説明

開蓋装置

【課題】ネジ蓋方式の被開蓋物の蓋を開蓋する際において、利用者が容易な作業により開蓋することのできる開蓋装置を提供する。
【解決手段】動力を発生する単一のモータ101と、モータ101からの動力により回転する出力軸108と、ビン50の蓋51に当接し、出力軸108の回転動力を利用して蓋51を回旋可能な上部把持部200と、上部把持部200とビン50の載置位置との間隔を回転動力により変化させる変位機構部26と、出力軸108の回転動力を変位機構部26に伝達する伝達部28とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶や瓶等の被開蓋物の蓋を開蓋する開蓋装置に関し、特に、蓋がねじ溝に螺合して閉じられるネジ蓋方式の缶や瓶等の被開蓋物の蓋を回旋して開蓋する回旋開蓋機能を有する開蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料或いは化粧品など幅広い商品の容器として多用される、螺合して開閉するネジ蓋方式の缶や瓶は、人力で開蓋する事が前提であるので、一方の手で容器部を握り他方の手で蓋部を摘み、互いに逆方向に捻って開蓋するのが普通である。これら大部分の商品は工場で生産されており、缶や瓶は、機械で閉蓋してある為に、使い始めに封印を切りながら開蓋するか、封印がされていない場合でも、最初は固く閉められていて開け難いのが普通である。然も蓋部は容器部に比べ相対的に薄く小さく出来ている為に摘む範囲が狭く、握力を充分に活用出来ず、開蓋を困難なものにしていた。この状況に鑑み、手作業時の補助具が数多く提案されて来た(例えば、特許文献1参照。)が、特にきつく閉じられた蓋の場合、更に力を入れようとすると、人間工学的に瓶や缶を傾けた状態で掴んで捻ろうとする為、容器部を垂直に保持する事が困難で、特に内容物が液状や粉末状の商品の場合は開蓋時の勢いでこぼすと言う不具合もあった。
【0003】
また、一度に使い切る場合は別として、使い残りは蓋を閉めて保管されるのが普通であり、蓋を少しきつく閉め過ぎたり、内容物が付着した状態で閉めた為に固着したりしてしまう場合があり、この場合には開蓋するのが困難であると言う不具合が有った。
また、蓋がそれ程きつく閉まっていなくても主婦、子供或いはお年寄りと言った、比較的握力が弱い非力な人には開蓋するのが困難であると言う不具合があった。
かかる不具合を解消する為に、モータなどの動力を用い機械的に開蓋する事に依って、非力な人でも缶や瓶の容器を垂直に保った状態のまま、片手でも容易に開蓋出来る工夫が数多く提案されている。かかる状況に鑑み本発明者は、蓋がネジ溝で螺合して閉じられる方式の缶や瓶の開蓋に好適な自動開蓋装置の考案を行っている(特許文献2参照。)。
【特許文献1】米国特許第1894556号明細書
【特許文献2】登録実用新案第3103926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、特許文献2に記載されている考案によると、モータなどの動力により被開蓋物の蓋を容易に開けることができる。
しかしながら、上記した考案にかかる自動開蓋装置においては、利用者が自動開蓋装置の上部を持ち上げて被開蓋物を載置する必要があり、例えば、比較的握力が弱い非力な人にとっては、被開蓋物を載置するために自動開蓋装置の上部を持ち上げる作業自体が困難であるという問題がある。
また、一般に、開蓋装置においては、装置の製造コストを抑えることが要請されている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、ネジ蓋方式の被開蓋物の蓋を開蓋する際において、利用者が容易な作業により開蓋することのできる開蓋装置を提供することを目的とする。また、本発明は、開蓋装置を製造する際の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様にかかる開蓋装置は、動力を発生する単一の動力源と、前記動力源からの動力により回転する軸と、被開蓋物の蓋に当接し、前記軸の回転動力を利用して当該蓋を回旋可能な回旋部と、前記回旋部と前記被開蓋物の載置位置との間隔を回転動力により変化させる変位機構部と、前記軸の回転動力を前記変位機構部に伝達する伝達部とを有する。
【0007】
さらに、開蓋装置において、前記軸に、前記回旋部が接続されているようにしてもよい。
また、開蓋装置において、前記回旋部は、回転動力を利用して前記被開蓋物の前記蓋を挟持する挟持部を有するようにしてもよい。
また、開蓋装置において、前記伝達部への前記軸の回転動力の切断又は接続を行う断続部とをさらに有するようにしてもよい。
また、開蓋装置において、前記軸は、軸方向に垂直な方向に突出した突出部を有し、前記断続部は、前記軸が貫挿される穴が形成されると共に、前記突出部と契合可能な契合穴が形成された歯車を有し、前記歯車は、前記突出部と前記契合穴とが契合することにより、回転動力を前記伝達部に伝達するようにしてもよい。
また、開蓋装置において、前記軸が所定の第1方向に回転している場合に、前記回旋部は、前記蓋の開蓋方向に回転し、前記変位機構部は、前記伝達部により伝達された回転動力により、前記回旋部と前記被開蓋物の載置位置との間隔を短縮するようにしてもよい。
【0008】
また、開蓋装置において、前記軸は、鉛直方向に平行に備えられ、下端に前記回旋部が回転可能に接続されるとともに、前記被開蓋物の蓋によって、前記回旋部が上方に押されることにより上方へ移動可能になっており、前記軸が上方へ移動された場合に、前記軸の前記突出部と前記断続部の前記歯車の前記契合穴との契合状態が解消されるようにしてもよい。
また、開蓋装置において、歯車は、前記断続部の前記歯車の契合状態が解消されている際に、前記軸が前記第1方向に回転する場合に、前記突出部から回転力を受けないとともに、前記第1方向と異なる第2方向へ前記軸が回転する場合に、前記突出部を前記契合穴に契合させる逆止部を有し、前記第2方向へ軸が回転する際に回転するようにしてもよい。
また、開蓋装置において、前記軸は、前記回旋部に接続される第1軸部分と、前記突出部を有する第2軸部分とを有し、前記第1軸部分及び前記第2軸部分は、同一の方向に回転可能に契合しつつ、軸方向における相対位置が可変であるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は請求項に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
本発明の一実施形態に係る開蓋装置を図面を参照して説明する。
まず、図1乃至図4を参照して、開蓋装置1を簡単に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の状態の一例を示す正面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の状態の他の例を示す正面図である。
図1及び図2に示すように、開蓋装置1は、例えば、食器棚40の下面に固定する天吊型として利用される。なお、開蓋装置1を食器棚40の下面に固定する方法としては、どのような方法を用いてもよい。
【0011】
開蓋装置1は、一般的には、邪魔にならないように、図1に示すように、上部筐体2と下部筐体3との間を縮めた状態として置かれている。そして、ビンや缶等の被開蓋物の蓋を開蓋する場合には、利用者がスイッチ22を延伸側に押すことにより、図2に示すように、上部筐体2と下部筐体3との間隔が広がり、被開蓋物を開蓋装置1に載置できるようになる。
【0012】
図3は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置における缶切時の状態を示す斜視図である。
図3に示すように、開蓋装置1により、巻締めして密封する方式の被開蓋物(第1被開蓋物)の一例である缶60の缶壁を切裂いて開蓋する缶切を行う場合には、利用者は、缶切機能部250に缶60を装着し、缶切機能部250により缶切を実行させる。ここで、缶60は、缶蓋61と缶容器部62とが巻締めされ密封されて形成され、巻締めされた部分は、環状に一周した巻締端縁部63となっている。なお、缶切における詳細な動作については後述する。
【0013】
図4は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の開蓋時の状態を示す斜視図である。
図4に示すように、開蓋装置1により蓋がネジ溝に螺合して閉じられるネジ蓋方式の缶や瓶等の被開蓋物(第2被開蓋物)50の蓋51を開ける場合には、利用者がスイッチ22を延伸側に押すことにより、上部筐体2と下部筐体3との間を広げることができ、被開蓋物50を開蓋装置1に載置することができるようになる。その後、利用者が被開蓋物50を開蓋装置1に載置して、スイッチ22を短縮側に押すことにより、被開蓋物50の蓋51と、容器部52とが開蓋装置1に保持されて、蓋51が開けられる。なお、詳細な動作については後述する。
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る開蓋装置1についてより詳細に説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の斜視図である。
開蓋装置1は、上部筐体2と、下部筐体3とを有する。上部筐体2には、例えば、2本の中空の上部柱部21が設けられている。下部筐体3には、底部31と、底部31に接続された、例えば、2本の下部柱部32が設けられている。本実施形態においては、上部柱部21の内側に下部柱部32が微少な隙間を持って収容可能になっており、上部筐体2と下部筐体3との相対間隔を最短にした際には、図1に示すように、上部柱部21の内側に下部柱部32が完全に隠れるようになっている。
【0015】
上部筐体2は、被開蓋物50の蓋51を挟持するための回旋部及び挟持部の一例としての上部把持部200を有している。
上部把持部200は、出力軸108(図8参照)に接続され、回転可能になっている。
また、上部筐体2の前面側には、上部筐体2と下部筐体3との間隔を調整する指示を行うためのスイッチ22が設けられている。本実施形態では、スイッチ22が上方に押されると、上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮される一方、スイッチ22が下方に押されると、上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸される。
【0016】
さらに、上部筐体2の前面側には、缶切機能部250が設けられている。缶切機能部250は、缶送り歯車124と、缶切レバー251とを有する。
缶送り歯車124は、モータ101(図8参照)の動力が伝達されて回転し、開蓋装置1に装着された缶60の巻締端縁部63の下面に食い込んで、缶60を回転させる。
缶切レバー251は、缶蓋61を吸着するための蓋吸着部252と、缶蓋61を切裂くための切刃253と、缶60の巻締端縁部63の上部を押付て缶60の姿勢を一定にするための缶壁押部254とを有する。
缶60を缶切り歯車124上におき、缶切レバー251を押下げると、缶切り歯車124と切刃253の内側とで缶60が図3に示すように開蓋装置1に装着されるようになる。
さらに、缶切レバー251を押下げると、缶切レバー251が切替レバー132の先端部132aを押下げることとなり、モータ101が回転することとなり、缶送り歯車124が回転する。
【0017】
図5に戻り、開蓋装置1の上部筐体2の前面側には、先端が折返されて、ビン等の口金(王冠)が引っ掛るフック形状に形成された金属製の栓抜き金具260が固定されている。この栓抜き金具260によって、ビン等の王冠を開けることができる。
下部筐体3の底部31には、被開蓋物50を載置するとともに、被開蓋物50を把持する下部把持部300が設けられている。
【0018】
図6は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の一部を断面とした図である。
図6に示すように、開蓋装置1の上部筐体2には、送り雄ねじ149、153が回転可能に固定されている。送り雄ねじ149、153の上部には、歯車148、152が設けられている。この構成により、送り雄ネジ149、153は、モータ101からの動力を歯車148、152により受けて、回転するようになっている。また、上部筐体2には、モータ101等が収容されているギヤボックス23が設けられている。
下部筐体3の下部柱部32の上部には、送り雄ネジ149、153と螺合する送り雌ネジ320、321が固定されている。この構成により、送り雄ネジ149、153が回転すると、送り雌ねじ320、321が送り雄ネジ149、153上で送られることとなり、送り雄ネジ149、153が固定された上部筐体2と、送り雌ネジ320、321が固定された下部筐体3との間隔が短縮又は延伸される。送り雄ネジ149、153は、下部柱部32の内部に収容されるようになっている。ここで、変位機構部26は、送り雄ネジ149、153と、送り雌ネジ320、321とによって構成される。
【0019】
次に、開蓋装置1の上部筐体2の内部構成について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置のスイッチ周辺を説明するための斜視図である。
スイッチ22は、図示しないバネが接続され、利用者による操作が行われない場合には、短縮、延伸動作を行わない中立位置に維持されるようになっている。スイッチ22を上側(短縮側)に移動させると、モータ101には、上部筐体2と下部筐体3との間隔を短縮させるための回転方向(正回転方向という)に回転させるための電流が供給され、スイッチ22を下側(延伸側)に移動させると、モータ101には、上部筐体2と下部筐体3との間隔を延伸させるための回転方向(逆回転方向という)に回転させるための電流が供給される。すなわち、スイッチ22の移動方向によって、電流の方向が切り替えられてモータ101に供給されるようになっている。また、スイッチ22には、突起部22aが設けられている。
【0020】
さらに、上部筐体2において、所定の軸を中心に回転可能な棒部材25が設けられている。棒部材25の左側腕部の先端部25aは、スイッチ22の突起部22aの下側に位置する一方、棒部材25の右側腕部の先端部25bは、切替レバー132(図9参照)の上部に接続された端部133の突起部133aの下側に位置するようになっている。なお、切替レバー132が所定の初期位置から下方に押されると、スイッチ134がONされて、モータ101に電流が供給されるようになっている。この際には、モータ101には、正回転方向に回転させるための電流が供給される。
この構成により、スイッチ22を延伸側に移動させた場合に、突起部22aが棒部材25の左側腕部を下方に回転させて棒部材25の右側腕部を上方に回転させる。これにより、右側腕部の先端部25bが、端部133の突起部133aの下方への移動を拘束するようになり、切替レバー132が初期位置から下方に移動することが拘束されるようになる。
【0021】
また、切替レバー132が下方に押された場合には、切替レバー132の端部133の突起部133aが棒部材25の右側腕部の先端部25bを下方に回転させて棒部材25の左側腕部を上方に回転させる。これによって、左側腕部の先端部25aがスイッチ22の突起部22aの下方への移動を拘束するようになり、スイッチ22が中立位置から延伸側に移動することが拘束されるようになる。
【0022】
このような構成により、切替レバー132によるスイッチ134の操作によるモータ101へ電流供給と、スイッチ22の延伸側への操作によるモータ101への電流供給とが同時に発生しないようになっている。本実施形態では、モータ101は、直流モータであるので、切替レバー132によるスイッチ134の操作によるモータ101への電流の供給時と、スイッチ22の延伸側の操作によるモータ101への電流の供給時とは、電流の向きが正反対であるので、上記構成により、このような競合を適切に防止できる。
【0023】
図8は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の内部の一部を説明するための斜視図であり、図9は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の出力切替部周辺を説明するための斜視図である。なお、図8及び図9においては、説明のために、一部の構成を省いたものとなっている。
ここで、以下に登場する各歯車は、樹脂成形したものであっても、焼結金属であっても、切削加工により得られるものであってもよい。
ギヤボックス23に取付けられたモータ101の出力軸先端にはウォームギヤ101aが装着されている。モータ101は、例えば、直流電圧により回転するモータであり、印加される電圧の方向によって、回転方向を切り替えることができる。ウォームギヤ101aは、減速歯車102の大歯車102aと噛合っている。減速歯車102は、大歯車102aと一体に成形された小歯車102bを有している。小歯車102bは、軸方向に長い歯幅を有しており、図9に示すように、変速歯車103の大歯車103aと軸方向における広い範囲で噛合いが可能になっている。
【0024】
変速歯車103は、大歯車103aを挟んでその上下に小歯車103bが一体成形されている。小歯車103bは、中間歯車104と、中間歯車112との契合の容易さへの配慮から大きな面取りが施されている。変速歯車103の大歯車103a、小歯車103bの中心には、貫通穴が形成されており、例えば金属製の回転軸111に対して回転自在、且つ摺動自在に貫挿される。すなわち、変速歯車103は、回転軸111に沿って上下に摺動自在となっている。
【0025】
ここで、この回転軸111と減速歯車102の軸方向とは、略平行に構成されており、減速歯車102の小歯車102bが軸方向に長い歯幅を有しているので、変速歯車103が上下に摺動しても、減速歯車102の小歯車102bと、変速歯車103の大歯車103aとの噛合いが確保されるようになっている。
回転軸111の上部側には中心に貫通穴を有する中間歯車104が回動自在に支承されている。中間歯車104は、外歯のほかに、内側に変速歯車103の上側の小歯車103bと噛合う内歯が形成されており、変速歯車103の回転の伝達が可能になっている。
【0026】
本実施例では、中間歯車104に内歯を備え、変速歯車103に小歯車103bを備え、内歯及び小歯車103bにより、中間歯車104と変速歯車103とが契合するようにしていたが、本発明はこれに限られず、変速歯車103と中間歯車104とが契合できる構成であればよく、例えば、正方形や正六角形などの形状で噛合うような構成としてもよい。
図9に示すように、回転軸111の下部側には、中間歯車112が回動自在に支承されている。中間歯車112には、内側に変速歯車103の下側の小歯車103bと噛合う内歯が形成されている。また、中間歯車112に、回転方向を変える目的で傘歯車113が設けられている。
【0027】
なお、本実施例では、中間歯車112に内歯を備え、変速歯車103に小歯車103bを備え、内歯及び小歯車103bにより、中間歯車112と変速歯車103とが契合するようにしていたが、本発明はこれに限られず、変速歯車103と中間歯車112とが契合できる構成であればよく、例えば、正方形や正六角形などの形状で噛合うような構成としてもよい。
【0028】
上記構成により、変速歯車103が回転軸111の上部へ摺動した場合には、変速歯車103の上側の小歯車103bが中間歯車104の内歯と契合することとなる。この状態においては、本実施例においては、変速歯車103の大歯車103aが減速歯車102の小歯車102bと噛合っているので、モータ101からの回転により、中間歯車104が従動するようになっている。この際、変速歯車103の下側の小歯車103bは、中間歯車112の内歯とは、契合しないので、モータ101の回転が中間歯車112に伝わることはない。
【0029】
一方、変速歯車103が回転軸111の下部へ摺動した場合には、変速歯車103の下側の小歯車103bが中間歯車112の内歯と契合することとなる。この状態においては、本実施例においては、変速歯車103の大歯車103aが減速歯車102の小歯車102bと噛合っているので、モータ101からの回転により、中間歯車112が従動するようになっている。この際、変速歯車103の上側の小歯車103bは、中間歯車104の内歯とは、契合しないようになっているので、モータ101の回転が中間歯車104に伝わることはない。このように、変速歯車103の位置によって、中間歯車104と中間歯車112とのいずれかが選択的に従動する様になっている。
【0030】
次に、変速歯車103が回転軸111の上部へ摺動した場合における動力伝達の流れに沿ってさらに構成を説明する。図8に戻り、中間歯車104の外歯車は減速歯車105の大歯車と噛合っている。減速歯車105の小歯車は、減速歯車106の大歯車と噛合っている。さらに、減速歯車106の小歯車は、最終段歯車107と噛合っている。
最終段歯車107の中央ボス部107aには、中心に貫通穴107bが穿設されている。また、最終段歯車107の中央ボス部107a上端部には、ノックピン(図示せず)と契合するための深溝部107cが設けられている。
最終段歯車107の貫通穴107bには、金属製の出力軸108の下軸部108aが貫挿される。出力軸108の下軸部108aには、ノックピンが水平に打ち込まれており、ノックピンは、深溝部107cと契合するように構成される。この構成により、最終段歯車107の回転を、ノックピンを介して出力軸108に伝達することができる。最終段歯車107は、回転自在な状態で、上下をギヤボックス23に支承されている。出力軸108の下端部には上部把持部200がネジ止めして固定されるので、螺合して閉じられるネジ蓋方式の缶や瓶の蓋を回旋して開蓋する機能を実現できる。
【0031】
次に、変速歯車103が回転軸111の下部へ摺動した場合における動力伝達の流れに沿ってさらに構成を説明する。
図9に示すように、中間歯車112の外歯としての45度の傘歯車113は、45度の傘歯車120と噛合うように構成される。傘歯車120は、軸126(図7参照)に固定されている。図8に戻り、当該軸126には、小歯車121が固定されている。小歯車121は、回転方向を逆転させる目的で、小歯車121と全く同一仕様の小歯車122と噛合うようになっている。小歯車122は、最終段の歯車123と噛合うようになっている。歯車123は出力軸125の一端に固定されている。出力軸125の他端には、缶送り歯車124が固定されている。この構成により、巻締めして密封する方式の缶壁を切裂いて開蓋する、缶切機能を実現することができる。
【0032】
本実施形態では、基本的には、出力軸側で、モータ101の回転数よりも回転数を減ずることで回転トルクを増大することを目的としている。本実施形態では、回転数は出力軸108が出力軸125より少なく、当然回転トルクは出力軸108が出力軸125より大きくなるように設定してある。すなわち、開蓋装置1においては、出力軸108への動力の伝達をする構成による減速比が、出力軸125への動力の伝達をする構成による減速比より大きくなるように構成されている。本実施形態では、両出力軸の回転トルクの比率を5:1に設定しているが、本発明者は幾多の実験を通じて比率が概ね2:1から10:1の間が好ましいとの知見を得ている。なお、この比率以外にしてもよい。
【0033】
次に、中間歯車104と中間歯車112を選択的に駆動する為の出力切替部の構成及び動作を説明する。
図9に示すように、変速歯車103は、復帰バネ131の反発力に依り、切替レバー132が利用者により、下に押されていない場合においては、中間歯車104に契合するようになっている。切替レバー132は、樹脂で一体成形されている。切替レバー132の先端部132aは、図5に示すように上部筐体2の正面の缶切レバー251を受け止める位置に突き出すように構成されている。切替レバー132の摺動部132bは、ガイドピン130が貫挿されており、ガイドピン130に沿って上下摺動自在になっている。摺動部132bは、復帰バネ131によって常時上向きに付勢されている。切替レバー132の二股に分かれたフォーク部上顎132c及びフォーク部下顎132dは変速歯車103の大歯車を上下から挟んでいる。変速歯車103は、回転軸111に沿って上下に摺動可能であるが、復帰バネ131の反発力によって、通常時、本実施例では、切替レバー132が下に押されていない場合においては、上方に偏寄されている。即ち、変速歯車103は中間歯車104と契合するようになっている。
【0034】
一方、切替レバー132の先端部132aが復帰バネ131の反発力に抗して下に押下げられると、変速歯車103は中間歯車112と契合するようになる。その際、SW操作部132eがSW(スイッチ)134の摘みを押し下げることとなり、SW134によりモータ101に電源が供給されるようになる。
切替レバー132の上部には、端部133が接続されており、切替レバー132と一体して移動可能になっている。なお、端部133には、突起部133aが形成されている。
【0035】
上部筐体2及び下部筐体3との間隔を変える場合、ネジ蓋方式の缶や瓶の蓋を回旋して開蓋する場合には、切替レバー132は復帰バネ131に依って上方に付勢されているので、変速歯車103が中間歯車104と契合した状態、即ち軸108が有効な状態(動力が伝達可能な状態)にあるので、スイッチ22が移動されると上部把持部200が回転する。この場合においては、変速歯車103が中間歯車112と契合することにより有効になる軸125は、切離された状態(すなわち、動力が伝わらない状態)に有るので、缶送り歯車124が駆動される事は絶対に無い。
【0036】
一方、缶切機能を利用して開蓋する場合には、利用者は缶切レバー251を押し下げることになる。この際には、缶切レバー251により、切替レバー132の先端部132aが下方に押し下げられるので、一体に成形された切替レバー132全体が復帰バネ131の反発力に抗してガイドピン130に沿って下に押し下げられる。これにより、フォーク部上顎132cが変速歯車103を下へ押下げ、大きめの面取りがされた変速歯車103の小歯車103bを中間歯車112の内歯と契合する位置に摺動させる。この際、同時にSW操作部132eがSW134の摘みを押し下げて電源を投入するのでモータ101が始動され、出力軸125に固定された缶送り歯車124が回転するようになる。従って缶切機能を利用して開蓋する場合は出力軸108に固定された上部把持部200が駆動される事は絶対に無い。
【0037】
次に、開蓋装置1の出力軸108の回転動力の切断及び接続を行う断続部について説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の断続部周辺を説明するための斜視図である。
出力軸108は、鉛直方向に設けられており、第1軸部分の一例としての下軸部108aと、第2軸部分の一例としての上軸部108bとにより構成されている。下軸部108aの上端部は凹状に形成され、上軸部108bの下端部は凸状に形成されている。下軸部108aの上端部と、上軸部108bの下端部とは、噛合って下軸部108aの回転が上軸部108bに伝達されるようになっている。また、上軸部108aと下軸部109bとは、鉛直方向について相対位置を変えることができるようになっており、所定の範囲内であれば、噛合い状態を維持でき、下軸部108aの回転が上軸部108bに伝達されるようになっている。本実施形態では、下軸部108aと、上軸部108bとは、常に、噛合い状態を維持できるように配置されている。
上軸部108bは、断続用歯車140に穿設された貫通穴140aに貫挿されている。
上軸部108bには、突出部の一例としてのピン110が水平に設けられている。ピン110の両端部には、滑輪110aが設けられている。滑輪110aは、例えば、潤滑性の高い樹脂で形成される。上軸部108bのピン110の上方に、ワッシャ144が貫挿されている。ワッシャ144は、図6に示すように、上部筐体2の壁面との間に設けられたバネ145により下方に付勢されている。したがって、ワッシャ144により、ピン110が下方に付勢される。
【0038】
図10に戻り、断続用歯車140の中央部には、ピン110と契合するための契合穴140bが設けられている。また、断続用歯車140の上面の支持部141は、逆止部142の一端側を回転可能に軸支している。逆止部142の他端側は、断続用歯車140上面においてバネ143と接続され、上方に付勢されている。このため、逆止部142は、バネ143が接続されている側が、接続用歯車140の契合穴140bの位置より上方にはね上げられている状態になっている。ここで、断続部27は、断続用歯車140、支持部141、逆止部142、バネ143とを有する。
この断続部27によると、上軸部108bのピン110が断続用歯車140の契合穴140bに契合している場合には、上軸部108bの動力が断続用歯車140に伝達され、さらに、変位機構部26へと伝達される。
【0039】
また、上軸部108bのピン110が断続用歯車140の契合穴140bから外れて上方に位置している場合において、上軸部108bが上方から見て反時計周りに回転する時には、ピン110は、逆止部142を押し付けて、逆止部142上を反時計回りに回転することとなり、断続用歯車140には、上軸部108bの動力が伝達されることがない。したがって、変位機構部26により上部筐体2と下部筐体3との間隔を短縮することがない。
【0040】
また、上軸部108bのピン110が断続用歯車140の契合穴140bから外れて上方に位置している場合において、上軸部108bが上方から見て時計回りに回転する時には、ピン110は逆止部142と衝突し、バネ145による下方への付勢力と相俟って契合穴140bに落ちて契合することとなる。そのため、断続用歯車140には、上軸部108bのピン110から動力が伝達されることとなる。したがって、変位機構部26に動力が伝達されることとなり、上部筐体2と下部筐体3との間隔を延伸させることとなる。
【0041】
図11は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の変位機構部周辺を説明するための斜視図である。
変位機構部26は、送り雄ねじ149、153と、送り雌ねじ320、321とを有する。変位機構部26には、歯車146、147、148、150、151、152を有する伝達部28により断続用歯車140の回転が伝達される。具体的には、断続用歯車140には、歯車146の小歯車が噛合い、歯車146の大歯車が歯車147の小歯車に噛合い、歯車147の大歯車が歯車148に噛合っている。さらに、断続用歯車140には、歯車150の小歯車が噛合い、歯車150の大歯車が歯車151の小歯車に噛合い、歯車151の大歯車が歯車152に噛合っている。
【0042】
この構成により、断続用歯車140が回転すると、歯車148及び歯車152が回転することになる。その結果、歯車148に接続されている送り雄ネジ149が回転するとともに、歯車152に接続されている送り雄ねじ153も回転することになる。これにより、送り雄ねじ149、153上において、送り雌ねじ320、321が送られ、上部筐体2と下部筐体3との間隔が変化することとなる。
【0043】
次に、上部把持部200の構成に付いて説明する。
図12は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の上部把持部の分解斜視図である。
上部把持部200は、上部筐体2の下面中心に懸吊された出力軸108の下軸部108aに接続される。下軸部108aは、先端に角形部が形成され、軸方向のネジ穴が設けられている。
右巻きの弦巻バネにより形成された戻しバネ210が上端を掛止した状態で巻き付けられたボビン209が、ボビン209に形成された角穴と出力軸108の下軸部108aの角形部と契合するようにはめ込まれる。ボビン209の上部には、図6に示すようにバネ155が設けられて下方に付勢されている。図12に戻り、スライダホルダ204には、ピニオンギヤ201と、ラック部206aがピニオンギヤ201と噛合うように形成されたスライダ206と、ラック部207aがピニオンギヤ201と噛合うように形成されたスライダ207とが内部に収容される。スライダ206、207の端部206b、207bは、蓋51を挟持する目的を考慮して端面が内側を向く様に180度折返され、ゴム質等の材料から成る滑り止めを施した挟持爪208が該端面に差込まれるようになっている。この挟持爪208によると、ビン50の厚みの少ない蓋51を両側から均等に挟持するのに好適である。
【0044】
スライダホルダ204には、摩擦パッド203が装着される。ピニオンギヤ201は、ボビン209及びスライダホルダ204の下方において、ピニオンギヤ201に形成された角穴が出力軸108の下軸部108aの角形部と契合するように装着されて、先端をネジ202によって固定される。これによって、スライダホルダ204は、下方をピニオンギヤ201に支えられて、回動可能に保持される。
また、スライダホルダ204の小穴205には、戻しバネ210の下端が掛止される。この場合においては、一対の挟持爪206b、207bが一番離れた位置でも戻し力、すなわち、挟持爪206b、207bを離れさせようとする力を保持する程度に戻しバネ210に捻りを加えた後に、小穴205に戻しバネ210の下端が掛止される。
【0045】
上部把持部200においては、モータ101が開蓋するための動力を発生すると、出力軸108の下軸部108aは下方から見て時計回り方向へ回転しようとする。この際に、上部把持部200の最下面に露出する摩擦パッド203が蓋51と摩擦係合すると上部把持部200自体の回転が拘束される。そうすると、戻しバネ210を巻き付けたボビン209及びピニオンギヤ201が出力軸108の下軸部108aとネジ固定されているので、出力軸108の下軸部108aで駆動されるピニオンギヤ201は下方から見て時計回り方向へ回転する。従って、スライダ206、107は互いに回転中心へ向けて水平に摺動する様に動作するので、一対の挟持爪206b、207bが両側から接近しつつ蓋51を両側から挟むようになり、時計回り方向へ回転しながら蓋51を正確に回転軸芯まで引寄せ、これ以上寄らない状態(ロック状態)となる。ロック状態に至るまでの間には、上部把持部200のスライダホルダ204の回転は拘束され、ボビン142は回転し続けるので右巻きの戻しバネ210は付勢され反発力を蓄えて行くことになる。
なお、ビン50の蓋51が開蓋した後に、開蓋装置1から容器部52が取り除かれると、蓄えた戻しバネ210の反発力が、一対の挟持爪206b、207bを互いに離反する方向へ向けて上部把持部200を逆回転させるので、蓋51を挟み付ける力が緩み蓋51を簡単に取外すことが出来るようになる。
【0046】
次に、下部把持部300の構成について説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の下部把持部の分解斜視図である。
下部筐体3の底部31の中心には、固定ピン302が垂直に突設されている。固定ピン302には、略中央部に円形の穴が穿設され、対向する一組の辺が折返されて形成された折返部を有するスライダホルダ303が固定ピン302を回転中心として回転可能に接続される。スライダホルダ303には、ピニオンギヤ307と、ラック部304aがピニオンギヤ307と噛合うように形成されたスライダ304と、ラック部305aがピニオンギヤ307と噛合うように形成されたスライダ305とが内部に収容される。ピニオンギヤ307は、固定ピン302の先端の角形部分と契合されてネジ310で固定される。
【0047】
下部把持部300において、スライダホルダ303が固定ピン302を中心に上から見て反時計回り方向へ回される(ピニオンギヤ307を時計回り方向へ回す事に相当する)とき、ラック部304a、305aがピニオンギヤ307の周りを回りつつ噛合いに送られて回転中心へ向けて水平に摺動する様に動作する。
スライダ304、305の固定ピン302と反対側の端部は、主骨部304c、305cがスライダ304、305の面に対して垂直に突設されている。表面にゴム質等の材料から成る滑り止めを施した回転台308は、スライダホルダ303の折返し部の上面に乗せられる。主骨部304c、305cは、回転台308に形成された長穴部309に貫挿されて回転台308の上部側に出される。表面にゴム質等の材料から成る滑り止めを施した把持爪311が主骨部304c、305c端面に上から差込まれ、図5に示すように回転台308を挟んで止めるようになっている。
【0048】
下部把持部300は、回転台308の上にビン50を載置され、ビン50が後述するように回転されることにより、回転台308が回転され、長穴部309の側面に沿ってスライダ304、305の主骨部304c、305cが上から見て反時計回り方向に回されるようになる。この結果、上述のようにスライダ304、305が互いに中心へ向けて水平に摺動するので、主骨部304c、305cに挿入固定された一対の把持爪311が互いにビン50の容器部52を両側から押しながら、開蓋時に印加する回転トルクの回転軸芯と一致する回転台308の中心軸へ向けて正確に引き寄せて行く事になる。なお、本実施形態の開蓋装置1においては、下部把持部300の中心軸と、上部把持部200の回転軸芯とをほぼ一致させて構成しているので、モータ101の動力を、ビン50の蓋51を開蓋する際に効率よく利用することができる。
【0049】
次に、ビン50の蓋51を開蓋する際における開蓋装置1の操作手順及びその際の開蓋装置1の動作について図面を参照しつつ説明する。
ここで、操作開始前においては、開蓋装置1は、図1に示すように、上部筐体2と下部筐体3との間隔が最短の収納状態にあるものとして以下説明する。
この場合には、利用者は、開蓋装置1のスイッチ22を延伸側に押し続けて、開蓋装置1の上部筐体2と下部筐体3の間に、開蓋対象のビン50を載置できるようにする必要がある。スイッチ22が延伸側に押されると、モータ101には、上部筐体2と下部筐体3との間を延伸させるための回転動力を発生させるための電源が供給される。このように電源がモータ101に供給されると、モータ101が回転し、その回転動力が出力軸108に伝達され、さらに、変位機構部26に伝達され、上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸される。
【0050】
このようにして、開蓋対象のビン50が載置できるように上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸された後には、利用者は、開蓋対象のビン50を下部筐体3の下部把持部300に載置し、スイッチ22を短縮側に押し続ける必要がある。
スイッチ22が短縮側に押されると、モータ101には、上部筐体2と下部筐体3との間を短縮させるための回転動力を発生させるための電源が供給される。このように電源がモータ101に供給されると、モータ101が回転し、その回転動力が出力軸108に伝達され、さらに、変位機構部26に伝達され、上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮される。
【0051】
図14は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第1の図であり、具体的には、開蓋装置1の下部把持部300にビン50を載置した後に、上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮しつつある状態を示している。
同図に示すように、下軸部108aと上軸部108bとの契合部分Dは、ギャップを隔てて契合している状態となっている。この状態においては、モータ101の動力は、下軸部108aに伝達され、さらに上軸部108bに伝達される。上軸部108bのピン110は、断続用歯車140の契合穴140bに契合しているので、上軸部108bの動力が断続用歯車140に伝達され、変位機構部26に伝達されることとなる。これにより、上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮される。なお、この際には、上部把持部200は、上方から見て反時計回り方向へ回転している。
さらに、利用者によりスイッチ22が短縮側に押し続けられると、上部筐体2と下部筐体3との間隔がさらに短縮され、その結果、上部把持部200に備えられた表面をゴム質等の摩擦係数の大きくて滑り難い材質で覆われた摩擦パッド203の下面が蓋51の上面に押し当てられるようになる。
【0052】
摩擦パッド203の下面が蓋51の上面に押し当てられるようになった場合には、上部把持部200自体の回転が拘束され、出力軸108で駆動されるピニオンギヤ201が上方から見て上部把持部200の回転よりもさらに反時計回り方向へ回転するようになる。従って、スライダ206、207は互いに回転中心へ向けて水平に摺動する様に動作するので、一対の挟持爪206b、207bが両側から接近しつつ蓋51を両側から挟むようになり、反時計回り方向へ回転しながら蓋51を正確に回転軸芯まで引寄せ、これ以上寄らない状態(ロック状態)となる。ロック状態に至るまでの間には、上部把持部200のスライダホルダ204の回転は拘束され、ボビン209は回転し続けるので右巻きの戻しバネ210は付勢され反発力を蓄えて行くことになる。
【0053】
また、摩擦パッド203の下面が蓋51の上面に押し当てられるようになった場合には、上部把持部200により押さえつけられたビン50が回転するようになり、回転台308が上方から見て反時計方向に回転することとなる。これにより、下部把持部300の一対の把持爪311がビン50の容器部52を両側から均等に押しながら、開蓋時に印加する回転トルクの回転軸芯と一致する回転台308の中心軸へ向けて正確に引き寄せて行き、これ以上寄らない状態(ロック状態)となる。
なお、上記した上部把持部200がロック状態となる動作と、下部把持部300がロック状態となる動作とは、種々の条件によって、いずれかが先行して起こる場合もあれば、並行して起こる場合もある。
そして、上部把持部200と下部把持部300とがロック状態になると、モータ101の動力が伝達されている上部把持部200は、なおも回転しようとする一方、下部把持部300は容器部52に対して上方から見て時計回りの方向に加力することになる。この結果、蓋51と容器部52が互いに逆向きの力で捻られることとなり、閉じられていた蓋51が開けられる。
【0054】
図15は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第2の図であり、具体的には、開蓋装置1によりビン50の蓋51を開蓋した直後の状態を示している。
同図に示すように、下軸部108aと上軸部108bとの契合部分Dは、ギャップなしに契合している状態となっている。この契合部分Dは、ビン50の蓋51が開蓋される場合にネジ溝に沿って蓋51が上昇することにより下軸部108aが上方に押えられることと、上部筐体部2と下部筐体部3との間隔が短縮されることとの少なくとも一方の影響を受けてギャップなしに契合する状態となり、その後、下軸部108aが上軸部108bを上方に押すこととなる。
【0055】
このように、下軸部108aが上軸部108bを上方に押すと、断続用歯車140の契合穴140bから上軸部108bのピン110が上方に外れ、契合穴140bとピン110との契合状態が解消される。この場合には、上軸部108bは上方から見て反時計回りに回転し、断続用歯車140の契合穴140bから外れたピン110は、契合穴110から外れた位置において上方から見て反時計回りに回転する。ピン110が反時計回りに回転する場合には、ピン110は、逆止部142を下方に押しのけて回転する。
【0056】
したがって、軸部108bの回転動力が断続用歯車140に伝達されず、この結果、変位機構部26にも伝達されず、上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮されない。これにより、ビン50に対して過剰な力が加えられる事態や、ビン50からの反発力により開蓋装置1に過剰な負荷がかかる事態を適切に防止できる。
蓋51が開蓋した後においても、スイッチ22が短縮側に押されている場合には、上部把持部200が蓋51を把持した状態でさらに回転する。この場合には、上部把持部200の自重や、バネ155の反発力によって、蓋51を下方に押える力がかかっているので、容器部52のネジ溝にそって蓋51が上下動をすることになる。
【0057】
図16は、本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第3の図であり、具体的には、開蓋装置1によりビン50の蓋51を開蓋した後に蓋51が下方に動いた状態を示している。
同図に示すように、開蓋装置1によりビン50の蓋51を開蓋した後に、蓋51が下方に動いた場合にあっては、バネ155による付勢力により、下軸部108aが下方に移動して、下軸部108aと上軸部108bとの契合部分Dにギャップが発生する。
このように、蓋51が下方に移動した場合には、この契合部分Dのギャップにより上軸部108bへの影響が吸収されるので、上軸部108bが下方に引っ張られることを防止でき、断続用歯車140等に負荷がかかることを適切に防止できる。
開蓋装置1によりビン50の蓋51が開蓋した後においては、ビン50を開蓋装置1から外すために、利用者はスイッチ22を延伸側に押す必要がある。
【0058】
スイッチ22が延伸側に押されると、モータ101には、上部筐体2と下部筐体3との間を延伸させるための回転動力を発生させるための電源が供給される。このように電源がモータ101に供給されると、モータ101が回転し、その回転動力が出力軸108に伝達される。本実施形態では、出力軸108、すなわち、下軸部108a及び上軸部108bは、上方から見て時計回りに回転する。
蓋51を開けた後においては、図16に示すように上軸部108bのピン110は、断続用歯車140の上方に位置している。この場合に、上軸部108bが上方から見て時計回りに回転すると、上軸部108bのピン110が断続用歯車140に接続されている逆止部142と衝突し、バネ145による下方への付勢力と相俟って契合穴140bに落ちて契合することとなる。これによって、上軸部108bのピン110から契合穴140bを介して断続用歯車140に上方から見て時計回りの回転動力が伝達される。この結果、変位機構部26に動力が伝達され、上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸される。
【0059】
また、上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸されることにより、下軸部108aに加わっていた上方から見て時計回り方向への回転に対する抵抗力よりも、蓄えた戻しバネ210の反発力が勝るようになり、上部把持部200の挟持爪208を互いに離反する方向へ向けて上部把持部200を時計回り方向に回転させるので、蓋51を挟み付ける力が緩み蓋51が上部把持部200から外れるようになる。
この状態では、ビン50の容器部52は、下部把持部300によって把持された状態となっているので、利用者は、下部把持部300を上方から見て時計回りに回転させることにより、下部把持部300から蓋51の開いたビン50を取り外して利用することができるようになる。
【0060】
次に、巻締めして密封する方式の缶60の缶壁を切裂いて開蓋する際の開蓋装置1の缶切機能による缶切動作を説明する。
開蓋装置1において、缶切開蓋機能を使用する場合には、利用者は、まず、缶60の巻締端縁部63の外周下面を缶送り歯車124の上に載せた状態で、缶切レバー251を押し下げることが必要である。
このように、利用者が缶切レバー251を押し下げると、缶切レバー251の中間に弾性支持された金属製の切刃253の先端が、梃子の原理によって蓋61の周縁部の内側に簡単に突刺さる。これにより、缶送り歯車124の上面と切刃253の刃面内側とで缶60が支えられるようになり、図3に示すように開蓋装置1に缶60が装着された状態になる。
【0061】
この状態から更に利用者が缶切レバー251を押し下げると、切刃253は刃面を進行方向に向け、弾性支持力の限界で留まり、缶切レバー251だけが押下げられるようになり、上部筐体2の正面から前方に突設された切替レバー132の先端部132aが復帰バネ131(図9参照)の反発力に抗して下向きに押下げられることになる。切替レバー132の先端部132aが押下げられると、切替レバー132のSW操作部132eによってSW134の摘みが押下げられてモータ101が回転を始める。この場合には、モータ101の回転動力は、上部把持部200や、変位機構部26側には、伝達されず、缶切機能部側にのみ伝達される。したがって、缶送り歯車124が正面から見て反時計回り方向へ回転を始める。
【0062】
切刃253の刃面は蓋61を押さえ付ける方向に突刺さっていて、巻締端縁部63の下面は強く下方に押し付けられて缶送り歯車124の鋭い歯車先端部に食込んでいるために、缶送り歯車124が回転すると、缶60は、缶送り歯車124で送られていくこととなる。
この結果、缶60は切刃253の刃面で切裂かれることとなり、環状の巻締端縁部63に沿って時計回りに一周すると缶60の開蓋が完了する。
【0063】
蓋61を切裂いている間は、切刃253の刃面は、蓋61に挟まれて下向きに押さえられた状態で拘束されているので、缶切レバー251を利用者が手で押し続けていなくても切刃253は蓋61を切裂く位置に保持されている。一方、蓋61の開蓋が完了すると、切刃253の刃面は、拘束から開放され、切替レバー132には復帰バネ131の反発力がかかっているため為に、切替レバー132を下向きに押下げる力が消滅する。これによって、自動復帰タイプのSW134が自己の復帰力に依って電源を切ることになり、モータ101の回転が止まる。この後、利用者は、缶切レバー251を上げる事で巻締端縁部63を内側から押さえていた切刃253を上げることができ、缶60を開蓋装置1から外して利用することができるようになる。なお、切裂かれた蓋61は、蓋吸着部252に吸着されている。
【0064】
本実施形態に係る開蓋装置によると、一個のモータによって、被開蓋物を開蓋するための載置位置と回旋部との間隔を変位させることができるとともに、被開蓋物の蓋を開けることができる。また、同一のモータによって、缶切開蓋機能を利用することができる。また、缶切開蓋機能、回旋開蓋機能の一方の機能を使用中は他の使用していない機能の出力軸が作動することを完全に防止し、安全性を向上する事ができる。また、モータをひとつ備えればよいので、製造コストを抑えることができる。
【0065】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
例えば、上記実施形態では、食器棚40等の下部に吊り下げる天吊型の開蓋装置を例としてあげていたが、本発明はこれに限られず、例えば、卓上型の開蓋装置にも本発明を適用することができる。なお、卓上型の開蓋装置とする場合においては、スイッチ22を上方に押すと、上部筐体2と下部筐体3との間隔が延伸し、下方に押すと上部筐体2と下部筐体3との間隔が短縮するようにすることが好ましい。
また、上記実施形態では、回旋部として、蓋51を両側から挟持することにより蓋51を回旋するようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、蓋51を上部から押さえつける摩擦力によって回旋するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の状態の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の状態の他の例を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の缶切時の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の開蓋時の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の一部を断面とした図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る開蓋装置のスイッチ周辺を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の内部の一部を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の出力切替部周辺を説明するための斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の断続部周辺を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の変位機構部周辺を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の上部把持部の分解斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の下部把持部の分解斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第1の図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第2の図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る開蓋装置の動作を説明するための第3の図である。
【符号の説明】
【0067】
1 開蓋装置、2 上部筐体、3 下部筐体、26 変位機構部、28 伝達部、50 ビン、51 蓋、101 モータ、108 出力軸、200 上部把持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生する単一の動力源と、
前記動力源からの動力により回転する軸と、
被開蓋物の蓋に当接し、前記軸の回転動力を利用して当該蓋を回旋可能な回旋部と、
前記回旋部と前記被開蓋物の載置位置との間隔を回転動力により変化させる変位機構部と
前記軸の回転動力を前記変位機構部に伝達する伝達部と
を有する開蓋装置。
【請求項2】
前記軸に、前記回旋部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の開蓋装置。
【請求項3】
前記回旋部は、回転動力を利用して前記被開蓋物の前記蓋を挟持する挟持部を有することを特徴とする請求項2に記載の開蓋装置。
【請求項4】
前記伝達部への前記軸の回転動力の切断又は接続を行う断続部とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の開蓋装置。
【請求項5】
前記軸は、軸方向に垂直な方向に突出した突出部を有し、
前記断続部は、前記軸が貫挿される穴が形成されると共に、前記突出部と契合可能な契合穴が形成された歯車を有し、
前記歯車は、前記突出部と前記契合穴とが契合することにより、回転動力を前記伝達部に伝達することを特徴とする請求項4に記載の開蓋装置。
【請求項6】
前記軸が所定の第1方向に回転している場合に、前記回旋部は、前記蓋の開蓋方向に回転し、前記変位機構部は、前記伝達部により伝達された回転動力により、前記回旋部と前記被開蓋物の載置位置との間隔を短縮することを特徴とする請求項5に記載の開蓋装置。
【請求項7】
前記軸は、鉛直方向に平行に備えられ、下端に前記回旋部が回転可能に接続されるとともに、前記被開蓋物の蓋によって、前記回旋部が上方に押されることにより上方へ移動可能になっており、
前記軸が上方へ移動された場合に、前記軸の前記突出部と前記断続部の前記歯車の前記契合穴との契合状態が解消される
ことを特徴とする請求項6に記載の開蓋装置。
【請求項8】
前記歯車は、前記断続部の前記歯車の契合状態が解消されている際に、前記軸が前記第1方向に回転する場合に、前記突出部から回転力を受けないとともに、前記第1方向と異なる第2方向へ前記軸が回転する場合に、前記突出部を前記契合穴に契合させる逆止部を有し、前記第2方向へ軸が回転する際に回転することを特徴とする請求項7に記載の開蓋装置。
【請求項9】
前記軸は、前記回旋部に接続される第1軸部分と、前記突出部を有する第2軸部分とを有し、前記第1軸部分及び前記第2軸部分は、同一の方向に回転可能に契合しつつ、軸方向における相対位置が可変であることを特徴とする請求項8に記載の開蓋装置。
【請求項10】
前記回旋部は、回転動力を利用して前記被開蓋物の前記蓋を挟持する挟持部を有することを特徴とする請求項1に記載の開蓋装置。
【請求項11】
前記伝達部への前記軸の回転動力の切断又は接続を行う断続部とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の開蓋装置。
【請求項12】
前記軸は、軸方向に垂直な方向に突出した突出部を有し、
前記断続部は、前記軸が貫挿される穴が形成されると共に、前記突出部と契合可能な契合穴が形成された歯車を有し、
前記歯車は、前記突出部と前記契合穴とが契合することにより、回転動力を前記伝達部に伝達することを特徴とする請求項11に記載の開蓋装置。
【請求項13】
前記軸は、前記回旋部に接続される第1軸部分と、前記突出部を有する第2軸部分とを有し、前記第1軸部分及び前記第2軸部分は、同一の方向に回転可能に契合しつつ、軸方向における相対位置が可変であることを特徴とする請求項12に記載の開蓋装置。
【請求項14】
前記軸が所定の第1方向に回転している場合に、前記回旋部は、前記蓋の開蓋方向に回転し、前記変位機構部は、前記伝達部により伝達された回転動力により、前記回旋部と前記被開蓋物の載置位置との間隔を短縮することを特徴とする請求項1に記載の開蓋装置。
【請求項15】
前記伝達部への前記軸の回転動力の切断又は接続を行う断続部とをさらに有することを特徴とする請求項14に記載の開蓋装置。
【請求項16】
前記軸は、軸方向に垂直な方向に突出した突出部を有し、
前記断続部は、前記軸が貫挿される穴が形成されると共に、前記突出部と契合可能な契合穴が形成された歯車を有し、
前記歯車は、前記突出部と前記契合穴とが契合することにより、回転動力を前記伝達部に伝達することを特徴とする請求項15に記載の開蓋装置。
【請求項17】
前記軸は、鉛直方向に平行に備えられ、前記回旋部が下端に回転可能に接続されるとともに、前記被開蓋物の蓋によって、前記回旋部が上方に押されることにより上方へ移動可能になっており、
前記軸が上方へ移動された場合に、前記軸の前記突出部と前記断続部の前記歯車の前記契合穴との契合状態が解消される
ことを特徴とする請求項16に記載の開蓋装置。
【請求項18】
前記歯車は、前記断続部の前記歯車の契合状態が解消されている際に、前記軸が前記第1方向に回転する場合に、前記突出部から回転力を受けないとともに、前記第1方向と異なる第2方向へ前記軸が回転する場合に、前記突出部を前記契合穴に契合させる逆止部を有し、前記第2方向へ軸が回転する際に回転することを特徴とする請求項17に記載の開蓋装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−137456(P2007−137456A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332072(P2005−332072)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000179373)山田電器工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】