説明

防水コネクタ

【課題】ハウジングに対するマットシールの保持を向上することができる防水コネクタを提供する。
【解決手段】開口3が設けられ内部に電線に接続される端子が収容されるハウジング5と、電線が挿通されハウジング5の開口3に組付けられてハウジング5を密封するマットシール7と、電線が挿通されハウジング5の開口3に係止部9を介して組付けられてハウジング5からのマットシール7の脱落を防止するマットシールホルダ11とを備えた防水コネクタ1において、マットシールホルダ11に、係止部9の係止を強化させる係止強化部13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水コネクタとしては、開口が設けられ内部に電線に接続される端子が収容されるハウジングと、電線が挿通されハウジングの開口に組付けられてハウジングを密封するマットシールと、電線が挿通されハウジングの開口に係止部としての係止爪と係止穴とを介して組付けられてハウジングからのマットシールの脱落を防止するマットシールホルダとしてのターミナルホルダとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この防水コネクタでは、ターミナルホルダに係止爪が設けられ、ハウジングに係止穴が設けられている。これらの係止爪と係止穴とが係止するまでターミナルホルダをハウジングに嵌挿することにより、マットシールがターミナルホルダの覆い板とハウジングの突起板及び支え板とに狭持されてハウジングを密封する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−73948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような防水コネクタでは、係止爪と係止穴との間でガタつきが発生し、電線に加わる外力などによって係止が解除される恐れがあった。このため、ターミナルホルダがハウジングから外れてマットシールを確実にハウジングに保持することができない可能性があった。
【0006】
そこで、この発明は、ハウジングに対するマットシールの保持を向上することができる防水コネクタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、開口が設けられ内部に電線に接続される端子が収容されるハウジングと、前記電線が挿通され前記ハウジングの開口に組付けられて前記ハウジングを密封するマットシールと、前記電線が挿通され前記ハウジングの開口に係止部を介して組付けられて前記ハウジングからの前記マットシールの脱落を防止するマットシールホルダとを備えた防水コネクタであって、前記ハウジングと前記マットシールホルダとのうちいずれか一方には、前記係止部の係止を強化させる係止強化部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この防水コネクタでは、ハウジングとマットシールホルダとのうちいずれか一方に係止部の係止を強化させる係止強化部が設けられているので、係止強化部によって係止部のガタつきが防止され、外力によって係止部の係止が解除されることを防止できる。
【0009】
従って、このような防水コネクタでは、マットシールホルダがハウジングから離脱することを防止できるので、ハウジングに対するマットシールの保持を向上することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の防水コネクタであって、前記係止部は、前記マットシールホルダが前記ハウジングに組付けられる方向に対向する面と前記マットシールホルダが前記ハウジングから離脱する方向に対向する面とを係合する係合部と被係合部とからなり、前記係止強化部は、前記ハウジングと前記マットシールホルダとのうち他方に当接して前記マットシールホルダを前記ハウジングから離脱する方向に付勢する付勢部であることを特徴とする。
【0011】
この防水コネクタでは、係止強化部がハウジングとマットシールホルダとのうち他方に当接してマットシールホルダをハウジングから離脱する方向に付勢する付勢部であるので、付勢部がマットシールホルダを付勢することにより、係止部における係合部と被係合部との互いの面の係合が強化される。このため、係止部におけるガタつきの発生を防止でき、マットシールホルダを確実にハウジングに保持することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の防水コネクタであって、前記付勢部は、前記ハウジングと前記マットシールホルダとの対向面に向けて突設された突起であることを特徴とする。
【0013】
この防水コネクタでは、付勢部がハウジングとマットシールホルダとの対向面に向けて突設された突起であるので、付勢部を設けるためにハウジング又はマットシールホルダが大きな設計変更を伴うことがなく、簡易な構造で係止部の係止を強化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハウジングに対するマットシールの保持を向上することができる防水コネクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る防水コネクタの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る防水コネクタのハウジングの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る防水コネクタのマットシールの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る防水コネクタのマットシールホルダの斜視図である。
【図5】(a)は本発明の実施の形態に係る防水コネクタの係合部の拡大図である。(b)は本発明の実施の形態に係る防水コネクタの被係合部の拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る防水コネクタの係止補強部の拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る防水コネクタの係止補強部とハウジングとが当接したときの拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る防水コネクタの係止補強部とハウジングとが当接したときの係止部の拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る防水コネクタの上面図である。
【図10】(a)は本発明の実施の形態に係る防水コネクタのハウジングにマットシールを組付けるときの斜視図である。(b)は本発明の実施の形態に係る防水コネクタのハウジングにマットシールを組付けたときの斜視図である。(c)は本発明の実施の形態に係る防水コネクタのハウジングにマットシールホルダを組付けるときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図10を用いて本発明の実施の形態に係る防水コネクタについて説明する。
【0017】
本実施の形態に係る防水コネクタ1は、開口3が設けられ内部に電線(不図示)に接続される端子(不図示)が収容されるハウジング5と、電線が挿通されハウジング5の開口3に組付けられてハウジング5を密封するマットシール7と、電線が挿通されハウジング5の開口3に係止部9を介して組付けられてハウジング5からのマットシール7の脱落を防止するマットシールホルダ11とを備えている。
【0018】
そして、マットシールホルダ11には、係止部9の係止を強化させる係止強化部13が設けられている。
【0019】
また、係止部9は、マットシールホルダ11がハウジング5に組付けられる方向に対向する面15とマットシールホルダ11がハウジング5から離脱する方向に対向する面17とを係合する係合部19と被係合部21とからなり、係止強化部13は、ハウジング5に当接してマットシールホルダ11をハウジング5から離脱する方向に付勢する付勢部23である。
【0020】
さらに、付勢部23は、ハウジング5とマットシールホルダ11との対向面に向けて突設された突起である。
【0021】
図1〜図10に示すように、ハウジング5は、筐体状に形成され、嵌合部25と開口3と端子収容室27とを備えている。嵌合部25は、ハウジング5の一面側に開口され、相手ハウジング(不図示)が嵌合される。また、ハウジング5には、相手ハウジングとの嵌合に用いられるレバー29が軸支部31で回動可能に軸支される。この嵌合部25と反対側の面には、開口3が設けられている。
【0022】
開口3は、ハウジング5の他面側に開口され、端子がハウジング5の内部に収容される。この開口3からハウジング5の内部に収容された端子は、端子収容室27に配置される。
【0023】
端子収容室27は、ハウジング5の幅方向に複数列設けられると共に、高さ方向に2段重なるように設けられている。この端子収容室27には、端子が収容され、嵌合部25から相手ハウジングを嵌合することにより、相手ハウジングに収容された相手端子(不図示)と端子とが接続される。このようなハウジング5の開口3には、マットシール7が挿入され、ハウジング5の内部が密封される。
【0024】
マットシール7は、ゴムなどの弾性材料からなり、外周形状がハウジング5の開口3の内周形状と同様に形成されている。また、マットシール7には、端子に接続される電線が挿通されるシール孔33がハウジング5の端子収容室27と同数設けられている。このマットシール7の外周は、ハウジング5の開口3の内周よりも大きく設定されている。このため、マットシール7をハウジング5の開口3に挿入すると、外周が開口3の内周に密着され、ハウジング5の開口3が密封されてシールされる。このようなマットシール7は、マットシールホルダ11によってハウジング5からの脱落が防止される。
【0025】
マットシールホルダ11は、ハウジング5の開口3を閉塞するように組付けられる。また、マットシールホルダ11には、マットシール7のシール孔33に挿通される電線が挿通される挿通孔35がハウジング5の端子収容室27及びシール孔33と同数設けられている。このマットシールホルダ11は、係止部9を介してハウジング5に固定される。
【0026】
係止部9は、ハウジング5及びマットシールホルダ11の幅方向の両側にそれぞれ設けられ、係合部19と被係合部21とからなる。係合部19は、マットシールホルダ11の幅方向の両側に幅方向に撓み可能に設けられている。また、係合部19は、マットシールホルダ11がハウジング5に組付けられる方向に対向する面15が係合面となっている。この係合部19は、被係合部21に係合する。
【0027】
被係合部21は、ハウジング5の幅方向の両側に凹状に設けられている。また、被係合部21は、凹部内のマットシールホルダ11がハウジング5から離脱する方向に対向する面17が係合面となっている。この被係合部21は、面17が係合部19の面15と係合することによって、マットシールホルダ11がハウジング5から離脱することを防止する。
【0028】
このような係止部9は、マットシールホルダ11をハウジング5に組付けることにより、係合部19が撓んで被係合部21を乗り越え、係合部19が被係合部21に位置したときに係合部19が初期位置に復帰して被係合部21に係合される。このとき、係合部19の面15と被係合部21の面17とが係合し、マットシールホルダ11のハウジング5から離脱する方向への移動が規制される。この係止部9における係合部19と被係合部21との係合、すなわち互いの係合面である面15,17の係合は、係止強化部13によって強化される。
【0029】
係止強化部13は、マットシールホルダ11のハウジング5と対向する対向面に設けられている。この係止強化部13は、ハウジング5に当接してマットシールホルダ11をハウジング5から離脱する方向に付勢する付勢部23となっている。詳細には、付勢部23は、マットシールホルダ11の端面からハウジング5側に向けて突設された突起となっている。また、突起の突出長さは、マットシールホルダ11をハウジング5に組付けるときに、係止部9における係合部19と被係合部21との面15,17が係合可能な長さとなっている。この付勢部23は、マットシールホルダ11の幅方向に複数(ここでは8つ)設けられている。
【0030】
このような付勢部23は、マットシールホルダ11をハウジング5に組付けた状態で、ハウジング5の端面に当接する。この当接により、マットシールホルダ11には、図7の矢印で示すようなハウジング5から離脱する方向に付勢力が付与される。このため、係止部9では、図8の矢印で示すように、係合部19が離脱方向に移動することになり、係合部19と被係合部21との面15,17がより強く係合され、係止部9でのガタつきが防止される。
【0031】
このように係止強化部13によって係止部9の係止が強化された防水コネクタ1では、例えば、図9に示すように、マットシールホルダ11から引き出されて束ねられた電線束であるハーネス37に矢印で示すような外力が加わったとしても、係止部9のガタつきが防止されているので、マットシールホルダ11がハウジング5から離脱することがない。なお、この防水コネクタ1では、マットシールホルダ11にマットシールホルダ11から引き出された電線を保護するカバー39が組付けられている。このように係止強化部13によって係止部9のガタつきを防止することにより、マットシールホルダ11のハウジング5に対する保持力を強化でき、外力に対する対抗力を増加させることができる。
【0032】
このように構成された防水コネクタ1の組付けは、まず、ハウジング5の開口3からマットシール7を圧縮するように挿入し、ハウジング5の開口3の内周とマットシール7の外周とを密着させ、ハウジング5の開口3にマットシール7を配置させる。そして、ハウジング5の開口3を閉塞し、マットシール7をハウジング5とで狭持するように係止部9を介してマットシールホルダ11をハウジング5に組付け、防水コネクタ1の組付けを完了する。
【0033】
このような防水コネクタ1では、マットシールホルダ11に係止部9の係止を強化させる係止強化部13が設けられているので、係止強化部13によって係止部9のガタつきが防止され、外力によって係止部9の係止が解除されることを防止できる。
【0034】
従って、このような防水コネクタ1では、マットシールホルダ11がハウジング5から離脱することを防止できるので、ハウジング5に対するマットシール7の保持を向上することができる。
【0035】
また、係止強化部13は、ハウジング5に当接してマットシールホルダ11をハウジング5から離脱する方向に付勢する付勢部23であるので、付勢部23がマットシールホルダ11を付勢することにより、係止部9における係合部19と被係合部21との互いの面15,17の係合が強化される。このため、係止部9におけるガタつきの発生を防止でき、マットシールホルダ11を確実にハウジング5に保持することができる。
【0036】
さらに、付勢部23は、ハウジング5とマットシールホルダ11との対向面に向けて突設された突起であるので、付勢部23を設けるためにマットシールホルダ11が大きな設計変更を伴うことがなく、簡易な構造で係止部9の係止を強化することができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態に係る防水コネクタでは、係止強化部がマットシールホルダに設けられているが、係止強化部をハウジングに設けてもよい。
【0038】
また、係止強化部は、係止部の係合面の係合を強化させる付勢部となっているが、例えば、係合部を撓みを強化するために係合部をハウジングの内方に撓ませる補助部を係合部の外方に設ける、係止部を凸部と凹部の嵌合による構造とし、凸部を凹部より僅かに大きく形成させて凸部を凹部に圧入させるなど、係止部強化部は係止部の係止構造に合わせた構造であればよい。
【0039】
さらに、付勢部は、ハウジングとマットシールホルダとの対向面に向けて突出する突起となっているが、例えば、バネなどの弾性部材によるマットシールホルダの付勢であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…防水コネクタ
3…開口
5…ハウジング
7…マットシール
9…係止部
11…マットシールホルダ
13…係止強化部
15,17…面
19…係合部
21…被係合部
23…付勢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられ内部に電線に接続される端子が収容されるハウジングと、前記電線が挿通され前記ハウジングの開口に組付けられて前記ハウジングを密封するマットシールと、前記電線が挿通され前記ハウジングの開口に係止部を介して組付けられて前記ハウジングからの前記マットシールの脱落を防止するマットシールホルダとを備えた防水コネクタであって、
前記ハウジングと前記マットシールホルダとのうちいずれか一方には、前記係止部の係止を強化させる係止強化部が設けられていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の防水コネクタであって、
前記係止部は、前記マットシールホルダが前記ハウジングに組付けられる方向に対向する面と前記マットシールホルダが前記ハウジングから離脱する方向に対向する面とを係合する係合部と被係合部とからなり、前記係止強化部は、前記ハウジングと前記マットシールホルダとのうち他方に当接して前記マットシールホルダを前記ハウジングから離脱する方向に付勢する付勢部であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載の防水コネクタであって、
前記付勢部は、前記ハウジングと前記マットシールホルダとの対向面に向けて突設された突起であることを特徴とする防水コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−51042(P2013−51042A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186878(P2011−186878)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】