防振部材およびブレース
【課題】支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる防振部材を提供する。
【解決手段】本発明の防振部材30は、躯体11および天井仕上材12を連結する防振部材30であって、躯体11と天井仕上材12との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体32を備えている。この構成により、弾性体32が、躯体11と天井仕上材12との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、防振部材30が、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【解決手段】本発明の防振部材30は、躯体11および天井仕上材12を連結する防振部材30であって、躯体11と天井仕上材12との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体32を備えている。この構成により、弾性体32が、躯体11と天井仕上材12との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、防振部材30が、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材に対して被支持部材を防振するための防振部材に関し、より詳細には、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する防振部材、ならびにこの防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結するブレースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16に示すように、従来の防振ハンガー10と呼ばれる防振部材は、列車の通行や歩行等により生じた躯体(支持部材)11の振動が、躯体11から天井仕上材(被支持部材)12に直接伝わらないように、躯体11と天井仕上材12を連結する吊ボルト13a、13bの途中に設置される。防振ハンガー10は、たとえば、ゴムまたはバネなどの防振用の弾性体14a、14bを介して、躯体11から吊り下げられた吊ボルト13a、および天井仕上材12に取り付けられた吊ボルト13bに連結され、引張力を弾性体14a、14bで吸収するような構造となっている。このような防振ハンガー10は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
従来の防振ハンガー10は、常時の鉛直方向の荷重を支持することができるので防振性に優れるが、地震などにより発生する水平方向の力を支持することはできないので耐震性に問題がある。このため、図16に示すように、躯体11付近と天井仕上材12付近を斜方に結ぶブレース15を設置することにより、水平方向の力を支持して天井の耐震化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図16のような従来手法では、ブレース15を設置することにより躯体11と天井仕上材12が剛に連結されるため、躯体11からの振動が天井仕上材12に伝播してしまい、天井仕上材12から音が発生したり耐久性が低下したりするなど防振ハンガー10による防振機能が損なわれてしまう問題が生じる。
【0006】
ブレース15による振動の伝播を防ぐために、仮に従来の防振ハンガー10をブレース15の間に設置したとしても、従来の防振ハンガー10はゴムの圧縮により引張力を吸収するためのものであるので、引張力に対しては、ゴムが圧縮になるため充分な耐力が得られて安全であるが、圧縮力に対しては、ゴムが引張となるため、ゴムの耐力低下を生じ、結果としてブレースの耐力低下を生ずるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決し、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる防振部材、ならびにこの防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結することにより、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができ、防振性を損ねることなく耐震性を備えるブレースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の防振部材は、支持部材および被支持部材を連結する防振部材であって、前記支持部材と前記被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体と、前記弾性体の外周部の略全域を覆うように設けられた殻体と、を備え、前記殻体は、前記支持部材または前記被支持部材の一方に連結され、前記弾性体は、前記支持部材または前記被支持部材の他方に連結されて、前記弾性体が、球状であり、該殻体の内面と接触し圧縮されて生じる反発力によって前記引張力および前記圧縮力を吸収する。
【0009】
この構成により、弾性体が、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0010】
また、この構成により、支持部材と被支持部材との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、弾性体は殻体との接触点または接触面で収縮され、この弾性体の収縮により生じる反力によって圧縮力および引張力を吸収することができる。これにより、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。さらに、防振部材は、1つの弾性体と1つの殻体からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0011】
更に、この構成により、支持部材と被支持部材との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、弾性体は殻体との接触点で収縮され、この弾性体の収縮により生じる反力によって圧縮力および引張力を吸収することができる。これにより、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のブレースは、上述の防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結する。
【0013】
この構成により、防振部材が支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、ブレースは、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができ、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防振部材およびブレースは、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができる弾性体を備えることにより、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースを示す構成図である。
【図2】第1の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図3】第1の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図4】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図5】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図6】ブレースに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材の状態を表す図である。
【図7】第2の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図8】第2の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図9】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図10】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図11】ブレースに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材の状態を表す図である。
【図12】第3の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図13】第3の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図14】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図15】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図16】従来の防振部材およびブレースを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースについて説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースを示す構成図である。防振ハンガー10、躯体11、天井仕上材12、吊ボルト13a、13bなどについては、従来技術と同様であり、図16を参照してすでに説明しているので、説明を省略する。
【0018】
本発明の実施形態にかかる防振部材20は、躯体11および天井仕上材12を斜方に連結するブレース15a、15bの間に設置されている。
【0019】
防振部材20は、ゴム、ばねなどの弾性体を備えており、この弾性体によりブレース15a、15bの取り付け方向に対して加えられる圧縮力および引張力を吸収するように構成されている。
【0020】
この防振部材20により、ブレース15a、15bは、地震時には躯体11に加わる水平方向の力を吸収することが可能となり、地震以外の通常時には躯体11に加わる垂直方向の力を吸収することが可能となるので、防振性を損ねることなく耐震性を高めることができる。
【0021】
続いて、防振部材20の詳細について説明する。
【0022】
まず、図2〜図6を参照して防振部材20の第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態にかかる防振部材20の断面図である。図3は、第1の実施形態にかかる防振部材20の斜視図である。
【0023】
この防振部材20は、鉄など金属系の材料により形成される直方体形状の殻体21と、この殻体21の内部に充填された弾性体としてのゴム22から構成されている。
【0024】
殻体21は、直方体の任意の一面21aに例えばねじ穴などによる取り付け部21bが設けられており、この取り付け部21bを介して、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されている。また、殻体21は、取り付け部21bが設けられた面21aの反対側の面21cに開口部21dが設けられている。
【0025】
ゴム22は、殻体21と同様の直方体形状であり、殻体21の開口部21dが設けられた面21cと対応する面22aに、開口部21dから露出するように穴22bが設けられている。ゴム22の中央にはナットが埋め込まれており、穴22bを介して、躯体11に取り付けられたブレース15aとナットを連結することにより、ゴム22はブレース15aと連結されている。なお、ゴム22とブレース15aとの連結部分は、図2などではネジおよびナットを用いたものを例示しているが、代替的に、ゴム22およびブレース15aを固定できる他の手段を用いても良い。
【0026】
なお、図2および図3とは逆に、殻体21が、躯体11に取り付けられたブレース15aと連結され、ゴム22が、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されても良い。また、殻体21およびゴム22の形状は、ブレース15a、15bを取り付けるための、ブレースの取り付け方向と略垂直な平面を備えていれば良く、たとえば、円柱、角柱などの形状でも良い。また、殻体21およびゴム22のそれぞれに棒状の部品を一体的に形成し、これらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12に直接取り付けるよう構成しても良いし、あるいはこれらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12から延びるブレースに連結ナットなどの連結手段を介して取り付けるように構成しても良い。
【0027】
図4は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15a、15bに引張力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム22は斜め上方に引っ張られ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体21は、斜め下方に引っ張られる。これにより、殻体21の面21cとゴム22の面22aとが接触して、面22aが圧縮面となってゴム22は収縮する。ゴム22が収縮することにより、面22aに反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0028】
図5は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15a、15bに圧縮力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム22は斜め下方に押し込まれ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体21は、斜め上方に押し出される。これにより、殻体21の面21aとゴム22の面22cとが接触して、面22cが圧縮面となってゴム22は収縮する。ゴム22が収縮することにより、面22cに反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0029】
このように、防振部材20は、ブレース15a、15bに働く圧縮力および引張力に対して充分な耐力を生成して、引張力および圧縮力を吸収することができるので、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0030】
図6は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材20の状態を表す図である。防振部材20は、このような場合にも、殻体21の開口部21dの縁部でブレース15aを受けることで、ブレース15aの傾きを止めることができる。これにより、ブレース15a、15bおよび防振部材20の面外方向の位置ずれを抑えることができ、ブレース15a、15bに加わる圧縮力を充分にゴム22に伝えることができるので、防振部材20は必要な耐力を維持することができる。
【0031】
本発明の第1の実施形態にかかる防振部材20においては、直方体形状の殻体21およびゴム22が、それぞれブレース15a、15bに連結され、ブレースに引張力または圧縮力が加わるときには、殻体21およびゴム22が接触してゴム22が収縮される。そして、このゴム22の収縮により生じる反発力によって、防振部材20は引張力または圧縮力を吸収することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材20は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0032】
また、防振部材20は、殻体21およびゴム22の形状を直方体にすることで、製造工程を容易にすることができる。また、防振部材20は、単一の殻体21と単一のゴム22からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0033】
さらに、この防振部材20をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0034】
次に図7〜図11を参照して防振部材の第2の実施形態について説明する。図1の防振部材20は、図7〜図11に示す防振部材30に置き換えることができる。図7は、第2の実施形態にかかる防振部材30の断面図である。図8は、第2の実施形態にかかる防振部材30の斜視図である。
【0035】
防振部材30は、球状の殻体31と、この殻体31の内部に充填された球状のゴム32から構成されている。殻体31およびゴム32の材料は、第1の実施形態の殻体21およびゴム22と同様である。
【0036】
殻体31は、球状の表面の任意の一点に、例えばねじ穴などによる取り付け部31aが設けられており、この取り付け部31aを介して、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されている。また、殻体31は、取り付け部31aが設けられた位置と球面上の反対側の位置に任意の半径で開口部31bが設けられている。
【0037】
ゴム32は、殻体31と同様の球状であり、殻体31の開口部31bから露出するように穴32aが設けられている。ゴム32の中央にはナットが埋め込まれており、穴32aを介して、躯体11に取り付けられたブレース15aとナットを連結することにより、ゴム32はブレース15aと連結されている。なお、ゴム32とブレース15aとの連結部分は、図7などではネジおよびナットを用いたものを例示しているが、代替的に、ゴム32およびブレース15aを固定できる他の手段を用いても良い。
【0038】
なお、図7および図8とは逆に、殻体31が、躯体11に取り付けられたブレース15aと連結され、ゴム32が、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されても良い。また、殻体31およびゴム32のそれぞれに棒状の部品を一体的に形成し、これらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12に直接取り付けるように構成しても良い。
【0039】
図9は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材30の状態を表す図である。ブレース15a、15bに引張力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム32は斜め上方に引っ張られ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体31は、斜め下方に引っ張られる。これにより、殻体31の開口部31bの端部とゴム22が接触して、この接触箇所が圧縮面となってゴム32は収縮する。ゴム32が収縮することにより、圧縮面に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0040】
図10は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材30の状態を表す図である。ブレース15a、15bに圧縮力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム32は斜め下方に押し込まれ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体31は、斜め上方に押し出される。これにより、殻体31とゴム32とが接触して、この接触箇所が圧縮面となってゴム32は収縮する。ゴム32が収縮することにより、圧縮面に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0041】
このように、防振部材30は、ブレース15a、15bに働く圧縮力および引張力に対して充分な耐力を生成して、引張力および圧縮力を吸収することができるので、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0042】
図11は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材30の状態を表す図である。防振部材30は、このような場合にも、殻体31の開口部31bの縁部でブレース15aを受けることで、ブレース15aの傾きを止めることができる。これにより、ブレース15a、15bおよび防振部材30の面外方向の位置ずれを抑えることができ、ブレース15a、15bに加わる圧縮力を充分にゴム32に伝えることができるので、防振部材30は必要な耐力を維持することができる。
【0043】
本発明の第2の実施形態にかかる防振部材30においては、球状の殻体31およびゴム32が、それぞれブレース15a、15bに連結され、ブレースに引張力または圧縮力が加わるときには、殻体31およびゴム32が接触してゴム32が収縮される。そして、このゴム32の収縮により生じる反発力によって、防振部材30は引張力または圧縮力を吸収することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材30は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0044】
また、防振部材30は、単一の殻体31と単一のゴム32からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0045】
さらに、この防振部材30をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0046】
次に図12〜図15を参照して防振部材の第3の実施形態について説明する。図1の防振部材20は、図12〜図15に示す防振部材40に置き換えることができる。図12は、第3の実施形態にかかる防振部材40の断面図である。図13は、第3の実施形態にかかる防振部材40の斜視図である。
【0047】
防振部材40は、帯状金属板を折り曲げて矩形状に形成された枠部材41と、この枠部材41の上側壁を両面から挟むように配置される弾性体としてのゴム42a、42bと、枠部材41の下側壁を両面から挟むように配置されるゴム42c、42dと、を備える。
【0048】
枠部材41の上側壁およびゴム42a、42bには、躯体11に取り付けられたブレース15aを挿し込むための穴が設けられており、ブレース15aは、ゴム42a、枠部材41の上側壁、およびゴム42bを貫通した状態で、ゴム42a、42bの外側からナット43a、43bにより防振部材40と連結されている。
【0049】
ブレース15aに外力が加わると、この外力によって外側のゴム42aまたは内側のゴム42bが収縮する。このゴムの収縮に伴って、ブレース15a、ナット43a、43bが一体となって枠部材41に対して相対的に変位する。
【0050】
同様に、枠部材41の下側壁およびゴム42c、42dにも、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bを挿し込むための穴が設けられており、ブレース15bは、ゴム42d、枠部材41の下側壁、およびゴム42cを貫通した状態で、ゴム42c、42dの外側からナット43c、43dにより防振部材40と連結されている。
【0051】
ブレース15bに外力が加わると、この外力によって外側のゴム42dまたは内側のゴム42cが収縮する。このゴムの収縮に伴って、ブレース15b、ナット43c、43dが一体となって枠部材41に対して相対的に変位する。
【0052】
図14は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材40の状態を表す図である。ブレース15aに引張力が作用すると、ブレース15aは斜め上方に引っ張られ、これにより、枠部材41の上側面の内側に設置されているゴム42bが収縮される。ゴム42bの収縮により、枠部材41の上側面の内側に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15aに作用していた引張力が相殺または減少される。同様に、ブレース15bに引張力が作用すると、ブレース15bは斜め下方に引っ張られ、これにより、枠部材41の下側面の内側に設置されているゴム42cが収縮される。ゴム42cの収縮により、枠部材41の下側面の内側に反発力が生じ、この反発力がブレース15bに伝わって、ブレース15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0053】
図15は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15aに圧縮力が作用すると、ブレース15aは斜め下方に押し込まれ、これにより、枠部材41の上側面の外側に設置されているゴム42aが収縮される。ゴム42aの収縮により、枠部材41の上側面の外側に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15aに作用していた圧縮力が相殺または減少される。同様に、ブレース15bに圧縮力が作用すると、ブレース15bは斜め上方に押し出され、これにより、枠部材41の下側面の外側に設置されているゴム42dが収縮される。ゴム42dの収縮により、枠部材41の下側面の外側に反発力が生じ、この反発力がブレース15bに伝わって、ブレース15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0054】
このように、本発明の第3の実施形態にかかる防振部材40においては、ブレース15aに引張力がかかるときには、ゴム42b、42cが収縮されて、この収縮により生じる反発力によって、防振部材40は引張力を吸収し、引張力に対して必要な耐力を維持することができる。同様に、ブレース15aに圧縮力がかかるときには、ゴム42a、42dが収縮されて、この収縮により生じる反発力によって、防振部材40は圧縮力を吸収し、圧縮力に対して必要な耐力を維持することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材40は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0055】
さらに、この防振部材40をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態では、防振部材20、30、40を適用したブレースについて説明したが、本実施形態の変形例として、防振部材20、30、40を、ブレースに適用する代わりに、例えば図1および図16の防振ハンガー10に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…防振ハンガー、11…躯体、12…天井仕上材、13a、13b…吊ボルト、14a、14b…弾性体、15、15a、15b…ブレース、20…防振部材、21…殻体、22…ゴム、30…防振部材、31…殻体、32…ゴム、40…防振部材、41…枠部材、42a、42b、42c、42d…ゴム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材に対して被支持部材を防振するための防振部材に関し、より詳細には、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する防振部材、ならびにこの防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結するブレースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16に示すように、従来の防振ハンガー10と呼ばれる防振部材は、列車の通行や歩行等により生じた躯体(支持部材)11の振動が、躯体11から天井仕上材(被支持部材)12に直接伝わらないように、躯体11と天井仕上材12を連結する吊ボルト13a、13bの途中に設置される。防振ハンガー10は、たとえば、ゴムまたはバネなどの防振用の弾性体14a、14bを介して、躯体11から吊り下げられた吊ボルト13a、および天井仕上材12に取り付けられた吊ボルト13bに連結され、引張力を弾性体14a、14bで吸収するような構造となっている。このような防振ハンガー10は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
従来の防振ハンガー10は、常時の鉛直方向の荷重を支持することができるので防振性に優れるが、地震などにより発生する水平方向の力を支持することはできないので耐震性に問題がある。このため、図16に示すように、躯体11付近と天井仕上材12付近を斜方に結ぶブレース15を設置することにより、水平方向の力を支持して天井の耐震化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図16のような従来手法では、ブレース15を設置することにより躯体11と天井仕上材12が剛に連結されるため、躯体11からの振動が天井仕上材12に伝播してしまい、天井仕上材12から音が発生したり耐久性が低下したりするなど防振ハンガー10による防振機能が損なわれてしまう問題が生じる。
【0006】
ブレース15による振動の伝播を防ぐために、仮に従来の防振ハンガー10をブレース15の間に設置したとしても、従来の防振ハンガー10はゴムの圧縮により引張力を吸収するためのものであるので、引張力に対しては、ゴムが圧縮になるため充分な耐力が得られて安全であるが、圧縮力に対しては、ゴムが引張となるため、ゴムの耐力低下を生じ、結果としてブレースの耐力低下を生ずるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決し、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる防振部材、ならびにこの防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結することにより、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができ、防振性を損ねることなく耐震性を備えるブレースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の防振部材は、支持部材および被支持部材を連結する防振部材であって、前記支持部材と前記被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体と、前記弾性体の外周部の略全域を覆うように設けられた殻体と、を備え、前記殻体は、前記支持部材または前記被支持部材の一方に連結され、前記弾性体は、前記支持部材または前記被支持部材の他方に連結されて、前記弾性体が、球状であり、該殻体の内面と接触し圧縮されて生じる反発力によって前記引張力および前記圧縮力を吸収する。
【0009】
この構成により、弾性体が、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0010】
また、この構成により、支持部材と被支持部材との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、弾性体は殻体との接触点または接触面で収縮され、この弾性体の収縮により生じる反力によって圧縮力および引張力を吸収することができる。これにより、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。さらに、防振部材は、1つの弾性体と1つの殻体からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0011】
更に、この構成により、支持部材と被支持部材との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、弾性体は殻体との接触点で収縮され、この弾性体の収縮により生じる反力によって圧縮力および引張力を吸収することができる。これにより、防振部材が、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のブレースは、上述の防振部材を介して支持部材および被支持部材を連結する。
【0013】
この構成により、防振部材が支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができるので、ブレースは、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができ、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防振部材およびブレースは、支持部材と被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収することができる弾性体を備えることにより、支持部材と被支持部材との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースを示す構成図である。
【図2】第1の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図3】第1の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図4】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図5】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図6】ブレースに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材の状態を表す図である。
【図7】第2の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図8】第2の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図9】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図10】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図11】ブレースに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材の状態を表す図である。
【図12】第3の実施形態にかかる防振部材の断面図である。
【図13】第3の実施形態にかかる防振部材の斜視図である。
【図14】ブレースに引張力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図15】ブレースに圧縮力が作用したときの防振部材の状態を表す図である。
【図16】従来の防振部材およびブレースを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースについて説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる防振部材およびブレースを示す構成図である。防振ハンガー10、躯体11、天井仕上材12、吊ボルト13a、13bなどについては、従来技術と同様であり、図16を参照してすでに説明しているので、説明を省略する。
【0018】
本発明の実施形態にかかる防振部材20は、躯体11および天井仕上材12を斜方に連結するブレース15a、15bの間に設置されている。
【0019】
防振部材20は、ゴム、ばねなどの弾性体を備えており、この弾性体によりブレース15a、15bの取り付け方向に対して加えられる圧縮力および引張力を吸収するように構成されている。
【0020】
この防振部材20により、ブレース15a、15bは、地震時には躯体11に加わる水平方向の力を吸収することが可能となり、地震以外の通常時には躯体11に加わる垂直方向の力を吸収することが可能となるので、防振性を損ねることなく耐震性を高めることができる。
【0021】
続いて、防振部材20の詳細について説明する。
【0022】
まず、図2〜図6を参照して防振部材20の第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態にかかる防振部材20の断面図である。図3は、第1の実施形態にかかる防振部材20の斜視図である。
【0023】
この防振部材20は、鉄など金属系の材料により形成される直方体形状の殻体21と、この殻体21の内部に充填された弾性体としてのゴム22から構成されている。
【0024】
殻体21は、直方体の任意の一面21aに例えばねじ穴などによる取り付け部21bが設けられており、この取り付け部21bを介して、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されている。また、殻体21は、取り付け部21bが設けられた面21aの反対側の面21cに開口部21dが設けられている。
【0025】
ゴム22は、殻体21と同様の直方体形状であり、殻体21の開口部21dが設けられた面21cと対応する面22aに、開口部21dから露出するように穴22bが設けられている。ゴム22の中央にはナットが埋め込まれており、穴22bを介して、躯体11に取り付けられたブレース15aとナットを連結することにより、ゴム22はブレース15aと連結されている。なお、ゴム22とブレース15aとの連結部分は、図2などではネジおよびナットを用いたものを例示しているが、代替的に、ゴム22およびブレース15aを固定できる他の手段を用いても良い。
【0026】
なお、図2および図3とは逆に、殻体21が、躯体11に取り付けられたブレース15aと連結され、ゴム22が、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されても良い。また、殻体21およびゴム22の形状は、ブレース15a、15bを取り付けるための、ブレースの取り付け方向と略垂直な平面を備えていれば良く、たとえば、円柱、角柱などの形状でも良い。また、殻体21およびゴム22のそれぞれに棒状の部品を一体的に形成し、これらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12に直接取り付けるよう構成しても良いし、あるいはこれらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12から延びるブレースに連結ナットなどの連結手段を介して取り付けるように構成しても良い。
【0027】
図4は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15a、15bに引張力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム22は斜め上方に引っ張られ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体21は、斜め下方に引っ張られる。これにより、殻体21の面21cとゴム22の面22aとが接触して、面22aが圧縮面となってゴム22は収縮する。ゴム22が収縮することにより、面22aに反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0028】
図5は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15a、15bに圧縮力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム22は斜め下方に押し込まれ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体21は、斜め上方に押し出される。これにより、殻体21の面21aとゴム22の面22cとが接触して、面22cが圧縮面となってゴム22は収縮する。ゴム22が収縮することにより、面22cに反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0029】
このように、防振部材20は、ブレース15a、15bに働く圧縮力および引張力に対して充分な耐力を生成して、引張力および圧縮力を吸収することができるので、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0030】
図6は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材20の状態を表す図である。防振部材20は、このような場合にも、殻体21の開口部21dの縁部でブレース15aを受けることで、ブレース15aの傾きを止めることができる。これにより、ブレース15a、15bおよび防振部材20の面外方向の位置ずれを抑えることができ、ブレース15a、15bに加わる圧縮力を充分にゴム22に伝えることができるので、防振部材20は必要な耐力を維持することができる。
【0031】
本発明の第1の実施形態にかかる防振部材20においては、直方体形状の殻体21およびゴム22が、それぞれブレース15a、15bに連結され、ブレースに引張力または圧縮力が加わるときには、殻体21およびゴム22が接触してゴム22が収縮される。そして、このゴム22の収縮により生じる反発力によって、防振部材20は引張力または圧縮力を吸収することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材20は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0032】
また、防振部材20は、殻体21およびゴム22の形状を直方体にすることで、製造工程を容易にすることができる。また、防振部材20は、単一の殻体21と単一のゴム22からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0033】
さらに、この防振部材20をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0034】
次に図7〜図11を参照して防振部材の第2の実施形態について説明する。図1の防振部材20は、図7〜図11に示す防振部材30に置き換えることができる。図7は、第2の実施形態にかかる防振部材30の断面図である。図8は、第2の実施形態にかかる防振部材30の斜視図である。
【0035】
防振部材30は、球状の殻体31と、この殻体31の内部に充填された球状のゴム32から構成されている。殻体31およびゴム32の材料は、第1の実施形態の殻体21およびゴム22と同様である。
【0036】
殻体31は、球状の表面の任意の一点に、例えばねじ穴などによる取り付け部31aが設けられており、この取り付け部31aを介して、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されている。また、殻体31は、取り付け部31aが設けられた位置と球面上の反対側の位置に任意の半径で開口部31bが設けられている。
【0037】
ゴム32は、殻体31と同様の球状であり、殻体31の開口部31bから露出するように穴32aが設けられている。ゴム32の中央にはナットが埋め込まれており、穴32aを介して、躯体11に取り付けられたブレース15aとナットを連結することにより、ゴム32はブレース15aと連結されている。なお、ゴム32とブレース15aとの連結部分は、図7などではネジおよびナットを用いたものを例示しているが、代替的に、ゴム32およびブレース15aを固定できる他の手段を用いても良い。
【0038】
なお、図7および図8とは逆に、殻体31が、躯体11に取り付けられたブレース15aと連結され、ゴム32が、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bと連結されても良い。また、殻体31およびゴム32のそれぞれに棒状の部品を一体的に形成し、これらの棒状部品を躯体11および天井仕上材12に直接取り付けるように構成しても良い。
【0039】
図9は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材30の状態を表す図である。ブレース15a、15bに引張力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム32は斜め上方に引っ張られ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体31は、斜め下方に引っ張られる。これにより、殻体31の開口部31bの端部とゴム22が接触して、この接触箇所が圧縮面となってゴム32は収縮する。ゴム32が収縮することにより、圧縮面に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0040】
図10は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材30の状態を表す図である。ブレース15a、15bに圧縮力が作用すると、躯体11に取り付けられたブレース15aに連結されるゴム32は斜め下方に押し込まれ、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bに連結される殻体31は、斜め上方に押し出される。これにより、殻体31とゴム32とが接触して、この接触箇所が圧縮面となってゴム32は収縮する。ゴム32が収縮することにより、圧縮面に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15a、15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0041】
このように、防振部材30は、ブレース15a、15bに働く圧縮力および引張力に対して充分な耐力を生成して、引張力および圧縮力を吸収することができるので、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0042】
図11は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用して面外方向にずれたときの防振部材30の状態を表す図である。防振部材30は、このような場合にも、殻体31の開口部31bの縁部でブレース15aを受けることで、ブレース15aの傾きを止めることができる。これにより、ブレース15a、15bおよび防振部材30の面外方向の位置ずれを抑えることができ、ブレース15a、15bに加わる圧縮力を充分にゴム32に伝えることができるので、防振部材30は必要な耐力を維持することができる。
【0043】
本発明の第2の実施形態にかかる防振部材30においては、球状の殻体31およびゴム32が、それぞれブレース15a、15bに連結され、ブレースに引張力または圧縮力が加わるときには、殻体31およびゴム32が接触してゴム32が収縮される。そして、このゴム32の収縮により生じる反発力によって、防振部材30は引張力または圧縮力を吸収することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材30は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0044】
また、防振部材30は、単一の殻体31と単一のゴム32からなる構成により引張力および圧縮力の両方を吸収できるので、より少ない構成部材でブレースの耐力の低下を防ぐ防振部材を実現することができる。
【0045】
さらに、この防振部材30をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0046】
次に図12〜図15を参照して防振部材の第3の実施形態について説明する。図1の防振部材20は、図12〜図15に示す防振部材40に置き換えることができる。図12は、第3の実施形態にかかる防振部材40の断面図である。図13は、第3の実施形態にかかる防振部材40の斜視図である。
【0047】
防振部材40は、帯状金属板を折り曲げて矩形状に形成された枠部材41と、この枠部材41の上側壁を両面から挟むように配置される弾性体としてのゴム42a、42bと、枠部材41の下側壁を両面から挟むように配置されるゴム42c、42dと、を備える。
【0048】
枠部材41の上側壁およびゴム42a、42bには、躯体11に取り付けられたブレース15aを挿し込むための穴が設けられており、ブレース15aは、ゴム42a、枠部材41の上側壁、およびゴム42bを貫通した状態で、ゴム42a、42bの外側からナット43a、43bにより防振部材40と連結されている。
【0049】
ブレース15aに外力が加わると、この外力によって外側のゴム42aまたは内側のゴム42bが収縮する。このゴムの収縮に伴って、ブレース15a、ナット43a、43bが一体となって枠部材41に対して相対的に変位する。
【0050】
同様に、枠部材41の下側壁およびゴム42c、42dにも、天井仕上材12に取り付けられたブレース15bを挿し込むための穴が設けられており、ブレース15bは、ゴム42d、枠部材41の下側壁、およびゴム42cを貫通した状態で、ゴム42c、42dの外側からナット43c、43dにより防振部材40と連結されている。
【0051】
ブレース15bに外力が加わると、この外力によって外側のゴム42dまたは内側のゴム42cが収縮する。このゴムの収縮に伴って、ブレース15b、ナット43c、43dが一体となって枠部材41に対して相対的に変位する。
【0052】
図14は、ブレース15a、15bに引張力が作用したときの防振部材40の状態を表す図である。ブレース15aに引張力が作用すると、ブレース15aは斜め上方に引っ張られ、これにより、枠部材41の上側面の内側に設置されているゴム42bが収縮される。ゴム42bの収縮により、枠部材41の上側面の内側に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15aに作用していた引張力が相殺または減少される。同様に、ブレース15bに引張力が作用すると、ブレース15bは斜め下方に引っ張られ、これにより、枠部材41の下側面の内側に設置されているゴム42cが収縮される。ゴム42cの収縮により、枠部材41の下側面の内側に反発力が生じ、この反発力がブレース15bに伝わって、ブレース15bに作用していた引張力が相殺または減少される。
【0053】
図15は、ブレース15a、15bに圧縮力が作用したときの防振部材20の状態を表す図である。ブレース15aに圧縮力が作用すると、ブレース15aは斜め下方に押し込まれ、これにより、枠部材41の上側面の外側に設置されているゴム42aが収縮される。ゴム42aの収縮により、枠部材41の上側面の外側に反発力が生じ、この反発力がブレース15aに伝わって、ブレース15aに作用していた圧縮力が相殺または減少される。同様に、ブレース15bに圧縮力が作用すると、ブレース15bは斜め上方に押し出され、これにより、枠部材41の下側面の外側に設置されているゴム42dが収縮される。ゴム42dの収縮により、枠部材41の下側面の外側に反発力が生じ、この反発力がブレース15bに伝わって、ブレース15bに作用していた圧縮力が相殺または減少される。
【0054】
このように、本発明の第3の実施形態にかかる防振部材40においては、ブレース15aに引張力がかかるときには、ゴム42b、42cが収縮されて、この収縮により生じる反発力によって、防振部材40は引張力を吸収し、引張力に対して必要な耐力を維持することができる。同様に、ブレース15aに圧縮力がかかるときには、ゴム42a、42dが収縮されて、この収縮により生じる反発力によって、防振部材40は圧縮力を吸収し、圧縮力に対して必要な耐力を維持することができる。これにより、躯体11と天井仕上材12との間で圧縮力及び引張力のどちらが発生したときでも、防振部材40は圧縮力および引張力を吸収し、圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができる。
【0055】
さらに、この防振部材40をブレースに適用することにより、本実施形態にかかるブレース15a、15bは、躯体11と天井仕上材12との間で生じた圧縮力及び引張力に対して必要な耐力を維持することができるので、防振性を損ねることなく耐震性を備えることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態では、防振部材20、30、40を適用したブレースについて説明したが、本実施形態の変形例として、防振部材20、30、40を、ブレースに適用する代わりに、例えば図1および図16の防振ハンガー10に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…防振ハンガー、11…躯体、12…天井仕上材、13a、13b…吊ボルト、14a、14b…弾性体、15、15a、15b…ブレース、20…防振部材、21…殻体、22…ゴム、30…防振部材、31…殻体、32…ゴム、40…防振部材、41…枠部材、42a、42b、42c、42d…ゴム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材および被支持部材を連結する防振部材であって、
前記支持部材と前記被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体と、
前記弾性体の外周部の略全域を覆うように設けられた殻体と、
を備え、
前記殻体は、前記支持部材または前記被支持部材の一方に連結され、
前記弾性体は、前記支持部材または前記被支持部材の他方に連結されて、
前記弾性体が、球状であり、該殻体の内面と接触し圧縮されて生じる反発力によって前記引張力および前記圧縮力を吸収することを特徴とする防振部材。
【請求項2】
請求項1に記載の防振部材を介して前記支持部材および前記被支持部材を連結するブレース。
【請求項1】
支持部材および被支持部材を連結する防振部材であって、
前記支持部材と前記被支持部材との間で生じた引張力および圧縮力を吸収する弾性体と、
前記弾性体の外周部の略全域を覆うように設けられた殻体と、
を備え、
前記殻体は、前記支持部材または前記被支持部材の一方に連結され、
前記弾性体は、前記支持部材または前記被支持部材の他方に連結されて、
前記弾性体が、球状であり、該殻体の内面と接触し圧縮されて生じる反発力によって前記引張力および前記圧縮力を吸収することを特徴とする防振部材。
【請求項2】
請求項1に記載の防振部材を介して前記支持部材および前記被支持部材を連結するブレース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−107757(P2012−107757A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35329(P2012−35329)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2007−164085(P2007−164085)の分割
【原出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2007−164085(P2007−164085)の分割
【原出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
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