説明

防振・防音型破砕機

【課題】 この発明は防振・防音に優れ、且つ、金属疲労破損に強く、且つ、安全性・作業性・経済性に優れた防振・防音型破砕機を開発・提供する事にある。
【解決手段】 この課題を解決する為の手段として、油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストンとハンマーの先端部の隙間部と、チゼル部におけるチゼル後端であって、前記ハンマーと当接するアンビルとの隙間部の、それぞれ二箇所に、軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を装着したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振・防音型破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、岩盤やコンクリート基礎等を破砕するブレーカー(破砕機)は、油圧ショベル機等に装着されて使用しており、該ブレーカーに取り付けたチゼルはブレーカーの油圧機構により作動し、岩盤等を打撃し、破砕している。このチゼルは先端部が尖っており、使用することらより先端部が徐々に摩耗して丸くなり破砕効果が弱まると、その都度、新しいものと取り換えなければならず、極めて不経済であった。このため、一本のチゼルで長期間使用出来る様、チゼルの先端中心部より軸方向に長穴を穿設し、該穴にチゼルより硬度な材質の芯材を焼き嵌め、或いは圧入したものがある。
【0003】
しかし、この製品も芯材の後端部の形状と、チゼル本体の穴底部の形状は、理論上は完全に密着できるが、実際には大量生産する為、不可能であった。
【0004】
更に、これらが完全に密着していない場合は、使用時の摩擦と衝撃により、その当接点が摩擦や打撃により表面硬化し、その為、金属疲労が起こり疲労破損(折損)するという欠点があった。
【0005】
そこで、上記問題(欠点)を除去し、機械加工による大量生産の為、チゼルの穴底の形状と、芯材の後端部の形状とが完全密着、或いは適合していなくても使用時に金属の疲労破損が生じない芯材入りチゼルの製造方法を発明し、特許出願したのが、特開昭63−109920(特許登録番号1751956)である。
【0006】
しかし、時代の経過に伴い環境問題、公害問題に対する問題意識は以前より増して厳しく成り、更なる改善(騒音対策、振動対策等)が要求されている。
【0007】
そこで、上記問題を解決するべく騒音・振動の原因を更に追究し、且つ、騒音・振動を吸収させる為、上記特許出願時の芯材入り構造をピストン先端部とチゼル後端部に適用して防音対策を行い、更に弾性体を新たにハンマーとアンビルの外周部に嵌挿して防振対策を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
これまでに出願されているブレーカー(破砕機)に関する特許文献を参考の為、紹介する(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開昭63−109920
【特許文献2】実願平10−004691
【特許文献3】登録実用新案第3019178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記課題を解決する為に、この発明は防振・防音に優れ、且つ、金属疲労破損に強く、且つ、安全性・作業性・経済性に優れた防振・防音型破砕機を開発・提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決する為の手段として、ピストン部におけるピストンとハンマーの先端部の隙間部と、チゼル部におけるチゼル後端であって、前記ハンマーと当接するアンビルとの隙間部の、それぞれ二箇所に、軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を装着したことを特徴とするものである。
【0011】
又、ピストン部におけるピストンの先端に形成した穴部にハンマーを嵌挿して設け、且つ、ピストンとハンマーの先端部の隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を装着し、且つ、チゼル部におけるチゼルの後端に形成した穴部にアンビルを嵌挿して設け、且つ、チゼルとアンビルの後端部の隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を装着したことを特徴とするものである。
【0012】
又、ピストン部におけるピストンの後端に形成した穴部とピストン軸との隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を装着したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の効果として、破砕機のピストン側には、先端中心部に打撃用ハンマーと弾性体と固定リングを嵌挿する為に底部を半球状に形成したほぼ筒状の穴部を設けたピストンと、ピストンの先端穴部に嵌着する弾性体と固定リングと流出防止用リング付ハンマーをそれぞれ設け、且つ、ピストンの先端穴底部に騒音と衝撃防止用の鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体を挿着して設け、且つ、破砕機のチゼル側には、後端中心部にアンビルと弾性体を軟質シートや軟質パッキンやゴム等を嵌挿する為の段付穴部を設けたチゼル本体と、チゼル本体後端の段付穴部に嵌着する弾性体とアンビルとチゼル本体の段付穴底部に騒音と衝撃防止用の鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体をそれぞれ設け、又、ピストンとチゼルの直接接触を避け、打撃音及び振動を減少させる為、ピストンとピストンの先端部に嵌挿して設けたハンマー間の隙間部、及び、チゼルとチゼルの後端部に嵌挿して設けたアンビル間の隙間部に騒音と衝撃防止用の鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体をそれぞれ設け、且つ、ハンマー及びアンビルの外周側面部に弾性体をそれぞれ挿着して設けた事で、防振・防音に優れ、且つ、金属疲労破損に強く、且つ、安全性・作業性・経済性に優れる等、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例を示し、破砕機全体の内部構造を示す一部欠截断面図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、ピストンの内部構造を示す一部欠截断面図である。
【図3】この発明のその他の実施例を示し、ピストンの内部構造を示す一部欠截断面図である。
【図4】この発明の一実施例を示し、弾性体(鉛)流出防止用リング部の拡大断面図で、(A)はOリング使用時の断面図で、(B)はVパッキン使用時の断面図で、(C)はピストンリング(鉄製)使用時の断面図である。
【図5】この発明の一実施例を示し、チゼル後端に設けたアンビルの取付詳細を示す断面図である。
【図6】この発明の一実施例を示し、アンビルの拡大詳細図で、(A)は首部が直線状型を示し、(B)は首部がR状型を示す正面図で、(C)は首部が直線状で底部が凹型の一部欠截正面図である。
【図7】この発明の一実施例を示し、(A)は図5のアンビル挿入部の拡大詳細断面図で、(B)は図7(A)のアンビル底部を凹型状に形成した時の断面図である。
【図8】この発明の防振・防音型破砕機(対策品)と通常品のサイレントチゼルの騒音測定比較データーを示す。
【図9】この発明のその他の実施例を示し、ピストンの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を実施するための形態として、油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4)とハンマー(5a)の先端部の隙間部と、チゼル部におけるチゼル(8)後端であって、前記ハンマー(5a)と当接するアンビル(9)との隙間部の、それぞれ二箇所に、軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(12)(11)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機から構成される。
【0016】
又、油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4)の先端に形成した穴部(4a)にハンマーを嵌挿して設け、且つ、ピストン(4)とハンマー(5a)の先端部の隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(6)(12)を装着し、且つ、チゼル部におけるチゼルの後端に形成した穴部(8a)にアンビル(9)を嵌挿して設け、且つ、チゼルとアンビルの後端部の隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(10)(11)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機から構成される。
【0017】
又、油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4')の後端に形成した穴部(4'a)とピストン軸(19)との隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(16'or16)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機から構成される。
【実施例1】
【0018】
そこで、この発明の一実施例を図1〜図7に基づいて詳述すると、まず、図1はブレーカー全体の一部欠截断面図で、図2はピストン(4)先端部の内部構造を示す一部欠截断面図である。図2に示すように、ピストン(4)の先端中心部に、穴底が半球面状になるほぼ筒状の穴部(4a)を形成して設け、且つ、該穴部(4a)には外周面に、筒状のゴム等の弾性体(6)と、短尺の筒状の抜け出し防止用固定リング(7)と、流出防止用のリング(13)をそれぞれ嵌着したハンマー(5a)を嵌挿して設け、且つ、ピストン(4)の穴底部とハンマー(5a)間の隙間部に鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(12)を設けたものである。
【0019】
又、前記ピストンの先端中心穴部(4a)に設けたハンマー(5a)は、図3に示すように先端部外径が拡大形状に形成された茸状のハンマー(5b)に設けても構わない。
【0020】
又、前記ピストンの外周一端部に設けた鉛流出防止用のリング(13)は、図4(A)に示すように、Oリング(13a)、又は、図4(B)に示すように、Vパッキン(13b)、更には図4(C)に示すように、ピストンリング(鉄製)(13e)の何れかを使用状況に応じて使い分けると良い。
【0021】
図5はチゼル後端部に設けたアンビルの取付詳細断面図で、チゼル後端面とアンビル(9)の鍔部下面には適度な隙間(S)を設けて、ピストンの打撃による応力伝播を直接受けないように設けられている。従って、前記応力伝播はチゼルの穴底に設けた鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(11)で受けて、音を吸収する仕組みに成っている。
【0022】
更に、上記アンビル(9)首部の外周には略円筒状のゴム等の弾性体(10)を挿着して設けている。又、アンビル(9)の首部の形状は、図6(A)(B)に示すように、使用状況に応じて直線状又はR状の何れに形成しても構わない。又、図6(C)に示すように、アンビル(9')の底部を凹型状に形成して、図7(B)に示すように、凹部に弾性体(11)を挿着しても構わない。
【0023】
図7は図5のチゼル後端に設けたアンビル取付要領を示す拡大詳細断面図である。図7に示すように、使用状況に応じて鉛流出防止用のOリング(13c)又はVパッキン(13d)等のリングをアンビル(9)の首下に挿着しても構わない。
【0024】
次に、この発明の防振・防音型破砕機(TNB2E)と従来品(MKB150M)のサイレントチゼルの騒音測定比較データーを紹介する。図8の比較データーに示すように、本発明の防振・防音型破砕機(TNB2E)は、従来品(MKB150M)に比較し、1mの距離から測定時で−18db、5mの距離から測定時で−14.4dbの減衰効果をそれぞれ発揮することが判明している。
【0025】
尚、今回は防振に対する効果についての比較測定を行っていないが、防音測定の比較データーから観て、防振に対しても防音効果と同等程度の効果が有ると推測出来る。
【0026】
又、更に防振・防音効果を発揮する為に、本発明に加えて、以前特許出願した芯材入りチゼル(特許登録番号1751956)を併用すれば、非常に効果的である。
【実施例2】
【0027】
その他の事例として、油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン(4')の上端部に衝撃振動を吸収して防音効果を図るピストン(4')を用いた破砕機(B')であって、該破砕機はピストン(4')の上端中心部に円柱状の穴(4'a)を研削して設け、且つ、該穴(4'a)の底部に鉛等の軟質金属シート又はゴム等の弾性体(16'or16)を挿着し、且つ、上部に周囲を円筒状の弾性体(17)で被い、上端部に抜け出し防止用固定リング(18)で係止した軸(19)を嵌挿して設けた事を特徴とするものである。
【0028】
図9に示すように、ピストン(4')の上端中心部に円柱状の穴(4'a)を研削し、且つ、該穴(4'a)の底部に鉛等の軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(16'or16)を挿着し、且つ、上部に周囲を円筒状の弾性体(17)で被い、上端部に抜け出し防止用固定リング(18)で係止した軸(19)を嵌挿して設けた事で、ピストンの衝撃振動が吸収され防音効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明の防振・防音型破砕機及びその製造方法は、防振・防音に優れ、且つ、金属疲労破損に強く、且つ、安全性・作業性・経済性に優れている為、製造・販売する事で多くの土木・建築市場関係に寄与する点で産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0030】
1 シリンダー
2 インパクトリング
3 ホルダー
3a ブッシング
4 ピストン
4' ピストン
4'a 穴部
4a 穴部
5a ハンマー
5b ハンマー
6 弾性体
7 固定リング
8 チゼル
8a 段付穴部
9 アンビル
9' アンビル
9a アンビル(首部直線状型)
9b アンビル(首部R状型)
9c アンビル(首部直線状・底部凹型)
10 弾性体
11 弾性体
12 弾性体
13 リング
13a リング(Oリング)
13b リング(Vパッキン)
13c リング(Oリング)
13d リング(Vパッキン)
13e ピストンリング(鉄製)
14 ピン
15 軸受
16 弾性体
16' 弾性体
17 弾性体
18 固定リング
19 ピストン軸
B 破砕機
B' 破砕機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4)とハンマー(5a)の先端部の隙間部と、チゼル部におけるチゼル(8)後端であって、前記ハンマー(5a)と当接するアンビル(9)との隙間部の、それぞれ二箇所に、軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(12)(11)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機。
【請求項2】
油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4)の先端に形成した穴部(4a)にハンマーを嵌挿して設け、且つ、ピストン(4)とハンマー(5a)の先端部の隙間部に軟質金属シートやゴム等の弾性体(6)(12)を装着し、且つ、チゼル部におけるチゼルの後端に形成した穴部(8a)にアンビル(9)を嵌挿して設け、且つ、チゼルとアンビルの後端部の隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(10)(11)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機。
【請求項3】
油圧ブレーカー等破砕機の打撃エネルギーを伝達するためのピストン部、及び、該打撃エネルギーを受け、岩石やコンクリート等を破砕するチゼルを装着したチゼル部からなる破砕機において、ピストン部におけるピストン(4')の後端に形成した穴部(4'a)とピストン軸(19)との隙間部に軟質シートや軟質パッキンやゴム等の弾性体(16'or16)を装着したことを特徴とする防振・防音型破砕機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6096(P2012−6096A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142379(P2010−142379)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(598067902)
【Fターム(参考)】