説明

開閉装置

【課題】絶縁媒体に乾燥空気を使用した開閉装置では、SF6ガスを使用した場合のような放電検知が出来ず、又アンテナにより部分放電を検知する場合、導体が複雑に配置されるため、部分放電の検知感度が部分放電発生箇所によって異なるという問題点があった。
【解決手段】送電線路側に接続された母線側充電部、負荷側に接続された負荷側充電部、この負荷側充電部と母線側充電部間に配設され両者間の電気的な開閉機能をつかさどる電流遮断部、及びこれらの機器類が内蔵されると共に高圧の乾燥空気が充填された密封容器を有する開閉装置において、密封容器と連通する乾燥空気の採取部と測定後の乾燥空気を排出する排出部とを有し、密封容器内に発生したオゾンを検出するオゾン感知装置、及びこのオゾン感知装置に接続されオゾンの発生に起因する異状を検知する検知装置を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉装置内部で発生する放電の検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉装置では、絶縁媒体にSF6ガスを用いたものが多く使用されている。SF6ガスは、放電によって分解ガスが生成されるため、その分解ガスを検出することで放電検知を行う開閉装置がある(例えば特許文献1参照)。また、絶縁媒体に拠らない部分放電検知としては、部分放電により発生する電磁波をアンテナによって検知するものがある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−99848号公報
【特許文献2】特開2005−233837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の開閉装置において、絶縁媒体にSF6ガスを用いず乾燥空気を使用した場合、発生した放電によってSF6ガス特有の分解ガスのようなガスが生成されないため、乾燥空気を使用した開閉装置では、放電検知が出来ないという問題点があった。
また、アンテナによる部分放電を検知する場合、導体が複雑に配置された開閉装置では、部分放電の検知感度が部分放電発生箇所によって異なるという問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、乾燥空気中で発生した放電を、その発生箇所に拠らず検知することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる開閉装置は、送電線路側に接続された母線側充電部、負荷側に接続された負荷側充電部、この負荷側充電部と上記母線側充電部間に配設され両者間の電気的な開閉機能をつかさどる電流遮断部、及びこれらの機器類が内蔵されると共に高圧の乾燥空気が充填された密封容器を有する開閉装置において、上記密封容器と連通する上記乾燥空気の採取部と測定後の乾燥空気を排出する排出部とを有し、上記密封容器内で生じた放電により生成されたオゾンを検出するオゾン感知装置、及びこのオゾン感知装置に接続され上記オゾンの検出信号に基づき異状を検知する検知装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の開閉装置によれば、乾燥空気を封入した開閉装置内部で部分放電が発生した場合、放電が増大して起きる短絡・地絡事故が発生する前に部分放電の発生を検知することが出来る。
また、この発明によれば、オゾンが密封容器内で沈降するため、部分放電が発生する場所に拠らず部分放電を検知することが出来る。
また、オゾン感知装置を配設することによって乾燥空気中の部分放電の発生を検知し、常時監視することが出来るので、部分放電が閃絡にまで至る事故を未然に防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、この発明の各実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。 図1において、開閉装置1は、内部に周知の開閉機構を備えており、その開閉機構は、図示しないが、送電線路に電気的に接続された母線側充電部と、負荷側充電部と、前記母線側充電部、及び前記負荷側充電部の間に配設され両者間の電気的な開閉機能をつかさどる電流遮断部などから構成されている。
これらの機器類は、高圧の乾燥空気Aが充填された金属製密封容器10に内蔵され、更に、この金属製密封容器10の底部には、オゾン感知装置2が内蔵されている。
【0009】
このオゾン感知装置2は、密封された乾燥空気中のオゾンを測定しオゾンの有無を検出するためのものあり、図示しないが測定対象物である乾燥空気を流入させるための採取部、図示しないがサンプリングした乾燥空気中のオゾンを測定しその有無を検出するための測定部、図示しないが測定後の乾燥空気を排出させるための排出部を備えている。
更に、金属製密封容器10は、オゾン感知装置2からのオゾン検出信号を金属製密封容器外に引き出す信号線3の引き出し部(気密貫通部)5を備えており、上記信号は信号線3の端末に接続された検知装置4で受信される。
【0010】
この検知装置4は、コントローラ(制御部)を有し、オゾン感知装置2による生成オゾンの検出情報を受けて部分放電に起因する金属製密封容器10内の異状を検知し、密封容器内部の放電を常時監視、制御する機能を備えている。
また、検知装置4は、必要に応じて次のコントローラ(制御部)を備えたものする。このコントローラは、オゾン感知装置2の出力を外部へ通信する機能を有し、遠方から測定時点のオゾン量ならびにオゾン量の推移を監視することが可能である。更にまた、コントローラは、生成するオゾン量が放電量に依存することから、検出されたオゾン量から放電量の多少を判定し、オゾン量が設定された閾値を越えると異状状態であると判断する判定機能を有する。
異状状態を示す情報は、コントローラの異状表示ならびに外部(例えば外部機器や制御盤、監視盤など)で確認することが出来る。
【0011】
開閉装置1をこのように構成することにより、開閉装置1で電圧印加されている主回路部である母線側充電部(図示せず)で放電が発生した場合、この放電によってオゾンが生成され乾燥空気中に拡散する。
生成されたオゾンは、空気より重いため自らの重さで金属製密封容器10の下部(底部)に沈降(沈下)し、滞留する。
そこで、オゾン感知装置2が金属製密封容器10の下部に配設されることで、オゾンを効率よく検出することが出来る。また、生成されたオゾンは、オゾン感知装置2によって検出されることで、部分放電の発生を常時監視することが出来る。
このようにオゾン感知装置2を金属製密封容器10の下部(底部)に設けることにより、密封容器内部の放電を常時監視することが出来るため、部分放電を起因とする開閉装置1の内部事故を未然に防ぐことが出来る。
【0012】
実施の形態1において、部分放電により生成されたオゾンが検出されるまでの過程は次のとおりである。
例えば、10pCの部分放電が継続して発生していると仮定する。10pCの部分放電とは部分放電の発生初期段階であり、事故には至らない程度の放電である。部分放電のパルス幅を10nsと仮定すると、部分放電で発生する電流は約1mAである。密封容器を使用する開閉装置は公称電圧22kV以上が一般的なので、1mAの電流が継続して流れると仮定すると、約20Wの放電が発生していることになる。
ここで、一般的なオゾン発生装置では、約20Wの発生源を1分間作動させると約1リットルのオゾンが発生する。開閉装置1の金属製密封容器10に封入された乾燥空気の容量を5000リットルと仮定すると、1分間継続してオゾンを発生させると200ppmの濃度になる。これに対し、一般的なオゾン検出装置は0.1ppm程度からオゾンを検出することが出来るので、十分な検出感度を有しているといえる。
【0013】
実際の使用状態では、オゾンがオゾン感知装置2へ到達するまでの時間が必要であり、部分放電の発生頻度は放電発生状況に応じてまばらであり、部分放電からのオゾン発生効率は一般的なオゾン発生装置と比較して悪いことが十分予想されるため、部分放電開始後例えば約1分以内といったごく短時間内に検出されることはないが、比較的短時間で検出出来る。この時間は、検出して対応するまでの時間(数時間〜1日)と比較すると十分短く、感度、応答性ともに問題ないと考えられる。
【0014】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
図1に示された実施の形態1では、オゾン感知装置2は、金属密封容器内の底部に設置されていたが、この実施の形態2におけるオゾン感知装置は、容器の底部に設置された乾燥空気抽出用の配管と開閉バルブを介して金属密封容器に接続されたものである。
図2において、オゾン感知装置2は、金属製密封容器10の底面もしくは下部に設置された乾燥空気抽出用の配管(乾燥空気流通路)6と、採取部側と排出部側に設けられた保守点検用の開閉バルブ7a、7bとを介して金属製密封容器10に接続されたものである。なお、図2に示された配管6は循環流通路を形成している。また、オゾン感知装置2は、高気圧中で使用出来るよう、耐気圧措置を施した構造のものを用いている。
【0015】
このような構成によれば、空気よりも重いオゾンを含んだ乾燥空気を密封容器から乾燥空気循環路6に取り出し、オゾンを測定した後の乾燥空気を金属製密封容器10へ還流帰還させることが出来る。したがって、測定後の乾燥空気は金属製密封容器10へ還流するため、金属製密封容器10に封入された乾燥空気は減少しない。また、保守点検用開閉バルブ7a、7bを同時に閉じオゾン感知装置2の乾燥空気を抜くことにより、金属製密封容器10内の乾燥空気を抜くことなく、オゾン感知装置2の点検・交換を実施することが可能となる。
【0016】
図3は、実施の形態2の変形例を示し、この変形例では、オゾン感知装置2の排出側に別の密封容器11が接続され測定後のオゾンを含んだ乾燥空気は、金属製密封容器10へ帰還させないようにしたものである。
この場合も保守点検用開閉バルブ7を閉じ、金属製密封容器10内の乾燥空気を抜くことなく、オゾン感知装置2の点検・交換を実施することが可能となる。
なお、密封容器11は必ずしもなくともよい。その場合は、オゾン感知装置2からの排気は大気中に放出される。
【0017】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
図4において、金属製密封容器10には、その底面もしくは下部に配管(乾燥空気流通路)6が接続され、その配管(乾燥空気流通路)6には開閉バルブ7及び圧力調整バルブ8が接続されると共に、開閉バルブ7及び圧力調整バルブ8を介してオゾン感知装置2が接続されている。オゾン感知装置2は、その採取部において圧力調整バルブ8と、直接もしくは配管(乾燥空気流通路)6を介して接続されている。なお、圧力調整バルブ8は、大気圧まで減圧調整可能なバルブが使用されている。
【0018】
このような構成によれば、オゾン感知装置2は、金属製密封容器10の底面もしくは下部から配管(乾燥空気流通路)6、開閉バルブ7を開けることにより取り出される乾燥空気を、圧力調整バルブ8を介して、減圧(好ましくは大気圧まで減圧)し、この減圧された乾燥空気をその採取部から導入(すなわちサンプリング)し、その中のオゾンを測定する。
このケースでは、オゾン測定のためにサンプリングされた乾燥空気を、測定後、金属製密封容器10に戻すことはしないので、実施の形態1で説明したような高圧下でのガス循環に必要な装置が不要となる。また、実施の形態2同様、開閉バルブ7を介してオゾン感知装置2を設置しているので、金属製密封容器10内の乾燥空気を抜くことなく、オゾン感知装置2を点検・交換することが可能となる。
【0019】
更に、オゾン感知装置2は、オゾンを含む乾燥空気を金属製密封容器10から取り出した後、圧力調整バルブ8で減圧し、好ましくは大気圧に近くなるよう圧力調整してオゾンの測定をしているので、オゾン感知部を高い圧力に耐える構造のものにしなくともオゾン検出が可能となり、実施の形態2に示した耐気圧措置が不要となる。なお、オゾン感知装置2を通過した乾燥空気は外部に放出されるが、金属製密封容器10に充填されている乾燥空気の容積から勘案すると微量であるため、長期間オゾン感知装置2の使用を続けない限り、通常は、高圧乾燥空気の圧力が低下して製品の絶縁性能に影響を与えるということはない。
【0020】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
図5において、実施の形態4による開閉装置1は、金属製密封容器10のガス封入口12に乾燥空気の圧力ボンベ9を接続している。なお、13は圧力計である。
この開閉装置1は、金属製密封容器10に接続された乾燥空気ボンベ9によって、オゾン測定後排出された乾燥空気を補充し、容器内圧力を常に一定圧力に保つよう構成されている。
このような構成によれば、オゾン検出に使用された乾燥空気を適宜充填することが可能となるため、金属製密封容器10内の圧力を低下させることなく開閉装置を運転出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
【図2】この発明の実施の形態2である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2である開閉装置の変形例の要部を模式的に示す側断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4である開閉装置の要部を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 開閉装置 2 オゾン感知装置
3 信号線 4 検知装置(コントローラ、制御部)
5 信号線の引き出し部 6 配管(乾燥空気流通路)
7、7a、7b 開閉バルブ 8 圧力調整バルブ
9 圧力ボンベ 10 金属製密封容器
11 密封容器 12 ガス封入口
13 圧力計 A 乾燥空気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線路側に接続された母線側充電部、負荷側に接続された負荷側充電部、この負荷側充電部と上記母線側充電部間に配設され両者間の電気的な開閉機能をつかさどる電流遮断部、及びこれらの機器類が内蔵されると共に高圧の乾燥空気Aが充填された密封容器を有する開閉装置において、上記密封容器と連通する上記乾燥空気の採取部と測定後の乾燥空気を排出する排出部とを有し、上記密封容器内で生じた放電により生成されたオゾンを検出するオゾン感知装置、及びこのオゾン感知装置に接続され上記オゾンの検出信号に基づき異状を検知する検知装置を備えたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
上記オゾン感知装置は、生成したオゾンが沈下する上記密封容器の底部に配設されたものであることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
上記密封容器の底部に、上記オゾン感知装置の開閉バルブを有する乾燥空気流通路を配設すると共に、この乾燥空気流通路に上記オゾン感知装置を配設し、上記開閉バルブは、上記乾燥空気採取部側乾燥空気流通路、又は上記燥空気採取部側と上記排出部側乾燥空気流通路との両流通路に設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項4】
上記密封容器の底部に、上記オゾン感知装置の開閉バルブと圧力調整バルブとを有する乾燥空気流通路を配管すると共に、上記開閉バルブと上記圧力調整バルブは、上記乾燥空気採取部側乾燥空気流通路に設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項5】
上記密封容器は、オゾン検出後に排出された乾燥空気を補充し容器内圧力を一定圧力に保つための乾燥空気ボンベを備えたことを特徴とする請求項4に記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−189182(P2009−189182A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27663(P2008−27663)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】