説明

防汚性に優れるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材

【課題】 フッ素系樹脂被覆層との密着性に優れ、且つ曲げ加工性などの金属板プレコート材に要求される特性を損なうことなく、さらにマジック等の油性汚染に対する防汚性を向上させたフッ素系樹脂被覆アルミニウム材を得る。
【解決手段】 フッ素系樹脂被覆層がフッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなりその混合比率が重量比で30:70〜85:15であり、硬化剤樹脂はイソシアネート系樹脂とメラミン樹脂の混合でその比率が重量比で19:1〜2:1であり、さらに添加剤として加水分解性シラン化合物をフッ素系樹脂と硬化剤とからなる樹脂100重量部に対し1〜30重量部含有する厚さ5〜30μmのフッ素系樹脂被覆層を有するフッ素系樹脂被覆アルミニウム材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性、成形性、及び耐候性に優れるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材に関するもので、特に屋外用の建材や土木製品、車両、電気製品、厨房製品等に好適に使用される。
【0002】
なお、本発明におけるアルミニウム材とは、JIS1000番系の純アルミニウム系のみでなくJIS3000、5000、6000、7000番系などの合金系を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
当用途に用いられる材料には、予め所定形状に成形加工した金属板表面を塗装するポストコート材と予め塗装皮膜を金属板表面に設けたプレコート材の2種類がある。
【0004】
従来、ポストコート材が主流であったが生産効率が低い、コスト高である、そして最も大きな問題は所定形状に成形加工後にユーザーが塗装皮膜を設けなければならず、そのために溶剤を含む塗装材を直接大気中に放出することから環境を汚染しやすい。そこで、環境汚染を発生し難いプレコート材が開発され、主に利用されてきている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
プレコート材は、一般に金属板表面に化成皮膜を設け、その上に樹脂被覆層を設けた構造を採用しており、使用に際してユーザーは所定形状に成形加工するだけで済むために、ユーザーにおける環境汚染を予防でき環境にやさしい材料となっている。
【特許文献1】特開2000−212764号公報
【特許文献2】特開2003−060382号公報
【特許文献3】特開2003−293169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記プレコート材には所定形状への成形加工時にも、その使用時にも樹脂被覆層が剥離しない密着性と所定形状に容易に成形加工できる曲げ加工性、そして使用に際して汚染物質が付着し難く、付着しても落ち易い防汚性のほかに、長期間の使用に耐える使用雰囲気に対する耐候性も必要とされている。
【0007】
しかしながら、プレコート材は化成皮膜として通常リン酸クロメート皮膜に代表される反応型化成皮膜を用いているが、この化成皮膜そのものは金属板との密着性は優れるものの耐候性や曲げ加工性に難があり、更に防汚性や耐候性に優れるフッ素系樹脂との密着性が良くなく、その界面での剥離を起こし易いという問題があった。
【0008】
特許文献3には、アルミニウム板およびフッ素系樹脂両方との密着性を向上させるために水溶性樹脂からなる有機成分と、クロム酸塩、Zr化合物、Ti化合物の群から選ばれる少なくとも1種である無機成分とからなる複合型化成皮膜を設け、その上に溶剤可溶型のフッ素樹脂と硬化剤との混合物の焼付塗膜とすることが開示されている。しかしながら、この特許文献に示されるフッ素系樹脂皮膜については、硬化剤としてイソシアネート系樹脂を単独で用いた場合、曲げ性および耐カーボン汚染性は良好であるが、マジック等の油性汚れに弱く、後述する耐赤マジック汚染試験で赤マジック残りが生じるという欠点があった。また、硬化剤としてメラミン系樹脂を単独で使用すると耐赤マジック汚染性は良好であるが曲げ試験で塗膜割れが発生するという欠点があり、相反する性能である曲げ性と防汚性を両立させることは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は上述した問題に対して、フッ素系樹脂被覆層との密着性に優れ、且つ曲げ加工性などの金属板プレコート材に要求される特性を損なうことなく、さらにマジック等の油性汚染に対する防汚性を向上させたフッ素系樹脂被覆アルミニウム材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、請求項1に示す通り、表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に厚さ5〜30μmのフッ素系樹脂被覆層を有するフッ素系樹脂被覆アルミニウム材であって、フッ素系樹脂被覆層がフッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなりその混合比率が重量比で30:70〜85:15であり、硬化剤樹脂はイソシアネート系樹脂とメラミン樹脂の混合でその比率が重量比で19:1〜2:1であり、さらに添加剤として加水分解性シラン化合物をフッ素系樹脂と硬化剤とからなる樹脂100重量部に対し1〜30重量部含有することを特徴とする防汚性に優れるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材である。
【0011】
さらに請求項2に示すように、前記熱硬化型フッ素系樹脂被覆層がフッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなりその混合比率が重量比で50:50〜80:20であり、硬化剤樹脂はイソシアネート系樹脂とメラミン樹脂の混合でその比率が重量比で14:1〜4:1であり、架橋密度が4×10-4mol/cc以上2×10-3mol/cc以下であることを特徴とするフッ素系樹脂被覆アルミニウム材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフッ素系樹脂被覆プレコートアルミニウム板は、耐候性、曲げ加工性、防汚性に優れたもので、屋外用の建材や土木製品、車両、電気製品、厨房製品等に使用され工業上顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材について詳細に説明する。
【0014】
アルミニウム材の表面に有機無機複合型化成皮膜を形成する際、先ずアルミニウム材の表面を清浄にするために脱脂処理を行なう。その方法としては、例えば市販のアルカリ系脱脂剤を用いてスプレー法、浸漬法等により行なう通常の方法で行なってよく、特に制限はない。その後水洗を行ない、必要に応じてスマット除去を目的とした酸洗処理を行なってもよい。
【0015】
アルミニウム材表面に設けられる化成皮膜は、アルミニウム材とフッ素系樹脂被覆層の両方との密着性が良好な化成皮膜が用いられる。中でも有機無機複合型の化成皮膜が好ましい。その理由は、含有している無機成分の働きで同じ無機質材料であるアルミニウム材との密着性を高め、同時に含有する有機成分の働きでこの上に形成されるフッ素系樹脂被覆層との密着性も良くするためである。その結果曲げ加工などの加工時に各皮膜間で剥離が発生することを抑制する。また、有機成分の働きでリン酸クロメート皮膜等の無機成分のみの場合に比べ柔軟性に富んでいるので、加工時にこの化成皮膜に加わる応力を吸収して、アルミニウム材とフッ素系樹脂被覆層間の緩衝機能の役割を担い、加工後にもアルミニウム材とフッ素系樹脂皮膜との密着性を維持する働きも担う。
この有機無機複合型化成皮膜の種類としては、クロメート、ジルコン系ノンクロメート、チタン系ノンクロメートなどに有機化合物を含有させた処理液で形成する皮膜を挙げることができる。
【0016】
前記有機化合物としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、セルロースのヒドロキシエーテル、エチレン無水マレイン酸、ポリビニルピロリジン、ポリビニルメチルエーテルなどを用いる。より好ましくは、リン酸クロムと水溶性アクリル樹脂からなる皮膜、炭酸ジルコニウムと水溶性アクリル樹脂からなる皮膜、チタン酸と水溶性フェノール樹脂からなる皮膜のいずれか1種類を使用する。更に、その皮膜量は含有する金属量換算で2〜50mg/mが好ましく、より好ましくはリン酸クロムと水溶性アクリル樹脂からなる皮膜では金属Cr量で5〜40mg/m、炭酸ジルコニウムと水溶性アクリル樹脂からなる皮膜では金属Zr量で3〜20mg/m、チタン酸と水溶性フェノール樹脂からなる皮膜では金属Ti量で3〜30mg/mである。
【0017】
皮膜量が前記範囲より少ないと密着性及び曲げ性が劣り、多いと曲げ性が劣り、この有機無機複合型化成皮膜自体の凝集破壊による塗膜剥離が生じる。
【0018】
この有機無機複合型化成皮膜はロールコート法、浸漬法、スプレー法など公知の方法でよく特にその形成方法には制限はない。
【0019】
前述の理由から、フッ素系樹脂皮膜とアルミニウム合金との間に形成する化成皮膜としては有機無機複合型化成皮膜が必須であるが、この化成皮膜とアルミニウム材との間に反応型の無機系化成皮膜を必要に応じて形成してもよい。
【0020】
この無機系化成皮膜としては、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム系皮膜、リン酸チタン系皮膜等からいずれか1種類を選んで用いる。更に、この無機系化成皮膜の皮膜量は含有する金属量換算で100mg/m2以下が好ましいが、より好ましくは用いる無機系化成皮膜により、リン酸クロメート皮膜では金属Cr量で5〜50mg/m以下、クロム酸クロメート皮膜では金属Cr量で15〜80mg/m、リン酸ジルコニウム系皮膜では金属Zr量で3〜20mg/m、リン酸チタン系皮膜では金属Ti量で3〜30mg/mである。
皮膜量が前記量より多すぎると曲げ性が劣り、有機無機複合型化成皮膜との密着性も劣化してしまう。
【0021】
この無機系化成皮膜は、スプレー法、浸漬法などの方法で形成してよく、特に制限はない。
【0022】
フッ素系樹脂被覆層の形成は、フルオロオレフィン又はビニルエーテルなどの共重合可能な単量体を共重合して得られる溶剤可溶型のフッ素系樹脂と硬化剤を混合し、さらにその混合物に溶剤(芳香族炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系等)を添加して所定粘度の塗料を調製し、この塗料をロールコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スプレー装置等を用いて前記第2の化成皮膜上に塗布し、ついで200〜300℃の最高到達板温度での焼付処理を施した後、乾燥して形成する。
【0023】
フッ素系樹脂被覆層の厚みは5〜30μmとする。5μm未満では後述するDEWサイクル試験における塗膜密着性が劣り、30μmを超えると被覆コスト高となる。
【0024】
被覆層中のフッ素系樹脂と硬化剤樹脂の割合は重量比で30:70〜85:15とする。硬化剤樹脂の割合が70重量%を超えると塗膜が硬くなりすぎるために曲げ性が劣り、またフッ素樹脂含有量が少ないため後述するDEWサイクル試験における塗膜密着性が劣る。また、15重量%未満では塗膜硬度の不足により耐赤マジック汚染性が劣る。同様の理由でフッ素系樹脂と硬化剤樹脂の割合を重量比で、50:50〜80:20とすることが好ましい。
【0025】
前記フッ素系樹脂被覆層の形成に用いる硬化剤樹脂としては、イソシアネート樹脂とメラミン樹脂を重量比で19:1〜2:1の割合で混合したものを用いる。イソシアネート樹脂とメラミン樹脂の割合が19:1より大きいと後述する耐赤マジック汚染性が劣る。また、2:1より小さいと曲げ性が劣る。イソシアネート樹脂としては特に制限はなく、例えばポリイソシアネート、そのイソシアネート基をカプロラクタムでブロックしたもの等が挙げられる。また、メラミン樹脂としてはメラミン、ベンゾグアナミン等を用いることができ特に制限はない。同様の理由でイソシアネート樹脂とメラミン樹脂を重量比で14:1〜5:1とするのが好ましい。
【0026】
前記フッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなる樹脂層の架橋密度は4×10-4mol/cc以上2×10-3mol/cc以下であることが好ましい。架橋密度が4×10-4mol/ccより小さいと塗膜硬度が十分でないため後述する耐赤マジック汚染性試験においてマジックのインク成分が入り込んでしまい赤マジックの跡が残ってしまう。一方、2×10-3mol/ccより大きいと耐赤マジック汚染性は完全に除去できるものの塗膜が硬くなりすぎるため曲げ性が劣ってしまう。
【0027】
上記架橋密度を発現するためには焼付条件の制御が重要である。通常プレコート金属板の焼付条件は焼付温度(PMT:Peak Metal Temperature=最高到達板温度)と焼付時間で決まるが、既存の塗装ラインで焼付時間を変更するためにはラインスピードを変更する方法が一般的であるが、特に焼付時間を長くすることはラインスピードを遅くすることになりこれは生産性の観点から好ましい方法とは言えないため、焼付温度(PMT)で制御する方法が採られる。従って、上記架橋密度を発現するための焼付温度(PMT)は、一般的な塗装ラインの焼付時間が30秒〜100秒なので、210℃以上250℃以下が好ましい。PMTが200℃以下では架橋密度が小さいため耐赤マジック汚染性、密着性が劣る。一方、260℃以上では架橋密度が大きすぎて曲げ性が劣る。
【0028】
前記フッ素系樹脂被覆層には、防汚性をより高めるためにシラン化合物を配合してもよく、前記フッ素系樹脂被覆層の調製時に、アルコキシシランなどの加水分解性のシラン化合物を添加すると、樹脂皮膜表面の親水性が向上し雨筋に対する防汚性も含めて樹脂被覆金属材の防汚性がさらに向上する。
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられるが特に制限はない。
【0029】
シラン化合物の含有量はフッ素系樹脂と硬化剤を合わせた樹脂100重量部に対し1〜30重量部が好ましく、4〜30重量部がより好ましい。30重量部を超えると塗装性の悪化、密着性、曲げ性の劣化が生じる。
【0030】
更に、本発明のフッ素系樹脂被覆アルミニウム材の性能を損なわない範囲で消泡剤、レベリング剤、触媒、ワックスなどを含有していても良い。
【0031】
本発明に用いるフッ素系樹脂は炭素−フッ素間の結合エネルギーが大きいため光エネルギーによる分解が起こりにくいので耐候性が高く、従ってフッ素系樹脂被覆層は、被覆層中に着色顔料や染料を含まない無色透明な樹脂を用いるとクリア系のプレコート金属板としても着色顔料や染料を含むと着色系の樹脂被覆アルミニウム材としても使用できる。
【0032】
アルミニウム材の種類は、純アルミニウム系の他、いずれのアルミニウム系合金にも適用することができ、その形状もコイル状、切り板状等制限はないが、生産性、コスト、性能の均一性からコイル状のものにコーティングするのが好ましい。板を使用する場合、厚みに限定はないが、成形加工性や保形性を考慮すれば厚みが0.1〜2.5mm程度のものが用いられる。
【実施例1】
【0033】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は請求項の範囲を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(本発明例1〜16)
アルミニウム合金板(A5052−H32、板厚1.0mm)を市販のアルカリ系脱脂剤でスプレー法により脱脂処理を行ない、水洗・乾燥後、表2に示す有機無機複合型化成皮膜をロールコーターで塗布した後加熱乾燥(PMT100℃)して設け、その表面上に表3に示す樹脂成分を含む塗料をロールコーターで塗布し、焼付・乾燥(PMT230℃×70秒)して表4に示す樹脂被覆アルミニウム合金板の供試材を得た。
【0035】
(本発明例17〜40、比較例1〜10)
アルミニウム合金板(A5052−H32、板厚1.0mm)を市販のアルカリ系脱脂剤でスプレー法により脱脂処理を行ない、水洗後、表1に示す無機系化成皮膜をスプレー法により設け、水洗・乾燥後、表2に示す有機無機複合型化成皮膜をロールコーターで塗布した後加熱乾燥(PMT100℃)して設け、その表面上に表3に示す樹脂成分を含む塗料をロールコーターで塗布し、焼付・乾燥(PMT230℃×70秒)して表4に示す樹脂被覆アルミニウム合金板の供試材を得た。
【0036】
無機系化成皮膜、有機無機複合化成皮膜およびフッ素系樹脂の種類をそれぞれ表1、表2、表3、表4に示す。
【0037】
得られた供試材を用いて以下の試験を行なった。
【0038】
(1)密着性
樹脂被覆層表面をクロスカットして、JIS Z 9117 7.5に準ずるデューサイクル試験を1000時間実施した後、テープ剥離試験を行ない、皮膜の剥離有無を観察した。皮膜の剥離がない場合を「◎」、剥離を起こした場合を「×」と評価した。なお、試験条件は、120分間照射後60分間暗黒を1サイクルとし、暗黒60分間のうち最初の30分間は試験片裏面に冷却水を噴射した。
【0039】
(2)曲げ性
JIS H4001記載の屈曲試験に従い、屈曲半径を供試材厚みの3倍および4倍とした3Tおよび4T試験を行った後、曲げ部にテープ剥離試験を行ない、皮膜及び被覆層の剥離状態を観察した。3Tで剥離なしを「◎」、4Tで剥離なしを「○」、4Tで剥離ありを「×」と評価した。
【0040】
(3)防汚性
a 耐カーボン汚染性
樹脂被覆層表面に、カーボンブラック5重量%を懸濁させた水溶液をスプレー塗布したのち60℃の恒温槽で1時間乾燥させた。ついで、流水中で皮膜表面に付着しているカーボンブラックをガーゼで拭き取り乾燥させた後の表面状態を観察した。きれいに除去できた場合を「◎」、少し残った場合を「△」、ほとんど除去できなかった場合を「×」と評価した。
b 耐赤マジック汚染性
大きさ3cm×5cmの枠内に赤マジックを付着し室温で24時間放置して乾燥させた後、表面をエタノールで拭き外観を目視で以下の基準の通り評価した。
(評価基準)
◎ ...赤マジックが完全に除去できる
○ ...赤マジックがほぼ除去できる(極僅かに色味を帯びる)
△ ...弱く跡が残る
× ...ほとんど除去されない
c 屋外暴露試験
屋外暴露試験を12ヶ月行ない、雨筋汚れ有無を目視で評価した。
(評価基準)
◎...雨筋汚れがない
○...雨筋汚れがほとんどない
×...雨筋汚れあり
上記各試験結果については○以上を合格とした。
【実施例2】
【0041】
(本発明例47〜56)
アルミニウム合金板(A5052−H32、板厚1.0mm)を市販のアルカリ系脱脂剤でスプレー法により脱脂処理を行ない、水洗後、スプレー法により無機系化成皮膜を設け、水洗・乾燥後ロールコーターで有機無機複合型化成皮膜を設け、その表面上に表3に示す樹脂成分を含む塗料をロールコーターで塗布し、焼付・乾燥して表7に示す樹脂被覆アルミニウム合金板の供試材を得た。
【0042】
得られた供試材を用いて実施例1と同様の試験を行なった。
【0043】
なお、表7に示す架橋密度は以下の方法で測定した。すなわち、幅10mm長さ40mmの塗膜(フリーフィルム)をレオバイブロンにより昇温速度2℃/分、周波数11Hzで測定し、次式のゴム弾性の式を用いて算出した。
n=E'/3RT
n:架橋密度(mol/cc)、E':平衡貯蔵弾性率(dyne/cm2)、
R:ガス定数(8.314×107erg.deg/mol)、
T:平衡貯蔵弾性率での絶対温度(°K)
【0044】
結果を表4、表5、表6、表7に示す。
表4、表5、表6、表7から明らかなように、本発明例のNo.1〜No.50のフッ素系樹脂被覆アルミニウム合金板は、密着性、曲げ性、防汚性のいずれもが優れている。
また、請求項2の発明例に該当するNo.48、50,51,52,54,55は耐赤マジック汚染性および曲げ性がともに◎で特に優れている。
一方、比較例No.1は化成皮膜がないため密着性、曲げ性が劣っていた。
無機系化成皮膜の皮膜量、又は有機無機複合型化成皮膜の皮膜量が多すぎる比較例No.2およびNo.3は曲げ性が劣っていた。
フッ素系樹脂被覆層の膜厚が薄すぎる比較例No.4は密着性が劣っていた。
比較例No.5およびNo.6は硬化剤樹脂中のメラミン樹脂の割合が小さく架橋密度が低すぎるため防汚性(耐赤マジック汚染性)が劣っていた。
比較例No.7はフッ素系樹脂被覆層中のフッ素樹脂含有量が低すぎるため密着性、曲げ性が劣っていた。
比較例No.8はフッ素系樹脂被覆層中の硬化剤樹脂含有量が低すぎるため耐赤マジック汚染性が劣っていた。
比較例No.9はシラン化合物が添加されていないため防汚性(屋外暴露試験)が劣っていた。
比較例No.10は硬化剤樹脂中のメラミン樹脂の割合が大きすぎるため曲げ性が劣っていた。
比較例No.11はシラン化合物の添加量が多すぎるため密着性、曲げ性が劣っていた。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に化成皮膜を形成し、さらにその上に厚さ5〜30μmのフッ素系樹脂被覆層を有するフッ素系樹脂被覆アルミニウム材において、フッ素系樹脂被覆層がフッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなりその混合比率が重量比で30:70〜85:15であり、硬化剤樹脂はイソシアネート系樹脂とメラミン樹脂の混合でその比率が重量比で19:1〜2:1であり、さらに添加剤として加水分解性シラン化合物をフッ素系樹脂と硬化剤とからなる樹脂100重量部に対し1〜30重量部含有することを特徴とする防汚性に優れるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材。
【請求項2】
前記熱硬化型フッ素系樹脂被覆層がフッ素系樹脂と硬化剤樹脂とからなりその混合比率が重量比で50:50〜80:20であり、硬化剤樹脂はイソシアネート系樹脂とメラミン樹脂の混合でその比率が重量比で14:1〜4:1であり、架橋密度が4×10-4mol/cc以上2×10-3mol/cc以下であることを特徴とする請求項1記載の防汚性に優れるフッ素系樹脂被覆アルミニウム材。

【公開番号】特開2006−182015(P2006−182015A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294271(P2005−294271)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】