説明

防カビ剤、カビ用洗浄剤、防カビ効果を有する樹脂、及びカビ発生抑制方法

【課題】浴室、洗面所などで発生する黒カビに対して効果を示し、生体に対して安全、かつ衣服などの生地を傷めず、安価である防カビ剤、カビ用洗浄剤、防カビ効果を有する樹脂、及びカビ発生抑制方法を提供する。
【解決手段】防カビ作用の有効成分として水溶性キチン又はキトヘキサオースを用いる。水溶性キチン又はキトヘキサオースを、防カビ剤、カビ用洗浄剤、樹脂等に配合し、カビ発生箇所に施与することでカビの繁殖を防ぎ、又は抑制することができる。この水溶性キチン又はキトヘキサオースの配合された防カビ剤、カビ用洗浄剤、又は樹脂等は、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、又はオウレオバシディウム(Aureobasidium)属に属するカビに対して好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室や洗面所など湿気の多い所に発生しやすく、黒く変色することが知られている黒カビに対して特に効果を有する、防カビ剤、カビ用洗浄剤、防カビ効果を有する樹脂、及びカビ発生抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭における浴室、脱衣所、洗面所や台所などのような湿気の多いところでは、黒カビが発生しやすく、黒く変色することから視覚的に認知されやすく、洗浄、防カビの対象とされている。このような黒カビは、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、オウレオバシディウム(Aureobasidium)属などに属する微生物に代表される真菌であり、成育から時間が経過すると、界面活性剤を使用しても除去が困難となりうる。また、黒カビ以外にも、生活の場でよく見られるカビには、ペニシリウム属(Penicillium)、アスペルギルスアスペルギルス属(Aspergillus)、フサリウム(Fusarium)属に属する微生物などの真菌があげられる。
【0003】
一般的に、塩素系洗剤などが黒カビの除菌に用いられているが、塩素系洗剤は人に対して毒性があり、環境的にも有害で、かつ酸と混合すると有害な塩素ガスを発生する、さらに手荒れや衣服の傷みなどの原因ともなり、強い殺菌効果を示すものの安全性は非常に低い。
【0004】
黒カビに対して洗浄、防カビ効果を示す従来技術の例を挙げると、例えば下記特許文献1には、必須の成分として式:MHSO5(但し、Mはアルカリ金属である)で表されるペルオキソ一硫酸水素塩と、上記のペルオキソ一硫酸水素塩100重量部に対し100〜600重量部の水溶性炭酸塩とを含有してなることを特徴とする洗濯機槽用洗浄剤組成物が開示されている。そして、当該組成物は、酸性洗剤と混用しても有害ガスを発生しないことが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、1,2,4−ジチアゾリジン誘導体を有効成分として含有する黒カビ防除剤が開示されている。そして、当該誘導体を有効成分とすることによって、安全かつ有効な黒カビ防除剤を提供できることが記載されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、天然物であるため安全性が高いと考えられる海藻の抽出液を用いたカビ洗浄剤が開示されている。
【0007】
更に、下記特許文献4には、1μm以下の微細粒状の透明酸化チタンを樹脂エマルジョンに混合してなることを特徴とするコーティング剤組成物が開示されている。そして、当該組成物を黒かびの発生の防止、防臭、殺菌等に用いることが記載されている。
【特許文献1】特開平5−247496号公報
【特許文献2】特開平6−49050号公報
【特許文献3】特開平6−179895号公報
【特許文献4】特開平9−157549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献に例示されるような従来技術では、工業的に利用するには適しなかったり、高コストであったり、安全性が低いなどの問題があり、防カビ剤やカビ発生抑制方法として必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
したがって本発明の目的は、カビ、特に、浴室、洗面所などで発生する黒カビに対して効果を示し、生体に対して安全、かつ衣服などの生地を傷めず、安価である防カビ剤カビ用、洗浄剤、防カビ効果を有する樹脂、及びカビ発生抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行い、人体に対して無害である物質の中から、黒カビの一種であるクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)に対して毒性を示す物質の検索を行ったところ、カニやエビなどの甲殻類の外骨格から得られるキチン・キトサンを原料として調製することができる水溶性キチンとキトヘキサオース(6糖鎖長のキトサンオリゴ糖)に強力な増殖抑制作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の1つは、水溶性キチン及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤である。
【0012】
本発明の水溶性キチン及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤によれば、有効成分である水溶性キチン及び/又はその誘導体が、カビの発芽を抑制し、カビの菌糸分裂を抑制し、又はカビのバイオフィルム形成を抑制するので、カビ発生箇所に施与することでカビの繁殖を防ぎ、又は抑制することができる。
【0013】
本発明の水溶性キチン及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤においては、水溶性キチン換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明のもう1つは、キトヘキサオース及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤である。
【0015】
本発明のキトヘキサオース及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤によれば、有効成分であるキトヘキサオース及び/又はその誘導体が、カビの発芽を抑制し、カビの菌糸分裂を抑制し、又はカビのバイオフィルム形成を抑制するので、カビ発生箇所に施与することでカビの繁殖を防ぎ、又は抑制することができる。
【0016】
本発明のキトヘキサオース及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤においては、前記キトヘキサオース及び/又はその誘導体は、酸及び/又は酵素を用いてキトサンを分解して得られたものであることが好ましい。また、キトヘキサオース換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の上記防カビ剤は、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、又はオウレオバシディウム(Aureobasidium)属に属するカビに対して用いられることが好ましい。
【0018】
本発明のもう1つは、前記本発明の防カビ剤を含有することを特徴とするカビ用洗浄剤である。
【0019】
本発明のカビ用洗浄剤によれば、水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体をカビ用洗浄剤に含有させることにより、洗浄の際に、防カビ作用の有効成分である水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体を洗浄対象物やブラシ、スポンジ等の洗浄道具等にいきわたらせることができるので、洗浄後の洗浄対象物や洗浄道具等におけるカビの発生を抑制することができる。また、塩素系洗浄剤などと異なり有害なガスを発生することもなく、さらに手荒れや衣服の傷みなどの原因ともなりにくい。
【0020】
本発明の更にもう1つは、前記本発明の防カビ剤を含有することを特徴とする防カビ効果を有する樹脂である。
【0021】
本発明の防カビ効果を有する樹脂によれば、浴室、洗面所、台所、トイレ等の水回りの目地やパッキン等、カビの生えやすい箇所に用いられる樹脂に、防カビ作用の有効成分である水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体を含有させることにより、それらの表面又は内部にカビが発生するのを防ぐことができる。
【0022】
本発明の防カビ効果を有する樹脂は、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれた1種、又は2種以上を含有してなる樹脂組成物であることが好ましい。
【0023】
一方、本発明のカビ発生抑制方法は、前記本発明の防カビ剤を施与することを特徴とする。
【0024】
本発明のカビ発生抑制方法によれば、すでに安全性が確かめられている水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体を防カビ作用の有効成分とするので、安価に、且つ、生体に対して安全で衣服などの生地を傷めたりもせずに、カビ発生を抑制することができる。また、塩素系洗剤や酸性洗剤と混用しても有害ガスを発生することがない。
【0025】
本発明のカビ発生抑制方法は、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、又はオウレオバシディウム(Aureobasidium)属に属するカビに対して好ましく適用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、有効成分である水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体が、カビの発芽を抑制し、カビの菌糸分裂を抑制し、又はカビのバイオフィルム形成を抑制するので、カビ発生箇所に施与することでカビの繁殖を防ぎ、又は抑制することができる。また、水溶性キチンやキトヘキサオースはすでに安全性が確かめられて利用されている安全かつ安価な物質であるので、防カビ剤、カビ洗浄剤あるいは防カビ効果のある壁やパッキンなどへの、幅広い応用が可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明で用いられる水溶性キチンは、カニ、エビ等の甲殻類の外皮から、炭酸カルシウム、蛋白質、その他の夾雑物等を除去して得られる水不溶性のキチンを、好ましくは20〜60%、より好ましくは20〜40%、更により好ましくは25〜35%脱アセチル化することにより水溶性化したものである。
【0028】
本発明で用いられる水溶性キチンは、例えば、本出願人による特開平8−283306号公報、非特許文献 J.Carbohydrate Chemistry, 21(1&2), 149-161 (2002)、特許第2814701号公報、又は特許第2822611号公報に記載された公知の方法に準じて調製することができる。以下にその概略を説明する。
【0029】
<水溶性キチンの調製>
キチンを、5℃以下で、アルカリ水溶液に分散させ、アルカリ均一溶液とした後、5℃以下で、脱アセチル化率が20%以上60%未満、より好ましくは20%以上40%未満となるまで部分脱アセチル化する。
【0030】
水溶性キチン調製のためのキチンは、カニ、エビ等の甲殻類の外皮から、炭酸カルシウム、蛋白質、その他の夾雑物等を除去して得られるものを用いることができ、甲殻類の外皮から常法によって調製してもよく、通常市販されているフレーク状又は粉末状のものを用いてもよい。
【0031】
水溶性キチン調製のためのアルカリ水溶液としては、アルカリ剤の5〜50質量%水溶液を用いるのが好ましい。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0032】
調製法について具体的に説明すると、まず、キチンを、5℃以下、好ましくは−5〜5℃、より好ましくは0〜5℃の条件下に、アルカリ水溶液に分散させ、アルカリ均一溶液とする。
【0033】
ここで、アルカリ均一溶液とは、均一な水飴状のアルカリキチン水溶液を意味し、例えばキチンをアルカリ水溶液に分散させた後、撹拌しながら、減圧して、脱気し、次いで、氷を加えて撹拌するか、又は、凍結させた後、解凍することにより調製することができる。
【0034】
次に、このアルカリ均一溶液を、5℃以下の条件下に、所定時間熟成させて、部分脱アセチル化を行う。
【0035】
なお、熟成とは、アルカリ均一溶液を5℃以下に保ちながら放置し、脱アセチル化を徐々に進行させることをいう。また、アルカリ均一溶液にした段階で、すでに、10%程度は脱アセチル化されているが、この状態のものは水に不溶性であり、熟成させることにより、部分脱アセチル化を進行させ、脱アセチル化率が20%以上60%未満、より好ましくは20%以上40%未満となるようにする。
【0036】
脱アセチル化の進行度合いは、キチン濃度、アルカリ濃度、熟成期間、熟成温度などの要因により異なる。キチン濃度は、溶解度の関係から、1〜10質量%程度が好ましい。
【0037】
また、熟成温度は、温度が低いほど、脱アセチル化の進行が遅くなり、熟成に長時間を要することになるので、−5〜5℃が好ましく、0〜5℃がより好ましい。脱アセチル化率が20%以上、40%未満の場合には、5℃を超える温度で熟成させると、水溶性のものが得られにくくなる。
【0038】
更に、熟成期間は、例えば、キチン濃度1.5質量%、アルカリ濃度15質量%とした場合、脱アセチル化率を25〜35%とするには、3℃で、8〜10日間、0℃で、10〜12日間必要である。
【0039】
部分脱アセチル化させた後、塩酸、酢酸等の酸を加えて、pH8〜9に調整する。pH8〜9にすると、白色ゲル状の沈殿物が生じるので、この沈殿物を、遠心分離、フィルター濾過等の固液分離操作によって回収し、水とエタノールとの混合液で洗浄して塩分を除去する。次いで、沈殿物を水に分散させ、塩酸、酢酸等の酸を微量添加して、pH5.5〜6.5に調整すると、均一な水溶液となる。この水溶液を、噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥すると、粉末が得られる。
【0040】
このようにして得られる水溶性キチンの分子量範囲はおおよそ10,000〜500,000であり、かつ、キチンの特性を有しつつ水溶性であることが特徴である。なお、脱アセチル化率が20%未満の場合、水に溶解せず、40%以上の場合、脱アセチル化に長時間を要し、経済的に不利である。また、一般的に、脱アセチル化率が高くなるほど、反応性が増すなどの問題もある。したがって、脱アセチル化率は、20〜40%であることがより好ましく、25〜35%であることが更により好ましい。
【0041】
上記脱アセチル化率は、コロイド滴定法によって測定した値であって、具体的には次の方法によって測定した値を意味する。
【0042】
すなわち、110℃で1時間乾燥した試料0.5gを正確に秤量し、これを0.5%(v/v)酢酸溶液に溶かして正確に100gとする。この試料を溶解した酢酸溶液1.0gを200mlの三角フラスコに正確にはかりとり、脱イオン水50mlを加え、十分攪拌混合する。指示薬として0.1%トルイジンブルー溶液0.2mlを加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム溶液(PVSK)で滴定する。そして、下記数1により脱アセチル化率を算出する。
【0043】
【数1】

【0044】
なお、上記水溶性キチン調製の諸条件によっては、得られる水溶性キチンの脱アセチル化率が、実質的に無視できる範囲で20%以上、60%未満の範囲を逸脱する場合があるが、上記水溶性その他の特徴を有し、上記水溶性キチンと同等の特性を有するものであれば、そのような水溶性キチンであっても本発明において用いることができる。
【0045】
一方、本発明で用いられるキトヘキサオース(6糖鎖長のキトサンオリゴ糖)は、市販のものをそのまま用いることもできるが、工業的に製造するためには、カニ、エビ等の甲殻類の殻等から常法によって調製されるキトサンを化学的又は酵素的に部分加水分解した後、イオン交換等のクロマトグラフィーによって分画、精製して得られたキトヘキサオースを用いることができる。その場合、キトサンの部分加水分解は、キトサンを塩酸、酢酸、蟻酸等の酸とともに加熱した後、酸を除去するか、又は中和脱塩し、結晶化等により粉末化する方法、あるいはキトサンを希酸に溶解後、キトサナーゼ、D−グルコサミニダーゼ等のキトサン分解酵素を作用させる方法等によって行うことができる。
【0046】
本発明で用いられるキトヘキサオースを工業的に製造するためには、例えば、本出願人による特開2003−212889号公報に開示されたキトヘキサオースの調製法により行うことができる。その方法によれば、原料に由来する部分アセチル化キトオリゴ糖などの不純物を効率よく除去することができると共に製造過程におけるキトサンオリゴ糖の着色を防止することができ、高純度のキトサンオリゴ糖を効率よく製造できるので、好ましく用いることができる。
【0047】
キトサンの部分加水分解物として得られるキトサンオリゴ糖は、通常重合度2〜8糖程度の混合物、すなわちキトビオース、キトトリオース、キトテトラオース、キトペンタオース、キトヘキサオース、キトヘプタオース、キトオクタオース等の混合物である。本発明で用いられるキトヘキサオースは、その混合物からカラムクロマトグラフィーや溶剤分画等の方法によって分画、精製することができる。
【0048】
また、本発明においては、キトヘキサオース以外のキトサンオリゴ糖が、カビの増殖を促進するなど、キトヘキサオースの作用に負の影響を与えることがないので、上記のようなキトサンの部分加水分解物として得られるキトサンオリゴ糖をそのまま有効成分とすることもできる。なお、キトサンオリゴ糖又はその混合物は、各社から市販されており、例えば、「COS−YS」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)などを好ましく用いることができる。
【0049】
本発明においては、有効成分として水溶性キチンの誘導体やキトヘキサオースの誘導体を用いることもできる。
【0050】
本発明に用いられる水溶性キチン誘導体としては、例えば、キチンの構成単位であるN−アセチルグルコサミン残基のC6位の第1級アルコール基をエチレングリコール化したグリコールキチン(エチレングリコールキチン)や、前記C6位の第1級アルコール基をカルボキシメチル化したカルボキシメチルキチンなどが例示できる。これらの誘導体は公知の方法に準じて、水溶性キチンを化学修飾することにより得ることができる。
【0051】
本発明に用いられるキトヘキサオース誘導体としては、例えば、キトヘキサオースの部分アセチル化体やキトヘキサオースの糖アルコール体が例示できる。これらの誘導体は公知の方法に準じて、キトヘキサオースをアセチル化、又は還元することにより、それぞれ得ることができる。
【0052】
また、本発明で用いられる水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体は、塩酸塩、硝酸塩及び酢酸塩等の無機酸塩等の酸塩、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、又はマグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、クエン酸、乳酸などの有機塩などの形態をとっていてもよい。
【0053】
本発明において、「水溶性キチン換算濃度」とは、水溶性キチンについては、水溶性キチンの濃度を意味し、上記水溶性キチン誘導体や塩の形態をとったものについては、その量を理論的に水溶性キチン当りに換算した濃度を意味する。
【0054】
同様に、本発明における、「キトヘキサオース換算濃度」とは、キトヘキサオースについてはキトヘキサオースの濃度を意味し、上記キトヘキサオース誘導体や塩の形態をとったものについては、その量を理論的にキトヘキサオース当りに換算した濃度を意味する。
【0055】
本発明の防カビ剤は、公知の技術に準じて、粉体、ブロック、クリーム、ジェル、溶液、ペースト、エアーゾル用懸濁・乳化液などを調製する際に、水溶性キチン、水溶性キチン誘導体、又はそれらの塩類、及びキトヘキサオース、キトヘキサオース誘導体、又はそれらの塩類を配合することにより、得ることができる。この場合、水、緩衝液、乳化溶媒等の溶媒に上記水溶性キチン又はキトヘキサオースをもたらす有効成分のみが単独で配合されているような単純な組成とすることもできる。
【0056】
水溶性キチン及びキトヘキサオースは、易水溶性であり、他の多くの化合物とも混合容易であるため、粉体、ブロック、クリーム、ジェル、溶液、ペースト、エアーゾル用懸濁・乳化液などの幅広い形態で使用することが可能である。また、水溶性キチンの場合は、高分子であるため、水に溶解すると粘性を与えることができ、その粘性効果は、酸性から弱アルカリ性まで幅広く発揮される。従って、クリーム、ジェル、ペースト等の形態とするにあたって、水溶性キチン自身の特性により適度な粘度を与えることができる。
【0057】
本発明においては、上記防カビ剤中の水溶性キチン濃度は、カビ増殖抑制に必要な水溶性キチンの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくは水溶性キチン換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%であり、より好ましくは固形分換算で0.5〜100質量%である。
【0058】
また、上記防カビ剤中のキトヘキサオース濃度は、カビ増殖抑制に必要なキトヘキサオースの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくはキトヘキサオース換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%であり、より好ましくは固形分換算で0.5〜100質量%である。
【0059】
本発明のカビ用洗浄剤は、公知の技術に準じて洗浄剤を調製する際に、水溶性キチン、水溶性キチン誘導体、又はそれらの塩類、及びキトヘキサオース、キトヘキサオース誘導体、又はそれらの塩類を配合することにより、得ることができる。この場合、市販の洗浄剤などへ配合することもできる。
【0060】
本発明のカビ用洗浄剤には、洗浄作用を有する成分として、界面活性剤等を配合させることができる。また、更に抗菌作用を有する抗菌成分を配合させることもできる。また、塩素系洗浄剤等、従来のカビ用洗浄剤に使用されている有効成分を併用しても良い。
【0061】
水溶性キチンやキトヘキサオースは、洗浄作用を有する洗浄剤や抗菌作用を有する抗菌剤などへ混合しても、それらの有効性を低減させることなくその防カビ作用を発揮することができる。また、塩素系洗浄剤などと異なり有害なガスを発生することもなく、さらに手荒れや衣服の傷みなどの原因ともなりにくく、従来のカビ用洗浄剤の有効成分を併用した際にも、塩素系有効成分の配合量を減量することができ、上記不具合を軽減することが可能である。
【0062】
本発明においては、上記カビ用洗浄剤中の水溶性キチン濃度は、カビ増殖抑制に必要な水溶性キチンの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくは水溶性キチン換算濃度が、固形分換算で0.01〜100質量%であり、より好ましくは固形分換算で0.5〜100質量%である。また、100ml溶液状で使用するとして換算したときの濃度が、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。100ml溶液状で使用するとして換算したときの濃度が、0.001質量%以下である場合には、上記防カビの効果が得られないので好ましくなく、5質量%であると、粘性が高まり、使用しづらくなるので好ましくない。
【0063】
本発明においては、上記カビ用洗浄剤中のキトヘキサオース濃度は、カビ増殖抑制に必要なキトヘキサオースの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくはキトヘキサオース換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%であり、より好ましくは固形分換算で0.5〜100質量%である。また、100ml溶液状で使用するとして換算したときの濃度が、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。100ml溶液状で使用するとして換算したときの濃度が、0.001質量%以下である場合には、上記防カビの効果が得られないので好ましくなく、10質量%以上であると、粘性が高まり、使用しづらくなるので好ましくない。
【0064】
本発明の防カビ効果を有する樹脂は、公知の技術に準じて樹脂を調製する際に、水溶性キチン、水溶性キチン誘導体、又はそれらの塩類、及びキトヘキサオース、キトヘキサオース誘導体、又はそれらの塩類を配合することにより、得ることができる。
【0065】
上記樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれた1種、又は2種以上を含有してなる樹脂組成物等を好ましく例示できる。上記水溶性キチン及びキトヘキサオースをもたらす有効成分は、その樹脂が成形、硬化される前の調製液に配合され、成形・硬化後には樹脂中に封入される。
【0066】
水溶性キチン及びキトヘキサオースは、樹脂に配合して用いても、樹脂の硬化性、成形性等への影響が少なく、その防カビ作用を有効に発揮することができるので、浴室、洗面所、台所、トイレ等の水回りの目地や弁当箱パッキンのシリコーン等、カビの生えやすい箇所に用いられる樹脂等の様々な樹脂に配合することで、それらの表面又は内部にカビが繁殖するのを防ぐことができる。
【0067】
本発明においては、上記防カビ効果を有する樹脂中の水溶性キチン濃度は、カビ増殖抑制に必要な水溶性キチンの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくは水溶性キチン換算濃度が10〜50質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。
【0068】
本発明においては、上記防カビ効果を有する樹脂中のキトヘキサオース濃度は、カビ増殖抑制に必要なキトヘキサオースの濃度に照らして、適宜選択することができるが、好ましくはキトヘキサオース換算濃度が10〜50質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。
【0069】
一方、本発明のカビ発生抑制方法においては、その施与手段は特に制限されず、例えば、塗布、噴霧、散布、予め抗菌素材としての素材へ封入しておくなどの手段によって、カビの発生を抑制したい箇所、又は、カビが生えている箇所に水溶性キチン、水溶性キチン誘導体、又はそれらの塩類、及びキトヘキサオース、キトヘキサオース誘導体、又はそれらの塩類を施与する。
【0070】
例えば、建物や浴室の壁であれば、直接散布し、あるいは塗料に混合してコーティング剤として塗装するなどの手段により行う。また、上述のとおり、水溶性キチン、キトヘキサオース、又はそれらの誘導体をカビ用洗浄剤に含有させることにより、洗浄の際に、防カビ作用の有効成分である水溶性キチン又はキトヘキサオースを洗浄対象物やブラシ、スポンジ等の洗浄道具等にいきわたらせることができるので、洗浄後の洗浄対象物や洗浄道具等におけるカビの発生を抑制する効果を期待できる。
【0071】
上記の施用量は、カビの種類、適用箇所の材質、表面の性状等によって適宜選択することができる。水溶性キチンの場合には、1m当たり1〜100,000g程度であることが好ましく、1m当たり100〜10,000g程度であることがより好ましい。キトヘキサオースの場合には、1m当たり1〜100,000g程度であることが好ましく、1m当たり100〜10,000g程度であることがより好ましい。その施用量が少なすぎると十分な防除効果が期待できず、多すぎる場合は十分に固定化できない場合があるので好ましくない。
【0072】
本発明が適用されるカビの種類には特に制限はないが、家庭における浴室、脱衣所、洗面所や台所などのような湿気の多いところに発生しやすい黒カビである、クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、オウレオバシディウム(Aureobasidium)属の微生物に属するカビに対して、好ましく用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0074】
以下の試験例に用いたクラドスポリウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides NRBC4457)(以下、C. cladosporioidesとする。)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入した。本菌をポテトデキストロース培地中で27℃静置培養し、培養液表面に形成されバイオフィルム上に発生するC. cladosporioides 胞子を回収し、以下の実験に使用した。
【0075】
また、以下の試験例及び製造例に用いた水溶性キチンは、本出願人による特開平8−283306号公報に記載された公知の方法に準じて、焼津水産化学工業株式会社にて調製されたものを使用した。
【0076】
更に、以下の試験例及び製造例に用いたキトヘキサオースは、焼津水産化学工業株式会社にてキトサンを分解、精製することによって調製された純度97.5%以上のものを使用した。なお以下試験例において、キトヘキサオースは「COS−6」と記載する。
【0077】
<試験例1> 水溶性キチンの発芽抑制試験
C. cladosporioides 胞子をポテトデキストロース培地に懸濁し、4×10(cells/ml)の懸濁液を調製した。この懸濁液に水溶性キチンを最終濃度が10、1、0.1mg/mlになるように加え、27℃で静置培養を行った。また、対照(コントロール)として、水溶性キチンを添加しないものについても同様の培養を行った。そして培養開始24、48、72、及び96時間後に、菌数を濁度(OD620nm)として測定した。その結果を図1に示す。また、図2には、水溶性キチン1mg/ml添加したときの、培養24時間後における胞子体の発芽状態の顕微鏡写真を示す。
【0078】
図1に示すとおり、水溶性キチンは濃度依存的にC. cladosporioidesの菌数の増加を抑制し、濃度1mg/ml以上では、培養開始96時間後まで菌数の増加が確認されなかった。
【0079】
また、図2の顕微鏡写真に明らかなように、コントロール群では、培養24時間後に菌糸形で増殖する様子が観察されるのに対し、水溶性キチン1mg/mlを添加した場合には胞子体のみが観察され、水溶性キチンが胞子から菌糸体への変化(発芽)を抑制していることが明らかとなった。また、上記図1に示すとおり、経時的に菌数を濁度として測定した結果、水溶性キチン濃度1mg/ml以上では、培養開始96時間後まで菌数の増加が確認されないことから、この水溶性キチンによるC. cladosporioides発芽抑制効果は、持続的な効果であることが推察された。
【0080】
更に、培養開始96時間後のC. cladosporioides培養液の状態を観察したところ、図3に示すように肉眼でも水溶性キチンによるC. cladosporioidesの増殖抑制効果が確認できた。
【0081】
<試験例2> 水溶性キチンの菌糸分裂抑制試験
C. cladosporioides胞子のポテトデキストロース培地懸濁液4×10(cells/ml)を調整し、27℃で24時間静置培養を行い、胞子状態の菌体を全て発芽させ菌糸分裂を誘導させた。ここに水溶性キチンを最終濃度が1mg/mlになるように加え、27℃で更に静置培養し、水溶性キチンを添加してから24時間及び48時間後に菌数を濁度(OD620nm)として測定した。その結果に図4に示す。
【0082】
その結果、水溶性キチン添加群では、C. cladosporioidesの菌数の増加が抑制されていた。この結果から、水溶性キチンにはC. cladosporioides菌糸体にも作用して、菌糸分裂を抑制する効果のあることが明らかになった。
【0083】
<試験例3> 水溶性キチン含有寒天培地上でのC. cladosporioides増殖確認試験
C. cladosporioidesは、偏性好気生菌で、嫌気条件下では増殖することができない。水溶性キチンは、その添加により培養液の粘度を高め、培養液深部への酸素の供給を妨げている可能性があり、水溶性キチンによるC. cladosporioides増殖抑制効果が、培地内への酸素取り込みを阻害することによる、二次的な現象である可能性が否定できなかった。そこで、その可能性を排除するために、水溶性キチンを配合した寒天培地表面で菌を培養することで菌体を好気条件下に置き、培養を行った。
【0084】
すなわち、水溶性キチン(10mg/ml)を配合したポテトデキストロース寒天培地を作成し、その表面にC. cladosporioides 胞子(4×10cells)を移植して、27℃で6日間静置培養後、増殖状態を観察した。
【0085】
その結果、図5に示すように、水溶性キチン配合寒天表面では、C. cladosporioidesの増殖が抑制されており、水溶性キチンは C. cladosporioidesに対して直接的に作用して、その発芽抑制効果及び/又は菌糸分裂抑制効果を発揮していることが明らかとなった。
【0086】
<試験例4> キチン・キトサンオリゴ糖によるC. cladosporioides増殖抑制試験
C. cladosporioides胞子のポテトデキストロース培地懸濁液(4x10 cells/ml)を調整し、ここにキチンオリゴ糖(N−アセチルキトビオース:NACOS−2、N−アセチルキトトリオース:NACOS−3、N−アセチルキトテトラオース:NACOS−4、N−アセチルキトペンタオース:NACOS−5、又はN−アセチルキトヘキサオース:NACOS−6)、及びキトサンオリゴ糖(キトビオース:COS−2、キトトリオース:COS−3、キトテトラオース:COS−4、キトペンタオース:COS−5、又はキトヘキサオース:COS−6)(いずれも焼津水産化学工業製)を最終濃度が10mg/mlになるように加え、27℃で静置培養を行った。培養開始72時間後に、菌の増殖を肉眼で観察し、増殖していたものは「+」、何も添加しない対照群と比較して増殖が抑制されていたものは「−」として、その増殖を評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
その結果、上記キチン・キトサンオリゴ糖類の中で、COS−6が、C. cladosporioides増殖抑制効果を示した(表1)。
【0089】
次に、増殖抑制効果を示したCOS−6について、その増殖抑制効果を数値化するために、菌数を濁度として測定した。すなわち、C. cladosporioides 胞子をポテトデキストロース培地に懸濁し、4×10(cells/ml)の懸濁液を調製した。この懸濁液にCOS−6を最終濃度が10、1、0.1mg/mlになるように加え、27℃で静置培養を行った。また、対照(コントロール)として、COS−6を添加しないものについても同様の培養を行った。そして培養開始48、72、及び120時間後に、菌数を濁度(OD620nm)として測定した。その結果を図6に示す。また、図7には、COS−6を10mg/ml添加したときの、培養24時間後における胞子体の発芽状態の顕微鏡写真を示す。
【0090】
図6に示すとおり、COS−6は濃度依存的にC. cladosporioidesの菌数の増加を抑制した。
【0091】
また、図7の顕微鏡写真に明らかなように、コントロール群では、培養24時間後に菌糸形で増殖する様子が観察されるのに対し、濃度10mg/mlでCOS−6を添加した場合には、菌糸の伸長が抑制されていることが明らかとなった。また、培養時間を更に延長し観察を続けたところ、培養開始72時間後から、培養液表面にバイオフィルムが形成され始め、培養開始120時間後では、コントロール群の培養液表面は完全にバイオフィルムで覆われていた(図8の対照のレーン)。しかし、COS−6添加群では、濃度依存的にバイオフィルムの形成が抑制されていた(図8のCOS−6添加群のレーン)。
【0092】
<試験例5> COS−6による C. cladosporioidesバイオフィルム形成抑制効果
COS−6による C. cladosporioidesバイオフィルム形成抑制効果を、定量的に評価するために、以下の試験を行った。
【0093】
すなわち、C. cladosporioides胞子のポテトデキストロース培地懸濁液(4x10 cells/ml)を調整し、この液1mlを24 wellプラスチックプレート(ヌンク社製)に加えた。ここに、COS−6を最終濃度が10、1、0.1mg/mlになるように加え、27℃で7日間静置培養し、培養液表面に形成されるバイオフィルムを回収してその重量を測定した。
【0094】
その結果、図9に示すように、COS−6を最終濃度1mg/ml以上となるように添加することでバイオフィルム形成が抑制されることが明らかとなった。
【0095】
したがって、キトヘキサオース(COS−6)には、C. cladosporioidesのバイオフィルム形成を抑制させる効果があり、防カビ剤の有効成分として有用であると考えられた。
【0096】
<製造例1>
下記表2の配合で各原料を混合し、防カビ剤を調製した。
【0097】
【表2】

【0098】
この防カビ剤は、適度に粘性を有し、使用感のよいものであった。
【0099】
<製造例2>
下記表3の配合で各原料を混合し、カビ用洗浄剤を調製した。
【0100】
【表3】

【0101】
このカビ用洗浄剤は、適度に粘性を有し、使用感のよいものであった。
【0102】
<製造例3>
下記表4の配合で各原料を混合し、防カビ剤を調製した。
【0103】
【表4】

【0104】
この防カビ剤は、使用感のよいものであった。
【0105】
<製造例4>
下記表5の配合で各原料を混合し、カビ用洗浄剤を調製した。
【0106】
【表5】

【0107】
このカビ用洗浄剤は、使用感のよいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】C. cladosporioidesの増殖性(発芽)に水溶性キチンが及ぼす影響を示すグラフ図(a)及びそのデータ表(b)である。
【図2】培養24時間後におけるC. cladosporioides胞子体の発芽状態に水溶性キチンが及ぼす影響を示す顕微鏡写真である。
【図3】C. cladosporioidesの増殖性に水溶性キチンが及ぼす影響を示す写真である。
【図4】C. cladosporioidesの増殖性(菌糸分裂)に水溶性キチンが及ぼす影響を示すグラフ図(a)及びそのデータ表(b)である。
【図5】寒天培地上でのC. cladosporioidesの増殖性に水溶性キチンが及ぼす影響を示す写真である。
【図6】C. cladosporioidesの増殖性にキトヘキサオース(COS−6)が及ぼす影響を示すグラフ図(a)及びそのデータ表(b)である。
【図7】培養24時間後におけるC. cladosporioides胞子体の発芽状態にキトヘキサオース(COS−6)が及ぼす影響を示す顕微鏡写真である。
【図8】C. cladosporioidesのバイオフィルム形成にキトヘキサオース(COS−6)が及ぼす影響を示す写真である。
【図9】C. cladosporioidesバイオフィルム形成能にキトヘキサオース(COS−6)が及ぼす影響を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性キチン及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤。
【請求項2】
水溶性キチン換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%である請求項1記載の防カビ剤。
【請求項3】
キトヘキサオース及び/又はその誘導体を有効成分として含有する防カビ剤。
【請求項4】
前記キトヘキサオース及び/又はその誘導体が、酸及び/又は酵素を用いてキトサンを分解して得られたものである請求項3記載の防カビ剤。
【請求項5】
キトヘキサオース換算濃度が固形分換算で0.01〜100質量%である請求項3又は4記載の防カビ剤。
【請求項6】
クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、又はオウレオバシディウム(Aureobasidium)属に属するカビに対して用いられる請求項1〜5のいずれか1つに記載の防カビ剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の防カビ剤を含有することを特徴とするカビ用洗浄剤。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1つに記載の防カビ剤を含有することを特徴とする防カビ効果を有する樹脂。
【請求項9】
シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれた1種、又は2種以上を含有してなる樹脂組成物である請求項8記載の防カビ効果を有する樹脂。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の防カビ剤を施与することを特徴とするカビ発生抑制方法。
【請求項11】
クラドスポリウム(Cladosporium)属、アルタナリア(Alternaria)属、又はオウレオバシディウム(Aureobasidium)属に属するカビに対して用いられる請求項10記載のカビ発生抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−162933(P2008−162933A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353832(P2006−353832)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年7月1日 日本キチン・キトサン学会発行の「キチン・キトサン研究 第12巻第2号」に発表
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】