説明

防水グロメット及び車両用リアワイパ装置

【課題】ピボット軸挿通孔からドア内のロック装置への細い針金等の開錠用部材の侵入及びその開錠操作をより困難とし、高い盗難防止構造とする防水グロメットを提供する。
【解決手段】防水グロメット20は、ピボット軸挿通孔8aの周縁部及びピボット軸12に密着してシールするゴム製のグロメット本体部21と、該本体部21にインサート成形により固定され該本体部21を介してピボット軸挿通孔8aの周縁部を内外で挟持させて装着させるカラー部材22及びナット24(ワッシャ23)を有している。カラー部材22は、防水グロメット20の装着時に締め付け操作されるナット24がバックドア2の内部側に設定されており、更にピボット軸挿通孔8aからバックドア2の外側に位置する外側鍔状部21b内に該挿通孔8aよりも大径の侵入防止部としての円板部22bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水グロメット及び車両用リアワイパ装置に係り、特に、車両後部の開閉ドア(バックドア)に設けられたピボット軸挿通孔からのロック装置の開錠を防止する構造を備えた、そのピボット軸挿通孔に装着される防水グロメット及びその防水グロメットを備える車両用リアワイパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バン又はワゴンタイプ等の車両では、リアウインドウを有するバックドアが開閉する構造となっており、このバックドアには、リアウインドウを介した車両後方の視界を確保するためにそのウインドウに付着した雨水等を払拭するためのリアワイパ装置が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
リアワイパ装置は、リアワイパを往復回動させて払拭させることから、バックドア内の車幅方向中央部にワイパモータが配置され、リアウインドウ若しくはリアウインドウ周縁のボデーに開口形成したピボット軸挿通孔よりピボット軸を突出させ、その先端部にリアワイパを取り付けている。尚、ピボット軸とピボット軸挿通孔との間から雨水等がドア内に侵入するのを防止するために、一般に、ピボット軸とピボット軸挿通孔の周縁部との間にゴム製の防水グロメットが装着されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、前記バックドアには、使用者以外の者が開閉できないように、通常、ロック装置も内装されている。このロック装置も、リアワイパ装置と同様に、バックドアの車幅方向中央部の開閉側縁部(ヒンジ側とは反対側の縁部)に配置されているのが一般的である。
【0005】
ところで、特許文献2にて示されるリアワイパ装置の防水構造では、車外からリアワイパや防水グロメットを取り外すと、ピボット軸挿通孔が露出する。特に、この特許文献2では、単に防水グロメットをピボット軸挿通孔の周縁部に装着した構造であるため、変形の容易なゴム製よりなる防水グロメットの取り外しは容易で、ピボット軸挿通孔が容易に露出可能である。そのため、露出されたピボット軸挿通孔から例えば細い針金等の開錠用部材をドア内のロック装置に向けて故意に侵入させ、該装置のロック機構部分を操作することでバックドアが開錠できてしまい、車両の盗難防止効果が低かった。
【0006】
そこで、図4にて示されるリアワイパ装置の防水構造では、車両の盗難防止効果が高められた一例である。詳述すると、バックドアのリアウインドウ50には、ワイパモータ51の出力軸であるピボット軸52の突出のためのピボット軸挿通孔50aが開口形成されており、該挿通孔50aの周縁部には内部への浸水を防止するためのゴム製のパッキン53,54が装着される。一方のパッキン53はカラー部材55にてピボット軸挿通孔50aの周縁部内側面に当接され、他方のパッキン54はワッシャ56にて該挿通孔50aの周縁部外側面に当接される。
【0007】
カラー部材55(金属製)は、ピボット軸52が内側を挿通されるとともに、自身がピボット軸挿通孔50aに挿通される円筒部55aと、該円筒部55a基端に径方向外側に延出される円板部55bとを有してなる。この円板部55bはドア内に配置されるとともに、該円板部55bのウインドウ50との対向面にパッキン53が配置される。これに対し、円筒部55a先端に挿通されるワッシャ56(金属製)のウインドウ50との対向面にパッキン54が配置される。
【0008】
そして、その円筒部55aの先端外周面に刻設されたネジ部55cにナット57を締め付けることで、ワッシャ56とカラー部材55の円板部55bとの間隔が狭まり、各パッキン53,54がピボット軸挿通孔50aの周縁部の内外面にそれぞれ密着してシールする。尚、ピボット軸52の外周面には、カラー部材55の円筒部55aの内周面に密着してシールするためのOリング58が装着される。そして、ナット57による締め付け後は、該ナット57及びワッシャ56等のウインドウ50から突出する部分全体を覆うようにカバー部材59が装着され、その後、ピボット軸52の先端部にリアワイパ60が固定される。
【0009】
このような構造とすることで、車外からリアワイパ60、カバー部材59を取り外し、次いでナット57を取り外すと、ワッシャ56及びパッキン54が取り外し可能となりピボット軸挿通孔50aが露出するが、カラー部材55は外側から取り外し不能なため、該カラー部材55の円筒部55aが細い針金等の開錠用部材(図示略)の侵入の邪魔となる。
【特許文献1】特開2003−267054号公報
【特許文献2】特開平8−40214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、車外からナット57の取り外しができると、ピボット軸挿通孔50aを略覆っていた剛体であるワッシャ56を取り外すことができてしまい、カラー部材55の円筒部55aとピボット軸挿通孔50aの内周面との間の隙間が確認できるほどに露出してしまう。
【0011】
そのため、カラー部材55の円筒部55aにてピボット軸挿通孔50aからドア内に細い針金等の開錠用部材の侵入がし難くなったとはいえ、依然としてこのような開錠用部材の侵入及び開錠操作を行う余地が残っており、より高い盗難防止構造とすることが望まれていた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両後部の開閉ドアに設けたピボット軸挿通孔の周縁部に装着されて防水構造を得る防水グロメットであって、そのピボット軸挿通孔からドア内のロック装置への細い針金等の開錠用部材の侵入及びその開錠操作をより困難とし、高い盗難防止構造とする防水グロメット及びその防水グロメットを備える車両用リアワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワイパ駆動のためのピボット軸を挿通させるべく車両後部の開閉ドアに設けたピボット軸挿通孔の周縁部に装着され、該挿通孔から前記開閉ドアの内部への浸水を防止する防水グロメットであって、前記ピボット軸挿通孔の周縁部及び前記ピボット軸に密着してシールする弾性材料よりなるグロメット本体部に対して固定され、該グロメット本体部を介して前記ピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持させて装着させるとともにその装着時に操作される被操作部材が前記開閉ドアの内部側に設定され、更に前記ピボット軸挿通孔から前記開閉ドアの外側に位置する部分に該挿通孔よりも大径の侵入防止部を有する硬質材料よりなる装着部材を備えてなることをその要旨とする。
【0014】
この発明では、防水グロメットは、ピボット軸挿通孔の周縁部及びピボット軸に密着してシールする弾性材料よりなるグロメット本体部と、該本体部に固定され該本体部を介してピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持させて装着させる装着部材を有している。装着部材は、防水グロメットの装着時に操作される被操作部材が開閉ドアの内部側に設定され、更にピボット軸挿通孔から開閉ドアの外側に位置する部分に該挿通孔よりも大径の侵入防止部が設けられる。つまり、このような防水グロメットがピボット軸挿通孔の周縁部に装着された車両の開閉ドアでは、使用者以外の者が開閉ドア内のロック装置の開錠操作を試みようとピボット軸挿通孔を車外に露出させるべく防水グロメットを取り外そうとしても、装着時に操作する被操作部材が開閉ドアの内部側に設定されているため、車外からのこの防水グロメットの取り外しは不能である。また、防水グロメットを取り外さないでピボット軸挿通孔から例えば細い針金等の開錠用部材を開閉ドア内のロック装置に向けて故意に侵入させようと試みても、防水グロメットの装着部材においてピボット軸挿通孔よりも大径の侵入防止部がピボット軸挿通孔の外側に位置、即ち該挿通孔を閉塞するように配置されることから、このような開錠用部材の該挿通孔内への侵入は大変困難である。万一、ピボット軸挿通孔内に開錠用部材の侵入が成功したとしても、ピボット軸挿通孔を閉塞するように配置される侵入防止部にてその開錠用部材の侵入経路は幅狭の迷路状となることから、ロック装置を開錠操作するには到底至らない。こうして高い盗難防止構造が得られる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水グロメットにおいて、前記グロメット本体部は、前記ピボット軸挿通孔の周縁部外側面に当接するための第1鍔状部と、前記ピボット軸挿通孔の周縁部内側面に当接し前記第1鍔状部とともに前記ピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持するための第2鍔状部とを有するものであり、前記装着部材の侵入防止部は、前記第1鍔状部内に配置されていることをその要旨とする。
【0016】
この発明では、グロメット本体部には、ピボット軸挿通孔の周縁部外側面に当接するための第1鍔状部と、該挿通孔の周縁部内側面に当接し第1鍔状部とともにピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持するための第2鍔状部とが設けられ、その第1鍔状部内には装着部材の侵入防止部が配置される。これにより、侵入防止部が第1鍔状部にて被覆されるため、外部からの見栄えを向上できる。また、ともに弾性材料よりなる第1及び第2鍔状部がピボット軸挿通孔の周縁部に当接することから、車両走行中の振動等による硬質部材同士の接触による異音発生が防止される。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の防水グロメットにおいて、前記第1鍔状部には、前記ピボット軸挿通孔を囲繞するように該挿通孔の周縁部外側面に密着するための環状突起部が設けられていることをその要旨とする。
【0018】
この発明では、第1鍔状部にピボット軸挿通孔を囲繞するように設けた環状突起部が該挿通孔の周縁部外側面に密着するため、第1鍔状部とピボット軸挿通孔の周縁部外側面との間でより確実な防水効果が得られ、ピボット軸挿通孔内への浸水をより確実に防止できる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の防水グロメットにおいて、前記第1及び第2鍔状部が互いに分割構成されていることをその要旨とする。
この発明では、ピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持する第1及び第2鍔状部が互いに分割構成されるため、装着時に一方の鍔状部を無しとした状態で防水グロメットをピボット軸挿通孔内に挿入すれば、挿入時の鍔状部の引っ掛かりを防止でき、その挿入をスムーズに行うことが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水グロメットにおいて、前記装着部材は、前記ピボット軸が内側を挿通されるとともに自身が前記ピボット軸挿通孔から前記開閉ドアの内側まで挿入される円筒部が前記侵入防止部から延設されてなるカラー部材を有し、前記カラー部材の円筒部には、前記被操作部材としてのナットが螺着されるネジ部が設けられていることをその要旨とする。
【0021】
この発明では、カラー部材の円筒部のネジ部にナットを締め付けることで、ピボット軸挿通孔の周縁部外側面側に位置するカラー部材の侵入防止部と、該挿通孔の周縁部内側面側に位置するナットとの間隔が狭まり、防水グロメットのグロメット本体部によるピボット軸挿通孔の周縁部の内外での挟持(装着)がより確実となる。尚、このナットは開閉ドアの内部側から締め付け操作がなされるため、車外からナットの取り外し、即ち防水グロメットの取り外しは不能である。更に、弾性材料よりなるグロメット本体部を介してのナットの締め付けであるため、該本体部からの反力にてナットの弛み止め効果も得られる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、車両後部の開閉ドアの内部に取り付けられ、ピボット軸を有するとともに該ピボット軸に固定されるリアワイパを往復回動させるワイパモータを備え、前記ピボット軸を挿通させるべく前記開閉ドアに設けたピボット軸挿通孔の周縁部に装着する請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水グロメットを備えてなる車両用リアワイパ装置である。
【0023】
この発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水グロメットが備えられる車両用リアワイパ装置においては、請求項1と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
従って、上記記載の発明によれば、ピボット軸挿通孔からドア内のロック装置への細い針金等の開錠用部材の侵入及びその開錠操作をより困難とすることができ、高い盗難防止構造を得ることができる防水グロメット及びその防水グロメットを備える車両用リアワイパ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施の形態における車両1の後部を示す。車両1の後部には、上側縁部がヒンジにて支持されるバックドア2が設けられており、該バックドア2におけるヒンジと反対側の下側縁部の車幅方向中央部にはロック装置3が設けられている。ロック装置3は、バックドア2に設けられたキーシリンダ4にキーを差し込んで所定方向に回すと、キーシリンダロッド5が上昇又は下降してラッチ部材6が回動し、該ラッチ部材6が車体側のストライカ部材7と係止状態(ロック)又は非係止状態(アンロック)に切り替わる構成となっている。
【0026】
また、このバックドア2の車幅方向中央部にはリアワイパ装置10が設けられている。リアワイパ装置10の駆動源であるワイパモータ11はバックドア2の内部に不図示のブラケット等を介して取り付けられており、図2及び図3に示すように、出力軸であるピボット軸12がバックドア2のリアウインドウ8に開口形成された円形状のピボット軸挿通孔8aから外側に突出されている。外側に突出したピボット軸12の先端部にはリアワイパ13(ワイパアーム)が固定される。そして、リアワイパ装置10は、ワイパモータ11にてピボット軸12を所定角度で回動させることでリアワイパ13を往復回動させ、リアウインドウ8に付着した雨水等をリアワイパ13にて払拭する構成となっている。
【0027】
前記ピボット軸挿通孔8aの周縁部には、該挿通孔8aから内部への浸水を防止する防水グロメット20が装着されている。本実施の形態の防水グロメット20は、図3に示すように、ゴム製よりなるグロメット本体部21と、インサート成形によりグロメット本体部21内に埋設される金属製のカラー部材22とから構成されている。
【0028】
防水グロメット20において、グロメット本体部21は、ピボット軸12が内側を挿通されるとともに、自身がピボット軸挿通孔8aに挿通される略円筒形状の筒状部21aと、該筒状部21aの軸方向中央部において径方向外側に延出される外側鍔状部21bと、該鍔状部21bから基端側にリアウインドウ8の厚み程度に軸方向に離間して配置され径方向外側に延出される内側鍔状部21cとを有している。因みに、本実施の形態では、内側鍔状部21cが図3にて破線Xで示す位置から別部材とされている。これら両鍔状部21b,21c間の筒状部21aの外径は、ピボット軸挿通孔8aの内径と同等に設定されている。つまり、両鍔状部21b,21c間の筒状部21aは、ピボット軸挿通孔8aに嵌合し、該挿通孔8aの内周面と密着するようになっている。
【0029】
また、両鍔状部21b,21cは、ピボット軸挿通孔8aよりも十分大きい外径を有する円板形状をなしており、両鍔状部21b,21cの対向面の外縁部及びその内側にそれぞれ環状突起部21d,21eが形成されている。外側鍔状部21bの各環状突起部21dはピボット軸挿通孔8aの周縁部外側面に対し該挿通孔8aを囲繞するように密着し、内側鍔状部21cの各環状突起部21eはピボット軸挿通孔8aの周縁部内側面に対し該挿通孔8aを囲繞するように密着する。つまり、各鍔状部21b,21cの環状突起部21d,21eがピボット軸挿通孔8aの周縁部各面に密着するとともに、上記した両鍔状部21b,21c間の筒状部21aが該挿通孔8aの内周面に密着することで、防水グロメット20とピボット軸挿通孔8aの周縁部との間がシールされるようになっている。
【0030】
また、筒状部21aの先端内周面には、挿通されるピボット軸12の外周面に全周に亘り密着する内周突起部21fが形成されている。つまり、この内周突起部21fがピボット軸12の外周面に密着することで防水グロメット20とピボット軸12との間がシールされ、上記と合わせてピボット軸挿通孔8aの内周面とピボット軸12との間の隙間が密閉されるようになっている。
【0031】
防水グロメット20に埋設されるカラー部材22は、内側にピボット軸12が挿通される円筒部22aと、該円筒部22aの先端側において径方向外側に延出される円板部22bとを有してなり、該円板部22bがグロメット本体部21の外側鍔状部21b内に埋設されている。この円板部22bは、グロメット本体部21の外側鍔状部21bの外縁部付近まで延出されるものである。つまり、この円板部22bの外径は、ピボット軸挿通孔8aの内径よりも十分大きな寸法に設定されている。
【0032】
また、カラー部材22の円筒部22aは、グロメット本体部21の外側鍔状部21bから筒状部21aの内周面に露出しており、更にグロメット本体部21(筒状部21a)の基端部から突出している。その突出する円筒部22aの外周面には、軸方向端部からネジ部22cが刻設されている。因みに、このような防水グロメット20は、内側鍔状部21cの無い状態でその突出するカラー部材22の円筒部22aからピボット軸挿通孔8a内に車外側から挿入され、筒状部21aの外側鍔状部21bよりも車内側へ突出する部分を該挿通孔8aに嵌合させる。
【0033】
そして、その突出するカラー部材22の円筒部22aに内側鍔状部21cを嵌挿させた後、該鍔状部21cの外縁部近傍まであるワッシャ23が嵌挿され、その後、該円筒部22aのネジ部22cにナット24が締め付けられる。ナット24の締め付けによりワッシャ23とカラー部材22の円板部22bとの間隔が狭まり、両鍔状部21b,21c(環状突起部21d,21e)がピボット軸挿通孔8aの周縁部の内外面にそれぞれ密着して該周縁部を内外から挟持することで、ピボット軸挿通孔8aから内部への浸水を防止する防水グロメット20が該挿通孔8aの周縁部に装着されるようになっている。そして、防水グロメット20の装着後、ピボット軸12の先端部にリアワイパ13が固定される。
【0034】
このような防水グロメット20が装着される本実施の形態のバックドア2では、使用者以外の者がバックドア2の開錠を試みようとリアワイパ13を取り外すと、防水グロメット20が露出する。しかしながら、本実施の形態の防水グロメット20は、図2等に示すように、内部に一体に備えるカラー部材22に対してリアウインドウ8の内側からナット24が締め付けられて装着されることから、車外からのこの防水グロメット20の取り外しは不能となっている。
【0035】
また、防水グロメット20を取り外さないでピボット軸挿通孔8aから例えば細い針金等の開錠用部材(図示略)をドア2内のロック装置3に向けて故意に侵入させようと試みても、防水グロメット20内部のカラー部材22の円板部22bがピボット軸挿通孔8aを閉塞するように配置されることから、このような開錠用部材の該挿通孔8a内への侵入は大変困難となっている。万一、ピボット軸挿通孔8a内に開錠用部材の侵入が成功したとしても、ピボット軸挿通孔8aを閉塞するように配置されるカラー部材22の円板部22bにてその開錠用部材の侵入経路は幅狭の迷路状をなしていることから、ロック装置3を開錠操作するには到底至らない。このように本実施の形態では、防水グロメット20を用いることで、防水性能を確保しつつも高い盗難防止構造となっている。
【0036】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態の防水グロメット20は、ピボット軸挿通孔8aの周縁部及びピボット軸12に密着してシールするゴム製のグロメット本体部21と、該本体部21にインサート成形により固定され該本体部21を介してピボット軸挿通孔8aの周縁部を内外で挟持させて装着させるカラー部材22及びナット24を有している。カラー部材22は、防水グロメット20の装着時に締め付け操作されるナット24がバックドア2の内部側に設定されており、更にピボット軸挿通孔8aからバックドア2の外側に位置する外側鍔状部21b内に該挿通孔8aよりも大径の侵入防止部としての円板部22bが設けられている。つまり、このような防水グロメット20がピボット軸挿通孔8aの周縁部に装着されたバックドア2では、使用者以外の者がバックドア2内のロック装置3の開錠操作を試みようとピボット軸挿通孔8aを車外に露出させるべく防水グロメット20を取り外そうとしても、ナット24がバックドア2の内部側に設定されているため、車外からのこの防水グロメット20の取り外しは不能となっている。また、防水グロメット20を取り外さないでピボット軸挿通孔8aから細い針金等の開錠用部材をバックドア2内のロック装置3に向けて故意に侵入させようと試みても、防水グロメット20内のカラー部材22においてピボット軸挿通孔8aよりも大径の円板部22bがピボット軸挿通孔8aの外側に位置、即ち該挿通孔8aを閉塞するように配置されることから、このような開錠用部材の該挿通孔8a内への侵入は大変困難となっている。万一、ピボット軸挿通孔8a内に開錠用部材の侵入が成功したとしても、ピボット軸挿通孔8aを閉塞するように配置されるカラー部材22の円板部22bにてその開錠用部材の侵入経路は幅狭の迷路状となることから、ロック装置3を開錠操作するには到底至らない。従って、このような構成の防水グロメット20を用いる本実施の形態では、高い盗難防止構造を得ることができる。
【0037】
(2)本実施の形態の防水グロメット20では、グロメット本体部21にピボット軸挿通孔8aの周縁部外側面に当接するための外側鍔状部21bと、該挿通孔8aの周縁部内側面に当接し該鍔状部21bとともにピボット軸挿通孔8aの周縁部を内外で挟持するための内側鍔状部21cとが設けられており、その外側鍔状部21b内にはカラー部材22の円板部22bが配置されている。これにより、カラー部材22の円板部22bが外側鍔状部21bにて被覆されるため、外部からの見栄えを向上することができる。また、ともに弾性材料よりなる各鍔状部21b,21cがピボット軸挿通孔8aの周縁部に当接することから、車両走行中の振動等による硬質部材同士、即ちピボット軸挿通孔8aの周縁部とカラー部材22やワッシャ23、ナット24との接触による異音発生を防止することができる。
【0038】
(3)本実施の形態の防水グロメット20では、外側鍔状部21bにピボット軸挿通孔8aを囲繞するように環状突起部21dが設けられており、該環状突起部21dがピボット軸挿通孔8aの周縁部外側面に密着する。そのため、外側鍔状部21bとピボット軸挿通孔8aの周縁部外側面との間でより確実な防水効果を得ることができ、ピボット軸挿通孔8a内への浸水をより確実に防止することができる。また、内側鍔状部21cにおいてもピボット軸挿通孔8aを囲繞するように環状突起部21eが設けられており、該環状突起部21eがピボット軸挿通孔8aの周縁部内側面に密着する。そのため、内側鍔状部21cとピボット軸挿通孔8aの周縁部内側面との間でもより確実な防水効果を得ることができ、ピボット軸挿通孔8a内への浸水をより確実に防止することができる。
【0039】
(4)本実施の形態の防水グロメット20では、内側鍔状部21cが外側鍔状部21bを含む残りの部分と分割されて構成したため、装着時に内側鍔状部21cを無しとした状態で防水グロメット20をピボット軸挿通孔8a内に挿入すれば、挿入時の鍔状部21cの引っ掛かりを防止でき、その挿入をスムーズに行うことができる。
【0040】
(5)本実施の形態の防水グロメット20では、内部のカラー部材22の円筒部22aにネジ部22cを設け該ネジ部22cにナット24を締め付けるようにした。この締め付けにより、ピボット軸挿通孔8aの周縁部外側面側に位置するカラー部材22の円板部22bと、該挿通孔8aの周縁部内側面側に位置するナット24(ワッシャ23)との間隔が狭まることで、グロメット本体部21によるピボット軸挿通孔8aの周縁部の内外での挟持(装着)がより確実となる。また、弾性材料よりなるグロメット本体部21を介してのナット24の締め付けであるため、該本体部21からの反力にてナット24の弛み止め効果も得られる。
【0041】
(6)本実施の形態では、カラー部材22がインサート成形により防水グロメット20に一体形成されるため、部品点数を少なくすることができる。
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
【0042】
・上記実施の形態の防水グロメット20の構成(形状)を適宜変更してもよく、例えば図3にて破線X部分で別部材としていた内側鍔状部21cを防水グロメット20(グロメット本体部21)に一体に形成してもよい。また、この内側鍔状部21cを省略し、ピボット軸挿通孔8aの周縁部に直接ワッシャ23を当接させてナット24による締め付けを行う構成としてもよい。また、ワッシャ23を省略し、ナット24のみとしてもよい。また、ナット24(ネジ部22c)といった締付手段を用いない装着部材の構成としてもよく、例えば凹凸係合による係合手段であってもよい。また、各鍔状部21b,21cに設けた環状突起部21d,21eの数及び位置を適宜変更してもよく、環状突起部21d,21eを省略してもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、防水グロメット20のグロメット本体部21をゴム材料で形成したが、エラストマー等、他の弾性材料で形成してもよい。
・上記実施の形態では、防水グロメット20内のカラー部材22を硬質材料である金属材料で形成したが、硬質の樹脂材料で形成してもよい。
【0044】
・上記実施の形態では、カラー部材22が内装されるよう防水グロメット20をインサート成形により形成したが、カラー部材22とグロメット本体部21とを個別に形成して組み付けて防水グロメット20を構成してもよい。
【0045】
・上記実施の形態では、リアウインドウ8にピボット軸挿通孔8aを備えるタイプの車両1に適用したが、車体外装パネルにピボット軸挿通孔を設けるタイプの車両に適用してもよい。
【0046】
・上記実施の形態では、上側縁部にヒンジを有して上下方向に開閉するバックドア2を有する車両1に適用したが、側縁部にヒンジを有して左右方向に開閉するバックドアを有する車両に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の形態における車両後部の構成を示す断面図である。
【図2】車両後部におけるリアワイパ装置及びロック装置部分の拡大断面図である。
【図3】リアワイパ装置における防水グロメット部分の拡大断面図である。
【図4】従来のリアワイパ装置における防水グロメット部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…車両、2…開閉ドアとしてのバックドア、8a…ピボット軸挿通孔、11…ワイパモータ、12…ピボット軸、13…リアワイパ、20…防水グロメット、21…グロメット本体部、21b…第1鍔状部としての外側鍔状部、21c…第2鍔状部としての内側鍔状部、21d…環状突起部、22…装着部材を構成するカラー部材、22a…円筒部、22b…侵入防止部としての円板部、22c…ネジ部、23…装着部材を構成するワッシャ、24…装着部材を構成する被操作部材としてのナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ駆動のためのピボット軸を挿通させるべく車両後部の開閉ドアに設けたピボット軸挿通孔の周縁部に装着され、該挿通孔から前記開閉ドアの内部への浸水を防止する防水グロメットであって、
前記ピボット軸挿通孔の周縁部及び前記ピボット軸に密着してシールする弾性材料よりなるグロメット本体部に対して固定され、該グロメット本体部を介して前記ピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持させて装着させるとともにその装着時に操作される被操作部材が前記開閉ドアの内部側に設定され、更に前記ピボット軸挿通孔から前記開閉ドアの外側に位置する部分に該挿通孔よりも大径の侵入防止部を有する硬質材料よりなる装着部材を備えてなることを特徴とする防水グロメット。
【請求項2】
請求項1に記載の防水グロメットにおいて、
前記グロメット本体部は、前記ピボット軸挿通孔の周縁部外側面に当接するための第1鍔状部と、前記ピボット軸挿通孔の周縁部内側面に当接し前記第1鍔状部とともに前記ピボット軸挿通孔の周縁部を内外で挟持するための第2鍔状部とを有するものであり、
前記装着部材の侵入防止部は、前記第1鍔状部内に配置されていることを特徴とする防水グロメット。
【請求項3】
請求項2に記載の防水グロメットにおいて、
前記第1鍔状部には、前記ピボット軸挿通孔を囲繞するように該挿通孔の周縁部外側面に密着するための環状突起部が設けられていることを特徴とする防水グロメット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の防水グロメットにおいて、
前記第1及び第2鍔状部が互いに分割構成されていることを特徴とする防水グロメット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水グロメットにおいて、
前記装着部材は、前記ピボット軸が内側を挿通されるとともに自身が前記ピボット軸挿通孔から前記開閉ドアの内側まで挿入される円筒部が前記侵入防止部から延設されてなるカラー部材を有し、
前記カラー部材の円筒部には、前記被操作部材としてのナットが螺着されるネジ部が設けられていることを特徴とする防水グロメット。
【請求項6】
車両後部の開閉ドアの内部に取り付けられ、ピボット軸を有するとともに該ピボット軸に固定されるリアワイパを往復回動させるワイパモータを備え、前記ピボット軸を挿通させるべく前記開閉ドアに設けたピボット軸挿通孔の周縁部に装着する請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水グロメットを備えてなることを特徴とする車両用リアワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−283977(P2007−283977A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115941(P2006−115941)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】