説明

関節リウマチの診断方法

【課題】関節リウマチの診断方法を提供すること。
【解決手段】哺乳動物から採取した関節滑液、血液及び脳脊髄液等の試料中に存在するジペプチジルペプチダーゼ活性を測定することを特徴とする。ペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光合成基質及びアミノペプチダーゼ阻害剤であるベスタチンに、ペプチジルペプチダーゼ阻害剤であるタイノルフィンの存在あるいは非存在下において、試料を反応させ、反応後の反応液の蛍光強度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの診断方法に関する。より詳しくは、本発明は、被験者の試料中の発現タンパク質であるジペプチジルペプチダーゼやスパイノルフィンを解析することにより関節リウマチを診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(以下、RAと略記する。)は慢性的な多関節の滑膜性炎症及び軟骨と骨組織の進行性破壊を特徴とする疾患である。軟骨組織のプロテオグリカンとコラーゲンを分解する多数のタンパク質分解酵素(例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、カテプシン、ペプチダーゼ等)の濃度上昇がそのような組織において見られることが知られている(非特許文献1、2参照)。さらに、インターロイキン−1β(IL−1β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、種々のサトカイン及び酵素阻害因子もまたRAの病因に重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献3,4参照)。これらのタンパク質は膝、関節部と複雑に関与しながら、慢性的炎症から関節の破壊に至るまで病状を憎悪化する。RA患者の薬物治療には、非ステロイド系の抗炎症剤(NSAID)、抗リウマチ薬剤(DMARD)及び生物学的薬剤(抗TNFレセプター及びIL−1拮抗剤)等が用いられている(非特許文献5−7参照)。しかしながら、懸命の治療にもかかわらず、多くのRA患者の病状は回復せず痛みを感じ続け、骨破壊を受け続ける。RAの痛みは、慢性的且つ侵害性であると考えられており、末梢部位(膝や関節)にある種々の侵害受容器を刺激し、脊髄を通じて大脳へと変換され知覚されるシグナルである。
【0003】
RAは上記したように重篤にいたる疾患でありながら、現在のRAの診断方法は、アメリカリウマチ学会(ACR)の「ACR改訂診断基準」に基づくものである。該診断基準は、1)1時間以上続く朝のこわばり(主に手指);2)3箇所以上の関節腫れ;3)手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節間接)の腫れ;4)対称性の関節(左右同じ関節)の腫れ;5)手のエックス線写真の異常所見;6)皮下結節、及び7)血液検査でリウマチ反応が陽性、である。このうち、4項目以上満たせばRAと診断される。前記血液検査は、血清中のリウマチ因子(RF)が主として測定される。RFは、RA患者の血清中に高頻度で出現するIgGのFc部分に対する自己抗体である。健常人のRFはIgG以外の種々のタンパクにも反応するpolyactiveな抗体であるが、RA患者由来のRFはpolyactiveなもの以外にIgGFcのみに反応するmonoactiveなものが存在する。このmonoactiveなRFは、polyactiveなものに比べ、IgGFcに対する反応が約100倍高い。このため、該RFをRA患者の判定の指標として測定するものである。しかし、RA患者でも常にRFが検出されない血清反応陰性RAも存在し、また健常人でも陽性反応(2%程度)を呈しうることが知られている。
このため、RA患者の尿を、液体クロマトグラフィーを用いてRA特有成分のクロマトピークの存在を以ってRAであると判定する方法(特許文献1参照)、糖タンパク質から糖鎖を切り出し、該糖鎖を標識した後精製して糖鎖分析用試料を調整し、調製した試料をODS−シリカカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで分析し、試料の糖鎖組成を求めることにより、糖鎖組成変化に基づきRAを診断する方法(特許文献2参照)等が提案されている。
しかし、これらの方法も健常人と比べて高いピークが認められるというものであったり、分析用試料の調製が煩雑であったりで、満足すべきものではなかった。
【特許文献1】特開平7−72133号公報
【特許文献2】特開平8−228795号公報
【非特許文献1】ランデュー・アール(Landewe R)他7名、アースリティス・アンド・リューマチズム(Arthritis Rheum)、2004年、第50巻、p.1390−1399
【非特許文献2】チェトベリコフ・アイ(Tchetverikov I)他7名、アナルズ・オブ・ザ・リウマチック・ディズィーズ(An Rheum Dis)、2003年、第62巻、p.1094−1099
【非特許文献3】クロス・エー(Cross A)他3名、アースリティス・アンド・リューマチズム(Arthritis Rheum)、2004年、第50巻、p.1430−1436
【非特許文献4】リープ・ティー(Raap T)他5名、ザ・ジャーナル・オブ・リウマトロジー(J Rheumatol)、2000年、第27巻、p.2558−2565
【非特許文献5】クリミーク・ピー・エー(Klimiuk PA)他3名、ザ・ジャーナル・オブ・リウマトロジー(J Rheumatol)、2004年、第31巻、p.238−242
【非特許文献6】ドーガドス・エム(Dougados M)他6名、ザ・ジャーナル・オブ・リウマトロジー(J Rheumatol)、2003年、第30巻、p.2572−2579
【非特許文献7】デー・エー(De A)他7名、ザ・ジャーナル・オブ・リウマトロジー(J Rheumatol)、2002年、第29巻、p.46−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、RAの診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
RAの痛みは、慢性的且つ侵害性であると考えられており、末梢部位(膝や関節)にある種々の侵害受容器を刺激し、脊髄を通じて大脳へと変換され知覚されるシグナルである。
抗炎症性及び抗侵害性の活性化の役割を果たす、ウシ脊髄由来の内因性ペプチドであるスパイノルフィン(LVVYPWT;配列表:配列番号1)と呼ばれる神経ペプチドが単離された。スパイノルフィンは動物モデルでブラジキニン(BK)誘発侵害受容性疼痛反応を抑制すること、また、スパイノルフィンは多形核好中球(PMNs)の種々の機能、例えばケモタキシス(走化性)、O生成やエクソサイトーシス等を抑制することが知られている。
【0006】
本発明者らは、炎症と痛みのコントロールにおけるスパイノルフィンが果たす役割を解明するために、慢性的痛みと炎症症状を有するRA患者の脳脊髄液(CSF)中のスパイノルフィンと代謝酵素の活性の変化に焦点を当て種々研究を重ねたところ、RA患者ではCSF中のスパイノルフィン量、スパイノルフィンプロセシング酵素、ジペプチジルペプチダーゼの活性化に変化が見られることを知見した。
更に本発明者らは、ジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィンの炎症と侵害受容性疼痛反応メカニズムにおける役割を調べるために、RA患者と変形性関節炎(以下、OAと略記する。)患者の関節から採取した滑液を用いジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン量を比較した。その結果、RA患者では、ジペプチジルペプチダーゼ活性が増加し、かつスパイノルフィン量が減少すること、及びジペプチジルペプチダーゼ活性の増加とスパイノルフィン量の減少に相関関係を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕 哺乳動物から採取した試料のジペプチジルペプチダーゼ活性を測定することを特徴とする関節リウマチの診断方法、
[2] 試料が関節滑液、血液及び脳脊髄液から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]に記載の診断方法、
[3] さらに哺乳動物から採取した試料中に存在するスパイノルフィンの量を測定することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の診断方法、
[4] 測定された試料中のスパイノルフィン濃度5ng/mL以下が、関節リウマチ疾患推定スパイノルフィン量であることを特徴とする前記[3]に記載の診断方法、
[5] ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質及びアミノペプチダーゼ阻害剤に、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤の存在あるいは非存在下において、試料を反応させ、反応後の反応液の蛍光強度を測定することを特徴とする、前記[1]に記載の診断のためのジペプチジルペプチダーゼ活性の測定方法、
[6] 蛍光基質がArg−Arg基を有する蛍光合成基質であることを特徴とする前記[5]に記載の測定方法、
[7] 蛍光合成基質がArg−Arg−4−メチルクマリル−7−アミドであることを特徴とする前記[6]に記載の測定方法、
[8] 反応によって生成した7−アミノ−4−メチルクマリンの蛍光強度を測定することを特徴とする前記[7]に記載の測定方法、
[9] アミノペプチダーゼ阻害剤が、ベスタチンであることを特徴とする前記[5]〜[8]のいずれかに記載の測定方法、
[10] ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤がタイノルフィンであることを特徴とする前記[5]〜[9]いずれかに記載の測定方法、
[11] ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質、アミノペプチダーゼ阻害剤及びジペプチジルペプチダーゼ阻害剤を含む関節リウマチ診断キット、
[12] 蛍光基質が、Arg−Arg基を有する蛍光合成基質であることを特徴とする前記[11]に記載のキット、及び
[13] 合成基質がArg−Arg−4−メチルクマリル−7−アミドであることを特徴とする前記[12]に記載のキット、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、RA患者では、試料、特に関節から採取された滑液中のジペプチジルペプチダーゼ活性がOA患者のそれと比較して特異的に高い。このことは、試料中のジペプチジルペプチダーゼ活性がRA診断の指標となり得ることを示すものである。従って、試料中のジペプチジルペプチダーゼ活性を測定し、RAの診断推定を行なうことは、RAの新しい診断方法として使用できる。
また、RA患者では、試料、特に関節から採取された滑液中のスパイノルフィン量が5ng/mLと低値である。このことは、試料中のスパイノルフィン量がRA診断の指標となり得ることを示すものである。
従って、上記ジペプチジルペプチダーゼ活性の測定に加え、スパイノルフィン量を測定することにより、RAの診断推定を行なうことは、RA診断の精度を高めることができ、RAの新しい診断方法として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明のRAの診断方法について説明する。
本発明において使用することのできる試料としては、哺乳動物であれば特に制限はなく、例えばヒト、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ネコ、ウサギ、モルモット等の脳脊髄液、関節滑液、血液、血漿、血清、唾液又は尿等の生体試料並びに動物における各種の臓器や組織等を挙げることができるが、関節滑液、血液又は脳脊髄液が好ましい。
【0010】
試料におけるジペプチジルペプチダーゼ活性の測定は、ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質及びアミノペプチダーゼ阻害剤を含む反応液に、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤の存在あるいは非存在下において試料を反応させ、反応後の反応液の蛍光強度を測定することにより行なうことができる。
【0011】
まず、反応液を作製する。ジペプチジルペプチダーゼ活性の好適なpH、好ましくはpH約7〜9の緩衝液に、蛍光基質とアミノペプチダーゼ阻害剤を加えることによって作製される反応液と、前記緩衝液と蛍光基質とアミノペプチダーゼ阻害剤以外にさらにジペプチジルペプチダーゼ阻害剤を加えた反応液とを作製する。
【0012】
前記緩衝液としては、例えばトリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液等が挙げられる。
【0013】
蛍光基質としては、Arg−Arg基を有する合成基質、例えばArg−Arg−MCA、Boc−Gly−Arg−Arg−MCA、Suc−Ala−Ala−Phe−AMC等が挙げられる。なお、前記MCAは4−メチルクマリル−7−アミドを、Bocはt−ブトキシカルボニル基を、Sucはサクシニル基を、AMCは7−アミノ−4−メチルクマリンを示す。以下、MCA、Boc、AMCにおいて同義である。
【0014】
蛍光基質の量は、試料中のジペプチジルペプチダーゼと反応するのに充分な量を加えることが好ましく、通常約0.2〜5μM程度が好ましい。
【0015】
アミノペプチダーゼ阻害剤としては、ベスタチン、ロイヒスチン等を好ましく挙げることができる。アミノペプチダーゼ阻害剤を加えるのは、上記基質にアミノペプチダーゼが作用するのを阻害し、ジペプチジルペプチダーゼと基質との基質特異性を高めるためである。これにより、試料中のアミノペプチダーゼの酵素活性を失活し得る。従って、アミノペプチダーゼ阻害剤の量は、試料中のアミノペプチダーゼ活性を抑制するのに充分な量を加えることが好ましく、通常約50〜250μg/mL程度が好ましい。
【0016】
なお、前記蛍光合成基質は、アミノペプチダーゼ阻害剤と共に、約30〜40℃、好ましくは約37℃付近で、約1〜30分間プレインキュベートするのが好ましい。
【0017】
ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としては、使用するジペプチジルペプチダーゼを特異的に阻害するものを選択するのが好ましく、例えばタイノルフィン等が挙げられる。ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤は、試料中のジペプチジルペプチダーゼ活性を抑制するのに充分な量を加えることが好ましく、通常約50〜200μg/mL程度が好ましい。
【0018】
試料と上記反応液との反応は、約20〜40℃、好ましくは、約37℃付近で、通常約10〜60分、好ましくは約20〜40分間インキュベートするのが好ましい。該インキュベートにより、前記蛍光基質は、酵素(ジペプチジルペプチダーゼ)によって、例えば蛍光基質としてArg−Arg−MCAを用いた場合、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)を反応液中に遊離させる。この反応は以下;
Arg−Arg−MCA →Arg−Arg + AMC
によって示すことができる。
次いで、上記反応液に反応停止液、例えば酢酸、酢酸ナトリウム等を加え反応を停止するのが好ましい。
反応停止後、遊離された反応生成物の蛍光強度を測定する。蛍光強度の測定波長は反応生成物により異なり、例えば反応生成物が上記AMCの場合、励起波長:360nm、蛍光波長:440nmにて測定され得る。
【0019】
そして、試料中のジペプチジルペプチダーゼ活性は、以下の式;
活性=(ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤非存在での基質分解活性)−(ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤存在下での基質分解活性)
で説明される。
活性は、試料中に含まれる総タンパク質の量からタンパク質1mg当たりの活性、すなわちpmol/インキュベーション時間(分)/mgタンパクの単位で表すことができる。
試料中の総タンパク質の量は、公知のタンパク質測定法、例えばブラッドフォード法(Rockford USA,Pierce社)等により測定できる。
上記基質分解活性は、AMCの濃度と蛍光値の関係より、標準曲線を描き、その標準曲線より算出することで、試料中のタンパク質1mgに対する値に換算できる。
【0020】
上記方法に基づく測定により得られるジペプチジルペプチダーゼ活性は、その測定条件(反応温度、反応時間等)などにより異なるが、得られる該活性値を基にRAの診断をし得る。例えば被験者の関節から採取した滑液を試料として、例えば30μg/mLのベスタチンを含有する50mMトリス塩酸(pH7.4)1mLからなる反応混合物中で、滑液(100μL)を1μMのArg−Arg−MCAと共に、タイノルフィンの存在又は非存在下で、37度で30分インキュベーションし、インキュベーション後の溶液の蛍光(励起波長:360nm,蛍光波長:440nm)を測定し、ジペプチジルペプチダーゼ活性が、約20pmol/30min/mgタンパク質以上、好ましくは約30〜200pmol/30min/mgタンパク質の場合にRAと診断推定し得る。
【0021】
上記ジペプチジルペプチダーゼ活性の測定により、測定され得るジペプチジルペプチダーゼとしては、例えばエンケファリン分解酵素のジペプチジルペプチダーゼIII(DPPIII)、リソソームシステインプロテアーゼのジペプチジルペプチダーゼI(DPPI)、ジペプチジルペプチダーゼII(DPPII)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)等が挙げられるが、これらに限定されない。ジペプチジルペプチダーゼがいずれであるにしても、上記方法により、測定されるジペプチジルペプチダーゼ活性が高ければ、RAと診断推定し得る。
【0022】
また、本発明は上記ジペプチジルペプチダーゼ活性の測定に加え、さらに試料中に存在するスパイノルフィン量を測定することによるRAの診断方法も提供する。
【0023】
試料中に存在するスパイノルフィン量の測定は、次の(A)〜(E)工程を含む;
(A)生体から採取した試料をトリクロロ酢酸と混合して得られる溶液相を逆相カラムクロマトグラフィーに付し、溶媒でスパイノルフィンを溶出する工程;
(B)前記(A)工程で溶出したスパイノルフィンを、担体に固相化したスパイノルフィン及びスパイノルフィン抗体と接触させる工程;
(C)担体に固相化されたスパイノルフィンと結合しなかったスパイノルフィン抗体を除去する工程;
(D)上記(C)工程の担体に固相化されたスパイノルフィンと結合したスパイノルフィン抗体に、特異的に結合する標識二次抗体を接触させ、担体に固相化したスパイノルフィンに結合したスパイノルフィン抗体と標識二次抗体とを結合する工程;及び
(E)スパイノルフィン抗体と結合している標識二次抗体の標識量を測定する工程。
【0024】
上記(A)工程は、生体から採取した試料をトリクロロ酢酸と混合して得られる溶液相を逆相カラムクロマトグラフィーに付し、溶媒でスパイノルフィンを溶出する。
トリクロロ酢酸の濃度は、測定する生体試料によっても異なるが、約5〜20質量%トリクロロ酢酸水溶液として用いるのが好ましい。トリクロロ酢酸の量は生体試料中のタンパク質を沈殿させるに充分な量がよく、生体試料溶液の1容積に対し、前記トリクロロ酢酸水溶液を約0.5〜2容積比加えるのが好ましい。溶液相の分離手段はろ過、遠心分離等公知の方法を用い得る。
【0025】
上記逆相カラムクロマトグラフィーのカラムとしては、例えばODSカラム等が好ましく挙げられる。ODSカラムクロマトグラフィーとは、シリカゲル担体にオクタデシルシリル基(ODS基,C18基)を化学結合した充填剤が詰められているカラムである。ODSカラムとしては、例えばODS−A 60−60/30(YMC社製)、Inertsil ODS(ジーエルサイエンス株式会社製)、L−column ODS (財団法人化学物質評価研究機構製)、Develosil ODS UG−5(野村化学株式会社製)、CAPCELL PAK C18 MGII(株式会社資生堂製)、ZORBAX XDB−C18(横河アナリティカルシステムズ株式会社製)、Symmetry C18(ウォーターズ社製)、Nucleosil C18(M.ナーゲル社製)等を挙げることができる。
【0026】
上記スパイノルフィンの溶出に用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜5のアルコールもしくはアセトニトリル、又はこれらの2種以上を混合した溶媒等或いは前記溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。
【0027】
次いで、(B)工程において、前記(A)工程で溶出したスパイノルフィンを、担体に固相化したスパイノルフィン及びスパイノルフィン抗体と接触させる。
ここで、スパイノルフィンを固相化する担体としては、マイクロタイタープレートや試験管、ポリマービーズ等が挙げられるが、スパイノルフィンがオリゴペプチドであることから、前記担体表面にアミノ基、カルボキシル基等の活性な官能基を持たせたものや疎水性ポリマーのコートスライド〔例えばImmuno Plate,MaxiSorp(Nalge Nunc International製)〕等を施したものが好ましい。担体へのスパイノルフィンの固相化は、前記担体の表面とスパイノルフィンを共有結合で結合させることが好ましい。前記結合はスパイノルフィンを緩衝液、例えばリン酸緩衝液又はトリス塩酸生理食塩水等に溶解し、前記担体と接触させ、少なくとも約30分以上、好ましくは約30〜120分、温度約0〜50℃、好ましくは室温で、インキュベートするのが好ましい。スパイノルフィンを固相化した担体はブロッキング剤でブロッキングされることが好ましい。ブロッキング剤としては、例えばスキムミルク、Block AceTM等が挙げられる。
なお、スパイノルフィンは、公知の方法、例えば特開2000−95794号公報記載の方法により製造することができる。
【0028】
本発明で使用するスパイノルフィン抗体としては、スパイノルフィンに特異的に結合する抗体であれば、いずれの抗体も好ましく用いることができる。スパイノルフィン抗体は、スパイノルフィンを抗原として用いて、動物、例えばウサギ、ラット等を感作し、常法により分離・精製して容易に作製することができる。なお、スパイノルフィンは7アミノ酸から構成されるペプチドであり、通常、免疫原性を示すには短すぎるので、キャリアタンパク質を用いて免疫原性を増強させるためコンジュゲーションを行うのが好ましい。コンジュゲーションのためのキャリアタンパク質としては、例えばKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、ウシ血清アルブミン又はオバルブミン等が挙げられる。コンジュゲーションの方法としては、例えばスパイノルフィンのC末端のカルボキシル基をカルボジイミド(例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等)により活性化しキャリアプロテインの一級アミンと反応させるEDC法、又はMBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)型架橋剤を用い蛋白のアミノ基とペプチド(スアピノルフィン)のSH基を結合するMBS法等が挙げられる。
上記により作製された抗体としては、ポリクロナール抗体或いはモノクロナール抗体のいずれも使用することができる。
【0029】
上記で得られるスパイノルフィン抗体は、スパイノルフィンに特異的であることが好ましく、スパイノルフィン類似化合物、例えばVVYPWT(配列表:配列番号2),VYPWT(配列表:配列番号3),ヘモルフィン−4(YPWT;配列表:配列番号4),PWT,LVVYPW(配列表:配列番号5),タイノルフィン(VVYPW;配列表:配列番号6),VYPW(配列表:配列番号7),YPW,LVVYP(配列表:配列番号8),VVYP(配列表:配列番号9)及びVYP等と交叉反応を行なわないことが好ましい。
【0030】
(B)工程について、前記(A)工程で溶出したスパイノルフィンの、担体に固相化したスパイノルフィン及びスパイノルフィン抗体との接触は、上記スパイノルフィンウサギ抗体及び前記(A)工程で溶出したスパイノルフィンを緩衝液(例えばトリス緩衝液生理食塩、リン酸緩衝液等)に溶解又は必要により希釈した溶液を、スパイノルフィンが固相化された担体に接触させることにより行なうのが好ましい。該接触は、通常約0〜室温で、静置又はゆっくり揺らしながら約30分〜2時間、好ましくは約30分〜1時間程度行なわれるのが好ましい。前記反応の期間に、担体に固相化されたスパイノルフィンと前記(A)工程で溶出したスパイノルフィンがスパイノルフィン抗体と競合し、担体に固相化されたスパイノルフィンとスパイノルフィン抗体が結合し得る。
【0031】
次いで(C)工程において、担体に固相化されたスパイノルフィンと結合しなかったスパイノルフィン抗体を除去する。
上記の除去は、例えば担体を傾け担体と接触している溶液を捨てるか、ピペットで吸引除去するのが好ましい。担体は、さらに、上記緩衝液等で、少なくとも3回、好ましくは約3〜6回程度洗浄するのが好ましい。
【0032】
次いで、(D)工程では、上記(C)工程の担体に固相化されたスパイノルフィンと結合したスパイノルフィン抗体に、特異的に結合する標識二次抗体を接触させ、担体に固相化したスパイノルフィンに結合したスパイノルフィン抗体と標識二次抗体とを結合させる。
標識二次抗体としては、標識酵素又は蛍光色素で標識された抗ウサギIgGヤギIgG抗体、ヤギ抗マウス抗体等が挙げられる。標識酵素としては、例えばペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ等が挙げられるが、ペルオキシダーゼが好ましく、西洋ワサビペルオキシダーゼがとりわけ好ましい。標識蛍光色素としては、例えばMFP 488、Alexa Fluor 488、ローダミン、フルオレセイン、Cy2又はCy3等が挙げられる。
【0033】
担体に固相化されたスパイノルフィンと結合したスパイノルフィン抗体と標識二次抗体との結合は、通常約0〜室温で、静置又はゆっくり揺らしながら約30分〜2時間、好ましくは約30分〜1時間程度反応させることによって行なわれるのが好ましい。
【0034】
(E)工程は、上記(D)工程においてスパイノルフィン抗体と結合した標識二次抗体の標識量を測定する。
固相化抗原(スパイノルフィン)に結合したスパイノルフィン抗体と結合した標識二次抗体の標識量の測定は、例えば酵素で標識された二次抗体の場合であれば、標識酵素と基質との発色反応を利用して、その発色の色調に応じた波長の吸光度を測定することにより実施できる。標識酵素と基質との発色反応は、基質溶液を酵素標識二次抗体と接触させることにより行なうことができる。基質としては使用する標識酵素により異なるが、例えば標識酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼの場合、例えばoーフェニレンジアミンや3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン等が基質として好ましく使用し得る。吸光度の測定は、発色後約10〜60分以内に測定することが好ましい。
蛍光標識の場合は、蛍光強度を蛍光光度計で測定すればよい。
なお、担体がマイクロプレートのような場合には、酵素標識の場合は吸光度を連続自動測定ができるオートリーダーやマイクロプレートリーダーを、蛍光標識の場合は、蛍光マイクロリーダー等を用いるのが好ましい。
【0035】
上記スパイノルフィンの測定方法により、定量的に測定できるスパイノルフィンの濃度範囲は、好ましくは約10−10〜10−7g/mLである。このため、スパイノルフィンが高濃度に存在する試料の場合は、上記した緩衝液等で適宜希釈するのがよい。
試料のジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン量には、
本発明の測定方法を用いることにより、例えば被験者の関節から採取される滑液中のスパイノルフィン量を測定し、スパイノルフィン量が約5ng/mL以下である場合に、被験者がリウマチであると推定できる。
【0036】
次に、上記ジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン量は、以下の統計学的分析を行ない得る。例えばRA患者とOA患者の各滑液のジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン濃度を、例えばMann Whitney U testにより比較できる。比較の結果、危険率5%以下の場合に有意差があるとし得る。本発明に従えば、例えばジペプチジルペプチダーゼ活性を縦軸に、スパイノルフィン量を横軸にプロットニングすると、負の相関関係が得られる。このことから、ジペプチジルペプチダーゼ活性及びスパイノルフィン量の両特性値から診断推定することにより、より確率の高いRAの診断推定ができる。具体的には、例えば被験者の関節の滑液を試料として用いた場合、滑液中のジペプチジルペプチダーゼ活性が約20pmol/30min/mgタンパク質以上、好ましくは約30〜200pmol/30min/mgタンパク質であって、かつスパイノルフィン量が5ng/mL以下であるとき、RAである確率が非常に高い。
【0037】
本発明のRA診断キットにおいて、ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質としては、例えばArg−Arg基を有する蛍光合成基質、例えばArg−Arg−4−メチルクマリル−7−アミド又はBoc−Gly−Arg−Arg−4−MCA等が挙げられる。
アミノペプチダーゼ阻害剤としては、ベスタチン、ロイヒスチン等が挙げられる。
ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としては、タイノルフィン等が挙げられる。
【0038】
本発明のRA診断キットによれば、簡易に短時間で精確に試料提供者をRAであるかどうかの診断ができる。
また、本発明において、上記RA診断キットに加え、スパイノルフィン抗体、コーティング用抗原(スパイノルフィン)、マイクロタイタープレート、標識二次抗体およびその他の試薬類を含む試料中のスパイノルフィン濃度の測定キットを使用することもできる。
【0039】
スパイノルフィン濃度の測定キットにおいて、スパイノルフィン抗体としては、例えばスパイノルフィンウサギ抗体等が挙げられる。コーティング用抗原としては、スパイノルフィンを緩衝液に溶解したもの等が挙げられる。マイクロタイタープレートとしては、マイクロタイタープレートの表面にアミノ基、カルボキシル基等の活性な官能基を持たせたものや疎水性ポリマーのコートスライドしたものが好ましい。また、コーティング用抗原とマイクロタイタープレートの代わりに、マイクロタイタープレートに抗原としてスパイノルフィンを固相化したものをスパイノルフィン抗体及び標識二次抗体と共に、これらを含むキットを使用してもよい。標識二次抗体としては、上記した酵素標識二次抗体又は蛍光標識二次抗体が好ましい。また、その他の試薬類としては、例えば、酵素標識二次抗体がキットに含まれる場合、上記基質等が挙げられ、さらにプレートの洗浄液〔海面活性剤(例えばポリソルベート 20等)などが添加された緩衝液等〕や緩衝液(例えばリン酸緩衝液、トリス緩衝液生理食塩水)等が挙げられる。
【0040】
上記スパイノルフィン濃度の測定キットによれば、簡易に短時間で精確に試料中のスパイノルフィンの濃度を測定できる。
【0041】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
試薬:
スパイノルフィンとタイノルフィンはAmerikan Peptide Company Inc.,Sunnyvale,CA,USAから入手した。
Arg−Arg−MCA及びべスタチンはSigma−Aldrich Fine Chemical Co.,St.Louis,MO,USAから購入した。HRP−F(ab’)ヤギ抗ウサギIgG(H+L)はZymed Laboratories,Inc.,Carlton Court,CA,USAから購入した。ODSカラムとしてはODS−A 60−60/30(YMC社,京都、日本)を使用した。全ての他の試薬は特級品を使用した。
【0043】
試料の採取:
関節の滑液をOA患者40人とRA患者39人から集めた。滑液のサンプルを患者のひざ関節から吸引し、プラスチック容器に入れ、4℃で10分間1500×gで遠心し、上清を分析時まで−20℃で保存した。OAとRAの診断はアメリカリウマチ学会(ACR)の「ACR改訂診断基準」に基づいて行なった。
OA患者の年齢は74−88歳(男性11人、女性29人)であった。平均罹患期間は6年(範囲:0.1−20年)。RA患者の年齢は44−74歳(男性6人、女性32人)であった。その平均罹患期間は14.5年〔範囲:1−36年、少関節破壊型(LES)3人,多関節破壊型(MES)29人,ムチランス型(MUD)6人〕であった。RAの全ての患者は数種の医薬を服用していた。医薬は抗炎症薬、金、メトトレキサート、スルファサラジン、コルチコステロイド、ブシラミン及びD−ペニシラミンであった。滑液の吸引前に高濃度のコルチコステロイドや関節内ステロイドを処置されたものはいなかった。なお、患者からの同意は委員会で検討され、各患者から個々のインフォームドコンセプトを得た。
滑液中のタンパク質含有量をブラッドフォード法(Rockford USA,Pierce社)により測定した。
【0044】
統計的処理:
RA患者とOA患者の滑液のジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン濃度はMann Whitney U testを用い、危険率5%以下を有意差有とした。
【実施例1】
【0045】
ジペプチジルペプチダーゼ活性
ジペプチジルペプチダーゼ活性は特異的蛍光合成基質のArg−Arg−MCAの加水分解により測定した。まず、30μg/mLのベスタチン及び1μMのArg−Arg−MCAを含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)1mLを、37度で30分、プレインキュベーションした。プレインキュベーション後、前記緩衝液に、滑液(100μL)を加え混合し、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤100μg/mLの存在又は非存在下で、37度で30分、インキュベーションした。50%(v/v)酢酸を加え反応を停止した。4℃で10分間放置後、ジペプチジルペプチダーゼ活性として放出したAMCの蛍光強度を、分光蛍光光度計F−2000(Hitachi Co.Ltd,Tokyo,Japan)を用いて励起波長360nm、蛍光波長440nmで測定した。
ジペプチジルペプチダーゼ活性は以下の式により算出した。
活性=(ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤非存在での基質分解活性)−(ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤存在下での基質分解活性)
ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としては、タイノルフィン使用した。
なお、上記基質分解活性は、AMCの濃度と蛍光値の関係より標準曲線を描き、その標準曲線より算出することで、試料中のタンパク質1mgに対する値に換算した。
【0046】
結果:
RA患者とOA患者の滑液のジペプチジルペプチダーゼ活性はそれぞれ46.1±19.6(n=29)と10.6±6.2(n=33)pmol/30min/mgタンパクであった(図1)。
RA患者のジペプチジルペプチダーゼ活性はOA患者に比較して約5倍高かった(p<0.001)。
なお、RAのジペプチジルペプチダーゼ活性と病気の重症度、罹患期間、C−反応型タンパクや血液沈降速度のような血清検査値との間に相関関係はなかった。
【実施例2】
【0047】
スパイノルフィンの測定
滑液サンプル2mLを等量の10質量%トリクロロ酢酸と混合し、混合物を4℃で1時間静置した。
1500×gで20分間遠心分離し、その上清をODSカラムに付した。前記カラムを10容積倍の水で洗浄し、80%(v/v)メタノール水溶液でスパイノルフィンを溶出した。溶媒を蒸発後、溶出物をトリス緩衝液生理食塩(TBS)0.5mLに溶解し、試料とした。
96ウェルプレート(Nunc−Immuno Plate,MaxiSorp Surface,Nalge Nunc International,Denmark;以下、単にプレートともいう。)に、50ngスパイノルフィン/100μL TBSを入れ、室温で1時間反応させ、プレートにスパイノルフィンを固相化した。スパイノルフィンを固相化したプレートを5回、0.1質量%ツウィーン 20を含む10mMのTBS(TBS−T)で洗浄した。次いでスパイノルフィンを固相化したプレートを室温で1時間、10質量%スキムミルクと0.1質量%アジ化ナトリウムを含むTBS−Tでブロックした。プレートからスキムミルクを洗浄除去後、プレートにスパイノルフィンウサギ抗体を5μg/ウェルを添加し、試料の希釈溶液100μLを添加し、競合反応に付した。プレートをゆっくり揺らしながら1時間反応させた。プレートをそれから5回洗浄し、100μLの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−標識F(ab’)ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(1000倍希釈)をプレートに添加し、室温で1時間反応させた。反応後、プレートは5回洗浄し、それから2.2μMのo−フェニレンジアミンと0.014%(v/v)過酸化水素水を含むクエン酸緩衝液(0.1M,、pH5)100μLをプレートに添加した。プレートを20分間静置後、オートリーダー(Korona Electric Co.Ltd.,Ibaragi,日本)を用いて405nmでプレートのウェル中の溶液の吸光度を測定した。試料中のスパイノルフィンの濃度を標準曲線の%B/Bo(吸光度比;吸光度をBlank0の吸光度で割った値)から算出した。
【0048】
結果
RA患者の滑液中のスパイノルフィン量は4.2±3.4ng/mL(n=20)で、OA患者のそれは10.1±7.1ng/mL(n=23)であった(図2)。RA患者のスパイノルフィン量はOA患者のそれより有意に低かった(P<0.01)。
【0049】
20サンプル中、ジペプチジルペプチダーゼ活性とスパイノルフィン量の両方を測ることができた滑液中の両者に負の相関関係が観察された(r=−0.51)。
【0050】
〔参考例〕
スパイノルフィンウサギ抗体の産生
スパイノルフィン(American Peptide Company Inc.,Sunyvale,CA,USAから入手した。)をEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を用いてKLH(keyhole limpet hemocyanin)と結合させ、KLH結合スパイノルフィンを得た。2羽のウサギ(ニュージーランドホワイト)の背中にKLH結合スパイノルフィンを皮下注射した。2週間間隔でKLH結合スパイノルフィンを8回免疫した。最後の免疫後、ウサギ心臓から採血し、採取した全血液から血清を分離し、スパイノルフィンウサギ抗体とした。抗体の力価は、200ng/ウェルの固体抗原に、100μL/ウェルの希釈血清を反応させ、洗浄後二次抗体を添加し、最終的に基質添加後の発色を測定した。希釈血清は、1000倍希釈により開始し、3倍ずつ希釈し、最大81000倍まで希釈して用いた。
【0051】
スパイノルフィン類似化合物[VVYPWT(配列表:配列番号2),VYPWT(配列表:配列番号3)ヘモルフィン−4(YPWT;配列表:配列番号4),PWT,LVVYPW(配列表:配列番号5),タイノルフィン(VVYPW;配列表:配列番号6),VYPW(配列表:配列番号7),YPW,LVVYP(配列表:配列番号8),VVYP(配列表:配列番号9)及びVYP]の有する抗スパイノルフィンの交叉反応は、スパイノルフィンの0.1%より低かく、交叉反応は認められなかった。なお、類似化合物は特開2000−95794号公報に記載の方法に準じて合成した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、RAの新しい診断方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、OA患者とRA患者から採取した滑液中のジペプチジルペプチダーゼ活性を示す図である。
【図2】図2は、OA患者とRA患者から採取した滑液中のスパイノルフィン量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物から採取した試料のジペプチジルペプチダーゼ活性を測定することを特徴とする関節リウマチの診断方法。
【請求項2】
試料が関節滑液、血液及び脳脊髄液から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
さらに哺乳動物から採取した試料中に存在するスパイノルフィンの量を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の診断方法。
【請求項4】
測定された試料中のスパイノルフィン濃度5ng/mL以下が、関節リウマチ疾患推定スパイノルフィン量であることを特徴とする請求項3記載の診断方法。
【請求項5】
ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質及びアミノペプチダーゼ阻害剤に、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤の存在あるいは非存在下において、試料を反応させ、反応後の反応液の蛍光強度を測定することを特徴とする、請求項1記載の診断のためのジペプチジルペプチダーゼ活性の測定方法。
【請求項6】
蛍光基質がArg−Arg基を有する蛍光合成基質であることを特徴とする請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
蛍光合成基質がArg−Arg−4−メチルクマリル−7−アミドであることを特徴とする請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
反応によって生成した7−アミノ−4−メチルクマリンの蛍光強度を測定することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
アミノペプチダーゼ阻害剤が、ベスタチンであることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の測定方法。
【請求項10】
ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤がタイノルフィンであることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の測定方法。
【請求項11】
ジペプチジルペプチダーゼに特異的な蛍光基質、アミノペプチダーゼ阻害剤及びジペプチジルペプチダーゼ阻害剤を含む関節リウマチ診断キット。
【請求項12】
蛍光基質が、Arg−Arg基を有する蛍光合成基質であることを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
合成基質がArg−Arg−4−メチルクマリル−7−アミドであることを特徴とする請求項12に記載のキット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−230318(P2006−230318A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52007(P2005−52007)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年8月25日 社団法人日本生化学会発行の「生化学 第76巻 第8号」に発表
【出願人】(393028036)丸石製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】