含まれる医薬品を含む製造物品であって、医薬品が眼圧の低下に治療上有効であり、包装資材に医薬品が眼圧を低下させるために使用出来ることを示すラベルが含まれ、前記医薬品が有効な量の4-ブロモ-5-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)ベンズイミダゾールを含む製造物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518051(P2013−518051A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550140(P2012−550140)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022001
【国際公開番号】WO2011/091225
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】