説明

閃絡表示器

【課題】地上において復旧できるとともに、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供すること。
【解決手段】閃絡表示器1は、鉄塔2の先端側に設置される表示部10と、表示部10に電気信号を供給する操作部30と、を備え、表示部10は、鉄塔2に固定される表示部本体110と、表示部本体110に収容された収容状態又は前記表示部本体から突出した突出状態の相互に移行可能な可動部材120と、可動部材120を可動させるモータ111を備え、操作部30は、鉄塔2への落雷前の通常状態又は鉄塔2への落雷後の復旧状態のいずれかを選択可能な切替部320を備え、通常状態が選択されたときに、可動部材120を収容状態から突出状態に移行可能とさせる突出電気信号を表示部10に供給し、復旧状態が選択されたときに、可動部材120を突出状態から収容状態に移行させる収容電気信号を表示部10に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閃絡表示器に関する。詳しくは、架空電線を支持する鉄塔に設置される閃絡表示器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、架空電線を支持する鉄塔には、当該鉄塔が被落雷鉄塔となったことを表示する閃絡表示器が設置されている。この閃絡表示器には、交換型の閃絡表示器と、再利用型の閃絡表示器とがある。
【0003】
交換型の閃絡表示器は、本体と、この本体の内部に収容された火薬及び表示物とを備え、鉄塔が雷撃を受けると、雷の衝撃電流により本体の内部に収容された火薬が爆発し、その爆発力により本体の内部から外部に表示物が飛び出す。
【0004】
また、再利用型の閃絡表示器は、本体と、この本体を開閉可能なフタと、フタを開放する方向に付勢するバネと、フタを本体に係止するストッパと、本体内部に収容された電撃検出器及び芯に巻かれた帯状の表示物とを備え、電撃検出器により電撃を検出するとストッパが外れ、バネによりフタが開き、本体の内部から外部に芯とともに表示物が飛び出し、帯状となって広がる。
【0005】
これらにより、鉄塔の管理者は、鉄塔に設置された閃絡表示器において、本体から表示物が飛び出ていれば、当該鉄塔が被落雷鉄塔となったことが分かる。
【0006】
鉄塔の管理者は、本体から表示物が飛び出ている鉄塔を発見した場合、当該鉄塔のメンテナンスを行い、このメンテナンスが終了したら、交換型の閃絡表示器であれば閃絡表示器を交換し、再利用型の閃絡表示器であれば帯状となって広がった表示物を芯に巻き本体内部に収容し、閃絡表示器を復旧させる。
【0007】
ところで、鉄塔は、様々な場所に設置されており、その下部が建物や木々に囲まれている場合もある。そこで、閃絡表示器は、鉄塔の管理者が遠方から上記表示物を視認できるように、鉄塔の上部に設置される。
よって、鉄塔の管理者は、閃絡表示器を交換又は復旧させる場合、閃絡表示器が設置されている所まで、鉄塔を登る必要があった。
【0008】
そこで、スプリングと牽引綱で表示部が出入りできる表示具本体を鉄塔の上部に設置し、この牽引綱の延出端を、鉄塔の下部に設置した電撃動作装置に係着させた閃絡表示器が提案されている(特許文献1)。
【0009】
特許文献1の閃絡表示器によれば、電撃動作装置は、雷の衝撃電流により本体の内部に収容された火薬が爆発し、その爆発力を機械的引っ張り力に変換し、牽引綱を引っ張る。すると、表示具本体では、牽引綱の引っ張り力とスプリングの作用により、表示部が飛び出す。そして、特許文献1の閃絡表示器では、閃絡表示器を復旧させる場合、鉄塔の下部に設置した電撃動作装置において、牽引綱の延出端を引き下げることで、表示部を表示具本体内部に収容できる。
よって、鉄塔の管理者は、閃絡表示器を復旧させる場合、鉄塔の下部に設置した電撃動作装置での作業により復旧できるので、鉄塔を登る必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平7−10379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の閃絡表示器では、鉄塔が雷撃を受け電撃動作装置が作動すると内蔵する火薬を使ってしまい再利用できないため、復旧させる場合、電撃動作装置を交換する必要があった。
【0012】
本発明は、地上において復旧できるとともに、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の閃絡表示器(例えば、閃絡表示器1)は、架空電線を支持する鉄塔(例えば、鉄塔2)に設置され、前記鉄塔が被落雷鉄塔であることを表示する閃絡表示器において、
前記鉄塔の先端側に設置される表示部(例えば、表示部10)と、前記表示部に電気信号を供給する操作部(例えば、操作部30)と、を備え、前記表示部は、前記鉄塔に固定される表示部本体(例えば、表示部本体110)と、前記表示部本体に収容された収容状態又は前記表示部本体から突出した突出状態の相互に移行可能な可動部材(例えば、可動部材120)と、前記可動部材を可動させる駆動部材(例えば、モータ111等)と、を備え、前記操作部は、前記鉄塔への落雷前の通常状態又は前記鉄塔への落雷後の復旧状態のいずれかを選択可能な切替部(例えば、切替部320)を備え、前記切替部において前記通常状態が選択されたときに、前記可動部材を前記収容状態から前記突出状態に移行可能とさせる突出電気信号を前記表示部に供給し、前記切替部において前記復旧状態が選択されたときに、前記可動部材を前記突出状態から前記収容状態に移行させる収容電気信号を前記表示部に供給することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、鉄塔の先端側に設置された表示部と、この表示部に電気信号を供給する操作部と、を備えた。そして、操作部は、切替部において鉄塔への落雷前の通常状態が選択されたときに、駆動部材により可動部材を収容状態から突出状態に移行可能とさせる突出電気信号を表示部に供給する。また、操作部は、切替部において復旧状態が選択されたときに、可動部材を突出状態から収容状態に移行させる収容電気信号を表示部に供給する。
【0015】
よって、鉄塔の管理者は、鉄塔の先端側に設置され、鉄塔に落雷したときに可動部材が突出する表示部により、当該鉄塔が被落雷鉄塔であることが分かる。
また、この表示部に電気信号を供給する操作部を、表示部とは別に設けた。
そして、この操作部は、切替部において通常状態が選択されていれば、例えば、鉄塔に落雷したときに、可動部材を突出させる突出電気信号を表示部に供給する。すなわち、操作部は、落雷時において表示部に可動部材を突出させる。
また、この操作部は、切替部において復旧状態が選択されたときに、駆動部材により可動部材を収容させる収容電気信号を表示部に供給する。すなわち、操作部は、復旧時において表示部に可動部材を収容させる。
【0016】
このように、表示部の可動部材を突出又は収容させる操作部を、例えば、地上近傍に設置することで、閃絡表示器を地上において復旧できる。また、操作部の切替部において、通常状態又は復旧状態を選択することで、表示部において駆動部材により可動部材を突出状態又は収容状態に移行できるので、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
【0017】
また、前記駆動部材は、回転軸(例えば、回転軸112)を回転させるモータ(例えば、モータ111)と、前記回転軸に固定されたピニオン(例えば、ピニオン113)と、を有し、前記可動部材に、前記ピニオンと係合し、前記表示部本体から突出する方向に沿って延びるラック(例えば、ラック121)を有し、前記操作部は、前記鉄塔の基端側に設置され、前記突出電気信号を供給する通常電源供給部(例えば、通常電源供給部340)を有する通常回路(例えば、通常回路341)と、前記収容電気信号を供給する復旧電源供給部(例えば、復旧電源供給部350)を有する復旧回路(例えば、復旧回路351)と、前記切替部において前記通常状態が選択されたときに前記通常回路に接続し、前記切替部において前記復旧状態が選択されたときに前記復旧回路に接続する切替スイッチ(例えば、切替スイッチ321)と、前記通常回路に設けられ、前記鉄塔への落雷を検知した場合に、前記通常回路を閉じる検知手段(例えば、検知手段330)と、を備え、前記通常電源供給部は、前記切替スイッチが前記通常回路に接続され、かつ前記検知手段により落雷が検知されたときに、前記突出電気信号として所定の極性の突出電流を前記モータに供給し、前記復旧電源供給部は、前記切替スイッチが前記復旧回路に接続されたときに、前記収容電気信号として前記所定の極性を反転した収容電流を前記モータに供給する。
【0018】
よって、鉄塔の基端側に設置された操作部は、切替スイッチが通常回路に接続され、かつ検知手段により落雷が検知されたときに、所定の極性の突出電流を表示部本体のモータに供給する。すると、モータは、回転軸及びピニオンに所定方向の回転力を加える。そして、ピニオンの回転力は、このピニオンと係合する可動部材のラックにより、このラックの延びる方向への水平移動力に変換される。すなわち、可動部材は、表示部本体から突出する方向に移動する。
一方、操作部は、切替スイッチが復旧回路に接続されたときに、所定の極性を反転した収容電流を表示部本体のモータに供給する。すると、モータは、回転軸及びピニオンに上記所定方向を反転した回転力を加える。これにより、可動部材は、表示部本体から突出する方向とは逆方向である表示部本体に収容される方向に移動する。
【0019】
このように、操作部を鉄塔の基端側に設置したので、閃絡表示器を地上において復旧できる。また、操作部の切替部において、通常状態又は復旧状態を選択することで、表示部の可動部材を突出状態又は収容状態に移行できるので、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
【0020】
また、前記操作部は、前記突出電気信号又は前記収容電気信号を電波にして前記表示部に供給する送信部(例えば、送信部730)をさらに備え、前記表示部は、前記表示部本体に、回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に固定されたピニオンと、を有し、前記可動部材に、前記ピニオンと係合し、前記表示部本体から突出する方向に沿って延びるラックを有し、さらに、前記操作部の前記送信部から供給された前記突出電気信号又は前記収容電気信号を受信する受信部(例えば、受信部630)と、通常電源供給部を有する通常回路と、復旧電源供給部を有する復旧回路と、前記受信部において前記突出電気信号を受信したときに前記通常回路に接続し、前記受信部において前記収容電気信号を受信したときに前記復旧回路に接続する切替スイッチ(例えば、切替スイッチ620)と、前記通常回路に設けられ、前記鉄塔への落雷を検知した場合に、前記通常回路を閉じる検知手段と、を備え、前記通常電源供給部は、前記切替スイッチが前記通常回路に接続され、かつ前記検知手段により落雷が検知されたときに、所定の極性の突出電流を前記モータに供給し、前記復旧電源供給部は、前記切替スイッチが前記復旧回路に接続されたときに、前記所定の極性を反転した収容電流を前記モータに供給する。
【0021】
よって、操作部は、突出電気信号又は収容電気信号を電波にして表示部に供給する送信部をさらに備えた。
表示部は、操作部の送信部から供給された突出電気信号又は収容電気信号を受信する受信部と、通常電源供給部を有する通常回路と、復旧電源供給部を有する復旧回路と、突出電気信号を受信したときに通常回路に接続し、収容電気信号を受信したときに復旧回路に接続する切替スイッチと、鉄塔への落雷を検知した場合に通常回路を閉じる検知手段と、モータに電気信号を供給する電源供給部と、をさらに備えた。そして、通常電源供給部は切替スイッチが通常回路に接続され、かつ検知手段により落雷が検知されたときに、所定の極性の突出電流をモータに供給する。また、復旧電源供給部は、切替スイッチが復旧回路に接続されたときに、所定の極性を反転した収容電流を前記モータに供給する。すなわち、操作部は、無線により突出電気信号又は収容電気信号を表示部に送信する。そして、表示部は、受信部と検知手段と通常電源供給部及び復旧電源供給部とを備えたので、無線により突出電気信号又は収容電気信号を受信することで、可動部材を突出状態又は収容状態に移行できる。
【0022】
具体的には、表示部は、操作部から送信された突出電気信号を受信し、かつ検知手段により落雷を検知したときに、所定の極性の突出電流を表示部本体のモータに供給する。すると、モータは、回転軸及びピニオンに所定方向の回転力を加える。そして、ピニオンの回転力は、このピニオンと係合する可動部材のラックにより、このラックの延びる方向への水平移動力に変換される。すなわち、可動部材は、表示部本体から突出する方向に移動する。
一方、表示部は、操作部から送信される収容電気信号を受信したときに、所定の極性を反転した収容電流を表示部本体のモータに供給する。すると、モータは、回転軸及びピニオンに上記所定方向を反転した回転力を加える。これにより、可動部材は、表示部本体から突出する方向とは逆方向である表示部本体に収容される方向に移動する。
【0023】
このように、操作部は無線により突出電気信号又は収容電気信号を表示部に送信するので、閃絡表示器を地上から復旧できる。さらに、操作部を各鉄塔に設置する必要が無くなる。具体的には、鉄塔の管理者は、1つの操作部を持って、それぞれ表示部が設置された複数の鉄塔を1つずつ点検し、突出電気信号又は収容電気信号を表示部に送信できる。
また、操作部の切替部において、通常状態又は復旧状態を選択することで、表示部の可動部材を突出状態又は収容状態に移行できるので、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、地上において復旧できるとともに、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る閃絡表示器が設置された鉄塔の概略を示す図である。
【図2】前記実施形態に係る閃絡表示器の斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る表示部における可動部材が突出する方向と直行する方向の断面図である。
【図4】前記実施形態に係る表示部における可動部材が突出する方向の断面図である。(a)は、可動部材の突出状態を示す図である。(b)は、可動部材の収容状態を示す図である。
【図5】前記実施形態に係る閃絡表示器の回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る閃絡表示器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0027】
〔第1実施形態〕
〈閃絡表示器1の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態に係る閃絡表示器1が設置された鉄塔2の概略を示す図である。
閃絡表示器1は、架空電線を支持し、地上3に建てられた鉄塔2に設置されている。
閃絡表示器1は、鉄塔2の先端側に設置された表示部10と、鉄塔2の地上3近傍に設置された操作部30と、を備える。操作部30は、表示部10に接続線20で接続されている。
【0028】
図2は、本発明の第1実施形態に係る閃絡表示器1の斜視図である。
表示部10は、鉄塔2に固定される表示部本体110と、表示部本体110に収容された収容状態(実線部分)又は表示部本体110から突出した突出状態(2点鎖線部分)の相互に移行可能な可動部材120と、表示部本体110の両端部に設けられた表示部固定片130と、を備える。
【0029】
表示部本体110は、長手方向が略水平方向に沿って配置され、一端側が開放された円筒状体であり、他端側に表示部固定片130が設けられている。表示部本体110の詳細については、後述する。
【0030】
可動部材120は、円筒状体であり、表示部本体110の開放された一端側において、収容状態又は突出状態の相互に移行する。また、可動部材120は、光を反射し易い塗料により赤色に着色されている。可動部材120の詳細については、後述する。
【0031】
表示部固定片130には、表示部本体110を鉄塔2に固定する固定バンド(図示無し)を挿通可能な挿通孔131が形成されている。
【0032】
接続線20は、鉄塔2に沿って配置され、操作部30から供給された電気信号を表示部10に送信する。
【0033】
操作部30は、鉄塔2に固定される操作部本体310と、操作部本体310の表面に設けられ鉄塔の管理者が操作可能な切替部320と、操作部本体310の両端部に設けられた操作部固定片35と、を備える。
【0034】
操作部本体310は、箱状体であり、その内部に電気信号を表示部10に送信する回路が格納されている。
切替部320は、鉄塔2への落雷前の通常状態(図2に示す「常時」)又は鉄塔2への落雷後の復旧状態(図2に示す「復旧」)のいずれかを選択可能である。この切替部320における選択は、操作部本体310の内部に格納された上記回路に連動する。
操作部固定片35には、操作部本体310を鉄塔2に固定する固定バンド(図示無し)を挿通可能な挿通孔36が形成されている。
【0035】
〈表示部10の機械構成〉
図3は、本発明の第1実施形態に係る表示部10における可動部材120が突出する方向と直行する方向の断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る表示部10における可動部材120が突出する方向の断面図である。(a)は、可動部材120の突出状態を示す図である。(b)は、可動部材120の収容状態を示す図である。
【0036】
表示部本体110は、その内部に回転軸112を回転させるモータ111と、回転軸112の先端に固定されたピニオン113と、モータ111を固定するステー114と、を備える。
モータ111は、操作部30から供給された電気信号が送信される接続線20が接続されている。
ピニオン113は、歯車形状に形成されている。
ステー114は、板状体であり、その基端が表示部本体110の他端側に固定され、表示部本体110の一端側に延びて、その先端においてモータ111を固定している。
【0037】
可動部材120は、ピニオン113と係合し、表示部本体110から突出する方向に沿って延びるラック121を備える。
ラック121は、板状体であり、その表面にピニオン113の歯と係合する歯が形成されている。
【0038】
〈閃絡表示器1の回路構成〉
図5は、本発明の第1実施形態に係る閃絡表示器1の回路図である。
閃絡表示器1の回路は、操作部30における回路と、この操作部30における回路と接続線20を介して接続された表示部10のモータ111と、を含む。
【0039】
操作部30における回路は、切替部320と連動する切替スイッチ321と、鉄塔2への落雷を検知する検知手段330と、表示部10の可動部材120を収容状態から突出状態に移行させる突出電気信号を供給する通常電源供給部340と、表示部10の可動部材120を突出状態から収容状態に移行させる収容電気信号を供給する復旧電源供給部350と、を備える。
操作部30における回路は、通常電源供給部340及び検知手段330を含む通常回路341と、復旧電源供給部350を含む復旧回路351と、から成る。
【0040】
切替スイッチ321は、切替部320により通常状態が選択されているときに、通常回路341に接続される。このとき、復旧回路351は開く。また、切替スイッチ321は、切替部320により復旧状態が選択されているときに、復旧回路351に接続される。このとき、通常回路341は開く。
また、切替スイッチ321が接続されることで、復旧回路351は閉じるが、通常回路341は検知手段330が開いている限り開いている。
【0041】
検知手段330は、鉄塔2への落雷を検知すると、所定時間だけ通常回路341を閉じ、所定時間を経過した後、再び通常回路341を開く。なお、検知手段330は、所定時間を計時するタイマを備えることもできる。
【0042】
通常電源供給部340は、突出電気信号として所定の極性の突出電流を供給する。
【0043】
復旧電源供給部350は、収容電気信号として通常電源供給部340の所定の極性を反転した収容電流を供給する。
【0044】
通常電源供給部340及び復旧電源供給部350は、塩化亜鉛乾電池、アルカリ乾電池又は太陽電池等とすることができる。
【0045】
モータ111には、接続線20を介して、互いに極性が異なる突出電流又は収容電流が供給される。
【0046】
〈閃絡表示器1の作用効果〉
次に、閃絡表示器1の動作について説明する。
閃絡表示器1は、通常状態では可動部材120が表示部本体110に収容されており、落雷により可動部材120が表示部本体110より突出し、操作部30の操作により再び可動部材120が表示部本体110に収容される。
詳細は、以下のとおりである。
鉄塔2の基端側に設置された操作部30は、切替部320において通常状態が選択されることで切替スイッチ321が通常回路341に接続され、かつ検知手段330により落雷が検知されたときに、通常電源供給部340より供給される所定の極性の突出電流を表示部10のモータ111に供給する。すると、モータ111は、回転軸112及びピニオン113に所定方向の回転力を加える。そして、ピニオン113の回転力は、このピニオン113と係合する可動部材120のラック121により、このラック121の延びる方向への水平移動力に変換される。すなわち、可動部材120は、表示部本体110から突出する方向に移動する。
一方、操作部30は、切替部320において復旧状態が選択されることで切替スイッチ321が復旧回路351に接続されたときに、復旧電源供給部350より供給される所定の極性を反転した収容電流をモータ111に供給する。すると、モータ111は、回転軸112及びピニオン113に上記所定方向を反転した回転力を加える。これにより、可動部材120は、表示部本体110から突出する方向とは逆方向である表示部本体110に収容される方向に移動する。
【0047】
第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
操作部30を鉄塔2の基端側に設置したので、閃絡表示器1を地上3において復旧できる。また、操作部30の切替部320において、通常状態又は復旧状態を選択することで、表示部10の可動部材120を突出状態又は収容状態に移行できるので、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
また、表示部10の長手方向を略水平方向に沿って配置したので、可動部材120に対する重力の影響が少ないので、電力によらず可動部材120を保持できる。
【0048】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る閃絡表示器1Aは、回路構成が異なる。
〈閃絡表示器1Aの回路構成〉
図6は、本発明の第2実施形態に係る閃絡表示器1Aの回路図である。
操作部70は、突出電気信号又は収容電気信号を電波にして表示部60に供給する送信部730を備える。
送信部730は、切替部320において通常状態が選択されたときに突出電気信号を表示部60に供給し、切替部320における復旧状態が選択されたときに収容電気信号を表示部60に供給する。
【0049】
表示部60は、操作部70の送信部730から供給された突出電気信号又は収容電気信号を受信する受信部630を備える。
表示部60における回路は、受信部630と、鉄塔2への落雷を検知する検知手段330と、表示部60の可動部材120を収容状態から突出状態に移行させる突出電気信号を供給する通常電源供給部340と、表示部60の可動部材120を突出状態から収容状態に移行させる収容電気信号を供給する復旧電源供給部350と、を備える。
表示部60における回路は、通常電源供給部340及び検知手段330を含む通常回路341と、復旧電源供給部350を含む復旧回路351と、から成る。
【0050】
切替スイッチ620は、受信部630により突出電気信号を受信したときに、通常回路341に接続される。このとき、復旧回路351は開く。また、切替スイッチ620は、受信部630により収容電気信号を受信したときに、復旧回路351に接続される。このとき、通常回路341は開く。
また、切替スイッチ620が接続されることで、復旧回路351は閉じるが、通常回路341は検知手段330が開いている限り開いている。
【0051】
〈閃絡表示器1Aの作用効果〉
次に、閃絡表示器1Aの動作について説明する。
閃絡表示器1Aは、通常状態では可動部材120が表示部本体110に収容されており、落雷により可動部材120が表示部本体110より突出し、操作部30の操作により再び可動部材120が表示部本体110に収容される。
表示部60は、操作部70の送信部730から送信された突出電気信号を受信し、かつ検知手段330により落雷を検知したときに、所定の極性の突出電流を表示部本体110のモータ111に供給する。すると、モータ111は、回転軸112及びピニオン113に所定方向の回転力を加える。そして、ピニオン113の回転力は、このピニオン113と係合する可動部材120のラック121により、このラック121の延びる方向への水平移動力に変換される。すなわち、可動部材120は、表示部本体110から突出する方向に移動する。
一方、表示部60は、操作部70から送信される収容電気信号を受信したときに、所定の極性を反転した収容電流を表示部本体110のモータ111に供給する。すると、モータ111は、回転軸112及びピニオン113に上記所定方向を反転した回転力を加える。これにより、可動部材120は、表示部本体110から突出する方向とは逆方向である表示部本体110に収容される方向に移動する。
【0052】
このように、操作部は無線により突出電気信号又は収容電気信号を表示部に送信するので、閃絡表示器を地上から復旧できる。さらに、操作部を各鉄塔に設置する必要が無くなる。具体的には、鉄塔の管理者は、1つの操作部を持って、それぞれ表示部が設置された複数の鉄塔を1つずつ点検し、突出電気信号又は収容電気信号を表示部に送信できる。
また、操作部の切替部において、通常状態又は復旧状態を選択することで、表示部の可動部材を突出状態又は収容状態に移行できるので、部品等の交換をせずに再利用できる閃絡表示器を提供できる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 閃絡表示器
2 鉄塔
10 表示部
110 表示部本体
120 可動部材
30 操作部
320 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空電線を支持する鉄塔に設置され、前記鉄塔が被落雷鉄塔であることを表示する閃絡表示器において、
前記鉄塔の先端側に設置される表示部と、
前記表示部に電気信号を供給する操作部と、を備え、
前記表示部は、
前記鉄塔に固定される表示部本体と、
前記表示部本体に収容された収容状態又は前記表示部本体から突出した突出状態の相互に移行可能な可動部材と、
前記可動部材を可動させる駆動部材と、を備え、
前記操作部は、
前記鉄塔への落雷前の通常状態又は前記鉄塔への落雷後の復旧状態のいずれかを選択可能な切替部を備え、
前記切替部において前記通常状態が選択されたときに、前記可動部材を前記収容状態から前記突出状態に移行可能とさせる突出電気信号を前記表示部に供給し、
前記切替部において前記復旧状態が選択されたときに、前記可動部材を前記突出状態から前記収容状態に移行させる収容電気信号を前記表示部に供給することを特徴とする閃絡表示器。
【請求項2】
前記駆動部材は、
回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に固定されたピニオンと、を有し、
前記可動部材は、前記ピニオンと係合し、前記表示部本体から突出する方向に沿って延びるラックを有し、
前記操作部は、前記鉄塔の基端側に設置され、
前記突出電気信号を供給する通常電源供給部を有する通常回路と、
前記収容電気信号を供給する復旧電源供給部を有する復旧回路と、
前記切替部において前記通常状態が選択されたときに前記通常回路に接続し、前記切替部において前記復旧状態が選択されたときに前記復旧回路に接続する切替スイッチと、
前記通常回路に設けられ、前記鉄塔への落雷を検知した場合に、前記通常回路を閉じる検知手段と、を備え、
前記通常電源供給部は、
前記切替スイッチが前記通常回路に接続され、かつ前記検知手段により落雷が検知されたときに、前記突出電気信号として所定の極性の突出電流を前記モータに供給し、
前記復旧電源供給部は、
前記切替スイッチが前記復旧回路に接続されたときに、前記収容電気信号として前記所定の極性を反転した収容電流を前記モータに供給することを特徴とする請求項1に記載の閃絡表示器。
【請求項3】
前記操作部は、前記突出電気信号又は前記収容電気信号を電波にして前記表示部に供給する送信部をさらに備え、
前記表示部は、
前記表示部本体に、回転軸を回転させるモータと、前記回転軸に固定されたピニオンと、を有し、
前記可動部材に、前記ピニオンと係合し、前記表示部本体から突出する方向に沿って延びるラックを有し、
さらに、前記操作部の前記送信部から供給された前記突出電気信号又は前記収容電気信号を受信する受信部と、
通常電源供給部を有する通常回路と、
復旧電源供給部を有する復旧回路と、
前記受信部において前記突出電気信号を受信したときに前記通常回路に接続し、前記受信部において前記収容電気信号を受信したときに前記復旧回路に接続する切替スイッチと、
前記通常回路に設けられ、前記鉄塔への落雷を検知した場合に、前記通常回路を閉じる検知手段と、を備え、
前記通常電源供給部は、
前記切替スイッチが前記通常回路に接続され、かつ前記検知手段により落雷が検知されたときに、所定の極性の突出電流を前記モータに供給し、
前記復旧電源供給部は、
前記切替スイッチが前記復旧回路に接続されたときに、前記所定の極性を反転した収容電流を前記モータに供給することを特徴とする請求項1に記載の閃絡表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106913(P2011−106913A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260887(P2009−260887)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】