閾値設定方法、物標探知方法、閾値設定装置、物標探知装置、閾値設定プログラム、および物標探知プログラム
【課題】不要成分と物標とを識別する閾値を、物標の有無に影響されずに自動で設定する。
【解決手段】注目の距離位置[n]のエコー信号のレベルEcho[n]が、閾値レベルTh[n]よりも低ければ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を低く更新設定する。エコー信号のレベルEcho[n]が、閾値レベルTh[n]よりも高く、閾値レベルTh[n]が注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも高ければ、閾値レベルTh[n]を低く更新設定する。エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも高く、閾値レベルTh[n]が注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも低ければ、閾値レベルTh[n]を高く更新設定する。
【解決手段】注目の距離位置[n]のエコー信号のレベルEcho[n]が、閾値レベルTh[n]よりも低ければ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を低く更新設定する。エコー信号のレベルEcho[n]が、閾値レベルTh[n]よりも高く、閾値レベルTh[n]が注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも高ければ、閾値レベルTh[n]を低く更新設定する。エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも高く、閾値レベルTh[n]が注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも低ければ、閾値レベルTh[n]を高く更新設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いて海上の物標や陸地を検出するための閾値を自動で設定する自動閾値設定方法および当該自動閾値設定方法を用いた物標探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、探知用の電波を送信し、当該送信電波のエコー信号に基づいて物標を探知する物標探知装置が各種考案されている。このような物標探知装置の一つとして、船舶に備えられた物標探知装置では、シークラッタやノイズと、他船や陸地等の目的とする物標とを識別するために、物標検出用の閾値を設定することがある。
【0003】
従来の閾値の設定方法としては、距離方向、すなわちアンテナ位置を基準として遠ざかる方向に沿うエコー信号群を用いて移動平均を算出する方法(所謂CFAR)がある。また、特許文献1に示すように、距離方向に沿うエコー信号群のヒストグラムを算出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−256626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の移動平均を用いる方法では、他船や陸地等の物標が、移動平均の算出対象となる区間内に存在すると、物標のエコーレベルに応じて、閾値が高くなってしまい、物標のエコーが抑圧されてしまう。
【0006】
また、ヒストグラムを算出する領域における物標のエコーのサンプル数が少ない場合、やクラッタ・レベルと物標エコーのレベル差が小さい場合にはヒストグラムにクラッタと物標を明確に分離する谷が現れないので閾値の決定が困難である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、シークラッタやノイズと物標との識別のための閾値を、物標の有無に影響されることなく、自動で且つより正確に設定することができる閾値設定方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アンテナを回転しながら電波を送信し、アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定する閾値設定方法に関する。この閾値設定方法では、所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する工程を有する。さらに、閾値設定方法では、注目位置のエコー信号のレベルと、注目位置に設定された閾値レベルと、注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程と、を有する。
【0009】
この方法では、注目位置のエコー信号のレベル、閾値レベル、および注目位置に対してアンテナ側に近い位置の閾値レベルから注目位置の閾値レベルが更新されるので、注目位置近傍の状況に応じた閾値の更新が行われる。
【0010】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルと注目位置の閾値レベルとの大小関係を得る。閾値レベルを更新設定する工程では、注目位置の閾値レベルと該注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係を得る。そして、閾値レベルを更新設定する工程では、これら二つの大小関係の結果に基づいて、注目位置の閾値レベルを更新設定する。
【0011】
この方法では、より具体的に各レベルの大小関係に基づいて閾値レベルの更新設定を行うことを示している。
【0012】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する。閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号が注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する。
【0013】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する。
【0014】
これらの方法では、それぞれの大小関係による、より具体的な閾値レベルの更新方法、すなわち、閾値レベルの低下や閾値レベルの向上の判断基準を示している。
【0015】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する場合の閾値レベルの低下量を、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合の閾値レベルの低下量よりも少なくなるように、設定する。
【0016】
この方法では、上述の大小関係において、閾値レベルを低下させる処理が複数であるので、それぞれの低下量の関係を示している。
【0017】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルと注目位置に設定された閾値レベルとの比較の際に、該閾値レベルから所定のオフセット値を減算した値を比較に用いてもよい。
【0018】
このようなオフセット値を設けることで、閾値が収束するレベルを制御することができる。
【0019】
また、この発明の閾値設定方法では、アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定工程と、特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定工程と、を有する。
【0020】
この方法では、単に一方位の距離方向に沿った閾値の設定ではなく、アンテナの回転する全周に亘る閾値の設定方法を示している。すなわち、上述の一方位に対する距離方向に沿った各位置での適応的な閾値の設定を、全ての方位で行うこともできるが、他の方法でも可能であることを示している。この方法では、全周における所定の方位角度間隔からなる特定方位のみで、上述の閾値設定を行う。そして、特定方位以外の個別方位では、特定方位の閾値を用いて、閾値設定を行う。これにより、全ての方位に上述の閾値設定を行うよりも、処理を簡素化できる。
【0021】
また、この発明の閾値設定方法では、補間設定する工程は、個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルにおける同じ距離位置の閾値レベルを、個別方位と二つの特定方位とのそれぞれの方位角差で重み付けして設定してもよい。
【0022】
この方法では、全周に亘る閾値の設定方法における補間設定の具体的内容を示している。そして、この方法を用いることで、簡素な演算処理で補間設定が可能になる。
【0023】
また、この発明は、上述の閾値設定方法を有する物標探知方法に関し、当該物標探知方法は、設定された閾値レベルよりもレベルが高いエコー信号を物標のエコー信号と判断する工程、を有する。
【0024】
この方法では、閾値が状況に適応して設定されるので、物標エコーをより正確に識別することができる。
【0025】
また、この発明は、上述の閾値設定方法を有する物標探知方法に関し、当該物標探知方法は、設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する工程、を有する。
【0026】
この方法では、閾値が状況に適応して設定されるので、不要成分のエコーをより正確に抑圧できる。これにより、不要成分のエコーが抑圧され、物標のエコーが鮮明となる探知画像データを生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、物標エコーとシークラッタやノイズ等の不要成分のエコーとの識別のための閾値を、状況に応じて適応的に設定することができる。これにより、物標の有無に影響されることなく、適する閾値を自動で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の物標探知装置の全体構成図である。
【図2】閾値設定のフローチャートである。
【図3】閾値設定フローにより行われる各種の閾値設定処理の内容を説明するための図である。
【図4】物標が無くシークラッタやノイズのみが存在する場合の各距離位置の閾値の適応の仕方、および、物標があり物標の存在区間以外にノイズが存在する場合の閾値の適応の仕方を示す図である。
【図5】図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした3D図である。
【図6】所定方位における図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした図である。
【図7】代表方位の設定概念を示す図である。
【図8】個別方位の閾値の補間算出方法を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態の方法を用いたことによる全方位の閾値の適応設定状態を示す図である。
【図10】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(シークラッタと大型船舶)を表す図である。
【図11】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(陸地)を表す図である。
【図12】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(陸地)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係る閾値設定方法を含む物標探知方法および閾値設定装置を備える物標探知装置について、図を参照して説明する。図1は本実施形態を含む本発明の物標探知装置1の全体構成図である。
【0030】
物標探知装置1は、送信制御部11、送受切替器12、アンテナ13、受信機14、本願の閾値設定装置に相当する閾値設定部15、および物標探知部16を備える。
【0031】
送信制御部11は、所定の送信タイミング間隔でパルス状の送信信号を生成し、送受切替器12へ出力する。送受切替器12は、送信制御部11からの送信信号をアンテナ13へ出力する。
【0032】
アンテナ13は、所定の回転速度で回転しながら、送信信号を電波に変換して外部へ放射し、外部からの電波を受信して電気信号に変換し、受信信号として、送受切替器12へ出力する。送受切替器12は、アンテナ13からの受信信号を受信機14へ出力する。
【0033】
受信機14は、受信信号を所定の時間間隔でサンプリングし、エコー信号を生成する。この際、受信機14は、方位情報に基づいて、方位毎のスイープとして、距離方向に沿ってレベル遷移するエコー信号を生成する。受信機14は、スイープ単位で、エコー信号を閾値設定部15および物標探知部16へ出力する。ここで、方位情報は、例えば、アンテナ13からの方位角情報(特定方向(例えば船首方位)を基準方位とする)と、当該物標探知装置が装備される船舶の船首方位と、により設定される絶対方位である。なお、方位情報は、閾値設定部15および物標探知部16にも与えられる。
【0034】
閾値設定部15は、例えば後述の閾値設定アルゴリズムで書き込まれた閾値設定プログラムや、設定した閾値およびエコー信号を記憶するメモリと、閾値設定アルゴリズムを実行する処理演算部とを備える。
【0035】
閾値設定部15は、具体的なアルゴリズムは後述するが、注目位置のエコー信号のレベルと、該注目位置に対して既に設定されている閾値のレベルと、スイープにおける注目位置よりもサンプリング距離間隔で一つ分だけアンテナ側に隣接する位置(以下、単に「隣接位置」と称する。)の閾値のレベルに基づいて、注目位置の閾値のレベルを更新設定する。すなわち、閾値設定部15は、注目位置の状況、具体的にはシークラッタやノイズの不要成分のレベルや物標の有無に応じて、最適な閾値を適応的に更新設定する。閾値設定部15は、設定した閾値を、物標探知部16へ出力する。
【0036】
物標探知部16は、例えば物標探知アルゴリズムが書き込まれた物標探知プログラムや閾値設定部15からの閾値およびエコー信号を記憶するメモリと、物標探知アルゴリズムを実行する処理演算部とを備える。なお、物標探知部16は、上述の閾値設定部15と同じリソースを用いてもよく、個別のリソースであってもよい。
【0037】
物標探知部16は、受信機14からのエコー信号と、閾値設定部15で設定されたそれぞれのエコー信号に対応する閾値とに基づいて、物標探知処理を実行する。物標探知処理とは、例えば、物標検出処理や探知画像データ形成処理である。物標検出処理とは、エコー信号のレベルが閾値のレベルよりも高ければ、当該エコー信号が物標によるエコー信号であると判断し、当該判断結果を出力する処理である。探知画像データ形成処理とは、閾値のレベルよりも低いエコー信号を抑圧することで、閾値のレベル以上のエコー信号のみが、より際だって現れるような画像データを形成する処理である。そして、上述の適応的な閾値の更新設定を行うことで、シークラッタやノイズ等の不要成分を含む受信信号から、より正確に物標の検出を行うことができる。また、上述の適応的な閾値の更新設定を行うことで、シークラッタやノイズ等の不要成分を抑圧し、より正確で明確に物標の画像が現れる探知画像を生成することができる。
【0038】
次に、閾値設定方法(閾値設定アルゴリズム)について、より具体的に説明する。図2は、閾値設定のフローチャートである。図3は、閾値設定フローにより行われる各種の閾値設定処理の内容を説明するための図である。図3(A)はステップS105の処理を説明する図であり、図3(B)はステップS106の処理を説明するための図であり、図3(C)はステップS107の処理を説明するための図である。なお、以下の説明では、のスイープデータにおける或る位置[n](注目の距離位置)の閾値の更新設定についてのみ示すが、このような閾値の更新設定は、スイープデータを構成する各エコー信号に対応する距離位置毎に行われる。さらに、このような設定は各スキャンで継続的に行われる。ここで、スキャンとは、アンテナ一回転分のエコー信号を取り扱う期間を示す。すなわち、アンテナが一回転する間に送信される各送信信号に対するエコー信号の集まりが、1スキャン分のエコー信号となる。
【0039】
まず、各位置の閾値には初期値が設定されている。このため、スイープデータにおける最もアンテナ側の距離位置の閾値は初期値のままとなるが、最もアンテナ側の距離位置以外の距離位置では、以下のフローで示されるアルゴリズムにより、閾値が状況に適応していく。
【0040】
閾値設定部15は、受信機14より入力されたスイープ単位にエコー信号から、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]を取得する。また、Th[n]を読み出す。閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]と閾値レベルTh[n]を比較する(S101)。
【0041】
閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きいと判断すると(S102:Yes)、注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]を読み出し、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]と隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]とを比較する(S103)。
【0042】
閾値設定部15は、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]よりも、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]の方が大きいと判断すると(S104:Yes)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値δを加算する補正を行う(S105)。
【0043】
Th[n]=Th[n]+δ −(式A)
なお、補正値δは、例えば、物標エコーのレベルとノイズレベルとの相対差に基づいて、当該相対差よりも所定レベル以上小さくなるように設定するとよい。
【0044】
この処理を図に示すと、図3(A)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きく、且つ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]が、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも小さい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]に近づけるように、δ分だけ向上させる。以下、この処理を「A処理」と称する。
【0045】
一方、閾値設定部15は、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]よりも、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]の方が小さいと判断すると(S104:No)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値βδを減算する補正を行う(S106)。
【0046】
Th[n]=Th[n]−βδ −(式B)
なお、βは、0<β<1からなる実数に設定されており、このようなβの設定を用いることで、物標エコーの期間にA処理により閾値が一時的に上昇しても、緩やかに閾値を低下させることができる。
【0047】
この処理を図に示すと、図3(B)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きく、且つ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]が、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも大きい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]に近づけるように、βδ分だけ低下させる。以下、この処理を「B処理」と称する。
【0048】
また、上述のステップS102においてNoの場合、すなわち、閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも小さいと判断すると(S102:No)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値δを減算する補正を行う(S107)。
【0049】
Th[n]=Th[n]−δ −(式C)
この処理を図に示すと、図3(C)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも小さい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]をδ分だけ低下させる。以下、この処理を「C処理」と称する。
【0050】
以上のように、注目位置[n]の閾値Th[n]の更新処理を、当該注目位置[n]のエコー信号のレベルEcho[n]および閾値Th[n]と、近接位置の閾値レベルTh[n−1]とから実行することで、図4に示すような各距離位置の閾値を設定することができる。図4(A)は物標が無く、シークラッタやノイズのみが存在する場合の各距離位置の閾値の適応の仕方を示している。図4(B)は物標があり、物標の存在区間以外にノイズが存在する場合の閾値の適応の仕方を示している。なお、図4において、細実線がエコー信号を示し、太実線が適応後の閾値カーブを示し、太破線が初期閾値カーブを示す。
【0051】
(シークラッタの発生区間)
まず、閾値の更新処理が開始されると、閾値レベルがシークラッタのレベル程度になるまでは、連続するスキャンで上述のC処理が継続的に実行され、閾値レベルは徐々に低下していく。
【0052】
次に、閾値レベルがシークラッタのピークレベル程度まで低下すると、シークラッタのエコー信号のレベルが閾値レベルよりも高くなることがある。この場合にはA処理が実行される。ここで、シークラッタのエコーは、アンテナからの距離に応じて順次レベルが低下する距離依存性を有する。したがって、同じ距離位置であればスキャンの相違によるレベル差は大きくない。このため、上述のようにA処理が行われ、複数スキャンに亘って閾値の更新処理が続けられることで、シークラッタの発生区間では、シークラッタの平均レベルに略等しいレベルの閾値が設定される。これにより、図4(A)に示すように、シークラッタの平均レベルに応じた閾値を適応的に自動で設定することができる。
【0053】
(ノイズの発生区間)
まず、シークラッタの場合と同様に、閾値の更新処理が開始されると、閾値レベルがノイズのレベル程度になるまでは、上述のC処理が連続するスキャンで継続的に実行され、閾値レベルは徐々に低下していく。
【0054】
次に、閾値レベルがノイズのレベル程度まで低下すると、ノイズのエコー信号のレベルと閾値レベルとの大小関係が頻繁に入れ替わる。また、距離方向に隣り合う位置間で、大小関係が殆ど継続的に同じにならない。この場合には、A処理,B処理,C処理がランダムに実行され、ノイズの発生区間中のほぼ全体で実行される。
【0055】
(物標エコーの存在区間)
物標エコーのレベルは、図4(B)に示すように、ノイズのエコー信号のレベルと比較して高く、且つ距離方向に沿って連続的に高い状態が維持される。このため、次に示すように、閾値が適応していく。
【0056】
ノイズに近接する物標のアンテナ側の境界部では、B処理が適用され、当該物標の境界部の距離位置の閾値が物標のアンテナ側の境界部直前のノイズレベルに収束していく。また、物標エコーの範囲におけるさらに遠方側の各距離位置の閾値も、A処理、B処理の作用によって物標のアンテナ側の境界部直前のノイズレベルに収束していく。これにより、物標エコーの範囲であっても、閾値は、ノイズの発生区間と略同じレベルとなる。この際、物標エコーのアンテナ側のノイズレベルにより、隣接位置の閾値が、注目する距離位置の閾値よりも大きくなることがある。この場合には、A処理が実行され、閾値が向上する。しかしながら、上述のように、ノイズレベルは一定でないので、A処理が継続的に実行されることはなく、A処理とB処理とが適宜実行される。したがって、結果的に、物標エコーの範囲であっても、閾値は、ノイズの発生区間と略同じレベルとなる。
【0057】
以上のように、本実施形態の閾値設定処理を用いることで、シークラッタやノイズのレベル等の不要成分のレベルに応じ、且つ物標の有無に影響されることなく、適応的に自動で閾値を設定することができる。そして、このように、最適化された閾値を用いることで、上述のように、より正確な物標探知処理を行うことができる。
【0058】
なお、上述の説明では、閾値の更新設定に利用する補正値δを一定にする場合を示したが、例えば、閾値の初期設定から所定の複数スキャンの間は、補正値δをより大きく設定してもよい。このような設定を行うことで、より速くシークラッタやノイズのレベルに閾値が近づくので、適応速度を向上させることができる。
【0059】
図5は、図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした3D図である。このシミュレーションは、上述の適応速度を速くする処理を含んだ結果である。図5において縦軸は閾値レベルを示し、第1の横軸はスキャンの遷移を示し、第2の横軸は距離方向の位置を示す。図5に示すように、本実施形態の閾値更新処理を行うことで、スキャンを繰り返す毎に、閾値が状況に応じたレベルに適応されていることが理解できる。
【0060】
また、図6は、所定方位における図4(A)に示す状況での所定スキャン(20スキャン)後の閾値カーブをシミュレーションした図である。図6において、太実線は20スキャン後の閾値カーブを示し、細実線は各スキャンでのエコー信号のレベルを示す。このように、本実施形態の閾値更新処理を行うことで、シークラッタやノイズ等の状況に応じたレベルに閾値が適応されていることが理解できる。
【0061】
また、上述の説明では、閾値レベルTh[n]とエコー信号のレベルEcho[n]をそのまま比較する例を示したが、閾値Th[n]を所定オフセット値αで減算した値と、エコー信号のレベルEcho[n]を比較してもよい。この際、所定オフセット値αは、例えばノイズの変動レベルに応じて設定するとよい。このような所定オフセット値αで減算した値を用いることで、ノイズ発生領域においてもノイズの変動によるA処理とC処理の発生頻度に偏りを生じさせ、閾値の収束するレベルを制御することができる。
【0062】
また、上述の説明では、補正値δの加算や減算により、閾値の補正(更新設定)を行う例を示したが、補正係数化して、乗算や除算して閾値の補正(更新設定)を行うこともできる。
【0063】
次に、第2の実施形態に係る閾値設定方法を含む物標探知方法および閾値設定装置を備える物標探知装置について、図を参照して説明する。本実施形態の閾値設定方法では、方位方向に対する閾値の設定方法を示す。
【0064】
上述の第1の実施形態に示した閾値設定方法は、一方位に対する各距離位置での閾値の適応方法を示している。ここで、アンテナは、上述のように回転しており、物標探知装置は、通常、全周囲に対する物標探知を行う。したがって、各方位、すなわち各スイープデータ毎に、上述の閾値の適応処理を行うことで、全周囲に亘る閾値の適応処理が可能となる。しかしながら、本実施形態では、第1の実施形態に示した特定方位に対する閾値の適応処理を利用しながら、他の方法で、全周囲の閾値を設定する。
【0065】
まず、アンテナ13の回転方向に沿う方位角方向に対して、図7に示すように、所定の角度間隔で、複数の代表方位を設定する。図7は、代表方位の設定概念を示す図である。
【0066】
代表方位は、絶対方位で北方向を0°方向(基準方向)として全周(360°)を所定方位角(Δθ)間隔で分割して得られる。閾値設定部15は、このような代表方位θ1,θ2,・・・を予め記憶している。
【0067】
閾値設定部15は、代表方位のスイープデータを取得すると、上述の第1の実施形態に示した方法を用いて、各距離位置の閾値を更新設定する。例えば、閾値設定部15は、代表方位θ1のスイープデータを取得すると、各距離位置の閾値Th1を更新設定し、代表方位θ2のスイープデータを取得すると、各距離位置の閾値Th2を更新設定する。
【0068】
次に、閾値設定部15は、代表方位間の個別方位の閾値を、当該個別方位を挟む二つの代表方位の閾値から補間算出する。図8は、個別方位の閾値の補間算出方法を説明するための図であり、図8(A)は代表方位と個別方位との位置関係例を示し、図8(B)は個別方位の閾値の設定概念を示す図である。
【0069】
閾値設定部15は、個別方位θaの距離位置[n]の閾値Tha[n]を算出する場合、上述のようにスイープデータとともに得られる絶対方位から個別方位θaを取得する。そして、閾値設定部15は、当該個別方位θaに対して反時計回り側で最も近い代表方位θmと、個別方位θaとの方位角差Δθmaを算出する。
【0070】
閾値設定部15は、個別方位θaを二つの代表方位θm,θm+1の注目の距離位置[n]の閾値Thm[n],Thm+1[n]を取得する。閾値設定部15は、個別方位θaの距離位置[n]の閾値Tha[n]を、図8(B)に示すような補間算出の概念を用いて、次式から算出する。
【0071】
Tha[n]=(Δθma/Δθ)*Thm[n]+(1−Δθma/Δθ)*Thm+1[n]
閾値設定部15は、このような補間算出処理を個別方位θaの各距離位置で実行する。これにより、全周囲方向の各距離位置での閾値を更新設定することができる。そして、この方法を用いることで、全周囲方向の各距離位置のすべてで、第1の実施形態に示したような処理を行う必要が無い。これにより、全体の処理負荷を軽減し、高速化することができる。この際、このような処理を行ったとして、実用上、十分に正確な閾値設定が可能である。これは、例えばシークラッタは波の反射であり、ある程度の幅をもって現れる。したがって、代表方位の間隔Δθを適宜設定することで、すべての方位に対して適応閾値設定処理を行わずとも、十分に波の状態を反映した閾値を設定できるからである。同様に、物標エコーも所定の幅を有するので、シークラッタの場合と同様の作用効果が得られる。
【0072】
上述のような処理を用いることで、図9に示すような全方位に適応した閾値が設定される。図9(A)は、全方位の閾値の適応設定状態を示す図であり、縦軸が閾値レベルを示し、第1の横軸が方位、第2の横軸が距離方向位置を示す。図9(B)は、図9(A)の方位方向を重ねてみた図である。図9(A),(B)に示すように、本実施形態の方法を用いることで、それぞれの方位の状況に応じた閾値設定を行うことができる。なお、この閾値設定の分布を用いることで、波が到来する方向および高さを推定することもできる。
【0073】
また、上述のような構成および処理を行うことで、図10、図11、図12に示すような効果が得られる。図10、図11、図12は、本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果を表す図である。それぞれ(A)がエコー信号をそのまま表示した探知画像を示し、(B)が本発明の適応型の閾値設定処理を行い、閾値以下のエコーを抑圧した探知画像を示す。また、図10は大きなシークラッタと大型船舶が存在する場合を示し、図11、図12は小さなシークラッタと陸地がある場合を示す。
【0074】
図10、図11、図12に示すように、本発明の適応型の閾値設定処理を行うことで、シークラッタのレベルに応じるとともに、大型船舶や陸地の存在する区間でも、当該大型船舶や陸地のエコーに影響されることなくノイズのレベルに応じて、閾値が自動で設定される。これにより、各図の(A)に示すような従来の大型船舶や陸地とともにシークラッタの映り込みが有った探知画像でなく、各図の(B)に示すように、大型船舶や陸地を残しながら、シークラッタのみを抑圧した探知画像を確実に生成することができる。
【0075】
また、上述の説明では、船舶用のレーダ装置に利用する場合の例を示したが、所定の探知信号を送信して、そのエコー信号を取得する装置であれば、上述の処理を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1−物標探知装置、11−送信制御部、12−送受切替器、13−アンテナ、14−受信機、15−閾値設定部、16−物標探知部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いて海上の物標や陸地を検出するための閾値を自動で設定する自動閾値設定方法および当該自動閾値設定方法を用いた物標探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、探知用の電波を送信し、当該送信電波のエコー信号に基づいて物標を探知する物標探知装置が各種考案されている。このような物標探知装置の一つとして、船舶に備えられた物標探知装置では、シークラッタやノイズと、他船や陸地等の目的とする物標とを識別するために、物標検出用の閾値を設定することがある。
【0003】
従来の閾値の設定方法としては、距離方向、すなわちアンテナ位置を基準として遠ざかる方向に沿うエコー信号群を用いて移動平均を算出する方法(所謂CFAR)がある。また、特許文献1に示すように、距離方向に沿うエコー信号群のヒストグラムを算出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−256626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の移動平均を用いる方法では、他船や陸地等の物標が、移動平均の算出対象となる区間内に存在すると、物標のエコーレベルに応じて、閾値が高くなってしまい、物標のエコーが抑圧されてしまう。
【0006】
また、ヒストグラムを算出する領域における物標のエコーのサンプル数が少ない場合、やクラッタ・レベルと物標エコーのレベル差が小さい場合にはヒストグラムにクラッタと物標を明確に分離する谷が現れないので閾値の決定が困難である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、シークラッタやノイズと物標との識別のための閾値を、物標の有無に影響されることなく、自動で且つより正確に設定することができる閾値設定方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アンテナを回転しながら電波を送信し、アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定する閾値設定方法に関する。この閾値設定方法では、所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する工程を有する。さらに、閾値設定方法では、注目位置のエコー信号のレベルと、注目位置に設定された閾値レベルと、注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程と、を有する。
【0009】
この方法では、注目位置のエコー信号のレベル、閾値レベル、および注目位置に対してアンテナ側に近い位置の閾値レベルから注目位置の閾値レベルが更新されるので、注目位置近傍の状況に応じた閾値の更新が行われる。
【0010】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルと注目位置の閾値レベルとの大小関係を得る。閾値レベルを更新設定する工程では、注目位置の閾値レベルと該注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係を得る。そして、閾値レベルを更新設定する工程では、これら二つの大小関係の結果に基づいて、注目位置の閾値レベルを更新設定する。
【0011】
この方法では、より具体的に各レベルの大小関係に基づいて閾値レベルの更新設定を行うことを示している。
【0012】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する。閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号が注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する。
【0013】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する。
【0014】
これらの方法では、それぞれの大小関係による、より具体的な閾値レベルの更新方法、すなわち、閾値レベルの低下や閾値レベルの向上の判断基準を示している。
【0015】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、注目位置の閾値レベルが注目位置と同じスイープ上における距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、閾値レベルを低くするように更新設定する場合の閾値レベルの低下量を、注目位置のエコー信号のレベルが注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合の閾値レベルの低下量よりも少なくなるように、設定する。
【0016】
この方法では、上述の大小関係において、閾値レベルを低下させる処理が複数であるので、それぞれの低下量の関係を示している。
【0017】
また、この発明の閾値設定方法では、注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、注目位置のエコー信号のレベルと注目位置に設定された閾値レベルとの比較の際に、該閾値レベルから所定のオフセット値を減算した値を比較に用いてもよい。
【0018】
このようなオフセット値を設けることで、閾値が収束するレベルを制御することができる。
【0019】
また、この発明の閾値設定方法では、アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定工程と、特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定工程と、を有する。
【0020】
この方法では、単に一方位の距離方向に沿った閾値の設定ではなく、アンテナの回転する全周に亘る閾値の設定方法を示している。すなわち、上述の一方位に対する距離方向に沿った各位置での適応的な閾値の設定を、全ての方位で行うこともできるが、他の方法でも可能であることを示している。この方法では、全周における所定の方位角度間隔からなる特定方位のみで、上述の閾値設定を行う。そして、特定方位以外の個別方位では、特定方位の閾値を用いて、閾値設定を行う。これにより、全ての方位に上述の閾値設定を行うよりも、処理を簡素化できる。
【0021】
また、この発明の閾値設定方法では、補間設定する工程は、個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルにおける同じ距離位置の閾値レベルを、個別方位と二つの特定方位とのそれぞれの方位角差で重み付けして設定してもよい。
【0022】
この方法では、全周に亘る閾値の設定方法における補間設定の具体的内容を示している。そして、この方法を用いることで、簡素な演算処理で補間設定が可能になる。
【0023】
また、この発明は、上述の閾値設定方法を有する物標探知方法に関し、当該物標探知方法は、設定された閾値レベルよりもレベルが高いエコー信号を物標のエコー信号と判断する工程、を有する。
【0024】
この方法では、閾値が状況に適応して設定されるので、物標エコーをより正確に識別することができる。
【0025】
また、この発明は、上述の閾値設定方法を有する物標探知方法に関し、当該物標探知方法は、設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する工程、を有する。
【0026】
この方法では、閾値が状況に適応して設定されるので、不要成分のエコーをより正確に抑圧できる。これにより、不要成分のエコーが抑圧され、物標のエコーが鮮明となる探知画像データを生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、物標エコーとシークラッタやノイズ等の不要成分のエコーとの識別のための閾値を、状況に応じて適応的に設定することができる。これにより、物標の有無に影響されることなく、適する閾値を自動で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の物標探知装置の全体構成図である。
【図2】閾値設定のフローチャートである。
【図3】閾値設定フローにより行われる各種の閾値設定処理の内容を説明するための図である。
【図4】物標が無くシークラッタやノイズのみが存在する場合の各距離位置の閾値の適応の仕方、および、物標があり物標の存在区間以外にノイズが存在する場合の閾値の適応の仕方を示す図である。
【図5】図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした3D図である。
【図6】所定方位における図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした図である。
【図7】代表方位の設定概念を示す図である。
【図8】個別方位の閾値の補間算出方法を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態の方法を用いたことによる全方位の閾値の適応設定状態を示す図である。
【図10】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(シークラッタと大型船舶)を表す図である。
【図11】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(陸地)を表す図である。
【図12】本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果(陸地)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係る閾値設定方法を含む物標探知方法および閾値設定装置を備える物標探知装置について、図を参照して説明する。図1は本実施形態を含む本発明の物標探知装置1の全体構成図である。
【0030】
物標探知装置1は、送信制御部11、送受切替器12、アンテナ13、受信機14、本願の閾値設定装置に相当する閾値設定部15、および物標探知部16を備える。
【0031】
送信制御部11は、所定の送信タイミング間隔でパルス状の送信信号を生成し、送受切替器12へ出力する。送受切替器12は、送信制御部11からの送信信号をアンテナ13へ出力する。
【0032】
アンテナ13は、所定の回転速度で回転しながら、送信信号を電波に変換して外部へ放射し、外部からの電波を受信して電気信号に変換し、受信信号として、送受切替器12へ出力する。送受切替器12は、アンテナ13からの受信信号を受信機14へ出力する。
【0033】
受信機14は、受信信号を所定の時間間隔でサンプリングし、エコー信号を生成する。この際、受信機14は、方位情報に基づいて、方位毎のスイープとして、距離方向に沿ってレベル遷移するエコー信号を生成する。受信機14は、スイープ単位で、エコー信号を閾値設定部15および物標探知部16へ出力する。ここで、方位情報は、例えば、アンテナ13からの方位角情報(特定方向(例えば船首方位)を基準方位とする)と、当該物標探知装置が装備される船舶の船首方位と、により設定される絶対方位である。なお、方位情報は、閾値設定部15および物標探知部16にも与えられる。
【0034】
閾値設定部15は、例えば後述の閾値設定アルゴリズムで書き込まれた閾値設定プログラムや、設定した閾値およびエコー信号を記憶するメモリと、閾値設定アルゴリズムを実行する処理演算部とを備える。
【0035】
閾値設定部15は、具体的なアルゴリズムは後述するが、注目位置のエコー信号のレベルと、該注目位置に対して既に設定されている閾値のレベルと、スイープにおける注目位置よりもサンプリング距離間隔で一つ分だけアンテナ側に隣接する位置(以下、単に「隣接位置」と称する。)の閾値のレベルに基づいて、注目位置の閾値のレベルを更新設定する。すなわち、閾値設定部15は、注目位置の状況、具体的にはシークラッタやノイズの不要成分のレベルや物標の有無に応じて、最適な閾値を適応的に更新設定する。閾値設定部15は、設定した閾値を、物標探知部16へ出力する。
【0036】
物標探知部16は、例えば物標探知アルゴリズムが書き込まれた物標探知プログラムや閾値設定部15からの閾値およびエコー信号を記憶するメモリと、物標探知アルゴリズムを実行する処理演算部とを備える。なお、物標探知部16は、上述の閾値設定部15と同じリソースを用いてもよく、個別のリソースであってもよい。
【0037】
物標探知部16は、受信機14からのエコー信号と、閾値設定部15で設定されたそれぞれのエコー信号に対応する閾値とに基づいて、物標探知処理を実行する。物標探知処理とは、例えば、物標検出処理や探知画像データ形成処理である。物標検出処理とは、エコー信号のレベルが閾値のレベルよりも高ければ、当該エコー信号が物標によるエコー信号であると判断し、当該判断結果を出力する処理である。探知画像データ形成処理とは、閾値のレベルよりも低いエコー信号を抑圧することで、閾値のレベル以上のエコー信号のみが、より際だって現れるような画像データを形成する処理である。そして、上述の適応的な閾値の更新設定を行うことで、シークラッタやノイズ等の不要成分を含む受信信号から、より正確に物標の検出を行うことができる。また、上述の適応的な閾値の更新設定を行うことで、シークラッタやノイズ等の不要成分を抑圧し、より正確で明確に物標の画像が現れる探知画像を生成することができる。
【0038】
次に、閾値設定方法(閾値設定アルゴリズム)について、より具体的に説明する。図2は、閾値設定のフローチャートである。図3は、閾値設定フローにより行われる各種の閾値設定処理の内容を説明するための図である。図3(A)はステップS105の処理を説明する図であり、図3(B)はステップS106の処理を説明するための図であり、図3(C)はステップS107の処理を説明するための図である。なお、以下の説明では、のスイープデータにおける或る位置[n](注目の距離位置)の閾値の更新設定についてのみ示すが、このような閾値の更新設定は、スイープデータを構成する各エコー信号に対応する距離位置毎に行われる。さらに、このような設定は各スキャンで継続的に行われる。ここで、スキャンとは、アンテナ一回転分のエコー信号を取り扱う期間を示す。すなわち、アンテナが一回転する間に送信される各送信信号に対するエコー信号の集まりが、1スキャン分のエコー信号となる。
【0039】
まず、各位置の閾値には初期値が設定されている。このため、スイープデータにおける最もアンテナ側の距離位置の閾値は初期値のままとなるが、最もアンテナ側の距離位置以外の距離位置では、以下のフローで示されるアルゴリズムにより、閾値が状況に適応していく。
【0040】
閾値設定部15は、受信機14より入力されたスイープ単位にエコー信号から、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]を取得する。また、Th[n]を読み出す。閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]と閾値レベルTh[n]を比較する(S101)。
【0041】
閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きいと判断すると(S102:Yes)、注目の距離位置[n]に対してアンテナ側に隣接する距離位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]を読み出し、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]と隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]とを比較する(S103)。
【0042】
閾値設定部15は、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]よりも、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]の方が大きいと判断すると(S104:Yes)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値δを加算する補正を行う(S105)。
【0043】
Th[n]=Th[n]+δ −(式A)
なお、補正値δは、例えば、物標エコーのレベルとノイズレベルとの相対差に基づいて、当該相対差よりも所定レベル以上小さくなるように設定するとよい。
【0044】
この処理を図に示すと、図3(A)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きく、且つ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]が、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも小さい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]に近づけるように、δ分だけ向上させる。以下、この処理を「A処理」と称する。
【0045】
一方、閾値設定部15は、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]よりも、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]の方が小さいと判断すると(S104:No)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値βδを減算する補正を行う(S106)。
【0046】
Th[n]=Th[n]−βδ −(式B)
なお、βは、0<β<1からなる実数に設定されており、このようなβの設定を用いることで、物標エコーの期間にA処理により閾値が一時的に上昇しても、緩やかに閾値を低下させることができる。
【0047】
この処理を図に示すと、図3(B)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも大きく、且つ、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]が、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]よりも大きい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]を、隣接位置[n−1]の閾値レベルTh[n−1]に近づけるように、βδ分だけ低下させる。以下、この処理を「B処理」と称する。
【0048】
また、上述のステップS102においてNoの場合、すなわち、閾値設定部15は、エコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも小さいと判断すると(S102:No)、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]に補正値δを減算する補正を行う(S107)。
【0049】
Th[n]=Th[n]−δ −(式C)
この処理を図に示すと、図3(C)に示すようになる。すなわち、注目の距離位置[n]におけるエコー信号のレベルEcho[n]が閾値レベルTh[n]よりも小さい場合には、注目の距離位置[n]の閾値レベルTh[n]をδ分だけ低下させる。以下、この処理を「C処理」と称する。
【0050】
以上のように、注目位置[n]の閾値Th[n]の更新処理を、当該注目位置[n]のエコー信号のレベルEcho[n]および閾値Th[n]と、近接位置の閾値レベルTh[n−1]とから実行することで、図4に示すような各距離位置の閾値を設定することができる。図4(A)は物標が無く、シークラッタやノイズのみが存在する場合の各距離位置の閾値の適応の仕方を示している。図4(B)は物標があり、物標の存在区間以外にノイズが存在する場合の閾値の適応の仕方を示している。なお、図4において、細実線がエコー信号を示し、太実線が適応後の閾値カーブを示し、太破線が初期閾値カーブを示す。
【0051】
(シークラッタの発生区間)
まず、閾値の更新処理が開始されると、閾値レベルがシークラッタのレベル程度になるまでは、連続するスキャンで上述のC処理が継続的に実行され、閾値レベルは徐々に低下していく。
【0052】
次に、閾値レベルがシークラッタのピークレベル程度まで低下すると、シークラッタのエコー信号のレベルが閾値レベルよりも高くなることがある。この場合にはA処理が実行される。ここで、シークラッタのエコーは、アンテナからの距離に応じて順次レベルが低下する距離依存性を有する。したがって、同じ距離位置であればスキャンの相違によるレベル差は大きくない。このため、上述のようにA処理が行われ、複数スキャンに亘って閾値の更新処理が続けられることで、シークラッタの発生区間では、シークラッタの平均レベルに略等しいレベルの閾値が設定される。これにより、図4(A)に示すように、シークラッタの平均レベルに応じた閾値を適応的に自動で設定することができる。
【0053】
(ノイズの発生区間)
まず、シークラッタの場合と同様に、閾値の更新処理が開始されると、閾値レベルがノイズのレベル程度になるまでは、上述のC処理が連続するスキャンで継続的に実行され、閾値レベルは徐々に低下していく。
【0054】
次に、閾値レベルがノイズのレベル程度まで低下すると、ノイズのエコー信号のレベルと閾値レベルとの大小関係が頻繁に入れ替わる。また、距離方向に隣り合う位置間で、大小関係が殆ど継続的に同じにならない。この場合には、A処理,B処理,C処理がランダムに実行され、ノイズの発生区間中のほぼ全体で実行される。
【0055】
(物標エコーの存在区間)
物標エコーのレベルは、図4(B)に示すように、ノイズのエコー信号のレベルと比較して高く、且つ距離方向に沿って連続的に高い状態が維持される。このため、次に示すように、閾値が適応していく。
【0056】
ノイズに近接する物標のアンテナ側の境界部では、B処理が適用され、当該物標の境界部の距離位置の閾値が物標のアンテナ側の境界部直前のノイズレベルに収束していく。また、物標エコーの範囲におけるさらに遠方側の各距離位置の閾値も、A処理、B処理の作用によって物標のアンテナ側の境界部直前のノイズレベルに収束していく。これにより、物標エコーの範囲であっても、閾値は、ノイズの発生区間と略同じレベルとなる。この際、物標エコーのアンテナ側のノイズレベルにより、隣接位置の閾値が、注目する距離位置の閾値よりも大きくなることがある。この場合には、A処理が実行され、閾値が向上する。しかしながら、上述のように、ノイズレベルは一定でないので、A処理が継続的に実行されることはなく、A処理とB処理とが適宜実行される。したがって、結果的に、物標エコーの範囲であっても、閾値は、ノイズの発生区間と略同じレベルとなる。
【0057】
以上のように、本実施形態の閾値設定処理を用いることで、シークラッタやノイズのレベル等の不要成分のレベルに応じ、且つ物標の有無に影響されることなく、適応的に自動で閾値を設定することができる。そして、このように、最適化された閾値を用いることで、上述のように、より正確な物標探知処理を行うことができる。
【0058】
なお、上述の説明では、閾値の更新設定に利用する補正値δを一定にする場合を示したが、例えば、閾値の初期設定から所定の複数スキャンの間は、補正値δをより大きく設定してもよい。このような設定を行うことで、より速くシークラッタやノイズのレベルに閾値が近づくので、適応速度を向上させることができる。
【0059】
図5は、図4(A)に示す状況での閾値カーブ適応の様子をシミュレーションした3D図である。このシミュレーションは、上述の適応速度を速くする処理を含んだ結果である。図5において縦軸は閾値レベルを示し、第1の横軸はスキャンの遷移を示し、第2の横軸は距離方向の位置を示す。図5に示すように、本実施形態の閾値更新処理を行うことで、スキャンを繰り返す毎に、閾値が状況に応じたレベルに適応されていることが理解できる。
【0060】
また、図6は、所定方位における図4(A)に示す状況での所定スキャン(20スキャン)後の閾値カーブをシミュレーションした図である。図6において、太実線は20スキャン後の閾値カーブを示し、細実線は各スキャンでのエコー信号のレベルを示す。このように、本実施形態の閾値更新処理を行うことで、シークラッタやノイズ等の状況に応じたレベルに閾値が適応されていることが理解できる。
【0061】
また、上述の説明では、閾値レベルTh[n]とエコー信号のレベルEcho[n]をそのまま比較する例を示したが、閾値Th[n]を所定オフセット値αで減算した値と、エコー信号のレベルEcho[n]を比較してもよい。この際、所定オフセット値αは、例えばノイズの変動レベルに応じて設定するとよい。このような所定オフセット値αで減算した値を用いることで、ノイズ発生領域においてもノイズの変動によるA処理とC処理の発生頻度に偏りを生じさせ、閾値の収束するレベルを制御することができる。
【0062】
また、上述の説明では、補正値δの加算や減算により、閾値の補正(更新設定)を行う例を示したが、補正係数化して、乗算や除算して閾値の補正(更新設定)を行うこともできる。
【0063】
次に、第2の実施形態に係る閾値設定方法を含む物標探知方法および閾値設定装置を備える物標探知装置について、図を参照して説明する。本実施形態の閾値設定方法では、方位方向に対する閾値の設定方法を示す。
【0064】
上述の第1の実施形態に示した閾値設定方法は、一方位に対する各距離位置での閾値の適応方法を示している。ここで、アンテナは、上述のように回転しており、物標探知装置は、通常、全周囲に対する物標探知を行う。したがって、各方位、すなわち各スイープデータ毎に、上述の閾値の適応処理を行うことで、全周囲に亘る閾値の適応処理が可能となる。しかしながら、本実施形態では、第1の実施形態に示した特定方位に対する閾値の適応処理を利用しながら、他の方法で、全周囲の閾値を設定する。
【0065】
まず、アンテナ13の回転方向に沿う方位角方向に対して、図7に示すように、所定の角度間隔で、複数の代表方位を設定する。図7は、代表方位の設定概念を示す図である。
【0066】
代表方位は、絶対方位で北方向を0°方向(基準方向)として全周(360°)を所定方位角(Δθ)間隔で分割して得られる。閾値設定部15は、このような代表方位θ1,θ2,・・・を予め記憶している。
【0067】
閾値設定部15は、代表方位のスイープデータを取得すると、上述の第1の実施形態に示した方法を用いて、各距離位置の閾値を更新設定する。例えば、閾値設定部15は、代表方位θ1のスイープデータを取得すると、各距離位置の閾値Th1を更新設定し、代表方位θ2のスイープデータを取得すると、各距離位置の閾値Th2を更新設定する。
【0068】
次に、閾値設定部15は、代表方位間の個別方位の閾値を、当該個別方位を挟む二つの代表方位の閾値から補間算出する。図8は、個別方位の閾値の補間算出方法を説明するための図であり、図8(A)は代表方位と個別方位との位置関係例を示し、図8(B)は個別方位の閾値の設定概念を示す図である。
【0069】
閾値設定部15は、個別方位θaの距離位置[n]の閾値Tha[n]を算出する場合、上述のようにスイープデータとともに得られる絶対方位から個別方位θaを取得する。そして、閾値設定部15は、当該個別方位θaに対して反時計回り側で最も近い代表方位θmと、個別方位θaとの方位角差Δθmaを算出する。
【0070】
閾値設定部15は、個別方位θaを二つの代表方位θm,θm+1の注目の距離位置[n]の閾値Thm[n],Thm+1[n]を取得する。閾値設定部15は、個別方位θaの距離位置[n]の閾値Tha[n]を、図8(B)に示すような補間算出の概念を用いて、次式から算出する。
【0071】
Tha[n]=(Δθma/Δθ)*Thm[n]+(1−Δθma/Δθ)*Thm+1[n]
閾値設定部15は、このような補間算出処理を個別方位θaの各距離位置で実行する。これにより、全周囲方向の各距離位置での閾値を更新設定することができる。そして、この方法を用いることで、全周囲方向の各距離位置のすべてで、第1の実施形態に示したような処理を行う必要が無い。これにより、全体の処理負荷を軽減し、高速化することができる。この際、このような処理を行ったとして、実用上、十分に正確な閾値設定が可能である。これは、例えばシークラッタは波の反射であり、ある程度の幅をもって現れる。したがって、代表方位の間隔Δθを適宜設定することで、すべての方位に対して適応閾値設定処理を行わずとも、十分に波の状態を反映した閾値を設定できるからである。同様に、物標エコーも所定の幅を有するので、シークラッタの場合と同様の作用効果が得られる。
【0072】
上述のような処理を用いることで、図9に示すような全方位に適応した閾値が設定される。図9(A)は、全方位の閾値の適応設定状態を示す図であり、縦軸が閾値レベルを示し、第1の横軸が方位、第2の横軸が距離方向位置を示す。図9(B)は、図9(A)の方位方向を重ねてみた図である。図9(A),(B)に示すように、本実施形態の方法を用いることで、それぞれの方位の状況に応じた閾値設定を行うことができる。なお、この閾値設定の分布を用いることで、波が到来する方向および高さを推定することもできる。
【0073】
また、上述のような構成および処理を行うことで、図10、図11、図12に示すような効果が得られる。図10、図11、図12は、本発明の適応型の閾値設定処理を行った場合の効果を表す図である。それぞれ(A)がエコー信号をそのまま表示した探知画像を示し、(B)が本発明の適応型の閾値設定処理を行い、閾値以下のエコーを抑圧した探知画像を示す。また、図10は大きなシークラッタと大型船舶が存在する場合を示し、図11、図12は小さなシークラッタと陸地がある場合を示す。
【0074】
図10、図11、図12に示すように、本発明の適応型の閾値設定処理を行うことで、シークラッタのレベルに応じるとともに、大型船舶や陸地の存在する区間でも、当該大型船舶や陸地のエコーに影響されることなくノイズのレベルに応じて、閾値が自動で設定される。これにより、各図の(A)に示すような従来の大型船舶や陸地とともにシークラッタの映り込みが有った探知画像でなく、各図の(B)に示すように、大型船舶や陸地を残しながら、シークラッタのみを抑圧した探知画像を確実に生成することができる。
【0075】
また、上述の説明では、船舶用のレーダ装置に利用する場合の例を示したが、所定の探知信号を送信して、そのエコー信号を取得する装置であれば、上述の処理を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1−物標探知装置、11−送信制御部、12−送受切替器、13−アンテナ、14−受信機、15−閾値設定部、16−物標探知部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを回転しながら電波を送信し、前記アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定する閾値設定方法であって、
所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する工程と、
前記注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程と、を有する閾値設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する、閾値設定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する、閾値設定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する場合の閾値レベルの低下量が、前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも低い場合の閾値レベルの低下量よりも少ない、閾値設定方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置に設定された閾値レベルとの比較の際に、該閾値レベルから所定のオフセット値を減算した値を、前記比較に用いる、閾値設定方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の閾値設定方法であって、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定工程と、
前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定工程と、を有する閾値設定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の閾値設定方法であって、
前記個別方位閾値設定工程は、
前記個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルにおける同じ距離位置の閾値レベルを、前記個別方位と前記二つの特定方位とのそれぞれの方位角差で重み付けして設定する、閾値設定方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の閾値設定方法を有し、
設定された閾値レベルよりもレベルが高いエコー信号を前記物標のエコー信号と判断する工程、を有する物標探知方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の閾値設定方法を有し、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する工程、を有する物標探知方法。
【請求項11】
回転しながら電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した受信信号からエコー信号を生成するエコー信号生成部と、
不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値を設定する閾値設定部と、を備えた閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する、閾値設定装置。
【請求項14】
請求項13に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する、閾値設定装置。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行うとともに、前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する、閾値設定装置。
【請求項16】
請求項11乃至請求項15のいずれかに記載の閾値設定装置を備え、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する画像データ生成部、を備える物標探知装置。
【請求項17】
アンテナを回転しながら電波を送信し、前記アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定するための閾値設定プログラムであって、
所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する処理と、
前記注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理と、を有する閾値設定プログラム。
【請求項18】
請求項17に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項21】
請求項17乃至請求項20のいずれかに記載の閾値設定プログラムであって、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定処理と、
前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定処理と、を含む閾値設定プログラム。
【請求項22】
請求項17乃至請求項21のいずれかに記載の閾値設定プログラムを含み、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する処理、を有する物標探知プログラム。
【請求項1】
アンテナを回転しながら電波を送信し、前記アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定する閾値設定方法であって、
所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する工程と、
前記注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程と、を有する閾値設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する、閾値設定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する、閾値設定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する場合の閾値レベルの低下量が、前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置の閾値レベルよりも低い場合の閾値レベルの低下量よりも少ない、閾値設定方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の閾値設定方法であって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する工程は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置に設定された閾値レベルとの比較の際に、該閾値レベルから所定のオフセット値を減算した値を、前記比較に用いる、閾値設定方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の閾値設定方法であって、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定工程と、
前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定工程と、を有する閾値設定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の閾値設定方法であって、
前記個別方位閾値設定工程は、
前記個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルにおける同じ距離位置の閾値レベルを、前記個別方位と前記二つの特定方位とのそれぞれの方位角差で重み付けして設定する、閾値設定方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の閾値設定方法を有し、
設定された閾値レベルよりもレベルが高いエコー信号を前記物標のエコー信号と判断する工程、を有する物標探知方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の閾値設定方法を有し、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する工程、を有する物標探知方法。
【請求項11】
回転しながら電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した受信信号からエコー信号を生成するエコー信号生成部と、
不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値を設定する閾値設定部と、を備えた閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する、閾値設定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する、閾値設定装置。
【請求項14】
請求項13に記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する、閾値設定装置。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の閾値設定装置であって、
前記閾値設定部は、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行うとともに、前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する、閾値設定装置。
【請求項16】
請求項11乃至請求項15のいずれかに記載の閾値設定装置を備え、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する画像データ生成部、を備える物標探知装置。
【請求項17】
アンテナを回転しながら電波を送信し、前記アンテナで受信したエコー信号に対して、不要成分に該当するエコー信号のレベルに応じた閾値レベルを設定するための閾値設定プログラムであって、
所定の距離間隔で前記エコー信号のレベルを取得する処理と、
前記注目位置のエコー信号のレベルと、前記注目位置に設定された閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置に設定された閾値レベルと、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理と、を有する閾値設定プログラム。
【請求項18】
請求項17に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルと前記注目位置の閾値レベルとの大小関係と、
前記注目位置の閾値レベルと、前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルとの大小関係と、に基づいて、前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも低い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定し、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも低い場合に、前記注目位置の閾値レベルを高くするように更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の閾値設定プログラムであって、
前記注目位置の閾値レベルを更新設定する処理は、
前記注目位置のエコー信号のレベルが前記注目位置に設定された閾値レベルよりも高く、且つ、前記注目位置の閾値レベルが前記注目位置と同じスイープ上における前記距離間隔分だけアンテナ側の位置の閾値レベルよりも高い場合に、前記閾値レベルを低くするように更新設定する処理を有する、閾値設定プログラム。
【請求項21】
請求項17乃至請求項20のいずれかに記載の閾値設定プログラムであって、
前記アンテナを基準位置として放射方向に延びる距離方向に沿った閾値レベルの更新設定を、前記アンテナの回転方向に沿う所定角度毎に設けた複数の特定方位に対して行う特定方位閾値設定処理と、
前記特定方位と異なる個別方位に対して、該個別方位を挟む二つの特定方位に設定された閾値レベルに基づいて、前記距離方向に沿った閾値レベルを補間設定する個別方位閾値設定処理と、を含む閾値設定プログラム。
【請求項22】
請求項17乃至請求項21のいずれかに記載の閾値設定プログラムを含み、
設定された閾値レベルよりもレベルが低いエコー信号を抑圧して探知画像データを生成する処理、を有する物標探知プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−17995(P2012−17995A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153797(P2010−153797)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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