説明

開閉機構および画像形成装置

【課題】カバー部材の閉状態から開状態への揺動時に、回動軸の位置を変えることにより、装置サイズを大きくすることなく、かつ、装置本体内部で干渉する部材を避けながら、移動体とカバー部材との干渉を未然に回避できる開閉機構および画像形成装置を提供する。
【解決手段】開閉機構1は、二点鎖線で示す装置本体100に対して挿脱方向(Y軸方向)に挿脱可能な移動体5と、回動軸4、該回動軸4を中心として装置本体100の内部を覆う閉位置と装置本体100の内部を開放する開位置との間で揺動開閉可能なカバー部2a、および回動軸4近傍のカバー部2aから鉛直方向(Z軸方向)の下向きに突出した凸部3を備えるカバー部材2と、カバー部2aが前記閉位置と前記開位置を占めるべく揺動する間で回動軸4の位置を変える軸位置変更手段(アーム7、ガイド手段6)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉機構および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、開閉体の開閉機構を有する、インクジェット記録装置、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、印刷装置等を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、装置本体の前面側に揺動開閉可能なフロントカバー等のカバー部材を配置して、装置本体前面からのジャム処理、装置本体内部のメンテナンス作業・部品交換等の作業を行える、いわゆるフロントオペレーションを可能とする構成を備えた画像形成装置が一般的に用いられている。また、装置本体に対して挿脱可能な給紙トレイ等の移動体と、回動軸を中心として装置本体の内部を覆う閉位置と該内部を開放する開位置との間で揺動開閉可能なカバー等の開閉体であるカバー部材とを有する開閉体の開閉機構(以下、単に「開閉機構」という)、およびこの開閉機構を備えた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現状においては、上記特許文献1〜4を始めとして以下の課題を解決する本格的な技術提案は見当たらない。すなわち、上記した給紙トレイ等の移動体とカバー等の開閉体としてのカバー部材とを有する上記した開閉機構、および該開閉機構を備えた画像形成装置において、例えばカバー部材が装置本体の上方に配置されていて、移動体がカバー部材の下方近傍に配置されている場合、カバー部材の下部に設けられた回動軸は移動体よりも上方にないと、移動体の装置本体からの離脱時に、カバー部材の下部等の一部と移動体とが干渉する。
一方、カバー部材が閉位置状態から開き始める一部の区間で、カバー部材の回動軸が移動体との干渉が懸念される部分より下側にないと干渉する部材などがある場合において、回動軸の位置を鉛直方向の上向きに変えないと、カバー部材と移動体とが干渉するという問題が発生する。この課題を解決すべく、単純に考えて、カバー部材と移動体との間の隙間・クリアランスを大きく広げれば上記干渉を回避できるが、そうした場合、今度は装置サイズが大きくなったり、隙間大のため装置外観の見栄えが悪くなったりするという問題が発生してしまう。
【0004】
本発明は、上述した問題・事情に鑑みてなされたものであり、開閉機構およびこれを備えた画像形成装置において、開閉体(カバー部材)の閉状態から開状態への揺動時に、回動軸の位置を変える(例えば鉛直方向の上向きに変える)ことにより、装置サイズを大きくすることなく、かつ、装置本体内部で干渉する部材を避けながら、移動体と開閉体との干渉を未然に回避できる開閉機構および画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、装置本体に対して挿脱可能な移動体と、回動軸、該回動軸を中心として前記装置本体の内部を覆う閉位置と該内部を開放する開位置との間で揺動開閉可能なカバー部、および前記回動軸近傍の前記カバー部から突出した凸部を備える開閉体と、前記カバー部が前記閉位置と前記開位置を占めるべく揺動する間で前記回動軸の位置を変える軸位置変更手段とを有し、前記回動軸の中心軸線と直交する平面上に、前記回動軸および前記移動体を投影したとき、前記回動軸の投影部は、前記カバー部の前記閉位置において前記移動体の投影部と干渉する位置にあり、前記カバー部の前記開位置への揺動時において前記移動体の移動軌跡と干渉しない位置にあるように、前記開閉体が配置されていることを特徴とする開閉機構である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の開閉機構において、前記凸部は、前記カバー部の全ての揺動軌跡範囲において、前記カバー部における前記装置本体の外側の面よりも該装置本体の内側に位置することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の開閉機構において、前記軸位置変更手段は、前記凸部または前記カバー部を案内するガイド手段と、一端部が前記回動軸に、他端部が軸を介して前記装置本体にそれぞれ回動可能に連結された連結手段とを有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の開閉機構において、前記凸部は、前記ガイド手段に案内される被ガイド部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の開閉機構において、前記ガイド手段に案内される被ガイド部を複数有し、前記カバー部の開閉動作に伴って、前記被ガイド部が変更されることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項3ないし5の何れか一つに記載の開閉機構において、前記ガイド手段が、複数配設されており、前記カバー部の開閉動作に伴って、前記被ガイド部または前記複数の被ガイド部を案内する前記ガイド手段が変更されることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項3ないし6の何れか一つに記載の開閉機構において、前記ガイド手段に案内される前記凸部または前記カバー部は、前記カバー部が前記閉位置を占めたときに、前記回動軸よりも前記移動体とより長くオーバーラップする前記装置本体の内部奥側に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項8記載の発明は、請求項1または2記載の開閉機構において、前記軸位置変更手段は、前記凸部に形成され、前記回動軸の位置を変える方向に力を加えるカム形状部と、該カム形状部を案内するガイド手段と、前記回動軸の位置を変える方向に前記回動軸をスライドさせながら保持するスライド保持手段とを有することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1または2記載の開閉機構において、前記軸位置変更手段は、前記凸部に駆動力伝達関係をもって連結され、前記カバー部の揺動運動を前記回動軸の位置を変える方向の運動に変換するカムと、前記カムを回動可能に保持するスライド軸と、前記スライド軸を介して前記カムと前記回動軸とを一体で保持するカム保持手段と、前記カムを接触させることにより前記スライド軸の位置を変えるガイド面を備え、前記回動軸の位置を変える方向に前記カム保持手段をスライド移動させるスライド保持手段とを有することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の開閉機構において、前記カバー部が、前記開位置を占める方向に所定の角度以上揺動されたとき、前記カムと前記ガイド面とが接触することを特徴とする。
【0009】
請求項11記載の発明は、請求項1または2記載の開閉機構において、前記軸位置変更手段は、前記凸部近傍の前記装置本体に固定され、前記回動軸の位置を変える方向に沿って歯が並設されたラックと、前記凸部に回転不能に固定され、前記ラックと噛み合うピニオンとを有することを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項1ないし11の何れか一つに記載の開閉機構において、前記カバー部が前記閉位置を占めたとき、該カバー部の浮きを防止する浮き防止手段が、前記装置本体に配設されていることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、被記録媒体に画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置において、請求項1ないし12の何れか一つに記載の開閉機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な開閉機構およびこれを有する画像形成装置を実現し提供することができる。すなわち、本発明によれば、前記構成により、軸位置変更手段によってカバー部が閉位置と開位置を占めるべく揺動する間で回動軸の位置を変えることにより、装置サイズを大きくすることなく、かつ、装置本体内部で干渉する部材を避けながら、移動体と開閉体(カバー部材)との干渉を未然に回避することができる。
また、本発明によれば、上記効果を奏する開閉機構を有することにより、開閉体(カバー部材)と移動体(例えば給紙カセットや給紙トレイなどのシート収容手段)との干渉を未然に回避することで、画像形成装置サイズを大きくすることなく、使い勝手が良く操作性が向上した画像形成装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。
【図2】同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図3】同開閉機構のカバー部材が閉位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【図4】同開閉機構のカバー部材が開き始めている状態を、移動体が装着位置を占めた状態を表わす斜視図である。
【図5】同開閉機構のカバー部材が開き始めている状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【図6】同開閉機構のカバー部材が開位置を、移動体が装着位置をそれぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図7】同開閉機構のカバー部材が開位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【図8】実施形態2を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。
【図9】同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図10】同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす正面図である。
【図11】同開閉機構のカバー部材が開位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図12】同開閉機構のカバー部材が開位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【図13】実施形態3を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。
【図14】同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図15】実施形態4を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図16】図15の正面図である。
【図17】図16の要部の拡大正面図である。
【図18】実施形態5を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図19】実施形態6を示す開閉機構のカバー部材としてのカバー部材が閉位置を占めた状態を表わす斜視図である。
【図20】同開閉機構のカバー部材およびホップアップ機構を表わす分解斜視図である。
【図21】図20のホップアップ機構を拡大した分解斜視図である。
【図22】同開閉機構のカバー部材が閉位置を占めたときのホップアップ機構の内部の要部を示す斜視図である。
【図23】同開閉機構のカバー部材が開位置を占めたときのホップアップ機構の内部の要部を示す斜視図である。
【図24】(a)は、同開閉機構のカバー部材の閉位置状態での、(b)は、カバー部材の開位置状態での、それぞれホップアップ機構の一部を破断して示す一部断面斜視図である。
【図25】(a)は、同開閉機構のカバー部材の閉位置状態での、(b)は、カバー部材の開位置状態での、それぞれホップアップ機構の一部を破断して示す一部断面正面図である。
【図26】実施形態7を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【図27】図26の正面図である。
【図28】(a)は、実施形態8を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、(b)は、同開閉機構のカバー部材が開位置を、それぞれ占めた動作状態を表わす要部の拡大正面図である。
【図29】実施形態9に係る画像形成装置の一例を示す水平吐出方式のインクジェットプリンタの全体構成図である。
【図30】図29のカバー部材の開放時の状態を説明する図である。
【図31】図29とは別の垂直吐出方式のインクジェットプリンタの全体構成図である。
【図32】図29、図31とはさらに別の、画像形成装置の一例を示すレーザプリンタの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0013】
(実施形態1)
図1〜図7を参照して、本発明の実施形態1を説明する(請求項1、3)。図1は、本発明の実施形態1を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。図2は、同開閉機構のカバー部材のカバー部(以下、図面の説明の場合「カバー部材」ともいう)が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図3は、同開閉機構のカバー部材が閉位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。図4は、同開閉機構のカバー部材が開き始めている状態を、移動体が装着位置を占めた状態を表わす斜視図である。図5は、同開閉機構のカバー部材が開き始めている状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。図6は、同開閉機構のカバー部材が開位置を、移動体が装着位置をそれぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図7は、同開閉機構のカバー部材が開位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【0014】
図1において、符号X,Y,Zは3次元座標系を、符号1は本実施形態の開閉機構を、それぞれ示す。開閉機構1は、図3に二点鎖線で示す装置本体100に対して挿脱方向Y(図中Y軸と平行な方向)に挿脱可能な移動体5と、回動軸4、該回動軸4を中心として装置本体100の内部を覆う図2および図3に示す閉位置と装置本体100の内部を開放する図6および図7に示す開位置との間で揺動開閉可能なカバー部2a、および回動軸4近傍のカバー部2aから鉛直方向(Z軸と平行な方向)の下向きに突出した凸部3を備える開閉体としてのカバー部材2と、カバー部2aが前記閉位置と前記開位置を占めるべく揺動する間で回動軸4の位置を変える後述する軸位置変更手段とを有する。回動軸4の位置を変える方向は、後述する実施形態等を含め全て鉛直上方向(移動体5の挿脱方向Yと交差する方向)で統一して説明する。
【0015】
移動体5としては、画像形成装置で例示すると、略箱体(図においては簡略的に示す直方体)状をなす給紙カセットや給紙トレイなどが挙げられ、適宜の樹脂や金属あるいはこれらの組み合わせたもので形成されている。移動体5の装着位置とは、図3等に実線で示すように装置本体100内部の所定部位にセット・保持されている位置をいう。図3、図5、図7において、各図中一点鎖線で示す移動体5は、装置本体100からの移動体5の離脱方向(引出し方向)Yaへの移動軌跡を表している。
移動体5を、挿脱方向Yに挿脱可能とする機構は、例えば、挿脱方向Yに挿脱可能に移動体5を案内するために、移動体5の下方近傍に配設された凹状レール部材等からなる移動体ガイド手段101が挙げられる。この例の場合、移動体5のX軸における両側下端部が移動体ガイド手段101の凹状レール部材に摺動・スライド可能に案内される周知のスライド機構である。なお、移動体5を挿脱可能とすることには、ユーザの操作(引出し・押し込み)による挿脱動作の他に、モータ等の駆動手段による自動的な挿脱動作も含まれる。
以下、後述の各実施形態等に亘り二点鎖線で示す装置本体100の図示は、図および説明の簡明化のため必要な図にのみ図示する。
【0016】
カバー部材2には、上記した回動軸4、カバー部材2の本体部分(開閉体本体部分)であるカバー部2a、凸部3が含まれ、適宜の樹脂や金属あるいはこれらの組み合わせたもので形成されている。回動軸4および凸部3は、カバー部材2と一体的に形成されていることが製造技術および金型形成・経済上から好ましいが、別体的に形成されていてもよい。凸部3および回動軸4は、図1に示すように、移動体5の幅方向(X方向)左右にそれぞれ配置されているが、他の図においては図の簡明化のため適宜省略する。
カバー部2aが閉位置を占めたとき、その位置にカバー部2aを保持する図示しない保持手段、例えば嵌合クリップやクランプ、マグネットキャッチャあるいはマジックテープ(登録商標)が配設されている。また、カバー部2aを閉位置にロックする公知のロック手段を配設してもよい。カバー部2aが開位置を占めたとき、その位置にカバー部2aを保持する図示しないストッパ部材が配設されている。
【0017】
図1および図2に示すように、カバー部2aの下端部には、移動体5上面との干渉を避けるための逃げ凹部2bが形成されている。カバー部2aの逃げ凹部2bと移動体5上面との間の隙間・クリアランスは、カバー部2aの全揺動範囲および移動体5の全挿脱範囲において、互いに干渉せず、かつ、装置の外観見栄えが良くなる程度に設定される。
凸部3の下端部外周面は、部分円柱外周面状のR形状に形成され、後述するガイド手段6に接触・摺動案内される被ガイド部8として機能する。被ガイド部8は、ガイド手段6に接触・摺動案内されるため、耐摩耗性および潤滑性良好な材料が選定される。樹脂であれば、ポリアセタール樹脂やポリアミド樹脂等が挙げられる。ガイド手段6も同様である。
【0018】
図2〜図7に示すように、本実施形態の上記軸位置変更手段は、凸部3の被ガイド部8を案内するガイド手段6と、一端部が回動軸4に、他端部が軸7aを介して装置本体100の内部の不動部材(図示せず)にそれぞれ回動可能に連結された連結手段としてのアーム7とからなる構成例を用いている。本実施形態では、図2〜図7に示すように、図の簡明化のため、ガイド手段6とアーム7とからなる軸位置変更手段を、X軸の一方側(図において右ないし紙面手前側)のみに示しているが、回動軸4を鉛直方向(Z方向)の上向きに安定して位置変更するためにX軸の他方側(図において左ないし紙面奥側)にも配設されている(後述する実施形態でも同様)。
【0019】
ガイド手段6は、本実施形態では装置本体100に配置・固着されているが、後述するように別の実施形態例も可能である。
上記軸位置変更手段は、上記したような、いわゆる2重ヒンジ機構(アーム7およびガイド手段6)の構成例に限らず、後述する構成からなるものでもよい。
【0020】
開閉機構1は、上述した構成に加えて特有の構成、すなわち、図2および図3において、回動軸4の中心軸線と直交する平面であるYZ平面上に、回動軸4の中心軸線方向(X軸方向)から回動軸4および移動体5を投影したとき、回動軸4の投影部は、カバー部2aの前記閉位置において移動体5の投影部と干渉する位置にあり、図6および図7に示すように、カバー部2aの前記開位置への揺動時において移動体5の移動軌跡と干渉しない位置にあるように、カバー部材2が配置・構成されている。なお、YZ平面は、回動軸4を法線とする平面であるとも表現できる。
【0021】
図2〜図7を参照して、開閉機構1の動作について説明する。図2〜図7の構成では、ユーザがカバー部2aの上部を持ってカバー部材2を開くことを想定している。カバー部2aが図2および図3に示すように閉位置を占めている状態から開く場合には、カバー部2aは図4および図5に示すように回動軸4を中心に反時計回りに揺動して開いていくが、このとき「てこの原理」により、カバー部2aの上部(力点)に作用したユーザの操作力が回動軸4を支点として凸部3の被ガイド部8(作用点)に作用するモーメントになり、また凸部3の被ガイド部8が回動軸4よりも下部に位置し、かつ、アーム7の軸7aの位置が不変であることにより、上記モーメントによって被ガイド部8がガイド手段6の鉛直ガイド面6aに常に圧接する状態となる。そして、カバー部2aの開位置への揺動に伴い、凸部3の被ガイド部8がガイド手段6の鉛直ガイド面6aとの摺動によって鉛直上方に案内されることで、凸部3と実質的に一体の回動軸4は鉛直上方に移動しながらカバー部2aが図6および図7に示す開位置を占めることとなる。
【0022】
図2および図3において、回動軸4の中心軸線と直交する平面であるYZ平面上に、回動軸4の中心軸線方向(X軸方向)から回動軸4および移動体5を投影したとき、回動軸4の投影部は、カバー部2aの前記閉位置において移動体5の投影部と干渉する位置にあるにも拘わらず、カバー部2aは常に移動体5と干渉しない位置で揺動開閉動作することができる。
一方、図4〜図7に示すように、カバー部2aの前記開位置への揺動時において、回動軸4は、凸部3の被ガイド部8がガイド手段6の鉛直ガイド面6aに案内されつつ摺接しながら鉛直上方向にスライド移動(以下、「ホップアップ移動」ともいう)することで、カバー部2aは移動体5の動作・移動軌跡と干渉しない位置を占めることとなる。
なお、カバー部2aの前記開位置から前記閉位置への揺動動作は、上述した動作と逆の動作で行われる。すなわち、カバー部2aの閉位置への揺動時において、回動軸4は、凸部3の被ガイド部8がガイド手段6の鉛直ガイド面6aに案内されつつ軽く摺接しながら鉛直下方向に移動することで、カバー部2aは前記閉位置を占めることとなる。後述の実施形態でもほぼ同様であるため、カバー部2aの前記開位置から前記閉位置への揺動動作の説明は適宜省略する。
【0023】
本実施形態によれば、軸位置変更手段(例えば、アーム7およびガイド手段6からなる2重ヒンジ機構)によってカバー部材2の回動軸4の位置を変更することで、カバー部2aの開閉動作の途中にて内部で干渉する部材や部品がある場合でも、装置本体100のサイズ(マシンサイズ)を大きくすることなく装置本体100の内部で干渉する部品を避けながら、さらに移動体5とカバー部2aとの干渉を未然に回避することができる。
また、軸位置変更手段としてアーム7およびガイド手段6からなる2重ヒンジ機構を用いた場合、簡素な構成の部材・部品で回動軸4の位置を変更することができる。
また、ガイド手段6を装置本体100に固設したことで、まず移動体5の挿脱動作に対して負荷を与えないで操作性の悪化が防止されている、さらにはガイド部(鉛直ガイド面6a)が安定しているため内部の複数の部品とのクリアランスを同時に管理しやすいという効果もある。
【0024】
(実施形態2)
図8〜図12を参照して、実施形態2を説明する(請求項2〜4、7)。図8は、実施形態2を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。図9は、同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図10は、同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす正面図である。図11は、同開閉機構のカバー部材が開位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図12は、同開閉機構のカバー部材が開位置を占めた状態を、移動体の装着位置および移動軌跡を、それぞれ表わす正面図である。
【0025】
実施形態2は、実施形態1の開閉機構1と比較して、図8〜図12に示すように、開閉機構1に代えた開閉機構1Aを用いる点が相違する。本実施形態2の開閉機構1Aは、図1〜図7の実施形態1の開閉機構1と比較して、カバー部材2に代えたカバー部材2Aを用いる点のみ相違する。カバー部材2Aは、実施形態1のカバー部材2と比較して、図8〜図12に示すように、カバー部材2Aの凸部3が、カバー部2aの全ての揺動開閉軌跡範囲において、カバー部2aにおける図10に示す装置本体100の外側の面よりも装置本体100の内側に位置するように構成されている点が主に相違する。
この相違点を別の観点から説明すると、ガイド手段6に案内される凸部3(またはカバー部2a)は、カバー部2aが閉位置を占めたときに、回動軸4よりも移動体4とより長くオーバーラップする装置本体100の内部奥側に配置されると表現できる(請求項7)。上記相違点は、本実施形態2の後に説明する図13〜図16についても同様である。上記相違点以外の実施形態2の構成および動作は、実施形態1とほぼ同様である。
【0026】
図8〜図12を参照して、実施形態1と相違する点を中心に開閉機構1Aの動作を説明する。カバー部2aが図9および図10に示す閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作を行うと、カバー部2aは図11および図12に示すように回動軸4を中心に反時計回りに揺動して開いていき、上記した実施形態1と同様の動作で、被ガイド部8がガイド手段6の鉛直ガイド面6aに常に圧接する状態となる。この際、凸部3に設けられている回動軸4に対してカバー部2aと反対側の部分、つまり図9〜図12の被ガイド部8は装置本体100の内側に向けて屈曲して構成されているため、上記した実施形態1で説明した場合よりも装置本体100の内部により一層入り込む方向に移動する。以降の動作は、上記した実施形態1と同様に行われる。
【0027】
図9および図10において、回動軸4の中心軸線と直交するYZ平面上に、回動軸4の中心軸線方向(X軸方向)から回動軸4および移動体5を投影したとき、回動軸4の投影部は、カバー部2aの前記閉位置において移動体5の投影部と干渉する位置にあるにも拘わらず、カバー部2aは常に移動体5と干渉しない位置で揺動開閉動作することができる。
一方、図11および図12に示すように、カバー部2aの前記開位置への揺動時において、回動軸4は上記した実施形態1と同様にホップアップ移動することで、カバー部2aは移動体5の動作・移動軌跡と干渉しない位置を占めることとなる。
【0028】
本実施形態2によれば、カバー部材2Aの凸部3が、カバー部2aの全ての揺動開閉軌跡範囲において、カバー部2aにおける装置本体100の外側の面よりも装置本体100の内側に位置し、装置本体100の外側にくることがないので、装置本体100の外装などに凸部3を避けるための切れ込みなどが不要となり、外装面の見た目の悪化を防ぐことができる。加えて、回動軸4のホップアップ移動時において、被ガイド部8が実施形態1で説明した場合よりも装置本体100の内部により一層入り込む方向に移動することにより、回動軸4をホップアップ移動させるためのガイド手段6を、装置本体100の外部にはみ出ることなく装置本体100の内部に配置できるので、装置レイアウトの問題上小型化が容易である。別の観点からは、ガイド手段6に案内される凸部3は、カバー部2aが閉位置を占めたときに、回動軸4よりも移動体4とより長くオーバーラップする装置本体100の内部奥側に配置されることにより、凸部3の被ガイド部8が装置本体100の内部奥側に入り込むために装置本体(マシン)サイズに影響を与えないこと、およびガイド手段6を装置本体側の構造体で保持しやすいためガイド手段6を装置本体側の構造体で一体化することが容易で、コストやサイズ・強度の点で有利である。
【0029】
本実施形態2も実施形態1と同様に、カバー部材2Aはカバー部2aの開閉動作中も移動体5の移動軌跡と干渉することがなく、移動体5はカバー部2aの開閉動作や位置に拘わらず装置本体100から引き出し・離脱可能な構成である。また、軸位置変更手段としてアーム7およびガイド手段6からなる2重ヒンジ機構を採用したことにより、簡易な構成の部材・部品で回動軸4の位置を変更することができる。また、ガイド手段6により案内される被ガイド部8が回動軸4に近い位置に配置されるため、装置本体100の小サイズ化に対しても有利となる。上記したとおり、本実施形態2によれば、上記実施形態1の基本的な効果を奏することは無論である(以下、後述の各実施形態の効果でも同様である)。
【0030】
一方、本実施形態2や実施形態1のような簡易な構成の軸位置変更手段では、ガイド手段6にて案内される被ガイド部8が回動軸4に近い位置に配置されるため、回動軸4に近い位置でガイド手段6によって案内されることになり、回動軸4を鉛直上方向(Z方向の上向き)に摺動するためにはガイド手段6と被ガイド部8との力の掛かる方向と、回動軸4が移動する角度との不一致が大きくなってしまう。これにより、ガイド手段6と被ガイド部8との間の摩擦力が大きくなり、カバー部2aの開閉動作がスムーズでなくなったり、ガイド手段6と被ガイド部8との磨耗による劣化が激しくなったりする懸念がある。
また、被ガイド部8がカバー部2aと一体に構成されると、被ガイド部8のガイド手段6に対する摩擦係数や磨耗に強い材料の選定や、コストあるいは難燃性、強度など外装への要求とのバランスが難しく選定しにくい懸念もある。さらに上記懸念(磨耗や操作性の悪化)を解消するために、回動軸4と被ガイド部8とを離した位置に配置しようとすると、装置内部のレイアウトに大きな影響を与え装置本体サイズを小さくすることが困難になる懸念がある。このような点を改良すべく、次に説明する実施形態3を創作した。
【0031】
(実施形態3)
図13および図14を参照して、実施形態3を説明する(請求項5、6)。図13は、実施形態3を示す開閉機構のカバー部材の斜視図である。図14は、同開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
【0032】
実施形態3は、実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図13および図14に示すように、開閉機構1Bを用いる点が相違する。本実施形態3の開閉機構1Bは、図8〜図12の実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図14に示すように、カバー部材2Aに代えたカバー部材2Bを用いる点、軸位置変更手段を構成するガイド手段6に代えて、ガイド手段6Aを用いる点が主に相違する。
【0033】
カバー部材2Bは、図8〜図12の実施形態2のカバー部材2Aと比較して、図13および図14に示すように、カバー部材2Bの凸部3が複数の被ガイド部8a,8bを有する点、カバー部材2Bのカバー部2aの開閉動作に伴って、ガイド手段6Aに案内される、図13中の一点鎖線で示す各被ガイド部8a,8bが変更される点が主に相違する。
【0034】
ガイド手段6Aは、図8〜図12の実施形態2のガイド手段6と比較して、図13および図14に示すように、複数のガイド手段6−1,6−2を有する点、カバー部材2Bのカバー部2aの開閉動作に伴って、各被ガイド部8a,8bを案内するガイド手段6−1,6−2が変更される点が主に相違する。ガイド手段6−1は、水平ガイド面6bを備え、ガイド手段6−2は鉛直ガイド面6aを備えたほぼL字状をなす板部材からなる。上記相違点以外の実施形態3の構成は、上記した実施形態2と同様である。
【0035】
実施形態2と相違する点を中心に開閉機構1Bの動作を説明する。カバー部2aが図14に示す閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作を行うと、カバー部2aは回動軸4を中心に反時計回りに揺動して開いていき、最初に凸部3の被ガイド部8aがガイド手段6−1の水平ガイド面6b上を案内されつつ摺動することにより、回動軸4は鉛直上方向に平行移動する。次いで、被ガイド部8bがガイド手段6−2の鉛直ガイド面6aと接触し、鉛直ガイド面6aを鉛直上方向に摺動することで、回動軸4のホップアップ移動が行われる。
【0036】
本実施形態3によれば、凸部3が複数の被ガイド部8a,8bを有するカバー部材2Bを用いていると共に、複数のガイド手段6−1,6−2を有するガイド手段6Aを用いているので、回動軸4の移動方向に対して加重点(ガイド手段6Aと被ガイド部8a,8bの接触点)の加重方向をより回動軸4の移動方向である鉛直上方向に一致させることができる。そのため実施形態1や2の構成に比べて、回動軸4と加重点の距離を長くすることなく磨耗や操作性の悪化を防ぐことができる。
【0037】
(実施形態4)
図15〜図17を参照して、実施形態4を説明する。図15は、実施形態4を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図16は、図15の正面図、図17は、図16の要部の拡大正面図である。
【0038】
実施形態4は、実施形態3の開閉機構1Bと比較して、図15〜図17に示すように、開閉機構1Cを用いる点が相違する。本実施形態4の開閉機構1Cは、図13および図14の実施形態3の開閉機構1Bと比較して、図15〜図17に示すように、カバー部材2Bに代えたカバー部材2Cを用いる点、ガイド手段6Aに代えて、実施形態1や実施形態2と同様の軸位置変更手段を構成するガイド手段6と移動体5側に配置されたガイド手段とを用いる点が主に相違する。
【0039】
カバー部材2Cは、実施形態3のカバー部材2Bと比較して、図15〜図17に示すように、複数(本実施形態4では2つ)の被ガイド部8aがカバー部2aの左右両端下部に設けられている点、図8等に示した実施形態2と同様の単一の被ガイド部8(本実施形態4では被ガイド部8bとする)を備えた凸部3が回動軸4近傍に一体的に形成されている点が相違する。
図17に示すように、移動体5の図において左端部の左右両側の上面には、カバー部2aの左右両端下部に設けられた各被ガイド部8aを案内するガイド手段6’が設けられている。
【0040】
実施形態4は、上記したとおり、複数のガイド手段のうちの一方のガイド手段6’が、移動体5に配置されていて、ガイド手段6’がカバー部2aを案内する構成であると共に、他方のガイド手段6が装置本体に配置されている構成である。
【0041】
実施形態3と相違する点を中心に開閉機構1Cの動作を説明する。カバー部2aが図15〜図17に示す閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作を行うと、カバー部2aは回動軸4を中心に反時計回りに揺動して開いていき、最初に、カバー部2aの被ガイド部8aが移動体5のガイド手段6’に接触し案内されることにより、回動軸4は鉛直上方向に平行移動、すなわちホップアップ移動する。その後に凸部3の被ガイド部8bとガイド手段6とが接触することで、回動軸4はさらにホップアップ移動する。
【0042】
本実施形態4によれば、上記した実施形態3の効果に加えて次の効果を奏する。複数のガイド手段のうちの一方のガイド手段6’が移動体5に配置されている構成と、ガイド手段6’がカバー部2aを案内する構成とは異なるが、その効果は同様の効果が見込めるため、レイアウトやクリアランスを管理したい部品の位置決めなどで選択することが可能である。図15〜図17に示した実施形態4では上記異なる構成を同時に用いた構成例について説明している。実施形態4の構成例ではクリアランスを管理したい部品(本実施形態4では移動体5)と確実に、さらに狙いに対して誤差なくクリアランスを確保することができる。実施形態4の場合、管理したいのはカバー部2aと移動体5との干渉である。そのためガイド手段6’や被ガイド部8aを管理したい部品そのものに設けることで確実に干渉を最小限のクリアランスで避けることができる。
【0043】
(実施形態5)
図18を参照して、実施形態5を説明する(請求項8)。図18は、実施形態5を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。
実施形態5は、図14の実施形態3の開閉機構1Bと比較して、図18に示すように、開閉機構1Dを用いる点が相違する。本実施形態5の開閉機構1Dは、図14の実施形態3の開閉機構1Bと比較して、同図に示すように、カバー部材2Bに代えたカバー部材2Dを用いる点、軸位置変更手段を構成するアーム7を除去すると共に、軸位置変更手段を構成するガイド手段6Aに代えて、凸部3を案内するガイド手段6−1およびスライド保持手段67を用いる点が主に相違する。
【0044】
カバー部材2Dは、実施形態3のカバー部材2Bと比較して、凸部3に形成された複数の被ガイド部8a,8bに代えて、図18に示すように、回動軸4の位置を変える方向に力を加えるカム形状部66が凸部3に形成されている点が相違する。
ガイド手段6−1は、装置本体100に固設され、カム形状部66を摺接しつつ案内すべく機能する。スライド保持手段67は、装置本体100に固設され、回動軸4の位置を変える方向に回動軸4をスライドさせながら保持する機能を有し、回動軸4を鉛直・上下方向に遊嵌するスライド溝67が形成されている。
上記のとおり、本実施形態5の軸位置変更手段は、カム形状部66、ガイド手段6−1およびスライド保持手段67から構成されている。
【0045】
実施形態3と相違する点を中心に開閉機構1Dの動作を説明する。カバー部2aが図18に示す閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作に伴って、カム形状部66がガイド手段6−1の水平ガイド面6bに接触・摺接して回動軸4をホップアップ移動させる。この際、回動軸4はスライド保持手段67のスライド溝67との遊嵌したガイドによって比較的自由に動くことができる。そのため図2〜図17に適宜示したようなアーム7を用いた連結手段方式と比べ、回動軸4の移動軌跡に設計的な余裕幅が生じる。そのためガイド手段6−1の水平ガイド面6bの摩耗や装置本体(マシン)サイズに対してより有利な設計が可能である。
【0046】
本実施形態5によれば、アーム7を用いた軸位置変更手段に比べて小さい範囲で回動軸4の鉛直上方向への移動距離を大きくとることができる(アーム式で大きく動かそうとするとアーム7が長くなる)。さらに回動軸4の移動軌跡の設計に自由度が大きいためにレイアウトが容易である点や、カム形状部66の動作方向に対する力方向のバランスをより適切に設定することができるため、カム形状部66とガイド手段6−1との接触部の磨耗やカバー部2aの操作性の改善を行える。
【0047】
(実施形態6)
図19〜図25を参照して、本発明の実施形態6を説明する(請求項9)。図19〜図25に亘り、図の簡明化のため開閉機構における移動体の図示を省略している。図19〜図22、図24(a)、図25(a)は、本発明の実施形態6の開閉機構のカバー部材が閉位置を占めた状態を表わす斜視図、分解斜視図、一部断面斜視図、一部断面正面図である。図23、図24(b)、図25(b)は、同開閉機構のカバー部材が開位置を占めた状態を表わす斜視図、分解斜視図、一部断面斜視図、一部断面正面図である。
【0048】
実施形態6に係る開閉機構は、上記した実施形態1ないし5のいわば実施例としての技術内容を包含するものであり、後述する各種画像形成装置への適用例で示すように実用的な面を有する。まず、図19〜図21を参照して、実施形態6の開閉機構全体の構成を説明する。
実施形態6は、図2〜図7の実施形態1の開閉機構1と比較して、図19〜図21に示すように、開閉機構1に代えた開閉機構1Eを用いる点が相違する。本実施形態6の開閉機構1Eは、実施形態1の開閉機構1と比較して、カバー部材2に代えたカバー部材2Eを用いる点、軸位置変更手段を構成するアーム7およびガイド手段6を除去しこれらに代えて、軸位置変更手段としてのホップアップ機構80を用いる点が主に相違する。上記相違点以外の実施形態6の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0049】
カバー部材2Eは、実施形態1のカバー部材2と比較して、図19〜図21に示すように、カバー部2aの上部にユーザが開閉操作するための取っ手2cを設けた点、カバー部材2におけるカバー部2aの凸部3先端部に形成された被ガイド部8を除去しこれに代えて、カバー部2aにおける凸部3の下端外周部に、セクタ歯車3aを形成した点が主に相違する。
【0050】
ホップアップ機構80は、カバー部2aの左右両側下端部に設けられた凸部3に対応して、凸部3の左右両側下方に配置されている。軸位置変更手段としてのホップアップ機構80は、凸部3に駆動力伝達関係をもって連結され、カバー部2aの揺動運動を回動軸4の位置を変える方向(鉛直上方向)の運動に変換するカム68と、カム68を回動可能に保持するスライド軸70と、スライド軸70を介してカム68と回動軸4とを一体で保持するカム保持手段69と、装置本体100に固設され、カム保持手段69を回動軸4の位置を変える方向にスライド移動させ、かつ、カム68を接触させて案内するスライド保持手段67とから主に構成されている。
【0051】
回動軸4は、本実施形態では凸部3近傍に形成された挿通孔3bに嵌入される別体の軸であるが、機能的には上記した実施形態1等のカバー部2aと一体的に形成された回動軸4と同様に機能する。図21において、回動軸4は、カム保持手段69の上部に形成された挿通孔69aに挿通された後、止め輪等で抜け止めがなされる。同様に、スライド軸70は、カム保持手段69の下部に形成された挿通孔69bに挿通された後、止め輪等で抜け止めがなされる。図19〜図21の構成では、カム68と接触して回動軸4を案内移動させるガイド手段はスライド保持手段67と一体で作られている。
【0052】
カム68には、凸部3に駆動力伝達関係をもって連結するための、凸部3のセクタ歯車3aと噛み合うセクタ歯車68aと、スライド軸70を挿通するための軸孔68bと、大径部68cとが形成されている。
スライド保持手段67は、装置本体100の図示しない不動部材に取り付け・固定されている。スライド保持手段67には、カム保持手段69を回動軸4の位置を変える方向にスライド移動させるためのスライドガイド部と、カム68を接触させることによりスライド軸70の位置を変える水平ガイド面67bと、回動軸4およびスライド軸70を介してカム保持手段69をスライド移動可能に案内するスライド溝67aとが一体的に形成されている。スライド溝67aは、鉛直方向(Z軸方向)に延びて形成されている。回動軸4およびスライド軸70の各両端部は、スライド保持手段67の左右両側に形成されたスライド溝67aによってスライド可能に案内される。
【0053】
回動軸4、スライド軸70は、例えば鋼材で形成される。カム68、カム保持手段69およびスライド保持手段67は、耐摩耗性、必要な強度を備えた適宜の樹脂、例えばポリアセタール樹脂やポリアミド樹脂あるいはエンジニアリングプラスチック等で一体的に形成される。
【0054】
図22〜図25を参照して、実施形態1と相違する点を中心に開閉機構1Eの動作を説明する。カバー部2aが図22および図24(a)、図25(a)に示す閉位置を占めている状態では、カム保持手段69の底面がスライド保持手段67に形成された水平ガイド面67bに接触した状態にあるが、カム68は水平ガイド面67bに接触しておらず、水平ガイド面67bから浮いている状態にある。カバー部2aが閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作を行うと、回動軸4を中心に反時計回りに揺動して開いていき、この際図24(a)、図25(a)において、凸部3のセクタ歯車3aが反時計回りに回転するので、セクタ歯車3aと噛み合うカム68のセクタ歯車68aは時計回りに回転することで、カム68の大径部68cが水平ガイド面67bに接触するようになり、カム68を鉛直方向の上向きZaに押し上げる。このとき回動軸4はカム保持手段69によってカム68と一体に保持されているため、回動軸4はカム68の回転動作に伴って鉛直方向の上向きZaにスライド移動、すなわちホップアップ移動することとなる。このときのスライド移動の軌跡は、カム保持手段69をスライド保持しているスライド保持手段67の形状によって決まる。
【0055】
本実施形態6によれば、上記した実施形態1〜5と比較して、ホップアップ機構80によって、カバー部2aの開位置への揺動動作が回動軸4のホップアップ移動動作に対して摩擦抵抗少なくスムーズに行われるので、回動軸4をスムーズかつ自由にホップアップ移動することができる。本実施形態6では、回動軸4のホップアップ移動動作が比較的スムーズに行われる図18に示した実施形態5と比べても、より一層スムーズに行われることを試作品を製作して確認済みである。
【0056】
(実施形態7)
図26および図27を参照して、実施形態7を説明する(請求項12)。図26は、実施形態7を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、移動体が装着位置を、それぞれ占めた状態を表わす斜視図である。図27は、図26の正面図である。
実施形態7は、実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図26および図27に示すように、開閉機構1Fを用いる点が相違する。本実施形態7の開閉機構1Fは、図8〜図12の実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図26および図27に示すように、カバー部材2Aに代えたカバー部材2Fを用いる点、およびカバー部材2Fのカバー部2aが閉位置を占めたとき、該カバー部2aの浮きを防止する浮き防止手段としての浮き抑制ガイド部材81を装置本体に新たに配設した点が主に相違する。
浮き抑制ガイド部材81は、板状部材からなり、移動体5の離脱方向(Y軸方向の図において右から左に向かう方向)の上流から下流にいくに従い鉛直上方向に若干傾斜した角度をもって装置本体の図示しない不動部材に固設されている。なお、浮き抑制ガイド部材81は、図26の右手前側のみを図示しているが、左奥側にも同様に配設されていることはいうまでもない。
【0057】
カバー部材2Fは、図8〜図12の実施形態2のカバー部材2Aと比較して、カバー部材2Fのカバー部2aが閉位置を占めたとき、浮き抑制ガイド部材81と係合する被ガイドピン2eを植設された被ガイド部2dがカバー部2aに一体的に形成されている点のみ相違する。
各被ガイド部2dは、カバー部2aが閉位置を占めたとき、カバー部2aの上部左右側端部から装置本体の内側に向けて突出するようにカバー部2aに一体的に形成されている。各被ガイドピン2eは、各被ガイド部2dの外側端面からX軸方向と平行に外側に突出するように各被ガイド部2dに固設されている。
【0058】
カバー部2aの前記開位置から前記閉位置への揺動動作は、上述した実施形態2の動作と同様に行われる。カバー部2aが前記閉位置を占める際、カバー部2aの各被ガイドピン2eが浮き抑制ガイド部材81の下部傾斜面に係合することで、カバー部材2Fにおけるカバー部2aの浮きが規制された状態で、カバー部2aが前記閉位置に係止・保持される。
本実施形態7によれば、カバー部2aが前記閉位置を占めている状態から開き始める際のユーザによる操作を安定向上することができるとともに、実施形態1で説明した保持手段を除去することも可能となる。
本実施形態7は、上記した実施形態1〜6、後述する実施形態8等にも適用可能である。
【0059】
(実施形態8)
図28を参照して、実施形態8を説明する(請求項11)。図28(a)は、実施形態8を示す開閉機構のカバー部材が閉位置を、図28(b)は、同開閉機構のカバー部材が開位置を、それぞれ占めた動作状態を表わす要部の拡大正面図である。
実施形態8は、実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図28(a)、図28(b)に示すように、開閉機構1Gを用いる点が相違する。本実施形態8の開閉機構1Gは、図8〜図12の実施形態2の開閉機構1Aと比較して、図28(a)、図28(b)に示すように、カバー部材2Aに代えたカバー部材2Gを用いる点、およびガイド手段6とアーム7とからなる軸位置変更手段に代えて、軸位置変更手段82を用いる点が主に相違する。
軸位置変更手段82は、ピニオン63、軸ガイド溝64およびラック65から主に構成されている。軸位置変更手段82は、カバー部材2Gの下部両側に配設されているが、両側で同一の構成であるため、以下、紙面手前側のものを代表して説明する。
【0060】
カバー部材2Gは、図8〜図12に示したカバー部材2Aと比較して、カバー部材2Gの凸部3外側に、ピニオン63が回転不能に固定されている点が主に相違する。カバー部材2Gの回動軸4は、ピニオン63の中央を貫通して紙面手前側に突出した状態でピニオン63に固着されている。
一方、凸部3もしくは回動軸4近傍の装置本体100(図中二点鎖線で示す)には、回動軸4の位置を変える方向(鉛直・上下方向、Z軸方向)に沿って歯が並設され、ピニオン63と噛み合うラック65が固定されている。また、ラック65近傍の装置本体100には、回動軸4の位置を変える方向(鉛直・上下方向、Z軸方向)に回動軸4を案内する長孔状の軸ガイド溝64が形成されている。
なお、図28における紙面手前側から奥側にこの順に、装置本体100側のラック65および軸ガイド溝64、ピニオン63、カバー部材2Gの凸部3が配置されている。
【0061】
実施形態2と相違する点を中心に開閉機構1Gの動作を説明する。カバー部2aが図28(a)に示す閉位置を占めている状態からカバー部2aを開く揺動動作が行われると、カバー部2aの開放角度が大きくなるにつれて、カバー部2aは図28(a)から図28(b)に示すように、カバー部2aと一体のピニオン63がラック65に押し付けられ、噛み合いながら位置不動のラック65上方へと移動していく。この際、ピニオン63のラック65上方への移動と連動して、回動軸4は軸ガイド溝64に案内されながら鉛直上方向に平行移動、すなわちホップアップ移動することとなる。
【0062】
上述したとおり、本実施形態8の軸位置変更手段82によっても回動軸4をホップアップ移動することができる。
なお、本実施形態8の図示例では、ラック65と噛み合うピニオン63の全周に歯を形成しているが、これに限らず、カバー部2aの前記閉位置と前記開位置との揺動範囲に対応した範囲にのみ歯を形成してもよい(ラック65の歯の形成範囲も同様)。
【0063】
また、本実施形態8は、これに限らず、ピニオンおよびラックが、噛み合う部位毎に異なる歯形状(歯数)を備えるものであってもよい。図20等に示した実施形態6におけるカム68を備えた軸位置変更手段では、カム68の輪郭形状(カムプロフィール)によってカバー部材1Eの開閉揺動速度を自由に変えることができるものであった。これと同様の機能をピニオンおよびラックを備えた軸位置変更手段に持たせることが可能である。すなわち、ピニオンおよびラックを備えた軸位置変更手段において、互いに噛み合う部位毎に異なる歯形状(歯数)を構成することにより、例えばカバー部材の閉位置から開き始めるときには、歯形状(歯数)を細かく設定することで開閉速度を遅く・ゆっくりとし、開放途中では歯形状(歯数)を粗く設定することで開閉速度を速め、開位置を占めるときには再び歯形状(歯数)を細かく設定することで開閉速度を遅くするというようにである。
【0064】
本発明の実施形態は、上述した実施形態1〜8に限らず、以下の構成を追加した開閉機構であってもよい。
図2等のガイド手段6、図14のガイド手段6−1,6−2、図18のガイド手段6−1の各ガイド面に、凸部3の被ガイド部8,8a,8bに接触して従動回転可能な従動回転部材としてのローラ(図示せず)を付設してもよい。また、上記したとは反対に、凸部3の被ガイド部8,8a,8bに、従動回転部材としてのローラ(図示せず)を付設してもよい。このような従動回転部材としてのローラ(図示せず)を付設すると、凸部3の被ガイド部8,8a,8bとガイド手段6、6−1,6−2の各ガイド面との間の摩擦係数が減少するので磨耗による損傷を減らして耐久性を向上できる。
【0065】
また、凸部3の可動部分に、ダンパ機構を付設してもよい。ダンパ機構を凸部3に付設すると、凸部3の被ガイド部8,8a,8bがガイド手段6、6−1,6−2の各ガイド面に接触する際の衝撃を緩衝することができるので、カバー部材の揺動開閉動作がスムーズとなり、カバー部2aの操作性の改善を図ることも可能となる。
【0066】
(実施形態9)
図29および図30を参照して、本発明の画像形成装置に係る実施形態9を説明する(請求項13)。図29は本発明に係る実施形態9を示す画像形成装置の一例としての静電搬送方式のインクジェット記録装置(以下、「インクジェットプリンタ」という)の全体の正面図である。インクジェットプリンタとしては、通常の搬送ローラを用いたいわゆるプラテンリブ方式にも適用可能である。まず、インクジェットプリンタの全体構成と動作を説明した後に、上記した実施形態6の開閉機構1Eを採用した技術内容を説明する。
【0067】
図29に示すインクジェットプリンタは、シリアル型のインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタは、(図示しない)左右の側板に横架したガイド部材である2本のガイドロッド32,33でキャリッジ30を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータで駆動プーリ(図示せず)と従動プーリ(図示せず)間に架け渡したタイミングベルト(図示せず)を介して主走査方向に移動走査する。
【0068】
キャリッジ30には、例えば、ブラック(Bk)インク滴を吐出する吐出口列を有するブラック用の記録ヘッド31と、シアン(C)インク滴を吐出する吐出口列、マゼンタ(M)インク滴を吐出する吐出口列およびイエロー(Y)インク滴を吐出する吐出口列とを備えた液滴吐出ヘッドからなるカラー用の記録ヘッド31とを、吐出口列が主走査方向と交差する方向に配置されるように、インク滴吐出方向を水平に向けて装着している。
【0069】
一方、給紙部のシート収容手段としての給紙トレイ5の底板29上に積載した被記録媒体としての用紙50を給紙するための給紙部として、用紙積載部から用紙を1枚ずつ分離給送する半月コロ28(以下、「給紙ローラ28」という)および給紙ローラ28に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(図示せず)を備え、この分離パッドは給紙ローラ28側に付勢されている。
【0070】
上記給紙部から給紙された用紙50を記録ヘッド31に対向して搬送するための搬送部として、用紙50を静電力で吸着して搬送するための搬送ベルト11と、用紙を搬送ベルト11上に倣わせるため搬送ベルト11側に付勢された先端加圧コロ41とを備えている。また、搬送ベルト11表面を帯電させるための帯電手段を構成する帯電ローラ17を備えている。
【0071】
ここで、搬送ベルト11は、駆動ローラである搬送ローラ10と従動ローラであるテンションローラ12との間に掛け渡されて、図示しない副走査モータからタイミングベルト(図示せず)を介して搬送ローラ10が回転されることで、図29中矢印で示すベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動するように構成している。なお、搬送ベルト11の裏面側には記録ヘッド31による画像形成領域に対応して図示しないガイド部材を配置している。
【0072】
帯電ローラ17は、搬送ベルト10の表層をなす絶縁層(複層構造のベルトの場合)に接触し、搬送ベルト11の回動に従動して回転するように配置され、軸の両端に加圧力をかけている。また、搬送ローラ10の回転軸10aには、図示しないスリット円板を取り付け、このスリット円板のスリットを検知するセンサ(図示せず)を設けて、これらのスリット円板およびセンサによってエンコーダを構成している。
【0073】
また、キャリッジ30の上方側には、スリットを形成した図示しないエンコーダスケールを設け、さらにエンコーダスケールのスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ(図示せず)を設け、これらによって、キャリッジ30の主走査方向位置を検知するためのエンコーダを構成している。また、キャリッジ30は図示しないDCモータとタイミングベルトにて往復運動し、用紙に画像を形成する。
【0074】
記録ヘッド31で記録された用紙を排紙するための排紙部として、第1排紙ローラ20および拍車16、第2排紙ローラ21および拍車16とからなる2段構成の排紙ローラ対と、排紙される用紙をストックする排紙トレイ52とを備えている。
図29および図30において、符号19は両面ガイド外を、符号22は排紙ガイド上を、符号23は排紙ガイド中央を、符号27は両面搬送ローラを、それぞれ示している。
【0075】
このように構成したインクジェットプリンタにおいては、給紙部から用紙50が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙はガイドで案内され、搬送ベルト11と先端加圧コロ41で搬送ベルト11に押し付けられ搬送される。
このとき、帯電ローラ17に対して正極(プラス)出力とマイナス(負極)出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト11には、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスの電荷が所定の幅で帯状に交互に印加される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト11上に用紙が給送されると、用紙が搬送ベルト11に静電力で吸着され、搬送ベルト11の周回移動によって用紙が副走査方向に搬送される。
【0076】
そこで、キャリッジ30を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド31を駆動することにより、停止している用紙にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙を排紙トレイ52上に排紙する。
【0077】
次に、上記した実施形態6の開閉機構1Eを採用した技術内容を説明する。図29に示すインクジェットプリンタは、画像形成装置本体(以下、「装置本体」または「マシン」ともいう)サイズを最小限に抑えつつフロントオペレーション(マシン前面からのすべてのジャム処理、メンテナンス部品交換)を行える構成を有している。
【0078】
本実施形態のインクジェットプリンタは、フロントオペレーションを達成しつつ、マシンサイズさらに部品点数を最小限に抑えるために、図29に示すように、キャリッジ30に搭載された記録ヘッド31を主走査方向に走査しながらインクを略水平に吐出して画像を形成する搬送経路にて構成される。
このように、移動体5としての給紙カセットあるいは給紙トレイ(以下、本実施形態の具体例として「給紙トレイ5」と言い替える)の前面からのアクセスと共に、用紙の印字面側を下向きに排紙する裏面排紙(フェイスダウン)を実現することにより、インクを下方に吐出して印字し画像を形成する従来のS字搬送経路に比べて、マシンサイズを最小に抑えることができる。
【0079】
同時に、片面画像形成済みの残りの裏面に画像を形成するために表裏反転する両面搬送経路についても、ジャム時の装置本体前面からの操作達成のため、マシンサイズを最小限に抑えつつさらに部品点数を最小限に抑えるために、両面搬送経路は搬送ベルト11を離れた用紙50を一度排紙部でスイッチバックさせ、キャリッジ30と対向しない反対側の搬送ベルト11の反対向面に再吸着させて搬送する構成としている。
また図30に示すように、フロントオペレーションを達成するために、上記した実施形態6のホップアップ機構80を採用することによりカバー部2aを開放でき、さらに搬送ベルト11も搬送ローラ11の回転軸10aを中心に揺動開閉可能に構成されている。
【0080】
一方、帯電装置を構成する帯電ローラ17については、搬送ベルト11上側もしくは下側、さらに両面搬送経路中に配置する方法があるが、高圧が掛かるため、ユーザ接触の問題や印字面の帯電効率の問題から印字部(画像形成部)に近い搬送ベルト11下方に近接した配置としている。このような帯電ローラ17の配置は次の理由から設定している。すなわち、帯電ローラ17を搬送ベルト11上側に配置すると、搬送ベルト11を開放するためユーザ接触の問題や、第2搬送ローラ14などがあり、マシンサイズに影響するためレイアウトできないからである。また、用紙の印字面(画像形成面)の吸着のための帯電が搬送ベルト11が1周してからとなるため帯電効率が低下するからである。帯電ローラ17を両面搬送経路中に配置する方法も上記同様の理由からである。つまり、下側配置では図に示すように印字直前の帯電であることと、ユーザ接触を防止するカバーを配置することも必要となり、部品点数が増加してしまう。
【0081】
さらに、帯電ローラ17のメンテナンスのため、開閉機構1Eのカバー部2aは、帯電ローラ17が取り外せる位置まで開放させ得る構成とする(帯電ローラ17はインク汚れなどが発生するためのメンテナンス性の向上が重要視されている)。しかし、そのような構成にするためには、図30に示すように、両面搬送経路の下側まで搬送経路を開放する必要があり、そのためカバー部2aの揺動支点は帯電ローラ17よりも下方に配置する必要がある。これは、カバー部2aを開けることで両面搬送経路部の用紙外側のガイドが用紙内側のガイドとの接触を避けるためである。加えて、カバー部2aの揺動支点を前述の帯電ローラ17よりも下方に配置すると、カバー部2aを開けることで、給紙トレイ5の引き出しと接触する問題が発生する。
【0082】
上述した諸問題を解決するために、本実施形態では、カバー部2aの揺動支点を揺動開時の動作と同期して上方に移動させる構成、すなわち両図に示すホップアップ機構80を採用している。このことによって、給紙トレイ5の上面とカバー部2aの逃げ凹部2bとの合わせ目の隙間がなくなり、カバー外観の見栄えが向上する。
【0083】
上記のような構成を採用することによって、マシンサイズを最小限に抑えつつフロントオペレーション(マシン前面からのすべてのジャム処理、メンテナンス部品交換)を行うことができる。
さらに、凸部3の可動部分に図示しないダンパ機構を備えることでカバー部2aの操作性の改善を図ることも可能である。
【0084】
図30に示すように、ジャム処理時において、搬送ベルト11は搬送ローラ10の回転軸10aを中心に揺動させて図に示す位置に保持することが可能である。このような構成にする利点は、第1に、搬送ローラ10の回転軸10aを動かさないようにすることにより、画像の位置基準を動かさないで済むことで印字精度に有利であることが挙げられる。第2に、回転軸10aがずれることで搬送ベルト11の反対向面での片面画像形成済みの用紙搬送時のジャム処理のスペース確保にも有利であることが挙げられる。
【0085】
図31を参照して、図29および図30に示したインクジェットプリンタとは別の、本発明の画像形成装置に係る例を説明する。
図31は、画像形成装置の一例としてのインクジェットプリンタを示している。同図のインクジェットプリンタは、実施形態1の開閉機構1を従来の垂直吐出方式のシリアル型のインクジェットプリンタに搭載した適用例である。このような垂直吐出方式のインクジェットプリンタ(画像形成装置)への本発明の開閉機構を採用する具体例としては、例えば特許第4473079号公報の図11に示されている搬送路カバー(1a,1b)を挙げることができる。
実施形態1の開閉機構1に限らず、より実用的な実施形態6の開閉機構1Eや、用途に応じて上記した各実施形態の開閉機構を適宜採用して、上記した利点・効果を得ることが可能なことは無論である。
【0086】
図32を参照して、図29および図30に示したインクジェットプリンタや図31に示したインクジェットプリンタとはさらに別の、本発明の画像形成装置に係る一例を説明する。
図32は、電子写真方式の画像形成装置であるレーザプリンタを示している。同図のレーザプリンタは、像担持体としての感光体72を含む画像形成部71と、感光体72に対向して配置され転写装置を構成する転写ローラ73と、画像形成部71に配設された現像装置によって現像剤中のトナーを付着させることにより画像形成された用紙を加熱・加圧して画像を定着させる定着装置74と、定着された用紙を排紙トレイ52上に排出する排紙ローラ対76および排紙トレイ52等を備えた排紙部と、感光体72上の画像にタイミングを合わせて用紙を送り出すレジストローラ27、および給紙トレイ5上の用紙(シート)をレジストローラ27に向けて給送する給紙コロ28等を備えた給紙部とを有している。符号75は縦搬送路を示す。
上記給紙部から画像形成部71の所定の位置に用紙を搬送し、画像形成部71および転写ローラ73によって、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を実行することで用紙に画像を形成した後、縦搬送路75を介して定着装置74に搬送し、同定着装置74で定着し、その後、排紙ローラ対76により定着済みの用紙を排紙トレイ52上に排紙する周知の動作が行われる。
【0087】
同図のレーザプリンタには、実施形態1の開閉機構1が搭載されている。このレーザプリンタにおいても、実施形態1の開閉機構1に限らず、より実用的な実施形態6の開閉機構1Eや、用途に応じて上記した各実施形態の開閉機構を適宜採用して、上記した利点・効果を得ることが可能なことは無論である(以下、同様)。
このような電子写真方式の画像形成装置への本発明の開閉機構を採用する具体例としては、例えば特許第4157726号公報の図1に示されている前カバー(3)配置部を挙げることができる。同公報の画像形成装置は、フロントオペレーション可能な画像形成装置であり、図1に示されている前カバー(3)が、下方に多段に配設された最上段の給紙トレイ上面に近接配置されている。
【0088】
上述した各実施形態等では、装置本体において、移動体が鉛直方向の下側に、カバー部材(開閉体)が移動体に近接して上側に配置された例で統一して説明したが、本発明はこれに限らず、上記したとは反対に、カバー部材と移動体とが上下反対に配置された開閉機構および画像形成装置にも適用できることは無論である。さらには、カバー部材の回動軸を鉛直方向に配置した横開き式の開閉機構および画像形成装置にも適用できるものである。
【0089】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術は、上述した実施例を含む各実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0090】
本発明に係る画像形成装置は、上記実施形態におけるインクジェット方式のインクジェットプリンタに限らず、例えば、プリンタ、プロッタ、ワープロ、ファクシミリ、複写機、孔版印刷機を含む印刷装置等またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等においてインクジェット記録装置を含む画像形成装置にも適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、上記実施形態におけるシリアル型のインクジェットプリンタに限らず、例えばライン型のインクジェット記録装置等にも適用可能である。
また、被記録媒体・シートとしては、用紙50に限らず、上記したように使用可能な薄紙から厚紙、はがき、封筒、あるいはOHPシート等まで、画像形成可能な全ての記録媒体・シートを含むものである。
【符号の説明】
【0091】
1,1A〜1G 開閉機構
2、2A〜2G カバー部材(開閉体)
2a カバー部(開閉体本体、カバー部材本体)
3 凸部
4 回動軸
5 移動体、給紙トレイ
6,6A ガイド手段
7 アーム(連結手段、軸位置変更手段)
8 被ガイド部
10 搬送ローラ
11 搬送ベルト
12 テンションローラ
17 帯電ローラ
30 キャリッジ
31 記録ヘッド(画像形成手段)
50 用紙(被記録媒体、シート)
56 感光体(画像形成手段を構成)
63 ピニオン(軸位置変更手段を構成)
64 軸ガイド溝(軸位置変更手段を構成)
65 ラック(軸位置変更手段を構成)
66 カム形状部
67 スライド保持手段(軸位置変更手段を構成)
68 カム(軸位置変更手段を構成)
69 カム保持手段(軸位置変更手段を構成)
70 スライド軸(軸位置変更手段を構成)
71 画像形成部(画像形成手段)
80 ホップアップ機構(軸位置変更手段を構成)
81 浮き抑制ガイド部材(浮き防止手段)
82 軸位置変更手段
100 装置本体
101 移動体ガイド手段
Ya 移動体の離脱方向(引出し方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特許第3296692号公報
【特許文献2】特許第4077218号公報
【特許文献3】特許第3768686号公報
【特許文献4】特許第4292991号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して挿脱可能な移動体と、
回動軸、該回動軸を中心として前記装置本体の内部を覆う閉位置と該内部を開放する開位置との間で揺動開閉可能なカバー部、および前記回動軸近傍の前記カバー部から突出した凸部を備える開閉体と、
前記カバー部が前記閉位置と前記開位置を占めるべく揺動する間で前記回動軸の位置を変える軸位置変更手段と、
を有し、
前記回動軸の中心軸線と直交する平面上に、前記回動軸および前記移動体を投影したとき、前記回動軸の投影部は、前記カバー部の前記閉位置において前記移動体の投影部と干渉する位置にあり、前記カバー部の前記開位置への揺動時において前記移動体の移動軌跡と干渉しない位置にあるように、前記開閉体が配置されていることを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
請求項1記載の開閉機構において、
前記凸部は、前記カバー部の全ての揺動軌跡範囲において、前記カバー部における前記装置本体の外側の面よりも該装置本体の内側に位置することを特徴とする開閉機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の開閉機構において、
前記軸位置変更手段は、前記凸部または前記カバー部を案内するガイド手段と、一端部が前記回動軸に、他端部が軸を介して前記装置本体にそれぞれ回動可能に連結された連結手段とを有することを特徴とする開閉機構。
【請求項4】
請求項3記載の開閉機構において、
前記凸部は、前記ガイド手段に案内される被ガイド部を有することを特徴とする開閉機構。
【請求項5】
請求項3または4記載の開閉機構において、
前記ガイド手段に案内される被ガイド部を複数有し、
前記カバー部の開閉動作に伴って、前記被ガイド部が変更されることを特徴とする開閉機構。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れか一つに記載の開閉機構において、
前記ガイド手段が、複数配設されており、
前記カバー部の開閉動作に伴って、前記被ガイド部または前記複数の被ガイド部を案内する前記ガイド手段が変更されることを特徴とする開閉機構。
【請求項7】
請求項3ないし6の何れか一つに記載の開閉機構において、
前記ガイド手段に案内される前記凸部または前記カバー部は、前記カバー部が前記閉位置を占めたときに、前記回動軸よりも前記移動体とより長くオーバーラップする前記装置本体の内部奥側に配置されることを特徴とする開閉機構。
【請求項8】
請求項1または2記載の開閉機構において、
前記軸位置変更手段は、
前記凸部に形成され、前記回動軸の位置を変える方向に力を加えるカム形状部と、該カム形状部を案内するガイド手段と、
前記回動軸の位置を変える方向に前記回動軸をスライドさせながら保持するスライド保持手段と、
を有することを特徴とする開閉機構。
【請求項9】
請求項1または2記載の開閉機構において、
前記軸位置変更手段は、
前記凸部に駆動力伝達関係をもって連結され、前記カバー部の揺動運動を前記回動軸の位置を変える方向の運動に変換するカムと、
前記カムを回動可能に保持するスライド軸と、
前記スライド軸を介して前記カムと前記回動軸とを一体で保持するカム保持手段と、
前記カムを接触させることにより前記スライド軸の位置を変えるガイド面を備え、前記回動軸の位置を変える方向に前記カム保持手段をスライド移動させるスライド保持手段と、
を有することを特徴とする開閉機構。
【請求項10】
請求項9記載の開閉機構において、
前記カバー部が、前記開位置を占める方向に所定の角度以上揺動されたとき、前記カムと前記ガイド面とが接触することを特徴とする開閉機構。
【請求項11】
請求項1または2記載の開閉機構において、
前記軸位置変更手段は、
前記凸部近傍の前記装置本体に固定され、前記回動軸の位置を変える方向に沿って歯が並設されたラックと、
前記凸部に回転不能に固定され、前記ラックと噛み合うピニオンと、
を有することを特徴とする開閉機構。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一つに記載の開閉機構において、
前記カバー部が前記閉位置を占めたとき、該カバー部の浮きを防止する浮き防止手段が、前記装置本体に配設されていることを特徴とする開閉機構。
【請求項13】
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置において、
請求項1ないし12の何れか一つに記載の開閉機構を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−126027(P2012−126027A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279841(P2010−279841)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】