説明

長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含有するポリマー性分散剤を有する着色インキジェットインキ

顔料及びポリマー性分散剤を含んでなる着色インキジェットインキであって、ここでポリマー性分散剤は3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含んでなるランダムコポリマーであり、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有する着色インキジェットインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は、長鎖(メタ)アクリレートを含有するポリマー性分散剤を有する安定な着色インキジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
顔料分散系は分散剤を用いて調製される。分散剤は、分散媒中における顔料粒子の分散系の形成及び安定化を助長するための物質である。分散剤は一般にアニオン性、カチオン性又は非−イオン性構造を有する界面−活性材料である。分散剤の存在は、必要な分散エネルギーを実質的に低下させる。分散された顔料粒子は、互いの引力の故に、分散操作の後に再−凝集する傾向を持ち得る。分散剤の使用は、この顔料粒子の再−凝集傾向に対抗もする。
【0003】
分散剤は、インキジェットインキのために用いられる場合、特に高い必要条件を満たさなければならない。不十分な分散は、液体系における粘度の向上、さえの喪失及び/又は色相の移動として現れる。さらに、通常直径がわずか数マイクロメーターであるプリントヘッドのノズルを介する顔料粒子の妨害されない通過を保証するために、顔料粒子の特に優れた分散が必要である。さらに、プリンターのスタンバイ期間中、顔料粒子凝集及びそれに伴うプリンターノズルの閉塞は避けられなければならない。
【0004】
ポリマー性分散剤は、分子の一部中にいわゆるアンカー基を含有し、それは分散されるべき顔料上に吸着する。ポリマー性分散剤は、分子の空間的に離れた部分にポリマー鎖を有し、それは突き出てそれにより顔料粒子が分散媒と適合性にされる、すなわち安定化される。
【0005】
ポリマー性分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。モノマーを無作為に重合させることにより(例えばモノマーA及びBをABBAABABに重合させる)、あるいは交代のモノマーを重合させることにより(例えばモノマーA及びBをABABABABに重合させる)得られるポリマー性分散剤は、一般に劣った分散安定性を生ずる。グラフトコポリマー及びブロックコポリマー分散剤を用いて、分散安定性における向上が得られた。
【0006】
グラフトコポリマー分散剤は、主鎖に結合した側鎖を有するポリマー主鎖から成る。特許文献1(DU PONT)は、疎水性ポリマー主鎖及び親水性側鎖を有するグラフトコポリマー分散剤の使用により調製される顔料分散系を開示している。他のグラフトコポリマー分散剤は特許文献2(LEXMARK)、特許文献3(DU PONT)及び特許文献4(LEXMARK)に開示されている。
【0007】
疎水性及び親水性ブロックを含有するブロックコポリマー分散剤も多数のインキジェットインキ特許において開示されている。特許文献5(DU PONT)は、芳香族もしくは脂肪族カルボン酸と反応した重合したグリシジル(メタ)アクリレートモノマーのポリマー性Aセグメント及びアルキル基中に1〜12個の炭素原子を有する重合したアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマー性Bメグメントを有するABブロックコポリマー分散剤を開示している。特許文献6(DU PONT)は、アルキル基中に1〜12個の炭素原子を有する重合したアルキ
ル(メタ)アクリレートモノマー、アリール(メタ)アクリレートモノマー、シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマー性Aセグメント、第4級化アルキル基を有する重合したアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマー性Bセグメント及び重合したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマー性Cセグメントを有するABCブロックコポリマー分散剤を開示している。
【0008】
インキ−ジェットインキのためのポリマー性分散剤の設計は非特許文献1で議論されている。
【0009】
多様なポリマー性分散剤が提案されたが、特にインキジェットにおける顔料の分散安定性はまださらなる改良を必要とする。一貫した画質のために、インキジェットインキは、消費者へのインキの輸送の間の高い温度(60℃より高い)及び使用の間のインキジェットインキの分散媒における変化、例えば水の蒸発及び保湿剤の濃度の向上を処理することができる分散安定性を必要とする。簡単な合成により、すなわちモノマーをランダムに重合させることにより得られるポリマー性分散剤を用いて、そのような安定な着色インキジェットインキを調製できることは、非常に望ましい。
【特許文献1】カナダ特許第2157361号明細書
【特許文献2】米国特許第6652634号明細書
【特許文献3】米国特許第6521715号明細書
【特許文献4】米国特許第2004102541号明細書
【特許文献5】米国特許第5859113号明細書
【特許文献6】米国特許第6413306号明細書
【非特許文献1】SPINELLI,Harry J.著,Polymeric Dispersants in Ink Jet Technology.Advanced Materials,vol.10,no.15,1998年,p.1215−1218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
本発明の目的は、簡単な合成により得られるポリマー性分散剤を使用しており、高い分散安定性を示し、そして高い光学濃度を有する高い画質の画像を生ずる着色インキジェットインキを与えることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、下記の記述から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概略
驚くべきことに、ランダムコポリマーがある濃度の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含有する場合に高い安定性及び高い光学濃度を有する着色インキジェットインキが得られることが見出された。
【0013】
本発明の目的は、顔料及びポリマー性分散剤を含んでなる着色インキジェットインキを用いて実現され、ここでポリマー性分散剤は3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリ
レートを含んでなるランダムコポリマーであり、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有する。
【0014】
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の記述から明らかになるであろう。
【0015】
発明の詳細な記述
定義
本発明の開示において用いられる「染料」という用語は、それが適用される媒体中で、且つ関連する周囲条件下で、10mg/Lかもしくはそれより高い溶解度を有する着色剤を意味する。
【0016】
「顔料」という用語は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるDIN 55943において、関連する周囲条件下において適用媒体中で実質的に不溶性であり、従ってその中で10mg/Lより低い溶解度を有する無機もしくは有機、有彩もしくは無彩着色剤として定義されている。
【0017】
本発明の開示において用いられる「分散系」という用語は、少なくとも2つの物質の緊密な混合物であって、分散相又はコロイドと呼ばれるその1つが分散媒と呼ばれる第2の物質全体に微粉砕された状態で均一に分布する混合物を意味する。
【0018】
本発明の開示において用いられる「ポリマー性分散剤」という用語は、分散媒中における1つの物質の分散系の形成及び安定化を助長するための物質を意味する。
【0019】
本発明の開示において用いられる「コポリマー」という用語は、2種もしくはそれより多いモノマーの種がポリマー鎖中に導入されている高分子を意味する。
【0020】
本発明の開示において用いられる「ランダムコポリマー」という用語は、モノマーをランダムに重合させることにより、例えばモノマーA及びBをABBAABABに重合させることにより得られるコポリマーを意味する。
【0021】
本発明の開示において用いられる「ブロックコポリマー」という用語は、モノマーが鎖中に比較的長い交互の配列で存在するコポリマーを意味する。
【0022】
本発明の開示において用いられる「スペクトル分離係数」という用語は、最大吸光度Amax(波長λmaxにおいて測定される)対参照波長λrefで決定される吸光度Arefの比率を計算することにより得られる値を意味する。
【0023】
「SSF」という略語は、本発明の開示においてスペクトル分離係数に関して用いられる。
【0024】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子の各数に関して可能なすべての変形、すなわち3個の炭素原子に関して:n−プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子に関して:n−ブチル、イソブチル及び第3級−ブチル;5個の炭素原子に関して:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0025】
本発明の開示において用いられる「置換された」という用語は、脂肪族基、芳香族基又は脂環式炭化水素基中の1個もしくはそれより多い炭素原子及び/又は1個もしくはそれより多い炭素原子の水素原子が酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子、セレン原子又はテルル原子により置き換えられていることを意味する。そ
のような置換基にはヒドロキシル基、エーテル基、カルボン酸基、エステル基、アミド基及びアミン基が含まれる。
【0026】
着色インキジェットインキ
本発明に従う着色インキジェットインキは、少なくとも3つの成分:(i)顔料、(ii)ポリマー性分散剤及び(iii)分散媒を含有する。
【0027】
本発明に従う着色インキジェットインキは、さらに、少なくとも1種の界面活性剤を含有することができる。
【0028】
本発明に従う着色インキジェットインキは、さらに、少なくとも1種の殺生物剤を含有することができる。
【0029】
本発明に従う着色インキジェットインキは、さらに、少なくとも1種のpH調整剤を含有することができる。
【0030】
本発明に従う着色インキジェットインキは少なくとも1種の保湿剤を含有し、インキの蒸発速度を遅くするその能力の故にノズルの目詰まりを妨げることができる。
【0031】
本発明に従う着色インキジェットインキの粘度は、100s−1のせん断速度及び20〜110℃の温度において好ましくは100mPa.sより低く、より好ましくは30mPa.sより低く、そして最も好ましくは10mPa.sより低い。
【0032】
本発明に従う着色インキジェットインキは、好ましくは水性又は溶剤に基づく着色インキジェットインキである。
【0033】
本発明に従う着色インキジェットインキは放射線硬化性であることができ、且つ種々の程度の官能価を有するモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを含有することができる。モノ−、ジ−、トリ−及びそれより高い官能価のモノマー、オリゴマー又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を用いることができる。重合反応を開始させるための光−開始剤と呼ばれる触媒が放射線硬化性着色インキジェットインキ中に含まれることができる。
【0034】
顔料
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられる顔料は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであることができる。
【0035】
HERBST,W.et al.著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.2nd edition,vch,1997年により開示されているものから顔料を選ぶことができる。
【0036】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Yellow 1,3,10,12,13,14,17,55,65,73,74,75,83,93,109,111,120,128,138,139,150,151,154,155,180,185及び213である。
【0037】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Red 17,22,23,41,48:1,48:2,49:1,49:2,52:1,57:1,81:1,81:3,88,112,122,144,146,149,169,170,175,176,184,185,188,202,206,207,210,216,221,248,251及び264である。
【0038】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Violet 1,2,19,23,32,37及び39である。
【0039】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Blue 15:1,15:2,15:3,15:4,16,56,61及び(架橋)アルミニウムフタロシアニン顔料である。
【0040】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Orange 5,13,16,34,40,43,59,66,67,69,71及び73である。
【0041】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Green 7及び36である。
【0042】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Brown 6及び7である。
【0043】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment White 6である。
【0044】
特定の好ましい顔料はC.I.Pigment Metal 1,2及び3である。
【0045】
ブラックインキのために、適した顔料材料にはカーボンブラック、例えばCabot Co.からのRegalTM 400R,MogulTM L,ElftexTM 320又はDEGUSSA Co.からのCarbon Black FW18,Special BlackTM 250,Special BlackTM 350,Special BlackTM 550,PrintexTM 25,PrintexTM 35,PrintexTM 55,PrintexTM 90,PrintexTM 150T,MITSUBISHI CHEMICAL Co.からのMA8ならびにC.I.Pigment Black 7及びC.I.Pigment Black 11が含まれる。
【0046】
着色インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット印刷装置を介する、特に噴射ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため及び沈降を遅くするためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0047】
着色インキジェットインキ中の顔料の平均粒度は0.005μm〜15μmでなければならない。好ましくは、平均顔料粒度は0.005〜5μm、より好ましくは0.005〜1μm、特に好ましくは0.005〜0.3μmそして最も好ましくは0.040〜0.150μmである。本発明の目的が達成される限り、もっと大きな顔料粒度を用いることができる。
【0048】
顔料は着色インキジェットインキ中で、着色インキジェットインキの合計重量に基づいて0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の量で用いられる。
【0049】
ポリマー性分散剤
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含んでなるコポリマーであり、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有する。
【0050】
長脂肪族鎖(メタ)アクリレートは10〜18個の炭素原子を含有する。長脂肪族鎖(メタ)アクリレートは、好ましくはデシル(メタ)アクリレートである。
【0051】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含むモノマー及び/又はオリゴマーの混合物の簡単な制御された重合を用いて製造することができ、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有する。
【0052】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましくは少なくとも2種の他のモノマー及び/又はオリゴマーを含む。
【0053】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましくは100000より小さい、より好ましくは50000より小さい、そして最も好ましくは30000より小さい平均分子量Mwを有する。
【0054】
他のモノマー及び/又はオリゴマー
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤の製造のために用いられるモノマー及び/又はオリゴマーは、Polymer Handbook,Vol.1+2.4th edition,J.BRANDRUP,et al編集,Wiley−Interscience,1999年中に見出されるいずれのモノマー及び/又はオリゴマーであることもできる。
【0055】
モノマーの適した例には:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロイルオキシ安息香酸及びメタクリロイルオキシ安息香酸(もしくはそれらの塩)、無水マレイン酸;アルキル(メタ)アクリレート(直鎖状、分枝鎖状及びシクロアルキル)、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;他の型の官能基を有する(例えばオキシラン、アミノ、フルオロ、ポリエチレンオキシド、ホスフェート−置換された)(メタ)アクリレート、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート;アリル誘導体、例えばアリルグリシジルエーテル;スチレン系(styrenics)、例えばスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン及び4−アセトキシスチレン;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド(N−モノ及びN,N−ジ置換されたものを含む)、例えばN−ベンジル(メタ)アクリルアミド;マレイミド、例えばN−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド及びN−エチルマレイミド;ビニル誘導体、例えばビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン及びビニルハライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル;ならびにカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル及び酪酸ビニルが含まれる。
【0056】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましくは少なくとも25モル%のn−ブチル(メタ)アクリレートを含む。
【0057】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましくは少なくとも25モル%の(メタ)アクリル酸を含む。
【0058】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましく
は少なくとも5モル%のメチル(メタ)アクリレートを含む。
【0059】
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられるポリマー性分散剤は、好ましくは10000より小さいMnを有する。
【0060】
本発明に従う着色インキジェットインキに適した商業的に入手可能なポリマー性分散剤の例は、MUENZING CHEMIEから入手可能なEDAPLANTTM 482であり、それは約6モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含有する。
【0061】
着色インキジェットインキ中でポリマー性分散剤は、顔料の重量に基づいて5〜200重量%、好ましくは10〜100重量%の量で用いられる。
【0062】
分散媒
本発明に従う着色インキジェットインキ中で用いられる分散媒は、液体である。分散媒は水及び/又は有機溶剤から成ることができる。好ましくは、分散媒は水である。
【0063】
着色インキジェットインキが放射線硬化性着色インキジェットインキである場合、水及び/又は有機溶剤を1種もしくはそれより多いモノマー及び/又はオリゴマーにより置き換えて液体分散媒を得る。いくつかの場合には、分散剤の溶解を促進するために、少量の有機溶剤を加えるのが有利であり得る。有機溶剤の含有率は、着色インキジェットインキの合計重量に基づいて20重量%より低くなければならない。
【0064】
適した有機溶剤にはアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルが含まれる。適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t.−ブタノールが含まれる。適した芳香族炭化水素にはトルエン及びキシレンが含まれる。適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンが含まれる。グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを用いることもできる。
【0065】
界面活性剤
本発明に従う着色インキジェットインキは、少なくとも1種の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非−イオン性又は双性−イオン性であることができ、通常着色インキジェットインキの合計重量に基づいて20重量%より少ない合計量で、特に着色インキジェットインキの合計重量に基づいて10重量%より少ない合計量で加えられる。
【0066】
本発明に従う着色インキジェットインキのために適した界面活性剤には高級アルコールの脂肪酸塩、エステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホネート塩、スルホスクシネートエステル塩及びホスフェートエステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物ならびにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルならびにAIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能なSURFYNOLTM 104,104H,440,465及びTG)が含まれる。
【0067】
殺生物剤
本発明の着色インキジェットインキのために適した殺生物剤にはデヒドロ酢酸ナトリウ
ム、2−フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチル及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩が含まれる。
【0068】
好ましい殺生物剤はHENKELから入手可能なBronidoxTM及びZENECA COLOURSから入手可能なProxelTM GXLである。
【0069】
殺生物剤は、好ましくはそれぞれ着色インキジェットインキの合計重量に基づいて0.001〜3重量%、より好ましくは0.01〜1.00重量%の量で加えられる。
【0070】
pH調整剤
本発明に従う着色インキジェットインキは、少なくとも1種のpH調整剤を含有することができる。適したpH調整剤にはNaOH、KOH、NEt、NH、HCl、HNO、HSO及び(ポリ)アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール含まれる。好ましいpH調整剤はNaOH及びHSOである。
【0071】
保湿剤
適した保湿剤にはトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールならびにそれらの混合物及び誘導体を含むグリコールが含まれる。好ましい保湿剤はグリセロール及び1,2−ヘキサンジオールである。保湿剤は、好ましくは調製物の0.1〜20重量%、より好ましくは調製物の0.1〜10重量%、そして最も好ましくは約4.0〜6.0重量%の量でインキジェットインキ調製物に加えられる。
【0072】
着色インキジェットインキの調製
ポリマー性分散剤の存在下に、顔料を分散媒中で沈降させるか又は磨砕することにより、本発明に従う着色インキジェットインキを調製することができる。
【0073】
混合装置には圧力混練機(pressure kneader)、開放混練機、遊星形ミキサー、溶解機及びDalton Universal Mixerが含まれ得る。適した磨砕及び分散装置はボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー及びトリプルローラーである。超音波エネルギーを用いて分散系を調製することもできる。
【0074】
顔料の非常に微細な分散系の調製方法は、例えば米国特許第5679138号明細書(KODAK)、米国特許第5538548号明細書(BROTHER)、米国特許第5443628号明細書(VIDEOJET SYSTEMS)、米国特許第4836852号明細書(OLIVETTI)、米国特許第5285064号明細書(EXTREL)、米国特許第5184148号明細書(CANON)及び米国特許第5223026号明細書(XEROX)に開示されている。
【0075】
スペクトル分離係数
スペクトル分離係数SSFは、着色インキジェットインキを特性化するための優れた尺度であることが見出され、それは、それが光−吸収に関連する性質(例えば最大吸光度の波長λmax、吸収スペクトルの形及びλmaxにおける吸光度−値)ならびに分散の質
及び安定性に関連する性質を考慮しているからである。
【0076】
比較的高い波長における吸光度の測定は、吸収スペクトルの形についての指標を与える。溶液中の固体粒子により誘導される光散乱の現象に基づいて、分散の質を評価することができる。透過において測定する場合、顔料インキにおける光散乱を、実際の顔料の吸光度ピークより高い波長における吸光度の向上として検出することができる。例えば80℃における1週間の熱処理の前後でSSFを比較することにより、分散安定性を評価することができる。
【0077】
インキのスペクトル分離係数SSFは、インキ溶液又は基質上に噴射された画像の記録されるスペクトルのデータを用い、且つ最大吸光度を参照波長における吸光度と比較することにより計算される。スペクトル分離係数は、最大吸光度Amax対参照波長における吸光度Arefの比率として計算される。
【0078】
【数1】

【0079】
SSFは、広い色域を有するインキジェットインキセットを設計するための優れた道具である。多くの場合、種々のインキが十分に互いに適合していないインキジェットインキセットが現在商品化されている。例えばすべてのインキの合わされた吸収が可視スペクトル全体に及ぶ完全な吸収を与えず、例えば着色剤の吸収スペクトルの間に「間隙」が存在する。他の問題は、あるインキが他のインキの領域内で吸収しているかも知れないことである。これらのインキジェットインキセットの得られる色域は低いかもしくは並である。
【実施例】
【0080】
材料
以下の実施例中で用いられるすべての材料は、他にことわらなければAldrich Chemical Co.(Belgium)及びAcros(Belgium)のような標準的な供給源から容易に入手可能であった。
【0081】
用いられた水は脱イオン水であった。
【0082】
インキジェットMagentaTM EO2VP2621は、CLARIANTから入手可能なPigment Red 122である。
【0083】
AAはAcrosからのアクリル酸である。
【0084】
MAAはAcrosからのメタクリル酸である。
【0085】
MMAはAcrosからのメチルメタクリレートである。
【0086】
BnMAはAcrosからのベンジルメタクリレートである。
【0087】
BuAはAcrosからのn−ブチルアクリレートである。
【0088】
BuMAはAcrosからのn−ブチルメタクリレートである。
【0089】
MPEGMAはBisomerTM MPEG 350MAの商品名の下におけるCo
gnis Performance Chemicalsからのメトキシポリエチレングリコール 350メタクリレートに関する略語である。
【0090】
EHAはAcrosからの2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0091】
STYはAcrosからのスチレンである。
【0092】
LCMAはFlukaからのデシルメタクリレートである。
【0093】
WAKOTM V601は、Wakoからの開始剤2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エチルアゾ)−2−メチル−プロピオン酸メチルエステルである。
【0094】
IPAはLamers & Pleugerからのイソプロパノールである。
【0095】
α−MSTYはGoi Chemical Coからのα−メチルスチレンダイマーである。
【0096】
測定法
1.SSF係数
スペクトル分離係数SSFは、最大吸光度Amax(波長λmaxにおいて測定される)対λmax+200nmの参照波長において決定される吸光度Arefの比率として計算された。
【0097】
吸光度は、Hewlett Packard 8452A Diode Array分光光度計を用い、透過において決定された。0.005%の顔料濃度を有するようにインキを希釈した。希釈されたインキのUV−VIS−NIR吸収スペクトルの分光光度測定は、表1の設定を用い、複光束分光光度計を用いて透過−様式で行われた。10mmの路長(path length)を有する石英セルを用い、ブランクとして水を選んだ。
【0098】
【表1】

【0099】
狭い吸収スペクトル及び高い最大吸光度を示す有効な着色インキジェットインキは、少なくとも30のSSFに関する値を有する。
【0100】
2.分散安定性
80℃における1週間の熱処理の前後でSSFを比較することにより、分散安定性を評価した。優れた分散安定性を示す着色インキジェットインキは、熱処理後でもまだ30より大きいSSF及び好ましくは20%より小さいSSFにおける%減少を有する。
【0101】
3.ポリマー分析
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)及び核磁気共鳴分光分析(NMR)を用いてす
べてのポリマーを特性化した。ランダムもしくはブロックコポリマーをジューテリウム化溶媒中に溶解することにより、NMRを用いてそれらを分析した。H−NMRのために、±20mgのポリマーを0.8mLのCDCl又はDMSO−d6又はアセトニトリル−d3又はDO(NaODを加えたかもしくは加えない)中に溶解した。ID−プローブが備えられたVarian Inova 400MHz測定器上でスペクトルを記録した。13C−NMRのために、±200mgのポリマーを0.8mLのCDCl又はDMSO−d6又はアセトニトリル−d3又はDO(NaODを加えたかもしくは加えない)中に溶解した。SW−プローブが備えられたVarian Gemini2000 300MHz上でスペクトルを記録した。
【0102】
ゲル透過クロマトグラフィーを用いてM、M、M及び多分散性(pd)の値を測定した。有機溶剤中に溶解可能なポリマーの場合、移動相としてTHF+5%酢酸を用い、キャリブレーション標準として既知の分子量を有するポリスチレンを用いて、PL−混合Bカラム(Polymer Laboratories Ltd)を使用した。これらのポリマーを移動相中に1mg/mLの濃度で溶解した。水中に溶解可能なポリマーの場合、研究中のポリマーの分子量範囲に依存してPL Aquagel OH−60、OH−50、OH−40及び/又はOH−30(Polymer Laboratories Ltd)カラム組み合わせを用いた。移動相として、例えばリン酸水素二ナトリウムを用いてpH9.2に調整された水/メタノール混合物を、中性塩、例えば硝酸ナトリウムを添加してかもしくはせずに使用した。キャリブレーション標準として、既知の分子量を有するポリアクリル酸を用いた。水中又は水酸化アンモニウムを用いて塩基性にされた水中に、1mg/mLの濃度でポリマーを溶解した。屈折率検出を用いた。
【0103】
ここで、ランダム(random)(=ランダム(statistical))コポリマーP(MAA−c−EHA)の平均組成の計算を示す例を与える。
コポリマーのMnは、GPCを用いて5000であると決定された。
各モノマー型のモルパーセンテージは、MNRにより:45モル% MAA及び55モル% EHAであると決定された。
【0104】
計算:
(0.45xMMAA)+(0.55xMEHA)=140.09
5000/140.09=平均ポリマー鎖中のモノマー単位の合計数=36
MAA単位の平均数=0.45x(5000/140.09)=16単位
EHA単位の平均数=0.55x(5000/140.09)=20単位
かくして平均組成はP(MAA16−c−EHA20)である。
【0105】
4.粒度
着色インキジェットインキ中の顔料粒子の粒度を、着色インキジェットインキの希釈された試料につき、光子相関分光法により4mW HeNeレーザーを用いて633nmの波長において決定した。用いられた粒度分析器は、Goffin−Meyvisから入手可能なMalvernTM nano−Sであった。
【0106】
1.5mLの水を含有するキュベットに1滴のインキを加え、均一な試料が得られるまで混合することにより、試料を調製した。測定される粒度は、20秒の6回の実験から成る3回の連続的測定の平均値である。優れたインキジェット特性(噴射特性及びプリントの質)のために、分散粒子の平均粒度は好ましくは150nmより小さい。
【0107】
実施例1
この実施例は、長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含有する着色マゼンタインキジェットインキの高い質、すなわち広い色域(高いSSF)及び高い安定性を示す。
【0108】
ランダムコポリマーの合成
種々の組成を有するポリマー性分散剤POL−1〜POL−8を合成した。ポリマー性分散剤POL−6〜POL−8は、長脂肪族鎖メタクリレート(LCMA)を含有した。
【0109】
【表2】

【0110】
ポリマー性分散剤POL−6、すなわちランダムコポリマーP(AA−c−BuA−c−MMA−c−LCMA)に関して合成を例示する。
250mlのフラスコに以下の成分を連続的に加えた:
0.10g WAKOTM V601開始剤、104.79g IPA、14.94g アクリル酸、20.33g ブチルアクリレート、5.74g メチルメタクリレート、3.99g デシルメタクリレート及び0.10g α−メチルスチレンダイマー。フラスコへの添加の後、混合物を攪拌し、溶液を介して窒素ガスを30分間泡立てた。次いで反応混合物を80℃に加熱し、その温度でそれを20時間保持した。20時間後、反応混合物を20℃に冷却し、氷−水(1500ml)中に沈降させ、濾過した。残留物を真空下に35℃において48時間乾燥した。これは27.38gの白色の固体を生じた(約60%の収率)。
GPCを用いるポリマー性分散剤POL−6の特性化は、Mn=2387及びMw/Mn=2.29の結果を与え、13C−NMRを用い、組成は:44モル% AA、36モル% BuA、15モル% MMA及び5モル% LCMAから成ると分析された。
【0111】
POL−6に関して記載したと類似の方法で、しかし表2により与えられる量を用いることにより、ポリマー性分散剤POL−1〜POL−5、POL−7及びPOL−8を製造した。得られるポリマー性分散剤の組成を表3により示し、それらはポリマー性分散剤POL−3、POL−4及びPOL−6〜POL−8の場合には13C−NMRの使用により、そしてポリマー性分散剤POL−1、POL−2及びPOL−5の場合にはH−NMRの使用により決定された。
【0112】
【表3】

【0113】
ポリマー性分散剤POL−9として、MUENZING CHEMIEから入手可能なEDAPLANTM 482を使用した。EDAPLANTM 482は、約6モル%の長脂肪族鎖メタクリレート(LCMA)を含有した。
【0114】
着色マゼンタインキジェットインキの調製
同じ2段階により、着色マゼンタインキジェットインキのそれぞれを調製した。第1段階に、顔料インキジェットMagentaTM、ポリマー性分散剤及び水を、表4の配合に従って60mLのフラスコ中で混合することにより、濃厚水性顔料分散系を調製した。
【0115】
【表4】

【0116】
各濃厚水性顔料分散系を、ローラーミル及び0.04mmのイットリウム安定化ジルコニウムビーズYTZTM Grinding Media(TOSOH Corp.から入手可能)を用いて湿式分散処理に供した。フラスコをその容積の半分まで磨砕ビーズで満たし、ローラーミル上に置く。3日間、速度を分当たり150回転に設定する。磨砕の後、濾布を用いて分散系をビーズから分離する。
【0117】
濃厚水性顔料分散系は、着色インキジェットインキの調製のための基剤として働いた。インキの合計重量に基づく重量%で表される表5の一般的配合に従って成分を混合することにより、インキジェットインキを調製した。
【0118】
【表5】

【0119】
評価
上記の方法を用い、表6に従って比較着色インキジェットインキCOMP−1〜COMP−6及び本発明の着色インキジェットインキINV−1〜INV−3を調製した。調製の直後に各試料に関してスペクトル分離係数(SSF)を決定し、且つ80℃における1週間の過酷な熱処理の後に再びそれを決定した。結果を表6に挙げる。
【0120】
【表6】

【0121】
表6から、長脂肪族鎖メタクリレートを含まないランダムコポリマーを用いて調製された比較着色インキジェットインキCOMP−1〜COMP−5は、質の低いインキジェットインキであったことが明らかである。着色インキジェットインキは小さいSSF(30より小さい)を示したか、又はそうでない場合、高いSSFを示すが80℃における1週間の老化試験の後に安定性を有していなかった。本発明の着色インキジェットインキINV−1〜INV−3は、高い画質及び高い分散安定性を合わせ持っていた。しかしながら、10モル%より多いデシルメタクリレートを含有する組成を有するポリマー性分散剤POL−8を含有する着色インキジェットインキも劣った画質を示した。
【0122】
実施例2
この実施例は、長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含有するポリマー性分散剤が優れた分散安定性を有するのみでなく、着色インキジェットインキの分散媒の組成における変化に比較的敏感でもないことを示す。これらの変化は、例えば開放インキ容器中で、又はインキジェットプリントヘッドのノズルプレートにおいて、インキジェットインキ中の揮発性成分の蒸発が許される場合に起こり得る。着色インキジェットインキの分散媒における
組成を変えるために、1,2−ヘキサンジオールを用いた。
【0123】
実施例1のために調製された比較着色インキジェットインキCOMP−5及びCOMP−6ならびに本発明の着色インキジェットインキINV−1及びINV−2を5重量%の1,2−ヘキサンジオールで希釈することにより、それぞれ比較着色インキジェットインキCOMP−7及びCOMP−8ならびに本発明の着色インキジェットインキINV−4及びINV−5を調製した。
【0124】
評価
比較着色インキジェットインキCOMP−5〜COMP−8ならびに本発明の着色インキジェットインキINV−1、INV−2、INV−4及びINV−5のそれぞれに関する平均粒度を決定し、表7に示す。
【0125】
【表7】

【0126】
表7から、本発明の着色インキジェットインキINV−1、INV−2、INV−4及びINV−5のみが、1,2−ヘキサンジオールの低もしくは高濃度を有する両分散媒中で150nmより小さい分散粒子の平均粒度を示すことが明らかである。
【0127】
実施例3
この実施例は、本発明に従うポリマー性分散剤を含んでなるインキが優れた分散の質を示す着色インキジェットインキセットを示す。
【0128】
インキジェットインキセット
水性着色インキジェットインキセットは7種のカラーインキ、すなわち3種のライト濃度(light density)インキ、すなわちライト(light)シアン、ライトマゼンタ及びライトブラックインキで完全なものにされたシアン、イエロー、マゼンタ及びブラックフル濃度(full density)インキから成る。
【0129】
インキジェットインキ組成物は実施例1におけると同じ方法で調製され、インキの合計重量に基づく重量%におけるインキジェットインキ組成を表8及び表9に示す。同じ色の濃インキ及び希インキは、同じ濃厚顔料分散系を異なる量のインキ担体液で希釈することから得た。
【0130】
【表8】

【0131】
【表9】

【0132】
インキセットの各インキに関してスペクトル分離係数(SSF)を決定した。結果を表10に挙げる。
【0133】
【表10】

【0134】
ブラックインキジェットインキの分散の質を粒度測定により評価した。動的光散乱の原理に基づくBrookhaven Instruments Particle Sizer Bl90plusを用いて平均粒度を測定した。インキジェットインキを2,000〜20,000倍に希釈し、Bl90plusをグラフィック(graphics)=補正関数(correction function)に設定して90の角度及び635nmの波長で23℃における5回の実施(run)を測定した。
【0135】
フル濃度及びライト濃度ブラックインキジェットインキの両方においてブラック顔料は微粉砕され、ブラックインキに関して81nm及びライトブラックインキに関して84nmの平均粒度を有した。
【0136】
インキジェットインキセットを用いて印刷される画像は優れた質のものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及びポリマー性分散剤を含んでなる着色インキジェットインキであって、該ポリマー性分散剤は3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含んでなるランダムコポリマーであり、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有する着色インキジェットインキ。
【請求項2】
該長脂肪族鎖(メタ)アクリレートがデシル(メタ)アクリレートである請求項1に従う着色インキジェットインキ。
【請求項3】
該ポリマー性分散剤が少なくとも25モル%のn−ブチル(メタ)アクリレートをさらに含んでなる請求項1又は2に従う着色インキジェットインキ。
【請求項4】
該ポリマー性分散剤が少なくとも25モル%の(メタ)アクリル酸をさらに含んでなる請求項1〜3のいずれかに従う着色インキジェットインキ。
【請求項5】
該ポリマー性分散剤が少なくとも5モル%のメチル(メタ)アクリレートをさらに含んでなる請求項1〜4のいずれかに従う着色インキジェットインキ。
【請求項6】
該ポリマー性分散剤が50000より小さいMwを有する請求項1〜5のいずれかに従う着色インキジェットインキ。
【請求項7】
該顔料がキナクリドンである請求項1〜6のいずれかに従う着色インキジェットインキ。
【請求項8】
該キナクリドンがC.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment
Violet 19又はそれらの混合物である請求項7に従う着色インキジェットインキ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに従う少なくとも1種の着色インキジェットインキを含んでなるインキジェットインキセット。
【請求項10】
a)ポリマー性分散剤として3〜11モル%の長脂肪族鎖(メタ)アクリレートを含んでなるランダムコポリマーを準備し、ここで長脂肪族鎖は少なくとも10個の炭素原子を含有し;
b)顔料を準備し;そして
c)該ポリマー性分散剤の存在下に、分散媒中で該顔料を沈降させるか又は磨砕する
段階を含んでなる着色インキジェットインキの調製方法。

【公表番号】特表2008−536990(P2008−536990A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507044(P2008−507044)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061219
【国際公開番号】WO2006/111462
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507253473)アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (21)
【Fターム(参考)】