説明

開封具

【課題】シール部が形成された容器から内容液を注出するのに好適な、簡易で衛生的な開封具を提供する。
【解決手段】シール部12が形成された容器1の開封に際し、摘み部33と一体的に成形される筒状部31を容器1に溶着される注出筒2内に挿入し、その下端38が尖った形状の筒状部31がシール部材12を破断できる構造とした。また延長部34における両下端の距離を注出筒2の外径より若干大きくした。これにより使用者は開封具1の注出筒2内への挿入を安定に行うことができ、容器1のシール部12を容易に破断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や調味料、薬品等の内容液を収容する容器の開封具に関し、より具体的には容器の開口部がシール部材によりシールされ且つそのシール部材を取り囲むように上方に延びる注出筒が形成されている容器に対して好適な内容液を喫飲乃至注ぎ出し可能な開封具に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や調味料などの内容液を保存する際には紙パック等の容器が一般に用いられている。そしてこの容器の上端における所定箇所には開口部が形成されており、出荷時には当該開口部はシール部材などにより封止されている。
このような容器に収容された内容液を注出するとき、注出栓など注出用の部材を用いてシール部材を破断させることが一般的に行われており、例えば下記のような技術が開示されている。
【0003】
すなわち特許文献1には、液体容器用注出栓が開示されており、当該注出栓は破断可能なシートによって封止された液体容器の注出孔に取着する注出栓本体と、該注出栓本体を開閉自在とするキャップから構成されている。また、この注出栓本体には開封部材が備えられており、当該開封部材は開口筒壁に離間可能に連結部材を介して固定されている。
収容した液体を注出する時には開封部材を指などで押圧して連結手段を破断させ、さらにそのまま押圧を続けることによって開封部材が容器の注出孔を封止しているシートを破断して容器に収容された液体が注出可能となる。
このように特許文献1には、開口筒壁に離間可能に連結手段により固定された開封部材を指などで押圧するだけで注出孔が開封される構造の注出栓が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−23395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、開封部材を直接指などで押圧するため、衛生上の観点から好ましくない。また容器の大きさは様々であり、これに伴って開口筒壁の径も大小様々なものが適用される。その結果、特に開口筒の径が比較的小さい場合には、指などの押圧による力が伝わり難く、開封が困難となる。また、開封部材の胴部が開口筒壁の内周壁を摺動して注出口内を降下しながら、開封部材内に固定されている開封刃34によりシートが破断されることとなるため、シートの開封に大きな力が必要となり、開封が困難となる。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、シール部が形成された容器から内容液を注出するのに好適な、使い勝手がよく衛生的な開封具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の開封具は、容器の開口部を封止するシール部を囲繞し上方に延びる注出筒が形成されている容器の該シール部を破断するための開封具であって、前記容器の注出筒に挿入する筒状部と、該筒状部の外周に設けられた環状壁からなり、該環状壁の下面には、下方に延び、前記容器の注出筒の上端内周面に密接するインナーリングが形成されており、該環状壁の外周面及び/又は該環状壁の上部の前記筒状部外周面には、左右側方に伸延した基部と該基部の両側から前記筒状部の外壁に沿って下方に延伸した延長部とからなる摘み部が設けられており、前記筒状部は、その上端及び下端が開口され、該下端が容器のシール部を破断するため斜めに切断されて尖った形状となっており、前記両延長部間の距離は、前記注出筒外径より大きく形成されていることを特徴とする。
【0007】
(2)本発明の開封具は、上記(1)において、前記筒状部の下方には、容器内部に挿入された後、容器の開口部における内壁に係止して該筒状部の抜けを防止するための突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の開封具によれば、摘み部を摘むことで、使用者が容器のシール部を突き刺して破断するに際して確実に力を伝達することができ、その結果として容易に容器の開封を行うことができる。さらには筒状部の上端を直接指で押圧する必要がないため、衛生的な観点からも好ましい。
また、環状壁の下面に形成されたインナーリングが、容器の注出筒の上端内周面に密接して容器との機密性を確保しているため、容器の開封に際して筒状部の押し込み力がシール部の破断のみに作用して容器の開封を容易に行うことができる。
さらに、開封具を容器の注出筒に挿入する際に、容器の注出筒を跨ぐ両延長部間の距離が注出筒外径より若干大きいので、開封具を容器の注出筒に挿入する際に、この延長部がガイドとなりスムーズに挿入操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は注出筒が設けられた容器の斜視図であり、(b)は容器の開口部に取り付けられた注出筒の断面図である。
【図2】(a)は実施例の開封具を上斜め方向から見た斜視図であり、(b)は正面図である。
【図3】実施例の開封具を延長部に沿って切った縦断面図である。
【図4】実施例の開封具の使用状態を容器要部と共に示す縦断面図であり、(a)は開封前の状態を示し、(b)は開封後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態では、容器の開口部を封止するシール部を囲繞し上方に延びる注出筒が形成されている容器の該シール部を破断するための開封具であって、容器の注出筒に挿入するストロー状の筒状部と、該筒状部の外周に設けられた環状壁からなり、該環状壁の下面には、下方に延び、容器の注出筒の上端内周面に密接するインナーリングが形成されており、
該環状壁の外周面及び/又は該環状壁の上部の前記筒状部外周面には、左右側方に伸延した基部と該基部の両側から前記筒状部の外壁に沿って下方に延伸した延長部とからなる摘み部が設けられており、前記筒状部は、その上端及び下端が開口され、該下端が容器のシール部を突き刺して破断するために斜めに切断されて尖った形状となっており、前記両延長部間の距離は、前記注出筒外径より大きく形成されている。
【0011】
本発明の開封具が用いられる容器としては、その用途や形状、大きさが特定されるものではなく、飲料や調味料、あるいは薬品などの液体の収容に用いられ、紙やプラスチックなどの素材が用途に応じて適宜選定される。
開口部は、容器の外面に設けられており、内容液により適宜その大きさや形状が決定される。
シール部は容器の注出口に形成され内容液の漏洩を封止している。シール部の素材としては、開封具の先端を突き刺すことにより破断可能な樹脂コーティングされたアルミ箔やポリエチレンなどの樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0012】
注出筒は、容器のシール部の上に形成され、シール部を囲繞し上方に延びる煙突のような形状をしており、開封具によってシールを破断した後において、内容液が注出筒を通って注出される。注出筒は例えばプラスチックなどの樹脂を原料として成形される。また、注出筒は該容器に接着乃至溶着されるものであるが、例えば接着に際して公知の接着剤を用いてもよいし、溶着する場合には熱などにより溶着してもよい。
【0013】
筒状部は、本発明の開封具の一部であり、容器の注出筒に挿入される部分であり、その上端及び下端が開口された中空のストローのような形状となっている。なお筒状部の形状はこのような形状に限定されず、容器の注出筒と所定の隙間を有して挿入可能な形状であればよい。
また、筒状部の下端は斜めに切断されて尖った形状となっており、容器の注出筒に挿入して、容器のシール部を破断しやすいようになっている。
環状壁は、筒状部の高さ方向の中程に、筒状部の外周を巻き回すように設けられており、その下面には環状のインナーリングが形成されている。
インナーリングは、環状壁の下面から下方に延びるように形成される。そして容器の注出筒の上端内周面と密着することで、開封具を容器の注出筒へ密着固定するとともに注出筒の先端部から内容液の漏洩を封止することができる。
【0014】
摘み部は、環状壁の外周面及び/又は環状壁の上部の筒状部外周面の少なくとも一部にその一端が接続され、筒状部の左右側方に伸延した基部と基部の両側から筒状部の外壁に沿って下方に延伸した延長部とを備えており、使用者が手で摘み易いようになっている。
また、両延長部の間で容器の注出筒を挟むことによって、筒状部を注出筒へ挿入する際のガイド、及び挿入後の筒状部の注出筒への固定化という役割を果たす。
【0015】
筒状部を跨ぐ位置における両延長部間の距離は、容器の注出筒の外径より若干大きく形成されており、筒状部を注出筒へ挿入する際に、延長部の内側が容器の注出筒と干渉することなく、挿入のガイドとなる程度の間隔であればよい。
【0016】
突起は、開封具の筒状部の下方外周面に形成されており、筒状部を容器の注出筒に挿入した後において、容器の内壁に係止され、筒状部の抜けを防止する。突起の数としては、筒状部の外周に1又は複数個形成することができる。例えば、筒状部の円周方向に3カ所、120°の角度を隔てて形成されることが望ましい。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を適用した開封具に係る実施例について図を参照しながら説明する。
図1(a)は注出筒が設けられた容器の斜視図であり、(b)は容器の開口部に取り付けられた注出筒の断面図である。
図2(a)は実施例の開封具を上斜め方向から見た斜視図であり、(b)はその正面図である。
図3は実施例の開封具を延長部に沿って切った縦断面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、容器1は飲料や調味料、あるいは薬品などの内容液を収容するものであり、例えば紙などの素材を用いて角柱形状に形成されている。また図1(b)に示すように、容器1の上部には、内容液を注出するための開口部11、およびこの開口部11を封止するシール部12が形成されている。
【0019】
開口部11を封止するシール部12の材質としては、ポリエチレンフィルムや樹脂コーティングされたアルミ箔が用いられる。そして、シール部12の上方に配置され開口部11を囲繞するように上方に延びる注出筒2が、容器1の上面にリブ21を介して溶着されている。
この注出筒2は開口部11と略等しい内径の中空形状を有している。
【0020】
本実施例の開封具3は、図2に示すとおり、筒状部31、環状壁32、基部33と延長部34からなる摘み部39などから構成され、ポリエステルなどの樹脂を射出成形することにより製造される。
【0021】
図3に示すように、筒状部31は容器の注出筒2に挿入される中空の円筒状の部材であり、射出成形法などで成形される際に、その上端及び下端を開口させるとともに、筒状部31の下端38を斜めに成形して尖った形状とされるが、この筒状部31の下端38を尖った形状とするには、切断や、切削などによっても加工することができる。
【0022】
筒状部31の下方外周面には、突起35が形成されている。この突起35は、筒状部31が容器1の内部に挿入された際に容器1の開口部11における内壁13に係止して該筒状部31の抜けを防止するために設けられる。従って、この状態で内容液を外部に注出することが可能となる。
本実施例において、突起35は筒状部31の円周方向に互いに120°の角度を隔てて3個形成されている。
【0023】
環状壁32は、筒状部31の高さ方向の中程に、筒状部31の外周を巻き回すように設けられている。
そして、環状壁32の下面には、下方に延び、注出筒2の上端内周面に密接するインナーリング36が形成されており、容器の注出筒2の上端内周面と密着することで、開封具を容器の注出筒2へ固定するとともに、内容液を外部に注出する際に、注出筒の先端部からの内容液の漏洩を封止する。
【0024】
環状壁32の外周面及び/又は該環状壁の上部の筒状部31外周面には、左右側方に伸延した基部33と該基部の両側から筒状部31の外壁に沿って下方に延伸した延長部34とからなる摘み部39が形成されている。
【0025】
そして、図1および図3に示すように、これら延長部34の内方両下端間の距離Aは、注出筒2の外径Bより若干大きくなるように形成されており、筒状部31を注出筒2に挿入する際に、延長部34の内側がガイドとなって、筒状部31の挿入を安定に行うことができる。
【0026】
また、筒状部31の上端には、図示しない着脱可能なキャップ等を設けてもよい。このキャップ等を備えることで容器1の開封後も内容液を密閉して保存することが可能となる。
【0027】
次に、図4を用いて容器1の開封時における開封具3の使用形態を説明する。
図4は実施例の開封具の使用状態を容器要部と共に示す縦断面図であり、(a)は開封前の状態を示し、(b)は開封後の状態を示す。
図4(a)に示すように、容器1の開封に際し、開封具3の使用者は、基部33と延長部34からなる摘み部39を手で摘んで、筒状部31を注出筒2へ挿入して押圧する。筒状部31の下端38は尖った形状となっているので、図4(b)に示すように、筒状部31の下端で容器1のシール部12が破断されて開口部11から内容液が注出可能となる。
【0028】
さらに図4(b)のように、シール部12が破断されたときに、筒状部31に形成された突起35は容器1の内壁13に係止し、筒状部31の抜けが防止される。またこの際に、環状壁32の下面に形成されたインナーリング36は、注出筒2の上端内周面に密接して注出筒2と開封具3とが接合される。
【0029】
また、本実施例では、筒状部31の下端から上方途中までスリット37が設けられており、容器1の内容液を残さずに注出することが可能となる。本実施例においては、スリット37は1個設けられているが、複数個設けてもよく、例えば突起35の数とあわせた数だけ設けてもよい。
【0030】
なお、本発明に係る開封具3は上記の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限度で適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、容器を開封する開封具に適用することができ、より具体的には例えば飲料や調味料を収容する容器や薬品を保存する容器などに好適であり、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0032】
1 容器
2 注出筒
3 開封具
11 開口部
12 シール部
21 リブ
31 筒状部
32 環状壁
33 基部
34 延長部
35 突起
36 インナーリング
37 スリット
38 下端
39 摘み部
A 延長部の内方両下端における距離
B 注出筒の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部を封止するシール部を囲繞し上方に延びる注出筒が形成されている容器の該シール部を破断するための開封具であって、
前記容器の注出筒に挿入する筒状部と、該筒状部の外周に設けられた環状壁からなり、
該環状壁の下面には、下方に延び、前記容器の注出筒の上端内周面に密接するインナーリングが形成されており、
該環状壁の外周面及び/又は該環状壁の上部の前記筒状部外周面には、左右側方に伸延した基部と該基部の両側から前記筒状部の外壁に沿って下方に延伸した延長部とからなる摘み部が設けられており、
前記筒状部は、その上端及び下端が開口され、該下端が容器のシール部を破断するため斜めに切断されて尖った形状となっており、
前記両延長部間の距離は、前記注出筒外径より大きく形成されていることを特徴とする開封具。
【請求項2】
前記筒状部の下方には、容器内部に挿入された後、容器の開口部における内壁に係止して該筒状部の抜けを防止するための突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の開封具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222018(P2010−222018A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69397(P2009−69397)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】