説明

関節痛改善用組成物、関節痛改善剤、あるいは食品

【課題】コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを組合わせた組成物について、その好適な配合量(比)を中心に検討し、特に関節痛の痛みの緩和に効果的な、関節痛改善用組成物、関節痛改善剤あるいは食品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記課題を解決するために、特にコラーゲンとMSMに着目し、鋭意研究に励んだ結果、好適な配合量(比)で、コラーゲン、MSM、グルコサミン、コンドロイチンを含有する関節改善用組成物を見出し、本発明を完成した。この組成物は、MSM、グルコサミン、コンドロイチンと共に、コラーゲンを好適な配合量で多く含むため、関節痛を改善するという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎などの関節痛の症状を軽減・治療・予防することが出来る新規な関節痛改善用組成物、関節痛改善剤、あるいは食品に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎などの関節痛、また、特に高齢者で問題となる膝関節の変形による関節症などは、近年、その発症頻度が非常に高くなっており、病態の進行に伴い疼痛の増強や歩行障害などが生じ、日常生活の質を下げる一因となっている。従来、このような症状を緩和するためにステロイドや非ステロイド剤(NSAIDs)が広く用いられていたが、免疫障害や胃腸障害などの副作用が懸念されており、より安全でしかも確実に効果のある治療法や予防法が求められている。
【0003】
この目的のために、多くの食品成分が研究されてきた。中でも特に注目を集めているのがグルコサミンである。グルコサミンは、結合組織や軟骨組織に多く分布し、コラーゲン、水分などと組み合わさり、各器官の強度、柔軟性や弾力性に寄与しているが、加齢に伴い生体内での合成能が低下する。よって、それを補うことで軟骨組織を再生しようとの試みがなされ、多くの有効例が報告されている。また、グルコサミンの持つ軟骨再生能を高めるために、コンドロイチンとの組み合わせが非常に効果的であることが明らかにされている(非特許文献1)。特許文献1には、クレアチン、グルコサミンとコンドロイチンなどのグリコサミノグリカンの組成物、あるいは、これにMSMやコラーゲンを加えた組成物による関節痛改善用食品が開示されている。
【0004】
一方、コラーゲンについては、各々単独で連続摂取した場合に、関節痛が改善したことが報告されているものの、コラーゲンIIについては、グルコサミン塩酸塩やコンドロイチンとの相互作用を明確に示す報告はなく、有効性と安全性については、科学的に十分に検討されてはいない(非特許文献2)。特許文献2には、MSM、コンドロイチン、コラーゲンおよび抗酸化物を含む組成物による抗炎症および鎮痛作用が開示されている。
【0005】
特許文献3にはキャッツクロー、グルコサミン、コンドロイチン硫酸およびコラーゲンを含む関節痛緩和用経口組成物が開示されている。また、非特許文献1にはグルコサミン塩酸塩、コンドロイチンおよびコラーゲンIIを配合した食品の変形性膝関節症に対する効果が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007-91662
【特許文献2】特開2005-13123
【特許文献3】特開2003-155250
【非特許文献1】新薬と臨床、54、253-265、2005.
【非特許文献2】「コラーゲンの安全性と機能性」食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト解説集、2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許公報からすれば、MSM、グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンは、それぞれ関節炎などの関節痛を和らげるために従来から用いられていることが認められる。しかしながら、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを組み合わせた組成物の関節痛改善に対する効果について、特にその配合量(比)に関する研究は未だ報告されていない。
【0008】
したがって、本発明は、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを組合わせた組成物について、その好適な配合量(比)を中心に検討し、特に関節痛の痛みの緩和に効果的な、関節痛改善用組成物、関節痛改善剤あるいは食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、特にコラーゲンとMSMに着目し、鋭意研究に励んだ結果、好適な配合量(比)で、コラーゲン、MSM、グルコサミン、コンドロイチンを含有する関節痛改善用組成物を見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善用組成物であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む組成物が提供される。この組成物は、MSM、グルコサミン、コンドロイチンと共に、コラーゲンを好適な配合量で多く含むため、関節痛を改善するという効果を奏する。
【0011】
また、本発明によれば、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善剤であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む関節痛改善剤が提供される。この関節痛改善剤は、MSM、グルコサミン、コンドロイチンと共に、コラーゲンを好適な配合量で多く含むため、関節痛を改善する薬剤として効果的である。
【0012】
また、本発明によれば、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンと、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンとを含む食品が提供される。この食品は、MSM、グルコサミン、コンドロイチンと共に、コラーゲンを好適な配合量で多く含み、関節痛の改善の上でも効果的な食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、関節痛の改善、特に関節痛の痛みの緩和において効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔用語の説明〕
本実施形態における「コラーゲン」とは、皮膚、血管、歯、軟骨組織、結合組織などに存在し、全タンパク質量の約3割を占める繊維状のタンパク質で、その多くは、ヘリックス構造を有する3本のポリペプチド鎖で構成されたらせん構造(トロポコラーゲン)からなる。コラーゲンとしては、例えば、ウシ、ブタなどの哺乳類、ニワトリなどの鳥類、サメ、エイなどの魚類、イカなどの軟体動物類の、皮膚(鱗)、軟骨、骨、臓器、腱などの組織に存在するコラーゲンを抽出して使用することができ、これらを混合して使用することもできる。また、精製したコラーゲン以外にも、成分としてコラーゲンを含有するものであれば本発明に使用することもできる。また、上記の動物性(海洋性)コラーゲンの代わりに、大豆、ニンジン等の植物由来のコラーゲン様物質(植物性コラーゲン:エクステンシンなど)を単独、あるいは上記の動物性(海洋性)コラーゲンと組合わせて用いてもよい。
【0015】
本実施形態においては、コラーゲンを更に、I型コラーゲン、II型コラーゲン、その他のコラーゲンと、その分子構造により区別することもできる。I型コラーゲンは、皮膚(真皮)、人体、腱、骨などに存在し、体内で最も豊富に存在するコラーゲンであり、II型コラーゲンは、関節軟骨、椎間円板、硝子体などに存在するコラーゲンである。これらは、常法により得ることができ、例えば、それぞれの含有量の多い組織、試料からの抽出や、混合物からの分離精製などにより得ることができる。また、精製したコラーゲン以外にも、成分として各コラーゲンを含有するものであれば本発明に使用することもできる。
【0016】
本実施形態においては、抽出後のコラーゲンに、更に部分的加水分解等の処理等を行ったものを用いてもよい。例えば、部分的に分解し、低分子化した形態のコラーゲンである、酵素(プロテアーゼ)処理したコラーゲンペプチド、細菌/酵母による発酵処理した発酵コラーゲン、あるいは酵素処理と発酵処理を組合わせて処理した発酵コラーゲンペプチドを用いることもできる。この発酵コラーゲンペプチドは、経口摂取においての吸収性がコラーゲンより高く、苦味・臭みが少なく、また、とろみも少ないため、経口摂取により適している。
【0017】
また、本実施形態における「MSM」とは、メチルスルホニルメタン(化学式:(CHSO)の略称である。MSMは、自然界の動植物中にも存在する硫黄化合物であり、通常、ほとんどの動植物において、食物などから吸収され、硫黄源として利用されている。本実施形態におけるMSMは、天然物由来であっても、合成品であってもよい。天然物由来のMSMは、例えば、牛乳などの動物乳、松(例えば、松の葉)、緑黄色野菜、トマト、コーヒー、茶(例えば、茶葉)、リンゴ、キャベツなどの植物から直接抽出する、あるいは、これらから抽出した成分を原料として、合成することによって得られる。例えば、松の葉から単離されたリグニンと硫黄とを反応させることによって、MSMを得ることもできる。また、精製したMSM以外にも、成分としてMSMを含有するものであれば本発明に使用することもできる。また、合成品の場合、例えば、ジメチルスルホキシドの酸化などによって得ることができる。
【0018】
また、本実施形態における「グルコサミン」は、グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシグルコース)およびその生理学的に許容な塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、N−アセチルグルコサミンなどのグルコサミン誘導体及びその生理学的に許容な塩を含む総称である。グルコサミンは、グルコースのヒドロキシル基がアミノ基に置換されたもので、生体内ではグルコースとグルタミンから生合成される。グルコサミンは、動物、植物、微生物の、多糖、ムコ多糖、糖タンパク質、糖脂質、細菌細胞壁ペプチドグリカン、リポ多糖に含まれ、特に動物においては、糖タンパク質に付加する糖鎖の成分として、軟骨・腱・靱帯などの結合組織に分布している。グルコサミンは、工業的には、例えばキチンを原料として加水分解することなどにより得られるが、化学合成したものや、あるいはこれらの混合物を用いることもできる。また、精製したグルコサミン以外にも、成分としてグルコサミンを含有するものであれば本発明に使用することもできる。
【0019】
また、本実施形態における「コンドロイチン」は、ヘキソサミン及びウロン酸からなるムコ多糖の一種であるコンドロイチンに加え、その硫酸エステルであるコンドロイチン硫酸、更にその生理学的に許容な塩(例えば、ナトリウム塩など)を含む総称である。コンドロイチンは、角膜、水晶体、毛様体筋、硝子体、軟骨、骨、腱、血管壁、皮膚などにタンパク質と結合した状態で多く含まれているため、本発明にこのコンドロイチン−タンパク質複合体を用いることもできる。コンドロイチンは、動物の軟骨などから得ることができるが、化学合成したもの、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。また、精製したコンドロイチン以外にも、成分としてコンドロイチンを含有するものであれば、例えば、軟骨の粉末や軟骨エキスなども、本発明に使用することもできる。
【0020】
また、本実施形態における「一日当たりの摂取量」とは、成人一人が一日当たりに摂取する量を指す。本実施形態における組成物、関節痛改善剤、食品等は、1〜数回の摂取により、1日当たりの摂取量が定められた範囲内となるように対象成分を含有する配合量で調整される。そのため、1回毎に摂取する組成物、関節痛改善剤、食品等の含有量には特に制限は無い。
【0021】
また、本実施形態における「関節痛の改善」とは、例えば、肘、膝などの関節における、変形性股関節症、変形性膝関節症のような変形性関節症、例えば、慢性関節リウマチなどの関節リウマチ、又は、関節痛を伴う関節炎(スポーツ障害など)などに対し、関節痛の症状を軽減(緩和)、治療又は予防(再発防止)することをいう。
【0022】
また、本実施形態における「機能性食品」とは、例えば、健康食品、健康補助食品、病者用食品、栄養補助食品、あるいは、厚生労働省の定める保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)のような、通常の食品に比べて優れた生理的特性を有する食品をいう。さらに、上記の機能性食品に付する表示には、例えば、厚生労働省の定める保健機能食品に対して認められた表示、あるいは、組成物が膝関節痛の処置のために用いられる旨の表示が含まれ、それらの表示は、具体的には、例えば機能性食品の包装容器に付される。ここで、「食品」とは、専ら飲食のために経口的に用いられる形態のものすべてを含み(例えば、飲料も含む)、錠剤などの形態のものであっても、専ら飲食のために用いられる限りにおいては、本実施形態における食品に含まれる。
【0023】
〔実施形態〕
本発明者らは、上記課題を解決するために、特にコラーゲン及びMSMに着目し、鋭意研究に励んだ結果、好適な配合量(比)でコラーゲン、MSM、グルコサミン、コンドロイチンを含有する関節痛改善用組成物を見出した。
以下、本発明の実施形態について、説明する。
【0024】
本発明のある実施形態は、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善用組成物であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む組成物である。この組成物は、MSM、グルコサミン、コンドロイチンと共に、コラーゲンを好適な配合量で多く含むため、関節痛の改善において効果的である。特に、従来の関節痛改善用組成物(食品)の多くは、一旦摂取を止めてしまうと、再度関節痛に悩まされるという問題点を有していたのに対し、本発明の組成物(食品)は、コラーゲンを好適な配合量で多く含むために、MSM、グルコサミン、コンドロイチンとの相乗作用などを介して関節痛を改善、その効果は一旦摂取を止めた後も持続し、関節痛の再発を防止することができる。また、従来品よりも、より短期間で、より確実に(より少ない個人差で)効果を示すという特徴も有する。
【0025】
本実施形態の組成物に含まれるMSM、グルコサミン、コンドロイチンの含有量については、特に制限はなく、コラーゲンの含有量についても、一日当たり2000mg以上の摂取量であれば特に制限は無いが、好ましくは一日当たり2200mg以上、より好ましくは一日当たり2500mg以上、あるいは一日当たり2500mgの摂取量である。また、コラーゲンの含有量の上限については、コラーゲン含有量依存的な関節痛改善効果の飽和傾向、摂取しやすさ及びコストを考慮して定めることもでき、より具体的には例えば、一日当たり20000mg以下の摂取量であることが好ましく、より好ましくは一日当たり15000mg以下、更に好ましくは一日当たり10000mg以下、更に好ましくは一日当たり8000mg以下、更に好ましくは一日当たり5000mg以下、の摂取量である。
【0026】
また、更なる実施形態は、一日当たり800mg以上の摂取量のI型コラーゲンと、一日当たり400mg以上の摂取量のII型コラーゲンとを含む、前述の組成物である。I型コラーゲンとII型コラーゲンを組合わせることで、関節痛の改善効果が増強される。I型コラーゲンの含有量は、特に制限は無いが、一日当たり800mg以上の摂取量であればよく、好ましくは一日当たり1000mg以上、更に好ましくは一日当たり1200mg以上、更に好ましくは一日当たり1600mg以上、最も好ましくは一日当たり2000mg以上、あるいは一日当たり2000mg、の摂取量である。II型コラーゲンの含有量は、特に制限は無いが、一日当たり400mg以上が好ましく、一日当たり500mg以上、あるいは一日当たり500mgの摂取量がより好ましい。また、I型コラーゲンとII型コラーゲンの配合比が4:1であれば、更に好ましい。
【0027】
また、更なる実施形態は、コラーゲンの少なくとも一部がコラーゲンペプチドである、前述の組成物である。本発明の組成物は多量のコラーゲンを含むことをその特徴の一つとするために、コラーゲンの吸収性の低さと飲みにくさの解消が求められる。そこで、コラーゲンペプチドを用いることにより、これらの点を改善することができる。
【0028】
また、更なる実施形態は、一日当たり500mg以上の摂取量のMSMを含む、前述の組成物である。本発明の組成物は、MSMが、好適な量のコラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンと相乗的に働き、関節部分に鎮痛・抗炎症作用をもたらすが、一日当たり500mg以上の摂取量のMSMを含むことで、より強くその効果が発揮される。MSMの含有量は、特に制限は無いが、好ましくは一日当たり600mg以上、より好ましくは一日当たり700mg以上、最も好ましくは一日当たり750mg以上あるいは一日当たり750mgの摂取量である。その上限については、特に制限は無いが、MSMは苦味を有する成分であるため、摂取しやすさの観点から、一日当たり2000mg以下の摂取量であることが好ましく、より好ましくは一日当たり1500mg以下、更に好ましくは一日当たり1000mg以下、の摂取量である。
【0029】
また、更なる実施形態は、一日当たり800mg以上の摂取量のグルコサミンを含む、前述の組成物である。本発明の組成物は、グルコサミンが、好適な量のコラーゲン、MSM、コンドロイチンと相乗的に働き、軟骨の生成をより促進することで、軟骨の機能改善、関節痛の痛みの緩和をもたらすが、一日当たり800mg以上の摂取量のグルコサミンを含むことで、より強くその効果が発揮される。グルコサミンの含有量は、特に制限は無いが、好ましくは一日当たり900mg以上、より好ましくは一日当たり1000mg以上あるいは一日当たり1000mgの摂取量である。その上限については、特に制限は無いが、摂取しやすさの観点から、一日当たり2000mg以下の摂取量であることが好ましく、更に好ましくは一日当たり1500mg以下の摂取量である。
【0030】
また、更なる実施形態は、一日当たり500mg以上の摂取量のコンドロイチンを含む、前述の組成物である。本発明の組成物は、コンドロイチンが、好適な量のコラーゲン、MSM、グルコサミンと相乗的に働き、炎症部分の痛みの緩和や潤滑効果を奏するが、一日当たり500mg以上の摂取量のコンドロイチンを含むことで、より強くその効果が発揮される。コンドロイチンの含有量は、特に制限は無いが、好ましくは一日当たり600mg以上、より好ましくは一日当たり700mg以上、更に好ましくは一日当たり800mg以上あるいは一日当たり800mgの摂取量である。その上限については、特に制限は無いが、摂取しやすさの観点から、一日当たり2000mg以下の摂取量であることが好ましく、より好ましくは一日当たり1500mg以下、更に好ましくは1000mg以下の摂取量である。
【0031】
グルコサミンとコンドロイチンは、軟骨を始めとする関節組織の形成に関して、これら2成分の間でも相乗的に働くため、グルコサミンとコンドロイチンの配合比が5:4の時により強く関節痛の改善効果を発揮する。また、コラーゲンとグルコサミン、コラーゲンとコンドロイチンに関しても、軟骨や関節部分の結合組織の形成などに相乗的に関与するために、それぞれの配合比が、それぞれ独立して5:2、25:8であると更に好ましい。
【0032】
また、更なる実施形態は、顆粒状の形態で提供される、前述の組成物である。本実施形態の組成物は、顆粒状であるため、大量のコラーゲンを摂取しやすく、また水に溶かして飲むこともできる。もちろん、本発明の組成物は形態はこれに限られず、タブレット(錠)状、チュアブル状、カプセル状、液(シロップ、ドリンク)状、クリーム状、粉末状、ゼリー状などの各種の形状または剤形にすることができる。これらの製剤は、食品や医薬品の分野において通常用いられている製剤化技術等を用いることにより製造することができる。
【0033】
また、更なる実施形態は、機能性食品として調製されていることを特徴とする、前述の組成物である。機能性食品として調整されているとは、例えば、健康食品、健康補助食品、病者用食品、栄養補助食品、あるいは、厚生労働省の定める保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)のような、通常の食品に比べて優れた生理的特性を有する食品として調製されていることをいう。また、例えば、厚生労働省の定める保健機能食品に対して認められた表示や、組成物が膝関節痛の処置のために用いられる旨の表示などが、機能性食品の包装容器に付されて提供されてもよい。
【0034】
また、更なる他の実施形態は、コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善剤であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む関節痛改善剤である。この関節痛改善剤は、医薬品または医薬部外品として用いることもできる。
【0035】
また、更なる他の実施形態は、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチン硫酸と、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンとを含む食品である。上記の食品は、食品としてどのような形態で提供されてもよく、調味料として、例えば、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、ソルビドール、還元麦芽糖、乳糖、糖液などを用いてもよい。前述した様々な形状又は剤形に加え、具体的な食品として、例えば、ジュース類、ヨーグルト類、ショートニング、スプレッド類、マヨネーズ類、チョコクリーム、ごま豆腐、飴類、粉末飲料などの形に加工されていてもよい。
【0036】
また、前述の組成物、関節痛改善剤、食品は、コラーゲン、MSM、グルコサミン、コンドロイチン以外にも、生理活性物質、(食品)原料、(食品)添加物などを適宜必要に応じて含有していてもよい。ここで、生理活性物質としては、特に、関節痛の改善に有効な成分が挙げられ、具体的には、例えば、S−アデノシルメチオニン、ビタミンB1、クレアチン、キャッツクロー、アミノ酸、ビタミンC、ヒアルロン酸が挙げられるが、これに限定されない。その他の添加物・原料としては、例えば、食品等の製造・加工・保存に際して、添加・混和・浸潤その他の方法によって使用するものが挙げられ、例えば、賦形剤、増量剤、増粘剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、着色剤、乳化剤、可溶化剤、着色料、香味料、調味料、香辛料、甘味料、保存料、香料として通常用いられているようなものが挙げられる。
【0037】
本実施形態において、活性成分としては、ビタミンCが特に効果的である。ビタミンCは、コラーゲンの生合成の過程において、ヒドロキシプロリンの生合成に必須であるため、ビタミンCを含むことで、生体内でのコラーゲンの生合成も促進され、本発明の組成物の関節痛改善効果がより増強される。
【0038】
また、更に、香料を含むことで、本発明の組成物に含まれるMSMの苦味およびコラーゲンの臭みの解消に役立ち、摂取しにくさの解消(コンプライアンスの上昇)に効果的である。香料としては、特に柑橘系の香料が望ましい。
【0039】
本発明の組成物は、連続して4週間以上、好ましくは8週間以上、最も好ましくは12週間以上摂取することが好ましい。本発明の組成物は、4週間以上の連続摂取でより確実な効果を奏することができ、8週間、12週間と連続摂取を続けるにつれてより高く確実な効果を奏することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態により説明される組成物、関節痛改善剤及び食品は、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものであり、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらはそれぞれ一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明もしくは定法に従い使用した。
【0042】
〔実施例1〕
比較例は、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンの3成分を含む食品であり、本発明品である検体1は軟骨形成の重要な成分であるI型コラーゲンを増量し、鎮痛作用があるとされているメチルスルホニルメタン(MSM)を新たに配合したものである。これらについて膝に軽度の関節痛を伴うヒトを対象に12週間摂取させた後、4週間の後観察期間を設けたランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施して、疼痛に対する影響を調べた。
【0043】
1.被験者
被験者は、1ヵ月以上持続して軽度の膝関節痛等を有し、変形性膝関節症にて通院および投薬を受けていない20歳以上75歳未満の成人男女39名を対象とした。被験者の構成は表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
2.試料および摂取方法
本試験に用いた試料の成分組成を表2に示した。被験者は試料のいずれか一種類を1日3回、朝・昼・夕の毎食事前後に1包ずつ、コップ1杯の水とともに摂取した。また、飲みにくい場合は少量(適量)の水に溶解して摂取させた。
【0046】
【表2】

【0047】
3.試験スケジュール
本試験はランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験とした。試験期間は、検体摂取期間を12週間とし、さらに摂取終了後の後観察期間として4週間を設定した。
【0048】
4.検査方法 (自覚症状アンケート調査)
膝の疼痛評価方法は、日本版膝関節症機能評価尺度(Japanese Knee Osteoarthritis Measure:JKOM)を参考に食品へ応用し、以下に記すように改定した(項目を表3、具体的なアンケート用紙を図1a−gに示した)。
【0049】
【表3】

【0050】
I.Visual analogue scale(以下、VAS)による膝の痛みの程度に関して、最高得点部分を「これまでに経験した最も激しい痛み」から「ひどく痛い(治療が必要である)」に改定し、II.膝の痛みやこわばりの最高得点部分は「ひどく痛い等」から「ひどく痛い(治療が必要である)」に改定した。なお、IおよびIIについては左右の膝別に調査して、評価点を合算した。評価点は、IはVASを使用して0.5単位で0〜10点、IIは各項目0.5単位で0〜8点、IIIの日常生活の状態、IVの普段の活動およびVの健康状態は各項目2点単位でそれぞれ0〜8点として評価した。また、肩肘手足についても「調査票」を用いて試験食品摂取の影響を観察した。
【0051】
スコア算出の一例を挙げると、「こわばり」は、膝関節を動かした時に通常と違った抵抗感や異常のある状態であり、「膝の痛みやこわばり」のスコアは朝起きて直ぐのこわばりや、階段の昇降、平らなところを歩くときの痛みなど、8項目を点数化して、試験開始時との差を求め、平均値を算出して比較した。また、「日常生活の状態」のスコアは、階段の昇り降り、しゃがみこみ、立ち上がり、ズボン・スカートの着替え、外出の困難さなど10項目を点数化して、試験開始時との差を求め、平均値を算出して比較した。
【0052】
5.結果
5−1.JKOM食品用変法のスコア
観察期毎(試験開始時(0週)、4週、8週、12週および摂取終了4週後(後観察期))の結果について、一部(II(膝の痛みやこわばり)およびIII(日常生活の状態))を表4、全体を図2に示した。
【0053】
【表4】

【0054】
(図2−A)「I(膝の痛みの程度)の左右膝得点の合計」に関して、摂取前との比較では、検体1群で4週以降において顕著な改善(p<0.01)、比較例群で4週以降において有意な改善(p<0.05)が認められた。
【0055】
(図2−B)「II(膝の痛みやこわばり)の左右膝得点の合計」に関して、プラセボ群と比較して、検体1群では8週以降、後観察期において有意(p<0.05)に改善し、比較例群においては、後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。摂取前との比較では、検体1群で4週以降、後観察期において有意(p<0.05)に改善し、比較例群では、8週以降、後観察期において有意(p<0.01)な改善が認められた。
【0056】
(図2−C)「III(日常生活の状態)の合計得点」に関して、プラセボ群と比較して検体1群で、8週以降、後観察期において有意(p<0.05)に改善し、比較例群では12週および後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。摂取前との比較では、検体1群で4週以降、比較例群においては8週以降、後観察期においてそれぞれ有意(p<0.05)に改善した。
【0057】
(図2−D)「IV(普段の活動)の合計得点」に関して、摂取前との比較において、検体1群で4週以降、後観察期において有意(p<0.01)な改善がみられ、比較例群では12週および後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。
【0058】
(図2−E)「V(健康状態)の合計得点」に関して、プラセボ群と比較して検体1群は8週以降、後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。摂取前との比較においても、検体1群は8週以降、後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。
【0059】
(図2−F)「IからVまでの総合計得点」に関して、プラセボ群と比較して検体1群で、8週以降、後観察期において有意(p<0.05)に改善し、比較例群では、後観察期において有意(p<0.05)な改善が認められた。摂取前との比較においては、検体1群は4週以降、後観察期において有意(p<0.01)な改善がみられ、比較例群では8週以降、後観察期において有意(p<0.01)な改善が認められた。
【0060】
5−2.肩肘手足の痛み
観察期毎(試験開始時(0週)、4週、8週、12週および摂取終了4週後(試験食品摂取16週後))の結果については、足の痛みは、プラセボ群と比較して、検体1群で、試料摂取期間を通して、改善傾向(p<0.1)が認められ、観察期毎の比較では、12週および後観察期においても改善傾向(p<0.1)が観察された。
【0061】
6.総括
今回、軽度の膝関節痛を有する被験者を対象に、主成分としてコラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンを含む試料(比較例)、および、その配合比を変え、更にMSMを含む試料(検体1)の膝関節痛に対する疼痛軽減効果ならびに安全性について検討し、副次的に肩肘手足の痛みに対する疼痛軽減効果に関しても調べた。JKOM食品用変法スコア(I:膝の痛みの程度、II:膝の痛みやこわばり、III:日常生活の状態、IV:普段の活動、V:健康状態、総合I〜V)で評価した結果、プラセボ群と比較して、検体1群は、8週目以降、後観察期においてII、III、Vおよび総合で有意(p<0.05)な改善がみられ、摂取期間中および摂取を中止してもその効果の持続性が確認された。比較例群は、12週においてIIIで有意(p<0.05)な改善、後観察期においてII、III、および総合で有意(p<0.05)な改善が認められ、摂取を中止してもその効果の持続性が確認された。摂取前との比較においては、検体1群で、I〜IVおよび総合において摂取4週以降、有意(p<0.05)な改善、後観察期においては、I〜IVおよび総合で有意(p<0.01)な改善が認められ、摂取期間中および摂取を中止してもその効果の持続性が確認された。比較例群は、4週以降、Iにおいて有意(p<0.05)に改善、8週以降、I〜IIIおよび総合で有意(p<0.05)な改善が認められた。また、後観察期においてもI〜IVおよび総合で有意(p<0.01)な改善がみられ、摂取を中止してもその効果の持続性が確認された。
副次的に調べた肩肘手足の痛みのうち、足の痛み、12週目において、プラセボ群と比較して検体1群に改善傾向(p<0.1)が認められた。
【0062】
他方、身体検査、理学的検査、血液学的検査および血液生化学的検査に及ぼす影響を調べたところ、いずれの検査項目においてもプラセボ群と比較して、検体1群および比較例群では、明らかな変動は認められず、検体1および比較例はこれらの項目に関して悪影響を及ぼさないことが示された。
【0063】
以上の結果により、コラーゲンと、MSM、グルコサミン、コンドロイチンを好適な配合量でその5成分を含む本発明の組成物である検体1は、膝関節の疼痛に対して優れた疼痛軽減効果を有し、かつ、高い安全性を有することが確認され、高齢化社会の到来によって増加する膝疼痛の罹患者にとって、更なる生活の質の向上に有用であることが示された。特に、配合比(量)の異なる従来の組成物と比較して、より少ない個人差で効果を奏することができるという効果の確実性と、摂取中止後も効果が持続するという効果の持続性という特徴を有していた。
【0064】
〔実施例2〕
関節痛の処置において、組織血流量を増加させることができれば、関節炎患部組織での新陳代謝の促進や、処方される有効成分の効果的な到達を行うことができると考えられる。そこで、本発明の組成物の有する組織血流量増加効果について、ラット尾部組織血流量を用いた実験により、検討した。
【0065】
1.実験
1−1.実験方法
8週齢のIGS(Sprague‐Dawley系)雄性ラット(体重254−360g)を試験前日絶食させた(約16〜20時間絶食)。試験当日、除毛後、固定器を用いてラットを固定し、尾根部から約2cmの位置で尾背側部の皮膚上にジョイントファイバー(オメガウェイブ(株))を装着・固定した。ジョイントファイバーはGJプローブ(オメガウェイブ(株))に接続し、GJプローブを介してレーザ組織血流計(オメガフローFLO−N1、オメガウェイブ(株))によって尾部の組織血流量を測定した。固定器内でラットが鎮静化し、尾部組織血流量の値が安定したことを確認した後、測定を開始し、投与前10分間の平均値を投与前値とした。投与前値測定後ただちにラットを固定器から取り出し、経口ゾンデ((有)フチガミ器械)を用いて被験物質を強制経口投与した。投与後ただちにラットを固定器に戻して測定を再開し、被験物質投与後70分までの組織血流量を測定し、10分間隔(0−10分、10−20分、20−30分、30−40分、40−50分、50−60分および60−70分)で各測定ポイントにおける平均組織血流量を求めた。
【0066】
1−2.群構成および被験物質調製
ラットはI群とII群に分けた。検体1主要5成分の配合比(表5)に従って、I群ではコラーゲンの投与量が1g/kgとなるように調製した試料2.02g/kg(検体1としてヒト日量の約20倍量、体重50kgとして換算)を投与した。II群ではコラーゲンを抜いた3成分で調製した試料1.02g/kgを投与した(表6)。I群およびII群で用いる試料は蒸留水に懸濁し、5mL/kgの投与容量となるように調製した。
【0067】
1−3.統計処理
数値は平均値±標準誤差(Mean±SE)で表した。統計解析は、分散比の検定を行い、有意差が認められなかった時にはStudent’−t検定を行い、有意差が認められた時にはWelch’s−t検定を行った。いずれの検定においても有意水準を5%とした。
【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
2.結果
ラット尾部組織血流量における投与前値にI群とII群間の差は認められなかった(表6)。I群において、検体1主要5成分投与後10〜20分頃に急激な尾部組織血流量の増加を示し、投与後20〜30分にほぼピークに達し、投与後40〜50分頃までピークが持続した(図3)。II群において、主要5成分中I型およびII型コラーゲンを抜いた成分の投与後20〜30分頃から尾部組織血流量の緩やかな増加を示し、投与後40〜50分頃にピークに達し、投与後60〜70分まで持続した(図3)。このように、I、II群共に尾部組織血流量の増加を示したが、その程度はコラーゲンを配合したI群の方が強く、投与後20〜50分にII群と比して有意な尾部組織血流量の増加が認められた(図3)。
【0071】
以上の実験の結果、覚醒ラットにおいて、検体1主要5成分の配合比に従ってコラーゲンとして1g/kgとなるように経口投与した結果、尾部組織血流量の増加が認められた。また、主要5成分からI型およびII型コラーゲンを抜いた3成分を投与した時にも組織血流量の増加が認められたが、その程度はI型およびII型コラーゲンを配合した時よりも弱かった。この結果から、検体1には特に強い組織血流量増加作用が確認された。
【0072】
本発明の組成物による組織血流量の増加作用は、関節炎患部組織に対する新陳代謝促進、検体1に処方される主要5成分の効果的な到達に寄与し、関節痛改善剤あるいは食品として特に有効であると考えられる。
【0073】
〔実施例3〕
関節痛において重要な、組織の安定化作用を調べる目的で、本発明の組成物の有する細胞に対する安定化作用について、in vitroで血球細胞を用い、検討した。具体的には、I型コラーゲン、II型コラーゲン、MSM、グルコサミンおよびコンドロイチンからなる組成物の、ラット赤血球の熱溶血に対する影響を調べた。なお、検体1中の各成分の配合量/比は、上記表5に示した。
【0074】
1.実験方法
Wistar系雄性ラット腹部大静脈よりヘパリン加採血し、血液を遠心分離(2000rpm、5分間)して上清を除去した。残渣(赤血球)に0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)を加えて4回赤血球を洗浄(2000rpm、5分間)した。0.15Mリン酸緩衝液で 5%赤血球浮遊液を調整した。各検体を溶解した0.015Mリン酸緩衝液(pH7.4)3mlに5%赤血球浮遊液3mlを加え、53℃に加温した水浴中で20分間インキュベーションした。反応終了後、3分間氷冷して遠心 (3000rpm、10分間) した後、上清液の吸光度を波長 540nmにて測定した。(注:上清液原液では吸光度が振切れてしまうので、蒸留水で4倍希釈した希釈液を用いて測定した。)
【0075】
2.結果
2−1.検体1主要5成分通常配合比における濃度変化による影響
本発明の配合成分を表により処方し、試験液中の濃度を2.5、5、10及び20mg/mlとしてラット赤血球熱溶血に対する影響を検討したところ、濃度依存的な溶血抑制効果を示した(表7および図4)。
【0076】
【表7】

【0077】
2−2.検体1主要5成分中のI型およびII型コラーゲン配合の有無による影響
本発明の配合成分中のI型及びII型コラーゲンの配合の有無による熱溶血に対する影響を検討した(表8)。尚、I型およびII型両コラーゲンを配合した試料の試験液濃度は10mg/mlとした。
I型及びII型両コラーゲン非存在下、すなわち、MSM、グルコサミンおよびコンドロイチンの3成分のみの試料においても、熱溶血に対する抑制効果は認められた。しかし、I型あるいはII型コラーゲンの追加配合によって抑制効果は増強され、両コラーゲンの配合では、さらに増強された(表9、図5)。この増強の程度はI型(5/50.5)又はII型(20/50.5)コラーゲンの配合比に依存していた。
【0078】
【表8】

【0079】
【表9】

【0080】
2−3.検体1主要5成分中のI型及びII型コラーゲンの配合比率の変化による影響
本発明の配合成分中のI型及びII型コラーゲンの配合比率を全成分に対して0、50、75、100、125、150及び200%とした場合の熱溶血に対する影響を検討した(表10)。なお、100%組成の試料の試験液濃度は10mg/mlとした。
熱溶血に対する抑制効果は両コラーゲンの配合比率を上昇させるに従って増強された(表11、図6)。
【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【0083】
〔実施例4〕
抗酸化作用による組織の安定化作用を調べる目的で、本発明の組成物の有する細胞に対する作用について、in vitroで検討した。具体的には、I型コラーゲン、II型コラーゲン、MSM、グルコサミンおよびコンドロイチンからなる組成物の、ラット赤血球のフリーラジカル誘発溶血、及びフリーラジカルそのものに対する影響を調べた。なお、検体1中の各成分の配合量/比は、上記表5に示した。
【0084】
1.実験方法
1−1.ラジカル誘発溶血試験
Wistar系雄性ラット(240−280g)をエーテル麻酔下に開腹し、腹部大静脈よりヘパリン加採血した。血液を2000rpmで10分間遠心し、上清を除去して残渣(赤血球)に等張リン酸緩衝液(PBS(−)、日水製薬(株))を約3倍量加えて混和、遠心した。同操作を3回繰り返し、PBS(−)で20%赤血球懸濁液を調製した。この赤血球懸濁液0.5mlにPBS(−)で調製した225mMの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH、和光純薬工業(株))溶液0.5mlとPBS(−)で調製した被検物質0.5mlを混和し(AAPHの最終濃度は75mM)、37℃、遮光下で160回/分の振とう数にて90分間インキュベートした。インキュベート終了後、流水中に5分間放置し、冷PBS(−)を3mlずつ添加して、混和、遠心し、上清の吸光度を540nmで測定した。なお、陽性対照物質として既知抗酸化物質である尿酸を用いた。
【0085】
1−2.ラジカル消去試験
PBS(−)で調製した被検物質(対照はPBS(−)のみ)600μlにエタノールに溶解した1mMの1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH、和光純薬工業(株))6μlを混和して室温で10分間放置後、517nmでの吸光度を測定した。陽性対照物質は6−ハイドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox)を用いた。Troloxは水に溶けにくいため、DMSOに溶解したTrolox1μl(対照はDMSOのみ)にエタノールに溶解した10μMのDPPH1mlを混和して室温で10分間放置後、517nmでの吸光度を測定した。
【0086】
2.結果
2−1.ラジカル誘発溶血試験の結果
AAPHを用いたフリーラジカル誘発溶血試験において、抗酸化作用を持つ尿酸は濃度依存的に溶血を抑制することが確認されたが、膜安定化作用を持つとされるインドメタシンでは抑制しなかったことから、本膜安定化効果は抗酸化作用によるものであることが確認された(図7)。検体1主要5成分中のI型およびII型コラーゲンの配合の有無による影響を検討したところ、両コラーゲン非存在下の3成分(I(−)II(−))やII型コラーゲン存在下(I(−)II(+))では溶血は抑制されなかったが、I型コラーゲン存在下(I(+)II(−))で溶血抑制作用が認められ、両コラーゲン存在下(I(+)II(+))ではさらに抑制作用が増強した(図8)。次に検体1主要5成分とコラーゲン(I:II=4:1)についてのフリーラジカル誘発溶血に対する濃度依存的な影響を検討したところ、コラーゲン(I:II=4:1)、及びコラーゲン(I:II=4:1)を含む検体1において、濃度依存的な抑制作用が認められた(図9)。そこで、コラーゲンのI型とII型の配合比率を変えて溶血作用を調べたところ、各0.25mg/mlでの平均値の比較ではI:II=4:1が最も強い抑制作用を示した。(図10、表12)。
【0087】
【表12】

【0088】
2−2.ラジカル消去試験の結果
DPPHを用いたラジカル消去試験の結果、コラーゲン(I:II=4:1)に濃度依存的なラジカル消去作用が認められ(図11)、2.5および5mg/mlの濃度において、I型およびII型の各コラーゲン単独よりも強い効果が認められた(図12)。なお、陽性対照物質であるTroloxを用いた際の実験結果は図13に示した。次にコラーゲンのI型とII型の配合比率を変えてラジカル消去率を調べたところ、各2.5mg/mlでの平均値の比較では溶血試験と同様、I:II=4:1が強い抑制作用を示した(図14、表13)。
【0089】
【表13】

【0090】
以上の実施例3及び4から、本発明の配合に基づく組成物は、組織・細胞の抗酸化作用・安定化作用を有することが示唆され、本発明の組成物の有する関節痛改善効果の一因であると考えられた。この抗酸化作用・安定化作用は、本発明の配合比でコラーゲンを有する場合で特に強く、特に、I型コラーゲンとII型コラーゲンを本発明に好適な組成で併用した場合に大きく増強された。
【0091】
以上の、実施例の結果から、本発明の配合比(量)で、コラーゲン、MSM、グルコサミン、コンドロイチンを含む組成物は、これらの成分の何れかの欠けた/あるいは配合比(量)の異なる従来の組成物と比較しても、特に優れた関節痛改善効果を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1a】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1b】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1c】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1d】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1e】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1f】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図1g】実施例1の試験に用いたアンケートを示す。
【図2】実施例1の試験のJKOM食品変法における評価点の推移を示す。それぞれのグラフは、VAS法による膝の痛みの程度(A)、膝の痛みやこわばり(B)、日常生活の状態(C)、普段の生活(D)、健康状態(E)、総合(F)についての試験結果を示し、各点は平均値を示す。▲:プラセボ食群(n=12)、○:比較例食群(n=13)、●:検体1食群(n=14)。*、**;p<0.05、0.01:プラセボ食群との比較(Bonferroni)。#、##;p<0.05、0.01:摂取前との比較(t−検定)。
【図3】実施例2の試験での、覚醒ラットの尾部組織血流量に及ぼす本発明の組成物(主要5成分)の影響を数値化し、平均値±標準誤差で表した(n=7)。*p<0.05、**p<0.01:対II群(Student’s−t検定)。
【図4】本発明の組成物の示す、ラット赤血球溶血抑制効果のグラフである。本発明の組成物(主要5成分)は表5に示す配合比で調整した。( )内は抑制率を示す。
【図5】本発明の組成物におけるI型/II型コラーゲンの有無とラット赤血球溶血抑制効果の関係を示したグラフである。IおよびII型コラーゲン配合の有無による各試料の配合量は表8に示した。( )内は抑制率を示す。
【図6】本発明の組成物におけるコラーゲン配合比とラット赤血球溶血抑制効果の関係を示したグラフである。IおよびII型コラーゲン配合比率の変化による各試料の配合量は表10に示した。( )内は抑制率を示す。
【図7】フリーラジカル誘発溶血に対する、尿酸及びインドメタシンの影響を、ラジカル発生剤としてAAPHを用いて調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=3。
【図8】フリーラジカル誘発溶血に対する、本発明の組成物(主要5成分)のI/II型コラーゲン有無の影響を調べた実施例4の実験結果のグラフである。本発明の組成物の完全な組成(I(+)、II(+))での濃度は0.5mg/mlとした。n=3。
【図9】フリーラジカル誘発溶血に対する本発明の組成物及びコラーゲン(I型:II型=4:1)の影響を調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=3。*、**:p<0.05、0.01;vs対照(Dunnet multiple comparison)。
【図10】フリーラジカル誘発溶血に対するコラーゲン(I型:II型)の各比率の違いによる影響を調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=6。
【図11】コラーゲン(I型:II型=4:1)のDPPHラジカル消去作用を調べた実施例4の実験結果のグラフである。**:p<0.01;vs対照(Dunnet multiple comparison)。
【図12】DPPHラジカル消去試験に対するコラーゲンのI型、II型およびI型:II型=4:1の影響を調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=3。+、++:p<0.05、0.01;vs I型:II型=4:1(Dunnet multiple comparison)。
【図13】DPPHラジカル消去試験における陽性対照物質Troloxの効果を調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=3。**:p<0.01;vs対照(Dunnet multiple comparison)。
【図14】DPPHラジカル消去試験に対するコラーゲン(I型:II型)の各比率の違いによる影響を調べた実施例4の実験結果のグラフである。n=3。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善用組成物であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む組成物。
【請求項2】
一日当たり800mg以上の摂取量のI型コラーゲンと、一日当たり400mg以上の摂取量のII型コラーゲンとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コラーゲンの少なくとも一部がコラーゲンペプチドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
一日当たり500mg以上の摂取量のMSMを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
一日当たり800mg以上の摂取量のグルコサミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
一日当たり500mg以上の摂取量のコンドロイチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
顆粒状の形態で提供される、請求項1ないし6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
機能性食品として調製されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
コラーゲンと、MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンとを含む関節痛改善剤であって、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンを含む関節痛改善剤。
【請求項10】
MSMと、グルコサミンと、コンドロイチンと、一日当たり2000mg以上の摂取量のコラーゲンとを含む食品。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−51833(P2009−51833A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198906(P2008−198906)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(591163694)全薬工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】