説明

防水カバーの取付け構造

【目的】 防水カバーを端子台の突出側先端から根元に向けて外嵌してなる防水カバーの取付け構造で、その後の分離を確実に防止する。
【構成】 端子台1の外周面にはその周方向に沿って、複数の島状凸部15が形成され、この島状凸部15よりも根元寄り部位には溝状凹部13を形成する。一方、防水カバー41にはその前側の開口の周囲に沿って、内、外に弾性変形可能に形成された複数の突出部51を設ける。その突出部51には、防水カバー41が端子台1に外嵌される際に、溝状凹部13に係合する係合フック及び島状凸部15に係合する係合窓58を設けた。防水カバー41が、その前側の開口の内周面を端子台1の外周面に外嵌してなる状態で、係合フックが溝状凹部13に係合され、係合窓58に島状凸部15が係合されるようにした。二重ロック構造により、分離防止効果が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前側に開口を備えた筒状の防水カバーが、防水材を介し、電線の端部と接続される1つ以上の電極端子を有する端子台の先端から根元に向けて外嵌されてなる防水カバーの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板が収容されたケースの外壁に突出状に形成された端子台の突出側先端(突出前端面)に配置された電極端子(端子金具)に対し、入出力用等の各電線の端部をカシメやハンダ付けによって固着し、事後的な分離を不能としてなる端子接続部(構造)がある。このような端子接続部を防水処理する手段としては、その端子接続部を包囲するように樹脂でインサート状に成形して固める方法や、その端子接続部をカバーするように樹脂製の防水カバーをゴムパッキンなどの防水材を介して取り付ける手段が挙げられる。このうち、防水カバーを取り付ける方法としては、前側が開口する樹脂製の防水カバー(以下、単にカバーとも言う)を、その端子台の突出側先端から根元に向けて被せてその端子台に外嵌するようにしたものが知られている。
【0003】
このような防水カバーの取り付け構造においては、その取付け後に防水カバーが外れるのを防止する必要があることから、通常、何らかの抜け止め(離脱防止)構造(以下、ロック又はロック構造ともいう)を備えているのが普通である。そして、そのロック構造としては、突出する端子台の外周面に、1又は複数の島状凸部(係合突起)を設けておく一方、カバーの前側の開口(開放)側の周縁部には、カバーを端子台に被せたときに、前記島状凸部が係合するように配置、形成された係合窓(係合孔)を備えた1又は複数の弾性変形可能の突出部(弾性係合部)が設けられたものが、例えば防水コネクタにおいて提案されている(特許文献1)。このものでは、防水カバーを取付ける際に、その突出部を自身の弾性によって変形させ、かつ元の形状に復帰させてことで、係合窓に島状凸部を嵌りこませることで、カバーが外れるのを防止するようにしたものである。
【特許文献1】特開2001−93611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなカバーの取付け構造においては、そのロックがいわばワンタッチでできるために取り付け自体が簡易であるというメリットがある反面、その簡易さ故に、比較的小さな外力によってもカバーが外れてしまうことがある。別の言い方をすると、従来のその取付け構造におけるロック構造は、その取付け後において、修理等の必要に応じてそのロックを解除することを想定している場合が多く、したがって、比較的容易に分離ないし取り外しができるように構成されていた。すなわち、従来のロック構造では、事後的なロックの解除を予定していない場合や、解除されることを確実に防止したい要請があるような部位への使用は不向きであるといえる。このように、従来のロック構造では、確実な防水を永続的に維持したいような部位には、信頼性が低いことから使用できないといった問題があった。
【0005】
本発明はこうした問題点に鑑みてなされたもので、上記したような端子接続部のように、防水カバーの事後的な分離を予定していないか、或いは、事後的な分離を確実に防止したい部位への使用に好適な防水カバーの取り付け構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、前側に開口を備えた筒状の防水カバーが、防水材を介し、電線の端部と接続される1つ以上の電極端子を有する端子台の先端から根元に向けて外嵌されてなる防水カバーの取付け構造であって、
前記端子台の外周面には1又はその周方向に沿って複数の島状凸部が形成され、しかも、該外周面のうち、この島状凸部よりも先端寄り部位又は根元寄り部位には1又は複数の凹部が形成されている一方、
前記防水カバーにはその前側の開口の周囲に、前方に突出して該防水カバー自身の内側及び外側に弾性変形可能に形成された1又は複数の突出部を備えていると共に、その突出部には、該防水カバーが前記端子台に外嵌される際に、その端子台の外周面に乗り上げて外側に弾性変形した後で、前記凹部に係合する係合フック及び前記島状凸部に係合する係合窓を備えており、
前記突出部における前記係合フックが前記凹部に係合されてなると共に該突出部における前記係合窓に前記島状凸部が係合されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の先端寄り部位に形成されている一方、前記突出部の係合フックが、該防水カバーが前記端子台に外嵌される過程において前記島状凸部に乗り上げない配置で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水カバーの取付け構造である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の先端寄り部位に形成されている一方、前記突出部の係合フックが、該防水カバーが前記端子台に外嵌される過程において該島状凸部を跨ぐことになる配置で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水カバーの取付け構造である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記突出部は、その前端側から後方に向けて所定幅で切り込まれたスリットを介して複数に分割して設けられている一方、この防水カバーが外嵌される前記端子台の外周面には、前記スリットに緊密に嵌入するように形成された嵌入用凸部が設けられており、その各スリットに各嵌入用凸部が嵌入してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水カバーの取付け構造である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明においては、従来のように、防水カバーを被せる相手側の端子台の外周面に設けた島状凸部に、防水カバーの突出部に設けた係合窓が係合するだけではない。すなわち、そのような係合に加えて、突出部に設けた係合フックが、端子台の外周面に設けた凹部にも係合するようになっている。このように本発明では、いわば二重ロック構造を有しているため、防水カバーを一旦取付けた後は、それが容易に外れるといったことを一層有効に防止することができることから、防水性の信頼性を高めることができる。なお、本発明では、係合する箇所が多数あるほど、その分離防止効果が高いといえるが、その場合には、突出する端子台の外周面を包囲するように突出部を配置しておくと共に、それに係合フック及び係合窓を形成しておく一方、端子台の外周面に対してはこれらに対応するように、凹部及び島状凸部を形成しておけばよい。
【0011】
そして、請求項2に記載の本発明においては、前記した効果に加えて、次のような特有の効果がある。すなわち、前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の外周面において先端寄り部位に形成されており、前記突出部の係合フックが前記島状凸部に乗り上げる配置で形成されている場合には、その突出部は端子台の外周面に乗り上げることによる外側への変形に加えて、係合フックが島状凸部に乗り上げることから、さらに大きな変形を強いられる。したがって、その場合には、突出部に大きな弾性変形を許容するようにしておく必要がある。しかし、このように突出部に大きな弾性変形を許容するためには、突出部を長くするか、その素材を弾性変形しやすいもので形成しておく必要があり、それではカバーが容易に外れることになる。すなわち、ロックが解除されにくくするためには、突出部が弾性変形し難いものとするのが好ましく、したがって、これを弾性変形しにくい素材(材質)とし、かつ、突出部の突出量を小さく設定するのが好ましい。そこで、前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の先端寄り部位に形成されている場合においては、請求項2に記載の構造を採用することで、係合フックは端子台の外周面の凹部に係合する過程において、島状凸部を乗り越えないですむため、突出部が弾性変形しにくい設定とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明においても、前記突出部の係合フックは、前記島状凸部に乗り上げないため、前記した各効果が得られる。しかも、本発明では、島状凸部をその左右両側に挟むような配置で係合フックが存在することになるため、係合における左右のバランスが保持される。したがって、防水カバーに後方へ引っ張り力がかかるようなときでも、係合の脱離に対する安定した耐力が発揮される。
【0013】
請求項4に記載の発明においては、各突出部相互間におけるスリットに、端子台の外周面に設けられている嵌入用凸部が緊密に嵌入してなることから、突出部はスリット側への変形又は移動が規制されるため、その分、防水カバーの取付けが安定する。すなわち、防水カバーには、その後方への真っ直ぐな引っ張り力以外に、左右等へのコジリを含む外力がかかることがあるが、そのような場合でも、本発明では、防水カバーが端子台から離脱ないし分離する危険性を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図12に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態を説明するための分解斜視図であり、同図中の1は端子台であり、41は、リング状ゴムパッキンからなる防水部材31を介して端子台1に外嵌される防水カバー(ハウジング)である。本例では、端子台1は、図1〜図3及び図9,10に示したように、特定の回路基板(図示せず)が搭載されている合成樹脂製のケース2の側壁(側面)3から一体で、先端面側から見て長円状をなす形で、突出状に形成されている。ただし、突出側先端10寄り部位における横断面が、その根元(側壁3)寄り部位の横断面における長円よりも一回り小さく形成されており、その一回り小さく形成された小径部位11の先端である突出側先端10に電極端子(端子金具)21が複数(本例では6)横に等間隔で並んで設けられており、各電極端子21は、ケース2内に延びて、その内部において回路基板の各端子と接続されている。本形態では、電極端子21は金属板から形成され、その先端部位がU字形に曲げられて突出状に設けられている。
【0015】
この各電極端子21における先端部位(U字部)には、電線23の芯線先端が入れられてカシメによってその接続が行われており、その接続部位が端子接続部をなしている(図10参照)。因みに、本形態においては、この電線23の図示しない先端側(図1の左端側)は、自動車のエンジンの排気系に取り付けられる酸素センサやNOxセンサに接続されており、回路基板には、その検出素子から得られるガス濃度情報に基づいて特定ガス成分の濃度を検出し、その検出結果を、空燃比の制御をさせる図示しない外部回路(例えば、ECU)に出力するための回路が形成されている。すなわち、本形態では、センサからの出力取り出し用等の配線(電線23)と、回路基板側の電極端子21との接続端子部を防水の対象としており、その接続がカシメによっており、事後的な分離を予定していない。
【0016】
そして、本形態において端子台1は、小径部位11に対して1回り太い根元寄り部位(以下、大径部位ともいう)12における外周面12aのうち、ケース2の壁面3との境界をなす部位に、その外周面12aに沿って、断面V形で溝状をなす凹部(以下、溝状凹部ともいう)13が形成されている(図1〜図3、図9、図10参照)。そして、その外周面12aのうち、溝状凹部13よりも端子台1の突出側先端10寄り部位であって、長円の長径方向に沿う平坦な外周面12aの図示上下両側には、平面視、矩形をなす島状凸部15が、その上下各側の平坦な外周面12a上において、周方向に沿って等間隔で複数(本例では各側の面に5個)隆起状に形成されている(図1〜図3、図9、図10参照)。なお、各島状凸部15は、いずれも所定幅W1で所定高さに、同様に形成されており、端子台1の突出側先端10(以下、単に先端10とも言う)に向けて下傾する傾斜面15aと平坦な頂面15bとを有している。また、本形態では、島状凸部15相互の間には、その島状凸部15より後方(ケース2の壁面3側)に所定幅W2で延びるように隆起する平面視矩形の嵌入用凸部18が設けられており、その頂面18bは平坦に形成されている。
【0017】
一方、防水カバー41は、本形態ではガラス繊維を混入してなる合成樹脂(例えば、PBTや6−6ナイロン)で成形されており、前側(図1右側)に端子台1の突出側先端10寄り部位の小径部位11にリング状の防水材(ゴムパッキン)31を介して外嵌されるように、長円状の開口42を備えている(図5、図6参照)。そして、この防水カバー41の前側には、その開口42を前方として、端子台1の小径部位11を内部に呑み込み可能な深さ(奥行き)を有する端子台呑み込み筒部44を有している。この端子台呑み込み筒部44の後側には、端子台1の先端から突出する電極端子21に対して、カシメによって接続された各電線23の端部を含む各端子接続部を内側に、周囲に空隙を保持して収容するように形成された複数の端子接続部収容用円形孔46を備えた端子接続部収容部47が一体的に後方に突出するように形成されている(図4〜図6、図10参照)。なお、防水材31は、端子台1の小径部位11における先後の全体にわたる長さを有しているとともに、その内周面側と外周面側には、周方向に沿って延びるそれぞれ3つの環状ひだ32,33を有しており、内周面側のひだ32を端子台1の小径部位11の外周面11aに押付けるようにしてその小径部位11に外嵌されている。そして、外周面側のひだ33を端子台呑み込み筒部44の内周面に押付けて、水密が保持されるように構成されている。ただし、本形態では、防水材31のうち、端子台1の小径部位11と大径部位12の境界壁面14側に位置する端部には外方に突出するフランジ部35が形成されており、このフランジ部35がその境界壁面14と、端子台呑み込み筒部44の前端とで、挟み付けられるように設定されている(図9、図10参照)。
【0018】
この端子台呑み込み筒部44の前側には、その開口42の周囲に沿って、それぞれ矩形板形状をなして前方に突出して、防水カバー41の内側及び外側に弾性変形可能に形成された、幅の広い突出部51と幅の狭い突出部52が複数、それぞれが一体に形成されている(図4、図5参照)。そして、その各突出部51、52の内側先端には、それぞれ内向きに突出する係合フック53、54を先端(周方向)に沿って備えている。ただし、この係合フック53、54は、溝状凹部13に緊密に係合する断面形状とされている。また、幅の広い突出部51は、開口42の長径方向に沿って設けられており、狭い突出部52は、短径方向に沿って設けられている。この係合フック53、54は、防水カバー41が端子台1に外嵌される際に、その大径部位12の外周面12aに乗り上げて外側に弾性変形した後、外嵌し終えたときに溝状凹部13に係合するように形成されている(図11参照)。なお、係合フック53、54は、防水カバー41が端子台1に外嵌される際、フック53、54の前端側が、小径部位11と大径部位12との境界壁面14と、大径部位12の外周面12aとのなす角に衝突してからその外周面12aに乗り上げるため、その乗り上げを容易とするためのガイドをなすように、前端側に向けて突出量が小さくなるように傾斜状に形成されている(図11参照)。また、この突出部51、52は、図4に示すように、開口42の前端側から後方に向けて所定幅W5で切り込まれたスリット55を介して複数に分割して設けられている。ただし、このスリット55のうち、開口の長径方向に沿って設けらた突出部51相互間に設けられたものは、防水カバー41が端子台1に外嵌された際に、上記した嵌入用凸部18が緊密に嵌り込むように設定されている。
【0019】
また、多数の突出部51、52は、端子台1の大径部位12の外周面12aに外嵌されるように形成されているが、本形態ではこれらのうち、幅の広い突出部51に設けられた係合フック53は、幅方向の中間部位が切り欠かれて所定幅W6の切り欠き部57を有している(図5、図6参照)。すなわち、係合フック53は、防水カバー41が端子台1の大径部位12の外周面12aに外嵌される過程において、図12に示したように、その外周面に形成された島状凸部15を跨ぐことになるように、突出部51をその前方から見たとき、図5、図6に示したように、その幅方向の中間部位が切り欠かれて所定幅W6を有する切り欠き部57を備えている。この切り欠き部57は、島状凸部15に対応して配置されており、その幅W6は、島状凸部15の幅W1より大きく設定されている。つまり、本形態では、防水カバー41をその端子台1の突出側先端10から根元に向けて被せてその端子台1に外嵌する過程において、係合フック53が島状凸部15に乗り上げないように設定されている。
【0020】
なお本形態では防水カバー41が端子台1に外嵌された際において、突出部51の内側面が端子台1の大径部位12の外周面12aに密着するように設定されている。また、係合フック53の内向き突出量は島状凸部15の隆起高さと略同じに設定されている。したがって、防水カバー41が端子台1に外嵌される際において、係合フック53がその大径部位12の外周面12aに乗り上げて外側に弾性変形するときは、係合フック53は島状凸部15に乗り上げないとしても、突出部51はその根元側の変形量が小さい片持ち梁状態で撓み変形するため、突出部51の内側面のうち、切り欠き部57の溝底は島状凸部15に若干乗り上げる。ただし、本形態では、前記したように、各島状凸部15は、端子台1の突出側先端10に向けて下傾する傾斜面15aを有しているため、これがその乗り上げにおけるガイドをなすように設定されており、外嵌の円滑化が図られている。
【0021】
また、係合フック53に切り欠き部57が設けられている各突出部51は、図4,5に示すように、その切り欠き部57の後方に平面視、矩形で内外に貫通する開口からなる係合窓58が形成されている。この係合窓58は、防水カバー41をその端子台1に外嵌した際において、そこに島状凸部15が係合するように所定幅W7で所定長さに形成されている。すなわち、防水カバー41を端子台1に、その突出側先端10から根元に向けて被せる過程において、各突出部51における係合フック53が外周面12aに乗り上げ、その中間の切り欠き部57において島状凸部15を跨いで前方に移動した後、すなわち、係合フック53が大径部位12の外周面12aに乗り上げて外側に弾性変形した後で、溝状凹部13に係合すると同時に、その係合窓58に島状凸部15が係合するように設定されている。なお、この係合においては、島状凸部15における後端壁15cに係合窓58の前端壁58cが係合して、防水カバー41が後方に引っ張れられても抜けないようにように設定されている(図8参照)。
【0022】
また、図4,5に示すように、端子台呑み込み筒部44の後側に突出するように形成された端子接続部収容部47は、その外周面47aが端子台呑み込み筒部44の外周面44aよりも1回り小さい長円状に形成されている。そして、端子接続部を包囲する各端子接続部収容用円形孔46より後方には、それぞれ、電線23の被覆樹脂部位を所定範囲(長さ範囲)包囲するとともにカバー41の後方から引出される電線23周囲の防水を保持するための防水用円形孔49が形成されている。ただし、防水用円形孔49は、端子接続部収容用円形孔46より若干大径とされ、その内部を通される電線23の被覆樹脂の外周面との間に、外周面にヒダのある電線シール用の筒状防水材(ゴムパッキン)38がそれぞれ圧入されて、その間の防水が保持されるように形成されている(図1、10参照)。
【0023】
また、端子接続部収容部47の外周面47aにおける端子台呑み込み筒部44との境界壁近傍には周方向に沿って、上記した端子台1の根元寄りの外周面12aに形成したのと同様に、溝状凹部59が形成されている。そして、端子接続部収容部47の外周面47aには、その後方から樹脂製のキャップ71が外嵌されて、防水材38の分離防止が図られている。なお、このキャップ71は、後端面72に電線23の挿通孔73を備えている一方、開口された前方には、上記した防水カバー41における突出部51、52と同様の突出部75,76が設けられており、その内側先端には内向きに突出する係合フック77を備えている。しかして、このキャップ71を端子接続部収容部47にその後方から外嵌することで、図10に示されるように、係合フック77を溝状凹部59に係合して取り付けられている。なお、端子接続部収容部47の外周面47aにも、上記した嵌入用凸部18と同様の嵌入用凸部60が設けられていると共に、キャップ71における突出部75相互間にはこの嵌入用凸部60が嵌り込むスリット78が形成されており、キャップ71を取付けたとき、この嵌入用凸部60がスリット78に緊密に嵌入している。
【0024】
さて、このような本形態においては、端子台1の各電極端子21に各電線23を接続し、防水材31を端子台1の小径部位11の外周面12aに外嵌状に装填し、防水カバー41を、端子台1の突出側先端10から根元に向けて被せてその端子台1に外嵌する。こうして、防水カバー41が、端子台1に外嵌されてなる状態においては、図8〜10に示すように、突出部51、52における係合フック53、54が溝状凹部13に係合されている。加えて、突出部51における係合窓58には島状凸部15が係合されている。そして、防水カバー41が取り付けられる。そして、電線23が中を通るようにした防水材38を後方から防水用円形孔49に押込み、その後、キャップ71を端子接続部収容部47に外嵌めすることで、その取付けが完了するのであるが、このような本形態の防水カバー41の取付け構造においては、端子接続部が単に防水されるというだけでなく、その防水においては、次のような特有の効果が得られる。
【0025】
すなわち、本形態の防水カバーの取付け構造においては、端子台1の外周面12aに設けられた島状凸部15と、防水カバー41の突出部51に設けられた係合窓58とが係合していることに加えて、突出部51に設けられた係合フック53が、端子台1の外周面12aに設けられた溝状凹部13にも係合している。すなわち、従来の一重のロック構造に比べて、二重のロック構造となっている。このため、防水カバー41を一旦取付けた後は、それが容易に外れることが防止される。したがって、端子接続部の防水の信頼性を高めることができる。しかも、本形態では、係合する箇所を端子台1の外周面12aの周方向に沿って多数設けたため、防水カバー41が外れる危険性を極めて小さくすることができる。また、本形態では、各突出部51における係合フック53が、その幅方向の中間に切り欠き部57を備えているため、端子台1の外周面12aの溝状凹部13に係合する過程において、係合フック53は島状凸部15を乗り越えないですむ。したがって、突出部51が弾性変形し難い設定で具体化できるため、突出部の長寸化を招くこともなく、外れ難い取付け構造を得ることができる。
【0026】
加えて、本形態では、各突出部51相互間におけるスリット55に、端子台1の外周面12aに設けられている嵌入用凸部18が緊密に嵌入してなることから、防水カバー41にひねり力や、ひねり力とともに後方に引っ張り力が作用したとしても、防水カバー41が端子台1から外れる危険性を低減できる。すなわち、各突出部51相互間のスリット55には、嵌入用凸部18が緊密に嵌入してなることから、防水カバー41にひねり力が付与されたとしても、各突出部51はその幅方向へ変形したり移動したりすることが防止されているため、その分、外れ難い取付け構造となすことができる。また、本形態では、介在させた防水材31が、そのフランジ部35を介して、端子台1の小径部位11と大径部位12の境界壁面14と、端子台呑み込み筒部44の前端とで、挟み付けられているため、高いシール性が得られる。
【0027】
本発明の防水カバー41の取付け構造は、上記した実施の形態のものに限定されるものではなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、上記形態では、端子台1の外周面12aに設けた島状凸部15を凹部13より突出側先端10寄り部位に設けた場合で説明したが、請求項1の本発明では、島状凸部15を凹部13より根元寄り部位に設けることもできる。そして、その場合には、突出部51に設ける係合フック53及び係合窓58は、防水カバー41が端子台1に外嵌された際に、それぞれが凹部13及び島状凸部15に係合するように形成しておけばよい。
【0028】
また、上記形態では、係合窓及び係合フックを有する突出部をスリットを介して多数(全体で10箇所)開口の周囲に沿って設けた場合を説明したが、本発明では、防水カバーの形状、大きさ、さらに用途に応じて、その数、配置を適宜に変更して設定すればよい。そして、突出部に設けた係合窓は上記形態では内外に貫通する開口として設けたものを例示したが、突出部の厚み次第ではその内側面において凹となしておればよいことは明らかである。また、上記形態では、1つの突出部において、1つの切り欠き部を挟んで両側に分離された2つの係合フックを有すると共に、1つの係合窓を設けた場合で説明したが、それらの数は、端子台における島状凸部の配置及び突出部自体の大きさに応じて適宜に設定すればよい。
【0029】
さらに、上記形態のように、特定の突出部にのみ、係合フックと係合窓を設けるようにしてもよいし、全ての突出部に係合フックと係合窓を設けるようにしてもよく、その場合には、端子台の外周面に形成する島状凸部及び凹部は、それらに対応するように設ければよい。なお、上記形態では、凹部を端子台の外周面に、その周方向に沿って環状に連続する1つの溝状のもの(溝状凹部)として設けた場合で説明したが、この凹部は、溝状、又は非溝状にかかわらず、各係合フック又は複数の係合フックに対応して、複数のものとして分離して設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の防水カバーの取付け構造を説明する分解斜視図。
【図2】図1の端子台の拡大図及びその要部拡大図。
【図3】図1の端子台を突出側先端から見た図。
【図4】図1の防水カバーの拡大図。
【図5】防水カバーをその斜め前側から見た図及びその要部拡大図。
【図6】防水カバーを前側から見た図及びその要部拡大図。
【図7】防水カバーを後方から見た図。
【図8】端子台に防水カバーを外嵌して取付けた状態の平面図及びその要部拡大図。
【図9】図8のA−A線断面図及びその要部拡大図。
【図10】図8のB−B線断面図及びその要部拡大図。
【図11】防水カバーを端子台に外嵌する過程を説明する図。
【図12】防水カバーを端子台に外嵌する過程を説明する図。
【符号の説明】
【0031】
1 端子台
10 突出側先端
11a,12a 端子台の外周面
13 凹部
15 島状凸部
18 嵌入用凸部
21 電極端子
23 電線
31 防水材
41 防水カバー
42 防水カバーの前側の開口
51 突出部
53 係合フック
58 係合窓
55 突出部のスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に開口を備えた筒状の防水カバーが、防水材を介し、電線の端部と接続される1つ以上の電極端子を有する端子台の先端から根元に向けて外嵌されてなる防水カバーの取付け構造であって、
前記端子台の外周面には1又はその周方向に沿って複数の島状凸部が形成され、しかも、該外周面のうち、この島状凸部よりも先端寄り部位又は根元寄り部位には1又は複数の凹部が形成されている一方、
前記防水カバーにはその前側の開口の周囲に、前方に突出して該防水カバー自身の内側及び外側に弾性変形可能に形成された1又は複数の突出部を備えていると共に、その突出部には、該防水カバーが前記端子台に外嵌される際に、その端子台の外周面に乗り上げて外側に弾性変形した後で、前記凹部に係合する係合フック及び前記島状凸部に係合する係合窓を備えており、
前記突出部における前記係合フックが前記凹部に係合されてなると共に該突出部における前記係合窓に前記島状凸部が係合されてなることを特徴とする防水カバーの取付け構造。
【請求項2】
前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の先端寄り部位に形成されている一方、前記突出部の係合フックが、該防水カバーが前記端子台に外嵌される過程において前記島状凸部に乗り上げない配置で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水カバーの取付け構造。
【請求項3】
前記島状凸部が前記凹部よりも前記端子台の先端寄り部位に形成されている一方、前記突出部の係合フックが、該防水カバーが前記端子台に外嵌される過程において該島状凸部を跨ぐことになる配置で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の防水カバーの取付け構造。
【請求項4】
前記突出部は、その前端側から後方に向けて所定幅で切り込まれたスリットを介して複数に分割して設けられている一方、この防水カバーが外嵌される前記端子台の外周面には、前記スリットに緊密に嵌入するように形成された嵌入用凸部が設けられており、その各スリットに各嵌入用凸部が嵌入してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水カバーの取付け構造。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−280697(P2007−280697A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103663(P2006−103663)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】