説明

防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート及びその製造方法

【課題】防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートは、ポリ乳酸単独、またはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の物質を含む組成物からなる内層(A)、及び離型性付与物質とポリ乳酸とを含む組成物からなる表層(B)を備える多層シートであって、多層シートの一面に防曇コーティング層が0.01ないし1.00g/m2に形成されていることを特徴とする。これにより、シートそのものに優れた離型性を有するため、別途のシリコン離型コーティングを行わなくても良い。また、従来の技術において、離型層の形成によってシリコン離型コーティングの防曇コーティング層への転写のような問題によって防曇性が低下するなどの問題点を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート及びその製造方法に係り、さらに詳細には、従来の防曇シートの問題点を解決して、優れた離型性を有し、かつ防曇処理されたシートがロール状に巻かれても、防曇性がそのまま維持される防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成プラスチックは、優れた物性と共に安価でかつ軽量であるという特性から現代人の生活においてはなくてはならない包装材となり、全世界において種々の用途で使われている。しかしながら、上記した特性を有する合成プラスチックは、その長所でもあり短所でもある、よく分解されないという問題により環境汚染の問題が段々深刻になってきている。このため、最近、各国においてこれに対する解決策を模索しようとする関心を集めている。すなわち、従来には合成プラスチック処理のために埋め込み、焼却及び再生という方法を主として活用してきたが、これらの方法では環境汚染の問題を完全に解決することはできなかった。
【0003】
このため、現在には、使用済みのプラスチックが自ら分解可能になるように製造する、いわゆる分解性のプラスチックの開発に関心が集中している。現在、種々の技術により、かつ、種々の原料から種々の分解性プラスチックが開発されてきており、これらの中でもポリ乳酸(以下、「PLA」と称する。)はL−乳酸の発酵法の開発のおかげで大量でかつ安価に製造されており、堆肥化条件において分解速度が速く、カビに対する抵抗性、食品に対する耐着臭性など優れた特性を保有して、その利用分野の範囲が拡大している。PLAは、現在、各国において用途に適した特性を与えるために種々の試みがなされている。この中において、特に一回用に使用する食品包装用のトレイ分野において求められる核心事項は、トレイの表面に霜の発生を抑える防曇機能の付与であり、防曇機能の付与方法としては、一般に、防曇成分のシート内部添加法、防曇成分のシート表面コーティング法などがある。シート内部添加法の場合、経時による防曇成分のブリードアウト現象及び白濁発生の問題により使用に不向きであるため、一般に、シート表面コーティング法により防曇機能を付与している。PLA防曇シートの場合、生分解性コーティング剤となる脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルを通じてのコーティング法があるが(例えば、下記の特許文献1参照)、PLAの固有特性である透明性を阻害するという短所があり、ポリビニルアルコールの親水性を用いた方法も提案されているが(例えば、下記の特許文献2、3参照)、これらは耐傷付き性及び防曇持続性などにおいて長時間効力を発揮することができないという短所がある。さらに、水分散されたコポリエステルを用いたコーティング方法が提案されているが(例えば、下記の特許文献4参照)、これもまた塗布量による透明性の低下及びコポリエステルの食品安定性についての言及がなく、実用化するには無理がある。
【0004】
さらに、既存の食品安定性の保証された防曇コーティング剤の場合、一般に、界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が用いられ、これらの界面活性剤に種々のバインダーをブレンドさせる方法により製造している。しかしながら、これらの防曇剤の場合、ほとんど耐傷付き性が不足してシートに防曇コーティングを行った状態においては優れた防曇性を保有するが、トレイ成形工程間に発生した傷付き領域において防曇性が低下するという問題があり、改善が望まれるのが現状である。
【0005】
さらに、一般的に、シートの場合、トレイ成形工程及びトレイ包装工程においてトレイと金型の間の離型性と、トレイとトレイの間の離型性を与えるために、シートの一面に必ず離型性を与えるコーティングを行っており、このようなコーティングを行うときに大部分シリコン剤を使用しているが、これらのシリコン剤は非架橋性であるため、シートがロール状に巻かれる場合、これらのシリコン成分がシートの裏面である防曇コーティング面へ転写される場合がある。この場合、防曇コーティング面へ転写されたシリコン成分は防曇性に悪影響を及ぼし、これらのシリコンが転写された領域から防曇性が破れるという問題が発生する。ところが、現在の技術では、90℃以下の乾燥温度でシリコンコーティングを適当に架橋させて安定したコーティング被膜を形成することができない。したがって、防曇性に悪影響を及ぼさないために、シリコンコーティングの転写を最小化するための方法として、単にコーティング工程を改善するための努力が行われているのが実情であるが、これに対する根本的な対策が切実に要求されている。
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第1996−004395号公報
【特許文献2】特開平9−221555号公報
【特許文献3】アメリカ特許第4、127、682号公報
【特許文献4】大韓民国特許第10-0722516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の防曇シートの問題点を解決するためになされたものであって、防曇処理されたシートがロール状に巻かれても、防曇性がそのまま維持され、かつ優れた離型性を有する防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、前記従来の防曇シートの問題点を解決して、優れた離型性及び防曇性を有する生分解性多層シートを容易に製造することができる方法を提供するところにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記方法によって製造された防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートを利用して、優れた防曇性を有するトレイを提供するところにある。
【0009】
前記本発明の目的は、ポリ乳酸、及びポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された物質で内層(A)を形成し、前記内層の表面に離型性を有するポリ乳酸で表層(B)を形成するように多層シートを設計した後、前記多層シートの一面に防曇コーティングを行うことによって、トレイ成形後にも十分な防曇性及び離型性を有する生分解性多層シートを提供することによって達成することができる
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートは、ポリ乳酸単独、またはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の物質からなる内層(A)と、離型性付与物質とポリ乳酸とを含む組成物からなる表層(B)とを備える多層シートであって、前記多層シートの一面に防曇コーティング層が0.01ないし1.00g/m2に形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の構成によれば、前記多層シートを構成する組成物は、総量において内層(A)が90.0ないし60.0重量部、表層(B)が10.0ないし40.0重量部であることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の構成によれば、前記多層シートの内層(A)を形成する組成物は、総量においてポリ乳酸が90.0重量部以上であり、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体の和が10.0重量部以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の構成によれば、前記多層シートの表層(B)を形成する組成物は、総量においてポリ乳酸が95.0ないし99.5重量部であり、離型性付与物質が0.5ないし5.0重量部であることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の構成によれば、前記多層シートを構成するポリ乳酸は、乳酸を重合させた得られるものであり、本発明に用いられるポリ乳酸の場合、L−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸から構成され、数平均分子量は10、000以上であって、これらのポリ乳酸は単独または複合して使用可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の構成によれば、前記脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、ROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアリールエステル誘導体から構成される群から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上の整数である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールからなる群や、下記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールなどからなる群が使用可能であることを特徴とする。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、R1はC2〜C8のアルキレン基であり、R2はC2〜C8のアルキル基である。
【0018】
本発明のさらに他の構成によれば、前記芳香族−脂肪族ポリエステルは芳香族成分としてROOC−Ar−COOR1(R、R1は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体であって、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としてはROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体よりなる群から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上の整数である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や上記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールなどよりなる群が使用可能であることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の構成によれば、前記ポリ乳酸共重合体はジカルボン酸またはその誘導体からなる単位と脂肪族グリコール類からなる単位から構成された組成物であり、ジカルボン酸またはその誘導体としてはL−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸、ROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基であり、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体、ROOC−Ar−COOR1(R、R1は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や、上記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールよりなる群が使用可能である。
【0020】
本発明のさらに他の構成によれば、前記離型性付与物質は、シリカ、シリカゲル、コロイドシリカ、湿式シリカ、乾式シリカなどの酸化ケイ素、酸化チタン、炭化カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、アルミナ、アルミナゾール、ゼオライト、グラファイト、ジルコニウムゾール、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、塩化バリウム、硫酸バリウム、酸化アンチモンゾール、カルシウムシリケート、アルミニウムシリケート、ステアリン酸カルシウムなどの無機粒子と、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフロオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、架橋シリコン樹脂、シリコン樹脂、ゼラチン、澱粉などの有機粒子からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明のさらに他の構成によれば、前記防曇コーティング層は、好ましくは、バインダーとしてアクリル系樹脂を使用した界面活性剤からなることを特徴とする。
【0022】
本発明のさらに他の構成によれば、前記界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が1種以上含まれたものを使用することを特徴とする。
【0023】
前記他の目的を達成するための本発明の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂単独、またはポリ乳酸樹脂90.0重量部以上と、ポリ乳酸樹脂を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の樹脂10.0重量部以下とを混合した後、180ないし250℃で溶融させてシート内層(A)に通過させる工程と、ポリ乳酸樹脂95.0ないし99.5重量部と離型性付与物質5.0ないし0.5重量部とを混合した後、180ないし250℃で溶融させてシート表層(B)に通過させる工程と、前記通過された各組成物をスリップ型ダイを介してポリマーを吐出させてB:A:B構造にシートを製造する工程と、前記製造されたシートの一面にコロナ放電処理を行う工程と、防曇剤を水または有機溶媒と混合して防曇コーティング液を製造する工程と、前記製造された防曇コーティング液を前記コロナ放電処理されたシートの一面に塗布する工程と、前記塗布処理後のコーティング液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
前記さらに他の目的を達成するための本発明の優れた離型性及び防曇性を有するトレイは、前記本発明に係る生分解性多層シートに成形されたことを特徴とする。
【0025】
前記本発明に係る生分解性多層シートは、その製造工程において、その他の添加物としては、用途によって紫外線防止剤、抗菌/抗臭剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料などの物質を添加することも可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートは、ポリ乳酸単独、またはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の物質からなる内層(A)と、離型性を有するポリ乳酸からなる表層(B)とが、B/A/Bの構造を有する多層シートに形成され、一面に防曇コーティング層が塗布されたものであって、シートそのものが優れた離型性を有するため、別途のシリコン離型コーティングを行わなくてもよい。また、従来の技術において、離型層の形成によってシリコン離型コーティングの防曇コーティング層への転写のような問題によって防曇性が低下するなどの問題点を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で提示したシート基材は、ポリ乳酸単独、またはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体から選択される物質からなる内層(A)と、離型性を有するポリ乳酸からなる表層(B)とがB/A/Bの多層構造に形成されることを特徴とする。前記シート内層(A)がポリ乳酸、及び脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体からなることは、ポリ乳酸単独からなるシートの場合、優れた光学的特性がそのまま表れるが、ポリ乳酸の短所である壊れやすい特性によって、トレイ成形過程または流通過程で衝撃による壊れ現象が発生しうるため好ましくない。したがって、ポリ乳酸単独からなることがシートの圧出性、作業性、透明性の側面から最も好ましいが、トレイの用途によって耐衝撃性が必要な場合は、ポリ乳酸の耐衝撃性を強化するために、ポリ乳酸にポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体を適量混合してシートを圧出することが好ましい。この場合、ポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体が混合されることによるシートの耐衝撃性の向上及び透明性低下の問題を同時に考慮せねばならないため、適切な投入量に調節することが重要である。脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸共重合体のうち何れを使用しても、シートの内層(A)を基準に10.0重量部以上投入する場合、シートの透明性を確保し難い。したがって、脂肪族ポリエステルは10.0重量部以下、芳香族−脂肪族ポリエステルは5.0重量部以下、ポリ乳酸共重合体は10.0重量部以下にその投入量が制限される。逆に、シートの柔軟性を適切に与えるためには、脂肪族ポリエステルは1.0重量部以上、芳香族−脂肪族ポリエステルは0.1重量部以上、ポリ乳酸共重合体は1.0重量部以上が投入されて初めて耐衝撃性が向上することができる。脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸共重合体のいずれを適用しても構わないが、ポリ乳酸との相溶性の側面からポリ乳酸共重合体と脂肪族ポリエステルの方が、芳香族−脂肪族ポリエステルに比べて優れていることから、透明性の側面から有利であり、これに対し、芳香族−脂肪族ポリエステルの場合、柔軟性の側面からポリ乳酸共重合体と脂肪族ポリエステルに比べて有利である。
【0028】
また、シートの表層(B)は、離型性を有するポリ乳酸からなるものであって、離型性付与物質の場合、シートの表層(B)の総組成物を基準に0.5ないし5.0重量部を維持せねばならない。離型性付与物質は、シート間の粘着を防止する役割を行うが、過度に適用される場合、シートの透明性及び耐衝撃性を低下させる恐れがある。また、離型性付与物質が粒子である場合、シートの表面にスクラッチを発生させ得るため、過度に離型性付与物質を使用する場合、かえって防曇性を低下させる恐れがある。したがって、好ましくは、3.0ないし1.0重量部が最も好ましい。また、離型性付与物質の場合、粒子のサイズによってシートの離型性及び透明性が左右されるため、1.0ないし10.0umの直径、好ましくは、2.0ないし6.0umの直径を有する粒子を選択して使用することが重要である。このような組成を有するシートの表層(B)の組成物は、シートの総組成物のうち、10.0ないし40.0重量部を含むことが好ましい。10.0重量部以下では、シートの離型性を十分に発揮し難く、40.0重量部以上では、シートの内層(A)の含量が少なく、シートの耐衝撃性を発揮し難く、厚くなった表層(B)の影響によってシートの透明性を低下させる恐れがあって好ましくない。
【0029】
本発明の多層シートを形成する内層(A)と表層(B)は、同じポリ乳酸を主に含むが、シートの内層(A)にはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体が最大10.0重量部含まれ、シートの表層(B)には離型性付与物質が最大5.0重量部含まれるため、シートの圧出時、シートの層別の溶融粘度に対する制御が要求される。このとき、最も重要なものは温度条件であり、180ないし250℃の温度範囲、好ましくは、200ないし230℃の温度範囲で加工することが好ましい。これは、樹脂組成物の熱分解を最小化して、シート組成物の柔軟性を倍加させる効果があり、十分な溶融温度を維持することによってダイから吐出される溶融ポリマーの流動制御を行うのに最も適するためである。その他に、シートの機能性をさらに与えるために、各種の添加剤として顔料、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、抗剤、各種のエラストマー、各種のフィラーなどを使用することができる。
【0030】
前記により、離型性が与えられたシートの一面にアクリル系樹脂及び界面活性剤からなる防曇コーティング層を形成することによって、シートに防曇性を与える。本発明の防曇コーティング層は、シートの一面に塗布され、アクリル系樹脂をバインダーとして使用し、防曇界面活性剤としては四級アムモニウム塩、硫酸アルキル、アルキルスルホネート、アルキルホスホン酸、両性系が1種以上含まれたものを使用する。
【0031】
上述した本発明の防曇コーティングは、コーティング液の製造時に全体のコーティング液100重量部に対して固形分の含量が0.1〜10.0重量部になるように製造されることが好ましく、より好ましくは、固形分の含量が1.0〜5.0重量部になるように製造可能である。前記固形分の含量が0.1重量部未満であれば、コーティング層の被膜形成及び防曇機能を発現するのに十分ではなく、10.0重量部を超えると、フィルムの透明性に影響してしまい、好ましくない。これらの固形粉の含量を一般的な大経グラビア方式でコーティングする場合、乾燥が完了したコーティング被膜の厚さは0.01ないし1.00g/m2であり、十分なコーティング物性及び効率的な経済性を有するためには、0.03ないし0.10g/m2であることが最も好ましい。
【0032】
一方、前記防曇コーティング液に用いられる溶媒は、好ましくは、実質的に水を主媒体とする水性コーティング液である。本発明に用いられるコーティング液は塗布性の向上、透明性の向上などの目的として、本発明の効果を損なわない程度の適量の有機溶媒を含んでいてもよい。例えば、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、エタノール、メタノールなどを好適に用いることができる。しかしながら、コーティング液中に多量の有機溶媒を含有させると、インラインコーティング法に適用する場合に乾燥、延伸及び熱処理工程において爆発の危険性があるため、その含有量はコーティング液中に10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下である。
【0033】
コーティング工程はシート一面に製造された防曇コーティング液を塗布して防曇コーティング層を形成する。具体的に、防曇コーティング液を塗布する方法には特に制限はないが、メイヤバー方式、グラビア方式、スプレイ方式などが用いられ、塗布する前にシート表面に極性基を導入してコーティング層とシートとの接着性や塗布性を向上できるようにコロナ放電処理を行うことが好ましい。また、防曇コーティング液の安定性、濡れ性及び塗布レベルの向上のために、エタノール、イソプロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、エチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブなどのエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類を1種以上混合して用いることができる。また、前記生分解性シートの厚さは、通常、100〜2000μm、好ましくは、300〜1000μmに製造可能である。前記のように製造されたシートは、トレイ成形時に優れた離型性によって金型との脱着を容易にし、トレイにおいてもトレイ間の離型性が有効であり、優れた防曇性を有する。
【0034】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例により詳述するが、本発明の範疇をここに限定するものではない。
【0035】
まず、本発明の説明のために必要となる測定及び評価方法は、下記の如き条件下で行った。
【0036】
(1)透明性;
ヘーズ測定器(AUTOMATIC DIGITAL HAZEMETER、日本電飾社製)に10cm×10cm角にサンプリングした試料1枚を垂直におき、垂直に置かれた試料の直角方向に400〜700nmの波長を有する光を透過させて得られた値を測定した。このとき、ヘーズ値は下記の数式1で算出された。
【0037】
ヘーズ(%)=(1−散乱光の量/光の総透過量)×100
【0038】
(2)柔軟性;
同じ条件で製造された横5cm、縦5cmシート試片の10個の試料を90℃以上10回繰り返して折り返し、割れが0%〜10%の場合には○、50%以下の場合には△、50%を超える場合には×とした。
【0039】
(3)表面粗度(DIN−4768);
5umRの触針を使用して、シートの表面を、測定長2.5mm、スキャニング本数40本、カットオフ値0.25mmの接触方法で測定した。同じ試料に対して4回反復測定して、最大値を除いた残りの三つのデータの平均値で示した。
【0040】
(4)摩擦係数(ASTM D 1904);
23℃、50%RHの環境下でシートの表面と裏面の間の静止摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。
【0041】
(5)防曇性;
同じ条件で製造された横7cm、縦7cmシート試片の防曇コーティング面を50℃温度のお湯で充填されたカップの上に載せる。この後、30分間放置しながらシートに曇りの度合いをもって評価し、シートに水滴がなければ◎、一部に水滴が結ばれると○、小さな水滴が多数見られると△、シートの全面に曇りがあれば×とした。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
N.W LLC社のPLA樹脂80.0kgをメイン圧出器によって溶融させて、フィーダーブロック(FEEDER BLOCK)を使用してシートの内層(A)に通過させ、N.WLLC社のPLA樹脂19.9kg、シリカ粒子0.1kgを乾燥混合した後、サブ圧出器によって溶融させて、フィーダーブロックを使用してシートの表層(B)に通過させた後、スリップ型ダイによってポリマーを吐出させて、1:8:1のB:A:Bの構造を有する厚さ300umのシートを製造する。その後、防曇コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行った後、アクリルコポリマーバインダーに両性(Amphoteric)系の界面活性剤からなる防曇剤(タケモトオイル社、ELECUT−C−031−K)1重量部に水15重量部を混合した防曇コーティング液をグラビアコーティング方式を利用してコロナ放電処理された面に塗布した。コーティング塗布後、塗布されたコーティング液を約75℃の熱風乾燥で約15秒間乾燥させてロール状に巻かれたシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0043】
(実施例2)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂79.0kg、ポリブチレンコハク酸塩(PBS)1.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0044】
(実施例3)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂79.0kg、ポリブチレンアジピン酸−テレフタレート(PBAT)1.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0045】
(実施例4)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂79.0kg、ポリ乳酸共重合体(DIC社PD−150)1.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0046】
(実施例5)
シートの表層(B)にN.W LLC社のPLA樹脂19.0kg、シリカ粒子1.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0047】
(実施例6)
N.W LLC社のPLA樹脂90.0kgをメイン圧出器によって溶融させて、フィーダーブロック(FEEDER BLOCK)を使用してシートの内層(A)に通過させ、N.WLLC社のPLA樹脂9.95kg、シリカ粒子0.05kgを乾燥混合した後、サブ圧出器によって溶融させて、フィーダーブロックを使用してシートの表層(B)に通過させた後、スリップ型ダイによってポリマーを吐出させて、0.5:9.0:0.5のB:A:Bの構造を有する厚さ300umのシートを製造したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0048】
(実施例7)
N.W LLC社のPLA樹脂60.0kgをメイン圧出器によって溶融させて、フィーダーブロック(FEEDER BLOCK)を使用してシートの内層(A)に通過させ、N.WLLC社のPLA樹脂39.8kg、シリカ粒子0.2kgを乾燥混合した後、サブ圧出器によって溶融させて、フィーダーブロックを使用してシートの表層(B)に通過させた後、スリップ型ダイによってポリマーを吐出させて、2:6:2のB:A:Bの構造を有する厚さ300umのシートを製造したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0049】
(比較例1)
N.W LLC社のPLA樹脂100kgを、メイン圧出器及びサブ圧出器によって各80.0kg、20.0kg溶融圧出した後、スリップ型ダイによって吐出させて、300um厚さの単層シートを製造し、コーティングされるシートの両面にコロナ放電処理を行った後、シートの一面には、実施例1と同じ方法で防曇コーティングを塗布した後に乾燥処理を行い、他面にはシリコン離型剤(信越社、KM−9737)1重量部及び水30重量部からなるコーティング液でグラビアコーティング方式で塗布した後、塗布されたコーティング液を約75℃の熱風乾燥で約15秒間乾燥させて、ロール状に巻かれたシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0050】
(比較例2)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂70.0kg、ポリブチレンコハク酸塩(PBS)10.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0051】
(比較例3)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂70.0kg、ポリブチレンアジピン酸−テレフタレート(PBAT)10.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0052】
(比較例4)
シートの内層(A)にN.W LLC社のPLA樹脂70.0kg、ポリ乳酸共重合体(DIC社PD−150)10.0kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0053】
(比較例5)
シートの表層(B)にN.W LLC社のPLA樹脂18.5kg、シリカ粒子1.5kgを使用したことを除いては、実施例1と同様にシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、表面粗度、摩擦係数、防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。また、このシートを真空成形を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸単独、またはポリ乳酸を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の物質を含む組成物からなる内層(A)と、
離型性付与物質とポリ乳酸とを含む組成物からなる表層(B)と、を備える多層シートであって、
前記多層シートの一面に防曇コーティング層が0.01ないし1.00g/m2に形成されていることを特徴とする防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項2】
前記多層シートを構成する組成物は、総量において内層(A)が90.0ないし60.0重量部、表層(B)が10.0ないし40.0重量部であることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項3】
前記多層シートの内層(A)を形成する組成物は、総量においてポリ乳酸が90.0重量部以上であり、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体の和が10.0重量部以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項4】
前記多層シートの表層(B)を形成する組成物は、総量においてポリ乳酸が95.0ないし99.5重量部であり、離型性付与物質が0.5ないし5.0重量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項5】
前記ポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸から構成され、数平均分子量は10、000以上であって、これらのポリ乳酸は単独または複合して使用可能であることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステルは、ROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上の整数である。)構造のジオール又はポリアルキレングリコールや下記の一般式(1)で表わされる構造の脂肪族2価アルコールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート;
【化1】

式中、R1はC2〜C8のアルキレン基であり、R2はC2〜C8のアルキル基である。
【請求項7】
前記芳香族−脂肪族ポリエステルは芳香族成分としてROOC−Ar−COOR1(R、R1は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、脂肪族成分としてはROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上の整数である。)構造のジオール又はポリアルキレングリコールや下記の一般式(1)で表わされる構造の脂肪族2価アルコールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート;
【化1】

式中、R1はC2〜C8のアルキレン基であり、R2はC2〜C8のアルキル基である。
【請求項8】
前記ポリ乳酸共重合体はジカルボン酸またはその誘導体からなる単位と脂肪族グリコール類からなる単位から構成された組成物であり、ジカルボン酸またはその誘導体としてはL−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸、ROOC(CH2)nCOOR1(R、R1は水素またはアルキル基であり、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体、ROOC−Ar−COOR1(R、R1は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族グリコール類はHO−(CH2)n−OH(nは2以上である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や、下記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート;
【化1】

式中、R1はC2〜C8のアルキレン基であり、R2はC2〜C8のアルキル基である。
【請求項9】
前記離型性付与物質は、シリカ、シリカゲル、コロイドシリカ、湿式シリカ、乾式シリカなどの酸化ケイ素、酸化チタン、炭化カルシウム、カオリン、カオリナイト、クレイ、タルク、アルミナ、アルミナゾール、ゼオライト、グラファイト、ジルコニウムゾール、長石、二硫化モリブデン、カーボンブラック、塩化バリウム、硫酸バリウム、酸化アンチモンゾール、カルシウムシリケート、アルミニウムシリケート、ステアリン酸カルシウムなどの無機粒子と、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート共重合架橋体、ポリテトラフロオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、架橋シリコン樹脂、シリコン樹脂、ゼラチン、澱粉などの有機粒子からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項10】
前記防曇コーティング層はバインダーとしてアクリル系樹脂を使用した界面活性剤からなることを特徴とする請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項11】
前記界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が1種以上含まれたものを使用することを特徴とする請求項10に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シート。
【請求項12】
ポリ乳酸樹脂単独、またはポリ乳酸樹脂90.0重量部以上と、ポリ乳酸樹脂を除いた脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体から選択された一つ以上の樹脂10.0重量部以下とを混合した後、180ないし250℃で溶融させてシート内層(A)に通過させる工程と、
ポリ乳酸樹脂95.0ないし99.5重量部と離型性付与物質5.0ないし0.5重量部とを混合した後、180ないし250℃で溶融させてシート表層(B)に通過させる工程と、
前記通過された各組成物をスリップ型ダイを介してポリマーを吐出させてB:A:B構造にシートを製造する工程と、
前記製造されたシートの一面にコロナ放電処理を行う工程と、
防曇剤を水または有機溶媒と混合して防曇コーティング液を製造する工程と、
前記製造された防曇コーティング液を前記コロナ放電処理されたシートの一面に塗布する工程と、
前記塗布処理後のコーティング液を乾燥させる工程と、
を含むことを特徴とする防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートの製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の防曇性及び離型性に優れた生分解性多層シートに成形されることを特徴とする生分解性防曇トレイ。

【公開番号】特開2010−149493(P2010−149493A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81546(P2009−81546)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(504244069)トーレ セハン インク (7)
【Fターム(参考)】