説明

防汚塗膜およびそれで被覆された家電筐体および便座

【課題】従来技術では、シリコーン成分の多くが塗料を構成する有機高分子に固定されているため塗膜表面にブリードしにくく、局所的に防汚性および耐摩耗性の悪いところがあるという課題があった。
【解決手段】基材表面上に有機高分子とシリコーン成分とから構成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子に固定したシリコーン成分と遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜とするもので、塗膜表面に有機高分子と反応し固定されたシリコーン成分が配列し、そして固定されたシリコーン成分が存在しないところには遊離したシリコーン成分が入り込むため塗膜表面に均一にシリコーン成分が配列し、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な物質表面に形成できる耐摩耗性が高く、防汚性が高い防汚塗膜に関するものであり、特にポリプロピレン製の家電筐体や便座表面を保護するとともに防汚性を付与することができる防汚塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、自動車用防汚塗料や、船舶、港湾施設、パイプライン、橋梁などの水中構造物の防汚塗料として、シリコーン成分を含むポリウレタン塗料などを用いて、防汚性を有する塗膜を形成させていた。また、ポリプロピレン製の便座では、ポリプロピレン樹脂に混練によりシリコーン成分を含有させたり、ポリプロピレン樹脂表面にフッ素樹脂のような低表面エネルギーの樹脂フィルムを張り付けたりし、防汚性を付与していた。
【0003】
特許文献1によると、シリコーン成分を含有するウレタン系塗料を用いて、水中構造物表面に防汚塗膜を形成する方法を開示している。またこの中で、ウレタン系塗料を塗布する前にエポキシ系の下塗りプライマー塗膜を設けることを推奨している。また、特許文献2によると、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの低表面エネルギー層(フィルム)を便座表面へ設けることで防汚性を高めた便座を実現している。
【特許文献1】特開2006−45339号公報
【特許文献2】特許第3838371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、シリコーン成分の多くが塗料を構成する有機高分子に固定されているため塗膜表面にブリードしにくく、局所的に防汚性および耐摩耗性の悪いところがあるという課題があった。また、ポリプロピレン(以下、PPと記載)製の基材へ防汚塗膜を形成しようとすると、PPは反応点を有しないため、従来の防汚塗料では密着性が悪いという課題があった。なお、特許文献1にあるようなエポキシ系プライマーを用いても、エポキシ樹脂とPPとの密着性が悪いため、エポキシ系プライマーを用いても密着性は依然として悪い状態である。
【0005】
また、特許文献2のように樹脂フィルムを基材と一体成型することで得られた防汚膜は、基材がPPの場合、樹脂フィルムがPPである場合を除いては密着性が弱く、特にポリテトラフルオロエチレン樹脂(一般にPTFEとよばれる)フィルムを用いるとPPとは密着せず、剥がれてしまうという課題があった。また、PTFEに柔軟性を付与し、かつ防汚性と密着性とを両立させるためフッ素樹脂の一種であるテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合樹脂(一般にETFEとよばれる)フィルムを用いると、油性成分が染み込んでしまい、長期間放置すると黄ばみ汚れの原因となるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、基材表面上に有機高分子とシリコーン成分とから構成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子に固定したシリコーン成分と遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜とするもので、塗膜表面に有機高分子と反応し固定されたシリコーン成分が配列し、そして固定されたシリコーン成分が存在しないところには遊離したシリコーン成分が入り込むため塗膜表面に均一にシリコーン成分が配列し、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を実現できる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本願発明は、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を実現できる。また、この形成した塗膜により表面への傷付きを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の発明は、基材表面上に有機高分子とシリコーン成分とから構成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子に固定したシリコーン成分と遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜とするもので、塗膜表面に有機高分子と反応し固定されたシリコーン成分が配列し、そして固定したシリコーン成分が存在しないところには遊離したシリコーン成分が入り込むため塗膜表面に均一にシリコーン成分が配列し、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を実現でき、さらにそれを用いて高い防汚性と耐摩耗性を有するPP製の家電筐体や便座を実現できる。さらには、この塗膜を被覆したPPに光沢感やツヤを付与することで意匠性を向上させることができる。
【0009】
また、第2の発明は、有機高分子に固定したシリコーン成分の一部は、反応性シリコーンオイルを反応させ固定したものである請求項1記載の防汚塗膜とするもので、添加した反応性シリコーンオイルの一部を有機高分子に固定することで過剰なブリードを防ぐことができ、長期間防汚性能が持続する防汚塗膜を実現できる。
【0010】
また、第3の発明は、遊離したシリコーン成分は、反応性シリコーンオイルのうち未反応なシリコーンオイルである請求項1もしくは2いずれか1項に記載の防汚塗膜とするもので、非反応性シリコーンを別で添加することなく遊離したシリコーン成分を作り出すことができ、また反応性シリコーンオイルの反応基が極性を有するので防汚塗膜中の極性を有している部分にも入り込むことができるため、塗膜表面に均一にシリコーン成分が配列し、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を実現できる。
【0011】
また、第4の発明は、シリコーン成分を含有するアクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料もしくはそれらの混合塗料のいずれかに反応性シリコーンオイルを添加した塗料を基材に塗布し乾燥、硬化させて形成する請求項1〜3いずれか1項に記載の防汚塗膜とするもので、アクリル系塗料とウレタン系塗料はシリコーン成分とウレタン結合を作ることで反応し、エポキシ系塗料もシリコーン成分と高い反応性を示す一方で、これら塗料は様々な基材とも高い密着性を示し、特に変性ポリプロピレンとも反応するため、様々な基材に防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜を簡便に実現できる。
【0012】
また、第5の発明によると、シリコーン成分を含有するアクリル系塗料は、アクリル変性シリコーン樹脂を含む主剤とポリイソシアネートを含む硬化剤とが架橋反応により有機高分子を形成する二液硬化型塗料で、反応性シリコーンオイルは前記ポリイソシアネートと反応性を有する請求項4記載の防汚塗膜とするもので、アクリル変性シリコーン樹脂は防汚性、耐熱性が高く、様々な基材とも高い密着性を示し、特に変性ポリプロピレンとも反応するため、様々な基材に防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜をさらに簡便に実現できる。
【0013】
また、第6の発明は、反応性シリコーンオイルは片末端ジオール変性シリコーンオイルである請求項2〜5いずれか1項に記載の防汚塗膜とするもので、両末端変性の反応性シリコーンオイルでは反応性が強く遊離したシリコーン成分が少なくなってしまい、側鎖変性の反応性シリコーンオイルでは反応性が弱くシリコーン成分を有機高分子に固定できなくなるため片末端変性の反応性シリコーンオイルが最適で、またイソシアネートと反応性を有し安価で簡便に入手可能なことからジオール変性のシリコーンオイルを用いることで、防汚性と耐摩耗性の高い防汚塗膜をさらに簡便に実現できる。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、基材はポリプロピレン表面上にプライマー層を形成した
もので、前記プライマー層は非結晶性ポリプロピレンを変性させた変性ポリプロピレンを含有した請求項1記載の防汚塗膜とするもので、変性ポリプロピレン(以下、変性PPと記載)はPPの一部にマレイン酸やオレイン酸などのカルボン酸を導入したもので、反応性を有するカルボキシル基を持つため、有機高分子とシリコーン成分とから構成される防汚塗膜と反応することで強固な密着を作り、一方、変性PPの一部がPPと相溶し、特に変性PPの結晶性が小さいほどPPに侵入しやすいため、プライマー層とPPとも強固な密着を作ることでPPとの密着性が高い防汚塗膜を実現でき、さらにそれを用いて高い防汚性と耐摩耗性を有するPP製の家電筐体や便座を実現できる。
【0015】
また、第8の発明は、プライマー層は可視光線を50%以上透過する請求項7記載の防汚塗膜とするもので、PPの色や模様などを反映させた高い防汚性と耐摩耗性を有する防汚塗膜を実現できる。
【0016】
また、第9の発明は、変性ポリプロピレンは少なくとも完全非結晶性ポリプロピレンを変性させた変性ポリプロピレンを含む請求項7記載の防汚塗膜とするもので、変性PPの一部がPPと相溶し、特に変性PPの結晶性が小さいほど基材となるPPに侵入しやすいため、プライマー層とPPとも強固な密着を作ることができるのだが、これまでは完全非結晶性ポリプロピレンを作ることができなかったが、近年メタロセン触媒の実用化が進み完全非結晶性のポリプロピレンを作ることができるようになったため、それを変性させプライマー層とすることで、さらにPPとの密着性が高い防汚塗膜を実現できる。
【0017】
また、第10の発明は、抗菌剤を含む請求項1〜9いずれか1項に記載の防汚塗膜とするもので、防汚性に加えて抗菌性を付与することができ、特に便座などへ応用した場合に抗菌性と防汚性をあわせ持つクリーン便座を実現することができる。
【0018】
また、第11の発明は、請求項1〜10いずれか1項に記載の防汚塗膜に被覆された防汚性を有する家電筐体とするもので、PP製の筐体に防汚性を付与することができ、コーヒー、お茶、味噌汁など食品由来の汚れが付きにくく、また付いても除去しやすい防汚性の高い炊飯器、電気湯沸かし器などを実現することができる。
【0019】
第12の発明は、請求項1〜10いずれか1項に記載の防汚塗膜に被覆された防汚性を有する便座とするもので、PP製の便座に防汚性を付与することができ、防汚性の高い便座を実現することができる。特に、便座の裏には尿などの跳ね返りが飛散するが、乾いたトイレットペーパーで簡単に汚れを取り除くことができ、掃除の手間を省けるという効果がある。また、便座裏に付着した尿などに気付かずに放置され、それが乾燥してしまった汚れに対しても、軽い力で簡単に取り除くことができるという効果がある。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における防汚塗膜の模式断面図である。基材1に防汚塗膜2が化学的結合もしくは物理的結合もしくはアンカー効果により密着している。防汚塗膜2は有機高分子3と有機高分子3に固定したシリコーン成分4と遊離したシリコーン成分5からなる。有機高分子3は、炭化水素系や芳香族系の有機化合物が架橋反応により三次元構造を取っているものである。なお、有機高分子3は図1では模式的に表したものであり、実際は図1に示すように全て直線ではなく、また全ての有機高分子3が防汚塗膜表面に対して平行もしくは垂直に限定されるものではなく、その大きさも図の限りではない。固定したシリコーン成分4は有機高分子3に化学反応により結合している。固定したシリコーン成分4は、架橋反応させる前に予め有機高分子3に固定したシリコーン成分4と、架橋反応時に反応性シリコーンオイルを添加し有機高分子3に反応させることで固定したシリコーン成分4との2種類のものを含む。これは、予め有機高分子3に固定したシリコーン成分4だけでは、シリコーン成分が有機高分子3に固定されているため、防汚塗
膜2の表面に析出される量が少なく防汚性能が高くないという課題を解決するためである。シリコーンオイルは液体であるため、有機高分子3内部を比較的自由に動くことができ、一般的に樹脂とはなじみが悪いため、その多くは防汚塗膜2の表面近傍に移動し、反応により有機高分子3に固定される。また、反応性シリコーンは全てが反応に寄与せず、有機高分子3に固定されなかったシリコーンオイルは遊離シリコーン成分5となって有機高分子3隙間に存在し、これも比較的防汚塗膜2表面に移動する。遊離シリコーン成分5は有機高分子3に固定されていないため、防汚塗膜2形成後も徐々に防汚塗膜2表面へ移動していく。特に、防汚塗膜2表面の固定したシリコーン成分4が存在しないところを埋めるように移動する。そのため、防汚塗膜表面がシリコーン成分に覆われ、汚れが付着しにくく、また付着しても除去しやすいという防汚性が得られる。なお、図1中で固定したシリコーン成分4および遊離したシリコーン成分5を楕円で表したが、実際はこの形、大きさに限定されるものではない。
【0021】
次に、防汚性について説明する。本発明で示す防汚とは、水やアルコールあるいは油や有機溶剤などに固形物が溶解もしくは分散している汚れを付着しにくくする、もしくは付着した汚れを除去しやすくする、もしくは液体が乾燥することで溶解または分散していた固形物が析出した乾燥汚れを除去しやすくするというものである。このような汚れとしては、コーヒー、お茶、味噌汁、油、醤油、ソース、ドレッシング、野菜汁、果汁などの食品由来の汚れやマジック、ペンキなどの汚れ、あるいは糞便や尿の汚れなどが挙げられ、本発明の防汚塗膜はこれらの汚れに対して高い防汚効果を示し、特に上記汚れが乾燥した汚れを乾拭きで拭き取る場合に高い効果を発揮する。
【0022】
防汚の原理は、シリコーン成分の撥水性、撥油性を利用したものである。シリコーン成分は撥水・撥油性を有しており、水やアルコールあるいは油や有機溶剤などをはじくため汚れは付着しにくくなり、また付着した汚れも除去しやすい。また、汚れに含まれる液体が乾燥し溶解もしくは分散していた固形分が汚れとして付着したものは、固形分が無機物の場合、撥水性であると結合力が小さくなり除去しやすくなる。したがって、より撥水・撥油性の高いフッ素成分を含有させることでさらに防汚効果が高くなることが予想されるが、一般的にフッ素成分は他の物質となじみにくいため、均一に含有させるためにはさらなる工夫が必要である。また、フッ素樹脂は帯電しやすいためホコリが付着しやすく、ホコリ対する防汚性は期待できないという課題がある。なお、市販のアクリルシリコーン系塗料から形成する防汚塗膜2は、遊離したシリコーン成分5の含有率が小さいため防汚塗膜2表面にはシリコーン成分が存在しない部分が多く、本発明の防汚塗膜2と比較して防汚性能は高くない。
【0023】
次に、防汚塗膜の作製方法について説明する。アクリルシリコーン系塗料あるいはウレタンシリコーン系塗料など、防汚性をもつシリコーン成分を含有する塗料を用いる。本実施の形態1では、アクリル変性シリコーン樹脂を含む主剤とポリイソシアネートを含む硬化剤とが架橋反応し、防汚塗膜を形成するアクリルシリコーン系二液硬化型塗料を用いた。塗料の主剤と硬化剤と反応性シリコーンオイルとを混合し、攪拌を行った。このとき、主剤と硬化剤との比率は塗料によって異なっているが、大よそ5:1〜2:1程度である。また、反応性シリコーンオイルは主剤と硬化剤とを混合したもの100gに対し、1g〜10g(1〜10重量部)程度の添加が望ましい。これは、添加量が少ないと遊離したシリコーン分5が少なくなるため防汚効果が小さくなり、多いと遊離したシリコーン成分が多くなり防汚塗膜表面に浮き出てくるため、防汚塗膜表面がシリコーンオイルで濡れたようになってしまうという課題がある。
【0024】
アクリルシリコーン系二液硬化型塗料の主剤と硬化剤とを5:1で混合し、それに反応性の片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌し、基材1に塗布した。その後、十分に塗料に含まれる有機溶剤を蒸発乾燥させた後、シリコーン成分を防汚塗膜
2表面にブリードさせる目的と、添加した片末端ジオール変性シリコーンオイルの一部を有機高分子3に反応させる目的でエージングを行う。エージング条件は塗料によって異なっているが、本実施の形態で用いたアクリルシリコーン系塗料では100℃程度の温度で1〜2時間程度が望ましい。なお、塗布方法は、ディップ、スプレー、スピンコーター、スクリーン印刷、ローラー塗り、ハケ塗りなどが可能で、特に限定されるものではない。膜厚も特に限定されるものではないが、乾燥後膜厚として5μm〜30μm程度が望ましい。これより薄いと、擦ることによって防汚塗膜が破れやすくなり、またこれより厚いと基材1との密着力が低下することとなる。
【0025】
このとき、アクリルシリコーン系二液硬化型塗料に抗菌剤(図示せず)を添加し、防汚塗膜2中に抗菌剤を分散させることができる。抗菌剤はワサビなどの有機系のものや、銀・亜鉛・銅などの無機系のものがあるが、有機系のものは防汚塗膜成形時に有機溶剤で変質してしまう可能性あるので本発明では無機系の抗菌剤が望ましい。無機系の抗菌剤としては、東亞合成社製の銀系無機抗菌剤「ノバロン」(登録商標)やシナネンゼオミック社製の向き抗菌剤「ゼオミック」(登録商標)などが挙げられ、これらは防カビ効果も期待できる。なお、抗菌剤はこれらに限定されるものではなく、防汚塗膜2に分散し、抗菌効果が発揮できれるものであればよい。
【0026】
次に耐摩耗性について説明する。汚れが防汚塗膜2に付着した場合、布、ゾウキン、タオル、紙などの拭き取り物で拭き取るが、汚れと拭き取り物との両方とも乾燥している場合、拭き取り物が防汚塗膜2表面の汚れが付着していない箇所も擦ることになり、シリコーン成分が擦り取られる、あるいは防汚塗膜を形成する有機高分子3ごと擦り取られることとなる。このとき、表面のシリコーン成分が多いほど滑り性が大きくなり、擦り取られにくくなる。また長期的には、防汚塗膜2内部に遊離したシリコーン成分5があると、防汚塗膜2表面でシリコーン成分が擦り取られても、防汚塗膜2内部から表面へブリードしてくるため、摩擦により防汚性能がいったんは低下しても、一定時間後に防汚性能が回復することができる。特に、100℃程度に加温することにより防汚性能を回復するまでの時間を短縮することができる。
【0027】
このようにして作製した防汚塗膜は、コーヒー、お茶、味噌汁など食品由来の汚れやマジック、ペンキなどの汚れ、あるいは糞便や尿の汚れなどを付きにくくし、また付いて乾燥しても除去しやすくするなどの高い防汚効果を有し、防汚効果が求められる様々な製品や部品に用いることができる。
【0028】
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態における防汚塗膜の模式断面図である。基材は、ポリプロピレン(以下、PPと記載)分子12からなるPP11上にプライマー層13を形成したものである。プライマー層13は塩素化PPあるいはPPの一部にマレイン酸やオレイン酸などのカルボン酸を導入した変性PPからなるが、塩素化PPを用いた場合、塩素が脱離し遊離してしまい、周りの金属などを腐食させる可能性があるので、周りに金属製の部品等がある場合、変性PPからなるものが望ましい。したがって、プライマー層13は変性PP分子14からなり、その一部がPP表面15からPP11内部へ侵入し、PP分子12と絡み合うことで密着性を発揮する。よって、変性PPは結晶部分が少ない変性PPの方がPP11内部へ侵入しやすいため、非結晶性PPを使うことが望ましい。また、これまでの非結晶性PPはチグラー・ナッタ触媒を用いて作るアタクチックPPであったが、結晶部分が残ってしまい完全非結晶のPPを実現することができなかった。しかしながら、変性PPの基になるPPをメタロセン触媒を用いて作製したものは、分子構造の制御がしやすく、結晶部分のない完全非結晶性のPPを作製することができる。この完全非結晶性PPをカルボン酸変性させることで得られる変性PPは結晶部分がないため、PP11内部へ侵入することがさらに容易で、非常に強力な密着性が得られる。また、防汚
塗膜16は図1の防汚塗膜2をさらに簡略化した模式図であり、有機高分子18とシリコーン成分19からなる。有機高分子18とシリコーン成分19との関係は実施の形態1と同様であり、遊離したシリコーン成分と有機高分子に固定されたシリコーン成分とを含む。そして、防汚塗膜16を形成する有機高分子18がプライマー層表面17で変性PPの極性基と化学反応により結合し、高い密着性を維持している。
【0029】
上記プライマー層の作製方法について記載する。PP11に、トルエン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチルなどの有機溶剤に、非結晶性の変性PPあるいは塩素化PPを溶かした一般にプライマーと称される塗料を塗り、有機溶剤を蒸発乾燥させ、プライマー層13を作製することができる。厳密には、プライマーに含まれる変性PPの分子量や変性率、変性させるために用いたカルボン酸の種類、変性前のPPの違いなどによって、PPとの密着性や防汚塗膜16との密着性が変わってくる。変性前のPPの結晶性が低い方がPP11との密着性が向上し、また変性率高い方が防汚塗膜16との密着性が向上する。一方で、変性率を高めると着色したり、機械物性が低下したりするなどの課題があり、適度な変性が望ましい。また、焼成温度や時間などによって密着性が変化する。プライマーを塗布後、常温から40℃程度で数分間乾燥させ、その後防汚塗料を塗布することが望ましい。また、プライマーの種類によってはウェットオンウェットが可能なものもある。プライマーを塗布すると、変性PPを溶かした有機溶剤の一部がPP11に染み込み、有機溶剤が乾燥すると、上述したように変性PP分子14がPP分子12に絡み合い、PP11とプライマー層13とが密着した状態となる。塗布方法は、ディップ、スプレー、スピンコーター、スクリーン印刷、ローラー塗り、ハケ塗りなどが可能で、特に限定されるものではない。膜厚も特に限定されるものではないが、1μm〜20μm程度が望ましい。薄すぎても厚すぎても、密着力が低下する原因となる。
【0030】
次にこの上に防汚塗膜16を形成する工程になるが、この工程は実施の形態1で示したものと同様であり、抗菌剤の添加も同様に行うことができる。なお、防汚塗膜のエージング時にプライマー層13の焼成も同時行われ、PP11との密着性も向上する。また、有機高分子18と変性PP分子14との反応も進み、プライマー層13と防汚塗膜16との密着力が向上する。
【0031】
このようにして作製した防汚塗膜はPPとの密着性が高く、コーヒー、お茶、味噌汁など食品由来の汚れやマジック、ペンキなどの汚れ、あるいは糞便や尿の汚れなどを付きにくくし、また付いて乾燥しても除去しやすくするなどの高い防汚効果を有し、炊飯器やジャーポットなどの筐体、あるいは便座などPP製で防汚効果が求められる様々な製品や部品に用いることができる。
【0032】
(実施の形態3)
図3は本発明の第3の実施の形態における洋式トイレの外観模式図である。洋式トイレは、使用者が座るための便座21が便器22の上部に設置され、開閉できる便蓋23等から構成されている。なお、便器22上部に設置される便座21は温水洗浄便座であっても良い。その場合、水道から洗浄水の供給を受けるための給水配管(図示せず)および壁面のコンセントから電源供給を受けるための電気ケーブル(図示せず)が備えてある。
【0033】
便座21は、座る人の荷重に耐えたり、酸・アルカリ・アルコール等を含むトイレ用洗剤に耐えたりできるよう、PP製であることが多い。PPは一般的に防汚性に優れるが、油脂成分をよく染み込んでしまうという欠点がある。よって、便座21、特に裏側の普段目立たないところに尿や便等が付着すると、その油脂成分が染み込み、黄ばみ汚れの原因となる。また、それら汚れが乾いてしまうと、乾拭きでは除去しにくいという問題もある。
【0034】
本実施の形態では、PP製の便座21表面に、完全非結晶性PPに無水マレイン酸を2%変性させた変性PPを主成分とするプライマーをスプレーで塗布し、常温で10分間乾燥後、片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加したアクリルシリコーン系二液硬化型塗料を塗り、常温で3分程度乾燥後、100℃で60分間乾燥、エージングを行い、防汚塗膜を形成させた。なお、便座21は曲面や出っ張り部分などがあるため、塗布方法はスプレーもしくはディップが望ましく、これらの方法により均一に斑なく塗布することができる。
【0035】
次に、防汚性について記述する。使用者が便座21に座り、小便あるいは大便を行うと、その跳ね返りが便座21の裏に付着する。また、温水洗浄便座の場合、大便の後お尻を洗浄することにより便を含んだ温水が便座21の裏に付着することとなる。しかしながら、便座21に本発明の防汚塗膜を形成しておくことで、防汚塗膜に含有されるシリコーン成分の撥水性により、これら汚れを着きにくくし、あるいは付いても汚れが濡れ広がらなくすることができ、この状態ではトイレットペーパーで容易に拭き取ることが可能となる。また、便座21の裏側は見えにくく、このような汚れが放置されて乾燥し便座21に固着してしまうことがある。このような場合でも、油脂成分の染み込みがなく、シリコーン成分と汚れとの結合力が小さいため、トイレットペーパーによる乾拭きや濡れゾウキン等で簡単に取り除くことができる。さらには、防汚塗膜はシリコーン成分を含み、硬度がPPより硬いため、便座21の傷付きを防ぐことができる。特に便座21の表面は、使用者が使用前にトイレットペーパーで拭いたり、ベルトなどが当たったりするため傷が付きやすいが、本発明の防汚塗膜によりこれを回避することができる。そのため、傷に汚れが入り込むことがなく、汚れを付きにくくし、また付いても除去しやすくする。なお、防汚塗膜に抗菌剤を含有させることにより、抗菌性と防汚性をあわせ持つ便座を実現できる。
【0036】
また、本実施の形態では洋式トイレの便座においてのみ防汚性について記述したが、基材がPPであれば特に限定するものではなく、温水洗浄便座本体(図示なし)、便器22、便蓋23、温水洗浄便座を制御するリモコン(図示なし)、洗浄水を噴射するノズル(図示なし)などにも適用可能で、特に人為的なメンテナンスを行うことが困難な洗浄水を噴射するノズルに適用した場合、使用後毎回ノズルに付着した汚れを少ない水流により洗浄することが可能となり、清潔性を高めたノズルを実現できる。
【0037】
このようにして作製した洋式トイレの便座は、糞便や尿の汚れなどを付きにくくし、また付着し乾燥しても除去しやすくするなどの高い防汚効果を有する。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明のさらなる詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
市販のアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(以下、ABS樹脂と記す)プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを3重量部添加、攪拌した後、ABS樹脂にハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0040】
(実施例2)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌した後、ABS樹脂にハケ塗りし
、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0041】
(実施例3)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを15重量部添加、攪拌した後、ABS樹脂にハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0042】
(実施例4)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に側鎖カルビノール変性シリコーンオイルを3重量部添加、攪拌した後、ABS樹脂にハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0043】
(実施例5)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に側鎖カルビノール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌した後、ABS樹脂にハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0044】
(比較例1)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出し、サンプルとした。
【0045】
(比較例2)
市販のABS樹脂プレートから長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を切り出した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料をABS樹脂にハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0046】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2について、外観確認および防汚性試験1および耐摩耗試験を行った。防汚性試験1の手順は下記のとおりである。
(1)市販のコーヒー粉末1gを水500gに分散させ、各種サンプルにスポイトで1滴ずつ垂らし、40℃で60分間乾燥させ、汚れを作製した。
(2)市販のトイレットペーパーを用いて、1kgの荷重で汚れの上を往復運動させ、10回以内に完全除去できたものを「○」、10〜30回で完全除去できたものを「△」、完全除去するために30回以上のものを「×」とした。
【0047】
耐摩耗試験の手順は以下のとおりである。市販のトイレットペーパーを用いて、700gの荷重で防汚塗膜上を往復運動させ、3000回後および6000回後に上記防汚性試験1を行い、その結果を示した。
【0048】
以上の結果を(表1)に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例6)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製した。次に、酸価55mgKOH/gのカルボン酸変性PPを固形分濃度5〜9wt%でトルエンに溶解させたプライマー塗料をPPにハケ塗り後、40℃で30分間乾燥させた。さらに、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料をプライマーの上にハケ塗りし、100℃で60分間乾燥・焼成させた。プライマー層は約10μmで、トップコート層は約20μmであった。
【0051】
(実施例7)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製した。次に、酸価55mgKOH/gのカルボン酸変性PPを固形分濃度5〜9wt%でトルエンに溶解させたプライマー塗料をPPにハケ塗り後、40℃で30分間乾燥させた。さらに、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを3重量部添加、攪拌した後、プライマーの上にハケ塗りし、100℃で60分間乾燥・焼成させた。プライマー層は約10μmで、トップコート層は約20μmであった。
【0052】
(実施例8)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製した。次に、酸価55mgKOH/gのカルボン酸変性PPを固形分濃度5〜9wt%でトルエンに溶解させたプライマー塗料をPPにハケ塗り後、40℃で30分間乾燥させた。さらに、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌した後、プライマーの上にハケ塗りし、100℃で60分間乾燥・焼成させた。プライマー層は約10μmで、トップコート層は約20μmであった。
【0053】
(実施例9)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製した。次に、塩素含有率24.5%の塩素化PPを固形分濃度10wt%でメチルシクロヘキサンとトルエンに溶解させたプライマー塗料をPPにハケ塗り後、40℃で30分間乾燥させた。さらに、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌した後、プライマーの上にハケ塗りし、100℃で60分間乾燥・焼成させた。プライマー層は約10μmで、トップコート層は約20μmであった。
【0054】
(比較例3)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製し、サンプルとした。
【0055】
(比較例4)
プライムポリマー社製の高結晶グレードのPPを射出成型で長さ10cm、幅5cm、厚さ3mmの板を作製した。次に、落書防止塗料として販売されているアクリルシリコーン系二液硬化型塗料に片末端ジオール変性シリコーンオイルを5重量部添加、攪拌した後、PPにハケ塗りし、室温で3分間乾燥後、100℃で60分間乾燥・焼成させ、防汚塗膜を形成した。防汚塗膜は約20μmであった。
【0056】
実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、比較例3、比較例4について、2つの防汚性試験および密着性試験および耐摩耗試験を行った。防汚性試験1の手順は上記のとおりである。
【0057】
防汚性試験2の手順は下記のとおりである。
(1)市販の油性マジックを用いて、各種サンプルの中央に長さ3cmの直線を引いた。(2)市販のティッシュペーパーを用いて拭き取りを行った。完全除去できるものを「○」、完全除去もできないものを「×」とした。
【0058】
密着性試験の手順は下記のとおりである。
(1)各種サンプルにカッターを用いて1mm間隔の格子を100個作製した。
(2)市販のセロテープ(登録商標)を格子の上から貼り付け、素早く引き剥がした。塗膜の残っている格子の数を結果として示した。
【0059】
耐摩耗試験の手順は以下のとおりである。市販のトイレットペーパーを用いて、700gの荷重で防汚塗膜上を往復運動させ、6000回後に上記防汚性試験1を行い、その結果を示した。
【0060】
以上の結果を(表2)に示す。
【0061】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる防汚塗膜は、様々な物質に高い防汚性塗膜を形成することができ、この形成した防汚塗膜により表面への傷付きを防止することができるため、防汚性が高く、傷付きが少ない家電筐体などを実現することができる。また、本発明の防汚塗膜は、特にPPに密着性の高い防汚性塗膜を形成することができるため、筐体がPP製である炊飯器、電気湯沸かし器、便座などに高い防汚性を付与することができる。さらには、家電製品以外でもバンパーなどの自動車用部品や船舶、港湾施設、パイプライン、橋梁などの水中構造物に高い防汚性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態における防汚塗膜の模式断面図
【図2】本発明の第2の実施の形態における防汚塗膜の模式断面図
【図3】本発明の第3の実施の形態における洋式トイレの外観模式図
【符号の説明】
【0064】
1 基材
2 防汚塗膜
3 有機高分子
4 固定したシリコーン成分
5 遊離したシリコーン成分
11 ポリプロピレン
12 ポリプロピレン分子
13 プライマー層
14 変性ポリプロピレン分子
15 ポリプロピレン表面
16 防汚塗膜
17 プライマー層表面
18 有機高分子
19 シリコーン成分
21 便座
22 便器
23 便蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上に有機高分子とシリコーン成分とから構成し、前記シリコーン成分は前記有機高分子に固定したシリコーン成分と遊離したシリコーン成分とを含む防汚塗膜。
【請求項2】
有機高分子に固定したシリコーン成分の一部は、反応性シリコーンオイルを反応させ固定したものである請求項1記載の防汚塗膜。
【請求項3】
遊離したシリコーン成分は、反応性シリコーンオイルのうち未反応なシリコーンオイルである請求項1または2に記載の防汚塗膜。
【請求項4】
シリコーン成分を含有するアクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料もしくはそれらの混合塗料のいずれかに反応性シリコーンオイルを添加した塗料を基材に塗布し乾燥、硬化させて形成する請求項1から3のいずれか1項に記載の防汚塗膜。
【請求項5】
シリコーン成分を含有するアクリル系塗料は、アクリル変性シリコーン樹脂を含む主剤とポリイソシアネートを含む硬化剤とが架橋反応により有機高分子を形成する二液硬化型塗料で、反応性シリコーンオイルは前記ポリイソシアネートと反応性を有する請求項4記載の防汚塗膜。
【請求項6】
反応性シリコーンオイルは片末端ジオール変性シリコーンオイルである請求項2から5のいずれか1項に記載の防汚塗膜。
【請求項7】
基材はポリプロピレン表面上にプライマー層を形成したもので、前記プライマー層は非結晶性ポリプロピレンを変性させた変性ポリプロピレンを含有した請求項1記載の防汚塗膜。
【請求項8】
プライマー層は可視光線を50%以上透過する請求項7記載の防汚塗膜。
【請求項9】
変性ポリプロピレンは少なくとも完全非結晶性ポリプロピレンを変性させた変性ポリプロピレンを含む請求項7記載の防汚塗膜。
【請求項10】
抗菌剤を含む請求項1から9のいずれか1項に記載の防汚塗膜。
【請求項11】
請求項10に記載の防汚塗膜に被覆された防汚性を有する家電筐体。
【請求項12】
請求項10に記載の防汚塗膜に被覆された防汚性を有する便座。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−136766(P2009−136766A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315599(P2007−315599)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】