説明

防水ケース及び内視鏡

【課題】開口縁がコーナー部で円弧状に屈曲した開口を、簡単な方法で水蜜に密封できるパッキン構造について提案する。
【解決手段】防水ケースはケース本体30とカバー部材40と断面がU字形でU字の開放側を外向きにして環状に形成されたリップパッキン60とから構成される。カバー部材40は、収容スペースを覆うカバー本体43と、収容スペースを覆う閉じ位置でケース本体30の内部に入り込んでケース本体30の内壁面との間に一定の隙間を空けて対面する一連のパッキン支持面50を備える。パッキン支持面50のコーナー部分に前記隙間を狭める突起56が形成される。カバー部材40を前記閉じ位置に固定したときに、ケース本体30の内部側に配置されるリップの先端側をケース本体30の内壁面の全周に圧着させるとともに前記コーナー部分では圧着力がアップされ、ケース本体30内を水密に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の操作部のように電子部品等が収容されるとともにケースごと水洗される防水ケースの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中カメラや防水時計など、内部に水を嫌う電子部品が収容されているにも係わらず水中で使用されたり汚れを水で洗浄されたりするものがある。これらのものはケース本体と蓋部材からなるケースに内部部品が組み込まれ、ケース本体と蓋部材は環状弾性部材を介して嵌合され、内部が水密に密封される。例えば、下記特許文献1には、レンズ付きフイルムユニットのケース本体と裏蓋の間に弾性部材からなるOリングを挟んで内部を水密に密封する構成が示され、ケース本体は四隅に小さなRが設けられた矩形開口が形成されている。円形環状をしたOリングを矩形に伸ばすと矩形の角部が他より細くなってしまい水漏れが生じる。ここではOリングを挟むケース本体と裏蓋の間の隙間寸法が、四隅の小さなR部は隙間寸法を四辺の直線部に対して小さくしている。
【0003】
また、ケースの蓋ではなく固定部材と可動部材の間に弾性パッキンを介在させて、可動部材の移動と内部の防水を両立しているものもある。下記特許文献2には、前後にズーミング駆動するレンズ鏡筒とその外側に配置された固定鏡筒との間に断面がV字状の環状パッキンを挟んで、レンズ鏡筒の進退を妨げない防水機能を持たせたズームレンズ付きカメラが示されている。前記環状パッキンはV字状の一辺が固定鏡筒に固定され、その内側に形成された他の一辺が弾性変形してレンズ鏡筒の外壁面に適度な圧力を持って摺接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−091996号公報
【特許文献2】特開平05−241227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品等を収容する収容スペースが形成されたケース本体と収容スペースを水密に塞ぐ蓋部材とからなる防水ケースは、前記収容スペースの開口縁形状が矩形あるいは多角形のような形状をしたものが多くある。この場合の開口縁形状は、複数の直線あるいは直線に近い曲線と、それらの間に形成されるコーナー(角または比較的小さな円弧)が交互に連続するように形成される。前記蓋部材が前記ケース本体に嵌合したときに前記収容スペースが水密になるように、前記開口縁形状に合わせた防水パッキンが前記ケース本体と前記蓋部材の間に挟み込まれる。このとき、防水パッキンのコーナー部分は直線部分に比べて防水性能が劣ると言った問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためのもので、スペース、コスト、作業性のどれに対しても負担のない簡単な方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による防水ケースは、開口縁がコーナー部で円弧状に屈曲した開口を有するケース本体と、前記開口縁の外側に連なる端面に裏面を当接させて前記開口を覆うカバーであって、前記開口を覆う閉じ位置で前記ケース本体の内部に入り込んで前記開口縁の内側に連なるケース本体内壁面との間に一定の隙間を空けて対面する一連のパッキン支持面を有し、かつ前記パッキン支持面の前記コーナー部に対応する屈曲部に前記隙間を狭める突起が形成されたカバーと、前記パッキン支持面に内周側を密着させて装着され、外周側に断面がU字形をなすようにそれぞれ周方向に連なって突出する一対のリップを有する環状のリップパッキンとを備え、前記カバーを前記閉じ位置に固定したときに、前記ケース本体の内部側に配置されるリップの先端側を前記ケース本体内壁面の全周に圧着させて前記ケース本体内を水密に保つようにしたことを特徴とする。
【0008】
前記一対のリップの突出量は、前記開口側よりもケース本体の内部側の方が大きく形成されるようにすると良い。前記ケース本体の内部側に配置されるリップは、前記ケース本体内壁面に押し付けられることによって、先端側が前記開口側に近づく向きに屈曲されるようにすると良い。前記パッキン支持面に、前記リップパッキンの内周側が嵌まり込む溝が形成されるようにすると良い。前記溝は前記屈曲部を除く複数個所に形成されるようにすると良い。前記防水ケースを内視鏡用の手元操作機構を収納するケースに用いるようにすると良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直線部とコーナー部とが繰返し連続するような複雑な開口形状をした防水ケースであっても、簡単な方法でコーナー部にも十分な防水性能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内視鏡検査システムを示す概観図である。
【図2】本発明による内視鏡操作部の防水ケースを示す斜視概観図である。
【図3】防水ケースの分解斜視図である。
【図4】ケース本体の斜視図である。
【図5】カバー部材を内側から見た図である。
【図6】カバー部材のコーナー部分の拡大図である。
【図7】リップパッキンの断面図である。
【図8】カバー部材をケース本体に取り付ける作業の説明図である。
【図9】リップパッキンの説明用断面図である。
【図10】リップパッキンの直線部分の作用を説明する図である。
【図11】リップパッキンのコーナー部分の作用を説明する図である。
【図12】水圧によるリップパッキンの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示されるように、本発明による防水ケースの具体的な実施例として内視鏡12の操作部10を挙げて説明する。操作部10は内視鏡12の手元操作機構が防水ケース11に収納されており、電子部品も含まれている。使用済みの内視鏡12は洗浄処理装置(図示せず)によって丸洗いされるため、操作部10を含め全て防水構造でなければならない。内視鏡検査システム13は、体腔内を撮影する内視鏡12、主として内視鏡の電気的な作動を制御する内視鏡用プロセッサユニット14、内視鏡先端部15を洗浄するための洗浄水を送る輸液装置16、体腔内を照明するための照明光を供給する光源装置17、撮影した画像を表示するモニタ18及びこれらが組み付けられる内視鏡カート19から構成される。
【0012】
図2及び図3に示されるように、防水ケース11はケース本体30とカバー部材(請求項記載のカバー)40と断面がU字形でU字の開放側(図7参照)を外向きにして環状に形成された弾性を有するリップパッキン60とから構成される。リップパッキン60が装着されたカバー部材40とケース本体30は、嵌合された後に、カバー部材40に形成されたネジ挿通孔41に挿通されたネジ42によってケース本体30に固定される。
【0013】
図2及び図4に示されるように、ケース本体30は、内視鏡先端部15の動きを操作する操作ダイヤル25(図1参照)が取り付けられるダイヤル取付部31が形成された基部32と、基部32から環状に立設された壁部33とから構成され、基部32と壁部33とによって収容スペース71が形成される。壁部33には、複数の直線部35と隣り合う直線部35を結び円弧状に屈曲したコーナー部36とから形成される開口縁37と、開口縁37に連なる内壁面34が形成される。
【0014】
壁部33には、内視鏡12の挿入部21(図1参照)が取り付けられる取付部38、輸液装置16に接続された給水ホース22(図1参照)が貫通する貫通孔39、送気送水ボタン26,吸引ボタン27,シャッタボタン28(図1参照)がそれぞれ取り付けられるボタン取付孔72,73,74が形成される。また、内壁面34の1ヶ所に、直線部35に沿って内壁面34と垂直な第2の溝58が形成される。
【0015】
図3及び図5に示されるように、カバー部材40は、前記開口縁37の外側に連なる端面75に裏面47を当接させて収容スペース71を覆うカバー本体43と、内視鏡用プロセッサユニット14及び光源装置17に接続されるユニバーサルコード23が挿通されるコード挿通孔44を有しカバー本体43の表面45に形成されたコード挿通部46と、収容スペース71を覆う閉じ位置でケース本体30の内部に入り込んで内壁面34との間に一定の隙間を空けて対面する一連のパッキン支持面50を有するパッキン支持部48とを備える。パッキン支持部48にはパッキン支持面50のコーナー部分(請求項記載の屈曲部)52に前記隙間を狭める突起56が形成される。
【0016】
図6に示されるように、筒状のパッキン支持面50は複数の直線部分51と複数のコーナー部分52とを有し、直線部分51の複数個所にパッキン支持面50から垂直に第1のリブ53が立設され、第1のリブ53の立設によってリップパッキン60の内周側が嵌まり込む樋状の第1の溝(請求項4記載の溝)55が形成される。カバー本体43には第2の溝58に差し込まれて係合しカバー部材40の回動軸となる第2のリブ57が形成される。
【0017】
図3及び図7に示されるように、リップパッキン60は、パッキン支持面50に内周側を密着させて装着される筒状部63と、外周側に断面がU字形をなすようにそれぞれ周方向に連なって突出する一対のリップ61,62とを有し、ケース本体30の内部側に配置されるリップ61の方が開口縁37側に配置されるリップ62より長く形成される。リップ61の先端65が形成する外形はケース本体30の開口縁37より僅かに大きく、リップ62の先端が形成する外形は開口縁37より僅かに小さい(図9参照)。カバー部材40を閉じ位置に固定したときに、リップ61の先端65が内壁面34の全周に圧着され、リップ61と内壁面34の間、及び筒状部63の内周側とパッキン支持面50の間を密着させて(図10参照)、収容スペース71を水密に保つ。
【0018】
次に、カバー部材40のケース本体30への取り付けと、リップパッキン60の作用効果について説明する。図8に示されるように、リップパッキン60はリップ61をケース本体30の内部側にしてカバー部材40のパッキン支持部48に形成された第1の溝55に装着される。カバー部材40の第2のリブ57がケース本体30の第2の溝58に差し込まれた後に、カバー部材40が第2のリブ57を支点にして矢印69の方向に回動され、パッキン支持部48が収容スペース71に嵌入される。
【0019】
図9及び図10に示されるように、リップ61の先端65はケース本体30の内壁面34と干渉する位置まで長く、パッキン支持部48が収容スペース71に嵌入されるとリップ61がリップ62の方に倒れ、リップ61の復元力が内壁面34とパッキン支持面50に働いて、先端65と内壁面34の間、及び筒状部63とパッキン支持面50の間を強く密着させ、収容スペース71を水密に保持する。ここで内壁面34の直線部35に連なる部分とコーナー部36に連なる部分とではリップ61の復元力による接触圧力が異なり、直線部35に連なる部分に比べてコーナー部36に連なる部分の方が接触圧力が弱く防水性能が劣る傾向がある。
【0020】
図11に示されるように、リップパッキン60はパッキン支持面50のコーナー部分52では突起56によって筒状部63のコーナー部分64が開放側に押圧されるので、その分だけリップ61の先端65のコーナー部分66が内壁面34を押圧する圧力が大きくなり、防水性能が改善される。また、図12に示されるように、ケース本体30とカバー部材40の合わせ目76から水が侵入した場合、侵入した水はリップパッキン60の内側に入るため、侵入した水による圧力がリップパッキン60を内側から外側に押し広げる方向に作用し、内壁面34及び突起56とリップパッキン60との間に働く接触圧力が大きくなって防水性能が更にアップする。
【0021】
前記実施形態では、リップ62の長さを開口縁37からはみ出さない寸法にしたが、リップ62の先端が開口縁37から僅かにはみ出すようにしても良い。この場合、カバー部材40が閉じ位置にあるときには、リップ62の先端が内壁面34を押圧されてリップ61の方へ倒れる。
【0022】
前記実施形態は本発明を内視鏡操作部のケースに採用したものであるが、本発明は前記実施形態に限るものではなく、いろいろな防水ケースに採用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 内視鏡の操作部
11 防水ケース
30 ケース本体
31 ダイヤル取付部
32 基部
33 壁部
34 内壁面
35 (開口縁37の)直線部
36 (開口縁37の)コーナー部
37 開口縁
38 取付部
39 貫通孔
40 カバー部材(請求項記載のカバー)
41 ネジ挿通孔
42 ネジ
43 カバー本体
44 コード挿通孔
45 (カバー部材の)表面
46 コード挿通部
47 (カバー部材の)裏面
48 パッキン支持部
50 パッキン支持面
51 (パッキン支持面50の)直線部分
52 (パッキン支持面50の)コーナー部分(請求項記載の屈曲部)
53 第1のリブ
55 第1の溝(請求項4記載の溝)
56 突起
57 第2のリブ
58 第2の溝
60 リップパッキン
61,62 リップ
63 筒状部
64 (筒状部63の)コーナー部分
65 (リップ61の)先端
66 (先端65の)コーナー部分
71 収容スペース
72,73,74 ボタン取付孔
75 端面(開口縁37に連なる端面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁がコーナー部で円弧状に屈曲した開口を有するケース本体と、
前記開口縁の外側に連なる端面に裏面を当接させて前記開口を覆うカバーであって、前記開口を覆う閉じ位置で前記ケース本体の内部に入り込んで前記開口縁の内側に連なるケース本体内壁面との間に一定の隙間を空けて対面する一連のパッキン支持面を有し、かつ前記パッキン支持面の前記コーナー部に対応する屈曲部に前記隙間を狭める突起が形成されたカバーと、
前記パッキン支持面に内周側を密着させて装着され、外周側に断面がU字形をなすようにそれぞれ周方向に連なって突出する一対のリップを有する環状のリップパッキンとを備え、
前記カバーを前記閉じ位置に固定したときに、前記ケース本体の内部側に配置されるリップの先端側を前記ケース本体内壁面の全周に圧着させて前記ケース本体内を水密に保つようにしたことを特徴とする防水ケース。
【請求項2】
前記一対のリップの突出量は、前記開口側よりもケース本体の内部側の方が大きいことを特徴とする請求項1記載の防水ケース。
【請求項3】
前記ケース本体の内部側に配置されるリップは、前記ケース本体内壁面に押し付けられることによって、先端側が前記開口側に近づく向きに屈曲されることを特徴とする請求項2記載の防水ケース。
【請求項4】
前記パッキン支持面に、前記リップパッキンの内周側が嵌まり込む溝を形成したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の防水ケース。
【請求項5】
前記溝は前記屈曲部を除く複数個所に形成されていることを特徴とする請求項4記載の防水ケース。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の防水ケースを内視鏡用の手元操作機構を収納するケースに用いたことを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−47884(P2012−47884A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188427(P2010−188427)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】