説明

開栓装置

【課題】採血管などの検体容器からシール栓を取り外す開栓装置において、開栓に要する剥離力を弱められるようにする。
【解決手段】チャック機構36によってタブ20Aが掴まれ、それを採血管16に対して相対的に引き上げることによりシール栓20が取り外される。そのシール栓20の取り外しに先立ってあるいはそれに際してヒーター38によってシール栓20における接着部に対して加熱が行われる。これにより接着剤の接着力が弱められた状態で開栓処理が行われることになる。ヒーター38に代えてレーザーを発生させるものや超音波加熱を行わせるものなどを用いることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開栓装置に関し、特に検体容器からシール栓を取り除く開栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開栓装置は、一般に、採血管などの検体を収容した検体容器から、その上面開口を塞いでいる栓を取り除く装置である。その栓としては、ゴム栓、スクリュー栓の他に、シール栓が知られている。シール栓は、検体容器の上部開口縁に熱溶着(ヒートシール)等によって貼付されている。検体容器の上部開口縁とシール栓との間にはヒートシール用接着剤が設けられる。シール栓は、円形形状の栓本体とその外縁から部分的に広がったタブとで構成される。タブは、用手的にあるいは自動的にシール栓を除去する際に取っ手として機能する。タブをつかんでそれを持ち上げれば、シール栓をタブ形成位置からそれと反対側まで剥離でき、最終的にシール栓を取り外せる。但し、シール栓は簡単には取り外せないように接着されており、それを取り外すにはかなりの力を要する。下記の特許文献1−7には開栓装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−294329号公報
【特許文献2】特開平9−243643号公報
【特許文献3】特許2731729号公報
【特許文献4】特開2005−306467号公報
【特許文献5】特許2753200号公報
【特許文献6】特許3086417号公報
【特許文献7】特開2005−289456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにシール栓は検体容器の上部開口縁に貼着されており、開栓時にはシール栓のタブをつかんで強い力をもってシール栓を剥離させる必要がある。よって、そのための駆動源として大きなものを設ける必要があり、開栓のための機構がどうしても大型化してしまう。また、開栓時において、シール栓は、上部開口縁(円形の接着部)においてタブ形成位置からその反対側位置まで徐々に剥がされ、最終的に分離した状態となるが、剥離に要する力が大きいと、その力あるいはその反動によって、シール栓の下面(裏面)に付着している液滴(検体の一部)が周囲に飛散してコンタミネーションが生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、シール栓の開栓時に必要な力を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検体を収容した検体容器からその上部開口に貼着されたシール栓を取り除く開栓装置において、前記シール栓の除去前に又は除去時に、前記シール栓における接着部の全部又は一部を加熱する加熱手段を含むことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、加熱手段により接着部が加熱されるので、接着剤の接着力が弱められ状態となり、その状態でシール栓を剥離すればそれに要する剥離力を軽減できる。よって、開栓機構の駆動源を小型化できる。また、シール栓の裏面に液滴が付着していてもその飛散を防止又は軽減できる。検体容器内の検体に悪影響を与えないように加熱温度及び加熱時間を定めるのが望ましい。加熱及び剥離後に加熱部分を冷却するようにしてもよい。シール栓を取り除く前に十分な加熱を行えるならばシール栓の取り除き前に加熱を終了させてもよい。もちろん、シール栓の取り除き過程において加熱を継続するようにしてもよい。
【0008】
望ましくは、前記加熱手段は、前記検体容器に貼着されたシール栓をつまみ上げて取り除く開栓機構に組み込まれる。この構成によれば開栓のための一連の動作の途中で加熱処理を行える。開栓機構と加熱手段とを別体に構成してもよい。
【0009】
望ましくは、前記シール詮のつまみ上げ前から前記加熱手段が動作を開始して前記接着部における接着力を弱め、その後に前記開栓機構が前記シール栓をつまみ上げる。この構成によれば予め接着力を弱めた状態を形成した上でシール栓を剥離することができる。
【0010】
望ましくは、前記開栓機構は前記シール栓のタブを協働して狭持する外爪部材及び内爪部材を有し、前記加熱手段は前記内爪部材に設けられる。望ましくは、前記加熱手段は、前記シール栓における円形の接着部に対応して円形の熱伝導面を有する。望ましくは、前記加熱手段は、前記シール栓における円形の接着部における局所加熱部位を加熱し、前記局所加熱部位を前記円形の接着部に沿って旋回させる回転機構が設けられる。望ましくは、前記加熱手段は、ヒーター加熱、電磁誘導加熱、レーザー加熱又は超音波加熱を利用して前記接着部における接着力を弱める。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、シール栓の開栓時に必要な力を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1には、本発明に係る開栓装置の実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す概念図である。開栓装置は、搬送機構10、開栓機構30及びコントローラ42などを有している。
【0014】
搬送機構10はラック14を搬送するベルト12を有している。ラック14は複数の採血管を保持するものである。この採血管は検体容器であって、その内部には遠心分離後の血液が収容されている。採血管の上部開口縁には接着剤によってシール栓が貼付されており、そのシール栓はつまみ部としてのタブを有している。図1において、開栓機構30によって上方に引き上げられた採血管が符号16で示され、その採血管16においてシール栓が符号20で示され、タブが符号20Aで示されている。ちなみに、採血管16の本体の上部はやや肥大しており、その上面が上部開口縁としての接着上面を構成する。
【0015】
開栓機構30は、上方に引き上げられた採血管16からシール栓20を取り除く開栓処理を実行する機構である。開栓機構30は開栓ヘッド34を有しており、その開栓ヘッド34はチャック機構36を備えている。ちなみに、このチャック機構36は後に説明するように、内爪部材と外爪部材を有している。チャック機構36によってシール栓20におけるタブ20Aが上方に引き上げられつつ内爪部材と外爪部材の間に挟み込まれ、それが確実に挟持される。その状態で採血管16の本体を下方に引き下ろせばシール栓20を採血管16から剥がすことが可能となる。ただし、通常、シール栓20は採血管16に対して強固に貼り付いているため、その取り外し力すなわち剥離力としては多大なものが要求される。このため機構の大型化といった問題が指摘されていた。本実施形態では、チャック機構36に加熱手段としてのヒーター38が設けられており、開栓に先立ってあるいは開栓と並行してシール栓20における接着部の加熱を行うことにより、その接着部における接着作用を弱めた上でシール栓20の剥離を行うことが可能である。
【0016】
なお、図1に示したコントローラ42は開栓装置に含まれる各構成の動作制御を行っている。特に、コントローラ42は電源40の動作を制御しており、その電源40はヒーター38に対して電力を供給するものである。コントローラ42によってその電力のオンオフをすることにより加熱動作を制御することが可能である。
【0017】
図2には、採血管16の拡大図が示されており、上述したように採血管16における本体の上部はやや肥大しており、その上部開口縁が接着部として機能し、そこにシール栓20が貼付されている。シール栓20はタブ20Aを有している。図示されるように加熱エリア50が接着部であり、そこに対して熱伝達が行われる。その結果加熱部に存在する接着剤の接着作用が弱められ、剥離し易い状態が形成される。
【0018】
図3には、図1に示した開栓機構の具体的な構成例が斜視図として示されている。開栓ヘッド34は搬送機構46によって搬送されるものであり、そこにはチャック機構36が設けられている。
【0019】
図4には、チャック機構36の斜視図が示されている。チャック機構36は上述したように外爪部材52と内爪部材54とを有しており、両者の間がチャッキングを行うための隙間として機能する。採血管16のシール栓に設けられているタブは、チャック機構36と協動して動作する案内部材の作用によって徐々に引き上げられつつ外爪部材52に形成された溝から上述した隙間へ進入し、内爪部材54が上方に引き上げられると、内爪部材54と外爪部材52との間にタブが確実に保持される。
【0020】
本実施形態では、上述したように内爪部材54の下面すなわち本来的な当接面にヒーター38が設けられている。ちなみに符号38Aは信号線を表している。図4においてヒーター38は内爪部材54の下面から下方へ隔てられた位置に示されているが、それは発明説明上のものであって、実際には内爪部材54の下面にヒーター38が貼り付けられている。
【0021】
ヒーター38は図示されるようにリング状の形態を有しており、それは図2に示した加熱エリアに相当するものである。すなわちヒーター38は上述した加熱エリアに相当する加熱接触面を有している。タブの挟持に先立って内爪部材54がシール栓に当接されるがその時点においてヒーター38の作用によって接着部への加熱を行うことによりタブの引き上げに先立って接着作用を弱めることが可能となる。
【0022】
図5には、開栓機構の動作例がフローチャートとして示されている。図1を参照しながら図5に示す動作例を説明すると、まずS101ではラック14から対象となる採血管16が上方に引き上げられる。S102においては図1において図示されていないセンサによって採血管16の頭部が検出され、またS103においては図示されていないセンサによって採血管に設けられているシール栓の存在が確認される。S104では更に採血管が上方に引き上げられる。これにより内爪部材がシール栓に接触することになる。
【0023】
S105においてはヒーター38の動作が開始し、これによって接着部に対して加熱が行われる。S106では、図示されていない回転機構による採血管の回転運動及びチャック機構36の内爪部材の上昇運動によりシール栓に設けられているタブが上方に引き上げられつつそれがくわえ込まれる。S107では、チャック機構36によってタブが挟持された状態において採血管が下方に引き下げられる。これによって採血管16からシール栓20を取り外すことが可能となる。この場合において上述した加熱処理が行われているためその剥離に要する力を軽減できるという利点がある。S108ではヒーターの動作が終了する。なお、図5に示す動作例では、S107において採血管が下降した以後にヒーターの動作が停止されていたが、S106においてタブの加え込みが行われた段階で接着部への加熱が十分であれば、その時点でヒーターをオフにしてもよい。いずれにしても、シール栓の除去の前あるいはそれと同時に加熱を行うことによりシール栓を剥離するために必要な力を弱めて開栓機構の駆動源を小型化できるという利点がある。また、弱い力で剥離を行うことができるので、結果としてシール栓の裏面に付着している液滴の飛散を効果的に防止又は軽減できるという利点がある。
【0024】
上述した実施形態においては直接的な熱伝導により加熱を行ったが、例えば電磁誘導加熱を利用してアルミニウム等で構成されているシール栓に対して渦電流を生じさせ、それによって加熱を行うようにしてもよい。また以下に説明するようにレーザーや超音波振動を利用することも可能である。
【0025】
図6には加熱手段の他の例が示されている。チャック機構36にはレーザ素子58が設けられ、そこから出射されたレーザーが下方に向けて放射されている。外爪部材52にはレーザービームを通過させるための開口部52Aが形成されており、これと同様に、内爪部材54にもレーザー60を通過させるための開口部54Aが形成されている。採血管は図示されていない回転機構によって保持され、それにより回転駆動されるため、レーザーをシール栓における接着部の一部に照射し、採血管を回転させればリング状の接着部の全体にわたって接着作用を弱めることが可能である。本実施形態においては、採血管が回転駆動されているためレーザーを回転させるための機構を独立して設ける必要がないという利点がある。なお、採血管を回転させずに開栓ヘッド34側を回転するように構成してもよい。
【0026】
図7には加熱手段の他の例が示されている。内爪部材54には超音波振動ユニット58が設けられており、その超音波振動ユニット58は超音波振動子を有している。その超音波振動子によって超音波振動が発生され、その超音波振動は内爪部材54を介してシール栓に伝達される。これによって超音波加熱をシール栓に対して行うことができ、その接着部の接着作用を弱めることが可能となる。
【0027】
ちなみに、シール栓の中央部に弾性部材が設けられる場合もある。その弾性部材は注射針などを突き通すためのものである。そのような弾性部材に対して直接的な熱伝導が生じないように、図2に示したように接着部の形態に合わせて円環状の加熱エリア50を設定してその加熱エリア50に対して直接的な熱伝導を行わせるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る開栓装置の実施形態を示す概念図である。
【図2】採血管及び加熱エリアを示す図である。
【図3】開栓機構の斜視図である。
【図4】チャック機構の斜視図である。
【図5】開栓機構の動作例を示すフローチャートである。
【図6】加熱手段の他の例を示す図である。
【図7】加熱手段の更に他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 搬送機構、14 ラック、16 採血管(検体容器)、20 シール栓、20A タブ、30 開栓機構、34 開栓ヘッド、36 チャック機構、38 ヒーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容した検体容器からその上部開口に貼着されたシール栓を取り除く開栓装置において、
前記シール栓の除去前に又は除去時に、前記シール栓における接着部の全部又は一部を加熱する加熱手段を含むことを特徴とする開栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記加熱手段は、前記検体容器に貼着されたシール栓をつまみ上げて取り除く開栓機構に組み込まれたことを特徴とする開栓装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記シール詮のつまみ上げ前から前記加熱手段が動作を開始して前記接着部における接着力を弱め、その後に前記開栓機構が前記シール栓をつまみ上げる、ことを特徴とする開栓装置。
【請求項4】
請求項2記載の装置において、
前記開栓機構は前記シール栓のタブを協働して狭持する外爪部材及び内爪部材を有し、
前記加熱手段は前記内爪部材に設けられたことを特徴とする開栓装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記加熱手段は、前記シール栓における円形の接着部に対応して円形の熱伝導面を有する、ことを特徴とする開栓装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記加熱手段は、前記シール栓における円形の接着部における局所加熱部位を加熱し、
前記局所加熱部位を前記円形の接着部に沿って旋回させる回転機構が設けられたことを特徴とする開栓装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、
前記加熱手段は、ヒーター加熱、電磁誘導加熱、レーザー加熱又は超音波加熱を利用して前記接着部における接着力を弱める、ことを特徴とする開栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−18960(P2008−18960A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191659(P2006−191659)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】