開閉装置
【課題】被操作物が再度開くダンピング現象の発生を防止する。
【解決手段】係合部21及びスライド面部23が形成され、開閉操作される被操作物110に連結され、開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカム5と、スライドカム5の往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって係合部21と係合及び離脱すると共にスライド面部23に当接することが可能となっており、スライド面部と当接した状態でスライドカム5が摺動可能となっている回転カム7と、被操作物110が閉じる方向に回転カム7が回転するように付勢する付勢部材9とを備える。
【解決手段】係合部21及びスライド面部23が形成され、開閉操作される被操作物110に連結され、開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカム5と、スライドカム5の往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって係合部21と係合及び離脱すると共にスライド面部23に当接することが可能となっており、スライド面部と当接した状態でスライドカム5が摺動可能となっている回転カム7と、被操作物110が閉じる方向に回転カム7が回転するように付勢する付勢部材9とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、郵便受箱の扉、家具の扉、厨房の扉等の開閉を行う開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
郵便受箱の扉、家具の扉等の開閉を制御する従来の開閉装置としては、特許文献1に記載されている。この開閉装置は、回転操作によって開閉される扉にリンクを介して連結された長手方向に移動可能な細長い摺接ブロックと、この摺接ブロックの側面に摺接するように付勢された制動ブロックとからなり、摺接ブロックに対向する制動ブロックの側面に摩擦面を形成し、この摩擦面に連設する傾斜端縁を形成した構造となっている。
【0003】
上述した従来の開閉装置においては、扉が摺接ブロックに引っ張られるため、扉が閉止状態となっており、この状態の扉を開き方向に回転操作すると、摺接ブロックが傾斜端縁を押しながら制動ブロックを回動させ、摺接ブロックの側面と制動ブロックの摩擦面とが面接触する。このため、扉への操作を停止すると、扉がその角度で保持される。一方、開放状態の扉を閉じ方向に回転操作すると、制動ブロックの傾斜端縁が摺接ブロックを反対方向に押すため、途中で操作を中止しても扉が回動して自動的に閉止状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−129740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の開閉装置においては、強い力で扉等の被操作物を閉じ操作すると、制動ブロックが摺接ブロックを押さえる際に摺接ブロックが底突きして制動ブロックが押さえ込むことができず、扉等の被操作物が再度開くダンピング現象が発生する。又、従来の開閉装置では、制動ブロックが細長くなっており、この制動ブロックが扉の開閉方向に回転摺動するため、その作動構造から取り付けが水平面に限られる。このため、開閉装置の取り付け箇所が天井面や底面に限定され、取り付け自由度が小さい問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、被操作物のダンピング現象が発生することがなく、側面に対しても取り付けることができる開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明の開閉装置は、係合部及びスライド面部が形成され、開閉操作される被操作物に連結され、前記開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカムと、前記スライドカムの往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって前記係合部と係合及び離脱すると共に前記スライド面部に当接することが可能となっており、前記スライド面部に当接した状態で前記スライドカムが摺動可能となっている回転カムと、前記被操作物が閉じる方向に前記回転カムが回転するように付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の開閉装置であって、前記スライドカム、回転カム及び付勢部材を内部に収容するケースをさらに有していることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の開閉装置であって、前記回転カムの回転を緩動させる緩動部材が回転カムに設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記係合部は、前記スライド面部と連続して設けられたカム凹部であり、前記回転カムは前記カム凹部と係合及び離脱可能なカム凸部を有し、このカム凸部が前記カム凹部から離脱したときカム凸部と前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って延びるように一対が設けられると共に前記カム凹部はそれぞれのスライド面部と連続するように一対が設けられており、前記カム凸部はいずれかのスライド面部及びカム凹部に対応して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記係合部は、前記スライドカムの往復移動方向と交差する方向に設けられたカムピンであり、前記回転カムは前記カムピンが挿入係合及び離脱可能な2股状のフォークカムであり、このフォークカムが前記カムピンから離脱したときフォークカムと前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って直線的に延びていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記回転カムが係止可能状態となる係止溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記被操作物は、回転操作又はスライド操作によって開閉されることを特徴とする。
請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被操作物に連結されたスライドカムの係合部に回転カムが係合することにより、スライドカムのスライド移動を確実に抑制するため、被操作物が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、被操作物の操作によって回転カムが回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、側面への取り付けが可能となる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の開閉装置が適用された扉の閉じ状態を示す平面図である。
【図2】扉の閉じ状態における開閉装置の平面からの断面図であり、図4におけるA−A線断面図である。
【図3】扉の閉じ状態における開閉装置の正面からの断面図であり、図4におけるB−B線断面図である。
【図4】開閉装置の左側面図である。
【図5】(a)はスライドカムの平面図、(b)はそのH−H線断面図である。
【図6】(a)は回転カムの正面図、(b)はそのJ−J線断面図である。
【図7】図2におけるE−E線断面図である。
【図8】扉の開き当初における状態を示す平面図である。
【図9】扉の開き当初における開閉装置の平面からの断面図である。
【図10】扉の開き当初における開閉装置の正面からの断面図である。
【図11】図9におけるF−F線断面図である。
【図12】扉を完全に開いた状態を示す平面図である。
【図13】扉の完全開き状態における開閉装置の平面からの断面図である。
【図14】扉の完全開き状態における開閉装置の正面からの断面図である。
【図15】第1実施形態の開閉装置の動作を示す特性図である。
【図16】第1実施形態の第1変形形態を示す断面図である。
【図17】第1実施形態の第1変形形態の特性図である。
【図18】第1実施形態の第1変形形態の第2変形形態を示す断面図である。
【図19】第1実施形態の第2変形形態の特性図である。
【図20】第1実施形態の第3変形形態を示す断面図である。
【図21】第1実施形態の第3変形形態の特性図である。
【図22】本発明の第2実施形態の開閉装置を示す正面からの断面図である。
【図23】開き途中における第2実施形態の開閉装置の正面からの断面図である。
【図24】図23に続く状態を示す断面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の開閉装置における扉の閉じ状態の平面からの断面図である。
【図26】本発明の第3実施形態の開閉装置における扉の閉じ状態の正面からの断面図である。
【図27】図26におけるK−K線断面図である。
【図28】(a)は第3実施形態のスライドカムの平面図、(b)はその縦断面図である。
【図29】(a)は第3実施形態の回転カムの正面図、(b)は縦断面図である。
【図30】第3実施形態における扉の開き当初の開閉装置の平面からの断面図である。
【図31】第3実施形態における扉の開き当初の開閉装置の正面からの断面図である。
【図32】図31におけるL−L線断面図である。
【図33】第3実施形態における扉の完全開状態時の開閉装置の平面からの断面図である。
【図34】第3実施形態における扉の完全開状態時の開閉装置の正面からの断面図である。
【図35】図34におけるM−M線断面図である。
【図36】第3実施形態の第1変形々態を示す断面図である。
【図37】第3実施形態の第1変形々態の特性図である。
【図38】第3実施形態の第2変形々態を示す断面図である。
【図39】第3実施形態の第2変形々態の特性図である。
【図40】第3実施形態の第3変形々態を示す断面図である。
【図41】第3実施形態の第3変形々態の特性図である。
【図42】本発明の第4実施形態の開閉装置の正面からの断面図である。
【図43】第4実施形態の開き途中における正面からの断面図である。
【図44】図43に続く状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示する実施形態を参照して説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図15は、本発明の第1実施形態の開閉装置1であり、図1〜図4は扉を閉じた状態を示し、図5はスライドカム、図6は回転カム、図7は図2におけるE−E線断面図を示す。図8〜図11は扉を開いた当初の状態を、図12〜図14は扉を完全に開いた状態を示し、図11は作動の特性図を示す。
【0021】
第1実施形態の開閉装置1は、被操作物として郵便受箱100の扉に適用されるものである。図1に示すように、郵便受箱100は、郵便物が投入される箱本体110と、箱本体110の一の側面に設けられた扉120とを備えている。扉120は、長さ方向の一端側に支軸130を有し、この支軸130が箱本体110に取り付けられることにより、箱本体110に対して開閉操作可能となっている。
【0022】
この実施形態の開閉装置1は、箱本体110内部における一の側面140に取り付けられる。開閉装置1は、箱本体110の入口から奥側に向かって直線的に配置され、扉120とは直交状態となって箱本体110に取り付けられる。
【0023】
図2〜図4に示すように、開閉装置1は、細い横長のケース3と、共にケース3の内部に配置されたスライドカム5と、回転カム7と、付勢部材9とを有している。
【0024】
ケース3は、上面が開口されたケース本体10と、ケース本体10の上面の開口部分を覆うように被せられるケースカバー11とを備えた中空状となっている。ケース本体10の底面15の奥側には、上方に向かってなだらかに傾斜した傾斜底面部16が一体に形成されている。傾斜底面部16を形成することにより、箱本体110の内部に投入された郵便物が開閉装置1に引っ掛かることがなく、郵便物の取り出しを円滑に行うことができる。
【0025】
ケースカバー11における扉120側の端部には、直線状のガイドスリット12が形成されている。ガイドスリット12は、後述する連結リンク13のスライド移動を案内するものである。連結リンク13は、円弧状に形成されており、郵便受箱100の扉120と開閉装置1のスライドカム5との間に掛け渡され、扉120の開閉操作をスライドカム5に伝達する。これにより、スライドカム5が直線的に往復移動する。
【0026】
スライドカム5は、ブロック形状に形成されており、傾斜底面部16を除くケース本体10の底面15の長さ方向に沿って直線的に往復移動する。スライドカム5における扉120側の端部には、ケースカバー11のガイドスリット12を抜け出る連結部17が形成されており、この連結部17に連結リンク13の一方の端部がねじ19を介して連結される。
【0027】
次に、図5によりスライドカム5を説明する。スライドカム5は同カム5の移動方向に延びた横長形状となっており、付勢部材9側(左側)には、スライドカム5の移動方向に沿って(右方向に向かって)直線状に所定長さで延びた一対のスライド面部23が形成されている。スライド面部23は、所定の高さとなるように形成されると共に、スライドカム5の移動方向(スライドカム5の長さ方向)に沿って延びるように一対が形成されている。一対のスライド面部23の間は、凹部51となっている。凹部51は、後述する回転カム7の係止片30が揺動可能に入り込むものであり(図11参照)、これにより回転カム7の回転が可能となっている。
【0028】
一対のスライド面部23の外側部分には、スライド面部23よりも高くなった立上がり壁部24が形成されている。立上がり壁部24は、スライド面部23より長くなるようにスライドカム5の略全長に渡って形成されている。立上がり壁部24をスライド面部23の外側に形成することにより、回転カム7の係合凸部27がスライドカム5から外れることを防止している。
【0029】
一対のスライド面部23は立上がり壁部24よりも短くなるように形成されており、スライド面部23が途切れた終端部分(右端部分)に対してストッパ壁部25が所定間隔を有して対向するように形成されている。ストッパ壁部25は、スライド面部23よりも高くなるように立ち上がっており、高く立ち上がることにより後述する回転カム7がストッパ壁部25を超えることがない。
【0030】
本実施形態において、一対のスライド面部23とストッパ壁部25との間に係合部としてのカム凹部21が形成されている。係合部としてのカム凹部21は、それぞれのスライド面部23が途切れた終端部分とストッパ壁部25との間に形成されるものであり、それぞれのスライド面部23に連続するように設けられる。これにより、カム凹部21はスライド面部23と同様に一対となるようにスライドカム5に形成される。かかるカム凹部21は、回転カム7のカム凸部27が噛み込んで係合するものである。このようにスライド面部23及びカム凹部21が一対設けられる構造において、一対の内のいずれのスライド面部23及びカム凹部21を用いるかは開閉装置1の郵便受箱100への取り付け姿勢に応じて任意に選択されるものである。
【0031】
回転カム7は、ケース本体10の長さ方向の略中央部分に回転可能に取り付けられている。回転カム7は、図2に示すように、ケース本体10の一の側面における長さ方向の略中央部分を貫通することによりケース本体10に対して定位置で回転可能となっている。
【0032】
図6に示すように、回転カム7は、ケース本体10に回転可能に取り付けられる本体部53と、本体部53に形成されたカム凸部27及び係止片30を有している。カム凸部27は、本体部53から径方向外側に突出した舌片状に形成されている。カム凸部27は、スライドカム5における一対のカム凹部21の内の一方のカム凹部21に噛み込んで係合すると共に、そのカム凹部21との係合から離脱するようになっており、カム凹部21から離脱すると、そのカム凹部21側のスライド面部23に当接した状態となる。
【0033】
係止片30は、カム凸部27と同様に本体部53から径方向外側に突出した舌片状に形成されている。係止片30はスライドカム5の凹部51内に入り込むものであり、この係止片30には、付勢部材9の一端側のフック部9aが係止される。フック部9aが係止されることにより、付勢部材9のばね力が回転カム7に作用し、回転カム7が回転するように付勢される。図1、図2、図7及び図11において、符号29は緩動部材であり、回転カム7の本体部53に対して軸方向に挿入される。この緩動部材29と回転カム7との間には、オイル等の粘性ダンパーが充填される。これにより、回転カム7の回転を緩動させることができる。
【0034】
付勢部材9は、コイルばねからなり、一端側のフック部9aが回転カム7の係止片30に係止され、他端側のフック部9bがケース本体10に係止される。他端側のフック部9bを係止するため、ケース本体10内の奥側には係止突起31が形成されており、フック部9bはこの係止突起31に係止された状態でねじ32により固定される。かかる付勢部材9は、扉120が閉じる方向に回転カム7が回転するように付勢するものであり、この実施形態では、回転カム7が時計方向に回転するように付勢している。かかる方向への付勢部材9の付勢により、回転カム7はスライドカム5のスライド面部23と当接する方向に回転付勢される。
【0035】
次に、この実施形態の開閉装置1の動作を説明する。図1〜図3及び図7は、扉120が閉じた状態(角度θ0)であり、この状態では、回転カム7のカム凸部27がスライドカム5の一方のカム凹部21に噛み込んで係合している。このとき、回転カム7は付勢部材9の付勢により扉120の閉じ方向(時計方向)に回転するように付勢されているため、スライドカム5が回転カム7側に位置するように作用する。このため、扉120は箱本体110から離れることなく閉止状態を安定して維持することができる。
【0036】
図8〜図11は、扉120を角度θ1まで開いた開き当初を示す。扉120を開き操作することにより扉120は支軸130を中心に反時計方向に回転する。この回転運動は、連結リンク13を介してスライドカム5に伝達されるため、スライドカム5は付勢部材9の付勢力に抗して扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。スライドカム5の右方向のスライドにより、回転カム7のカム凸部27はスライドカム5のカム凹部21から離脱し、カム凹部21に連続しているスライド面部23に乗り上げる。扉120の開き操作は、付勢部材9の付勢力に抗してカム凸部27がカム凹部21から離脱し、スライド面部23に乗り上げるだけの操作力を作用させることにより行うことができる。かかる乗り上げを円滑に行うため、カム凹部21の角部及びカム凸部27の角部は、円弧状に形成されるものである。
【0037】
回転カム7のカム凸部27がスライドカム5のスライド面部23に乗り上げた状態では、回転カム7は付勢部材9の付勢力によりカム凹部21内に戻ることができない。このため、扉120には閉じ方向の力が作用しない。
【0038】
図12〜図14は、角度θ1から全開位置である角度θ2まで扉120をさらに開く状態を示す。扉120の回転運動は連結リンク13を介してスライドカム5に伝達されるため、スライドカム5がさらに扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。このとき、カム凸部27がスライドカム5のスライド面部23に当接した状態でスライドカム5が摺動する。回転カム7には、付勢部材9からの付勢力(時計方向の回転付勢力)が作用しているため、回転カム7のカム凸部27がスライド面部23に当接してスライド面部23を押圧する。これによりカム凸部27とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。摩擦力が発生することにより、扉120は閉じ方向へ戻り回転することがない。このため、θ1からθ2の角度の途中で扉120への操作力を解除しても扉120はその角度で停止した状態となる。この状態では、扉120が開いた状態を維持するため、箱本体110内の郵便物を容易に取り出すことができる。
【0039】
扉120の全開状態(角度θ2)から角度θ1まで閉じる場合、扉120を閉じ方向に回転操作させる。扉120の回転操作により、連結リンク13を介してスライドカム5が扉120から離れる方向(左方向)に直線的にスライド移動する(図12〜図14参照)。この操作は、カム凸部27がスライド面部23を押圧することにより発生した摩擦力に抗した操作力を作用させることにより行うことができる。角度θ2から角度θ1の間は、閉じ操作の途中で扉120への操作力を解除しても、カム凸部27とスライド面部23との間で発生している摩擦力により扉120はその角度で保持される。
【0040】
扉120を角度θ1まで閉じ操作することにより、図8〜図11の状態となる。さらに、扉120を角度θ1から角度θ0まで閉じ操作すると、スライドカム5がさらに左方向に直線的にスライド移動し、カム凹部21が回転カム7のカム凸部27との対応位置に移動する。回転カム7は、付勢部材9により時計方向に回転するように付勢されているため、カム凸部27がカム凹部21に噛み込んで係合する。この係合状態となることにより、回転カム7には付勢部材9の付勢力が作用しているため、スライドカム5がさらに左方向に自動的にスライド移動する。このため、扉120を角度θ1まで閉じ操作した後は、扉120が完全閉止位置まで自動的に回転し、箱本体110が閉じられる。これにより、扉120が再度開くダンピング現象を抑制することができる。かかる扉120の閉じ作動においては、粘性ダンパーを有した緩動部材29が回転カム7に取り付けられているため、扉120がゆっくりした速度で閉じることができる。
【0041】
図15は、以上の動作における操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。扉120が角度θ0から角度θ1の間の状態では、T2からT3の操作荷重を作用させるが、角度θ1に達した後は、操作荷重がT1と小さくなり、以後、角度θ1からθ2の間の状態では、T1の操作荷重で作動することができる。
【0042】
以上の開閉装置1の組み立て手順を説明する。ケース3が開いた状態でケース本体10にスライドカム5を挿入する。そして、スライドカム5のカム凹部21と、カム凸部27が噛み込むように回転カム7をケース本体10に挿入し、ケース本体10の一の側面に回転カム7の端部を挿入する。その後、回転カム7に緩動部材29を挿入し、カムカバー33を被せた後、カムカバー33をケース本体10にねじ止めする。次に、付勢部材9をケース本体10に挿入し、フック部9a、9bを回転カム7及び係止突起31に係止する。その後においては、ケースカバー11をケース本体10に被せる。このとき、スライドカム5の連結部17は、ケースカバー11のガイドスリット12から抜け出すようにしておき、この連結部17に連結リンク13の一端を回転自在に連結する。これにより、開閉装置1の組み立てが完了する。組み立てられた開閉装置1を郵便受箱100に取り付ける場合には、ケース本体10を箱本体110に取り付け、連結リンク13の他端を扉120に回転自由に取り付けることにより行うことができる。
【0043】
このような実施形態によれば、扉120に連結されたスライドカム5のカム凹部21に回転カム7のカム凸部27が係合することにより、スライドカム5のスライド移動を確実に抑制するため、扉120が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、扉120への操作によって回転カム7が回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、箱本体110の側面140への取り付けが可能となり、取り付け位置の自由度が大きくなる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、箱本体110の左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【0044】
又、この実施形態の開閉装置1では、スライドカム5、回転カム7、付勢部材9、緩動部材29がケース3に収容され、カムカバー33がケース3にねじ止めされて組み付けられているため、開閉装置1を郵便受箱100と別個に取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。さらに、この実施形態では、スライド面部23及びカム凹部21が一対設けられているため、郵便受箱100の左右の両側面に対して適宜組み付けることができ、組み付けの自由度が増大する。
【0045】
図16は、以上説明した第1実施形態の開閉装置1の第1変形形態における断面図、図17は、操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。第1変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21側が最も高く、カム凹部21から離れるのにつれて徐々に低くなる傾斜面となるように形成されている。このような傾斜面とすることにより、扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が開き勝手となる。
【0046】
図18は、第1実施形態の開閉装置1の第2変形形態における断面図を示す。第2変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっている。又、スライド面部23の終端部分には、係止溝35が形成されている。係止溝35は、回転カム7のカム凸部27が落ち込むことにより係止可能状態となる。図19は、この第2変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっていることにより扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が閉じ勝手となる。又、係止溝25に回転カム7のカム凸部27が係止することにより、扉120を係止溝35の位置で一時的に回転停止させることができる。そして、係止溝35とカム凸部27との係止を離脱させるだけの操作力を扉120に作用させることにより扉120の一時的な回転停止を解除することができる。
【0047】
図20は、第1実施形態の開閉装置1の第3変形形態における断面図を示す。第3変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっていると共に、傾斜面の終端部分には係止溝35が形成されており、さらに係止溝35には徐々に低くなる傾斜面が連続している。図21は、この第3変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっている部分では扉120が角度θ1以上開いた後において扉120が開き勝手となる。そして、係止溝35では、扉120を一時的に回転停止させることができる。係止溝35からさらに扉120を開くと、扉120は閉じ勝手となり、任意の位置に戻ることができる。
【0048】
(第2実施形態)
図22〜図24は、本発明の第2実施形態の開閉装置1Aを示す。この実施形態の開閉装置1Aは、被操作物が引き戸41の場合への適用を示している。
【0049】
引き戸41は、サッシ枠43に対し直線的にスライド移動可能となって組み付けられる。引き戸41には、第1実施形態と同様に、係合部としての一対のカム凹部21とそれぞれのカム凹部21に対応した一対のスライド面部23とが形成されている。スライド面部23は、引き戸41のスライド移動方向に沿って直線状に延びており、カム凹部21は、それぞれのスライド面部23が途切れた終端部分に連続するように設けられている
【0050】
サッシ枠43には、カム凸部27を有した回転カム7が回転可能に取り付けられている。又、回転カム7とサッシ枠43との間には付勢部材9が掛け渡されており、引き戸41が閉じ方向(左方向)に移動するように回転カム7を時計方向に回転付勢している。回転カム7のカム凸部27は、第1実施形態と同様に、一対の内、一方のカム凹部21に係合すると共にカム凹部21との係合離脱状態では、カム凹部21と連続しているスライド面部23に当接し、この当接によりスライド面部23との間に摩擦力が発生する。
【0051】
図22は、引き戸41が閉じた状態を示し、回転カム7のカム凸部27が引き戸41のカム凹部21に係合すると共に、回転カム7が付勢部材9によって引き戸41の閉じ方向に付勢されているため、引き戸41の閉じ状態を確実に維持することができる。図23は、引き戸41を開き方向にスライド操作した当初を示し、引き戸41の直線的なスライド移動により、回転カム7のカム凸部27がカム凹部21と係合状態から離脱する。
【0052】
図24は、さらに引き戸41を開き方向にスライド操作した状態を示し、回転カム7のカム凸部27がスライド面部23に当接すると共に、この当接状態で付勢部材9の付勢力によりカム凸部27がスライド面部23を押圧する。これにより、カム凸部27とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。このため、引き戸41へのスライド操作を解除することにより、引き戸41はその位置で停止することができる。
【0053】
このような実施形態の開閉装置1Aにおいても、引き戸41のカム凹部21に回転カム7のカム凸部27が係合することにより、引き戸41のスライド移動を確実に抑制することができる。このため、引き戸41が再度開くダンピング現象が発生することがない。
【0054】
(第3実施形態)
図25〜図35は、本発明の第3実施形態の開閉装置1Cを示し、図25〜図27は扉120を閉じた状態であり、第1実施形態における図1に対応した状態を示す。図25は図2に対応し、図26は図3に対応しており、図27は図26のK−K線断面図である。図28はこの実施形態に用いるスライドカム50を示し、図29はこの実施形態に用いる回転カム60を示す。図30〜図32は、扉120を角度θ1まで開いた状態であり、図30は第1実施形態における図9に対応し、図31は図10に対応しており、図32は図31のL−L線断面図である。図33〜図35は扉120を完全に開いた状態であり、図33は第1実施形態における図13に対応し、図34は図14に対応しており、図35は図34のM−M線断面図である。
【0055】
この実施形態の開閉装置1Cは、第1実施形態の開閉装置1と同様に被操作物として郵便受箱100の扉120を開閉するために適用されるものである。開閉装置1Cにおいては、スライドカム50及び回転カム60が第1実施形態の開閉装置1と異なり、他の構成部材(ケース3、付勢部材9)は第1実施形態と同様となっている。
【0056】
スライドカム50は、一側(右側)の連結部17が連結リンク13を介して郵便受箱100の扉120に連結されており、扉120の開閉に伴ってケース本体10の底面15を長さ方向に沿って直線的に往復移動する。図28に示すように、スライドカム50には、その移動方向に沿って直線状に延びた一対のスライド面部23が形成されている。スライド面部23は後述するように回転カム60が当接してスライドするものである。この場合、一対のスライド面部23は一対の立上がり壁部24の内側に所定長さで延びるように形成されている。スライド面部23における扉120側(右側)の端部には、傾斜状のガイド面23aが形成されており、後述する回転カム60の当接が円滑になされるようになっている。
【0057】
スライドカム50のガイド面23aとストッパ壁部25との間は、回転用凹部54となっており、この回転用凹部54に係合部としてのカムピン55が設けられている。係合部としてのカムピン55はスライドカム50の往復移動方向と直交状に交差するように設けられている。このカムピン55に対して回転カム60が係合及び離脱するように動作する。
【0058】
回転カム60は図25に示すように、ケース本体10の一の側面を貫通することにより、ケース本体10に対して定位置で回転するように取り付けられる。図29に示すように、回転カム60はケース本体102に回転可能に取り付けられる本体部53と、本体部53から径方向外側に突出した状態で本体部53に一体に形成された係止片30及びフォークカム61とを有している。この場合、本体部53には、緩動部材29が軸方向に挿入されており、本体部53と緩動部材29との間に粘性ダンパーが充填されるようになっている。
【0059】
回転カム60の係止片30は回転カム60を付勢部材9に連結する部位であり、係止片30に付勢部材9の一端側のフック部9aが係止される。これにより回転カム60が回転するように付勢されている。
【0060】
回転カム60のフォークカム61は、2股状となって本体部53から突出している。フォークカム61は第1実施形態のカム凸部27と同様に、スライドカム50の一対のスライド面部23における一方のスライド面部に対応して形成されるものであり、その対応したスライド面部23に当接し、この当接状態でそのスライド面部23が摺動可能となっている。二股状のフォークカム61には、係合スリット63が形成されており、係合スリット63にスライドカム50のカムピン55が挿入され、この挿入によって回転カム60とスライドカム50とが係合する。また、カムピン55が係合スリット63から抜け出ることにより、回転カム60とスライドカム50との係合が離脱する。
【0061】
次に、この実施形態の開閉装置1Cの動作を説明する。扉120が閉じた状態(図1に示す角度θ0の状態)では、図25〜図27に示すように、回転カム60のフォークカム61にスライドカム50のカムピン55が挿入されており、この挿入により回転カム60とスライドカム50とが係合している。回転カム60は付勢部材9の付勢により扉120の閉じ方向(時計方向)に回転するように付勢されているため、スライドカム50が回転カム60側に位置するように作用しており、扉120は箱本体110から離れることなく閉止状態を安定して維持することができる。
【0062】
図30〜図32は扉120を角度θ1まで開いた開き当初を示す(図8参照)。扉120の開き操作により扉120は支軸130(図1、図8,図12参照)を中心に反時計方向に回転し、回転運動が連結リンク13を介してスライドカム50に伝達される。このため、スライドカム50は付勢部材9の付勢力に抗して扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。スライドカム50のスライドに伴ってスライドカム50の傾斜状のガイド面23aが回転カム60のフォークカム61に当接して回転カム60を押すため、回転カム60が回転用凹部54内で反時計方向に回転する。このとき、回転カム60の係止片30はスライドカム50の凹部51内で同様に回転する(図32参照)。このような回転カム60の回転と同時にスライドカム50がスライドするため、スライドカム50のカムピン55が回転カム60のフォークカム61(係合スリット63)から離脱する。
【0063】
スライドカム50のカムピン55が離脱した回転カム60は、そのフォークカム61がスライドカム50のガイド面23aに当接しながらスライド面部23に乗り上げる。扉120の開き操作は、付勢部材9の付勢力に抗して回転カム60のフォークカム61がスライド面部23に乗り上げるだけの操作力を作用させることにより行うことができる。
【0064】
回転カム60のフォークカム61がスライドカム50のスライド面部23に乗り上げた状態では、回転カム60は付勢部材9の付勢力により回転用凹部54内に戻ることができない。このため、扉120には閉じ方向の力が作用しない。
【0065】
図33〜図35は、角度θ1から全開位置である角度θ2まで扉120をさらに開く状態を示す(図12参照)。扉120の回転運動によってスライドカム50がさらに扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。このとき、回転カム60のフォークカム61がスライドカム50のスライド面部23に当接した状態でスライドカム50が摺動する。回転カム60には、付勢部材9からの付勢力(時計方向の回転付勢力)が作用しているため、回転カム60のフォークカム61がスライド面部23に当接してスライド面部23を押圧する。これによりフォークカム61とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。摩擦力が発生することにより、扉120は閉じ方向へ戻り回転することがない。このため、θ1からθ2の角度の途中で扉120への操作力を解除しても扉120はその角度で停止した状態となる。この状態では、扉120が開いた状態を維持するため、箱本体110内の郵便物を容易に取り出すことができる。
【0066】
扉120の全開状態(角度θ2)から角度θ1まで閉じる場合には、扉120を閉じ方向に回転操作させる。扉120の回転操作により、連結リンク13を介してスライドカム50が扉120から離れる方向(左方向)に直線的にスライド移動する。この操作は、フォークカム61がスライド面部23を押圧することにより発生した摩擦力に抗した操作力を作用させることにより行うことができる。角度θ2から角度θ1の間は、閉じ操作の途中で扉120への操作力を解除しても、フォークカム61とスライド面部23との間で発生している摩擦力により扉120はその角度で保持される。
【0067】
扉120を角度θ1まで閉じ操作することにより、図30〜図32の状態となる。さらに、扉120を角度θ1から角度θ0まで閉じ操作すると、スライドカム50がさらに左方向に直線的にスライド移動し、カムピン55が回転カム60のフォークカム61との対応位置に移動する。回転カム60は、付勢部材9により時計方向に回転するように付勢されているため、スライドカム50のカムピン55がフォークカム61の係合スリット63内に挿入されて係合する。この係合状態に対し、回転カム60には付勢部材9の付勢力が作用しているため、スライドカム50がさらに左方向に自動的にスライド移動する。このため、扉120を角度θ1まで閉じ操作した後は、扉120が完全閉止位置まで自動的に回転し、箱本体110が閉じられる。これにより、扉120が再度開くダンピング現象を抑制することができる。かかる扉120の閉じ作動においては、粘性ダンパーを有した緩動部材29が回転カム7に取り付けられているため、扉120がゆっくりした速度で閉じることができる。なお、この状態に対して扉120を強い力で閉じ作動しても、カムピン55がフォークカム61の内部に挿入された係合状態となっており、スライドカム50の移動が回転カム60に拘束されているため、その反力でスライドカム50が戻ることがない。
【0068】
以上の動作における操作荷重と扉120の開角度の関係は、図15に示す第1実施形態の開閉装置1と同様であり、扉120が角度θ0から角度θ1の間の状態では、T2からT3の操作荷重を作用させるが、角度θ1に達した後は、操作荷重がT1と小さくなり、以後、角度θ1からθ2の間の状態では、T1の操作荷重で作動することができる。
【0069】
このような第3実施形態においては、扉120に連結されたスライドカム50のカムピン55に回転カム60のフォークカム61が係合することにより、スライドカム50のスライド移動を確実に抑制するため、扉120が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、扉120への操作によって回転カム60が回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、箱本体110の側面140への取り付けが可能となり、取り付け位置の自由度が大きくなる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、箱本体110の左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【0070】
又、スライドカム50、回転カム60、付勢部材9、緩動部材29がケース3に収容され、カムカバー33がケース3にねじ止めされて組み付けられているため、開閉装置1を郵便受箱100と別個に取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。これに加えて、フォークカム61にカムピン55が挿入されることにより係合しているため、回転カム60とスライドカム50との係合力が大きくなっており、扉120を強い力で閉じ作動しても、その反力でスライドカム50が戻ることがない。
【0071】
図36は、第3実施形態の開閉装置1Cの第1変形形態における断面図、図17は、操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。第1変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55側が最も高く、カムピン55から離れるのにつれて徐々に低くなる傾斜面となるように形成されている。このような傾斜面とすることにより、扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が開き勝手となる。
【0072】
図38は、第3実施形態の開閉装置1Cの第2変形形態における断面図を示す。第2変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっている。又、スライド面部23の終端部分には、係止溝35が形成されている。係止溝35は、回転カム60のフォークカム61が落ち込むことにより係止可能状態となる。図19は、この第2変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっていることにより扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が閉じ勝手となる。又、係止溝25に回転カム60のフォークカム61が係止することにより、扉120を係止溝35の位置で一時的に回転停止させることができる。そして、係止溝35とフォークカム61との係止を離脱させるだけの操作力を扉120に作用させることにより扉120の一時的な回転停止を解除することができる。
【0073】
図40は、第3実施形態の開閉装置1Cの第3変形形態における断面図を示す。第3変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっていると共に、傾斜面の終端部分には係止溝35が形成されており、さらに係止溝35には徐々に低くなる傾斜面が連続している。図21は、この第3変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっている部分では扉120が角度θ1以上開いた後において扉120が開き勝手となる。そして、係止溝35では、扉120を一時的に回転停止させることができる。係止溝35からさらに扉120を開くと、扉120は閉じ勝手となり、任意の位置に戻ることができる。
【0074】
(第4実施形態)
図41〜図43は、本発明の第4実施形態の開閉装置1Dを示す。この実施形態の開閉装置1Dは、第2実施形態の開閉装置1Aと同様に被操作物が引き戸41の場合への適用を示している。
【0075】
第2実施形態と同様に、引き戸41は、サッシ枠43に対し直線的にスライド移動可能となって組み付けられる。引き戸41には、第3実施形態におけるスライドカム50と同様に、係合部としてのカムピン55と、傾斜状のガイド面23aを有したスライド面部23とが形成されている。スライド面部23は、引き戸41のスライド移動方向に沿って直線状に延びており、カムピン55は引き戸41のスライド方向と直交状に交差するように引き戸41に設けられている。
【0076】
サッシ枠43には、第3実施形態と同様に、フォークカム61を有した回転カム60が定位置で回転可能に取り付けられている。回転カム60とサッシ枠43との間には付勢部材9が掛け渡されており、引き戸41が閉じ方向(左方向)に移動するように回転カム60を時計方向に回転付勢している。回転カム50のフォークカム61は、第3実施形態と同様に、スライドカム50のカムピン55に係合すると共に、この係合から離脱する。カムピン55との係合の離脱状態では、フォークカム61はスライド面部23に当接し、この当接によりスライド面部23との間に摩擦力が発生する。
【0077】
図41は、引き戸41が閉じた状態を示し、引き戸41のカムピン55が回転カム60のフォークカム61に挿入されることによりフォークカム61とカムピン55とが係合すると共に、回転カム60が付勢部材9によって引き戸41の閉じ方向に付勢されている。このため、引き戸41の閉じ状態を確実に維持することができる。図42は、引き戸41を開き方向にスライド操作した当初を示し、引き戸41の直線的なスライド移動により、回転カム60のフォークカム61がカムピン55との係合状態から離脱し、スライド面部23のガイド面23aに当接する。
【0078】
図43は、さらに引き戸41を開き方向にスライド操作した状態を示し、回転カム60のフォークカム61が引き戸41のスライド面部23に当接すると共に、この当接状態で付勢部材9の付勢力によりフォークカム61がスライド面部23を押圧する。これにより、フォークカム61とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。このため、引き戸41へのスライド操作を解除することにより、引き戸41はその位置で停止することができる。
【0079】
このような開閉装置1Dにおいても、引き戸41のカムピン55に回転カム60のフォークカム61が係合することにより、引き戸41のスライド移動を確実に抑制することができる。このため、引き戸41が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、カムピン55がフォークカム61に挿入されることによりフォークカム61に挟まれた状態で係合しており、カムピン55(引き戸41)の移動がフォークカム61(回転カム60)によって拘束されているため、引き戸41を強い力で閉じ操作しても、引き戸41が反力で戻ることを防止することができる。
【0080】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく種々変形が可能である。例えば、スライド面部及び係合部としてのカム凹部又はフォークカムをスライドカムに一対設けることなく、これらを単一でスライドカムに設けても良い。又、本発明は、郵便受箱の扉、引き戸以外の開閉動作を行う他の被操作物に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,1A、1C、1D 開閉装置
3 ケース
5 スライドカム
7 回転カム
9 付勢部材
21 カム凹部(係合部)
23 スライド面部
27 カム凸部
29 緩動部材
41 引き戸
55 カムピン(係合部)
61 フォークカム
100 郵便受箱
110 箱本体
120 扉
【技術分野】
【0001】
本発明は、郵便受箱の扉、家具の扉、厨房の扉等の開閉を行う開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
郵便受箱の扉、家具の扉等の開閉を制御する従来の開閉装置としては、特許文献1に記載されている。この開閉装置は、回転操作によって開閉される扉にリンクを介して連結された長手方向に移動可能な細長い摺接ブロックと、この摺接ブロックの側面に摺接するように付勢された制動ブロックとからなり、摺接ブロックに対向する制動ブロックの側面に摩擦面を形成し、この摩擦面に連設する傾斜端縁を形成した構造となっている。
【0003】
上述した従来の開閉装置においては、扉が摺接ブロックに引っ張られるため、扉が閉止状態となっており、この状態の扉を開き方向に回転操作すると、摺接ブロックが傾斜端縁を押しながら制動ブロックを回動させ、摺接ブロックの側面と制動ブロックの摩擦面とが面接触する。このため、扉への操作を停止すると、扉がその角度で保持される。一方、開放状態の扉を閉じ方向に回転操作すると、制動ブロックの傾斜端縁が摺接ブロックを反対方向に押すため、途中で操作を中止しても扉が回動して自動的に閉止状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−129740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の開閉装置においては、強い力で扉等の被操作物を閉じ操作すると、制動ブロックが摺接ブロックを押さえる際に摺接ブロックが底突きして制動ブロックが押さえ込むことができず、扉等の被操作物が再度開くダンピング現象が発生する。又、従来の開閉装置では、制動ブロックが細長くなっており、この制動ブロックが扉の開閉方向に回転摺動するため、その作動構造から取り付けが水平面に限られる。このため、開閉装置の取り付け箇所が天井面や底面に限定され、取り付け自由度が小さい問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、被操作物のダンピング現象が発生することがなく、側面に対しても取り付けることができる開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明の開閉装置は、係合部及びスライド面部が形成され、開閉操作される被操作物に連結され、前記開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカムと、前記スライドカムの往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって前記係合部と係合及び離脱すると共に前記スライド面部に当接することが可能となっており、前記スライド面部に当接した状態で前記スライドカムが摺動可能となっている回転カムと、前記被操作物が閉じる方向に前記回転カムが回転するように付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の開閉装置であって、前記スライドカム、回転カム及び付勢部材を内部に収容するケースをさらに有していることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の開閉装置であって、前記回転カムの回転を緩動させる緩動部材が回転カムに設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記係合部は、前記スライド面部と連続して設けられたカム凹部であり、前記回転カムは前記カム凹部と係合及び離脱可能なカム凸部を有し、このカム凸部が前記カム凹部から離脱したときカム凸部と前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って延びるように一対が設けられると共に前記カム凹部はそれぞれのスライド面部と連続するように一対が設けられており、前記カム凸部はいずれかのスライド面部及びカム凹部に対応して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記係合部は、前記スライドカムの往復移動方向と交差する方向に設けられたカムピンであり、前記回転カムは前記カムピンが挿入係合及び離脱可能な2股状のフォークカムであり、このフォークカムが前記カムピンから離脱したときフォークカムと前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って直線的に延びていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記スライド面部は、前記回転カムが係止可能状態となる係止溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置であって、前記被操作物は、回転操作又はスライド操作によって開閉されることを特徴とする。
請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被操作物に連結されたスライドカムの係合部に回転カムが係合することにより、スライドカムのスライド移動を確実に抑制するため、被操作物が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、被操作物の操作によって回転カムが回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、側面への取り付けが可能となる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の開閉装置が適用された扉の閉じ状態を示す平面図である。
【図2】扉の閉じ状態における開閉装置の平面からの断面図であり、図4におけるA−A線断面図である。
【図3】扉の閉じ状態における開閉装置の正面からの断面図であり、図4におけるB−B線断面図である。
【図4】開閉装置の左側面図である。
【図5】(a)はスライドカムの平面図、(b)はそのH−H線断面図である。
【図6】(a)は回転カムの正面図、(b)はそのJ−J線断面図である。
【図7】図2におけるE−E線断面図である。
【図8】扉の開き当初における状態を示す平面図である。
【図9】扉の開き当初における開閉装置の平面からの断面図である。
【図10】扉の開き当初における開閉装置の正面からの断面図である。
【図11】図9におけるF−F線断面図である。
【図12】扉を完全に開いた状態を示す平面図である。
【図13】扉の完全開き状態における開閉装置の平面からの断面図である。
【図14】扉の完全開き状態における開閉装置の正面からの断面図である。
【図15】第1実施形態の開閉装置の動作を示す特性図である。
【図16】第1実施形態の第1変形形態を示す断面図である。
【図17】第1実施形態の第1変形形態の特性図である。
【図18】第1実施形態の第1変形形態の第2変形形態を示す断面図である。
【図19】第1実施形態の第2変形形態の特性図である。
【図20】第1実施形態の第3変形形態を示す断面図である。
【図21】第1実施形態の第3変形形態の特性図である。
【図22】本発明の第2実施形態の開閉装置を示す正面からの断面図である。
【図23】開き途中における第2実施形態の開閉装置の正面からの断面図である。
【図24】図23に続く状態を示す断面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の開閉装置における扉の閉じ状態の平面からの断面図である。
【図26】本発明の第3実施形態の開閉装置における扉の閉じ状態の正面からの断面図である。
【図27】図26におけるK−K線断面図である。
【図28】(a)は第3実施形態のスライドカムの平面図、(b)はその縦断面図である。
【図29】(a)は第3実施形態の回転カムの正面図、(b)は縦断面図である。
【図30】第3実施形態における扉の開き当初の開閉装置の平面からの断面図である。
【図31】第3実施形態における扉の開き当初の開閉装置の正面からの断面図である。
【図32】図31におけるL−L線断面図である。
【図33】第3実施形態における扉の完全開状態時の開閉装置の平面からの断面図である。
【図34】第3実施形態における扉の完全開状態時の開閉装置の正面からの断面図である。
【図35】図34におけるM−M線断面図である。
【図36】第3実施形態の第1変形々態を示す断面図である。
【図37】第3実施形態の第1変形々態の特性図である。
【図38】第3実施形態の第2変形々態を示す断面図である。
【図39】第3実施形態の第2変形々態の特性図である。
【図40】第3実施形態の第3変形々態を示す断面図である。
【図41】第3実施形態の第3変形々態の特性図である。
【図42】本発明の第4実施形態の開閉装置の正面からの断面図である。
【図43】第4実施形態の開き途中における正面からの断面図である。
【図44】図43に続く状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示する実施形態を参照して説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図15は、本発明の第1実施形態の開閉装置1であり、図1〜図4は扉を閉じた状態を示し、図5はスライドカム、図6は回転カム、図7は図2におけるE−E線断面図を示す。図8〜図11は扉を開いた当初の状態を、図12〜図14は扉を完全に開いた状態を示し、図11は作動の特性図を示す。
【0021】
第1実施形態の開閉装置1は、被操作物として郵便受箱100の扉に適用されるものである。図1に示すように、郵便受箱100は、郵便物が投入される箱本体110と、箱本体110の一の側面に設けられた扉120とを備えている。扉120は、長さ方向の一端側に支軸130を有し、この支軸130が箱本体110に取り付けられることにより、箱本体110に対して開閉操作可能となっている。
【0022】
この実施形態の開閉装置1は、箱本体110内部における一の側面140に取り付けられる。開閉装置1は、箱本体110の入口から奥側に向かって直線的に配置され、扉120とは直交状態となって箱本体110に取り付けられる。
【0023】
図2〜図4に示すように、開閉装置1は、細い横長のケース3と、共にケース3の内部に配置されたスライドカム5と、回転カム7と、付勢部材9とを有している。
【0024】
ケース3は、上面が開口されたケース本体10と、ケース本体10の上面の開口部分を覆うように被せられるケースカバー11とを備えた中空状となっている。ケース本体10の底面15の奥側には、上方に向かってなだらかに傾斜した傾斜底面部16が一体に形成されている。傾斜底面部16を形成することにより、箱本体110の内部に投入された郵便物が開閉装置1に引っ掛かることがなく、郵便物の取り出しを円滑に行うことができる。
【0025】
ケースカバー11における扉120側の端部には、直線状のガイドスリット12が形成されている。ガイドスリット12は、後述する連結リンク13のスライド移動を案内するものである。連結リンク13は、円弧状に形成されており、郵便受箱100の扉120と開閉装置1のスライドカム5との間に掛け渡され、扉120の開閉操作をスライドカム5に伝達する。これにより、スライドカム5が直線的に往復移動する。
【0026】
スライドカム5は、ブロック形状に形成されており、傾斜底面部16を除くケース本体10の底面15の長さ方向に沿って直線的に往復移動する。スライドカム5における扉120側の端部には、ケースカバー11のガイドスリット12を抜け出る連結部17が形成されており、この連結部17に連結リンク13の一方の端部がねじ19を介して連結される。
【0027】
次に、図5によりスライドカム5を説明する。スライドカム5は同カム5の移動方向に延びた横長形状となっており、付勢部材9側(左側)には、スライドカム5の移動方向に沿って(右方向に向かって)直線状に所定長さで延びた一対のスライド面部23が形成されている。スライド面部23は、所定の高さとなるように形成されると共に、スライドカム5の移動方向(スライドカム5の長さ方向)に沿って延びるように一対が形成されている。一対のスライド面部23の間は、凹部51となっている。凹部51は、後述する回転カム7の係止片30が揺動可能に入り込むものであり(図11参照)、これにより回転カム7の回転が可能となっている。
【0028】
一対のスライド面部23の外側部分には、スライド面部23よりも高くなった立上がり壁部24が形成されている。立上がり壁部24は、スライド面部23より長くなるようにスライドカム5の略全長に渡って形成されている。立上がり壁部24をスライド面部23の外側に形成することにより、回転カム7の係合凸部27がスライドカム5から外れることを防止している。
【0029】
一対のスライド面部23は立上がり壁部24よりも短くなるように形成されており、スライド面部23が途切れた終端部分(右端部分)に対してストッパ壁部25が所定間隔を有して対向するように形成されている。ストッパ壁部25は、スライド面部23よりも高くなるように立ち上がっており、高く立ち上がることにより後述する回転カム7がストッパ壁部25を超えることがない。
【0030】
本実施形態において、一対のスライド面部23とストッパ壁部25との間に係合部としてのカム凹部21が形成されている。係合部としてのカム凹部21は、それぞれのスライド面部23が途切れた終端部分とストッパ壁部25との間に形成されるものであり、それぞれのスライド面部23に連続するように設けられる。これにより、カム凹部21はスライド面部23と同様に一対となるようにスライドカム5に形成される。かかるカム凹部21は、回転カム7のカム凸部27が噛み込んで係合するものである。このようにスライド面部23及びカム凹部21が一対設けられる構造において、一対の内のいずれのスライド面部23及びカム凹部21を用いるかは開閉装置1の郵便受箱100への取り付け姿勢に応じて任意に選択されるものである。
【0031】
回転カム7は、ケース本体10の長さ方向の略中央部分に回転可能に取り付けられている。回転カム7は、図2に示すように、ケース本体10の一の側面における長さ方向の略中央部分を貫通することによりケース本体10に対して定位置で回転可能となっている。
【0032】
図6に示すように、回転カム7は、ケース本体10に回転可能に取り付けられる本体部53と、本体部53に形成されたカム凸部27及び係止片30を有している。カム凸部27は、本体部53から径方向外側に突出した舌片状に形成されている。カム凸部27は、スライドカム5における一対のカム凹部21の内の一方のカム凹部21に噛み込んで係合すると共に、そのカム凹部21との係合から離脱するようになっており、カム凹部21から離脱すると、そのカム凹部21側のスライド面部23に当接した状態となる。
【0033】
係止片30は、カム凸部27と同様に本体部53から径方向外側に突出した舌片状に形成されている。係止片30はスライドカム5の凹部51内に入り込むものであり、この係止片30には、付勢部材9の一端側のフック部9aが係止される。フック部9aが係止されることにより、付勢部材9のばね力が回転カム7に作用し、回転カム7が回転するように付勢される。図1、図2、図7及び図11において、符号29は緩動部材であり、回転カム7の本体部53に対して軸方向に挿入される。この緩動部材29と回転カム7との間には、オイル等の粘性ダンパーが充填される。これにより、回転カム7の回転を緩動させることができる。
【0034】
付勢部材9は、コイルばねからなり、一端側のフック部9aが回転カム7の係止片30に係止され、他端側のフック部9bがケース本体10に係止される。他端側のフック部9bを係止するため、ケース本体10内の奥側には係止突起31が形成されており、フック部9bはこの係止突起31に係止された状態でねじ32により固定される。かかる付勢部材9は、扉120が閉じる方向に回転カム7が回転するように付勢するものであり、この実施形態では、回転カム7が時計方向に回転するように付勢している。かかる方向への付勢部材9の付勢により、回転カム7はスライドカム5のスライド面部23と当接する方向に回転付勢される。
【0035】
次に、この実施形態の開閉装置1の動作を説明する。図1〜図3及び図7は、扉120が閉じた状態(角度θ0)であり、この状態では、回転カム7のカム凸部27がスライドカム5の一方のカム凹部21に噛み込んで係合している。このとき、回転カム7は付勢部材9の付勢により扉120の閉じ方向(時計方向)に回転するように付勢されているため、スライドカム5が回転カム7側に位置するように作用する。このため、扉120は箱本体110から離れることなく閉止状態を安定して維持することができる。
【0036】
図8〜図11は、扉120を角度θ1まで開いた開き当初を示す。扉120を開き操作することにより扉120は支軸130を中心に反時計方向に回転する。この回転運動は、連結リンク13を介してスライドカム5に伝達されるため、スライドカム5は付勢部材9の付勢力に抗して扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。スライドカム5の右方向のスライドにより、回転カム7のカム凸部27はスライドカム5のカム凹部21から離脱し、カム凹部21に連続しているスライド面部23に乗り上げる。扉120の開き操作は、付勢部材9の付勢力に抗してカム凸部27がカム凹部21から離脱し、スライド面部23に乗り上げるだけの操作力を作用させることにより行うことができる。かかる乗り上げを円滑に行うため、カム凹部21の角部及びカム凸部27の角部は、円弧状に形成されるものである。
【0037】
回転カム7のカム凸部27がスライドカム5のスライド面部23に乗り上げた状態では、回転カム7は付勢部材9の付勢力によりカム凹部21内に戻ることができない。このため、扉120には閉じ方向の力が作用しない。
【0038】
図12〜図14は、角度θ1から全開位置である角度θ2まで扉120をさらに開く状態を示す。扉120の回転運動は連結リンク13を介してスライドカム5に伝達されるため、スライドカム5がさらに扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。このとき、カム凸部27がスライドカム5のスライド面部23に当接した状態でスライドカム5が摺動する。回転カム7には、付勢部材9からの付勢力(時計方向の回転付勢力)が作用しているため、回転カム7のカム凸部27がスライド面部23に当接してスライド面部23を押圧する。これによりカム凸部27とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。摩擦力が発生することにより、扉120は閉じ方向へ戻り回転することがない。このため、θ1からθ2の角度の途中で扉120への操作力を解除しても扉120はその角度で停止した状態となる。この状態では、扉120が開いた状態を維持するため、箱本体110内の郵便物を容易に取り出すことができる。
【0039】
扉120の全開状態(角度θ2)から角度θ1まで閉じる場合、扉120を閉じ方向に回転操作させる。扉120の回転操作により、連結リンク13を介してスライドカム5が扉120から離れる方向(左方向)に直線的にスライド移動する(図12〜図14参照)。この操作は、カム凸部27がスライド面部23を押圧することにより発生した摩擦力に抗した操作力を作用させることにより行うことができる。角度θ2から角度θ1の間は、閉じ操作の途中で扉120への操作力を解除しても、カム凸部27とスライド面部23との間で発生している摩擦力により扉120はその角度で保持される。
【0040】
扉120を角度θ1まで閉じ操作することにより、図8〜図11の状態となる。さらに、扉120を角度θ1から角度θ0まで閉じ操作すると、スライドカム5がさらに左方向に直線的にスライド移動し、カム凹部21が回転カム7のカム凸部27との対応位置に移動する。回転カム7は、付勢部材9により時計方向に回転するように付勢されているため、カム凸部27がカム凹部21に噛み込んで係合する。この係合状態となることにより、回転カム7には付勢部材9の付勢力が作用しているため、スライドカム5がさらに左方向に自動的にスライド移動する。このため、扉120を角度θ1まで閉じ操作した後は、扉120が完全閉止位置まで自動的に回転し、箱本体110が閉じられる。これにより、扉120が再度開くダンピング現象を抑制することができる。かかる扉120の閉じ作動においては、粘性ダンパーを有した緩動部材29が回転カム7に取り付けられているため、扉120がゆっくりした速度で閉じることができる。
【0041】
図15は、以上の動作における操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。扉120が角度θ0から角度θ1の間の状態では、T2からT3の操作荷重を作用させるが、角度θ1に達した後は、操作荷重がT1と小さくなり、以後、角度θ1からθ2の間の状態では、T1の操作荷重で作動することができる。
【0042】
以上の開閉装置1の組み立て手順を説明する。ケース3が開いた状態でケース本体10にスライドカム5を挿入する。そして、スライドカム5のカム凹部21と、カム凸部27が噛み込むように回転カム7をケース本体10に挿入し、ケース本体10の一の側面に回転カム7の端部を挿入する。その後、回転カム7に緩動部材29を挿入し、カムカバー33を被せた後、カムカバー33をケース本体10にねじ止めする。次に、付勢部材9をケース本体10に挿入し、フック部9a、9bを回転カム7及び係止突起31に係止する。その後においては、ケースカバー11をケース本体10に被せる。このとき、スライドカム5の連結部17は、ケースカバー11のガイドスリット12から抜け出すようにしておき、この連結部17に連結リンク13の一端を回転自在に連結する。これにより、開閉装置1の組み立てが完了する。組み立てられた開閉装置1を郵便受箱100に取り付ける場合には、ケース本体10を箱本体110に取り付け、連結リンク13の他端を扉120に回転自由に取り付けることにより行うことができる。
【0043】
このような実施形態によれば、扉120に連結されたスライドカム5のカム凹部21に回転カム7のカム凸部27が係合することにより、スライドカム5のスライド移動を確実に抑制するため、扉120が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、扉120への操作によって回転カム7が回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、箱本体110の側面140への取り付けが可能となり、取り付け位置の自由度が大きくなる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、箱本体110の左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【0044】
又、この実施形態の開閉装置1では、スライドカム5、回転カム7、付勢部材9、緩動部材29がケース3に収容され、カムカバー33がケース3にねじ止めされて組み付けられているため、開閉装置1を郵便受箱100と別個に取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。さらに、この実施形態では、スライド面部23及びカム凹部21が一対設けられているため、郵便受箱100の左右の両側面に対して適宜組み付けることができ、組み付けの自由度が増大する。
【0045】
図16は、以上説明した第1実施形態の開閉装置1の第1変形形態における断面図、図17は、操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。第1変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21側が最も高く、カム凹部21から離れるのにつれて徐々に低くなる傾斜面となるように形成されている。このような傾斜面とすることにより、扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が開き勝手となる。
【0046】
図18は、第1実施形態の開閉装置1の第2変形形態における断面図を示す。第2変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっている。又、スライド面部23の終端部分には、係止溝35が形成されている。係止溝35は、回転カム7のカム凸部27が落ち込むことにより係止可能状態となる。図19は、この第2変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっていることにより扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が閉じ勝手となる。又、係止溝25に回転カム7のカム凸部27が係止することにより、扉120を係止溝35の位置で一時的に回転停止させることができる。そして、係止溝35とカム凸部27との係止を離脱させるだけの操作力を扉120に作用させることにより扉120の一時的な回転停止を解除することができる。
【0047】
図20は、第1実施形態の開閉装置1の第3変形形態における断面図を示す。第3変形形態においては、スライドカム5のスライド面部23がカム凹部21から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっていると共に、傾斜面の終端部分には係止溝35が形成されており、さらに係止溝35には徐々に低くなる傾斜面が連続している。図21は、この第3変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっている部分では扉120が角度θ1以上開いた後において扉120が開き勝手となる。そして、係止溝35では、扉120を一時的に回転停止させることができる。係止溝35からさらに扉120を開くと、扉120は閉じ勝手となり、任意の位置に戻ることができる。
【0048】
(第2実施形態)
図22〜図24は、本発明の第2実施形態の開閉装置1Aを示す。この実施形態の開閉装置1Aは、被操作物が引き戸41の場合への適用を示している。
【0049】
引き戸41は、サッシ枠43に対し直線的にスライド移動可能となって組み付けられる。引き戸41には、第1実施形態と同様に、係合部としての一対のカム凹部21とそれぞれのカム凹部21に対応した一対のスライド面部23とが形成されている。スライド面部23は、引き戸41のスライド移動方向に沿って直線状に延びており、カム凹部21は、それぞれのスライド面部23が途切れた終端部分に連続するように設けられている
【0050】
サッシ枠43には、カム凸部27を有した回転カム7が回転可能に取り付けられている。又、回転カム7とサッシ枠43との間には付勢部材9が掛け渡されており、引き戸41が閉じ方向(左方向)に移動するように回転カム7を時計方向に回転付勢している。回転カム7のカム凸部27は、第1実施形態と同様に、一対の内、一方のカム凹部21に係合すると共にカム凹部21との係合離脱状態では、カム凹部21と連続しているスライド面部23に当接し、この当接によりスライド面部23との間に摩擦力が発生する。
【0051】
図22は、引き戸41が閉じた状態を示し、回転カム7のカム凸部27が引き戸41のカム凹部21に係合すると共に、回転カム7が付勢部材9によって引き戸41の閉じ方向に付勢されているため、引き戸41の閉じ状態を確実に維持することができる。図23は、引き戸41を開き方向にスライド操作した当初を示し、引き戸41の直線的なスライド移動により、回転カム7のカム凸部27がカム凹部21と係合状態から離脱する。
【0052】
図24は、さらに引き戸41を開き方向にスライド操作した状態を示し、回転カム7のカム凸部27がスライド面部23に当接すると共に、この当接状態で付勢部材9の付勢力によりカム凸部27がスライド面部23を押圧する。これにより、カム凸部27とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。このため、引き戸41へのスライド操作を解除することにより、引き戸41はその位置で停止することができる。
【0053】
このような実施形態の開閉装置1Aにおいても、引き戸41のカム凹部21に回転カム7のカム凸部27が係合することにより、引き戸41のスライド移動を確実に抑制することができる。このため、引き戸41が再度開くダンピング現象が発生することがない。
【0054】
(第3実施形態)
図25〜図35は、本発明の第3実施形態の開閉装置1Cを示し、図25〜図27は扉120を閉じた状態であり、第1実施形態における図1に対応した状態を示す。図25は図2に対応し、図26は図3に対応しており、図27は図26のK−K線断面図である。図28はこの実施形態に用いるスライドカム50を示し、図29はこの実施形態に用いる回転カム60を示す。図30〜図32は、扉120を角度θ1まで開いた状態であり、図30は第1実施形態における図9に対応し、図31は図10に対応しており、図32は図31のL−L線断面図である。図33〜図35は扉120を完全に開いた状態であり、図33は第1実施形態における図13に対応し、図34は図14に対応しており、図35は図34のM−M線断面図である。
【0055】
この実施形態の開閉装置1Cは、第1実施形態の開閉装置1と同様に被操作物として郵便受箱100の扉120を開閉するために適用されるものである。開閉装置1Cにおいては、スライドカム50及び回転カム60が第1実施形態の開閉装置1と異なり、他の構成部材(ケース3、付勢部材9)は第1実施形態と同様となっている。
【0056】
スライドカム50は、一側(右側)の連結部17が連結リンク13を介して郵便受箱100の扉120に連結されており、扉120の開閉に伴ってケース本体10の底面15を長さ方向に沿って直線的に往復移動する。図28に示すように、スライドカム50には、その移動方向に沿って直線状に延びた一対のスライド面部23が形成されている。スライド面部23は後述するように回転カム60が当接してスライドするものである。この場合、一対のスライド面部23は一対の立上がり壁部24の内側に所定長さで延びるように形成されている。スライド面部23における扉120側(右側)の端部には、傾斜状のガイド面23aが形成されており、後述する回転カム60の当接が円滑になされるようになっている。
【0057】
スライドカム50のガイド面23aとストッパ壁部25との間は、回転用凹部54となっており、この回転用凹部54に係合部としてのカムピン55が設けられている。係合部としてのカムピン55はスライドカム50の往復移動方向と直交状に交差するように設けられている。このカムピン55に対して回転カム60が係合及び離脱するように動作する。
【0058】
回転カム60は図25に示すように、ケース本体10の一の側面を貫通することにより、ケース本体10に対して定位置で回転するように取り付けられる。図29に示すように、回転カム60はケース本体102に回転可能に取り付けられる本体部53と、本体部53から径方向外側に突出した状態で本体部53に一体に形成された係止片30及びフォークカム61とを有している。この場合、本体部53には、緩動部材29が軸方向に挿入されており、本体部53と緩動部材29との間に粘性ダンパーが充填されるようになっている。
【0059】
回転カム60の係止片30は回転カム60を付勢部材9に連結する部位であり、係止片30に付勢部材9の一端側のフック部9aが係止される。これにより回転カム60が回転するように付勢されている。
【0060】
回転カム60のフォークカム61は、2股状となって本体部53から突出している。フォークカム61は第1実施形態のカム凸部27と同様に、スライドカム50の一対のスライド面部23における一方のスライド面部に対応して形成されるものであり、その対応したスライド面部23に当接し、この当接状態でそのスライド面部23が摺動可能となっている。二股状のフォークカム61には、係合スリット63が形成されており、係合スリット63にスライドカム50のカムピン55が挿入され、この挿入によって回転カム60とスライドカム50とが係合する。また、カムピン55が係合スリット63から抜け出ることにより、回転カム60とスライドカム50との係合が離脱する。
【0061】
次に、この実施形態の開閉装置1Cの動作を説明する。扉120が閉じた状態(図1に示す角度θ0の状態)では、図25〜図27に示すように、回転カム60のフォークカム61にスライドカム50のカムピン55が挿入されており、この挿入により回転カム60とスライドカム50とが係合している。回転カム60は付勢部材9の付勢により扉120の閉じ方向(時計方向)に回転するように付勢されているため、スライドカム50が回転カム60側に位置するように作用しており、扉120は箱本体110から離れることなく閉止状態を安定して維持することができる。
【0062】
図30〜図32は扉120を角度θ1まで開いた開き当初を示す(図8参照)。扉120の開き操作により扉120は支軸130(図1、図8,図12参照)を中心に反時計方向に回転し、回転運動が連結リンク13を介してスライドカム50に伝達される。このため、スライドカム50は付勢部材9の付勢力に抗して扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。スライドカム50のスライドに伴ってスライドカム50の傾斜状のガイド面23aが回転カム60のフォークカム61に当接して回転カム60を押すため、回転カム60が回転用凹部54内で反時計方向に回転する。このとき、回転カム60の係止片30はスライドカム50の凹部51内で同様に回転する(図32参照)。このような回転カム60の回転と同時にスライドカム50がスライドするため、スライドカム50のカムピン55が回転カム60のフォークカム61(係合スリット63)から離脱する。
【0063】
スライドカム50のカムピン55が離脱した回転カム60は、そのフォークカム61がスライドカム50のガイド面23aに当接しながらスライド面部23に乗り上げる。扉120の開き操作は、付勢部材9の付勢力に抗して回転カム60のフォークカム61がスライド面部23に乗り上げるだけの操作力を作用させることにより行うことができる。
【0064】
回転カム60のフォークカム61がスライドカム50のスライド面部23に乗り上げた状態では、回転カム60は付勢部材9の付勢力により回転用凹部54内に戻ることができない。このため、扉120には閉じ方向の力が作用しない。
【0065】
図33〜図35は、角度θ1から全開位置である角度θ2まで扉120をさらに開く状態を示す(図12参照)。扉120の回転運動によってスライドカム50がさらに扉120の方向(右方向)に直線的にスライド移動する。このとき、回転カム60のフォークカム61がスライドカム50のスライド面部23に当接した状態でスライドカム50が摺動する。回転カム60には、付勢部材9からの付勢力(時計方向の回転付勢力)が作用しているため、回転カム60のフォークカム61がスライド面部23に当接してスライド面部23を押圧する。これによりフォークカム61とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。摩擦力が発生することにより、扉120は閉じ方向へ戻り回転することがない。このため、θ1からθ2の角度の途中で扉120への操作力を解除しても扉120はその角度で停止した状態となる。この状態では、扉120が開いた状態を維持するため、箱本体110内の郵便物を容易に取り出すことができる。
【0066】
扉120の全開状態(角度θ2)から角度θ1まで閉じる場合には、扉120を閉じ方向に回転操作させる。扉120の回転操作により、連結リンク13を介してスライドカム50が扉120から離れる方向(左方向)に直線的にスライド移動する。この操作は、フォークカム61がスライド面部23を押圧することにより発生した摩擦力に抗した操作力を作用させることにより行うことができる。角度θ2から角度θ1の間は、閉じ操作の途中で扉120への操作力を解除しても、フォークカム61とスライド面部23との間で発生している摩擦力により扉120はその角度で保持される。
【0067】
扉120を角度θ1まで閉じ操作することにより、図30〜図32の状態となる。さらに、扉120を角度θ1から角度θ0まで閉じ操作すると、スライドカム50がさらに左方向に直線的にスライド移動し、カムピン55が回転カム60のフォークカム61との対応位置に移動する。回転カム60は、付勢部材9により時計方向に回転するように付勢されているため、スライドカム50のカムピン55がフォークカム61の係合スリット63内に挿入されて係合する。この係合状態に対し、回転カム60には付勢部材9の付勢力が作用しているため、スライドカム50がさらに左方向に自動的にスライド移動する。このため、扉120を角度θ1まで閉じ操作した後は、扉120が完全閉止位置まで自動的に回転し、箱本体110が閉じられる。これにより、扉120が再度開くダンピング現象を抑制することができる。かかる扉120の閉じ作動においては、粘性ダンパーを有した緩動部材29が回転カム7に取り付けられているため、扉120がゆっくりした速度で閉じることができる。なお、この状態に対して扉120を強い力で閉じ作動しても、カムピン55がフォークカム61の内部に挿入された係合状態となっており、スライドカム50の移動が回転カム60に拘束されているため、その反力でスライドカム50が戻ることがない。
【0068】
以上の動作における操作荷重と扉120の開角度の関係は、図15に示す第1実施形態の開閉装置1と同様であり、扉120が角度θ0から角度θ1の間の状態では、T2からT3の操作荷重を作用させるが、角度θ1に達した後は、操作荷重がT1と小さくなり、以後、角度θ1からθ2の間の状態では、T1の操作荷重で作動することができる。
【0069】
このような第3実施形態においては、扉120に連結されたスライドカム50のカムピン55に回転カム60のフォークカム61が係合することにより、スライドカム50のスライド移動を確実に抑制するため、扉120が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、扉120への操作によって回転カム60が回転作動することから取り付け箇所が限定されることなく、箱本体110の側面140への取り付けが可能となり、取り付け位置の自由度が大きくなる。さらには、略左右対称の設計が可能となるため、箱本体110の左右いずれの側に対しても取り付けが可能となる。
【0070】
又、スライドカム50、回転カム60、付勢部材9、緩動部材29がケース3に収容され、カムカバー33がケース3にねじ止めされて組み付けられているため、開閉装置1を郵便受箱100と別個に取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。これに加えて、フォークカム61にカムピン55が挿入されることにより係合しているため、回転カム60とスライドカム50との係合力が大きくなっており、扉120を強い力で閉じ作動しても、その反力でスライドカム50が戻ることがない。
【0071】
図36は、第3実施形態の開閉装置1Cの第1変形形態における断面図、図17は、操作荷重と扉120の開角度の関係を示す特性図である。第1変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55側が最も高く、カムピン55から離れるのにつれて徐々に低くなる傾斜面となるように形成されている。このような傾斜面とすることにより、扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が開き勝手となる。
【0072】
図38は、第3実施形態の開閉装置1Cの第2変形形態における断面図を示す。第2変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっている。又、スライド面部23の終端部分には、係止溝35が形成されている。係止溝35は、回転カム60のフォークカム61が落ち込むことにより係止可能状態となる。図19は、この第2変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっていることにより扉120を角度θ1以上開いた後においては、扉120が閉じ勝手となる。又、係止溝25に回転カム60のフォークカム61が係止することにより、扉120を係止溝35の位置で一時的に回転停止させることができる。そして、係止溝35とフォークカム61との係止を離脱させるだけの操作力を扉120に作用させることにより扉120の一時的な回転停止を解除することができる。
【0073】
図40は、第3実施形態の開閉装置1Cの第3変形形態における断面図を示す。第3変形形態においては、スライドカム50のスライド面部23がカムピン55から離れるのにつれて徐々に高くなる傾斜面となっていると共に、傾斜面の終端部分には係止溝35が形成されており、さらに係止溝35には徐々に低くなる傾斜面が連続している。図21は、この第3変形形態における特性図を示し、スライド面部23が徐々に高くなっている部分では扉120が角度θ1以上開いた後において扉120が開き勝手となる。そして、係止溝35では、扉120を一時的に回転停止させることができる。係止溝35からさらに扉120を開くと、扉120は閉じ勝手となり、任意の位置に戻ることができる。
【0074】
(第4実施形態)
図41〜図43は、本発明の第4実施形態の開閉装置1Dを示す。この実施形態の開閉装置1Dは、第2実施形態の開閉装置1Aと同様に被操作物が引き戸41の場合への適用を示している。
【0075】
第2実施形態と同様に、引き戸41は、サッシ枠43に対し直線的にスライド移動可能となって組み付けられる。引き戸41には、第3実施形態におけるスライドカム50と同様に、係合部としてのカムピン55と、傾斜状のガイド面23aを有したスライド面部23とが形成されている。スライド面部23は、引き戸41のスライド移動方向に沿って直線状に延びており、カムピン55は引き戸41のスライド方向と直交状に交差するように引き戸41に設けられている。
【0076】
サッシ枠43には、第3実施形態と同様に、フォークカム61を有した回転カム60が定位置で回転可能に取り付けられている。回転カム60とサッシ枠43との間には付勢部材9が掛け渡されており、引き戸41が閉じ方向(左方向)に移動するように回転カム60を時計方向に回転付勢している。回転カム50のフォークカム61は、第3実施形態と同様に、スライドカム50のカムピン55に係合すると共に、この係合から離脱する。カムピン55との係合の離脱状態では、フォークカム61はスライド面部23に当接し、この当接によりスライド面部23との間に摩擦力が発生する。
【0077】
図41は、引き戸41が閉じた状態を示し、引き戸41のカムピン55が回転カム60のフォークカム61に挿入されることによりフォークカム61とカムピン55とが係合すると共に、回転カム60が付勢部材9によって引き戸41の閉じ方向に付勢されている。このため、引き戸41の閉じ状態を確実に維持することができる。図42は、引き戸41を開き方向にスライド操作した当初を示し、引き戸41の直線的なスライド移動により、回転カム60のフォークカム61がカムピン55との係合状態から離脱し、スライド面部23のガイド面23aに当接する。
【0078】
図43は、さらに引き戸41を開き方向にスライド操作した状態を示し、回転カム60のフォークカム61が引き戸41のスライド面部23に当接すると共に、この当接状態で付勢部材9の付勢力によりフォークカム61がスライド面部23を押圧する。これにより、フォークカム61とスライド面部23との間に摩擦力が発生する。このため、引き戸41へのスライド操作を解除することにより、引き戸41はその位置で停止することができる。
【0079】
このような開閉装置1Dにおいても、引き戸41のカムピン55に回転カム60のフォークカム61が係合することにより、引き戸41のスライド移動を確実に抑制することができる。このため、引き戸41が再度開くダンピング現象が発生することがない。又、カムピン55がフォークカム61に挿入されることによりフォークカム61に挟まれた状態で係合しており、カムピン55(引き戸41)の移動がフォークカム61(回転カム60)によって拘束されているため、引き戸41を強い力で閉じ操作しても、引き戸41が反力で戻ることを防止することができる。
【0080】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく種々変形が可能である。例えば、スライド面部及び係合部としてのカム凹部又はフォークカムをスライドカムに一対設けることなく、これらを単一でスライドカムに設けても良い。又、本発明は、郵便受箱の扉、引き戸以外の開閉動作を行う他の被操作物に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,1A、1C、1D 開閉装置
3 ケース
5 スライドカム
7 回転カム
9 付勢部材
21 カム凹部(係合部)
23 スライド面部
27 カム凸部
29 緩動部材
41 引き戸
55 カムピン(係合部)
61 フォークカム
100 郵便受箱
110 箱本体
120 扉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部及びスライド面部が形成され、開閉操作される被操作物に連結され、前記開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカムと、
前記スライドカムの往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって前記係合部と係合及び離脱すると共に前記スライド面部に当接することが可能となっており、前記スライド面部に当接した状態で前記スライドカムが摺動可能となっている回転カムと、
前記被操作物が閉じる方向に前記回転カムが回転するように付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記スライドカム、回転カム及び付勢部材を内部に収容するケースをさらに有していることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記回転カムの回転を緩動させる緩動部材が回転カムに設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記スライド面部と連続して設けられたカム凹部であり、前記回転カムは前記カム凹部と係合及び離脱可能なカム凸部を有し、このカム凸部が前記カム凹部から離脱したときカム凸部と前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項5】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って延びるように一対が設けられると共に前記カム凹部はそれぞれのスライド面部と連続するように一対が設けられており、前記カム凸部はいずれかのスライド面部及びカム凹部に対応して設けられていることを特徴とする請求項4記載の開閉装置。
【請求項6】
前記係合部は、前記スライドカムの往復移動方向と交差する方向に設けられたカムピンであり、前記回転カムは前記カムピンが挿入係合及び離脱可能な2股状のフォークカムであり、このフォークカムが前記カムピンから離脱したときフォークカムと前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項7】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って直線的に延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項8】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項9】
前記スライド面部は、前記回転カムが係止可能状態となる係止溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項10】
前記被操作物は、回転操作又はスライド操作によって開閉されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項1】
係合部及びスライド面部が形成され、開閉操作される被操作物に連結され、前記開閉操作に伴って直線的に往復移動するスライドカムと、
前記スライドカムの往復移動に伴って回転可能であり、当該回転によって前記係合部と係合及び離脱すると共に前記スライド面部に当接することが可能となっており、前記スライド面部に当接した状態で前記スライドカムが摺動可能となっている回転カムと、
前記被操作物が閉じる方向に前記回転カムが回転するように付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記スライドカム、回転カム及び付勢部材を内部に収容するケースをさらに有していることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記回転カムの回転を緩動させる緩動部材が回転カムに設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記スライド面部と連続して設けられたカム凹部であり、前記回転カムは前記カム凹部と係合及び離脱可能なカム凸部を有し、このカム凸部が前記カム凹部から離脱したときカム凸部と前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項5】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って延びるように一対が設けられると共に前記カム凹部はそれぞれのスライド面部と連続するように一対が設けられており、前記カム凸部はいずれかのスライド面部及びカム凹部に対応して設けられていることを特徴とする請求項4記載の開閉装置。
【請求項6】
前記係合部は、前記スライドカムの往復移動方向と交差する方向に設けられたカムピンであり、前記回転カムは前記カムピンが挿入係合及び離脱可能な2股状のフォークカムであり、このフォークカムが前記カムピンから離脱したときフォークカムと前記スライド面部とが当接した状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項7】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に沿って直線的に延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項8】
前記スライド面部は、前記スライドカムの移動方向に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項9】
前記スライド面部は、前記回転カムが係止可能状態となる係止溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項10】
前記被操作物は、回転操作又はスライド操作によって開閉されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2011−256692(P2011−256692A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178699(P2010−178699)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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