説明

防水機器

【課題】簡単な構成でメインテナンス性の向上に寄与し得る防水機器を提供する。
【解決手段】防水機器1において、防水機器を操作するための可動な操作部材12と、防水機器に設けられ操作部材の一部を外部に露出させるための開口11bを有する外装部材4と、操作部材の通常の操作による方向とは異なる方向に操作部材を移動させると、防水機器の外部と操作部材を収納している空間とを結び操作部材と開口との間に流路を形成する流路形成手段(12)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水機器、詳しくは防水構造を備えたカメラ等の防水機器において、蓋部材等の可動部近傍に入り込んだ砂等を容易に除去し得る構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海辺等で使用することができるように防水構造を備えたカメラ等の防水機器が実用化され、一般に普及している。
【0003】
この種の防水機器においては、機器内部に収納される記録媒体や電池等を着脱するための開口や、外部との間で機器間接続を行うための各種コネクタ部(通信コネクタ,電源コネクタ等)を覆い、及び露呈(開放)するために、機器の外装部材に対して開閉自在に構成され、防水構造を備えた蓋部材を具備するものが、例えば特開2003−142841号公報等によって種々提案されている。
【0004】
このような従来の防水機器における蓋部材の防水構造としては、例えば上記開口若しくは各種コネクタ部と蓋部材との間に防水パッキン等を用いて確実な防水を行い得るように工夫されている。その一方で、可動構造の蓋部材等と外装部材との隙間から流入する水等については許容するような構造となっているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−142841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の形態の防水機器を、例えば海辺等で使用した場合には、その使用状況によっては、蓋部材等の可動部材と外装部材との間に砂や泥等が附着し、これらの砂泥等がこの隙間に詰まってしまうことがある。そのような状態になったときに、蓋部材等の可動部材を動かすと、上記隙間等に詰まった砂泥等が蓋部材や外装部材等に傷を付けたり、上記隙間から水等と共に流入した砂泥等が、防水パッキン等に附着して、本来の防水機能を阻害してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、従来の防水機器においては、海辺等で使用した直後には、蓋部材近傍や外装部材等に附着した砂泥等を水道水等の流水によって長時間洗い流す等、使用者によるこまめなメインテナンス作業が必要であった。
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、防水機器において、砂泥等の除去を確実に行い得る構造を備え、よって簡単な構成でメインテナンス性の向上に寄与し得る防水機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による防水機器は、上記防水機器を操作するための可動な操作部材と、上記防水機器に設けられ上記操作部材の一部を外部に露出させるための開口を有する外装部材と、上記操作部材の通常の操作による方向とは異なる方向に上記操作部材を移動させると上記防水機器の外部と上記操作部材を収納している空間とを結び上記操作部材と上記開口との間に流路を形成する流路形成手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防水機器において、砂泥等の除去を確実に行い得る構造を備え、よって簡単な構成でメインテナンス性の向上に寄与し得る防水機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の防水機器の全体を示す外観斜視図
【図2】図1の防水機器における蓋部材のみを取り出して示す平面図
【図3】図2の[3]−[3]線に沿う断面図
【図4】図1の防水機器における蓋部材のみを取り出して示す分解斜視図
【図5】図4とは見る方向を若干異ならせた蓋部材の分解斜視図
【図6】図1の防水機器における蓋部材の作用を示し、外装部材に対して蓋部材を開閉する際の操作ツマミの状態を示す斜視図
【図7】図1の防水機器における蓋部材の作用を示し、蓋部材の操作ツマミが図6の開閉操作時の状態とは異なる状態(メインテナンス操作の状態)を示す斜視図
【図8】図7の状態にあるときの蓋部材を示す平面図
【図9】図8の[9]−[9]線に沿う断面図
【図10】図8の[10]−[10]線に沿う断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
【0012】
図1〜図10は、本発明の一実施形態を示す図である。このうち、図1は、本実施形態の防水機器の全体を示す外観斜視図である。なお、図1は、当該防水機器の前面側及び底面側を主に示している。また、図1においては、機器底面に配設される蓋部材の開状態を示している。
【0013】
図2は、図1の防水機器における蓋部材のみを取り出して示す平面図である。図3は、図1の防水機器における蓋部材の断面図であって、図2の[3]−[3]線に沿う断面を示している。図4,図5は、図1の防水機器における蓋部材の分解斜視図である。なお、図4,図5は共に、当該蓋部材が外装部材に対して装着された状態となったとき、外面に露呈される側の面を主に示しており、図4と図5とでは見る方向が異なる場合をそれぞれ示している。
【0014】
図6,図7は、図1の防水機器における蓋部材の作用を示す図である。このうち、図6は、本防水機器において、外装部材に対して蓋部材を開閉する際の操作ツマミの状態を示している。図7は、本防水機器における蓋部材の操作ツマミが、図6の開閉操作時の状態とは異なる状態であるメインテナンス操作の状態としたときのようすを示している。
【0015】
図8は、図7の状態にあるときの蓋部材を示す平面図である。図9は、図8の[9]−[9]線に沿う断面図である。図10は、図8の[10]−[10]線に沿う断面図である。
【0016】
本発明の一実施形態の防水機器は、例えば光学レンズにより形成される光学像を固体撮像素子を用いて光電変換し、これによって得られる画像信号を静止画像又は動画像を表わすデジタル画像データに変換し、こうして生成されたデジタルデータを記録媒体に記録し、また記録媒体に記録されたデジタル画像データに基いて静止画像又は動画像を表示装置に再生表示し得るように構成され、かつ防水機能を備えたデジタルカメラである。
【0017】
このデジタルカメラの防水機能としては、例えば所定の水深(例えば水深1.5m〜10m程度)以内の範囲内において所定の時間(例えば30分〜60分程度)以内であれば、水没させた状態でも通常使用し得る程度の防水機能を備えているものとする。
【0018】
なお、本実施形態においては、防水機器であるデジタルカメラ(以下、単にカメラと略記する)の使用時に被写体に対向する面をカメラの前面というものとする。カメラの使用時に使用者が対面する面をカメラの背面というものとする。また、操作部材のうちシャッターレリーズボタン等が配設されている面を上面というものとする。そして、当該カメラの上面に対向する面であって、蓋部材が配設されている面を底面というものとする。
【0019】
また、以下の説明に用いる各図面においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係は、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の防水機器であるカメラ1は、カメラ1の内部にあるカメラ本体2cとその外面を覆い筐体を形成する外装部材2と、この上記カメラ本体2cの内部に収納される各種の構成ユニット(不図示)等によって構成される。外装部材2の前面には、光学レンズ3a等を有して構成されるレンズ鏡筒ユニット3が配設されている。
【0021】
外装部材2の底面側には、開口2aが形成されている。この開口2aは、例えば略長方形状に形成されており、外装部材2の一部を構成する蓋部材4(後述)によって開閉自在となっている。この開口2aは、例えば記録媒体,バッテリ等をカメラ本体収納部(不図示)に対して出し入れするためにカメラ本体2c側に形成される開口2dと対向する部位に形成されている(図1参照)。
【0022】
蓋部材4は、外装部材2の底面側の開口2aを覆う閉位置と、同開口2aを開放(露呈)する開位置との間で、図1に示す矢印R1方向に回動することによって該開口2aの開閉を行い得るように構成されている。
【0023】
蓋部材4は、全体として略直方体に形成されていて、その長辺方向の一端部近傍には、軸部材(不図示)を該蓋部材4の短辺方向に挿通配置するための貫通孔11aが穿設されている。上記軸部材は、当該貫通孔11aに挿通配置された状態で、その両端がカメラ本体2c等の固定部(不図示)に固設されている。これにより、蓋部材4は、貫通孔11aを貫通した軸部材(不図示)を回動中心として、上記カメラ本体2cに対して図1の矢印R1方向に回動自在に配設される。したがって、蓋部材4においては、貫通孔11a(軸部材)の配置されている部位を、回動基端部というものとする。そして、以下、蓋部材4を構成する部材において、長辺方向の一端部というときは、回動基端部側を指すものとし、他端部というときは、その反対側の端部を指すものとする。
【0024】
ここで、蓋部材4の詳細な構成について以下に説明する。蓋部材4は、図1〜図5に示すように、蓋外装部材11と、操作ツマミ部材12と、蓋係止部材13と、操作ツマミ付勢バネ14と、蓋内側部材15と、パッキン部材16等によって主に構成される。
【0025】
蓋外装部材11は、上記開口2aと略同形状に形成され、かつその外面が外装部材2と同一表面を形成するように、蓋部材4の最外面を構成する部材である。これにより、蓋部材4が閉位置に配置された状態の時、蓋外装部材11が本カメラ1の外装部材2の一部を構成するようになっている。
【0026】
蓋外装部材11の長辺方向の一端部には、上記貫通孔11aが形成されている。一方、蓋外装部材11の長辺方向の他端部寄りの部位には、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12c(詳細は後述)が配置される開口であるツマミ配置孔11bが形成されている。このツマミ配置孔11bは、円形部11baと、該円形部11baに連設した方形部11bbとによって、全体として鍵孔形状となるように形成されている。円形部11baには、上記操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cが挿通配置される。また、方形部11bbは、上記操作ツマミ部材12が摺動操作されてツマミ凸部12cが移動する際の退避部位として形成されている。なお、上記操作ツマミ部材12が操作されて、ツマミ凸部12cが方形部11bbに退避し配置された状態となったとき、蓋部材4は開位置への回動が許容されるようになっている。
【0027】
ここで、蓋部材4の蓋外装部材11におけるツマミ配置孔11bは、操作ツマミ部材12(操作部材)の一部であるツマミ凸部12cを外部に露出させるための開口となっている。
【0028】
操作ツマミ部材12は、蓋部材4の開閉操作を行う場合と、蓋部材4の隙間等に詰まった砂泥等を洗い流すための操作を行う場合等に操作され、蓋部材4上において可動状態で配設される操作部材である。操作ツマミ部材12は、後述する蓋係止部材13を所定の方向(蓋部材4の長辺に沿う方向。図6の矢印X方向)に移動させ得るように構成されていると共に、操作ツマミ部材12自身は、図7の矢印R2方向に回動し得るように構成されている。そのために、操作ツマミ部材12は、上述の蓋外装部材11と蓋係止部材13との間に形成される空間部位(後述の円形孔13c)に配置されている。
【0029】
操作ツマミ部材12は、図4等に示すように、ベース部材としての円形板状部12aと、円形板状部12aの一面に形成される二本の溝状部12bと、円形板状部12aの一面に突設されるツマミ凸部12cと、円形板状部12aの他面に植設される二本の軸部材12d等を有して構成されている。
【0030】
ツマミ凸部12cは、円形板状部12aの一面上に、該蓋部材4が閉位置あるときに外面に向く面において、その略中央部に突設されている。このツマミ凸部12cは、使用者が手指等で直接摘む等して操作する部位となる。したがって、ツマミ凸部12cの先端側の一部は、蓋外装部材11の表面よりも若干外部に向けて突出するように形成されている。これにより、使用者は、ツマミ凸部12cを操作することによって、操作ツマミ部材12の摺動操作又は回動操作を行うことができるようになっている。
【0031】
また、円形板状部12aの一面には、二本の溝状部12bが形成されている。この二本の溝状部12bは、蓋部材4の隙間等から流入する水等の流路の一部となるように形成されているものである。円形板状部12aに形成される二つの溝状部12bは、操作ツマミ部材12が蓋部材4に組み込まれた状態において、蓋部材4の開閉操作を行い得る状態(図6に示す状態)となったときには、蓋部材4の短辺に沿う方向に形成されている。
【0032】
一方、円形板状部12aの他面、即ち上記円形板状部12aの一面の反対側の面であって、蓋係止部材13の円形孔13cに対向する側の面には、少なくとも二本の軸部材12dが、内方、即ちカメラ本体2c側に向けて突出するように植設されている。これら二本の軸部材12dは、円形板状部12aの外周縁寄りの部位であって、略同一半径上の部位において、例えば角度略180度離れて互いに相対する位置に設けられている。さらに、これら二本の軸部材12dは、基端側の太径部と、この太径部の先端に形成され、上記太径部よりも細径に形成される細径部12ddとの二段構成の軸部材として形成されている。
【0033】
これに対し、円形孔13cの内部底面には、図5に示すように、二つの円弧状の円周溝部13eが形成されている。これら二つの円周溝部13eは、上記軸部材12dの配置される位置と同一の半径上に形成されている。二つの円周溝部13eの長さは、それぞれが略四分の一周分の長さを有して、互いに対向する位置に形成されている。そして、二つの円周溝部13eの幅は、上記軸部材12dの太径部の直径よりも大きくなるように設定されている。したがって、蓋係止部材13の円形孔13cに操作ツマミ部材12が配置された状態となったとき、二本の軸部材12dは、二つの円周溝部13eに嵌入するようになっている。この状態において、操作ツマミ部材12が回動方向(図7の矢印R2方向)に操作されると、二本の軸部材12dが二つの円周溝部13eに案内されて回動する。そして、このときの回動範囲(回動角度)は、二つの円周溝部13eによって規制されるようになっている。本実施形態では、二つの円周溝部13eは、略四分の一周分の長さとしていることから、操作ツマミ部材12の回動範囲は略四分の一周(回動角度は略90度)となるように設定されている。
【0034】
上記二本の軸部材12dには、それぞれに操作ツマミ部材12を蓋部材4の外方に向けて付勢する付勢部材である操作ツマミ付勢バネ14が巻回されている。
【0035】
蓋係止部材13は、蓋外装部材11の内側面に配設されており、上述したように操作ツマミ部材12の摺動方向への移動に伴って、蓋部材4の長辺に沿う方向(図6の矢印X方向)へと移動自在に構成されている。つまり、蓋外装部材11は、短辺方向の断面が略チャンネル形状(C形状,コの字形状)に形成されていて、長辺方向に延びる壁部11cを有している。蓋係止部材13は、蓋外装部材11の壁部11cにより形成される空間部に収納され、かつ当該壁部11cによって長辺方向(図6の矢印X方向)への移動が許容されている(図5,図6,図7参照)。
【0036】
そして、蓋係止部材13の一面、即ち蓋外装部材11の内側面に対向する面には、長辺方向の他端部寄りの部位であって上記ツマミ配置孔11bに対向する位置に、操作ツマミ部材12が回動自在に配設される円形孔13cが形成されている。この円形孔13cは、操作ツマミ部材12の円形板状部12aと略同形状に形成されている。操作ツマミ部材12は、この円形孔13cに収納配置されるようになっている。したがって、操作ツマミ部材12を蓋部材4の長辺に沿う方向(図6の矢印X方向)に移動させると、蓋係止部材13も同方向に移動するように構成されている。
【0037】
一方、蓋係止部材13の一面には、蓋部材4の隙間等から流入する水等の流路となる複数の溝部(本実施形態では三本の横溝(短辺方向)13aと二本の縦溝(長辺方向)13b)が形成されている。そして、これら複数の溝部(13a,13b)は、短辺方向に延出され長辺方向に所定の間隔を持って複数(三本)並べて形成される横溝13aと、長辺方向に延出され短辺方向に所定の間隔を持って複数(二本)並べて形成される縦溝13bとがある。なお、当該溝部(13a,13b)は、上述の円形孔13c及び係止爪部13d(後述する)の配設部位以外の領域に、上記円形孔13c及び係止爪部13dが配置されている領域を避けて形成されている。
【0038】
他方、蓋係止部材13の先端部には、被係止部である係止爪部13dが形成されている。この係止爪部13dは、当該蓋係止部材13が操作ツマミ部材12の摺動操作に連動して所定の方向(長辺方向。図6の矢印X方向)に移動したとき、カメラ本体2c側に形成される係止部である係止孔2b(図1参照)に対して係合し若しくは係合状態が解除されることで、当該蓋部材4の閉位置を保持し若しくは閉状態を解除する役目をしている。なお、係止爪部13dは、開口2aに対向する面に傾斜部を有して形成されている。
【0039】
このように、蓋係止部材13は、蓋部材4の閉状態を維持するための係止爪部を有することにより蓋係止手段の役目をしていると同時に、複数の溝部(13a,13b)からなる流路を有することにより流路形成手段の一部として機能している。
【0040】
蓋係止部材13が収納された状態の蓋外装部材11の内側面には、蓋内側部材15が配設される。この蓋内側部材15は、蓋外装部材11の壁部11cと接することで、内部に蓋係止部材13を長辺方向に移動自在に収納した状態で一体に形成されている。さらに、蓋内側部材15の内側面には、パッキン部材16配設されている。パッキン部材16は、弾性を有し環状に形成され、押圧されることによって水密性を確保する機能を有する部材である。そのために、パッキン部材16は、蓋部材4の内側面、即ち蓋内側部材15の内側面の外周縁部近傍を取り囲むように配設されている。
【0041】
したがって、蓋部材4が開口2aを閉状態とする閉位置にあるときには、カメラ本体2cの内部開口2dの周縁に密着するようにパッキン部材16が配置される。これにより、内部開口2dは、外部に対し水密状態が保持されるようになっている。このように、蓋部材4が閉状態とされた時には、蓋部材4は、カメラ本体2c側の内部開口2dを水密状態とする。一方、蓋部材4と外装部材2の開口2aとの隙間からの水等の進入は許容されるようになっている。
【0042】
蓋内側部材15の一面(蓋係止部材13,操作ツマミ部材12等に対向する面)には、長辺方向の他端部寄りの部位であって上記蓋係止部材13の二つの円周溝部13eに対向する部位に、操作ツマミ部材12の摺動及び回動を許容すると共に、操作ツマミ部材12の摺動量を規制する有底穴が形成されている。この有底穴は、操作ツマミ部材12の円形板状部12aと略同形状に形成される有底円形穴15aと、この有底円形穴15aに連設され、長辺方向の一端側(蓋部材4の回動基端部側)に向けて延出する有底長円部15dとによって形成されている。
【0043】
上記有底円形穴15aの略中央部分には、凸状部15cが形成されている。この凸状部15cは、高さ寸法が上記有底円形穴15aの深寸法と略同寸法の円柱の一部を切り欠いて形成した突状部である。この凸状部15cの長円状切欠部15ccは、長辺方向の他端側に向けて開口するように形成された長円形状に形成されている。そして、長円状切欠部15ccと上記有底長円部15dとは、蓋内側部材15の長辺方向に延びる同一直線上に配置されている。
【0044】
上記長円状切欠部15cc及び上記有底長円部15dは、蓋係止部材13が操作ツマミ部材12の摺動操作に連動して、図6の矢印X方向(長辺方向)に移動するとき、軸部材12dの太径部及び操作ツマミ付勢バネ14の同方向への摺動をガイドする役目をしている。そのために、長円状切欠部15cc及び有底長円部15dの各幅寸法は、軸部材12dの太径部に巻回される操作ツマミ付勢バネ14の外径よりも大となるように形成されている。
【0045】
また、上記有底円形穴15a内には、二本の軸部材12dの細径部12ddの先端がそれぞれ嵌合する二つの有底穴15bが穿設されている。この二つの有底穴15bは、上記有底円形穴15a内において、外周縁寄りの部位であって上記凸状部15cを挟んで対向するように円周方向に角度略180度離れた位置で、かつ上記長円状切欠部15ccと上記有底長円部15dとを結ぶ長辺方向の直線に直交し上記有底円形穴15aの中心を通る直線上に配置されている。この有底穴15bの直径は、軸部材12dの太径部の直径及び操作ツマミ付勢バネ14の内径よりも小径となるように、かつ同軸部材12dの細径部12ddの直径よりも大径となるように形成されている。
【0046】
このように構成された本実施形態の防水機器であるカメラ1において、主に蓋部材4の作用を以下に説明する。
【0047】
まず、カメラ1の蓋部材4が閉位置にある時、蓋係止部材13の係止爪部13dは、カメラ本体2cの係止孔2bに係止された状態となっている。このように、係止爪部13dが係止孔2bに係止されていることにより、蓋部材4の閉位置が維持されている。
【0048】
また、蓋部材4が閉位置にある時、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cは、図2〜図6に示す状態にある。この状態にあるとき、操作ツマミ部材12の二つの溝状部12bは、蓋部材4の長辺方向に対して直交する方向に配置されている。また、このとき、操作ツマミ部材12の二本の軸部材12dは、図4,図5に示す位置、即ち蓋部材4の長辺方向に並ぶように配置されている。そして、操作ツマミ部材12は、操作ツマミ付勢バネ14の付勢力によって蓋内側部材15から外方(矢印Yとは反対方向)へ向けて付勢され、円形板状部12aの一面が蓋外装部材11の内側面に当接した状態で付勢規制されている。
【0049】
ここで、蓋部材4が閉位置にあって、かつ操作ツマミ部材12が図2〜図6に示す状態にあるとき、即ち、カメラ1を通常使用する際の状態にあるときの操作ツマミ部材12の位置を通常位置というものとする。そして、ツマミ部材12が通常位置にあるときに、操作ツマミ部材12を用いて行われる操作は、後述するように図6の矢印X方向への移動を伴う蓋部材4の開閉操作である。この操作を通常操作と言う。そして、操作ツマミ部材12は、通常操作以外の異なる操作、即ちツマミ凸部12cの回動操作を行うことで、後述するメンテナンス操作を行うことができる。この場合には、操作ツマミ部材12は、上記の回動操作に加えて、通常操作時の移動方向(図6の矢印X方向)に対して垂直となる方向(図7の矢印Y方向)への移動を伴う。このように、操作ツマミ部材12は、図6の矢印X方向への移動と、図7の矢印R方向への回動及び同図7の矢印Y方向への移動が可能なように構成されている。
【0050】
本カメラ1は、上述したように、所定の条件下での水中でも使用し得るものである。したがって、本カメラ1を水中にて使用する場合、上記構成により、蓋部材4と外装部材2の開口2aとの隙間や蓋部材4のツマミ配置孔11b等を介して、蓋部材4の内側空間に対しては水等の浸入が許容されている。ここで、蓋部材4の内側空間に水等が流入する際に、該水等に混入した砂泥等の固形の異物等が共に流入することもあり得る。一方、カメラ本体2cの内部開口2dは、パッキン部材16によって確実な水密状態とされている。したがって、上述の如く、蓋部材4の内側空間に流入した水等は、内部開口2dからカメラ本体2cの内部に流入することはない。
【0051】
なお、カメラ1を水中等で使用した後には、蓋部材4の内側空間に侵入した水等を排出させる必要がある。そのために、水中使用後のカメラ1は、いわゆる水切り動作を行って、蓋部材4と外装部材2の開口2aとの隙間や蓋部材4のツマミ配置孔11b等を介して蓋部材4の内側空間に侵入した水等を外部へと排出させるといったことが行われる。
【0052】
この場合において、本カメラ1においては、操作ツマミ部材12を所定の方向に回動操作することにより、内部空間の水,異物等の外部への排出を容易なものとするメインテナンス操作を行なうことができるようになっている。
【0053】
即ち、本カメラ1の蓋部材4が閉位置にある状態において、かつ操作ツマミ部材12が図2〜図6に示す通常位置にある時、使用者は、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cを、図7に示す矢印R2方向に回転角度にして略90度だけ回動操作した位置(図7に示す状態)に変位させる。すると、操作ツマミ部材12の二本の軸部材12dの細径部12ddのそれぞれは、二つの有底穴15bの各対向する位置にそれぞれ配置される。
【0054】
こうして図7に示す状態とされた時には、操作ツマミ部材12の円形板状部12aに形成される二つの溝状部12bは、図8〜図10に示すように蓋部材4の長辺に沿うように配置されることになる。そして、この状態において二つの溝状部12bは、蓋係止部材13の縦溝13bに連続した状態となっている。
【0055】
つまり、操作ツマミ部材12が回動操作されて、蓋部材4の通常位置から上述の図7に示すメンテナンス位置に変位すると、操作ツマミ部材12の二本の溝状部12bと蓋係止部材13の二本の縦溝13bとが連設状態(連続状態)となって、蓋部材4の内部空間に長辺方向に延びる二本の流路が形成されるようになっている。これらの二本の流路(縦溝13b)は、複数の横溝13aと直交することで、マス目状の流路を形成している。
【0056】
なお、操作ツマミ部材12の通常位置からメンテナンス位置への回動方向は、図7における矢印R2方向における正逆いずれの方向でもよい。本実施形態のカメラ1においては、通常位置からメンテナンス位置へと変位させる場合の回動方向としては、上述した二つの円周溝部13eの配置(図5等を参照)に従って、図7の矢印R2に沿う方向において蓋部材4の外面側から見たときの反時計方向(図7の矢印R2a方向)としている。この場合において、二つの円周溝部13eは、二本の軸部材12dの回動方向及び回動量(回動角度)を規制する役目をしていることになる。
【0057】
さらに、使用者は、この状態において操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cを、蓋部材4の外方側から内側に向けて、即ち図7の矢印Y方向に向けて操作ツマミ付勢バネ14の付勢力に抗して押圧する。これにより、軸部材12dの細径部12ddが有底穴15bに嵌合配置された状態になる。ここで、有底穴15bは、操作ツマミ部材12の回動移動の際の案内をすると共に、操作ツマミ部材12が有底穴15bに嵌合している状態で図6の矢印X方向に移動すると、操作ツマミ部材12が蓋内側部材15を同方向へと移動させるようになっている。
【0058】
操作ツマミ部材12が矢印Y方向に押圧された状態になると、図9,図10に示すように、操作ツマミ部材12の円形板状部12aの外方に向く面と蓋外装部材11の内側面との間に隙間空間Sが生じる。この隙間空間Sはツマミ配置孔11bに連接している。したがって、蓋部材4の外部と蓋部材4の内部空間の上記流路との間においては、図9,図10の矢印Wに示すように、水等の流入排出がより容易な状態となる。使用者は、この状態、即ち操作ツマミ部材12を矢印Y方向に押圧した状態のカメラ1を、真水等を張った容器に出し入れするといった行為を行うことにより、蓋部材4の内部空間に侵入した砂泥等を洗い流すメンテナンス操作を行うことができる。
【0059】
そして、ツマミ凸部12cへの矢印Y方向への押圧力が解除されると、操作ツマミ部材12は、操作ツマミ付勢バネ14の付勢力によって外方(矢印Yとは反対方向)へと移動し、円形板状部12aの一面が蓋外装部材11の内側面に当接した状態になり、この状態となることで操作ツマミ部材12は付勢規制される。この状態で、ツマミ凸部12cを矢印R2方向であって、矢印R2aとは反対方向に回動操作することで、操作ツマミ部材12を通常使用位置に復帰させることができる。
【0060】
一方、蓋部材4が閉位置にあって、操作ツマミ部材12が通常使用し得る位置にある状態(図6等に示す状態)において、操作ツマミ部材12を蓋部材4の長辺方向であって図6の矢印X1方向に摺動させると蓋係止部材13も同方向に移動する。このとき、蓋内側部材15に対して操作ツマミ部材12の二本の軸部材12dは、長円状切欠部15cc,有底長円部15dに沿って移動し得るようになっている。これにより、操作ツマミ部材12の同方向(蓋部材4の長辺方向)への移動が許容されている。
【0061】
このようにして、操作ツマミ部材12及び蓋係止部材13がを図6の矢印X1方向に摺動移動すると、蓋係止部材13の係止爪部13dとカメラ本体2cの係止孔2bとの係合状態が解除される。これにより、蓋部材4は、全体として図1に示す矢印R1に沿って回動し得る状態になる。したがって、蓋部材4を閉位置から図1に示す開位置へと変位させることができる。このようにして、蓋部材4が開位置に配置された状態では、開口2a,2dが開放された状態になるので、カメラ本体2c内に収納されている記録媒体や電池等を挿抜することができるようになる。
【0062】
この状態から蓋部材4を閉位置に変位させるには、蓋部材4を図1の矢印Rに沿う方向に回動させ、蓋部材4を所定の閉位置に配置する。この場合において、係止爪部13dが外装部材2の開口2aの周縁部に当接させた状態で、蓋部材4を開口2aの方向に押し込むと、係止爪部13dに形成された傾斜部の作用により、蓋係止部材13は一旦長辺方向において係止爪部13dが引き込まれる方向(図6の矢印X1と同方向)へと移動する。これにより、係止爪部13dの突出が一時的になくなるので、蓋部材4は開口2a内に収納された形態に配置される。この状態においては、係止爪部13dが係止孔2bに対向する位置に配置されている。したがって、この状態において、操作ツマミ部材12を長辺方向の図1の矢印X1とは反対方向に摺動させると、係止爪部13dは係止孔2bに係合される。これによって、蓋部材4は、閉位置に配置され、その状態が保持される。
【0063】
以上説明したように上記一実施形態によれば、カメラ1における蓋部材4が閉位置にある状態において、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cは、図6に示す矢印X方向への摺動操作と、図7に示す矢印R2方向への回動操作とのいずれかの操作を行なうことができるように構成している。
【0064】
そして、蓋部材4を閉位置から開位置(図1の状態)にする際には、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cを図6の矢印X方向へ摺動操作する通常の操作を行う。この操作により、蓋部材4の係止爪部13dとカメラ本体2cの係止孔2bとの係合状態を解除することができる。
【0065】
一方、例えば水中使用後のカメラ1においては、蓋部材4の内側空間に水等と共に上記砂泥等が入り込んでいる可能性があるためメンテナンス操作を行う必要がある。この場合には、蓋部材4が閉位置にある状態において、操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cを図7の矢印R2方向へ回動操作し、図7の状態においてさらに矢印Y方向への押圧操作を行う。ツマミ凸部12cについて、この状態を保持したまま、例えば真水等を張った容器に出し入れする等を行う。このような操作により、蓋部材4の内部空間に侵入した砂泥等が洗い流される。
【0066】
即ち、蓋部材4を開閉する際に用いられる操作ツマミ部材12の操作方向を、通常の開閉操作時とは異なる方向としたとき、蓋部材4の外部と内部との間に流路を形成するように構成したので、メンテナンス操作を行う際に、通常行われる単純な水切りアクションによっては容易に排出し得ないような砂泥等をも、容易に排出させることができる。
【0067】
換言すれば、操作ツマミ部材12(操作部材)の通常の操作による方向(図6の矢印Xに沿う摺動方向)とは異なる方向(図7の矢印R2に沿う回動方向)に操作ツマミ部材12のツマミ凸部12cを回動移動させると、カメラ1(防水機器)の外部と操作ツマミ部材12(操作部材)を収納している空間(蓋部材4の内部空間)とを結び、操作ツマミ部材12とツマミ配置孔11b(外装部材の一部を構成する蓋外装部材11の開口)との間に流路が形成される。したがって、操作ツマミ部材12は流路形成手段としての役目をしている。また、この流路の形成により溝状部にかかる水圧のため、この溝状部以外の、蓋外装部材11の面と蓋係止部材13の面とが摺接するわずかな隙間にも、その水圧がかかり、このわずかな空間部分に入り込んだ砂,塵等を洗い流すことができる。
【0068】
このように、操作ツマミ部材12は、通常使用時とは異なる方向への移動操作を行うことで、通常使用時よりも大きな流路を形成させることができる。このような構成の蓋部材4を適用することにより、カメラ1の使用後等に行われる保守操作(メインテナンス操作)のうち、例えば蓋部材近傍及び所定の内部空間や外装部材に附着した砂泥等を水洗し除去する等の操作を、短時間で済ませることができ、よって、カメラ1のメンテナンス性を向上させることに寄与することができる。
【0069】
なお、上記一実施形態においては、カメラ1の蓋部材4としては、記録媒体やバッテリ等の収納室の開口2aを開閉する部材として例示しているが、本発明の構成は、この例に限られることはない。蓋部材4が開閉を行う対象とする開口の例としては、このほかにも例えばUSBやHDMI等、カメラ1と外部機器との間を接続するための接続用コネクタが配設される部位に形成される開口等が考えられる。そのような場合にも、本発明の蓋部材4の構成は、全く同様に適用することができる。また、本願説明において、防水カメラを前提に説明したが、これに限らず、例えば防滴程度の性能のカメラ等の機器に用いてもよい。
【0070】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、上記一実施形態によって例示されるデジタルカメラに限られることはなく、防水機能を備えると共に外装部材に対して可動する蓋部材等を具備する他の形態の防水機器、例えば携帯電話,録音機器,電子手帳,パーソナルコンピュータ,ゲーム機器,テレビ,時計,GPS(Global Positioning System)を利用したナビゲーション機器等、各種の防水機器に対しても全く同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1……カメラ
2……外装部材
2a……開口
2b……係止孔
2c……カメラ本体
2d……内部開口
4……蓋係止部材
4……蓋部材
11……蓋外装部材
11a……貫通孔
11b……ツマミ配置孔
11ba……円形部
11bb……方形部
11c……壁部
12……操作ツマミ部材
12a……円形板状部
12b……溝状部
12c……ツマミ凸部
12d……軸部材
12dd……細径部
13……蓋係止部材
13a……横溝
13b……縦溝
13c……円形孔
13d……係止爪部
13e……円周溝部
14……操作ツマミ付勢バネ
15……蓋内側部材
15a……有底円形穴
15b……有底穴
15c……凸状部
15cc……長円状切欠部
15d……有底長円部
16……パッキン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水機器において、
上記防水機器を操作するための可動な操作部材と、
上記防水機器に設けられ、上記操作部材の一部を外部に露出させるための開口を有する外装部材と、
上記操作部材の通常の操作による方向とは異なる方向に上記操作部材を移動させると、上記防水機器の外部と上記操作部材を収納している空間とを結び上記操作部材と上記開口との間に流路を形成する流路形成手段と、
を具備したことを特徴とする防水機器。
【請求項2】
上記外装部材は、上記防水機器の蓋部材であり、
上記操作部材は、上記蓋部材に設けられた蓋係止部材を移動させる操作ツマミを有し、
上記操作部材の通常の操作による方向とは異なる方向とは、上記係止部材の移動方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項1に記載の防水機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8272(P2012−8272A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142958(P2010−142958)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】