開裂性のPEGで表面修飾されたリポソーム−DNA複合体で媒介される遺伝子送達
核酸をin vivo又はex vivoで送達するためのリポソーム組成物及び方法を開示する。組成物中のリポソームは、(i)カチオン性脂質、及び(ii)解放可能な連結部によって親水性ポリマーに結合した脂質からなる。リポソームは、細胞に送達するための核酸と会合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を送達するためのリポソーム組成物に関する。より詳細には、本発明は、カチオン性脂質、及び核酸を投与するための解放可能な(releasable)親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含むリポソーム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝物質を特定の細胞に導入することを促進する種々の方法が開発されている。これらの方法は、in vivo又はex vivo両方の遺伝子導入に有用である。前者では、遺伝子は、対象に直接導入(静脈内、腹腔内、エアゾルなど)される。ex vivo(又はin vitro)遺伝子導入では、遺伝子は、個体の特定の組織から細胞を取り出した後、細胞に導入される。次いで、形質導入された細胞を対象に戻す。
【0003】
in vivo及びex vivo遺伝子療法を達成するための送達系は、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター又はアデノウイルスベクター、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム及びリポソームを含む(Felgner,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413〜7417(1987);Mulligan、R.S.、Science 260:926〜932(1993);Morishita、R.ら、J.Clin.Invest.91:2580〜2585(1993))。
【0004】
遺伝物質を細胞へリポソーム担体を使用して送達することは、広く研究されている。リポソーム小胞が、細胞によりエンドサイトーシスを介して取り込まれ、リポソーム分解経路に入ることは一般に理解されている。したがって、分解を回避するリポソームの設計は、いくらか研究されている。
【0005】
カチオン性脂質、例えば正に荷電したアンモニウム又はスルホニウムイオン含有ヘッド基を有する糖脂質の誘導体の、負に荷電した生体分子、例えばオリゴヌクレオチド及びDNA断片を送達するための、リポソーム脂質二重層成分としての使用は広く報告されている。脂質の正に荷電したヘッド基は負に荷電した細胞表面と相互作用して、生体分子の細胞への接触及び送達を促進する。カチオン性脂質の正荷電は、核酸の複合体形成にとって、さらに重要である。
【0006】
しかし、このようなカチオン性リポソーム/核酸複合体を全身投与すると、それは肺に簡単に捕捉されてしまう。肺中でのこの局在化は、従来のカチオン性複合体の表面の強い正荷電によって引き起こされる。レポーター遺伝子との従来のカチオン性複合体のin vivo遺伝子発現は、静脈内投与後の、肺、心臓、肝臓、腎臓及び脾臓において報告されている。しかし、形態学的な検査は、発現の大多数が肺の血管を裏打ちする内皮細胞にあることを示している。この知見の説明として可能性があるのは、肺はカチオン性リポソーム/核酸複合体が静脈注射後に遭遇する最初の器官であるというものである。さらに、肺の内皮細胞の表面領域は広く、これにより、カチオン性リポソーム/核酸複合体が容易に接近できる標的を提供する。
【0007】
初期の結果は有望であったが、単なるカチオン性リポソームの静脈内注射が、疾患(例えば肺腫瘍以外の充実性腫瘍)の全身部位への、又は臨床的に関連する遺伝子発現(例えばp53又はHSV−tk)の所望の部位への遺伝子の送達に有用であるとは立証されていない。カチオン性リポソームは除去されるのが急速すぎるので、多くの安全性の問題をもたらす。
【0008】
さらに、腫瘍細胞を直接標的にすることは、新生血管内皮細胞を標的にするよりもはるかに難しい。リポソーム/DNA複合体は、腫瘍の血管構造の新生血管内皮細胞に比較的容易に接近する。なぜなら細胞は血液コンパートメントに直接曝露されるからである。腫瘍細胞を標的化するためには、リポソーム/DNA複合体は漏出性の腫瘍血管を通って血管外に遊出することが必要であり、それにより腫瘍細胞に到達できる。したがって、複合体の安定性、サイズ、表面電荷、血液循環時間、複合体の形質導入効率はすべて、腫瘍細胞の形質導入及び発現の要因である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、核酸を細胞に全身送達するための組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、カチオン性脂質及び解放可能な親水性ポリマーで誘導体化した脂質を含むリポソームを提供することである。このリポソームは、続いて細胞又は組織に核酸を送達するために、その会合した核酸と複合体を形成している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、(i)カチオン性脂質、及び(ii)親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)を含む、核酸を投与するための組成物を含む。一実施形態では、小胞形成性脂質は、以下の一般構造を有する化合物である。
【化1】
式中、R3は、解放可能な連結部に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R4は、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R5は、O(C=O)R7、S(C=O)R7及びO(C=S)R7からなる群から選択され、R7は小胞形成性脂質であり、R6は、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、CH2−R5の配向はオルト位及びパラ位から選択される。一実施形態では、解放可能な連結部はジチオベンジル部分である。
【0012】
一実施形態では、R4はアミン含有脂質である。一実施形態では、アミン含有脂質は、単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを含む。別の実施形態では、アミン含有脂質は、二重の炭化水素テールを有するリン脂質である。
【0013】
別の実施形態では、R4及びR6はアルキルである。
【0014】
一実施形態では、部分R3は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、R3はポリエチレングリコールである。別の実施形態では、R6はHであり、R4はCH3又はC2H5である。好ましい実施形態では、R3はポリエチレングリコールであり、R6はHであり、R4はCH3又はC2H5である。
【0016】
一実施形態では、カチオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DCChol)からなる群から選択される。
【0017】
別の実施形態では、リポソームはコレステロールをさらに含む。
【0018】
リポソームは核酸と会合している他に、リポソーム中に捕捉された治療用化合物をさらに含むことができることは理解されよう。核酸は、リポソームの少なくとも一部に捕捉されていることができるか、リポソームと外部から会合していることができる。核酸は、DNA、RNA、それらの断片、プラスミド、又はDNA若しくはRNAオリゴヌクレオチドであることができる。核酸は、第VIII因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードしていてもよい。
【0019】
別の実施形態では、リポソームは、リポソームを標的部位に向けるためのリガンドをさらに含む。典型的には、そのリガンドは、化合物上の親水性ポリマーR3の先端に共有結合している。一実施形態では、リガンドは内皮腫瘍細胞に結合親和性を有し、これにより内皮腫瘍細胞による内在化が起こる。代表的なリガンドとしては、以下の受容体、即ち、HER2/neu癌遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物の受容体、表皮成長因子(EGF)受容体、塩基性線維芽細胞成長受容体(塩基性FGF)受容体、血管内皮成長因子受容体、E−セレクチン受容体、L−セレクチン受容体、P−セレクチン受容体、葉酸受容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体及びケモカイン受容体に結合するのに適切なリガンドがある。好ましい実施形態では、リガンドは、her2、FGF、葉酸及びE−セレクチンから選択される。リポソームが1種を超えるリガンドを含むことができることは理解されよう。
【0020】
本発明のこれらの及びその他の目的及び特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むとより完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
I.定義
以下の用語は、別段の記載がない限り、下記の意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する通り、「カチオン性」脂質は正のイオン性を有するものである。代表的なカチオン性脂質としては、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)がある。
【0023】
「荷電した」脂質は、正又は負の荷電を有し、イオン性を有するものである。
【0024】
「小胞形成性脂質」は、疎水性で極性のヘッド基部分を有し、リン脂質で例示されるような、水中で自然に二重層小胞を形成することができる、又は疎水性部分を二重層膜の内部の疎水性領域と接触させ、極性ヘッド基部分を膜の外部の極性表面に向けて脂質二重層に安定に組み込まれる両親媒性脂質を指す。このタイプの小胞形成性脂質は典型的に、1個又は2個の疎水性アシル炭化水素鎖又はステロイド基を含み、化学的に反応性の基、例えばアミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールを極性ヘッド基に含有していてもよい。このクラスに含まれるのは、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)であり、ここで、2個の炭化水素鎖は典型的に、炭素原子約14〜22個の長さであり、様々な不飽和度を有する。用語「小胞形成性脂質」の範囲には、セレブロシド及びガングリオシドなどの糖脂質、並びにコレステロールなどのステロールも含まれる。
【0025】
「アルキル」は、炭素及び水素を含有し、分枝状又は直鎖状であることができる完全に飽和した一価の基を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル及びイソプロピルである。「低級アルキル」は、炭素原子1から6個を有するアルキル基を指し、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチル及びイソペンチルが例示される。
【0026】
「アルケニル」は、炭素及び水素を含有し、分枝状又は直鎖状であることができ、二重結合を1個又は複数含む一価の基を指す。
【0027】
本明細書で使用する「親水性ポリマー」は、ポリマーに室温である程度の水溶性を与える、水に溶解性の部分を有するポリマーを指す。代表的な親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、上掲のポリマーのコポリマー、及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマーがある。これらのポリマーの多くについての性質及び反応は、米国特許第5395619号及び同第5631018号に記載されている。
【0028】
「反応性官能基を含むポリマー」又は「結合するための連結部を含むポリマー」は、必ずしもではないが典型的に、別の化合物と反応して共有結合を形成する末端部分が修飾されているポリマーを指す。そのような反応性の官能基部分を有するようにポリマーを官能化する反応スキームは、当業者に容易に決定され、及び/又は例えば米国特許第5613018号、若しくはZalipskyらにより、例えばEur.Polymer.J.、19(12):1177〜1183(1983);Bioconj.Chem.、4(4):296〜299(1993)に記載されている。
【0029】
「迅速開裂性(fast−cleavable)のPEG」又は「PEG−H−DTB−脂質」は、mPEG−DTB−脂質を指し、ここで、R4及びR6(以下のセクションIIBの構造を参照)は水素である。
【0030】
「遅速開裂性(slow−cleavable)のPEG」又は「PEG−Me−DTB−脂質」は、mPEG−DTB−脂質を指し、ここで、ジチオベンジル部分はR4及び/又はR6へのアルキル部分の結合によって障害されている(以下のセクションIIBの構造を参照)。
【0031】
「脂肪族ジスルフィド」連結部は、R’−S−S−R”の形の連結部を意図し、ここで、R’及びR”は、さらに置換されていてもよい直鎖状又は分枝状のアルキル鎖である。
【0032】
略語:PEG:ポリエチレングリコール;mPEG:メトキシ末端ポリエチレングリコール;Chol:コレステロール;PC:ホスファチジルコリン;PHPC:部分的に水素化されたホスファチジルコリン;PHEPC:部分的に水素化された卵ホスファチジルコリン;PHSPC:部分的に水素化された大豆ホスファチジルコリン;DSPE:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン;APD:1−アミノ−2,3−プロパンジオール;DTPA:ジエチレンテトラミン五酢酸;Bn:ベンジル;NCL:中性のカチオン性リポソーム;FGF:線維芽細胞成長因子;HDSG;ヒスタミンジステアロイルグリセロール;DOTAP:1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン;DORIE:N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;DOTMA:N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド;DC−Chol:3β[N−(N’、N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;DTB:ジチオベンジル;FC−PEG:迅速開裂性のPEG;SC−PEG:遅速開裂性のPEG;DDAB:ジメチルジオクタデシルアンモニウム;GC33:N2−[N2,N5−ビス(3−アミノプロピル)−L−オルミチル]−N,N−ジオクタデシル−L−グルタミンテトラヒドロトリフルオロアセテート;EtDTB、エチルジチオベンジル;DOPE、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン。
【0033】
II.リポソーム成分
一態様では、本発明は、リポソーム及び核酸からなるリポソーム組成物を含む。このリポソームは、「カチオン性脂質」及び解放可能な結合部を介して親水性ポリマーで誘導体化した脂質を有する。これらのリポソーム成分をこれから説明する。
【0034】
A.カチオン性脂質
本発明のリポソームに含まれたカチオン性脂質は一般に、小胞形成性脂質である。好ましい実施形態では、リポソームは約20〜80モルパーセントのカチオン性脂質を含む。カチオン性の小胞形成性脂質は、操作pH、例えばpH4〜9で極性ヘッド基が正味の正電荷を有する脂質である。典型的な例としては、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質があり、その極性ヘッド基は、例えばL−リジンで誘導体化した脂質DOPE(LYS−DOPE)(Guoら、1993)について例示されている通り、正の部分、例えばリジンで誘導体化されている。このクラスには、カチオン性で極性のヘッド基を有するセレブロシド及びガングリオシドなどの糖脂質も含まれる。
【0035】
用いることができる別のカチオン性小胞形成性脂質は、コレステロールアミン及び関連のカチオン性ステロールである。代表的なカチオン性脂質としては、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)がある。好ましい実施形態では、カチオン性脂質は、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)である。
【0036】
別の実施形態では、カチオン性脂質は、中性のカチオン性脂質、即ち7.4の生理学的なpHでは主に、例えば50%超の電荷が中性であるが、生理学的なpH未満の選択したpH値では、正電荷を有する傾向がある脂質であってよい。そのような中性のカチオン性脂質は、以下に示す構造によって表される。
【化2】
式中、R1及びR2のそれぞれは、炭素原子8〜24個を有するアルキル又はアルケニル鎖であり、n=0〜20、好ましくはn=1〜20であり、好ましい実施形態では1〜10であり、Lは、(i)−X−(C=O)−Y−、(ii)−X−(C=O)−、及び(iii)−X−からなる群から選択され、ここで、X及びYは、独立に、酸素、NH及び直接結合から選択され、Zは、7.4未満で約4.0を超えるpKを有する弱塩基性部分である。
【0037】
別の実施形態では、Zは、4.5〜7.0、より好ましくは5〜6.5、最も好ましくは5〜6のpK値を有する部分である。
【0038】
好ましい中性のカチオン性脂質では、Zは、約6.0のpKを有するイミダゾール部分である。7.4の生理学的なpHでは、この部分は主に中性であるが、6.0未満のpH値では、この部分は主に正になる。代表的な中性のカチオン性脂質を調製するための反応スキームを図1に例示し、その合成の詳細は、実施例10で示す。手短に言えば、1,2−ジステアロイルグリセロール(化合物III)のパラ−ニトロフェニルカーボネートを1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(化合物I)及びパラ−ニトロフェニルクロロホルメート(化合物II)から調製し、ヒスタミン(化合物IV)と反応させて、ジステアロイルテールにカルバメート連結部を介して結合しているイミダゾール部分を有する脂質(化合物V)を得る。1−アミノ−2,3−プロパンジオールの代わりにグリセロールを使用する同様の経路を使用して、カーボネートが結合した生成物(L=−O−(C=O)−O−CH2−)を生成することができる。本発明で使用するのに適切なさらなる中性のカチオン性脂質は、同じ譲受人が所有するPCT公開第WO01/26629号に記載されている。
【0039】
本発明の脂質は、標準の合成方法を使用して調製できる。本発明の脂質は、さらに市販されている(Avanti Polar Lipids,Inc.、アラバマ州Birmingham)。
【0040】
B.脂質−DTB−ポリマー
本発明のリポソームは、ジチオベンジル部分などの解放可能な結合部を介して親水性ポリマーで誘導体化した脂質も含む。この脂質−ポリマー成分は以下の一般構造を有する。
【化3】
式中、R3は、ポリマーをジチオベンジル部分に共有結合させるのに適切な官能基を含む親水性ポリマーを含む。R4及びR6は、独立に、H、アルキル又はアリールであるように選択され、ジスルフィド開裂の速度を調整するように変化させることができる。例えば、開裂のより速い速度を達成するには、R4及びR6は水素である。開裂のより遅い速度は、R4及びR6の一方又は両方にアルキル又はアリールを選択することによりジスルフィドを立体的に障害することによって達成される。R5は、R7と一緒になった結合部分を含み、これはアミン含有脂質を含む。好ましい実施形態の連結部分は、O(C=O)、S(C=O)又はO(C=O)である。アミン含有脂質R7は、第1級アミン又は第2級アミンであることができ、以下に記載のものを含む任意の数の脂質から選択できる。基CH2−R5の配向はオルト又はパラのいずれかであることができる。
【0041】
アミン含有脂質R7は典型的には、少なくとも約8個の炭素原子を含む少なくとも1個のアシル鎖、より好ましくは約8〜24個の炭素原子を含むアシル鎖を有する水不溶性の分子である。好ましい脂質は、アミン含有極性ヘッド基及びアシル鎖を有する脂質である。代表的な脂質は、ステアロイルアミンなどの単一のアシル鎖を有する、又は2個のアシル鎖を有するリン脂質である。アミン含有ヘッド基を有する好ましいリン脂質には、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンがある。脂質テールは約12から約24個の炭素原子を有することができ、完全に飽和しているか不飽和であることができる。1種の好ましい脂質はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)であるが、当業者であれば、本記載の範囲内にある広範囲の脂質を理解されよう。脂質は当然のことながらアミン基を含むことができ、又は誘導体化されてアミン基を含むことができることも理解されよう。アシルテールを有さないその他の脂質部分、例えばコレステロールアミンも適切である。
【0042】
ポリマー−DTB−脂質化合物の合成を図2に概略的に示す。メトキシカルボニルジチオアルキル末端基を有するmPEG誘導体(MW2000及び5000ダルトン)は、2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンをmPEG−クロロホルメートと反応させることによって調製し、mPEG−クロロホルメートは、乾燥mPEG−OH溶液のホスゲン化によって容易に調製した(Zalipsky,S.ら、Biotechnol.Appl.Biochem.15:100〜114(1992))。前者の化合物は、公表された手順(Brois,S.J.ら、J.Amer.Chem.Soc.92:7629〜7631(1970);Koneko,T.ら、Bioconjugate Chem.2:133〜141(1991))に従って、当量のメトキシカルボニルスルフェニルクロリドと2−アミノエタンチオール塩酸塩反応させることによって得た。メルカプトベンジルアルコールのパラ及びオルト異性体の両方(Grice、R.ら、J.Chem.Soc.1947〜1954(1963))は、得られるPEG結合アシルジスルフィドときれいにカップリングし、ジチオベンジルアルコール末端基をもつmPEGが得られた。活性なカーボネートの導入は、非誘導体化mPEG−OHで進行し、パラ−ニトロフェニルカーボネートが得られた。DSPEをエタノールアミンに加えると、所望のmPEG−DTB−DSPE生成物が形成した。オルト−及びパラ−DTB−脂質化合物の両方を調製し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、NMR及びMALDI−TOFMSで特性決定した。その詳細は実施例1で示す。
【0043】
図3は、mPEG−DTB−DSPEコンジュゲートのチオール開裂の機序を示す。開裂すると、ホスファチジルエタノールアミン脂質は、その固有の修飾されていない形態に再生する。
【0044】
図4A〜4Bは、ジスルフィド連結部に隣接してアルキル基、例えばより障害されたジスルフィド連結部を有するmPEG−DTB−DSPEコンジュゲートの合成の反応スキームを示す。実施例2Aでより完全に記載の通り、ジクロロメタンのmPEG−OHをトリエチルアミン(TEA)の存在下でp−ニトロフェニルクロロホルメートと反応させて、mPEG−ニトロフェニルカーボネートを形成した。ジメチルホルムアミド(DMF)中のアミノアルコール、例えば1−アミノ−2−プロパノール又は1−アミノ−2−ブタノールをTEAの存在下でmPEG−ニトロフェニルカーボネートと反応させて、PEGに結合した第2級アルコールを形成した。次いでこの第2級アルコールを図4Aで例示し、実施例2Aで詳述した通りに所望のmPEG−DTB−DSPE化合物に変換した。
【0045】
この反応スキームでは、mPEG−メチル−ジチオベンジル−ニトロフェニルクロロホルメートをDSPEと反応させて、所望の化合物を形成した。mPEG−メチル−ジチオベンジル−ニトロフェニルクロロホルメート化合物のニトロフェニルクロロホルメート部分は脱離基として働いて、選択した脂質と反応して所望の生成物が得られた。この化合物は、mPEG−メチル−ジチオベンジル−R3などの化合物との反応によっても生成され、ここで、R3は、連結部分を介してベンゼン環と一緒になった脱離基を表す。この脱離基は、アミン含有リガンド、例えばDSPE、ポリペプチド又はアミン含有薬物と反応すると置換される。脱離基は、リガンドのアミンの反応性に従って選択され、好ましくは、ヒドロキシ−又はオキシ−含有脱離基を有する種々の酸性アルコールから導出される。これらには、塩化物、p−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、N−ヒドロキシ−テトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−グルタルイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン、1−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、イミダゾール、トリアゾール、N−メチル−イミダゾール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロフェノール及びトリクロロフェノールがある。
【0046】
実施例2Bは、mPEG−EtDTB−脂質コンジュゲートの調製を記載し、ここで、ジスルフィド連結部はエチル部分によって障害されている。
【0047】
図5は、本発明によるmPEG−DTB−リガンド化合物を調製するための別の合成反応スキームを示す。この反応手順の詳細は実施例3A〜3Bに示す。手短に言うと、冷1−アミノ−2−プロパノールを硫酸と反応させて、硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチルを形成した。この生成物を水性エタノール中で二硫化炭素及び水酸化ナトリウムと反応させて、5−メチルチアゾリジン−2−チオンを得た。塩酸の水溶液を5−メチルチアゾリジン−2−チオンに加え、加熱した。1週間還流させた後、生成物、1−メルカプト(メチル)エチルアンモニウムクロリドを結晶化させ、回収した。この生成物をメトキシカルボニルスルフェニルクロリドと反応させて、2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンを得た。2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンをmPEG−クロロホルメートと、図2について上記した手順を使用して反応させると、選択したアミン含有脂質との反応に適切な所望のmPEG−DTB−ニトロフェニル化合物が得られる。
【0048】
実施例3Bは、mPEG−(エチル)DTB−ニトロフェニルを合成するための反応を記載している。
【0049】
図6Aは、本発明による別のmPEG−DTB−脂質化合物を調製するための反応スキームを示す。反応の詳細は実施例4で示す。脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロールは、図4A又は図5で記載の通りに調製したmPEG−DTB−ニトロフェニルと反応させるために活性化させる。得られるmPEG−DTB−脂質は、ホスフェートヘッド基の不在下で上記した化合物とは異なる。図6AのmPEG−DTB−脂質は、開裂前には中性である。図6Bで示した通り、ジスルフィド結合をチオール還元すると、化合物は分解してカチオン性脂質が得られる。正に荷電した脂質はin vivo静電相互作用及びin vivoの標的化において、相応した利点を提供する。リポソームが細胞内に内在化される前に、還元剤を投与することによって、自然に、又は還元剤により若しくはin vivo条件によりジスルフィド結合の開裂を達成してもよい。
【0050】
上記の反応スキームでは、特許請求した化合物のR6はHである。しかし、その他の実施形態ではR6はアルキル又はアリール部分である。このアプローチにおいて、例えばR4及びR6がいずれもCH3部分である場合、α,β−不飽和塩化アシル(R’R”C=CHCOCl、ここで、R’は、例えばCH3であり、R”はCH3であるが、任意のアルキル又はアリールが意図されている)をアミン末端PEGと反応させて、対応するN−PEG−置換α,β−不飽和アミドを得る。この化合物をチオール酢酸と反応させ、C=C結合にコンジュゲートを付加することによって、対応するN−PEG−置換β−(アセチルチオ)アミドを得る。アセチルチオ基(−SCOCH3)を加水分解してチオール基(−SH)にし、次いでこれをメチル(クロロスルフェニル)ホルメート(CISCOOCH3)と反応させて、メトキシカルボニルジチオ基(−SSCOOCH3)を生成し、次いでこの中間体をp−メルカプトベンジルアルコールと反応させてN−PEG−置換β−(ジチオベンジルアルコール)アミド(構造PEG−NH−CO−CH2CR’R”−SS−p−フェニル−CH2OHを有する)を得る。次いで、ベンジルアルコール部分をニトロフェニルクロロホルメートと反応させて、上記の通りニトロフェニルカーボネート脱離基を得る。
【0051】
以下で記載する通り、カチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質からなるリポソームは、本発明を用いた研究において調製した。
【0052】
C.核酸
本発明の好ましい実施形態では、上記の脂質から形成したリポソームは核酸と会合している。「会合している」とは、核酸などの治療剤が、リポソームの中央のコンパートメント及び/又は脂質二重層の空隙に捕捉されているか、リポソームの外面と会合しているか、リポソームと会合して内部及び外部の両方から捕捉されていることを意味する。治療剤が核酸又は薬剤化合物であることができることは理解されよう。薬物化合物がリポソームに捕捉され、核酸がリポソームと外部から会合できること、又はその逆であることができることも理解されよう。リポソームは当技術分野で知られた任意の方法で核酸と会合していてもよい。代表的な方法を実施例5で詳述する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、核酸はリポソームと会合している。核酸は、種々のDNA及びRNAベースの核酸(これらの断片及び類似体を含む)から選択できる。種々の状態を治療するための種々の遺伝子が記載されており、対象の特定の遺伝子のコード配列は、GenBank又はEMBLなどのDNA配列データバンクから検索することができる。例えば、ウイルス性、悪性及び炎症性の疾患及び状態、例えば嚢胞性線維症、アデノシンデアミナーゼ欠損症及びAIDSを治療するためのポリヌクレオチドが記載されている。腫瘍抑制遺伝子、例えばAPC、DPC4、NF−1、NF−2、MTS1、RB、p53、WT1、BRCA1、BRCA2及びVHLの投与による癌の治療が企図されている。
【0054】
指示した状態を治療するための特定の核酸の例には、HLA−B7:腫瘍、結腸直腸癌、黒色腫;IL−2:癌、特に乳癌、肺癌及び腫瘍;IL−4:癌;TNF:癌;IGF−1アンチセンス:脳腫瘍;IFN:神経芽細胞腫;GM−CSF:腎細胞癌;MDR−1:癌、特に進行癌、乳癌及び卵巣癌;並びにHSVチミジンキナーゼ:脳腫瘍、頭部腫瘍及び頚部腫瘍、中皮腫、卵巣癌がある。
【0055】
ポリヌクレオチドは、その標的、通常はメッセンジャーRNA(mRNA)又はmRNA前駆体と相補的な配列からなるアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドであることができる。mRNAは、機能的な方向、即ちセンス方向に遺伝情報を含有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合はその意図したmRNAを不活化し、そのタンパク質への翻訳を妨げる。そのようなアンチセンス分子は、タンパク質が特定のRNAから翻訳されていることを示す生化学実験に基づいて決定し、RNAの配列が分かれば、相補的なワトソン−クリック塩基対を介してそれに結合するアンチセンス分子を設計できる。そのようなアンチセンス分子は典型的に、10〜30個、より好ましくは10〜25個、最も好ましくは15〜20個の塩基対を含有する。
【0056】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ加水分解耐性を改善するために修飾することができ、そのような類似体としては、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホジエステル及びp−エトキシオリゴヌクレオチドがある(WO97/07784)。
【0057】
捕捉された作用物質はまた、リボザイム、DNAザイム又は触媒RNAであることができる。
【0058】
別の実施形態では、核酸又は遺伝子は、プラスミド、好ましくは、5〜40Kbp(キロ塩基対)の範囲にあるサイズを有することが好ましい環状又は閉じた二本鎖分子であるものに挿入することができる。そのようなプラスミドは既知の方法に従って作製され、治療遺伝子、即ち、適切なプロモーター及びエンハンサー、並びに宿主細胞内での複製及び/又は宿主細胞ゲノムへの挿入に必要なその他の要素の制御下での遺伝子治療において発現される遺伝子を含む。遺伝子治療に有用なプラスミドを調製する方法は、広く知られており、参照されている。
【0059】
別の実施形態では、核酸又は遺伝子は、長期の安定な治療のための遺伝子治療に使用することができる。したがって、DNA単離物、並びに遺伝子をコードする遺伝子配列を含有するDNA発現ビヒクルを考慮する。一実施形態では、ヒト第VIII因子をコードする発現ビヒクルは、リポソーム中に捕捉されている。第VIII因子に特異的な適切なベクター及び第VIII因子配列は、当技術分野で、例えば米国特許第5668108号で記載されている。第VIII因子は血漿に通常存在するタンパク質であり、このタンパク質のレベルが低下したり、このタンパク質が不在だと血友病Aの原因となる。血友病は、異なる形、即ち血友病A、血友病B及び血友病Cで存在することが現在知られている遺伝病である。血友病Aは、強い出血傾向の臨床発現を伴う最も頻度の高い形である。これは、血小板血栓の安定化に必要な十分なフィブリン形成を欠いているためであり、傷害部位における次の再出血により血栓が容易に除去されることにつながる。
【0060】
ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の核酸、例えばDNAプラスミドは、脂質皮膜の水和中の受動捕捉によりリポソーム中に捕捉することができる。ポリヌクレオチドを捕捉するその他の手順には、核酸を単一分子の形に凝縮することがあり、ここで、硫酸プロタミン、スペルミン、スペルミジン、ヒストン、リジン、これらの混合物、又はその他の適切なポリカチオンの凝縮剤を含有する水性媒体中に、核酸を小粒子に凝縮するのに効果的な条件下で核酸を懸濁させる。凝縮した核酸分子の溶液を使用して乾燥した脂質皮膜を再水和して、凝縮された核酸を捕捉された形で有するリポソームを形成する。
【0061】
D.標的指向リガンド
リポソームは、特定の細胞集団への所望の標的結合性を達成するために、表面基、例えば抗体又は抗体断片、細胞表面受容体と相互作用する小さなエフェクター分子、抗原及びその他の同様の化合物を含有するように場合によって調製してもよい。このようなリガンドは、リポソーム脂質に、標的指向分子で誘導体化した脂質、予備形成したリポソーム中で標的指向分子により誘導体化されていることができる極性ヘッド化学基を有する脂質を含むことによって、リポソームに含めることができる。或いは、標的指向部分は、予備形成したリポソームをリガンド−ポリマー−脂質コンジュゲートと共にインキュベートすることにより予備形成したリポソームに挿入することができる。
【0062】
脂質は、リガンドを親水性ポリマー鎖の遊離の遠部末端に共有結合させることにより標的指向リガンドで誘導体化されていることができ、このポリマー鎖はその近部末端で小胞形成性脂質に結合している。選択した親水性ポリマーを選択した脂質に結合させ、選択したリガンドと反応させるためにポリマーの遊離の非結合末端を活性化するための多種多様な技術があり、特に、親水性ポリマーのポリエチレングリコール(PEG)が広く研究されている(Allen,T.M.ら、Biochemicia et Biophysica Acta 1237:99〜108(1995);Zalipsky,S.、Bioconjugate Chem.、4(4):296〜299(1993);Zalipsky、S.ら、FEBS Lett.353:71〜74(1994);Zalipsky、S.ら、Bioconjugate Chemistry、705〜708(1995);Zalipsky,S.、STEALTH LIPOSOMES(D.Lasic及びF.Martin編)、第9章、CRC Press、フロリダ州Boca Raton(1995))。
【0063】
標的指向リガンドは当業者によく知られており、本発明の好ましい実施形態では、このリガンドは内皮腫瘍細胞に結合親和性を有するものであり、より好ましくは内皮腫瘍細胞により内在化される。このようなリガンドは、増殖因子受容体の細胞外ドメインに結合することが多い。代表的な受容体としては、HER2/neu癌遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物、表皮成長因子(EGF)受容体、塩基性線維芽細胞成長受容体(塩基性FGF)受容体、血管内皮成長因子受容体、E−、L−、P−セレクチン受容体、葉酸受容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体及びケモカイン受容体がある。さらなるリガンドは、参照により本明細書に援用する、同じ譲受人が所有する米国特許第6043094号に記載されている。
【0064】
さらに、標的指向リガンドは、指示した状態を治療するための特定の核酸と組み合わせることができる。例えば、核酸が第VIII因子をコードする発現ベクターである場合、好ましいリガンドは、肝細胞に対して結合親和性を有し、且つ/又は肝細胞によるリポソームの内在化を開始させるものである。第VIII因子をコードする発現ベクターと共に使用するための好ましい標的指向リガンドはガラクトースである。
【0065】
III.組成物の調製
A.リポソーム成分
上記の脂質を含有するリポソーム、即ち、カチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質は、Szoka、F.、Jr.ら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)で詳述されたものなどの種々の技術で調製することができ、本発明を用いて調製したリポソームの具体的な例を以下に記載する。典型的に、リポソームは多重膜の小胞(MLV)であり、単純な脂質皮膜の水和技術で形成することができる。この手順では、以下に詳述したタイプのリポソーム形成性脂質の混合物を適切な有機溶媒に溶解し、次いでこれを容器中で蒸発させて薄膜を形成する。次いで、この脂質皮膜を水性媒体で覆い、水和して、典型的に約0.1から10ミクロンのサイズのMLVを形成する。
【0066】
本発明の組成物で使用するリポソームには、(i)カチオン性脂質、及び(ii)親水性ポリマーにDTB連結部を介して共有結合した脂質を含む。リポソームはまた、その他の成分、例えば小胞形成性脂質又はリポソーム脂質二重層に安定に組み込まれた脂質、例えばジアシルグリセロール、リゾリン脂質、脂肪酸、糖脂質、セレブロシド及びコレステロールなどのステロールを含む。
【0067】
典型的に、リポソームは、10〜90モルパーセント、より好ましくは約20〜80モルパーセント、さらにより好ましくは約30〜70モルパーセントのカチオン性脂質からなる。ポリマー−DTB−脂質は典型的には、約1〜20のモルパーセント、より好ましくは約2〜15モルパーセント、さらにより好ましくは約4〜12モルパーセントで含まれる。下記の本発明を用いて実施した研究では、リポソームはカチオン性脂質約50から55モルパーセント及びポリマー−DTB−脂質0.5〜5モルパーセントからなっていた。
【0068】
本発明に従って調製されたリポソームは、選択されたサイズ範囲、典型的には約0.01から0.5ミクロン、より好ましくは0.03〜0.40ミクロンの実質的に均一なサイズを有する大きさにすることができる。REV及びMLVの1つの効果的なサイジング法は、リポソームの水性懸濁液を、0.03から0.2ミクロン、典型的には0.05、0.08、0.1又は0.2ミクロンの範囲の選択した均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことを含む。その膜の孔径は、その膜を通して押し出すことによって製造したリポソームの最大サイズ、特に調製物が同じ膜を通して2回以上押し出されたときのものとほぼ一致する。均質化法はまた、リポソームを100nm以下のサイズに小型化するのにも有用である(Martin、F.J.、SPECIALIZED DRUG DELIVERY SYSTEMS−MANUFACTURING AND PRODUCTION TECHNOLOGY、(P.Tyle編)、Marcel Dekker、New York、267〜316(1990))。
【0069】
B.代表的組成物の調製及び特性決定
本発明を用いて実施した研究では、実施例5で詳述した通り、CMVプロモーターを有するpNSLルシフェラーゼ原形質DNAをカチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質からなるリポソーム中に捕捉した。標的とするリポソーム複合体は、標的指向リガンドとして葉酸を含めることによって実現した。典型的には、標的指向リガンドはPEG−DSPEの遠部末端に共有結合している。標的指向リガンドの結合は当技術分野で知られており、例えば米国特許第6180134号で記載されている。
【0070】
実施例6は、BHK細胞と共にin vitroでインキュベートしてルシフェラーゼによる形質導入効率を判定するための1〜20番の配合物の調製を記載している。配合物はすべて、モル比55:45のジオレオイルトリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)及びコレステロール(CHOL)からなるカチオン性リポソームを使用して調製した。1、3及び5番の配合物はそれぞれ、総脂質の0.5、2.0及び5.0%のモル比で非開裂性のmPEG−DSPEを含んでいた。配合物2、4及び6は、葉酸指向リガンドを加えた1、3及び5と同じである。配合物7〜18は、同濃度の葉酸指向リガンドあり及びなしの開裂性PEG−Me−DTB−DSPE及びPEG−H−DTBDSPEを使用した。19及び20番の配合物は比較対照として供給した。
【0071】
リポソーム−DNA複合体は、細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイした。結果を表1に示す。
【0072】
表1
BHK細胞培養物とのインキュベーション後のルシフェラーゼの形質導入効率
【表1】
【0073】
表1の結果から分かる通り、複合体にmPEG−DSPEを含めたために失われた遺伝子発現は、開裂性のPEG−脂質を使用した場合に少なくとも部分的に回復した。形質導入の程度は、それらの配合量のみでなく、コンジュゲートの開裂性の容易さにも逆に依存していた。2つのDTB−結合リポポリマーのうち、より立体的に障害された誘導体(PEG−Me−DTB−DSPE)は、開裂がかなり遅かった。0.5%のPEG−H−DTB−DSPE(配合物番号13)を含むリポソームのルシフェラーゼの形質導入効率は、対応する非開裂性のPEG配合物(配合物1)よりも2.5倍超高く、対応するPEG−Me−DTB−DSPE配合物(配合物7)よりもほぼ1.5倍高かった。配合物13〜18はすべて、開裂性のPEG−H−DTB−DSPEを含んでいた。これらの配合物は、非開裂性のPEG配合物(配合物1〜6)よりも2.5倍超から少なくとも8倍高い形質導入効率を示した。正の対照発現レベルは0.5モル%のmPEG−H−DTB−DSPE(配合物13)で完全に回復し、mPEG−Me−DTB−DSPE(配合物7)で部分的に回復した。
【0074】
実施例7は、ルシフェラーゼによる形質導入効率を判定するための、KbHiFr細胞系の1〜20番の配合物とのin vitroインキュベーションを記載している。
【0075】
リポソーム−DNA複合体は、細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイし、タンパク質をアッセイした。結果を表2に示す。
【0076】
表2
KbHiFr細胞培養物とのインキュベーション後のルシフェラーゼの形質導入効率
【表2】
【0077】
図7から分かる通り、ルシフェラーゼの形質導入に関する結果は実施例6で得られたものと同様であった。開裂性のPEG配合物は、複合体にmPEG−DSPEを含めたために失われた遺伝子発現を少なくとも部分的に回復した。0.5%の開裂性のリポポリマーを含むリポソームについて、PEG−H−DTB−DSPE(配合物13)は、正の対照発現レベルを完全に回復した。対応するPEG−Me−DTB−DSPE配合物(配合物7)は、対応する非開裂性のPEG配合物(配合物1)よりも2.6倍超高かった。
【0078】
インキュベーション培地は開裂剤を含んでいなかったので、データ(図7に示した)は、電荷が媒介した細胞の結合及び内在化後、開裂性のリポポリマーがリポソームコンパートメント中で分解することを示唆している。PEG−脂質の開裂が、DNAの複合体からの遊離及び最終的にDNAを発現するためのリポソームからのその放出を促進することをさらに想定できる。
【0079】
実施例8は、システインの存在下での形質導入効率を判定するための、BHK細胞系のリポソーム−DNA複合体とのin vitroインキュベーションを記載している。リポソーム−DNA複合体及びシステインを細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイし、タンパク質をアッセイした。結果を表3に示す。
【0080】
表3
システインの存在下でのルシフェラーゼの形質導入効率
【表3】
【0081】
データは、DNA複合体化リポソームをmPEG−DSPEで安定化すると、遺伝子発現がかなり阻害されることを示している。ルシフェラーゼの形質導入のかなりの増大からも分かる通り、データは、チオール分解条件(システインの添加)下では、開裂性のリポポリマーはかなり開裂していたことを示している。mPEG−DSPEはチオール分解に耐性なので、実験6と比較して、システインの添加は発現レベルに影響を与えなかった。対照的に、開裂性のリポポリマーを利用することにより、最初に失われていた形質導入効果はシステインでの処理によって回復した。Me−DTBリンカーは同じチオール分解条件下でH−DTBよりも安定なので、この発現の回復は、mPEG−H−DTB−DSPEよりも障害されているmPEG−Me−DTB−DSPEで安定化した複合体では著明ではなかった(図8)。
【0082】
実施例9は、システイン、生理学的環境に存在する穏やかな試薬の存在下でのDOPE−リポソームで実施したフルオロフォア放出アッセイを記載している。このリポソームはDTB結合リポポリマーを含んでおり、ここで、R=H又はMeであった。図10Aから分かる通り、より立体的に障害された誘導体(PEG−Me−DTB−DSPE)は、PEG−H−DTB−DSPE誘導体より開裂がかなり遅かった(図10B)。図10A〜10Bから分かる通り、障害されたジスルフィドを介して安定化したリポソームでは、放出速度は約10倍低かった。図9で示した通り、マウスでの111In標識PHPC/コレステロール/mPEG−DTB−DSPEリポソームについてのより薬物動態的な実験では、PEG−Me−DTB−DSPEリポソームにより、STEALTH(登録商標)様のプロフィールが現れた(注射用量の約30%は24時間後に依然として循環していた)。対照的に、より速く開裂するPEG−H−DTB−DSPE類似体を含むリポソームは、PHPC/コレステロール試料と同程度に迅速に除去された(注射用量の約1%が24時間後に得られた)。したがって、Me−DTBコンジュゲートは、H−DTBコンジュゲートよりも血流中でかなり安定である。
【0083】
図11は、DNA/リポソーム複合体からのDNAの送達のステップを示す。送達のステップはいずれの核酸にも適用できることが理解されよう。第1に、PEGなどの親水性ポリマーが、還元剤により又は自然に開裂する。これにより正に荷電したリポソームは細胞膜の負に荷電した脂質と相互作用し、DNA/リポソーム複合体を内在化させ、DNAを細胞内に送達する。
【実施例】
【0084】
以下の実施例で本発明を例示するが、限定することは全く意図していない。
【0085】
材料:以下の材料は示した供給源から入手した:部分的に水素化された大豆ホスファチジルコリン(Vernon Walden Inc.、ニュージャージー州Green Village);コレステロール(Sigma、ミズーリ州St.Louis);ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)及びジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)(Avanti Polar Lipids、Inc.、アラバマ州Birmingham)。
【0086】
(実施例1)
mPEG−DTB−DSPEの合成
反応スキームを図2で例示する。
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(300mg、0.12mmol、1.29当量)をCHCl3(3ml)に溶解した。DSPE(70mg、0.093mol)及びTEA(58.5μl、0.42mmol、4.5当量)をPEG溶液に加え、50℃(油浴温度)で撹拌した。15分後、TLCは反応が完了しなかったことを示した。次いで、TEA(10μl及び20μl)を2回及びmPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(50mg、30mg、10mg)を数回、反応が完了するまで10分毎に加えた。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をMeOHに溶解し、C8シリカ1gを加えた。溶媒を再び蒸発させた。C8シリカを含有する生成物をカラムの上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=30:70、60ml;MeOH:H2O=50:50、60ml;MeOH:H2O=70:30、140ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=75:25=40ml;MeOH:H2O=80:20、80ml(溶出した生成物);MeOH:H2O=85:15、40ml;MeOH:H2O=90:10、40ml;MeOH=40ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色の濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)をそれに加え、凍結乾燥し、P2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(252mg、収率89%)として得た。
【0087】
オルト−及びパラ−DTB−DSPE化合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中のメタノール勾配0〜10%、単離収率約70%)で精製し、構造をNMR及びMALDI−TOFMSで確認した。
【化4】
オルトコンジュゲートは、5.11(s,CH2,2H)及び7.31(d,1H)、7.39(m,2H)7.75(d,1H)ppmのベンジル及び芳香族シグナルのみが異なっていた。
【0088】
MALDI−TOFMSは、等しい44Da間隔のイオン分布を生成し、これはエチレンオキシド繰返し単位に相当した。化合物の平均分子量は、パラ及びオルト異性体それぞれについて、3127及び3139Daであった(理論分子量約3100Da)。
【0089】
(実施例2)
mPEG−DTB−DSPEの合成
A.mPEG−MeDTB−DSPE
この反応スキームを図4A〜4Bで例示する。
mPEG(5K)−OH(40g、8mmol)をトルエン(総体積は270mlであり、250mlはDean−Starkで留去した)と共沸乾燥した。ジクロロメタン(100ml)をmPEG−OHに加えた。水分に注意しながら、P−ニトロフェニルクロロホルメート(2.42g、12mmol、1.5当量)及びTEA(3.3ml、24mmol、3当量)をPEG溶液に4℃(氷水)で加えた。淡黄色のTEA塩酸塩が形成した。15分後、冷浴を除去し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。TLCは、反応が完了した(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)ことを示した。溶媒を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(約50℃)に溶解した。TEA塩酸塩を濾去し、温酢酸エチルで洗浄した。溶媒を蒸発させ、生成物をイソプロパノールで再結晶した(3回)。収量:38.2g(92%)。
【化5】
【0090】
1−アミノ−2−プロパノール(1.1ml、14.52mmol、3当量)及びTEA(2.02ml、14.52mmol、3当量)を、DMF(60ml)及びCH2Cl2(40ml)中のmPEG(5K)−ニトロフェニルカーボネート(25g、4.84mmol)に加えた。それは黄色の透明溶液であった。反応混合物を室温で30分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒(ジクロロメタン)を蒸発させた。イソプロパノール(250ml)をDMF(60ml)中の生成物混合物に加えた。生成物がすぐに沈殿し、次いでiPrOHで再結晶した(3回)。収量:22.12g(90%)。
【化6】
【0091】
mPEG(5K)−ウレタン−2−メチルプロパノール(22.12g、4.34mmol)をトルエン(45ml)と共沸乾燥した。ジクロロメタン(60ml)をそれに加えた。撹拌を維持し、水分に注意しながら、塩化メタンスルホニル(604.6μl、7.81mmol、1.8当量)及びTEA(3.93ml、28.21mmol、6.5当量)をmPEG溶液に0℃で加えた。30分後、冷浴を除去し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。酢酸エチルを加えて、TEA塩を除去した。生成物をイソプロパノールで再結晶した(3回)。収量:20.27g(90%)。
【化7】
【0092】
mPEG(5K)−ウレタン−2メチル−メタンスルホン(10.27g、1.98mmol)をトルエン(20ml、毎回)と共沸乾燥した。水素化ナトリウム(377mg、9.4mmol、4.75当量)を無水トルエン(60ml)に0℃(氷水中)で加えた。5分後、トリフェニルメタンチオール(3.92g、14.6mmol、7.15当量)をその溶液に加えた。10分後、mPEG−ウレタン−2メチル−メタンスルホン(10.27g、1.98mmol)をその反応混合物に加えた。それは黄色の溶液になった。45分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した。酢酸(445.57μl、7.42mmol、3.75当量)をその反応混合物に加え、過剰の水素化ナトリウムを中和した。溶液は濃く、白っぽくなった。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(30ml)及びイソプロパノール(70ml)で固体を再結晶した。生成物混合物は完全には溶解しなかったが、沈殿物は濾去した。次いで、生成物混合物をイソプロパノール/tert−ブチルアルコール(100ml/20m1)で再結晶した。収量:8.87g(84%)。
【化8】
【0093】
mPEG(5K)−ウレタン−2メチル−トリフェニルメタンチオール(8.87g、1.65mmol)をTFA/CH2Cl2(10ml/10ml)に0℃で溶解した。激しい撹拌下、メトキシカルボニルスルフェニルクロリド(185.5μl、1.99mmol、1.2当量)を溶液に加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。反応混合物をイソプロパノール:tert−ブチルアルコール(80ml:20ml)で2回再結晶した。第3級ブタノール(5ml)を生成物に加え、次いでこれを凍結乾燥し、P2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(8.32g、収率97%)として得た。
【化9】
【0094】
mPEG(5K)−ウレタンエチル(メチル)ジチオカルボニルメトキシド(8.32g、1.6mmol)を乾燥メタノール(20ml)及びクロロホルム(2.5ml)に溶解した。メルカプトベンジルアルコール(592mg、4mmol、2.5当量)の乾燥メタノール(2ml)溶液をPEG溶液に加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した(3回)。NMRは約16%の生成物が形成したことを示したので、MeOH(2ml)中のメルカプトベンジルアルコール(322mg、2.18mmol、1.8当量)をMeOH/CHCl3(24ml/1ml)中の生成物混合物に0℃(氷水)でさらに滴下した。添加(約10分)完了後、氷浴を除去し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させ、次いで生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した。収量:7.25g、(94%)。
【化10】
【0095】
mPEG(5K)−ウレタン−エチル(メチル)−ジチオベンジルアルコール(6.75g、1.27mmol)をCHCl3(30ml)に溶解し、P−ニトロフェニルクロロホルメート(513mg、2.54mmol、2当量)をそれに0℃(氷水)で加えた。5分後、トリエチルアミン(531μl、3.81mmol、3当量)を加えた。30分後、氷浴を除去し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物を酢酸エチルに溶解した。TEA塩を濾去し、次いで溶媒を蒸発させた。次いで生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した(3回)。収量:6.55g(94%)。
【化11】
【0096】
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(766mg、0.14mmol、1.29当量)をCHCl3(5ml)に溶解した。DSPE(70mg、0.093mol)及びTEA(58.5μl、0.42mmol、4.5当量)をPEG溶液に加え、50℃(油浴温度)で撹拌した。20分後、TLCは反応が完了しなかったことを示した。さらにmPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(合計1239mg、0.23mmol、2.47当量)及び1−ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt)(25mg、0.19mmol、2当量)を加えた。20分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2、モリブデナン及びニンヒドリンで)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物を温(42℃)酢酸エチルに溶解した。それは濁った溶液であった(TEA塩が沈殿していた)。溶液を濾過し、溶媒を蒸発させた。MeOH及びC8シリカ2gを生成物混合物に加えた。溶媒を再び蒸発させた。C8シリカを含有する生成物をカラムの上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O30:70、100ml;MeOH H2O50:50、100ml;MeOH H2O70:30、250ml(溶出した出発材料);MeOH H2O75:25=40ml;MeOH H2O 80:20、200ml(溶出した生成物);MeOH=100ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2、100ml;CHCl3:MeOH H2O=75:36:6、100mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)をそれに加え、凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(467mg、収率83%)として得た。
【化12】
MALDI−TOFMSは、等しい44Da間隔のイオンのベル型分布を生成し、これはエチレンオキシド繰返し単位に相当した。コンジュゲート及びmPEG−チオール(殆ど開裂したジスルフィド)の平均分子量は、6376及び5368Da(理論分子量約6053、及び5305ダルトン)であった。
【0097】
B.mPEG−エチルDTB−DSPE
mPEG−ウレタンエチル(エチル)ジチオカルボニルメトキシド(2g、0.90mmol)を乾燥メタノール(8ml)に溶解した。最初、溶液は濁っていたが、5分後に透明溶液になった。メルカプトベンジルアルコール(265.2mg、1.79mmol、2当量)をPEG溶液に加えた。反応混合物を室温で30時間撹拌した。エーテル(70ml)を反応溶液に加えると生成物が沈殿し、それを4℃で終夜維持した。その白色の固体を濾過し、酢酸エチル/エーテル、30ml/70mlで再結晶した。収量:1.96g、(94%)。
【化13】
【0098】
N−ヒドロキシ−s−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)(48mg、0.269mmol)をCHCl3(3ml)中のDSPE(55mg、0.073mmol)に50℃(油浴温度)で加えた。3〜4分後、それは透明溶液になった。次いで、mPEG−EtDTB−ニトロフェニルクロロホルメート(334mg、0.134mmol)を加え、次にトリエチルアミン(TEA、45μl、0.329mmol)を加えた。20分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した(モリブデナン及びニンヒドリンスプレー)。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をメタノールに溶解し、C8シリカ(1g)と混合し、回転蒸発によって溶媒を除去した。固体残渣をC8カラムの上部に加え、次いで、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=30:70、60ml;MeOH:H2O=50:50、60ml;MeOH:H2O=70:30、140ml;MeOH:H2O=75:25=140ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=80:20、80ml;MeOH:H2O=90:10、140ml(溶出した生成物);MeOH=40ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)を加え、凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(175mg、収率78%)として得た。
【化14】
【0099】
(実施例3)
mPEG−DTB−ニトロフェニルクロロホルメートの合成
この反応スキームを図5で例示する。
【0100】
A.1−(メルカプトメチル)エチルアンモニウムクロリドの合成の手順
1.硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチル。1−アミノ−2−プロパノール(22.53g、0.3mol)を氷浴中で激しく撹拌した。硫酸(16.10ml、0.3mol)を非常にゆっくりと1時間かけて加えた。濃い蒸気及び非常に粘稠な溶液がフラスコ内で形成した。添加が完了した後、反応物を170℃と180℃の間に減圧下で加熱し、ハウスバキュームに接続した。加熱すると、反応物は淡褐色になった。水をすべて除去した後(約1時間)、室温まで冷却させた。冷却すると、褐色でガラス状の固体が形成し、これはメタノールで磨砕すると結晶化した。それを水(50ml)に60℃で溶解した。十分な温メタノールを加えて、その溶液を80%メタノールにした。冷却すると、結晶が形成し、次いでこれを濾過し、P2O5で乾燥した。収量:17.17g(37%)。
【化15】
融点:248〜250℃(液化開始温度:250℃)
【0101】
2.5−メチルチアゾリジン−2−チオン。硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチル(23.03g、148mmol)及び二硫化炭素(10.71ml、178mmol、1.2当量)を250mlの丸底フラスコ中、50%水性エタノール(40ml)中で撹拌した。これに、50%水性エタノール(50ml)中の水酸化ナトリウム(13.06g、327mmol、2.2当量)を非常にゆっくりと滴下した。水酸化ナトリウムを加えると、出発材料はすべて溶解し、溶液はオレンジ色になった。反応物を40分間還流させる(85℃)と、明るい黄色になり、濃い沈殿物が形成した。エタノールを蒸発させ、次いでその水溶液を加温し、次いでヌッチェに通して水溶性の不純物をすべて除去した。残りの結晶を温エタノールに溶解し、次いでその溶液が80%水になるまで温水を加えた。混合物を冷却させ、次いで冷蔵すると、長い針状の結晶が得られた。収量:14.64g(75%)。
【化16】
融点:92.5〜93.5(液化開始温度:94〜95)。
【0102】
3.1−(メルカプトメチル)エチルアンモニウムクロリド。5−メチルチアゾリジン−2−チオン(6.5g、49mmol)を250mlの丸底フラスコ内に置いた。塩酸水溶液(40ml、H2O中18%)を加え、フラスコを油浴中で加熱した。反応物を1週間還流させた(120℃)。その週の間に3回、濃塩酸1mlを加えた。酢酸エチルを溶離剤とするTLCを使用して反応を監視した。それはUV、ニンヒドリン及びヨウ素蒸気を使用して可視化した。その週の間殆ど、反応物は不均一な混合物であり、出発材料は水よりも濃い油であった。1週間後、その油の出発材料はなくなったが、TLCでまだ可視であった。反応物を加熱するのを止め、室温に冷却させ、次いで冷蔵すると出発材料が結晶化した。結晶化した出発材料を濾過した。濾液を蒸発させ、P2O5及びNaOHで乾燥して、水及びHClをすべて除去した。粗生成物をジエチルエーテルで2回(各50ml)洗浄して、出発材料をすべて除去した。それをP2O5で再び乾燥した。収量:2.83g(45%)。
【化17】
融点:80〜82℃(液化開始温度:92〜94)。
【0103】
B.mPEG−エチル−DTB−ニトロフェニルクロロホルメートの合成
1.硫酸水素2−アミノ−1−エチルエチル。1−アミノ−2−ブタノール(15ml、158mmol)を氷浴中の100mlの丸底フラスコ中で激しく撹拌した。硫酸(8.43ml、158mmol)を非常にゆっくりと1時間かけて加えた。濃い蒸気及び非常に粘稠な溶液がフラスコ内で形成した。添加が完了した後、反応物を170℃と180℃の間に減圧下で加熱し、ハウスバキュームに接続した。加熱すると、反応物は淡褐色になった。水をすべて除去した後(約1時間)、室温まで冷却させた。冷却すると、褐色でガラス状の固体が形成した。それを熱水(50ml)に溶解し、次いで冷蔵庫内に終夜置いた。冷却すると、結晶が形成し、次いでこれを濾過し、P2O5で乾燥した。収量:9.98g(37%)。
【化18】
【0104】
2.5−エチルチアゾリジン−2−チオン。硫酸水素2−アミノ−1−エチル−エチル(9.98g、59mmol)及び二硫化炭素(4.26m1、71mmol、1.2当量)を100mlの丸底フラスコ中、50%水性エタノール(15m1)中で撹拌した。これに50%水性エタノール(20ml)中の水酸化ナトリウム(5.20g、130mmol、2.2当量)を非常にゆっくりと滴下した。水酸化ナトリウムを加えると、出発材料はすべて溶解し、溶液はオレンジ色になった。反応物を40分間還流させる(85℃)と、明るい黄色になり、濃い沈殿物が形成した。エタノールを蒸発させ、次いでその水溶液を加温し、次いでヌッチェに通して濾過して、水溶性の不純物を除去した。残りの結晶を温エタノールに溶解し、次いでその溶液が80%水になるまで温水を加えた。混合物を冷却させ、次いで冷蔵した。針状の結晶が得られた。収量:7.28g(86%)。
【化19】
融点:76〜78℃(液化開始温度:76.6〜76.9)。
【0105】
3.1−(メルカプトエチル)エチルアンモニウムクロリド。5−エチルチアゾリジン−2−チオン(7.24g、50mmol)を250mlの丸底フラスコ内に置いた。塩酸水溶液(45ml、H2O中18%)を加え、フラスコを油浴中で加熱した。加熱すると、出発材料は溶解し、全く不均一な混合物が形成した。反応物を1週間還流させた(120℃)。その週の間に4回、濃塩酸1mlを加えた。酢酸エチルを溶離剤とするTLCを使用して反応を監視した。それはUV、ニンヒドリン及びヨウ素蒸気を使用して可視化した。その週の間、反応物は不均一な混合物であり、出発材料は水よりも濃い油であった。反応物を加熱するのを止め、室温に冷却させ、次いで冷蔵すると、出発材料が結晶化した。結晶化した出発材料を濾過した。濾液を蒸発させ、P2O5及びNaOHで乾燥して、水及びHClをすべて除去した。粗生成物をジエチルエーテルで2回(各50ml)洗浄して、出発材料をすべて除去した。それをP2O5で再び乾燥した。収量:3.66g(52%)。1H NMR(D6−DMSO)。
【0106】
(実施例4)
mPEG−DTB−脂質の合成
この反応スキームを図6Aで例示する。
1,2−ジステレオイル−sn−グリセロール(500mg、0.8mmol)をベンゼンと共沸乾燥した(3回)。パラ−ニトロフェニルクロロホルメート(242mg、1.2mmol、1.5当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)(10mg、0.08mmol、0.1当量)及びTEA(334.5μl、2.4mmol、3当量)をCHCl3(5ml)中の1,2−ジステレオイルグリセロールに加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLC(トルエン:酢酸エチル=7:3)は、反応が完了したことを示した。次いで、生成物混合物を10%クエン酸で抽出して、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を除去し、アセトニトリル(3ml、4回)で洗浄して、過剰のp−ニトロフェニルクロロホルメートを除去した。純粋な生成物をP2O5で真空乾燥した。収量:557mg(88%)。
【化20】
【0107】
エチレンジアミン(42μl、0.63mmol、5倍過剰)及びピリジン(200μl)をCHCl3(1ml)に加えた。2−ジステアロイル−sn−p−ニトロフェニルカーボネート(100mg、0.13mmol)をCHCl3(1ml)に溶解し、エチレンジアミン溶液にパスツールピペットを用いて0℃(氷水)で滴下し、終夜(16時間)続けた。TLC(CHCl3:MeOH:H2O90:18:2及びCHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させて、ピリジンを除去した。次いで、生成物混合物をCHCl3に溶解し、カラム(Aldrich、Silica gel、60°A、200〜400メッシュ)に装填し、CHCl3:CH3COCH3及びCHCl3:MeOH勾配、CHCl3:CH3COCH3=90:10、60ml(溶出した上部);CHCl3:NeOH=90:10、60ml(溶出した生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させた。第3級ブタノールを加え、P2O5で真空乾燥した。収量:64mg(75%)。
【化21】
【0108】
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルクロロホルメート(400mg、0.162mmol、2.2当量)をCHCl3(2ml)に溶解した。1,2−ステロイル−sn−エチレンアミン(51mg、0.075mmol)及びTEA(37μl、0.264mmol、3.52当量)を溶液に加えた。次いで反応混合物を45℃で20分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2及びCHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をメタノールに溶解した。C8シリカ2gを加え、次いで溶媒を蒸発させた。生成物混合物を含有するC8シリカをC8カラム((Supelco、Supel clean、ロット番号SP0824)の上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=60:40、40ml;MeOH:H2O=70:30、80ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=80:20、40ml;MeOH:H2O=90:10=20ml;CHCl3:MeOH:H2O=5:80:15、20ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40ml(溶出した生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)を加え、溶液を凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色の固体(200mg、収率89%)として得た。
【化22】
【0109】
(実施例5)
核酸を含有するリポソームの調製
55:45の比のジオレオイルトリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)及びコレステロール(Chol)の溶液を調製することによってリポソームを調製した。次いでそのリポソームを、DNA1μg当たり脂質14nmolの比でDNAと混合した。この複合体を直径約150nmの大きさにした。DNA−リポソーム複合体を、mPEG−DSPE、mPEG−Me−DTB−DSPE又はmPEG−H−DTB−DSPEのミセル溶液と共に、葉酸指向リガンドあり又はなしで、例えば1時間室温でインキュベートして、PEG−脂質を予備形成したリポソームに挿入した。
【0110】
ルシフェラーゼをコードするpNSLプラスミドは、米国特許第5851818号で記載の通りに2種の市販のプラスミド、pGFP−N1プラスミド(Clontech、カリフォルニア州Palo Alto)及びpGL3−C(Promega Corporation、ウィスコンシン州Madison)から構築した。ルシフェラーゼレポータープラスミドDNA溶液を酸性のリポソーム溶液にゆっくりと連続的に撹拌しながら10分間加えた。
【0111】
葉酸リガンドをアミノ−PEG−DSPEに当技術分野で知られた手順(Gabizon、A.ら、Bioconjugate Chem.、10:289(1999))に従ってコンジュゲートした。DNA−リポソーム複合体をmPEG−DSPE又は葉酸−PEG−DSPEのミセル溶液と共に連続的に撹拌しながら20分間インキュベートして、リガンド−PEG−脂質を予備形成したリポソームに挿入し、リポソーム1個当たり葉酸リガンドを約30個にした。
【0112】
(実施例6)
ルシフェラーゼのBHK細胞系へのin vitro形質導入
実施例5で記載の通りに調製したルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりBHK細胞系に形質導入した。10%ウシ胎児血清、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含む通常の又は葉酸を含まないRPMI培地で細胞を培養した。形質導入の前に細胞培養物をリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすいだ。1×103個の細胞を複合体(1mlのDNA−リポソーム複合体)と共に2時間37℃で5%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後、完全な又は葉酸を含まないRPMI1640細胞培地4.0mlを細胞培養物に加えた。細胞を収穫し、ルシフェラーゼをアッセイするためにアッセイした。
【0113】
PBS中で2時間インキュベーションした後、細胞はすべて球形で浮遊しており、細胞の外観に変化はなく、細胞はフラスコに付着していた。複合体の上部に完全培地を加えて細胞を回収した。
【0114】
リポソームを実施例5で詳述した通り、以下の脂質成分で形成した。
【表4】
【0115】
(実施例7)
ルシフェラーゼのKbHiFr細胞系へのin vitro形質導入
KB細胞、ヒト上咽頭上皮癌(Saikawa、Y.、Biochemistry、34:9951〜9961(1995))を低葉酸培地で増殖させて、葉酸レポーターを過剰発現している細胞、KB−HiFR細胞を得た。10%ウシ胎児血清、グルタミン2mM、ペニシリン50u/mL及びストレプトマイシン50μg/mLを含む通常の又は葉酸を含まないRPMI培地で細胞を培養した。血清含有の葉酸を含まない培地における葉酸の濃度はわずか3nMであり、通常の培養条件下の2.26μM(1mg/L)とは異なっていた。細胞は通常、Industries(Beyt Haernek、イスラエル)中のトリプシン(0.05%)−EDTA(0.02%)溶液による処理で継代し、ウシ胎児血清はGIBCO(Grand Island、ニューヨーク)からのものであった。
【0116】
実施例6で記載した通りに、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりKB−HiFr細胞系に形質導入した。細胞を収穫し、ルシフェラーゼについてアッセイし、形質導入後24時間でタンパク質をアッセイした。タンパク質アッセイ用の試料は分析前に10倍に希釈した。
【0117】
(実施例8)
システインの存在下におけるルシフェラーゼのBHK細胞系へのin vitro形質導入
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりBHK細胞系に形質導入した。10%ウシ胎児血清、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含むRPMI培地で細胞を培養した。
【0118】
実施例5で詳述した通りに、脂質成分52.8%DOTAP、43.2%コレステロール及び4%PEG2000、PEG−Me−DTB−DSPE又はPEG−H−DTB−DSPEでリポソームを形成した。複合体を実施例5で記載の通りに調製し、終夜4℃で保存した。翌日、濃度50、250又は1250μMのPBS中のシステイン3.2mlを複合体に加え、逆様にして混合して懸濁液を形成した。
【0119】
形質導入前に細胞培養物をリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすいだ。1×103個の細胞を複合体(1mlのDNA−リポソーム複合体)と共に2時間37℃で5%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼ及びタンパク質についてアッセイした。
【0120】
(実施例9)
開裂性のリポポリマーの開裂アッセイ
100:3のモル比のDOPE:mPEG−DTB−DSPEからなる単層リポソーム(約100nm)を使用して、本質的に実施例5で記載の通りにリポソームを調製した。フルオロフォア(p−キシレン−ビス−ピリジニウムブロミド、8−ヒドロキシ−ピレントリスルホン酸三ナトリウム)をリポソーム内に捕捉した。DOPEは六方相を好むので、捕捉したフルオロフォアはPEG開裂に応答して放出された。15μM、75μM、150μM、300μM、1500μM、3000μM及び15000μMの濃度でシステインをリポソームに加え、フルオロフォアの放出をアッセイした。
【0121】
(実施例10)
中性のカチオン性脂質の調製
A.ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネートの調製
図1で例示した通り、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(500mg、0.8mmol;化合物I)をベンゼンと共沸乾燥した(回転蒸発器で3回)。パラ−ニトロフェニルクロロホルメート(242mg、1.2mmol、1.5当量;化合物II)、4−ジメチルアミノピリジン(10mg、0.08mmol、0.1当量)及びトリエチルアミン(334μl、204mmol、3当量)をCHCl3(5ml)中の1,2−ジステアロイルグリセロールに加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した。混合物をCHCl3(50ml)で希釈し、10%クエン酸で抽出した(3×15mL)。有機層を乾燥し(MgSO4)、蒸発させて固体を得た。その固体(明オレンジ色)をアセトニトリル(4×3mL)で洗浄して、過剰のp−ニトロフェニルクロロホルメートを除去した。生成物、ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネート(化合物III)をP2O5で真空乾燥した。収量:557mg(88%)。
【化23】
【0122】
B.ヒスタミンとジステアロイルグリセロールからのカルバメートの調製
1,2−ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネート(350mg、0.44mmol、化合物III)をDMSO(200μl)を含むCHCl3(1ml)中のヒスタミン(46mg、0.40mmol、0.9当量;化合物IV)に加えた。ピリジン(300μl;化合物V)をその溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜(約20時間)撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH= 90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物(化合物VI)をCHCl3に溶解し、シリカゲル(Aldrich、230〜400メッシュ、60Å)カラムに注ぎ、以下の溶媒、CHCl3:CH3COCH3=90:10、40ml(溶出した上部);CHCl3:IPA=80:20、40ml(溶出した生成物);CHCl3:IPA=70:30、40ml(溶出したさらなる生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させた。生成物をP2O5で真空乾燥して、白色の固体(236mg、収率80%)として得た。
【化24】
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】カルバメート結合及びイミダゾール「Z」基を有する本発明による中性のカチオン性脂質を調製するための合成スキームを示す図である。
【図2】アミンリガンドが脂質ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である、mPEG−DTB−アミン−脂質を合成するための合成反応スキームを例示する図である。
【図3】パラ−ジチオベンジルウレタン(DTB)−結合mPEG−DSPEコンジュゲートのチオール開裂機序を例示する図である。
【図4A】DTB結合がアルキル基で立体的に障害されている、本発明によるmPEG−DTB−DSPE化合物を調製するための合成反応スキームを示す図である。
【図4B】DTB結合がアルキル基で立体的に障害されている、本発明によるmPEG−DTB−DSPE化合物を調製するための合成反応スキームを示す図である。
【図5】本発明によるmPEG−DTB−リガンド化合物を調製するための別の合成反応スキームを示す図である。
【図6A】チオール開裂するとカチオン性脂質を生じるmPEG−DTB−脂質を合成するための合成反応スキームを示す図である。
【図6B】図6Aの化合物がチオール開裂した後の生成物を示す図である。
【図7】様々な比のmPEG−DSPE及びmPEG−DTB−DSPEで調製したプラスミド−リポソーム複合体のpg/mgタンパク質中でのルシフェラーゼ発現を示す図である。
【図8】様々な濃度のシステイン中のmPEG−DSPE及びmPEG−DTB−DSPEで調製したリポソーム−DNA複合体のin vitro形質導入のためのpg/mgタンパク質中でのルシフェラーゼ発現を示す図である。
【図9】注射24時間後のmPEG−DTB−DSPE(▼)、mPEG−Me−DTB−DSPE(●)、mPEG−DSPE(STEALTH(登録商標)、■)を有するリポソーム、及びPEG鎖を有するリポソーム(従来のリポソーム、▲)のin vivo血漿クリアランスを示す図である。
【図10A】システイン濃度15μM(◇)、75μM(■)、150μM(▲)、300μM(×)、1500μM(*)、3000μM(●)及び15000μM(|)での、mPEG−H−DTB−DSPEで調製したリポソーム中におけるシステインによる開裂に応答したリポソームに捕捉されたフルオロフォアの放出を示す図である。
【図10B】システイン濃度15μM(◇)、75μM(■)、150μM(▲)、300μM(×)、1500μM(*)、3000μM(●)及び15000μM(|)での、mPEG−Me−DTB−DSPEで調製したリポソーム中におけるシステインによる開裂に応答したリポソームに捕捉されたフルオロフォアの放出を示す図である。
【図11】DNA/リポソーム複合体を使用する、DNAの細胞への細胞内送達を例示する図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を送達するためのリポソーム組成物に関する。より詳細には、本発明は、カチオン性脂質、及び核酸を投与するための解放可能な(releasable)親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含むリポソーム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝物質を特定の細胞に導入することを促進する種々の方法が開発されている。これらの方法は、in vivo又はex vivo両方の遺伝子導入に有用である。前者では、遺伝子は、対象に直接導入(静脈内、腹腔内、エアゾルなど)される。ex vivo(又はin vitro)遺伝子導入では、遺伝子は、個体の特定の組織から細胞を取り出した後、細胞に導入される。次いで、形質導入された細胞を対象に戻す。
【0003】
in vivo及びex vivo遺伝子療法を達成するための送達系は、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター又はアデノウイルスベクター、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム及びリポソームを含む(Felgner,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413〜7417(1987);Mulligan、R.S.、Science 260:926〜932(1993);Morishita、R.ら、J.Clin.Invest.91:2580〜2585(1993))。
【0004】
遺伝物質を細胞へリポソーム担体を使用して送達することは、広く研究されている。リポソーム小胞が、細胞によりエンドサイトーシスを介して取り込まれ、リポソーム分解経路に入ることは一般に理解されている。したがって、分解を回避するリポソームの設計は、いくらか研究されている。
【0005】
カチオン性脂質、例えば正に荷電したアンモニウム又はスルホニウムイオン含有ヘッド基を有する糖脂質の誘導体の、負に荷電した生体分子、例えばオリゴヌクレオチド及びDNA断片を送達するための、リポソーム脂質二重層成分としての使用は広く報告されている。脂質の正に荷電したヘッド基は負に荷電した細胞表面と相互作用して、生体分子の細胞への接触及び送達を促進する。カチオン性脂質の正荷電は、核酸の複合体形成にとって、さらに重要である。
【0006】
しかし、このようなカチオン性リポソーム/核酸複合体を全身投与すると、それは肺に簡単に捕捉されてしまう。肺中でのこの局在化は、従来のカチオン性複合体の表面の強い正荷電によって引き起こされる。レポーター遺伝子との従来のカチオン性複合体のin vivo遺伝子発現は、静脈内投与後の、肺、心臓、肝臓、腎臓及び脾臓において報告されている。しかし、形態学的な検査は、発現の大多数が肺の血管を裏打ちする内皮細胞にあることを示している。この知見の説明として可能性があるのは、肺はカチオン性リポソーム/核酸複合体が静脈注射後に遭遇する最初の器官であるというものである。さらに、肺の内皮細胞の表面領域は広く、これにより、カチオン性リポソーム/核酸複合体が容易に接近できる標的を提供する。
【0007】
初期の結果は有望であったが、単なるカチオン性リポソームの静脈内注射が、疾患(例えば肺腫瘍以外の充実性腫瘍)の全身部位への、又は臨床的に関連する遺伝子発現(例えばp53又はHSV−tk)の所望の部位への遺伝子の送達に有用であるとは立証されていない。カチオン性リポソームは除去されるのが急速すぎるので、多くの安全性の問題をもたらす。
【0008】
さらに、腫瘍細胞を直接標的にすることは、新生血管内皮細胞を標的にするよりもはるかに難しい。リポソーム/DNA複合体は、腫瘍の血管構造の新生血管内皮細胞に比較的容易に接近する。なぜなら細胞は血液コンパートメントに直接曝露されるからである。腫瘍細胞を標的化するためには、リポソーム/DNA複合体は漏出性の腫瘍血管を通って血管外に遊出することが必要であり、それにより腫瘍細胞に到達できる。したがって、複合体の安定性、サイズ、表面電荷、血液循環時間、複合体の形質導入効率はすべて、腫瘍細胞の形質導入及び発現の要因である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、核酸を細胞に全身送達するための組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、カチオン性脂質及び解放可能な親水性ポリマーで誘導体化した脂質を含むリポソームを提供することである。このリポソームは、続いて細胞又は組織に核酸を送達するために、その会合した核酸と複合体を形成している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、(i)カチオン性脂質、及び(ii)親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)を含む、核酸を投与するための組成物を含む。一実施形態では、小胞形成性脂質は、以下の一般構造を有する化合物である。
【化1】
式中、R3は、解放可能な連結部に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R4は、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R5は、O(C=O)R7、S(C=O)R7及びO(C=S)R7からなる群から選択され、R7は小胞形成性脂質であり、R6は、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、CH2−R5の配向はオルト位及びパラ位から選択される。一実施形態では、解放可能な連結部はジチオベンジル部分である。
【0012】
一実施形態では、R4はアミン含有脂質である。一実施形態では、アミン含有脂質は、単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを含む。別の実施形態では、アミン含有脂質は、二重の炭化水素テールを有するリン脂質である。
【0013】
別の実施形態では、R4及びR6はアルキルである。
【0014】
一実施形態では、部分R3は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、R3はポリエチレングリコールである。別の実施形態では、R6はHであり、R4はCH3又はC2H5である。好ましい実施形態では、R3はポリエチレングリコールであり、R6はHであり、R4はCH3又はC2H5である。
【0016】
一実施形態では、カチオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DCChol)からなる群から選択される。
【0017】
別の実施形態では、リポソームはコレステロールをさらに含む。
【0018】
リポソームは核酸と会合している他に、リポソーム中に捕捉された治療用化合物をさらに含むことができることは理解されよう。核酸は、リポソームの少なくとも一部に捕捉されていることができるか、リポソームと外部から会合していることができる。核酸は、DNA、RNA、それらの断片、プラスミド、又はDNA若しくはRNAオリゴヌクレオチドであることができる。核酸は、第VIII因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードしていてもよい。
【0019】
別の実施形態では、リポソームは、リポソームを標的部位に向けるためのリガンドをさらに含む。典型的には、そのリガンドは、化合物上の親水性ポリマーR3の先端に共有結合している。一実施形態では、リガンドは内皮腫瘍細胞に結合親和性を有し、これにより内皮腫瘍細胞による内在化が起こる。代表的なリガンドとしては、以下の受容体、即ち、HER2/neu癌遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物の受容体、表皮成長因子(EGF)受容体、塩基性線維芽細胞成長受容体(塩基性FGF)受容体、血管内皮成長因子受容体、E−セレクチン受容体、L−セレクチン受容体、P−セレクチン受容体、葉酸受容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体及びケモカイン受容体に結合するのに適切なリガンドがある。好ましい実施形態では、リガンドは、her2、FGF、葉酸及びE−セレクチンから選択される。リポソームが1種を超えるリガンドを含むことができることは理解されよう。
【0020】
本発明のこれらの及びその他の目的及び特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むとより完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
I.定義
以下の用語は、別段の記載がない限り、下記の意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する通り、「カチオン性」脂質は正のイオン性を有するものである。代表的なカチオン性脂質としては、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)がある。
【0023】
「荷電した」脂質は、正又は負の荷電を有し、イオン性を有するものである。
【0024】
「小胞形成性脂質」は、疎水性で極性のヘッド基部分を有し、リン脂質で例示されるような、水中で自然に二重層小胞を形成することができる、又は疎水性部分を二重層膜の内部の疎水性領域と接触させ、極性ヘッド基部分を膜の外部の極性表面に向けて脂質二重層に安定に組み込まれる両親媒性脂質を指す。このタイプの小胞形成性脂質は典型的に、1個又は2個の疎水性アシル炭化水素鎖又はステロイド基を含み、化学的に反応性の基、例えばアミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールを極性ヘッド基に含有していてもよい。このクラスに含まれるのは、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)であり、ここで、2個の炭化水素鎖は典型的に、炭素原子約14〜22個の長さであり、様々な不飽和度を有する。用語「小胞形成性脂質」の範囲には、セレブロシド及びガングリオシドなどの糖脂質、並びにコレステロールなどのステロールも含まれる。
【0025】
「アルキル」は、炭素及び水素を含有し、分枝状又は直鎖状であることができる完全に飽和した一価の基を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル及びイソプロピルである。「低級アルキル」は、炭素原子1から6個を有するアルキル基を指し、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチル及びイソペンチルが例示される。
【0026】
「アルケニル」は、炭素及び水素を含有し、分枝状又は直鎖状であることができ、二重結合を1個又は複数含む一価の基を指す。
【0027】
本明細書で使用する「親水性ポリマー」は、ポリマーに室温である程度の水溶性を与える、水に溶解性の部分を有するポリマーを指す。代表的な親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、上掲のポリマーのコポリマー、及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマーがある。これらのポリマーの多くについての性質及び反応は、米国特許第5395619号及び同第5631018号に記載されている。
【0028】
「反応性官能基を含むポリマー」又は「結合するための連結部を含むポリマー」は、必ずしもではないが典型的に、別の化合物と反応して共有結合を形成する末端部分が修飾されているポリマーを指す。そのような反応性の官能基部分を有するようにポリマーを官能化する反応スキームは、当業者に容易に決定され、及び/又は例えば米国特許第5613018号、若しくはZalipskyらにより、例えばEur.Polymer.J.、19(12):1177〜1183(1983);Bioconj.Chem.、4(4):296〜299(1993)に記載されている。
【0029】
「迅速開裂性(fast−cleavable)のPEG」又は「PEG−H−DTB−脂質」は、mPEG−DTB−脂質を指し、ここで、R4及びR6(以下のセクションIIBの構造を参照)は水素である。
【0030】
「遅速開裂性(slow−cleavable)のPEG」又は「PEG−Me−DTB−脂質」は、mPEG−DTB−脂質を指し、ここで、ジチオベンジル部分はR4及び/又はR6へのアルキル部分の結合によって障害されている(以下のセクションIIBの構造を参照)。
【0031】
「脂肪族ジスルフィド」連結部は、R’−S−S−R”の形の連結部を意図し、ここで、R’及びR”は、さらに置換されていてもよい直鎖状又は分枝状のアルキル鎖である。
【0032】
略語:PEG:ポリエチレングリコール;mPEG:メトキシ末端ポリエチレングリコール;Chol:コレステロール;PC:ホスファチジルコリン;PHPC:部分的に水素化されたホスファチジルコリン;PHEPC:部分的に水素化された卵ホスファチジルコリン;PHSPC:部分的に水素化された大豆ホスファチジルコリン;DSPE:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン;APD:1−アミノ−2,3−プロパンジオール;DTPA:ジエチレンテトラミン五酢酸;Bn:ベンジル;NCL:中性のカチオン性リポソーム;FGF:線維芽細胞成長因子;HDSG;ヒスタミンジステアロイルグリセロール;DOTAP:1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン;DORIE:N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;DOTMA:N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド;DC−Chol:3β[N−(N’、N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;DTB:ジチオベンジル;FC−PEG:迅速開裂性のPEG;SC−PEG:遅速開裂性のPEG;DDAB:ジメチルジオクタデシルアンモニウム;GC33:N2−[N2,N5−ビス(3−アミノプロピル)−L−オルミチル]−N,N−ジオクタデシル−L−グルタミンテトラヒドロトリフルオロアセテート;EtDTB、エチルジチオベンジル;DOPE、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン。
【0033】
II.リポソーム成分
一態様では、本発明は、リポソーム及び核酸からなるリポソーム組成物を含む。このリポソームは、「カチオン性脂質」及び解放可能な結合部を介して親水性ポリマーで誘導体化した脂質を有する。これらのリポソーム成分をこれから説明する。
【0034】
A.カチオン性脂質
本発明のリポソームに含まれたカチオン性脂質は一般に、小胞形成性脂質である。好ましい実施形態では、リポソームは約20〜80モルパーセントのカチオン性脂質を含む。カチオン性の小胞形成性脂質は、操作pH、例えばpH4〜9で極性ヘッド基が正味の正電荷を有する脂質である。典型的な例としては、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質があり、その極性ヘッド基は、例えばL−リジンで誘導体化した脂質DOPE(LYS−DOPE)(Guoら、1993)について例示されている通り、正の部分、例えばリジンで誘導体化されている。このクラスには、カチオン性で極性のヘッド基を有するセレブロシド及びガングリオシドなどの糖脂質も含まれる。
【0035】
用いることができる別のカチオン性小胞形成性脂質は、コレステロールアミン及び関連のカチオン性ステロールである。代表的なカチオン性脂質としては、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)がある。好ましい実施形態では、カチオン性脂質は、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)である。
【0036】
別の実施形態では、カチオン性脂質は、中性のカチオン性脂質、即ち7.4の生理学的なpHでは主に、例えば50%超の電荷が中性であるが、生理学的なpH未満の選択したpH値では、正電荷を有する傾向がある脂質であってよい。そのような中性のカチオン性脂質は、以下に示す構造によって表される。
【化2】
式中、R1及びR2のそれぞれは、炭素原子8〜24個を有するアルキル又はアルケニル鎖であり、n=0〜20、好ましくはn=1〜20であり、好ましい実施形態では1〜10であり、Lは、(i)−X−(C=O)−Y−、(ii)−X−(C=O)−、及び(iii)−X−からなる群から選択され、ここで、X及びYは、独立に、酸素、NH及び直接結合から選択され、Zは、7.4未満で約4.0を超えるpKを有する弱塩基性部分である。
【0037】
別の実施形態では、Zは、4.5〜7.0、より好ましくは5〜6.5、最も好ましくは5〜6のpK値を有する部分である。
【0038】
好ましい中性のカチオン性脂質では、Zは、約6.0のpKを有するイミダゾール部分である。7.4の生理学的なpHでは、この部分は主に中性であるが、6.0未満のpH値では、この部分は主に正になる。代表的な中性のカチオン性脂質を調製するための反応スキームを図1に例示し、その合成の詳細は、実施例10で示す。手短に言えば、1,2−ジステアロイルグリセロール(化合物III)のパラ−ニトロフェニルカーボネートを1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(化合物I)及びパラ−ニトロフェニルクロロホルメート(化合物II)から調製し、ヒスタミン(化合物IV)と反応させて、ジステアロイルテールにカルバメート連結部を介して結合しているイミダゾール部分を有する脂質(化合物V)を得る。1−アミノ−2,3−プロパンジオールの代わりにグリセロールを使用する同様の経路を使用して、カーボネートが結合した生成物(L=−O−(C=O)−O−CH2−)を生成することができる。本発明で使用するのに適切なさらなる中性のカチオン性脂質は、同じ譲受人が所有するPCT公開第WO01/26629号に記載されている。
【0039】
本発明の脂質は、標準の合成方法を使用して調製できる。本発明の脂質は、さらに市販されている(Avanti Polar Lipids,Inc.、アラバマ州Birmingham)。
【0040】
B.脂質−DTB−ポリマー
本発明のリポソームは、ジチオベンジル部分などの解放可能な結合部を介して親水性ポリマーで誘導体化した脂質も含む。この脂質−ポリマー成分は以下の一般構造を有する。
【化3】
式中、R3は、ポリマーをジチオベンジル部分に共有結合させるのに適切な官能基を含む親水性ポリマーを含む。R4及びR6は、独立に、H、アルキル又はアリールであるように選択され、ジスルフィド開裂の速度を調整するように変化させることができる。例えば、開裂のより速い速度を達成するには、R4及びR6は水素である。開裂のより遅い速度は、R4及びR6の一方又は両方にアルキル又はアリールを選択することによりジスルフィドを立体的に障害することによって達成される。R5は、R7と一緒になった結合部分を含み、これはアミン含有脂質を含む。好ましい実施形態の連結部分は、O(C=O)、S(C=O)又はO(C=O)である。アミン含有脂質R7は、第1級アミン又は第2級アミンであることができ、以下に記載のものを含む任意の数の脂質から選択できる。基CH2−R5の配向はオルト又はパラのいずれかであることができる。
【0041】
アミン含有脂質R7は典型的には、少なくとも約8個の炭素原子を含む少なくとも1個のアシル鎖、より好ましくは約8〜24個の炭素原子を含むアシル鎖を有する水不溶性の分子である。好ましい脂質は、アミン含有極性ヘッド基及びアシル鎖を有する脂質である。代表的な脂質は、ステアロイルアミンなどの単一のアシル鎖を有する、又は2個のアシル鎖を有するリン脂質である。アミン含有ヘッド基を有する好ましいリン脂質には、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンがある。脂質テールは約12から約24個の炭素原子を有することができ、完全に飽和しているか不飽和であることができる。1種の好ましい脂質はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)であるが、当業者であれば、本記載の範囲内にある広範囲の脂質を理解されよう。脂質は当然のことながらアミン基を含むことができ、又は誘導体化されてアミン基を含むことができることも理解されよう。アシルテールを有さないその他の脂質部分、例えばコレステロールアミンも適切である。
【0042】
ポリマー−DTB−脂質化合物の合成を図2に概略的に示す。メトキシカルボニルジチオアルキル末端基を有するmPEG誘導体(MW2000及び5000ダルトン)は、2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンをmPEG−クロロホルメートと反応させることによって調製し、mPEG−クロロホルメートは、乾燥mPEG−OH溶液のホスゲン化によって容易に調製した(Zalipsky,S.ら、Biotechnol.Appl.Biochem.15:100〜114(1992))。前者の化合物は、公表された手順(Brois,S.J.ら、J.Amer.Chem.Soc.92:7629〜7631(1970);Koneko,T.ら、Bioconjugate Chem.2:133〜141(1991))に従って、当量のメトキシカルボニルスルフェニルクロリドと2−アミノエタンチオール塩酸塩反応させることによって得た。メルカプトベンジルアルコールのパラ及びオルト異性体の両方(Grice、R.ら、J.Chem.Soc.1947〜1954(1963))は、得られるPEG結合アシルジスルフィドときれいにカップリングし、ジチオベンジルアルコール末端基をもつmPEGが得られた。活性なカーボネートの導入は、非誘導体化mPEG−OHで進行し、パラ−ニトロフェニルカーボネートが得られた。DSPEをエタノールアミンに加えると、所望のmPEG−DTB−DSPE生成物が形成した。オルト−及びパラ−DTB−脂質化合物の両方を調製し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、NMR及びMALDI−TOFMSで特性決定した。その詳細は実施例1で示す。
【0043】
図3は、mPEG−DTB−DSPEコンジュゲートのチオール開裂の機序を示す。開裂すると、ホスファチジルエタノールアミン脂質は、その固有の修飾されていない形態に再生する。
【0044】
図4A〜4Bは、ジスルフィド連結部に隣接してアルキル基、例えばより障害されたジスルフィド連結部を有するmPEG−DTB−DSPEコンジュゲートの合成の反応スキームを示す。実施例2Aでより完全に記載の通り、ジクロロメタンのmPEG−OHをトリエチルアミン(TEA)の存在下でp−ニトロフェニルクロロホルメートと反応させて、mPEG−ニトロフェニルカーボネートを形成した。ジメチルホルムアミド(DMF)中のアミノアルコール、例えば1−アミノ−2−プロパノール又は1−アミノ−2−ブタノールをTEAの存在下でmPEG−ニトロフェニルカーボネートと反応させて、PEGに結合した第2級アルコールを形成した。次いでこの第2級アルコールを図4Aで例示し、実施例2Aで詳述した通りに所望のmPEG−DTB−DSPE化合物に変換した。
【0045】
この反応スキームでは、mPEG−メチル−ジチオベンジル−ニトロフェニルクロロホルメートをDSPEと反応させて、所望の化合物を形成した。mPEG−メチル−ジチオベンジル−ニトロフェニルクロロホルメート化合物のニトロフェニルクロロホルメート部分は脱離基として働いて、選択した脂質と反応して所望の生成物が得られた。この化合物は、mPEG−メチル−ジチオベンジル−R3などの化合物との反応によっても生成され、ここで、R3は、連結部分を介してベンゼン環と一緒になった脱離基を表す。この脱離基は、アミン含有リガンド、例えばDSPE、ポリペプチド又はアミン含有薬物と反応すると置換される。脱離基は、リガンドのアミンの反応性に従って選択され、好ましくは、ヒドロキシ−又はオキシ−含有脱離基を有する種々の酸性アルコールから導出される。これらには、塩化物、p−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、N−ヒドロキシ−テトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−グルタルイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン、1−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、イミダゾール、トリアゾール、N−メチル−イミダゾール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロフェノール及びトリクロロフェノールがある。
【0046】
実施例2Bは、mPEG−EtDTB−脂質コンジュゲートの調製を記載し、ここで、ジスルフィド連結部はエチル部分によって障害されている。
【0047】
図5は、本発明によるmPEG−DTB−リガンド化合物を調製するための別の合成反応スキームを示す。この反応手順の詳細は実施例3A〜3Bに示す。手短に言うと、冷1−アミノ−2−プロパノールを硫酸と反応させて、硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチルを形成した。この生成物を水性エタノール中で二硫化炭素及び水酸化ナトリウムと反応させて、5−メチルチアゾリジン−2−チオンを得た。塩酸の水溶液を5−メチルチアゾリジン−2−チオンに加え、加熱した。1週間還流させた後、生成物、1−メルカプト(メチル)エチルアンモニウムクロリドを結晶化させ、回収した。この生成物をメトキシカルボニルスルフェニルクロリドと反応させて、2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンを得た。2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンをmPEG−クロロホルメートと、図2について上記した手順を使用して反応させると、選択したアミン含有脂質との反応に適切な所望のmPEG−DTB−ニトロフェニル化合物が得られる。
【0048】
実施例3Bは、mPEG−(エチル)DTB−ニトロフェニルを合成するための反応を記載している。
【0049】
図6Aは、本発明による別のmPEG−DTB−脂質化合物を調製するための反応スキームを示す。反応の詳細は実施例4で示す。脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロールは、図4A又は図5で記載の通りに調製したmPEG−DTB−ニトロフェニルと反応させるために活性化させる。得られるmPEG−DTB−脂質は、ホスフェートヘッド基の不在下で上記した化合物とは異なる。図6AのmPEG−DTB−脂質は、開裂前には中性である。図6Bで示した通り、ジスルフィド結合をチオール還元すると、化合物は分解してカチオン性脂質が得られる。正に荷電した脂質はin vivo静電相互作用及びin vivoの標的化において、相応した利点を提供する。リポソームが細胞内に内在化される前に、還元剤を投与することによって、自然に、又は還元剤により若しくはin vivo条件によりジスルフィド結合の開裂を達成してもよい。
【0050】
上記の反応スキームでは、特許請求した化合物のR6はHである。しかし、その他の実施形態ではR6はアルキル又はアリール部分である。このアプローチにおいて、例えばR4及びR6がいずれもCH3部分である場合、α,β−不飽和塩化アシル(R’R”C=CHCOCl、ここで、R’は、例えばCH3であり、R”はCH3であるが、任意のアルキル又はアリールが意図されている)をアミン末端PEGと反応させて、対応するN−PEG−置換α,β−不飽和アミドを得る。この化合物をチオール酢酸と反応させ、C=C結合にコンジュゲートを付加することによって、対応するN−PEG−置換β−(アセチルチオ)アミドを得る。アセチルチオ基(−SCOCH3)を加水分解してチオール基(−SH)にし、次いでこれをメチル(クロロスルフェニル)ホルメート(CISCOOCH3)と反応させて、メトキシカルボニルジチオ基(−SSCOOCH3)を生成し、次いでこの中間体をp−メルカプトベンジルアルコールと反応させてN−PEG−置換β−(ジチオベンジルアルコール)アミド(構造PEG−NH−CO−CH2CR’R”−SS−p−フェニル−CH2OHを有する)を得る。次いで、ベンジルアルコール部分をニトロフェニルクロロホルメートと反応させて、上記の通りニトロフェニルカーボネート脱離基を得る。
【0051】
以下で記載する通り、カチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質からなるリポソームは、本発明を用いた研究において調製した。
【0052】
C.核酸
本発明の好ましい実施形態では、上記の脂質から形成したリポソームは核酸と会合している。「会合している」とは、核酸などの治療剤が、リポソームの中央のコンパートメント及び/又は脂質二重層の空隙に捕捉されているか、リポソームの外面と会合しているか、リポソームと会合して内部及び外部の両方から捕捉されていることを意味する。治療剤が核酸又は薬剤化合物であることができることは理解されよう。薬物化合物がリポソームに捕捉され、核酸がリポソームと外部から会合できること、又はその逆であることができることも理解されよう。リポソームは当技術分野で知られた任意の方法で核酸と会合していてもよい。代表的な方法を実施例5で詳述する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、核酸はリポソームと会合している。核酸は、種々のDNA及びRNAベースの核酸(これらの断片及び類似体を含む)から選択できる。種々の状態を治療するための種々の遺伝子が記載されており、対象の特定の遺伝子のコード配列は、GenBank又はEMBLなどのDNA配列データバンクから検索することができる。例えば、ウイルス性、悪性及び炎症性の疾患及び状態、例えば嚢胞性線維症、アデノシンデアミナーゼ欠損症及びAIDSを治療するためのポリヌクレオチドが記載されている。腫瘍抑制遺伝子、例えばAPC、DPC4、NF−1、NF−2、MTS1、RB、p53、WT1、BRCA1、BRCA2及びVHLの投与による癌の治療が企図されている。
【0054】
指示した状態を治療するための特定の核酸の例には、HLA−B7:腫瘍、結腸直腸癌、黒色腫;IL−2:癌、特に乳癌、肺癌及び腫瘍;IL−4:癌;TNF:癌;IGF−1アンチセンス:脳腫瘍;IFN:神経芽細胞腫;GM−CSF:腎細胞癌;MDR−1:癌、特に進行癌、乳癌及び卵巣癌;並びにHSVチミジンキナーゼ:脳腫瘍、頭部腫瘍及び頚部腫瘍、中皮腫、卵巣癌がある。
【0055】
ポリヌクレオチドは、その標的、通常はメッセンジャーRNA(mRNA)又はmRNA前駆体と相補的な配列からなるアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドであることができる。mRNAは、機能的な方向、即ちセンス方向に遺伝情報を含有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの結合はその意図したmRNAを不活化し、そのタンパク質への翻訳を妨げる。そのようなアンチセンス分子は、タンパク質が特定のRNAから翻訳されていることを示す生化学実験に基づいて決定し、RNAの配列が分かれば、相補的なワトソン−クリック塩基対を介してそれに結合するアンチセンス分子を設計できる。そのようなアンチセンス分子は典型的に、10〜30個、より好ましくは10〜25個、最も好ましくは15〜20個の塩基対を含有する。
【0056】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ加水分解耐性を改善するために修飾することができ、そのような類似体としては、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホジエステル及びp−エトキシオリゴヌクレオチドがある(WO97/07784)。
【0057】
捕捉された作用物質はまた、リボザイム、DNAザイム又は触媒RNAであることができる。
【0058】
別の実施形態では、核酸又は遺伝子は、プラスミド、好ましくは、5〜40Kbp(キロ塩基対)の範囲にあるサイズを有することが好ましい環状又は閉じた二本鎖分子であるものに挿入することができる。そのようなプラスミドは既知の方法に従って作製され、治療遺伝子、即ち、適切なプロモーター及びエンハンサー、並びに宿主細胞内での複製及び/又は宿主細胞ゲノムへの挿入に必要なその他の要素の制御下での遺伝子治療において発現される遺伝子を含む。遺伝子治療に有用なプラスミドを調製する方法は、広く知られており、参照されている。
【0059】
別の実施形態では、核酸又は遺伝子は、長期の安定な治療のための遺伝子治療に使用することができる。したがって、DNA単離物、並びに遺伝子をコードする遺伝子配列を含有するDNA発現ビヒクルを考慮する。一実施形態では、ヒト第VIII因子をコードする発現ビヒクルは、リポソーム中に捕捉されている。第VIII因子に特異的な適切なベクター及び第VIII因子配列は、当技術分野で、例えば米国特許第5668108号で記載されている。第VIII因子は血漿に通常存在するタンパク質であり、このタンパク質のレベルが低下したり、このタンパク質が不在だと血友病Aの原因となる。血友病は、異なる形、即ち血友病A、血友病B及び血友病Cで存在することが現在知られている遺伝病である。血友病Aは、強い出血傾向の臨床発現を伴う最も頻度の高い形である。これは、血小板血栓の安定化に必要な十分なフィブリン形成を欠いているためであり、傷害部位における次の再出血により血栓が容易に除去されることにつながる。
【0060】
ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の核酸、例えばDNAプラスミドは、脂質皮膜の水和中の受動捕捉によりリポソーム中に捕捉することができる。ポリヌクレオチドを捕捉するその他の手順には、核酸を単一分子の形に凝縮することがあり、ここで、硫酸プロタミン、スペルミン、スペルミジン、ヒストン、リジン、これらの混合物、又はその他の適切なポリカチオンの凝縮剤を含有する水性媒体中に、核酸を小粒子に凝縮するのに効果的な条件下で核酸を懸濁させる。凝縮した核酸分子の溶液を使用して乾燥した脂質皮膜を再水和して、凝縮された核酸を捕捉された形で有するリポソームを形成する。
【0061】
D.標的指向リガンド
リポソームは、特定の細胞集団への所望の標的結合性を達成するために、表面基、例えば抗体又は抗体断片、細胞表面受容体と相互作用する小さなエフェクター分子、抗原及びその他の同様の化合物を含有するように場合によって調製してもよい。このようなリガンドは、リポソーム脂質に、標的指向分子で誘導体化した脂質、予備形成したリポソーム中で標的指向分子により誘導体化されていることができる極性ヘッド化学基を有する脂質を含むことによって、リポソームに含めることができる。或いは、標的指向部分は、予備形成したリポソームをリガンド−ポリマー−脂質コンジュゲートと共にインキュベートすることにより予備形成したリポソームに挿入することができる。
【0062】
脂質は、リガンドを親水性ポリマー鎖の遊離の遠部末端に共有結合させることにより標的指向リガンドで誘導体化されていることができ、このポリマー鎖はその近部末端で小胞形成性脂質に結合している。選択した親水性ポリマーを選択した脂質に結合させ、選択したリガンドと反応させるためにポリマーの遊離の非結合末端を活性化するための多種多様な技術があり、特に、親水性ポリマーのポリエチレングリコール(PEG)が広く研究されている(Allen,T.M.ら、Biochemicia et Biophysica Acta 1237:99〜108(1995);Zalipsky,S.、Bioconjugate Chem.、4(4):296〜299(1993);Zalipsky、S.ら、FEBS Lett.353:71〜74(1994);Zalipsky、S.ら、Bioconjugate Chemistry、705〜708(1995);Zalipsky,S.、STEALTH LIPOSOMES(D.Lasic及びF.Martin編)、第9章、CRC Press、フロリダ州Boca Raton(1995))。
【0063】
標的指向リガンドは当業者によく知られており、本発明の好ましい実施形態では、このリガンドは内皮腫瘍細胞に結合親和性を有するものであり、より好ましくは内皮腫瘍細胞により内在化される。このようなリガンドは、増殖因子受容体の細胞外ドメインに結合することが多い。代表的な受容体としては、HER2/neu癌遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物、表皮成長因子(EGF)受容体、塩基性線維芽細胞成長受容体(塩基性FGF)受容体、血管内皮成長因子受容体、E−、L−、P−セレクチン受容体、葉酸受容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体及びケモカイン受容体がある。さらなるリガンドは、参照により本明細書に援用する、同じ譲受人が所有する米国特許第6043094号に記載されている。
【0064】
さらに、標的指向リガンドは、指示した状態を治療するための特定の核酸と組み合わせることができる。例えば、核酸が第VIII因子をコードする発現ベクターである場合、好ましいリガンドは、肝細胞に対して結合親和性を有し、且つ/又は肝細胞によるリポソームの内在化を開始させるものである。第VIII因子をコードする発現ベクターと共に使用するための好ましい標的指向リガンドはガラクトースである。
【0065】
III.組成物の調製
A.リポソーム成分
上記の脂質を含有するリポソーム、即ち、カチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質は、Szoka、F.、Jr.ら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)で詳述されたものなどの種々の技術で調製することができ、本発明を用いて調製したリポソームの具体的な例を以下に記載する。典型的に、リポソームは多重膜の小胞(MLV)であり、単純な脂質皮膜の水和技術で形成することができる。この手順では、以下に詳述したタイプのリポソーム形成性脂質の混合物を適切な有機溶媒に溶解し、次いでこれを容器中で蒸発させて薄膜を形成する。次いで、この脂質皮膜を水性媒体で覆い、水和して、典型的に約0.1から10ミクロンのサイズのMLVを形成する。
【0066】
本発明の組成物で使用するリポソームには、(i)カチオン性脂質、及び(ii)親水性ポリマーにDTB連結部を介して共有結合した脂質を含む。リポソームはまた、その他の成分、例えば小胞形成性脂質又はリポソーム脂質二重層に安定に組み込まれた脂質、例えばジアシルグリセロール、リゾリン脂質、脂肪酸、糖脂質、セレブロシド及びコレステロールなどのステロールを含む。
【0067】
典型的に、リポソームは、10〜90モルパーセント、より好ましくは約20〜80モルパーセント、さらにより好ましくは約30〜70モルパーセントのカチオン性脂質からなる。ポリマー−DTB−脂質は典型的には、約1〜20のモルパーセント、より好ましくは約2〜15モルパーセント、さらにより好ましくは約4〜12モルパーセントで含まれる。下記の本発明を用いて実施した研究では、リポソームはカチオン性脂質約50から55モルパーセント及びポリマー−DTB−脂質0.5〜5モルパーセントからなっていた。
【0068】
本発明に従って調製されたリポソームは、選択されたサイズ範囲、典型的には約0.01から0.5ミクロン、より好ましくは0.03〜0.40ミクロンの実質的に均一なサイズを有する大きさにすることができる。REV及びMLVの1つの効果的なサイジング法は、リポソームの水性懸濁液を、0.03から0.2ミクロン、典型的には0.05、0.08、0.1又は0.2ミクロンの範囲の選択した均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことを含む。その膜の孔径は、その膜を通して押し出すことによって製造したリポソームの最大サイズ、特に調製物が同じ膜を通して2回以上押し出されたときのものとほぼ一致する。均質化法はまた、リポソームを100nm以下のサイズに小型化するのにも有用である(Martin、F.J.、SPECIALIZED DRUG DELIVERY SYSTEMS−MANUFACTURING AND PRODUCTION TECHNOLOGY、(P.Tyle編)、Marcel Dekker、New York、267〜316(1990))。
【0069】
B.代表的組成物の調製及び特性決定
本発明を用いて実施した研究では、実施例5で詳述した通り、CMVプロモーターを有するpNSLルシフェラーゼ原形質DNAをカチオン性脂質及びポリマー−DTB−脂質からなるリポソーム中に捕捉した。標的とするリポソーム複合体は、標的指向リガンドとして葉酸を含めることによって実現した。典型的には、標的指向リガンドはPEG−DSPEの遠部末端に共有結合している。標的指向リガンドの結合は当技術分野で知られており、例えば米国特許第6180134号で記載されている。
【0070】
実施例6は、BHK細胞と共にin vitroでインキュベートしてルシフェラーゼによる形質導入効率を判定するための1〜20番の配合物の調製を記載している。配合物はすべて、モル比55:45のジオレオイルトリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)及びコレステロール(CHOL)からなるカチオン性リポソームを使用して調製した。1、3及び5番の配合物はそれぞれ、総脂質の0.5、2.0及び5.0%のモル比で非開裂性のmPEG−DSPEを含んでいた。配合物2、4及び6は、葉酸指向リガンドを加えた1、3及び5と同じである。配合物7〜18は、同濃度の葉酸指向リガンドあり及びなしの開裂性PEG−Me−DTB−DSPE及びPEG−H−DTBDSPEを使用した。19及び20番の配合物は比較対照として供給した。
【0071】
リポソーム−DNA複合体は、細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイした。結果を表1に示す。
【0072】
表1
BHK細胞培養物とのインキュベーション後のルシフェラーゼの形質導入効率
【表1】
【0073】
表1の結果から分かる通り、複合体にmPEG−DSPEを含めたために失われた遺伝子発現は、開裂性のPEG−脂質を使用した場合に少なくとも部分的に回復した。形質導入の程度は、それらの配合量のみでなく、コンジュゲートの開裂性の容易さにも逆に依存していた。2つのDTB−結合リポポリマーのうち、より立体的に障害された誘導体(PEG−Me−DTB−DSPE)は、開裂がかなり遅かった。0.5%のPEG−H−DTB−DSPE(配合物番号13)を含むリポソームのルシフェラーゼの形質導入効率は、対応する非開裂性のPEG配合物(配合物1)よりも2.5倍超高く、対応するPEG−Me−DTB−DSPE配合物(配合物7)よりもほぼ1.5倍高かった。配合物13〜18はすべて、開裂性のPEG−H−DTB−DSPEを含んでいた。これらの配合物は、非開裂性のPEG配合物(配合物1〜6)よりも2.5倍超から少なくとも8倍高い形質導入効率を示した。正の対照発現レベルは0.5モル%のmPEG−H−DTB−DSPE(配合物13)で完全に回復し、mPEG−Me−DTB−DSPE(配合物7)で部分的に回復した。
【0074】
実施例7は、ルシフェラーゼによる形質導入効率を判定するための、KbHiFr細胞系の1〜20番の配合物とのin vitroインキュベーションを記載している。
【0075】
リポソーム−DNA複合体は、細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイし、タンパク質をアッセイした。結果を表2に示す。
【0076】
表2
KbHiFr細胞培養物とのインキュベーション後のルシフェラーゼの形質導入効率
【表2】
【0077】
図7から分かる通り、ルシフェラーゼの形質導入に関する結果は実施例6で得られたものと同様であった。開裂性のPEG配合物は、複合体にmPEG−DSPEを含めたために失われた遺伝子発現を少なくとも部分的に回復した。0.5%の開裂性のリポポリマーを含むリポソームについて、PEG−H−DTB−DSPE(配合物13)は、正の対照発現レベルを完全に回復した。対応するPEG−Me−DTB−DSPE配合物(配合物7)は、対応する非開裂性のPEG配合物(配合物1)よりも2.6倍超高かった。
【0078】
インキュベーション培地は開裂剤を含んでいなかったので、データ(図7に示した)は、電荷が媒介した細胞の結合及び内在化後、開裂性のリポポリマーがリポソームコンパートメント中で分解することを示唆している。PEG−脂質の開裂が、DNAの複合体からの遊離及び最終的にDNAを発現するためのリポソームからのその放出を促進することをさらに想定できる。
【0079】
実施例8は、システインの存在下での形質導入効率を判定するための、BHK細胞系のリポソーム−DNA複合体とのin vitroインキュベーションを記載している。リポソーム−DNA複合体及びシステインを細胞培養物と共に2時間インキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼの形質導入についてアッセイし、タンパク質をアッセイした。結果を表3に示す。
【0080】
表3
システインの存在下でのルシフェラーゼの形質導入効率
【表3】
【0081】
データは、DNA複合体化リポソームをmPEG−DSPEで安定化すると、遺伝子発現がかなり阻害されることを示している。ルシフェラーゼの形質導入のかなりの増大からも分かる通り、データは、チオール分解条件(システインの添加)下では、開裂性のリポポリマーはかなり開裂していたことを示している。mPEG−DSPEはチオール分解に耐性なので、実験6と比較して、システインの添加は発現レベルに影響を与えなかった。対照的に、開裂性のリポポリマーを利用することにより、最初に失われていた形質導入効果はシステインでの処理によって回復した。Me−DTBリンカーは同じチオール分解条件下でH−DTBよりも安定なので、この発現の回復は、mPEG−H−DTB−DSPEよりも障害されているmPEG−Me−DTB−DSPEで安定化した複合体では著明ではなかった(図8)。
【0082】
実施例9は、システイン、生理学的環境に存在する穏やかな試薬の存在下でのDOPE−リポソームで実施したフルオロフォア放出アッセイを記載している。このリポソームはDTB結合リポポリマーを含んでおり、ここで、R=H又はMeであった。図10Aから分かる通り、より立体的に障害された誘導体(PEG−Me−DTB−DSPE)は、PEG−H−DTB−DSPE誘導体より開裂がかなり遅かった(図10B)。図10A〜10Bから分かる通り、障害されたジスルフィドを介して安定化したリポソームでは、放出速度は約10倍低かった。図9で示した通り、マウスでの111In標識PHPC/コレステロール/mPEG−DTB−DSPEリポソームについてのより薬物動態的な実験では、PEG−Me−DTB−DSPEリポソームにより、STEALTH(登録商標)様のプロフィールが現れた(注射用量の約30%は24時間後に依然として循環していた)。対照的に、より速く開裂するPEG−H−DTB−DSPE類似体を含むリポソームは、PHPC/コレステロール試料と同程度に迅速に除去された(注射用量の約1%が24時間後に得られた)。したがって、Me−DTBコンジュゲートは、H−DTBコンジュゲートよりも血流中でかなり安定である。
【0083】
図11は、DNA/リポソーム複合体からのDNAの送達のステップを示す。送達のステップはいずれの核酸にも適用できることが理解されよう。第1に、PEGなどの親水性ポリマーが、還元剤により又は自然に開裂する。これにより正に荷電したリポソームは細胞膜の負に荷電した脂質と相互作用し、DNA/リポソーム複合体を内在化させ、DNAを細胞内に送達する。
【実施例】
【0084】
以下の実施例で本発明を例示するが、限定することは全く意図していない。
【0085】
材料:以下の材料は示した供給源から入手した:部分的に水素化された大豆ホスファチジルコリン(Vernon Walden Inc.、ニュージャージー州Green Village);コレステロール(Sigma、ミズーリ州St.Louis);ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)及びジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)(Avanti Polar Lipids、Inc.、アラバマ州Birmingham)。
【0086】
(実施例1)
mPEG−DTB−DSPEの合成
反応スキームを図2で例示する。
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(300mg、0.12mmol、1.29当量)をCHCl3(3ml)に溶解した。DSPE(70mg、0.093mol)及びTEA(58.5μl、0.42mmol、4.5当量)をPEG溶液に加え、50℃(油浴温度)で撹拌した。15分後、TLCは反応が完了しなかったことを示した。次いで、TEA(10μl及び20μl)を2回及びmPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(50mg、30mg、10mg)を数回、反応が完了するまで10分毎に加えた。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をMeOHに溶解し、C8シリカ1gを加えた。溶媒を再び蒸発させた。C8シリカを含有する生成物をカラムの上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=30:70、60ml;MeOH:H2O=50:50、60ml;MeOH:H2O=70:30、140ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=75:25=40ml;MeOH:H2O=80:20、80ml(溶出した生成物);MeOH:H2O=85:15、40ml;MeOH:H2O=90:10、40ml;MeOH=40ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色の濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)をそれに加え、凍結乾燥し、P2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(252mg、収率89%)として得た。
【0087】
オルト−及びパラ−DTB−DSPE化合物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム中のメタノール勾配0〜10%、単離収率約70%)で精製し、構造をNMR及びMALDI−TOFMSで確認した。
【化4】
オルトコンジュゲートは、5.11(s,CH2,2H)及び7.31(d,1H)、7.39(m,2H)7.75(d,1H)ppmのベンジル及び芳香族シグナルのみが異なっていた。
【0088】
MALDI−TOFMSは、等しい44Da間隔のイオン分布を生成し、これはエチレンオキシド繰返し単位に相当した。化合物の平均分子量は、パラ及びオルト異性体それぞれについて、3127及び3139Daであった(理論分子量約3100Da)。
【0089】
(実施例2)
mPEG−DTB−DSPEの合成
A.mPEG−MeDTB−DSPE
この反応スキームを図4A〜4Bで例示する。
mPEG(5K)−OH(40g、8mmol)をトルエン(総体積は270mlであり、250mlはDean−Starkで留去した)と共沸乾燥した。ジクロロメタン(100ml)をmPEG−OHに加えた。水分に注意しながら、P−ニトロフェニルクロロホルメート(2.42g、12mmol、1.5当量)及びTEA(3.3ml、24mmol、3当量)をPEG溶液に4℃(氷水)で加えた。淡黄色のTEA塩酸塩が形成した。15分後、冷浴を除去し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。TLCは、反応が完了した(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)ことを示した。溶媒を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(約50℃)に溶解した。TEA塩酸塩を濾去し、温酢酸エチルで洗浄した。溶媒を蒸発させ、生成物をイソプロパノールで再結晶した(3回)。収量:38.2g(92%)。
【化5】
【0090】
1−アミノ−2−プロパノール(1.1ml、14.52mmol、3当量)及びTEA(2.02ml、14.52mmol、3当量)を、DMF(60ml)及びCH2Cl2(40ml)中のmPEG(5K)−ニトロフェニルカーボネート(25g、4.84mmol)に加えた。それは黄色の透明溶液であった。反応混合物を室温で30分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒(ジクロロメタン)を蒸発させた。イソプロパノール(250ml)をDMF(60ml)中の生成物混合物に加えた。生成物がすぐに沈殿し、次いでiPrOHで再結晶した(3回)。収量:22.12g(90%)。
【化6】
【0091】
mPEG(5K)−ウレタン−2−メチルプロパノール(22.12g、4.34mmol)をトルエン(45ml)と共沸乾燥した。ジクロロメタン(60ml)をそれに加えた。撹拌を維持し、水分に注意しながら、塩化メタンスルホニル(604.6μl、7.81mmol、1.8当量)及びTEA(3.93ml、28.21mmol、6.5当量)をmPEG溶液に0℃で加えた。30分後、冷浴を除去し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。酢酸エチルを加えて、TEA塩を除去した。生成物をイソプロパノールで再結晶した(3回)。収量:20.27g(90%)。
【化7】
【0092】
mPEG(5K)−ウレタン−2メチル−メタンスルホン(10.27g、1.98mmol)をトルエン(20ml、毎回)と共沸乾燥した。水素化ナトリウム(377mg、9.4mmol、4.75当量)を無水トルエン(60ml)に0℃(氷水中)で加えた。5分後、トリフェニルメタンチオール(3.92g、14.6mmol、7.15当量)をその溶液に加えた。10分後、mPEG−ウレタン−2メチル−メタンスルホン(10.27g、1.98mmol)をその反応混合物に加えた。それは黄色の溶液になった。45分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した。酢酸(445.57μl、7.42mmol、3.75当量)をその反応混合物に加え、過剰の水素化ナトリウムを中和した。溶液は濃く、白っぽくなった。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(30ml)及びイソプロパノール(70ml)で固体を再結晶した。生成物混合物は完全には溶解しなかったが、沈殿物は濾去した。次いで、生成物混合物をイソプロパノール/tert−ブチルアルコール(100ml/20m1)で再結晶した。収量:8.87g(84%)。
【化8】
【0093】
mPEG(5K)−ウレタン−2メチル−トリフェニルメタンチオール(8.87g、1.65mmol)をTFA/CH2Cl2(10ml/10ml)に0℃で溶解した。激しい撹拌下、メトキシカルボニルスルフェニルクロリド(185.5μl、1.99mmol、1.2当量)を溶液に加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。反応混合物をイソプロパノール:tert−ブチルアルコール(80ml:20ml)で2回再結晶した。第3級ブタノール(5ml)を生成物に加え、次いでこれを凍結乾燥し、P2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(8.32g、収率97%)として得た。
【化9】
【0094】
mPEG(5K)−ウレタンエチル(メチル)ジチオカルボニルメトキシド(8.32g、1.6mmol)を乾燥メタノール(20ml)及びクロロホルム(2.5ml)に溶解した。メルカプトベンジルアルコール(592mg、4mmol、2.5当量)の乾燥メタノール(2ml)溶液をPEG溶液に加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した(3回)。NMRは約16%の生成物が形成したことを示したので、MeOH(2ml)中のメルカプトベンジルアルコール(322mg、2.18mmol、1.8当量)をMeOH/CHCl3(24ml/1ml)中の生成物混合物に0℃(氷水)でさらに滴下した。添加(約10分)完了後、氷浴を除去し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させ、次いで生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した。収量:7.25g、(94%)。
【化10】
【0095】
mPEG(5K)−ウレタン−エチル(メチル)−ジチオベンジルアルコール(6.75g、1.27mmol)をCHCl3(30ml)に溶解し、P−ニトロフェニルクロロホルメート(513mg、2.54mmol、2当量)をそれに0℃(氷水)で加えた。5分後、トリエチルアミン(531μl、3.81mmol、3当量)を加えた。30分後、氷浴を除去し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物を酢酸エチルに溶解した。TEA塩を濾去し、次いで溶媒を蒸発させた。次いで生成物混合物を酢酸エチル/イソプロパノール、30ml/100mlで再結晶した(3回)。収量:6.55g(94%)。
【化11】
【0096】
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(766mg、0.14mmol、1.29当量)をCHCl3(5ml)に溶解した。DSPE(70mg、0.093mol)及びTEA(58.5μl、0.42mmol、4.5当量)をPEG溶液に加え、50℃(油浴温度)で撹拌した。20分後、TLCは反応が完了しなかったことを示した。さらにmPEG−MeDTB−ニトロフェニルカーボネート(合計1239mg、0.23mmol、2.47当量)及び1−ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt)(25mg、0.19mmol、2当量)を加えた。20分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2、モリブデナン及びニンヒドリンで)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物を温(42℃)酢酸エチルに溶解した。それは濁った溶液であった(TEA塩が沈殿していた)。溶液を濾過し、溶媒を蒸発させた。MeOH及びC8シリカ2gを生成物混合物に加えた。溶媒を再び蒸発させた。C8シリカを含有する生成物をカラムの上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O30:70、100ml;MeOH H2O50:50、100ml;MeOH H2O70:30、250ml(溶出した出発材料);MeOH H2O75:25=40ml;MeOH H2O 80:20、200ml(溶出した生成物);MeOH=100ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2、100ml;CHCl3:MeOH H2O=75:36:6、100mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)をそれに加え、凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(467mg、収率83%)として得た。
【化12】
MALDI−TOFMSは、等しい44Da間隔のイオンのベル型分布を生成し、これはエチレンオキシド繰返し単位に相当した。コンジュゲート及びmPEG−チオール(殆ど開裂したジスルフィド)の平均分子量は、6376及び5368Da(理論分子量約6053、及び5305ダルトン)であった。
【0097】
B.mPEG−エチルDTB−DSPE
mPEG−ウレタンエチル(エチル)ジチオカルボニルメトキシド(2g、0.90mmol)を乾燥メタノール(8ml)に溶解した。最初、溶液は濁っていたが、5分後に透明溶液になった。メルカプトベンジルアルコール(265.2mg、1.79mmol、2当量)をPEG溶液に加えた。反応混合物を室温で30時間撹拌した。エーテル(70ml)を反応溶液に加えると生成物が沈殿し、それを4℃で終夜維持した。その白色の固体を濾過し、酢酸エチル/エーテル、30ml/70mlで再結晶した。収量:1.96g、(94%)。
【化13】
【0098】
N−ヒドロキシ−s−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)(48mg、0.269mmol)をCHCl3(3ml)中のDSPE(55mg、0.073mmol)に50℃(油浴温度)で加えた。3〜4分後、それは透明溶液になった。次いで、mPEG−EtDTB−ニトロフェニルクロロホルメート(334mg、0.134mmol)を加え、次にトリエチルアミン(TEA、45μl、0.329mmol)を加えた。20分後、TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2)は、反応が完了したことを示した(モリブデナン及びニンヒドリンスプレー)。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をメタノールに溶解し、C8シリカ(1g)と混合し、回転蒸発によって溶媒を除去した。固体残渣をC8カラムの上部に加え、次いで、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=30:70、60ml;MeOH:H2O=50:50、60ml;MeOH:H2O=70:30、140ml;MeOH:H2O=75:25=140ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=80:20、80ml;MeOH:H2O=90:10、140ml(溶出した生成物);MeOH=40ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40mlで溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)を加え、凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色で綿毛状の固体(175mg、収率78%)として得た。
【化14】
【0099】
(実施例3)
mPEG−DTB−ニトロフェニルクロロホルメートの合成
この反応スキームを図5で例示する。
【0100】
A.1−(メルカプトメチル)エチルアンモニウムクロリドの合成の手順
1.硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチル。1−アミノ−2−プロパノール(22.53g、0.3mol)を氷浴中で激しく撹拌した。硫酸(16.10ml、0.3mol)を非常にゆっくりと1時間かけて加えた。濃い蒸気及び非常に粘稠な溶液がフラスコ内で形成した。添加が完了した後、反応物を170℃と180℃の間に減圧下で加熱し、ハウスバキュームに接続した。加熱すると、反応物は淡褐色になった。水をすべて除去した後(約1時間)、室温まで冷却させた。冷却すると、褐色でガラス状の固体が形成し、これはメタノールで磨砕すると結晶化した。それを水(50ml)に60℃で溶解した。十分な温メタノールを加えて、その溶液を80%メタノールにした。冷却すると、結晶が形成し、次いでこれを濾過し、P2O5で乾燥した。収量:17.17g(37%)。
【化15】
融点:248〜250℃(液化開始温度:250℃)
【0101】
2.5−メチルチアゾリジン−2−チオン。硫酸水素2−アミノ−1−メチルエチル(23.03g、148mmol)及び二硫化炭素(10.71ml、178mmol、1.2当量)を250mlの丸底フラスコ中、50%水性エタノール(40ml)中で撹拌した。これに、50%水性エタノール(50ml)中の水酸化ナトリウム(13.06g、327mmol、2.2当量)を非常にゆっくりと滴下した。水酸化ナトリウムを加えると、出発材料はすべて溶解し、溶液はオレンジ色になった。反応物を40分間還流させる(85℃)と、明るい黄色になり、濃い沈殿物が形成した。エタノールを蒸発させ、次いでその水溶液を加温し、次いでヌッチェに通して水溶性の不純物をすべて除去した。残りの結晶を温エタノールに溶解し、次いでその溶液が80%水になるまで温水を加えた。混合物を冷却させ、次いで冷蔵すると、長い針状の結晶が得られた。収量:14.64g(75%)。
【化16】
融点:92.5〜93.5(液化開始温度:94〜95)。
【0102】
3.1−(メルカプトメチル)エチルアンモニウムクロリド。5−メチルチアゾリジン−2−チオン(6.5g、49mmol)を250mlの丸底フラスコ内に置いた。塩酸水溶液(40ml、H2O中18%)を加え、フラスコを油浴中で加熱した。反応物を1週間還流させた(120℃)。その週の間に3回、濃塩酸1mlを加えた。酢酸エチルを溶離剤とするTLCを使用して反応を監視した。それはUV、ニンヒドリン及びヨウ素蒸気を使用して可視化した。その週の間殆ど、反応物は不均一な混合物であり、出発材料は水よりも濃い油であった。1週間後、その油の出発材料はなくなったが、TLCでまだ可視であった。反応物を加熱するのを止め、室温に冷却させ、次いで冷蔵すると出発材料が結晶化した。結晶化した出発材料を濾過した。濾液を蒸発させ、P2O5及びNaOHで乾燥して、水及びHClをすべて除去した。粗生成物をジエチルエーテルで2回(各50ml)洗浄して、出発材料をすべて除去した。それをP2O5で再び乾燥した。収量:2.83g(45%)。
【化17】
融点:80〜82℃(液化開始温度:92〜94)。
【0103】
B.mPEG−エチル−DTB−ニトロフェニルクロロホルメートの合成
1.硫酸水素2−アミノ−1−エチルエチル。1−アミノ−2−ブタノール(15ml、158mmol)を氷浴中の100mlの丸底フラスコ中で激しく撹拌した。硫酸(8.43ml、158mmol)を非常にゆっくりと1時間かけて加えた。濃い蒸気及び非常に粘稠な溶液がフラスコ内で形成した。添加が完了した後、反応物を170℃と180℃の間に減圧下で加熱し、ハウスバキュームに接続した。加熱すると、反応物は淡褐色になった。水をすべて除去した後(約1時間)、室温まで冷却させた。冷却すると、褐色でガラス状の固体が形成した。それを熱水(50ml)に溶解し、次いで冷蔵庫内に終夜置いた。冷却すると、結晶が形成し、次いでこれを濾過し、P2O5で乾燥した。収量:9.98g(37%)。
【化18】
【0104】
2.5−エチルチアゾリジン−2−チオン。硫酸水素2−アミノ−1−エチル−エチル(9.98g、59mmol)及び二硫化炭素(4.26m1、71mmol、1.2当量)を100mlの丸底フラスコ中、50%水性エタノール(15m1)中で撹拌した。これに50%水性エタノール(20ml)中の水酸化ナトリウム(5.20g、130mmol、2.2当量)を非常にゆっくりと滴下した。水酸化ナトリウムを加えると、出発材料はすべて溶解し、溶液はオレンジ色になった。反応物を40分間還流させる(85℃)と、明るい黄色になり、濃い沈殿物が形成した。エタノールを蒸発させ、次いでその水溶液を加温し、次いでヌッチェに通して濾過して、水溶性の不純物を除去した。残りの結晶を温エタノールに溶解し、次いでその溶液が80%水になるまで温水を加えた。混合物を冷却させ、次いで冷蔵した。針状の結晶が得られた。収量:7.28g(86%)。
【化19】
融点:76〜78℃(液化開始温度:76.6〜76.9)。
【0105】
3.1−(メルカプトエチル)エチルアンモニウムクロリド。5−エチルチアゾリジン−2−チオン(7.24g、50mmol)を250mlの丸底フラスコ内に置いた。塩酸水溶液(45ml、H2O中18%)を加え、フラスコを油浴中で加熱した。加熱すると、出発材料は溶解し、全く不均一な混合物が形成した。反応物を1週間還流させた(120℃)。その週の間に4回、濃塩酸1mlを加えた。酢酸エチルを溶離剤とするTLCを使用して反応を監視した。それはUV、ニンヒドリン及びヨウ素蒸気を使用して可視化した。その週の間、反応物は不均一な混合物であり、出発材料は水よりも濃い油であった。反応物を加熱するのを止め、室温に冷却させ、次いで冷蔵すると、出発材料が結晶化した。結晶化した出発材料を濾過した。濾液を蒸発させ、P2O5及びNaOHで乾燥して、水及びHClをすべて除去した。粗生成物をジエチルエーテルで2回(各50ml)洗浄して、出発材料をすべて除去した。それをP2O5で再び乾燥した。収量:3.66g(52%)。1H NMR(D6−DMSO)。
【0106】
(実施例4)
mPEG−DTB−脂質の合成
この反応スキームを図6Aで例示する。
1,2−ジステレオイル−sn−グリセロール(500mg、0.8mmol)をベンゼンと共沸乾燥した(3回)。パラ−ニトロフェニルクロロホルメート(242mg、1.2mmol、1.5当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)(10mg、0.08mmol、0.1当量)及びTEA(334.5μl、2.4mmol、3当量)をCHCl3(5ml)中の1,2−ジステレオイルグリセロールに加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLC(トルエン:酢酸エチル=7:3)は、反応が完了したことを示した。次いで、生成物混合物を10%クエン酸で抽出して、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を除去し、アセトニトリル(3ml、4回)で洗浄して、過剰のp−ニトロフェニルクロロホルメートを除去した。純粋な生成物をP2O5で真空乾燥した。収量:557mg(88%)。
【化20】
【0107】
エチレンジアミン(42μl、0.63mmol、5倍過剰)及びピリジン(200μl)をCHCl3(1ml)に加えた。2−ジステアロイル−sn−p−ニトロフェニルカーボネート(100mg、0.13mmol)をCHCl3(1ml)に溶解し、エチレンジアミン溶液にパスツールピペットを用いて0℃(氷水)で滴下し、終夜(16時間)続けた。TLC(CHCl3:MeOH:H2O90:18:2及びCHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させて、ピリジンを除去した。次いで、生成物混合物をCHCl3に溶解し、カラム(Aldrich、Silica gel、60°A、200〜400メッシュ)に装填し、CHCl3:CH3COCH3及びCHCl3:MeOH勾配、CHCl3:CH3COCH3=90:10、60ml(溶出した上部);CHCl3:NeOH=90:10、60ml(溶出した生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させた。第3級ブタノールを加え、P2O5で真空乾燥した。収量:64mg(75%)。
【化21】
【0108】
mPEG−MeDTB−ニトロフェニルクロロホルメート(400mg、0.162mmol、2.2当量)をCHCl3(2ml)に溶解した。1,2−ステロイル−sn−エチレンアミン(51mg、0.075mmol)及びTEA(37μl、0.264mmol、3.52当量)を溶液に加えた。次いで反応混合物を45℃で20分間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH:H2O=90:18:2及びCHCl3:MeOH=90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物混合物をメタノールに溶解した。C8シリカ2gを加え、次いで溶媒を蒸発させた。生成物混合物を含有するC8シリカをC8カラム((Supelco、Supel clean、ロット番号SP0824)の上部に加え、MeOH:H2O勾配(圧力)、MeOH:H2O=60:40、40ml;MeOH:H2O=70:30、80ml(溶出した出発材料);MeOH:H2O=80:20、40ml;MeOH:H2O=90:10=20ml;CHCl3:MeOH:H2O=5:80:15、20ml;CHCl3:MeOH:H2O=90:18:10、40ml(溶出した生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させて生成物を無色で濃い液体として得た。第3級ブタノール(5ml)を加え、溶液を凍結乾燥し、次いでP2O5で真空乾燥して、生成物を白色の固体(200mg、収率89%)として得た。
【化22】
【0109】
(実施例5)
核酸を含有するリポソームの調製
55:45の比のジオレオイルトリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)及びコレステロール(Chol)の溶液を調製することによってリポソームを調製した。次いでそのリポソームを、DNA1μg当たり脂質14nmolの比でDNAと混合した。この複合体を直径約150nmの大きさにした。DNA−リポソーム複合体を、mPEG−DSPE、mPEG−Me−DTB−DSPE又はmPEG−H−DTB−DSPEのミセル溶液と共に、葉酸指向リガンドあり又はなしで、例えば1時間室温でインキュベートして、PEG−脂質を予備形成したリポソームに挿入した。
【0110】
ルシフェラーゼをコードするpNSLプラスミドは、米国特許第5851818号で記載の通りに2種の市販のプラスミド、pGFP−N1プラスミド(Clontech、カリフォルニア州Palo Alto)及びpGL3−C(Promega Corporation、ウィスコンシン州Madison)から構築した。ルシフェラーゼレポータープラスミドDNA溶液を酸性のリポソーム溶液にゆっくりと連続的に撹拌しながら10分間加えた。
【0111】
葉酸リガンドをアミノ−PEG−DSPEに当技術分野で知られた手順(Gabizon、A.ら、Bioconjugate Chem.、10:289(1999))に従ってコンジュゲートした。DNA−リポソーム複合体をmPEG−DSPE又は葉酸−PEG−DSPEのミセル溶液と共に連続的に撹拌しながら20分間インキュベートして、リガンド−PEG−脂質を予備形成したリポソームに挿入し、リポソーム1個当たり葉酸リガンドを約30個にした。
【0112】
(実施例6)
ルシフェラーゼのBHK細胞系へのin vitro形質導入
実施例5で記載の通りに調製したルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりBHK細胞系に形質導入した。10%ウシ胎児血清、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含む通常の又は葉酸を含まないRPMI培地で細胞を培養した。形質導入の前に細胞培養物をリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすいだ。1×103個の細胞を複合体(1mlのDNA−リポソーム複合体)と共に2時間37℃で5%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後、完全な又は葉酸を含まないRPMI1640細胞培地4.0mlを細胞培養物に加えた。細胞を収穫し、ルシフェラーゼをアッセイするためにアッセイした。
【0113】
PBS中で2時間インキュベーションした後、細胞はすべて球形で浮遊しており、細胞の外観に変化はなく、細胞はフラスコに付着していた。複合体の上部に完全培地を加えて細胞を回収した。
【0114】
リポソームを実施例5で詳述した通り、以下の脂質成分で形成した。
【表4】
【0115】
(実施例7)
ルシフェラーゼのKbHiFr細胞系へのin vitro形質導入
KB細胞、ヒト上咽頭上皮癌(Saikawa、Y.、Biochemistry、34:9951〜9961(1995))を低葉酸培地で増殖させて、葉酸レポーターを過剰発現している細胞、KB−HiFR細胞を得た。10%ウシ胎児血清、グルタミン2mM、ペニシリン50u/mL及びストレプトマイシン50μg/mLを含む通常の又は葉酸を含まないRPMI培地で細胞を培養した。血清含有の葉酸を含まない培地における葉酸の濃度はわずか3nMであり、通常の培養条件下の2.26μM(1mg/L)とは異なっていた。細胞は通常、Industries(Beyt Haernek、イスラエル)中のトリプシン(0.05%)−EDTA(0.02%)溶液による処理で継代し、ウシ胎児血清はGIBCO(Grand Island、ニューヨーク)からのものであった。
【0116】
実施例6で記載した通りに、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりKB−HiFr細胞系に形質導入した。細胞を収穫し、ルシフェラーゼについてアッセイし、形質導入後24時間でタンパク質をアッセイした。タンパク質アッセイ用の試料は分析前に10倍に希釈した。
【0117】
(実施例8)
システインの存在下におけるルシフェラーゼのBHK細胞系へのin vitro形質導入
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する複合体によりBHK細胞系に形質導入した。10%ウシ胎児血清、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含むRPMI培地で細胞を培養した。
【0118】
実施例5で詳述した通りに、脂質成分52.8%DOTAP、43.2%コレステロール及び4%PEG2000、PEG−Me−DTB−DSPE又はPEG−H−DTB−DSPEでリポソームを形成した。複合体を実施例5で記載の通りに調製し、終夜4℃で保存した。翌日、濃度50、250又は1250μMのPBS中のシステイン3.2mlを複合体に加え、逆様にして混合して懸濁液を形成した。
【0119】
形質導入前に細胞培養物をリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすいだ。1×103個の細胞を複合体(1mlのDNA−リポソーム複合体)と共に2時間37℃で5%のCO2インキュベーター中でインキュベートした。24時間後、細胞を収穫し、ルシフェラーゼ及びタンパク質についてアッセイした。
【0120】
(実施例9)
開裂性のリポポリマーの開裂アッセイ
100:3のモル比のDOPE:mPEG−DTB−DSPEからなる単層リポソーム(約100nm)を使用して、本質的に実施例5で記載の通りにリポソームを調製した。フルオロフォア(p−キシレン−ビス−ピリジニウムブロミド、8−ヒドロキシ−ピレントリスルホン酸三ナトリウム)をリポソーム内に捕捉した。DOPEは六方相を好むので、捕捉したフルオロフォアはPEG開裂に応答して放出された。15μM、75μM、150μM、300μM、1500μM、3000μM及び15000μMの濃度でシステインをリポソームに加え、フルオロフォアの放出をアッセイした。
【0121】
(実施例10)
中性のカチオン性脂質の調製
A.ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネートの調製
図1で例示した通り、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(500mg、0.8mmol;化合物I)をベンゼンと共沸乾燥した(回転蒸発器で3回)。パラ−ニトロフェニルクロロホルメート(242mg、1.2mmol、1.5当量;化合物II)、4−ジメチルアミノピリジン(10mg、0.08mmol、0.1当量)及びトリエチルアミン(334μl、204mmol、3当量)をCHCl3(5ml)中の1,2−ジステアロイルグリセロールに加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した。混合物をCHCl3(50ml)で希釈し、10%クエン酸で抽出した(3×15mL)。有機層を乾燥し(MgSO4)、蒸発させて固体を得た。その固体(明オレンジ色)をアセトニトリル(4×3mL)で洗浄して、過剰のp−ニトロフェニルクロロホルメートを除去した。生成物、ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネート(化合物III)をP2O5で真空乾燥した。収量:557mg(88%)。
【化23】
【0122】
B.ヒスタミンとジステアロイルグリセロールからのカルバメートの調製
1,2−ジステアロイルグリセロールのパラ−ニトロフェニルカーボネート(350mg、0.44mmol、化合物III)をDMSO(200μl)を含むCHCl3(1ml)中のヒスタミン(46mg、0.40mmol、0.9当量;化合物IV)に加えた。ピリジン(300μl;化合物V)をその溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜(約20時間)撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH= 90:10)は、反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させた。生成物(化合物VI)をCHCl3に溶解し、シリカゲル(Aldrich、230〜400メッシュ、60Å)カラムに注ぎ、以下の溶媒、CHCl3:CH3COCH3=90:10、40ml(溶出した上部);CHCl3:IPA=80:20、40ml(溶出した生成物);CHCl3:IPA=70:30、40ml(溶出したさらなる生成物)で溶離した。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、蒸発させた。生成物をP2O5で真空乾燥して、白色の固体(236mg、収率80%)として得た。
【化24】
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】カルバメート結合及びイミダゾール「Z」基を有する本発明による中性のカチオン性脂質を調製するための合成スキームを示す図である。
【図2】アミンリガンドが脂質ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である、mPEG−DTB−アミン−脂質を合成するための合成反応スキームを例示する図である。
【図3】パラ−ジチオベンジルウレタン(DTB)−結合mPEG−DSPEコンジュゲートのチオール開裂機序を例示する図である。
【図4A】DTB結合がアルキル基で立体的に障害されている、本発明によるmPEG−DTB−DSPE化合物を調製するための合成反応スキームを示す図である。
【図4B】DTB結合がアルキル基で立体的に障害されている、本発明によるmPEG−DTB−DSPE化合物を調製するための合成反応スキームを示す図である。
【図5】本発明によるmPEG−DTB−リガンド化合物を調製するための別の合成反応スキームを示す図である。
【図6A】チオール開裂するとカチオン性脂質を生じるmPEG−DTB−脂質を合成するための合成反応スキームを示す図である。
【図6B】図6Aの化合物がチオール開裂した後の生成物を示す図である。
【図7】様々な比のmPEG−DSPE及びmPEG−DTB−DSPEで調製したプラスミド−リポソーム複合体のpg/mgタンパク質中でのルシフェラーゼ発現を示す図である。
【図8】様々な濃度のシステイン中のmPEG−DSPE及びmPEG−DTB−DSPEで調製したリポソーム−DNA複合体のin vitro形質導入のためのpg/mgタンパク質中でのルシフェラーゼ発現を示す図である。
【図9】注射24時間後のmPEG−DTB−DSPE(▼)、mPEG−Me−DTB−DSPE(●)、mPEG−DSPE(STEALTH(登録商標)、■)を有するリポソーム、及びPEG鎖を有するリポソーム(従来のリポソーム、▲)のin vivo血漿クリアランスを示す図である。
【図10A】システイン濃度15μM(◇)、75μM(■)、150μM(▲)、300μM(×)、1500μM(*)、3000μM(●)及び15000μM(|)での、mPEG−H−DTB−DSPEで調製したリポソーム中におけるシステインによる開裂に応答したリポソームに捕捉されたフルオロフォアの放出を示す図である。
【図10B】システイン濃度15μM(◇)、75μM(■)、150μM(▲)、300μM(×)、1500μM(*)、3000μM(●)及び15000μM(|)での、mPEG−Me−DTB−DSPEで調製したリポソーム中におけるシステインによる開裂に応答したリポソームに捕捉されたフルオロフォアの放出を示す図である。
【図11】DNA/リポソーム複合体を使用する、DNAの細胞への細胞内送達を例示する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞に遺伝子を形質導入するための組成物であって、
(i)カチオン性脂質及び親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)、並びに(ii)形質導入するための選択した遺伝子を有する核酸を含む複合体
を含む組成物。
【請求項2】
前記脂質−誘導体化ポリマーが以下の一般構造を有する、請求項1に記載の組成物
【化1】
[式中、R1は、ジチオベンジル部分に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R2及びR5は、独立に、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R3は、O(C=O)R4、S(C=O)R4及びO(C=S)R4からなる群から選択され、ここで、R4は小胞形成性脂質であり、CH2−R3の配向はオルト位及びパラ位から選択される]。
【請求項3】
前記小胞形成性脂質R4がアミン含有脂質である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂質が単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質がリン脂質である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
R2及びR5がアルキルである、請求項2から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R1が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される、請求項2から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
R1がポリエチレングリコールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
R5がHであり、R2がCH3又はC2H5である、請求項2から8までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記カチオン性脂質が、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチメ−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記リポソームがコレステロールをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸がDNA又はRNAである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸がプラスミドである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記遺伝子が、第8因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
(i)カチオン性脂質及び親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)、並びに(ii)形質導入するための選択した遺伝子を有する核酸を含む複合体を調製するステップ
を含む、核酸を送達するための組成物の調製方法。
【請求項16】
前記調製するステップが、
前記カチオン性脂質を含むリポソームを形成することと、
リポソーム−核酸混合物を形成するために前記リポソームを前記核酸と接触させること、
前記混合物を前記誘導体化した小胞形成性脂質と共にインキュベートすることと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベートすることが約20℃を超える温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インキュベートすることが少なくとも約10分間実施される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質−誘導体化ポリマーが以下の一般構造を有する、請求項15から18までのいずれか一項に記載の方法
【化2】
[式中、R1は、ジチオベンジル部分に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R2及びR5は、独立に、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R3は、O(C=O)R4、S(C=O)R4及びO(C=S)R4からなる群から選択され、R4は小胞形成性脂質であり、CH2−R3の配向はオルト位及びパラ位から選択される]。
【請求項20】
前記小胞形成性脂質R4がアミン含有脂質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記脂質が単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを有する、請求項15から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記脂質がリン脂質である、請求項15から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
R2及びR5がアルキルである、請求項19から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
R1が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される、請求項19から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
R1がポリエチレングリコールである、請求項19から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
R5がHであり、R2がCH3又はC2H5である、請求項19から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記カチオン性脂質が、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選択される、請求項15から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記リポソームがコレステロールをさらに含む、請求項15から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸がDNA又はRNAである、請求項15から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸がプラスミドである、請求項15から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子が、第8因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項15から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
核酸を対象に投与する方法であって、
請求項1から14までのいずれか一項に記載の組成物を調製するステップと、
前記組成物を前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記解放可能な連結部の解放を促進するのに有効な作用物質を投与するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記作用物質が還元剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項1】
宿主細胞に遺伝子を形質導入するための組成物であって、
(i)カチオン性脂質及び親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)、並びに(ii)形質導入するための選択した遺伝子を有する核酸を含む複合体
を含む組成物。
【請求項2】
前記脂質−誘導体化ポリマーが以下の一般構造を有する、請求項1に記載の組成物
【化1】
[式中、R1は、ジチオベンジル部分に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R2及びR5は、独立に、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R3は、O(C=O)R4、S(C=O)R4及びO(C=S)R4からなる群から選択され、ここで、R4は小胞形成性脂質であり、CH2−R3の配向はオルト位及びパラ位から選択される]。
【請求項3】
前記小胞形成性脂質R4がアミン含有脂質である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂質が単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質がリン脂質である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
R2及びR5がアルキルである、請求項2から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R1が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される、請求項2から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
R1がポリエチレングリコールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
R5がHであり、R2がCH3又はC2H5である、請求項2から8までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記カチオン性脂質が、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチメ−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記リポソームがコレステロールをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸がDNA又はRNAである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸がプラスミドである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記遺伝子が、第8因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
(i)カチオン性脂質及び親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成性脂質を含むリポソーム(前記親水性ポリマーは前記小胞形成性脂質に、解放可能な連結部によって共有結合している)、並びに(ii)形質導入するための選択した遺伝子を有する核酸を含む複合体を調製するステップ
を含む、核酸を送達するための組成物の調製方法。
【請求項16】
前記調製するステップが、
前記カチオン性脂質を含むリポソームを形成することと、
リポソーム−核酸混合物を形成するために前記リポソームを前記核酸と接触させること、
前記混合物を前記誘導体化した小胞形成性脂質と共にインキュベートすることと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベートすることが約20℃を超える温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インキュベートすることが少なくとも約10分間実施される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質−誘導体化ポリマーが以下の一般構造を有する、請求項15から18までのいずれか一項に記載の方法
【化2】
[式中、R1は、ジチオベンジル部分に結合するための連結部を含む親水性ポリマーであり、R2及びR5は、独立に、H、アルキル及びアリールからなる群から選択され、R3は、O(C=O)R4、S(C=O)R4及びO(C=S)R4からなる群から選択され、R4は小胞形成性脂質であり、CH2−R3の配向はオルト位及びパラ位から選択される]。
【請求項20】
前記小胞形成性脂質R4がアミン含有脂質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記脂質が単一の炭化水素テール又は二重の炭化水素テールを有する、請求項15から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記脂質がリン脂質である、請求項15から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
R2及びR5がアルキルである、請求項19から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
R1が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、それらのコポリマー及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドからなる群から選択される、請求項19から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
R1がポリエチレングリコールである、請求項19から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
R5がHであり、R2がCH3又はC2H5である、請求項19から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記カチオン性脂質が、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選択される、請求項15から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記リポソームがコレステロールをさらに含む、請求項15から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸がDNA又はRNAである、請求項15から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸がプラスミドである、請求項15から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子が、第8因子、サイトカイン、p53及びHSV−tkからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項15から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
核酸を対象に投与する方法であって、
請求項1から14までのいずれか一項に記載の組成物を調製するステップと、
前記組成物を前記対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記解放可能な連結部の解放を促進するのに有効な作用物質を投与するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記作用物質が還元剤である、請求項33に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公表番号】特表2007−512355(P2007−512355A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541508(P2006−541508)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/041170
【国際公開番号】WO2005/051351
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(500512450)アルザ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/041170
【国際公開番号】WO2005/051351
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(500512450)アルザ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】
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