説明

間欠塗工装置

【課題】塗工不良の無い間欠塗工装置を、シンプルな構造で、且つ、安価に提供する。
【解決手段】塗工ロール4のシート材10送り方向上流側及び下流側の両側には、第1及び第2押圧ロール6a、6bがそれぞれ配置され、シート材10の反被塗工面側を押圧してシート材10に所定のテンションを付与する。ロール位置可変機構3は、塗工時には、シート材10の被塗工面側が塗工ロール4の外周面4aに所定のテンションで接触するように第1及び第2押圧ロール6a、6bの位置を設定する一方、非塗工時には、第1押圧ロール6aをシート材10から離れる方向に移動させて、シート材10の被塗工面側を塗工ロール4の外周面4aから離間させると同時に、離間動作によりシート材10に対するテンションが変動しないように第2押圧ロール6bをシート材10に押し付け移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材に塗工液を間欠的に塗工する間欠塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されている間欠塗工装置は、塗工液を貯溜する塗工チャンバーと、該塗工チャンバーの塗工液に上方から外周面の一部が浸される塗工ロールとを備えている。該塗工ロール上方には、被塗工面側を下にしてシート材が略水平方向に送られていて、上記塗工ロールのシート材送り方向上流側及び下流側の両側には、上記シート材を反被塗工面側から押圧して当該シート材に所定のテンションを付与する第1及び第2押圧ロールがそれぞれ配置されている。そして、上記第2押圧ロールをシート材の押圧方向と反押圧方向とに移動させることにより、上記塗工ロール外周面のシート材への接触・離間が繰り返されて被塗工面側に間欠的に塗工が施されるようになっている。
【0003】
ところで、上述の如く第2押圧ロールをシート材に対して押圧方向と反押圧方向とに移動させると、シート材のテンションが変動してシート材に弛みが発生し、塗工時において塗工領域の始端及び終端に塗工ムラが生じてしまう。
【0004】
これを回避するために、特許文献1の間欠塗工装置では、上記第2押圧ロールのシート材送り方向下流側にシート材のテンションを調整するテンション調整ロールが追加されていて、上記第2押圧ロールの移動時に上記シート材のテンションが変動しないように上記第2押圧ロールの移動に連動して、上記テンション調整ロールが上記シート材の押圧方向と反押圧方向とに繰り返し移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−262070号(段落0025〜0030欄、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の如くテンション調整ロールを追加して上記シート材のテンションの変動を抑える構造にすると、上記テンション調整ロールを追加した分だけ部品点数が増加してコストが嵩むとともに、構造が複雑になってしまう。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数の増加を招くテンション調整ロールを設けなくても、塗工不良の無い間欠塗工装置を、シンプルな構造で、且つ、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、塗工ロールのシート材送り方向上流側及び下流側の両側に配置された一対の押圧ロールだけで間欠塗工時のシート材のテンションの変動を抑えるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、塗工液を貯溜する液溜部が設けられた塗工チャンバーと、外周面の一部が上記液溜部の塗工液に浸されるように上記塗工チャンバーに接近配置され、一方向に送られるシート材の被塗工面側に上記外周面を接触させて塗工液を転写する塗工ロールと、上記塗工ロールのシート材送り方向上流側及び下流側の両側に配置され、上記シート材の反被塗工面側を押圧して該シート材に所定のテンションを付与する一対の押圧ロールと、塗工時には、上記シート材の被塗工面側が上記塗工ロールの外周面に所定のテンションで接触するように上記一対の押圧ロールの位置を設定する一方、非塗工時には、上記一対の押圧ロールの一方のロールを上記シート材から離れる方向に移動させて、該シート材の被塗工面側を上記塗工ロールの外周面から離間させると同時に、当該離間動作により上記シート材に対するテンションが変動しないように他方の押圧ロールを上記シート材に押し付け移動させるロール位置可変手段とを備え、上記ロール位置可変手段の切換え作動により、上記シート材に塗工液を間欠的に塗工するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記塗工ロールは、上記一対の押圧ロールの一方のロールに接近配置され、上記ロール位置可変手段は、上記一対の押圧ロールをそれぞれ回転自在に軸支し、且つ、上記一対の押圧ロール間のそれぞれのロールから等しい位置においてロール回転中心と平行に延びる軸部により揺動する揺動部材を備えていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、上記ロール位置可変手段は、上記揺動部材における上記一対の押圧ロールの一方のロール側に位置し、上記揺動部材の揺動時に発生する振動を吸収する衝撃吸収手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記シート材は、シート状の集電体と、該集電体の送り方向に所定の間隔をあけて被塗工面側に貼り付けられた複数の電池用活物質層とからなり、上記ロール位置可変手段の切換え作動により、上記各電池用活物質層にのみ塗工液を塗布して上記各電池用活物質層を保護膜で被覆するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、塗工状態から非塗工状態に切り替わる際に、一方の押圧ロールがシート材から離れる方向に移動すると、他方の押圧ロールが上記シート材を押し付ける方向に移動するので、上記シート材のテンションが変動せず、シート材は弛まない。一方、非塗工状態から塗工状態に切り替わる際に、他方の押圧ロールがシート材から離れる方向に移動すると、一方の押圧ロールが上記シート材を押し付ける方向に移動するので、この場合においても上記シート材のテンションが変動せず、シート材は弛まない。したがって、シート材は、塗工状態・非塗工状態にかかわらず、一対の押圧ロールによって常に一定のテンションで送られて弛まず、塗工時に上記シート材の塗工領域の始端及び終端における塗工ムラが解消される。また、特許文献1の如きテンション調整ロールを追加する必要がないので、当該テンション調整ロールの分だけ部品点数が減り、シンプルな構造で、且つ、安価な間欠塗工装置にできる。
【0014】
第2の発明では、一対の押圧ロールを1つの揺動部材の揺動動作によってシート材のテンションが変動しないように同時に移動させるので、一対の押圧ロールをそれぞれ独立して制御する場合の複雑な構造を回避でき、これによっても、シンプルで、且つ、安価な間欠塗工装置にできる。また、シート材の各押圧ロールによりテンションが付与される部分周辺はシート材の各押圧ロールから離れた位置に比べて幅方向に波打つ弛みが発生し難く、当該部分周辺に塗工ロールが接触・離間するようになるので、これによっても、塗工時の塗工ムラを減少させることができる。
【0015】
第3の発明では、一方の押圧ロールは、上記シート材を押し付ける方向に移動する際、衝撃吸収手段によってシート材を押し付ける力が減衰するようになる。したがって、上記シート材の被塗工面側と塗工ロールの外周面とが接触する際に上記塗工ロールから上記シート材に加わる衝撃によって発生するシート材の揺れが小さくなり、シート材の塗工時における揺れが起因となって発生する塗工領域の膜厚が不均一になるのを防ぐことができる。
【0016】
第4の発明では、電池用電極板の製作に間欠塗工装置を用いることにより、各電池用活物質層の表面を被覆する保護膜を高速で生成することが可能となり、保護膜で覆われた電池用電極板を安価で、且つ、効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る塗工装置の全体構成を側面から見た概略図を示す。
【図2】図1のシート材送り方向上流側に位置する塗工機構の塗工時の状態を示す拡大図である。
【図3】図1のシート材送り方向上流側に位置する塗工機構の非塗工時の状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る間欠塗工装置1を示す。該間欠塗工装置1は、複数のガイドロールGにガイドされて一方向(図2及び図3のX6方向)に送られるシート材10の被塗工面側に間欠的に塗工を施す装置であり、上記シート材10は、略鉛直方向下向きに送られた後、緩やかに湾曲しながら折り返して略鉛直方向上向きに送られるようになっている。
【0020】
上記シート材10は、具体的には、リチウムイオン二次電池等の電池用負極板に適用されるシート材であり、図2及び図3に示すように、厚み10μm程度の銅箔等からなるシート状の集電体10aと、該集電体10aの送り方向に一定の間隔をあけて貼り付けられた厚み80μm程度の複数の電池用活物質層10bとからなっている。尚、図2及び図3では、便宜上、集電体10a及び電池用活物質層10bの厚みを誇張して記載している。
【0021】
上記シート材10の略鉛直方向下向きに送られる部分(図1の左側)及び略鉛直方向上向きに送られる部分(図1の右側)には、一対の塗工機構2が正面視で点対称に配置されている。
【0022】
ここでは、まず、シート材10の略鉛直方向下向きに送られる部分に配置された塗工機構2について詳細に説明する。
【0023】
尚、図1乃至図3は、本発明の間欠塗工装置1の特徴部分を理解し易くするために、各構成が見え易くなるように描いている。
【0024】
上記塗工機構2は、外周面4aに多数の微細なセル4bを有する塗工ロール4と、上記シート材10の幅方向に延びる略直方体形状の塗工チャンバー5とを備え、上記塗工ロール4及び上記塗工チャンバー5は、上記シート材10の被塗工面側(図2及び図3で左側)に略水平方向に順に並置されている。尚、図2及び図3では便宜上、セル4bを塗工ロール4の一部に誇張して記載している。
【0025】
上記塗工チャンバー5には、塗工液Wを貯溜する液溜部50が設けられ、該液溜部50は上記塗工ロール4側に開口していて、該塗工ロール4は、当該塗工ロール4の外周面4aの一部が上記液溜部50の塗工液Wに浸されるように上記塗工チャンバー5に接近配置されている。
【0026】
また、上記塗工チャンバー5は、上記塗工液Wを上記液溜部50に流入させる流入通路51を液溜部50の背面側下部に、上記塗工液Wを上記液溜部50から流出させる流出通路52を上記液溜部50の背面側上部にそれぞれ備え、図示しない塗工液循環装置により、上記液溜部50に貯溜された塗工液Wを上記流入通路51及び流出通路52を介して循環させている。
【0027】
上記塗工チャンバー5の上部には、板状をなす樹脂製シールプレート53が上記液溜部50の開口上端側周縁から下方に向かって突設され、該シールプレート53先端が上記塗工ロール4の外周面4aに摺接して上記液溜部50のロール回転方向上流側をシールするようになっている。
【0028】
一方、上記塗工チャンバー5の下部には、板状をなすステンレス製ドクターブレード54が液溜部50の開口下端側周縁から上方に向かって突設され、該ドクターブレード54先端が上記塗工ロール4の外周面4aに摺接して上記液溜部50のロール回転方向下流側をシールするとともに、余分な塗工液Wを塗工ロール4の外周面4aから掻き取るようになっている。
【0029】
さらに、上記塗工チャンバー5のロール回転軸方向両端部には、上記塗工ロール4の外周面4aとの間をシールする樹脂製サイドシール(図示せず)が取り付けられ、上記シールプレート53、ドクターブレード54及びサイドシール(図示せず)で上記塗工ロール4の外周面4aと液溜部50の開口との間がシールされ、液溜部50が密閉構造になっている。
【0030】
上記シート材10の反被塗工面側には、上下に延びる略長方形板状の揺動部材7が上記塗工ロール4に対向配置され、上記揺動部材7は、当該揺動部材7の略中央において水平方向に延びる軸部7aにより揺動可能に軸支されている。
【0031】
上記揺動部材7におけるシート材10側の上端寄り及び下端寄りには、それぞれ直径が略同じの第1及び第2押圧ロール6a、6bが上下に間隔をあけて回転自在に軸支され、上記軸部7aは、上記第1及び第2押圧ロール6a、6b間のそれぞれのロール6a、6bから等しい位置においてロール回転中心と平行に延びている。
【0032】
また、上記第1及び第2押圧ロール6a、6bは、上記塗工ロール4のシート材送り方向上流側及び下流側の両側に配置され、上記塗工ロール4が上記第2押圧ロール6bよりも上記第1押圧ロール6aに接近した位置となっていて、上記第1及び第2押圧ロール6a、6bは、上記シート材10の反被塗工面側を押圧することにより、当該シート材10に所定のテンションを付与するようになっている。
【0033】
上記軸部7aには、略長方形板状の第1リンク部材8aの長手方向一端が回転一体に取り付けられ、該第1リンク部材8aの他端が、上記揺動部材7の上下方向略中央から反シート材10側に突出している。
【0034】
上記第1リンク部材8aの長手方向他端側には、略長方形板状の第2リンク部材8bの長手方向一端が回転可能に取り付けられ、該第2リンク部材8bの長手方向他端には、貫通孔8cが形成され、該貫通孔8cには、円板カムCが回転自在に嵌合している。
【0035】
上記円板カムCには、当該円板カムCの中心C1が偏心するようにモータ12の回転軸Zが取り付けられ、上記モータ12の回転に同期して上記円板カムCが上記貫通孔8cの内周面に摺接しながら回転すると、この回転動作に連動して、上記第2リンク部材8bが図2及び図3のX2、X3方向に往復移動を繰り返すとともに、当該第2リンク部材8bの往復移動に連動して上記第1リンク部材8a及び揺動部材7が図2及び図3のX4、X5方向に揺動を繰り返すようになっている。
【0036】
上記揺動部材7における第1押圧ロール6a側で、且つ、反シート材10側には、上記揺動部材7の揺動時に発生する振動を吸収するダンパー(衝撃吸収手段)9の一端が取り付けられ、該ダンパー9の他端は、装置固定側14に支持されている。
【0037】
上記ダンパー9は、上記揺動部材7がX4方向に揺動する場合には、揺動部材7を引っ張る方向に力を加え、上記揺動部材7がX5方向に揺動する場合には、揺動部材7を押し付ける方向に力を加えるようになっている。
【0038】
また、上記モータ12には、当該モータ12を制御する制御部11が接続され、該制御部11は、図示しないが、中央演算処理装置(CPU)や、制御プログラムが格納されたメモリ等を備え、上記モータ12の回転駆動を制御するようになっている。
【0039】
そして、上記揺動部材7、第1及び第2リンク部材8a、8b、ダンパー9、モータ12及び制御部11で本発明のロール位置可変機構(ロール位置可変手段)3が構成され、上記制御部11は、塗工時には、図2に示すように、上記モータ12を回転駆動させて、上記ダンパー9の引張力に抗して上記揺動部材7がX4方向に揺動するように制御して、上記シート材10の被塗工面側が上記塗工ロール4の外周面4aに所定のテンションで接触するように上記第1及び第2押圧ロール6a、6bの位置が設定されるようになっている。
【0040】
一方、上記制御部11は、非塗工時には、図3に示すように、上記モータ12を回転駆動させて、上記ダンパー9の押付力に抗して上記揺動部材7がX5方向に揺動するように制御して、上記第1押圧ロール6aを上記シート材10から離れる方向に移動させ、該シート材10の被塗工面側を上記塗工ロール4の外周面4aから離間させると同時に、当該離間動作により上記シート材10に対するテンションが変動しないように第2押圧ロール6bを上記シート材10に押し付け移動させるようになっている。
【0041】
そして、上記制御部11による上記ロール位置可変機構3の切替え作動により、一方向(図2及び図3のX6方向)に送られるシート材10の被塗工面側に当該シート材10の送り方向とは反対向き(図2及び図3のX1方向)に回転させた塗工ロール4の外周面4aをシート材10の各電池用活物質層10bに接触させる一方、シート材10の各電池用活物質層10bでない部分では離間させることにより、間欠的に塗工液Wを各電池用活物質層10bにのみ塗布するようになっていて、塗布した塗工液Wが乾くと、当該塗工液Wにより上記各電池用活物質層10bを被覆する保護膜Prが厚み2μm程度で形成されるようになっている。
【0042】
尚、図2及び図3では、便宜上、保護膜Prの厚みを誇張して記載している。
【0043】
また、シート材10の略鉛直方向上向きに送られる部分(図1の右側)に配置された塗工機構2は、塗工チャンバー5における流入通路51及び流出通路52の位置がシート材10の略鉛直方向下向きに送られる部分(図1の左側)に配置された塗工機構2と点対称に設けられておらず、流入通路51が塗工チャンバー5における液溜部50の背面側下部に、流出通路52が塗工チャンバー5における液溜部50の背面側上部に設けられている点のみがシート材10の略鉛直方向下向きに送られる部分(図1の左側)に配置された塗工機構2と異なるだけで、その他の機構は同じであるので、以下、詳細な説明は省略する。
【0044】
上記一対の塗工機構2は、図1及び図2に示すように、一方の塗工ロール4と他方の塗工ロール4との間の上記シート材10の長さKがシート材10の被塗工面側に塗工液Wが間欠的に塗工される塗工領域の全長Lと、隣り合う塗工領域の間に形成される非塗工領域の間隔Mとを加算した値(L+M)の偶数倍となるようにそれぞれ配置されていて、上記制御部11は、各塗工ロール4が上記シート材10に対して交互に接触・離間を繰り返すように、且つ、上記シート材10の各電池用活物質層10bを1つ置きに塗布するように上記ロール位置可変機構3の切替え作動を制御するようになっている。
【0045】
尚、図2及び図3で仮想線で示す保護膜Prは、シート材10の送り方向下流側に位置する塗工機構2で塗工されて形成されるものを示している。
【0046】
また、上記一対の塗工機構2下方で上記シート材10の緩やかに湾曲して折り返される部分には、昇降可能なシート長さ調整ロール13がシート材10の反被塗工面側に接触した状態で設けられている。
【0047】
該シート長さ調整ロール13は、上記制御部11に接続され、該制御部11は、上記シート長さ調整ロール13の昇降を制御するようになっていて、上記シート長さ調整ロール13の昇降により、上記一方の塗工ロール4と他方の塗工ロール4との間のシート材10の長さをKからK’にまで変更できるようになっている。
【0048】
このように構成された間欠塗工装置1では、塗工状態から非塗工状態に切り替わる際に、第1押圧ロール6aがシート材10から離れる方向に移動すると、第2押圧ロール6bが上記シート材10を押し付ける方向に移動するので、上記シート材10のテンションは変動せず、シート材10は弛まない。一方、非塗工状態から塗工状態に切り替わる際に、第2押圧ロール6bがシート材10から離れる方向に移動すると、第1押圧ロール6aが上記シート材10を押し付ける方向に移動するので、この場合においても上記シート材10のテンションが変動せず、シート材10は弛まない。したがって、シート材10は、塗工状態・非塗工状態にかかわらず、第1及び第2押圧ロール6a、6bによって常に一定のテンションで送られて弛まず、塗工時に上記シート材10の塗工領域の始端及び終端における塗工ムラが解消される。
【0049】
また、特許文献1の如きテンション調整ロールを追加で設ける必要が無いので、当該テンション調整ロールの分だけ部品点数が減り、シンプルな構造で、且つ、安価な間欠塗工装置1にできる。
【0050】
また、第1及び第2押圧ロール6a、6bを1つの揺動部材7の揺動動作によってシート材10のテンションが変動しないように同時に移動させるので、第1及び第2押圧ロール6a、6bをそれぞれ独立して制御するといった複雑な構造を回避でき、これによっても、シンプルで、且つ、安価な間欠塗工装置1にできる。
【0051】
また、シート材10の第1及び第2押圧ロール6a、6bによりテンションが付与される部分周辺はシート材10の第1及び第2押圧ロール6a、6bから離れた位置に比べて幅方向に波打つ弛みが発生し難く、当該部分に塗工ロール4が接触・離間するようになるので、これによっても、塗工時の塗工ムラを減少させることができる。
【0052】
また、第1押圧ロール6aは、上記シート材10を押し付ける方向に移動する際、ダンパー9によってシート材10を押し付ける力が減衰するようになる。したがって、上記シート材10の被塗工面側と塗工ロール4の外周面4aとが接触する際に上記塗工ロール4から上記シート材10に加わる衝撃によって発生するシート材10の揺れが小さくなり、シート材10の塗工時における揺れが起因となって発生する塗工領域の膜厚が不均一になるのを防ぐことができる。
【0053】
また、電池用電極板の製作に間欠塗工装置1を用いることにより、各電池用活物質層10bの表面を被覆する保護膜Prを高速で生成することが可能となり、保護膜Prで覆われた電池用電極板を安価で、且つ、効率良く生成することができる。
【0054】
また、上記一対の塗工機構2における各塗工ロール4はシート材10における隣り合う電池用活物質層10bを塗工しないので、各塗工ロール4のシート材10への接触・離間の繰り返し周期が長くなり、上記各塗工ロール4のシート材10への接触・離間動作が上記シート材の送り速度に追随できないといった事態が生じず、シート材10の送り速度を落とさずに全ての電池用活物質層10bを適正に塗工でき、生産性を高く維持したまま品質の良い塗工を行うことができる。
【0055】
また、上記一対の塗工機構2は、一方の塗工ロール4がシート材10に接触すると同時に他方の塗工ロール4がシート材10から離間する一方、一方の塗工ロール4がシート材10から離間すると同時に他方の塗工ロール4がシート材10に接触するので、各塗工ロール4のシート材10への接触・離間により一方の塗工ロール4と他方の塗工ロール4との間のシート材10の長さKが変化しない。したがって、塗工時においてシート材10の弛みの発生がなく、当該シート材10の弛みを起因とした塗工ムラの発生を確実に抑えることができる。
【0056】
また、電池用活物質層10bの種類が変わって塗工領域の全長LがL’に変化した場合においても、上記シート長さ調整ロール13を昇降させて一方の塗工ロール4と他方の塗工ロール4との間のシート材10の長さK’を(L’+M)の偶数倍にすることで、上記ロール位置可変機構3の切換え作動のタイミングを変更することなく、各電池用活物質層10bを適正に塗工することができる。
【0057】
尚、本発明の実施形態では、塗工ロール4が第2押圧ロール6bよりも第1押圧ロール6aに接近配置されているが、塗工ロール4が第1押圧ロール6aよりも第2押圧ロール6bに接近配置され、第2押圧ロール6b側で塗工ロール4の外周面4aと上記シート材10との接触・離間がなされるようにしてもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態では、揺動部材7で第1及び第2押圧ロール6a、6bを同時に移動させているが、これに限らず、例えば、第1及び第2押圧ロール6a、6bのそれぞれを独立に移動可能な構造として、シート材10のテンションが一定となるようにそれぞれを移動させてもよい。
【0059】
また、上記揺動部材7の揺動時の振動吸収にダンパー9を用いているがこれに限らず、例えば、コイルばねを用いても良いし、ゴム等の衝撃吸収部材で振動を吸収するようにしても良い。
【0060】
また、本発明の実施形態では、シート材10の長さKが(L+M)の偶数倍となるように上記各塗工ロール4をそれぞれ配置しているが、上記シート材10の長さKが(L+M)の奇数倍となるように上記各塗工ロール4を配置してもよい。この場合、上記制御部11は、各塗工ロール4が上記シート材10に対して同時に接触・離間を繰り返すように、且つ、上記シート材10の各電池用活物質層10bを1つ置きに塗布するように上記ロール位置可変機構3の切替え作動を制御することで、シート材10の長さKを(L+M)の偶数倍とした場合と同様に、生産性を高く維持したまま全ての電池用活物質層10bを品質良く塗工することができる。
【0061】
また、上記シールプレート53は樹脂製のものを使用したが、その他の材質のものでもよく、例えば、ステンレス製やゴム製のものを用いてもよい。また、金属にセラミックコートを施したものを用いてもよい。
【0062】
また、上記ドクターブレード54は、ステンレス製のものを使用したが、その他の材質のものでもよく、例えば、鉄製、樹脂製及びゴム製のものを用いてもよい。また、金属にセラミックコートを施したものを用いてもよい。
【0063】
また、本発明の実施形態では、塗工ロール4の外周面4aに多数の微細なセル4bを設け、該セル4b内の塗工液Wをシート材10に塗布して塗工を行っているが、セル4bが設けられていない外周面4aの塗工ロール4を用いて外周面4aに付着させた塗工液Wをシート材10に塗布して塗工を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、シート材に塗工液を間欠的に塗工する間欠塗工装置に適している。
【符号の説明】
【0065】
1 間欠塗工装置
3 ロール位置可変機構(ロール位置可変手段)
4 塗工ロール
4a 外周面
5 塗工チャンバー
6a 第1押圧ロール
6b 第2押圧ロール
7 揺動部材
7a 軸部
9 ダンパー(衝撃吸収手段)
10 シート材
10a 集電体
10b 電池用活物質層
50 液溜部
W 塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を貯溜する液溜部が設けられた塗工チャンバーと、
外周面の一部が上記液溜部の塗工液に浸されるように上記塗工チャンバーに接近配置され、一方向に送られるシート材の被塗工面側に上記外周面を接触させて塗工液を転写する塗工ロールと、
上記塗工ロールのシート材送り方向上流側及び下流側の両側に配置され、上記シート材の反被塗工面側を押圧して該シート材に所定のテンションを付与する一対の押圧ロールと、
塗工時には、上記シート材の被塗工面側が上記塗工ロールの外周面に所定のテンションで接触するように上記一対の押圧ロールの位置を設定する一方、非塗工時には、上記一対の押圧ロールの一方のロールを上記シート材から離れる方向に移動させて、該シート材の被塗工面側を上記塗工ロールの外周面から離間させると同時に、当該離間動作により上記シート材に対するテンションが変動しないように他方の押圧ロールを上記シート材に押し付け移動させるロール位置可変手段とを備え、
上記ロール位置可変手段の切換え作動により、上記シート材に塗工液を間欠的に塗工するように構成されていることを特徴とする間欠塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の間欠塗工装置において、
上記塗工ロールは、上記一対の押圧ロールの一方のロールに接近配置され、
上記ロール位置可変手段は、上記一対の押圧ロールをそれぞれ回転自在に軸支し、且つ、上記一対の押圧ロール間のそれぞれのロールから等しい位置においてロール回転中心と平行に延びる軸部により揺動する揺動部材を備えていることを特徴とする間欠塗工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の間欠塗工装置において、
上記ロール位置可変手段は、上記揺動部材における上記一対の押圧ロールの一方のロール側に位置し、上記揺動部材の揺動時に発生する振動を吸収する衝撃吸収手段を備えていることを特徴とする間欠塗工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の間欠塗工装置において、
上記シート材は、シート状の集電体と、該集電体の送り方向に所定の間隔をあけて被塗工面側に貼り付けられた複数の電池用活物質層とからなり、
上記ロール位置可変手段の切換え作動により、上記各電池用活物質層にのみ塗工液を塗布して上記各電池用活物質層を保護膜で被覆するように構成されていることを特徴とする間欠塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−727(P2013−727A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137649(P2011−137649)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000237260)富士機械工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】