説明

間隔形成リベット、リベット接合及びその作成方法

【課題】特定の距離離間して保持する。
【解決手段】特定の距離だけ離間した二枚のシートメタル部材間を間隔形成リベットを用いて接合したリベット接合が記載されている。間隔形成リベット2を、フランジ4及び第一の据込み隆起部6’によって一方のシートメタル部材Aに固定し、肩部10及び第二の据込み隆起部12’によって他方のシートメタル部材Bに固定する。二枚のシートメタル部材A、B間を特定の距離に維持するために、間隔形成リベット2の間隔形成部8が第一の据込み隆起部6’と肩部10の間に延在している。また、このタイプのリベット接合を作成する方法及び間隔形成リベット2も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の距離だけ離間した第一及び第二のシートメタル間を間隔形成リベットを用いて接合したリベット接合、この目的のための間隔形成リベット、及びリベット接合の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドリベットナットを用いて二枚のシートメタル部材間を結合することが知られている。ブランドリベットナットは通常中空のシャフトからなり、シャフトは据込み(upset)条部を形成するための中空円筒形据込み部と強化されたねじ部とで構成されている。ねじ部は雌ねじを有し、雌ねじに取付工具の引張り心棒をねじ込むことができ、引張り心棒を引っ張ることにより据込み隆起部が形成される。これにより二枚のシートメタル部材はブラインドリベットナットのフランジ状頭部とその据込み隆起部の間にクランプされる。このようにして二枚のシートメタル部材は互いに直接的に接触する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、二枚のシートメタル部材が特定の距離離間して保持される、二枚のシートメタル部材間のリベット接合、この目的のための間隔形成リベット、及びこのリベット接合を作成するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明及び本発明の有利な実施形態は各請求項に定義される。
【0005】
第一及び第二のシートメタル部材間の本発明により設計されたリベット接合の場合、間隔形成リベットは、フランジと第一の据込み隆起部とによって第一のシートメタル部材に固定され、肩部と第二の据込み隆起部とによって他方のシートメタル部材に固定される。二枚のシートメタル部材間の距離は、二個の据込み隆起部間に設けられた間隔形成リベットの間隔形成部によって決定される。
【0006】
このタイプのリベット接合のため間隔形成リベットはリベットシャフトで構成され、該シャフトは、第一の据込み隆起部を形成するための、関連する外側フランジを備えた第一のスリーブ状据込み部と、第二の据込み隆起部を形成するための、関連する外側肩部を備えた第二のスリーブ状据込み部と、二個の据込み部の間の間隔形成部とを有する。
【0007】
本発明によって設計された間隔形成リベットは容易に製造可能な一体部品であるため、特定の距離を維持しながら二枚のシートメタル部材間の信頼性のある頑丈な結合が可能である。
【0008】
本発明によって設計されたリベット接合は迅速且つ簡単に作成できる。これには二通りの方法がある。
【0009】
一方法においては、フランジが第一のシートメタル部材に当たるまで間隔形成リベットを二枚のシートメタル部材に挿入した後、(好ましくは連続作業プロセスにおいて)二枚のシートメタル部材の相対的軸方向移動により二個の据込み部を折り重ねて据込み隆起部を形成する。
【0010】
他方の方法においては、
・フランジが第一のシートメタル部材に当たるまで間隔形成リベットを第一のシートメタル部材に挿入する工程と、
・間隔形成リベットを第一のシートメタル部材に固定するために間隔形成リベットの第一の据込み部を折り重ねて第一の据込み隆起部を形成する工程と、
・肩部が第二のシートメタル部材に当たるまで間隔形成リベットを第二のシートメタル部材に挿入する工程と、
・間隔形成リベットを第二のシートメタル部品に固定するために間隔形成リベットの第二の据込み部を折り重ねて第二の据込み隆起部を形成する工程とが連続的に行われる。
【0011】
後者の方法の場合、最初の二作業工程は供給者が行うことができ、次に供給者は間隔形成リベットが固定された第一のシートメタル部材を顧客に輸送する。次に、顧客は残りの作業工程を実施し、これにより二枚のシートメタル部材間の結合が確立される。これに伴い、顧客が行う作業の手間が低減される。
【0012】
本発明の他の有利な実施形態及び更なる展開は各請求項から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照しながら本発明の例示的実施形態をより詳細に説明する。
【0014】
図1は、シェル構造の制御アームの二個のシェルに関する二枚のシートメタル部材A及びBを示す。この二枚のシートメタル部材A及びBは、間隔形成リベット2により互いに恒久的に接合されているが、二枚のシートメタル部材の間には特定の距離が維持されている必要がある。
【0015】
図1に変形していない状態の間隔形成リベット2を示す。間隔形成リベット2はリベットシャフトから成り、このリベットシャフトは、外側フランジ4と、中空円筒形据込み部6と、間隔形成部分8と、中空円筒形据込み部12とを備える。リベットシャフトの外周には、間隔形成部8と据込み部12との間に位置する周状外側肩部10が設けられている。
【0016】
従来のブラインドリベットナットと同様、フランジ4は平坦な頭部として設計されているが、別の形状、例えば皿穴用頭部としても設計できる。
【0017】
据込み部分6及び12から据込み隆起部6’及び12’(図2)が形成される。これについては後でより詳細に説明する。図示の例示的実施形態においては、据込み部6の壁強度は据込み部12よりも大きく、据込み部12は据込み部6よりも変形し易い。
【0018】
図示の実施形態では間隔形成部8は中実で閉じている。これに代えて中空とすることもできる。しかしながら、いずれの場合においても、間隔形成部8は、据込み隆起部6’及び12’の折り重ね形成中に変形しないように据込み部6及び12よりも強化して設計しなければならない。
【0019】
図示の実施形態においては、間隔形成リベット2は外周全体が円形に設計されている。しかしながら、特定の領域、例えば間隔形成部8の領域においてのみ外周を円形にすることもできる。これに代えて、少なくとも部分的に、リベットシャフトの外周を非円形、例えば多角形(四角形や六角形)、楕円等に設計することもできる。
【0020】
先に述べたように、間隔形成リベット2の第一の機能は部材AとBの間の距離を維持することである。更に、付加的な機能を実施するための機能的特徴を有するように間隔形成リベット2を設計できる。即ち、例えば、壁面が滑らかな穴或いは雌ねじを備えた穴を間隔形成リベット2に設けることができる。また、ねじ山を備えた或いは備えていないボルトとして間隔形成リベットを設計できる。また、迅速結合機構(quick-connect mechanism)として間隔形成リベットを設計できる。
【0021】
別の機能を実施するための雌ねじをパンチングリベット2に設けることができる場合であっても、据込み隆起部6’及び12’を形成するのに雌ねじは必要ない。従って、図示の実施形態においてはパンチングリベット12の内側は滑らかになっている。
【0022】
一体部品のパンチングリベット2は、据込み隆起部6’及び12’を形成できる鍛造可能な材料で作成されている。ブラインドリベットナットに使用されている鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、真鍮等の材料を使用できる。
【0023】
一般に、図2に示すリベット接合を作成するには二通りの方法がある。
【0024】
一方法では、二枚のシートメタル部材AとBの位置合わせ孔14及び16に間隔形成リベット2を一方の側から挿入し、フランジ4をシートメタル部材Aに当てると共に肩部10をシートメタル部材Bに当てる(図1)。次に、工具(図示せず)を用いて間隔形成リベット2を軸方向に押圧する。この目的のため、押圧装置は例えば二個の押圧体を有し、その一方は間隔形成リベット2のフランジ4に取り付け、他方を間隔形成リベット2の据込み部12に取り付ける。次に、押圧装置の二個の押圧体を互いに近づく方向に軸方向に移動させることにより、まず据込み部12が折り重ねられて据込み隆起部12’となり、次に据込み部6が折り重ねられて据込み隆起部6’となる。この座掘工程中、対応してシートメタル部材AとBの間の相対的軸方向移動が起こり、シートメタル部材AとBの間の距離が対応する量だけ変化して図1に示す状態から図2に示す状態へと変わる。例えば、二枚のシートメタル部材A〜B間距離が約15mm(図1)から約13mm(図2)に減少する。
【0025】
据込み隆起部6’及び12’形成後、シートメタル部材Aはフランジ4と据込み隆起部6’の間にクランプされ、シートメタル部材Bは肩部10と据込み隆起部12’の間にクランプされる。間隔形成部8により、部材A〜B間を所望の相互距離だけ離間させた頑丈で確実な結合が保証される。
【0026】
他方の方法では、間隔形成リベット2をまずシートメタル部材Aのみと結合する。この目的のため、間隔形成リベット2をシートメタル部材Aの孔14に挿入しフランジ4をシートメタル部材Aに当てる。次に、据込み部6を折り重ねて据込み部6’とすることにより、間隔形成リベット2をシートメタル部材Aに恒久的に結合する。シートメタル部材Aと間隔形成リベット2とは単一の構造体として扱うことができるため、供給者は構造体をこのままの状態で顧客に届けることができる。
【0027】
次に、顧客は、シートメタル部材AとBの間のリベット接合を完成させるための残りの作業工程を行う。この目的のため、間隔形成リベット2の据込み部12をシートメタル部材Aの孔16に挿入しシートメタル部材Bを肩部10に当てる。次に、据込み部12を変形させて据込み隆起部12’とすることにより、シートメタル部材Bを肩部10と据込み隆起部12の間にクランプする。このようにしてシートメタル部材AとBの間のリベット接合が完成する。よって、この組立方法はリベット接合を作成するための顧客の手間を大幅に低減するものである。
【0028】
図1及び2に図示の例示的実施形態においては、部材A及びBの孔14、16は事前形成されている。しかしながら、一般に、フランジ4から遠い側の間隔形成リベット2の端部に切れ刃を設けることもできる。この切れ刃を用いて、リベット2の取付け中に対応する打抜き手続きにより部材Bの孔16を打抜くことができる。これにより、事前形成孔の位置合わせにおける公差の問題が回避される。
【0029】
リベット接合を作成する第一の方法の場合に二個の据込み隆起部6’と12’とが同時に形成されるように据込み部6及び12の壁強度を等しく設計することもできる。
【0030】
図3に示す例示的実施形態の場合、間隔形成リベット2と部材A、Bの間のリベット接合は図2と同じである。唯一異なる点は、間隔形成リベット2の間隔形成部8がブッシュ状要素18によって取り囲まれていることである。ブッシュ状要素18は別の機能を実施するためのもの、例えばデフレクションローラ、ギアホイール、レバーアーム等である。また、ベアリングスリーブ(図示せず)を間隔形成リベット2の間隔形成部8とブッシュ状要素18の間に設けることもできる。このベアリングスリーブは、リベット接合作成時に効果的に「リベット固定(riveted in)」される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】接合作成前の二枚のシートメタル部材と間隔形成リベットの部分断面図である。
【図2】接合作成後の図1と同様の図である。
【図3】ブッシュ状要素に取り囲まれている間隔形成リベットの図2と同様の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の距離だけ離間した第一及び第二のシートメタル部材(A、B)間をリベットシャフト形態の間隔形成リベット(2)を用いて接合したリベット接合であって、第一のシートメタル部材(A)に固定するためのフランジ(4)及び第一の据込み隆起部(6’)と、第二のシートメタル部材(B)に固定するための第二の据込み隆起部(12’)及び肩部(10)と、据込み隆起部(6’、12’)間の間隔形成部(8)とを有するリベット接合。
【請求項2】
フランジ(4)は間隔形成リベット(2)の一方の軸方向端部に設けられ、第二の据込み隆起部(12’)は間隔形成リベット(2)の他方の軸方向端部に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のリベット接合。
【請求項3】
間隔形成リベット(2)は二個の据込み隆起部(6’、12’)の領域においては中空として設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のリベット接合。
【請求項4】
間隔形成リベット(2)のリベットシャフトは、第一の据込み隆起部(6’)の領域において、第二の据込み隆起部(12’)の領域とは異なる壁強度を有することを特徴とする、請求項3に記載のリベット接合。
【請求項5】
間隔形成リベット(2)の間隔形成部(8)は、二個の据込み隆起部(6’、12’)よりも強化されて設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のリベット接合。
【請求項6】
間隔形成リベット(2)の間隔形成部(8)は、間隔形成リベットの長手方向軸の回りを枢動できるブッシュ状要素(18)により取り囲まれていることを特徴とする、請求項1に記載のリベット接合。
【請求項7】
間隔形成リベット(2)の間隔形成部(8)とブッシュ状要素(18)の間にベアリングスリーブが配置されていることを特徴とする、請求項6に記載のリベット接合。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のリベット接合のための間隔形成リベットであって、害リベットはリベットシャフトからなり、該シャフトは、第一の据込み隆起部(6’)を形成するための、関連する外側フランジ(4)を備えたスリーブ状の第一の据込み部(6)と、第二の据込み隆起部(12’)を形成するための、関連する外側肩部(10)を備えたスリーブ状の第二の据込み部(12)と、二個の据込み部(6、12)の間の間隔形成部(8)とを有する間隔形成リベット。
【請求項9】
フランジ(4)は間隔形成リベット(2)の一方の軸方向端部に設けられ、第二の据込み部(12)は間隔形成リベット(2)の他方の軸方向端部に設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項10】
第一の据込み部(6)は第二の据込み部(12)とは異なる壁強度を有することを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項11】
間隔形成部(8)は二個の据込み部(6、12)より強化されて設計されていることを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項12】
間隔形成部(8)は中実で閉じていることを特徴とする、請求項11に記載の間隔形成リベット。
【請求項13】
間隔形成部は中空であることを特徴とする、請求項11に記載の間隔形成リベット。
【請求項14】
リベットシャフトは内部にねじ山のない設計となっていることを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項15】
別の機能を実施するための機能的特性を有することを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項16】
リベットシャフトの外縁は少なくとも部分的に円形で設計されていることを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項17】
リベットシャフトの外縁は少なくとも部分的に非円形で設計されていることを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項18】
リベットシャフトは、第二の部材(B)に孔(16)を打抜くためのカッティングエッジをフランジ(4)から遠い側の端部に有することを特徴とする、請求項8に記載の間隔形成リベット。
【請求項19】
請求項8〜18のうちの一項に記載の間隔形成リベットを用いて請求項1〜7のいずれかに記載のリベット接合を作成するための方法であって、
フランジ(4)が第一のシートメタル部材(A)に当たると共に肩部(10)が第二のシートメタル部材(B)に当たるまで間隔形成リベット(2)を二枚のシートメタル部材(A、B)に挿入する工程と、
その後、間隔形成リベット(2)の二個の据込み部(6、12)を折り重ねて二個の据込み隆起部(6’、12’)を形成する工程とを有する方法。
【請求項20】
二個の据込み部(6、12)を連続作業プロセスにおいて折り重ねて二個の据込み隆起部(6’、12’)を形成することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
二枚のシートメタル部材(A、B)の相対的軸方向移動によって第一の据込み部(6)を折り重ねて第一の据込み隆起部(6’)を形成することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項8〜18のうちの一項に記載の間隔形成リベットを用いて請求項1〜7のいずれかに記載のリベット接合を作成するための方法であって、
フランジ(4)が第一のシートメタル部材(A)に当たるまで間隔形成リベット(2)を第一のシートメタル部材(A)に挿入する工程と、
間隔形成リベットを第一のシートメタル部材(A)に固定するために間隔形成リベット(2)の第一の据込み部(6)を折り重ねて第一の据込み隆起部を形成する工程と、
肩部(10)が第二のシートメタル部材(B)に当たるまで間隔形成リベット(2)を第二のシートメタル部材(B)に挿入する工程と、
間隔形成リベット(2)を第二のシートメタル部材(B)に固定するために間隔形成リベット(2)の第二の据込み部(12)を折り重ねて第二の据込み隆起部(12’)を形成する工程とを連続的に実施する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−327640(P2007−327640A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−124484(P2007−124484)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(505156341)ボルホフ・フェルビンダンクシュテヒニーク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテン・ハフツング (19)
【Fターム(参考)】