説明

長鎖ジカルボン酸から製造されるポリアミドおよび該ポリアミドの製造方法

式(I):HO-[OC-(CH)-CH=CH-(CH)-CONH-(CH)NH]H〔式中、mは4〜20の整数であり、nは30〜10,000の整数である。〕;式(II):HO-[OC-(CH2x-2y)-CONH-(CH2a-2b)NH]H〔式中、nは30〜10,000の整数であり、aおよびxは、それぞれ、6〜32の値を表し、bおよびyは、それぞれ、0〜12の値を表す。〕;式(III):HO-{[OC-(CH)16-CONH-(CH)NH]-[CO-CH-CONH-(CH)NH]}a+b-H〔式中、a+b=n;a、b、nは整数であり;nは30〜10,000の整数を表す。〕;および式(IV):HO-{[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R4--NH]y-[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R3--NH]}-H〔式中、RおよびRは、4〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪族であり;RおよびRは、6〜20個の炭素原子鎖を有する芳香族であり;a、b、m、n、およびc、d、xおよびyは整数であり、c+d+x+y=a+b=m+nであり、30〜10,000である。〕で示されるポリアミドを提供する。該ポリアミドの製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してポリアミド、より好ましくは生物酸化を介して長鎖ジカルボン酸から製造されるポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
9個以上の炭素原子を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸(二酸)は、例えば、プラスチックやポリマー形成、および香料や接着剤に使用される他の特定の化学物質のような種々の化学製品の合成の中間体として使用し得る。
【0003】
二酸は、現在、主に再生不能な石油化学原料を用いて、非生物学的な転換プロセスにより製造されている。多段階化学的転換プロセスは、一般的に、収率損失を生じ、環境中へ放出する前に分解しなければならない望ましくない有害な副生成物を生じる。有害廃棄物の処理は高価となることがあり、製造コストを増加させる。
【0004】
さらに、長鎖二酸の有機化学的合成は使用する出発物質により制限されるため、各化学合成プロセスは1種類の二酸のみを生成する。例えば、ドデカン二酸は、多くの制限および重大な欠点を有する多段階化学的転換プロセスにより製造される。該合成における出発物質はブタジエン(4個の炭素の石油化学製品)であるため、合成される二酸は4個の炭素原子または4の倍数個の炭素原子を有する二酸のみである。しかしながら、実際には、経済的理由および生産性の理由により、ドデカン二酸のみがこの方法によってブタジエンから生成される。現在のところ、ドデカン二酸は、工業的化学合成プロセスを使用して入手し得る最も長い直鎖状二酸である。しかしながら、該プロセスは、シクロオクタジエンおよびビニルシクロヘキセンを含む望ましくない副生成物を生じ、収率損失を生じる。また、該プロセスは、大気中へ放出され得るか還元炉にて破壊され得る窒素酸化物も生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、9〜12個の炭素原子の長さの3つの二酸のみがポリマー用途のために入手可能であり、それらの全ては化学的合成を介して製造される。12個を超える炭素原子を有するポリマーグレード二酸の製造に対して、化学的合成の使用は商業的に実施できない。二酸は、アルカンおよび脂肪酸の微生物酸化により製造し得るが、その高い製造コストおよび既存の二酸供給品の低い純度により、商業化は制限されている。
【0006】
二酸は、モノマーとしてジアミンとの反応において使用することができ、ポリアミドを形成する。ポリアミドは、60年以上の間開発されている。ポリアミドおよびコポリアミドは、最も広く使用されるエンジニアリング樹脂の1つである。ポリアミド原料は、例えば、歯ブラシ、研磨ブラシおよび絵筆を含むブラシ用途などの様々な用途に使用されている。これらの用途には、良好な耐湿性、耐摩耗性および疲労抵抗が要求される。さらに、これらの用途には、原料の溶剤に対する抵抗性を示すことも要求される。
【0007】
ポリアミド原料は、酸素、二酸化炭素および湿気に対する適当なバリア特性が要求される食品、医薬品および化粧品の包装に使用することができる。いくつかの用途、例えば血液を輸送するためのバッグにおいては透明性が要求される。現在使用される1つの物質はポリビニルクロリド(PVC)であるが、PVCにおいて使用される可塑剤は、内容物を汚染し得る。
【0008】
ポリアミドおよびコポリアミドの特性改善の必要性は残っており、また、PVCの代替品に対する必要性も残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡潔に述べると、本発明の態様によれば、一般式(I):
HO-[OC-(CH)-CH=CH-(CH)-CONH-(CH)NH]H (I)
〔式中、mは4〜20の整数であり、nは30〜10,000の整数である。〕
で示されるポリアミドが提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、一般式(II):
HO-[OC-(CH2x-2y)-CONH-(CH2a-2b)NH]H (II)
〔式中、nは30〜10,000の整数であり、aおよびxは、それぞれ、6〜32の値を表し、bおよびyは、それぞれ、0〜12の値を表す。〕
で示されるポリアミドが記載される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、一般式(III):

〔式中、a+b=n;a、b、およびnは整数であり;nは30〜10,000の整数を表し、xは6〜32の値を表し、yは0〜12の値を表す。〕
で示されるポリアミドが記載される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、一般式(IV):
HO-{[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R4--NH]y-
[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R3--NH]}-H (IV)
〔式中、RおよびRは、4〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪族であり;RおよびRは、6〜20個の炭素原子鎖を有する芳香族であり;c、d、xおよびyは整数であり、c+d+x+yの合計は30〜10,000となる。〕
で示されるポリアミドも記載される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、反応器中で、等モル量のジカルボン酸とジアミンとを反応させること;真空により残気を除去し、Nでパージすること;および、副生成物、すなわち水を除去する間、真空下、250〜350℃で反応混合物を加熱する工程を含むポリアミドの製造方法も提供する。重合度は、分子量または粘度により調整する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の態様により調製されたポリアミドの特性を示す。
【図2】図2は、本発明の態様により調製されたポリアミドの特性を示す。
【図3】図3は、本発明の態様により調製されたポリアミドの特性を示す。
【図4】図4は、本発明の態様により調製されたポリアミドの特性を示す。
【図5】図5は、本発明の態様により調製されたポリアミドの特性を示す。
【図6】図6は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図7】図7は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図8】図8は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図9】図9は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図10】図10は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図11】図11は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図12】図12は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図13】図13は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図14】図14は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図15】図15は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図16】図16は、図1〜15のポリアミドの熱特性を示す。
【図17】図17は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図18】図18は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【図19】図19は、本発明の態様により調製された他のポリアミドの特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される用語「含む(Comprises、Comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」またはそれらの全ての変化形は、他の要素または成分を含んでもよいということを意味する。例えば、多数の要素を含む方法(process、method)、物(article)または装置(apparatus)は、はっきりと記載された要素に限定される必要はなく、そのような方法、物または装置の本来固有の要素または明確に記載されていない他の要素を含んでよい。さらに、反対にはっきりと言及されない限り、用語「または」は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」をさす。例えば、AまたはBは、以下のいずれかにあてはまる:Aが真実(含まれる)でありBは仮(省かれる);Aが仮(省かれる)でBが真実(含まれる);AとBのいずれもが真実(両者含まれる)。
【0016】
用語「a」または「an」は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは読解および本発明の一般的な意味を提供するための便宜のため使用される。「a」または「an」の使用は、1つまたは少なくとも1つを含むものと理解されるべきである。さらに、反対に言及されない限り、単数も複数も含む。例えば、「化合物」を含む組成物は、少なくとも1つ以上の化合物を含むことをいう。
【0017】
ポリアミドは、長鎖(少なくとも18個の炭素原子)不飽和または飽和ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンの反応により調製される。二酸は、生物酸化経路を介して製造される。該生物酸化経路は、Candida tropicalis酵母の菌株を使用してオレイン酸を発酵させ、18個の炭素原子を有する二塩基酸を製造することによる方法である。発酵工程終了後、発酵ブロスから二塩基酸を取り除き、本発明の態様によるポリアミドのブロックを構成するモノマーとして使用する最終生成物へ精製する。この生物酸化プロセスを介したC18二酸の製造方法は、米国特許第6,569,670に記載され、この全ての内容はここに参照により組み込まれる。その要約は以下のとおりである。
【0018】
発酵培地は、種々のタイプの有機物質の生物転換を促進し、下記の成分を含む:(i)代謝可能な炭素およびエネルギー源;(ii)無機窒素源;(iii)リン酸源;(iv)アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属、および(v)実質的に粒子状物質およびバクテリアを含まないビオチン。
【0019】
適当な代謝可能な炭素およびエネルギー源には、限定されないが以下のものが含まれる:グルコース、フルクトース、マルトース、グリセロール、酢酸ナトリウム、メタノール、短鎖アルコールおよびそれらの混合物。適当な窒素源には、限定されないが以下のものが含まれる:硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムを含むアルカリ金属硝酸塩、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムおよび酢酸アンモニウムを含むアンモニウム塩。適当なリン酸源には、全てのリン酸塩含有化合物、例えばリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸アンモニウムなどが含まれる。発酵培地に使用する適当な金属には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびそれらの混合物を含む。発酵培地の残りの成分はビオチンであり、それらは、臭気発生、色彩不安定性および汚染に関する問題を回避するために実質的に粒子状物質およびバクテリアを含まない。
【0020】
発酵培地に存在する水は、蒸留、脱イオン化または軟化により精製された加工水であってよい。適当な水源には、都市水道蒸留システム、プロセスリサイクル流、または井戸水からの水であって、鉱物量の調整においては、これらの水源にすでに含まれる鉱物を考慮する必要があり得る。例えば、他の必須成分に含まれる水は、すでに十分な鉱物成分を含み、生物の増殖のために必要な全てまたは実質的に全ての鉱物を供給し得る。
【0021】
生物発酵プロセスをさらに促進させるために、発酵培地に、例えば種々の微量金属、キレート剤および抑泡剤などの種々の補助成分を含んでよい。
【0022】
本発明の態様に使用する二酸の製造方法は、微生物が増殖でき、所望の転換反応を触媒し得る全てのpH域で行い得る。適当なpH域は約7未満である。適当なpH調整剤は、アンモニア、水酸化アンモニウム溶液、濃縮カリウムまたは水酸化ナトリウムである。該方法で使用される補基質は、発酵性糖質、例えばグルコース、フルクトースまたはマルトース、あるいは他の発酵性有機化合物、例えばグリセロール、酢酸ナトリウム、メタノール、短鎖アルコール、またはそれらの混合物である。
【0023】
バイオマスを増殖させるために用いられる炭素およびエネルギー源が、酸化転換反応を行うために用いる補基質と同じである場合、それは便利であるが必ずしも必要ではない。実際の利点は、取り扱う必要のある原料が少なく、発酵の様々な段階をより統合し得ることである。例えば、単一補基質殺菌および輸送系を、バイオマスを産出させるための炭素およびエネルギー源と酸化反応を行うための補基質の両者を輸送するために使用することができる。
【0024】
本発明の態様の方法に使用し得る微生物には、1つ以上のアシルCoA酸化酵素遺伝子の失活または欠損によりβ酸化が部分的または完全に中断される任意のCandida株が含まれる。
【0025】
アルカンまたは脂肪酸を炭素源として培養する場合に、α、ω−ジカルボン酸を副生成物として分泌することが知られている酵母株は、米国特許第5,254,466に明記されており、ここに参照により全内容を組み込む。これらの株は、部分的または完全な酸化ブロック型株であり、すなわち、染色体POX4A、POX4Bおよび両POX5遺伝子が破壊されるように遺伝子組み換えされている。この株の基質フローは、POX遺伝子破壊による競合β−酸化経路の機能的失活の結果、ω−酸化経路を変える。完全な酸化ブロック型株は、米国特許第5,254,466に記載されるようなC. tropicalis株、株H5343(ATCC 20962)である。
【0026】
他の適当な株は、1つ以上の増幅還元酵素遺伝子を含み、その結果、P450遺伝子増幅を介して律速ω−ヒドロキシラーゼ量の増加およびω−酸化経路を介して基質フローの速度の増加を生じる株である。脂肪酸の酸化に重要であることが知られている酵素の量を選択的に増加する株は、CYPおよびCPR遺伝子の増加コピーを含み、それらはω−ヒドロキシラーゼ複合体の生成に関与していることが分かっており、酸化経路の第1段階を触媒する。株HDC1は、株H5343のゲノムに集約されるCYP52A2Aの複数コピーを含む株の一例である。該株および類似株は、1998年5月1日に出願された暫定出願第60/083,798、現米国特許第6,331,420と7,049,112および7,063,972に記載されている。これらの全内容をここに参照により組み込む。本発明の方法に使用し得る他の株は、国際出願第PCT/US99/20797に記載されるようなCandida tropicalis株HDC1、HDC5、HDC10、HDC15、HDC20、HDC23、HDC23−1、HDC23−2およびHDC23−3である。これらの全内容をここに参照により組み込む。
【0027】
発酵方法は、有機基質および補基質の両方の源としてトリグリセリド脂肪または油を利用することにより変更することができる。発酵ブロスとともに処方されるリパーゼは、脂肪または油を加水分解(開裂)させて脂肪酸およびグリセリンとする。生物体によるグリセリン消費は、開裂反応を終了させるためにはたらき、一方、遊離脂肪酸をそれぞれ対応する二塩基酸に転換するために必要なエネルギーを供給する。オレオ特異性のあるリパーゼが特に適当である。オレオ特異性リパーゼは、高オレイン酸含量を有するトリグリセリドについて高い選択性を示し、オレイン酸エステル基の加水分解を触媒する。そのようなオレオ特異性リパーゼの例は、Pseudomonas sp、Humicola lanuginosa、Candida rugosa、Geotrichum candidum、およびPseudomonas(Burkholderia)により生成されるリパーゼを含むが、それらに限定はされない。特に適当なリパーゼは、米国特許第5,470,741に記載される(ここに全内容は参照により組み込まれる)ようなGeotrichum candidum ATCC No. 74170由来のUNリパーゼである。
【0028】
増殖期において、迅速対数増殖期にあるβ−酸化ブロック型Candida tropicalis株のようなβ−酸化ブロック型微生物の活性培養物により培地は接種される。培地のpHは、例えば水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたはアンモニアガスのような塩基の添加により調整される。発酵槽への補基質の添加は、転換期中の流加であってよい。対数増殖期の終了は、グルコースの枯渇、溶解酸素の急激な増加およびオフガス酸素の急激な増加ならびにオフガスCOの減少により特徴付けられる。
【0029】
基質が酸化される転換期は、誘導剤および酸化可能なメチル基を含む基質を添加することにより開始される。転換期の間、発酵ブロスのpHは2〜7の範囲である。発酵は、約26℃〜約40℃の温度で行われ得る。
【0030】
本発明の態様によると、適当なジカルボン酸には、限定はされないが以下のものが含まれる:1,18−9−オクタデセン二酸(1,18-octadecenedioic-9 acid)および1,18−オクタデセン二酸(1,18-octadecenedioic acid)。他の適当なジカルボン酸には、1,16−ヘキサデセン二酸(1,16-hexadecenedioic acid)が含まれる。本発明による適当な芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソテレフタル酸およびそれらの混合物である。しかしながら、好ましい二酸は、非芳香族二酸、特に生物酸化プロセスにより調製されるものである。
【0031】
二酸は、対応する単酸から出発し生物酸化プロセスを介して製造される。例えば、18個の炭素原子を有する二酸は、18個の炭素原子と同じ不飽和(または飽和)度を有する単酸から、生物酸化発酵プロセスを介して製造される。
【0032】
本発明の他の態様によると、適当なジアミンにはヘキサメチレンジアミンが含まれる。他の適当なダイマージアミンは、式HN−R−NH〔式中、Rは6〜10個の炭素原子を有する芳香族基またはアルキル基である。〕で示される化合物を含む。
【0033】
有利には、重合の間反応部(不飽和)は保持され、さらなる反応をし得る。さらなる反応または適応の例としては、ポリマー表面化学修飾および架橋が含まれる。例えば、二重結合は、HまたはOによりエポキシ化され得、EOまたは他の官能基とさらなる反応をし得るOH基に転換される。
【0034】
本発明の他の態様によると、ポリアミドの製造方法は、以下の工程を含む。反応器中で、等モル量の、18個の炭素原子を有するジカルボン酸とジアミンとを反応させる。真空により残気を除去した後、Nで反応器をパージし、反応混合物を真空下、250〜350℃の温度に加熱する。反応が完了した時(所望の分子量または粘度に達した時)、反応生成物を取り出し、所望の型に流し込む、または繊維にする。
【0035】
本発明の態様によるポリアミド形成の一般的な反応スキームは、以下のように示すことができる:

〔式中、nは30〜10,000の整数であり、x=6〜32、bおよびyは0または1〜12である。〕
【0036】
1,18−9−オクタデセン二酸およびヘキサメチレンジアミンを使用することによるナイロン6,18:1を形成するさらに特異的な反応スキームは、以下のように示すことができる:

〔式中、nは30〜10,000の整数である。〕
副生成物、水を、反応中に真空により除去する。
【0037】
本発明の他の態様において、反応スキームの一例を以下のように示すことができる:

〔式中、a+b=n;a、b、nは整数である;nは30〜10,000の整数である。〕
【0038】
本発明の他の態様において、長鎖二酸またはジアミンおよび芳香族成分は以下のように示すことができる。

〔式中、RおよびRは、4〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪族であり;RおよびRは、6〜20個の炭素原子鎖を有する芳香族;c、d、xおよびyは整数であり、x+y+c+dの合計は30〜10,000である。〕
【0039】
ナイロンは、長鎖ジカルボン酸(飽和および/または不飽和)およびジアミンから調製され得る。芳香族二酸および/またはジアミンを含むことは、結晶度、ガラス転移温度(T)および他の特性を変化させ、主な利点としては光学的な透明度が挙げられる。長鎖ジカルボン酸を使用して上述した生物酸化により製造されたナイロンまたは他のポリアミドは、長鎖ジカルボン酸を使用して一般的な化学的方法により製造されたポリアミド、特にナイロンより、高い透明度を示す。光学的に透明なポリアミドは、医療用途および食品包装に使用し得る。
【0040】
芳香族モノマー、例えば二酸またはジアミンを含むことは、弾性率および融点(T)を増加させ得る。
【0041】
(上述したような)代謝的に操作された株Candida tropicalisを、脂肪族炭素鎖の末端にある末端メチル基を酸化するために使用し得る。該方法を使用することにより、安価なアルカンおよび脂肪酸からの二酸の収率は、著しく促進され、かつ産出される二酸はポリマー産業の厳しい仕様要求に適合する高品質の二酸である。
【0042】
本発明の態様によれば、生物転換を使用する二酸の製造は、現在の化学的合成法のいくつかの欠点を克服する。全ての生物的転換方法に内在する利点は、プロセスのための出発原料として石油化学製品よりも再生可能資源を使用する能力であり、有害廃棄物をも生じない化学物質を生産する能力である。例えば、二酸を、例えば大豆油、獣脂、トウモロコシ油およびトール油のような再生可能な農作物および林産物から容易に入手できる安価な長鎖脂肪酸から、上述するような危険な廃棄物を生じることなく製造することができる。
【0043】
生物学的プロセスを用いた二酸の製造には、1つの工程のみが必要である。さらに、生体触媒が様々な出発原料に対応するため、生物転換プロセスを広範囲の二酸の製造に容易に適応させることができる。したがって、生物転換方法は、従来、化学合成法によっては入手することができなかった種々の長さの二酸を製造し得る。
【0044】
生体触媒は、長い炭素鎖長を有する二酸を製造し得る。16または18個の炭素原子を有する二酸を、生物酸化プロセスを使用して製造し得る。より長い炭素鎖の二酸は、12個の炭素原子を有する二酸より、低い二酸の濃度でポリアミドおよびポリエステルにおける溶融粘度を低下するのに有効であり、そのため使用に対してより経済的である。一方で、先行後術を使用することでは、これらの長鎖二酸を商業的に製造することはできず、現在、広範囲の使用に利用することはできない。
【0045】
生物学的転換プロセスは、従来利用可能な化学的プロセスに比べてより低コストで二酸を製造する可能性を有している。そのために、全ての生物工学的プロセスは、出発原料として安価で容易に入手し得る有機物質を利用することができなければならず、これらの物質を高効率で所望の二酸生成物に転換することができなければならない。
【0046】
長鎖脂肪族二酸の製造方法のための生物学的転換プロセスは、バッチ式発酵により行われる。バッチ式発酵プロセスは、2つの段階:増殖および転換(または変換)からなる。増殖期は、栄養培地を含むバッチ式発酵槽に酵母生体触媒を植菌することにより開始される。プロセスの増殖期の間、細胞は、細胞のタイプと培地の栄養素を含む、多くの要因に依存した細胞密度まで大きくなる。増殖は、バッチ式発酵槽において選択された条件下、選択された期間または選択された細胞密度に達するまで続く。この時、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはアルカン基質を加え、転換期を開始し、所望の生成物を形成する。転換の間、過剰な基質が常に維持される。酵母のためのエネルギー源を供給するため、グルコースのような炭素源(補基質)も転換期の間加えられる。転換が終了する時、酵母バイオマスを発酵培地から分離し、二酸生成物を溶液から回収し精製する。
【0047】
本発明の他の態様によれば、長鎖二酸を脂肪ジアミンに転換することができ、得られるジアミンを脂肪族または芳香族二酸と反応させる。例えば、18個の炭素原子を有する二酸をNHと反応させ、アンモニウム塩を形成する。アンモニウム塩を脱水し、18個の炭素原子を有する二窒化物を形成する。その後、水素化処理により二窒化物を1,18ジアミンに転換する。
【0048】
1つの態様において、18炭素の脂肪族ジアミンを芳香族二酸と反応させポリアミドを形成させてもよい。例えば、C18ジアミンをテレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物と反応させることができる。この結果、耐熱性および機械特性が改良される。
【0049】
調製されたポリアミドサンプルは、2,18;3,18;4,18;6,18;8,18;9,18;およびナイロン6/6,18コポリマー(0〜100%)である。有利なことに、1,18ジカルボン酸から調製されたナイロン、特にナイロン6,18および6/6,18は、現在入手可能な物質と比較して、改善された吸湿性、摩耗性および疲労抵抗を示した。したがって、1,18ジカルボン酸から調製されるナイロンは、例えば、歯ブラシ、研磨ブラシおよび絵筆や他のブラシ用途などの使用に適している。
【0050】
さらに、調製されたポリアミドは、透明であり、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)との良好な接着性を有する。ポリアミドのこの特性は、個々または他の材料との組み合わせかどうかに関係なく、食品、医薬品および化粧品用途における包装材料としての使用に適したものにする。
【0051】
長鎖二酸の適用には、食品および医薬包装用のナイロンエンジニアリングプラスチック、ナイロンファイバー、ナイロンフィルム、ポリアミドおよびポリエステルホットメルト接着剤、グリシジルメタクリレート(GMA)、粉末塗料、架橋剤、潤滑油基材、グリース、および腐食防止剤、ポリウレタンならびに化粧品などが含まれる。
【0052】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似のまたは同じ方法および原料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適当な方法および原料は以下に記載する。本明細書で開示される原料、方法および実施例は実例であって限定することを目的とするものではない。
【0053】
本発明は、特定の実施態様に関して記載されている。しかしながら、特許請求の範囲に示される発明の範囲を逸脱することなく種々の修飾および変形がなされ得ることを、当業者は理解するであろう。したがって、本明細書は、制限的な見解よりむしろ例示態様であるとみなされるものであり、そのような全ての変形が本発明の範囲に含まれることを意図する。
【0054】
利益、利点および課題の解決は、特定の実施態様に関して上記に記載されている。利益、利点および課題の解決、ならびに全ての利益、利点、解決を生じ得るまたはより明確にし得るための全ての要素は、任意のまたは全ての請求項の重大なまたは必須の要素として解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
HO-[OC-(CH)-CH=CH-(CH)-CONH-(CH)NH]H (I)
〔式中、mは4〜20の整数であり、nは30〜10,000の整数である。〕
で示されるポリアミド。
【請求項2】
mが6〜18の整数である請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
一般式(II):
HO-[OC-(CH2x-2y)-CONH-(CH2a-2b)NH]H (II)
〔式中、nは30〜10,000の整数であり、aおよびxは、それぞれ、6〜32の値を表し、bおよびyは、それぞれ、0〜12の値を表す。〕
で示されるポリアミド。
【請求項4】
一般式(III):

〔式中、a+b=n;a、b、およびnは整数であり;nは30〜10,000の整数を表し、xは6〜32の値を表し、yは0〜12の値を表す。〕
で示されるポリアミド。
【請求項5】
一般式(IV):
HO-{[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R4--NH]y-
[OC-R-CONH-R-NH]-[CO-R-CONH-R3--NH]}-H (IV)
〔式中、RおよびRは、4〜22個の炭素原子鎖を有する脂肪族であり;RおよびRは、6〜20個の炭素原子鎖を有する芳香族であり;c、d、xおよびyは整数であり、c+d+x+yの合計は30〜10,000となる。〕
で示されるポリアミド。
【請求項6】
二酸部分が、直鎖状ジカルボン酸である、好ましくは生物酸化プロセスにより調製され、好ましくは不飽和直鎖状二酸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)から(IV)の1つで示されるポリアミド。
【請求項7】
ジカルボン酸部分が、ジカルボン酸分子中に18個の炭素原子を有する直鎖状不飽和二酸から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のポリアミド。
【請求項8】
ジカルボン酸が、1,18−9−オクタデセン二酸、1,18−オクタデセン二酸、1,16−ヘキサデセン二酸およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5または6に記載のポリアミド。
【請求項9】
(a)反応器中で、等モル量のジカルボン酸とジアミンとを反応させること;
(b)真空により残気を除去し、Nでパージすること;および
(c)真空下、250〜350℃で加熱する
工程を含んでなるポリアミドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−504539(P2011−504539A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535278(P2010−535278)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009974
【国際公開番号】WO2009/068242
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】