説明

防汚性ハードコート用組成物

【課題】光学表示装置の、透明性を維持しつつ、防汚性、防汚耐久性、耐擦傷性、表面の膜硬度などを向上させることができるハードコート層を形成する、防汚性ハードコート用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、(a−1)ポリシロキサンブロックおよび(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックを有する、防汚性ハードコート用組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示装置の、防汚性、防汚耐久性、耐擦傷性、表面の膜硬度などを向上させることができるハードコート層を形成する、防汚性ハードコート用組成物およびこのハードコート層を有する光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、CRT(ブラウン管)表示装置、タッチパネルディスプレーなどの光学表示装置には、一般に、その表面にハードコート層を設けることによって、耐擦傷性、表面の膜硬度をさらに向上させている。
【0003】
上記の液晶表示装置、タッチパネルディスプレーなどの光学表示装置については、これらの光学表示装置の表面上に、ほこりや指紋がつかない、またはついたとしても簡単にふき取れるといった、防汚性の高さも求められている。そしてこれらの光学表示装置の表面上の防汚性を向上させるために、防汚性に優れたハードコート層を光学表示装置の表面上に設けることが強く求められている。
【0004】
ハードコート層の防汚性を向上させる方法として、シリコンオイルやフッ素ポリマーをハードコート層表面に塗布することにより、表面の防汚性(撥水・撥油性)を向上させる方法が提案されている。しかしながら、この方法には、防汚剤を表面に塗布するのみであるため、防汚剤がすぐにとれてしまい、防汚性の効果が長続きしない、つまり防汚耐久性に劣る、という欠点がある。一方で、これらのシリコンオイルやフッ素ポリマーなどの添加剤をハードコート層に混入することによって、防汚性を向上させる方法もある。しかしながら、これらの添加剤は一般にソフトブロックといわれるものであり、樹脂に可撓性を付与するという性質も併せて有している。そしてこれらを添加することによってハードコート層の本来の機能である、表面硬度などの機械的強度が低下してしまうという欠点がある。
【0005】
特開2006−107572号公報(特許文献1)には、エネルギー線硬化性化合物を含む有機ハードコート材料を硬化させて形成したハードコート表面に、分子内にフッ素原子を含むフッ化炭化水素系ガスを導入した雰囲気中でプラズマ処理を行うことを特徴とするハードコート表面処理方法、が記載されている(請求項1)。この方法によって、低コストかつ簡易なプロセスにて、媒体表面に撥水性および撥油性を与えるハードコート表面の処理方法が提供されると記載されている。しかしながら、特定の雰囲気下でプラズマ処理を行うためには、特殊な設備を用意する必要があり、そしてこれにより設備費用が負担となることがある。
【0006】
特開2003−277478号公報(特許文献2)には、1分子中に少なくとも2個の環状脂肪族エポキシ基と、少なくとも1つの炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基と、少なくとも1つのアルキルシロキサン基と、を有しているエポキシ樹脂と、カチオン重合触媒と、を含有しているエポキシ樹脂組成物であって、上記環状脂肪族エポキシ基及び上記パーフルオロアルキル基は、上記エポキシ樹脂の分岐鎖中に存在し、且つ、上記アルキルシロキサン基は、上記エポキシ樹脂の主鎖中に存在していることを特徴とするエポキシ樹脂組成物が記載されている(請求項1)。このエポキシ樹脂組成物は、プリントヘッド表面におけるインクの付着がなく、結果としてドットの着弾精度がよく、印字品位を長く維持できる液体噴射記録ヘッドを提供することを目的としている(第0010段落)。しかしながらこのような液体噴射記録ヘッドは、一般に装置の内部に設けられるものである。そのため、特許文献2に記載される発明のように、液体噴射記録ヘッドに用いられる組成物においては、光学表示装置そして光学部材などにおいて必要とされる表面の膜硬度などの機械的強度の高さは必要とされない。このため、特許文献2に記載される発明は、本発明とは、その用途および必要とされ達成される効果が異なっている。
【0007】
特開2005−206829号公報(特許文献3)には、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、成膜性を有しない含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとを含有することを特徴とする含フッ素硬化性塗液が記載されている(請求項1)。この特許文献3に記載される発明は、フッ素原子を特定の構造で有する含フッ素モノマーと含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとを組み合わせて使用することによって、フッ素含有量の多い塗膜であっても基材の表面層に均一に塗布することができ、かつ防汚性も付与できることを見いだしたという発明である。しかしながら、この発明で用いられる含フッ素硬化性皮膜の膜厚は50〜200nmと薄く、この皮膜を単膜でハードコート層として用いるには、表面の膜硬度などの物理的強度が不十分である。表面の膜硬度を向上させる手段として、基材上に直接ハードコート層を設けて、その上にフッ素硬化性皮膜を形成することも可能ではある。しかしながら、これは工程が複雑となり、作業性に問題が生じることとなる。
【0008】
特開平11−43648号公報(特許文献4)には、(a)両末端を2,2’−アゾビスニトリル基で連結した複数のポリシロキサン鎖を含んでいるシリコーンマクロ開始剤の存在下架橋可能な官能基を有する少なくとも1種のアクリル単量体または該アクリル単量体と他のエチレン性不飽和単量体との混合物を重合して得られるシリコーン−アクリルブロック共重合体、(b)前記(a)成分の架橋可能官能基と同じ硬化剤によって架橋し得る官能基か、または(a)成分の官能基と相互に反応する官能基を持っているフィルム形成性樹脂、および(c)少なくとも(b)成分と反応する硬化剤を含んでいることを特徴とする塗料用硬化性樹脂組成物、が記載されている(請求項1)。この特許文献4に記載されるシリコーン−アクリルブロック共重合体は、架橋可能な官能基として、エポキシ基、アルコキシシリル基または活性メチレン基を有するものであることが記載されている(第0032〜0035段落)。従って、特許文献4には、本願のように光反応性二重結合基を有する共重合体は記載されていない。また、特許文献4に記載される組成物は塗料用組成物であり、透明性が要求される本願のハードコート層とは、求められる性能が異なる。
【0009】
特開2002−363495号公報(特許文献5)には、(a)両末端を2,2’−アゾビスニトリル基で連結した複数のポリシロキサン鎖を含んでいるシリコーンマクロ開始剤の存在下、フッ素含有不飽和単量体(a−1)と反応性官能基を有するアクリル単量体(a−2)とを含む単量体混合物Aを重合して得られるフッ素/シリコーン−アクリルブロック共重合体、(b)フッ素含有不飽和単量体(b−1)と反応性官能基を有するアクリル単量体(b−2)とを含む単量体混合物Bを重合して得られるフッ素含有共重合体、および(c)硬化剤を含んでいることを特徴とするコーティング組成物が記載されている(請求項1)。この特許文献5に記載されるシリコーン−アクリルブロック共重合体は、反応性官能基として、水酸基、エポキシ基またはアルコキシシリル基を有するものであることが記載されている(第0012段落)。従って、特許文献5には、本願のように光反応性二重結合基を有する共重合体は記載されていない。また、特許文献5に記載される組成物は屋外物品に着雪・着氷防止などの性能を付与するためのコーティング組成物であり、高い透明性などが要求される本願のハードコート層とは、求められる性能が異なる。
【0010】
【特許文献1】特開2006−107572号公報
【特許文献2】特開2003−277478号公報
【特許文献3】特開2005−206829号公報
【特許文献4】特開平11−43648号公報
【特許文献5】特開2002−363495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の問題点を解決することにある。より特定すれば、本発明は、光学表示装置に用いられるハードコート用組成物であって、その光学表示装置によって表示される画像などが鮮明に映し出されるための透明性を維持しつつ、かつ、防汚性、防汚耐久性、耐擦傷性および表面の膜硬度などを向上させることができるハードコート層を形成する、防汚性ハードコート用組成物を提供することを課題とする。更に、本発明は、このハードコート層を有する光学表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、
(a−1)下記式(I)で表されるポリシロキサンブロック
【0013】
【化1】

式(I)
【0014】
[式(I)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはニトリル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のフェニル基を表し;p及びqは、同一または異なって、0〜6の整数を表し;mは0〜600の整数を表す。]、および
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、
を有する、防汚性ハードコート用組成物、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0015】
上記防汚性ハードコート用組成物は、
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体0.1〜30重量%、
(B)光重合性多官能化合物50〜99.8重量%、および
(C)光重合開始剤0.1〜20重量%、
(但し、上記成分(A)〜(C)の重量%は何れも組成物中の固形分重量を基準とし、各成分の固形分合計重量を100重量%とする。)
を含むのが好ましい。
【0016】
本発明はまた、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0017】
本発明はさらに、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合し、次いでアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0018】
本発明においては、上記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、さらに(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックを有するのが好ましい。
【0019】
また、上記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの重量比率が、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%、および
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%
であるのが好ましい。
【0020】
本発明はまた、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0021】
本発明はさらに、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合し、次いでアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0022】
上記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、さらに(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有するのが好ましい。
【0023】
この場合、上記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの重量比率が、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%、および
(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロック0.1〜45.1重量%
であるのが好ましい。
【0024】
本発明はまた、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、得られた共重合体中に含まれるカルボン酸基の一部とを反応させることにより得られる、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックおよび(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0025】
本発明はまた、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
この(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いで、得られた共重合体中に含まれるエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを反応させることにより得られる、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックおよび(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する共重合体である、防汚性ハードコート用組成物、も提供する。
【0026】
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、さらに反応性無機充填剤を含むのが好ましい。
【0027】
本発明はまた、上記防汚性ハードコート用組成物から得られるハードコート層を有する、光学表示装置も提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いることによって、光学表示装置の表面に、透明性を維持しつつ、耐擦傷性および表面の膜硬度に優れ、かつ高い防汚性を有するハードコート層を、より簡便に設けることができる。本発明の防汚性ハードコート用組成物により得られるハードコート層は、単層であっても、高い耐擦傷性、表面の膜硬度および防汚性を有している。本発明の防汚性ハードコート用組成物は光硬化性であるため、このような優れた性能を有するハードコート層を、光学表示装置の表面上により簡便に形成できるという利点がある。そのため本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いることによって、生産効率および製造コストに優れたハードコート層を形成することができる。さらにこのハードコート層は、防汚性を長期間維持させることができ、防汚耐久性にも優れているという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体、(B)光重合性多官能化合物および(C)光重合開始剤を含有する。以下、各成分について詳述する。
【0030】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体は、下記ブロック
(a−1)ポリシロキサンブロック、および
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、
を少なくとも有している。そして本発明の防汚性ハードコート用組成物は、この光反応性シリコーンアクリル共重合体を含むことによって、透明性を維持しつつ、防汚性、防汚耐久性、耐擦傷性、表面の膜硬度などに優れたハードコート層を提供することが可能となる。
【0031】
(a−1)ポリシロキサンブロック
本発明における(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体に含まれる(a−1)ポリシロキサンブロックとして、下記式(I)で示されるブロックが挙げられる。
【0032】
【化2】

式(I)
【0033】
上記式(I)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはニトリル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のフェニル基を表し;p及びqは、同一または異なって、0〜6の整数を表し;mは0〜600の整数を表す。
【0034】
より好ましくは、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し;Rはニトリル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜9のフェニル基を表し;p及びqは、同一または異なって、0〜6の整数を表し;mは30〜200の整数を表す。特に好ましくは、R、RおよびRはそれぞれメチル基を表す。
【0035】
本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる光反応性シリコーンアクリル共重合体が、(a−1)ポリシロキサンブロックを有することによって、得られるハードコート層の撥水性を向上させることができる。そしてこれによりハードコート層の防汚性を高めることが可能となる。さらに、この共重合体が、ポリシロキサン構造をその骨格として有していることにより、ハードコート層の撥水性を長期間維持させることが可能となる。
【0036】
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック
本発明における(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体に含まれる(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックは、種々の置換基を有する(メタ)アクリルモノマーが共重合することによって調製される。そして本発明における(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックは、光反応性二重結合基を有するペンダント基を有することを特徴とする。
【0037】
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックに含まれる光反応性二重結合基として、例えばアクリル基およびメタクリル基などが挙げられる。この(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックが有するペンダント基として、例えば、下記式(II)で示される基が挙げられる。
【0038】
【化3】

式(II)
【0039】
上記式(II)中、Rは、置換基を有してもよい、直鎖状または分枝状の炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表す。Rが有してもよい置換基として、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I、F等)、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0040】
より好ましくは、Rは、置換基を有してもよい、直鎖状または分枝状の炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rはメチル基を表す。Rが有してもよい置換基として、好ましくは、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0041】
本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる光反応性シリコーンアクリル共重合体が、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックを含むことによって、共重合体が光反応性を有することとなる。そしてこのアクリルブロックに含まれる光反応性二重結合基の存在によって、ハードコート層に良好な機械的強度を付与する共重合体を提供することが可能となる。一般に、光重合性基として、光反応性二重結合基の他に、エポキシ基などがある。これらの光重合性エポキシ基は一般にカチオン重合性である。そしてこれらのエポキシ基を有する光反応性シリコーンアクリル共重合体を用いる場合は、カチオン重合開始剤を使用する必要がある。しかしながらこのカチオン重合開始剤は、物品内などに残存することによって環境に対して悪影響を及ぼす恐れがあるため、好ましくない。また、エポキシ基を有する光反応性シリコーンアクリル共重合体を用いる場合は、熱硬化処理が必要となるため、生産性が劣ることとなり好ましくない。
【0042】
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック
本発明における(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体は、さらに、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックを有するのが好ましい。この(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックが有するペンダント基として、下記式(III)で示される基が挙げられる。
【0043】
【化4】

式(III)
【0044】
上記式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し;Rfは、直鎖または分枝状の、炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表す。
【0045】
より好ましくは、Rは、炭素数1〜3のアルキレン基を表し;Rfは、直鎖状の炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表す。好ましいフルオロアルキル基として、例えば−(CF2〜6H、または−C2n+1(nは1〜12の整数である。)など、より好ましくは−(CF−CF(nは1〜7の整数である。)など、が挙げられる。
【0046】
本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックを有することによって、得られるハードコート層の撥水性および撥油性をより向上させることができる。そしてこれにより、得られるハードコート層の防汚性を高めることが可能となる。さらに、この共重合体が、フルオロアルキル構造をその骨格として有していることにより、ハードコート層の撥水性および撥油性を長期間維持させることが可能となる。このような(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を用いることによって、いわゆるフッ素樹脂などを添加することなく、優れた撥水性および撥油性を有するハードコート層を提供する防汚性ハードコート用組成物を調製することが可能となる。
【0047】
(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロック
本発明における(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体は、さらに、(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有していてもよい。(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックが有するペンダント基として、例えば、−COOH、−(CH)COOH(nは1〜6の整数である。)などが挙げられる。
【0048】
本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有することによって、ネガフィルムなどを用いて露光した後に、アルカリ現像処理が可能となり、これによりパターン形成されたハードコート層を調製することが可能となるからである。
【0049】
(a−5)その他のアクリルブロック
本発明における(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体は、さらに、(a−1)〜(a−4)以外のアクリルブロックである、(a−5)その他のアクリルブロックを有していてもよい。この(a−5)その他のアクリルブロックが有するペンダント基として、例えば脂環式炭化水素基などが挙げられる。本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、このような(a−5)その他のアクリルブロックを有することによって、ハードコート層に良好な基材密着性を付与できる(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を調製することが可能となる。
【0050】
本発明における、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの好ましい重量比率は、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%、より好ましくは10〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%、より好ましくは15〜70重量%、および
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%、より好ましくは5〜35重量%
である。そして、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体がさらに(a−5)その他のアクリルブロックを有する場合は、この(a−5)その他のアクリルブロックは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。この場合は、(a−1)(a−2)(a−3)および(a−5)のブロックの合計重量%が100重量%であることを条件とする。
【0051】
また(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する場合、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの好ましい重量比率は、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%、より好ましくは10〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%、より好ましくは15〜70重量%、
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%、より好ましくは5〜35重量%、
(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロック0.1〜45.1重量%、より好ましくは0.1〜35重量%
である。そして、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体がさらに(a−5)その他のアクリルブロックを有する場合は、この(a−5)その他のアクリルブロックは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。この場合は、(a−1)(a−2)(a−3)(a−4)および(a−5)のブロックの合計重量%が100重量%であることを条件とする。
【0052】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体の調製
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体の調製方法の一例として、アゾ基含有ポリシロキサン化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを反応させる方法が挙げられる。なお、共重合する際に、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーおよび/またはその他のラジカル重合性モノマーを併せて用いてもよい。また、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体の調製方法の他の一例として、アゾ基含有ポリシロキサン化合物と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合し、次いでアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させる方法が挙げられる。この方法においてもまた、共重合する際に、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーおよび/またはその他のラジカル重合性モノマーを併せて用いてもよい。
【0053】
これらの調製方法において、アゾ基含有ポリシロキサン化合物以外のモノマー成分が、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体におけるアクリルブロックを形成することとなる。そしてフルオロアルキル基を有する不飽和モノマーを用いることによって、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックを導入することができる。またその他のラジカル重合性モノマーを用いることによって、防汚性ハードコート用組成物により得られるハードコート層の密着性などの物理的特性を調整することができる。
【0054】
光反応性シリコーンアクリル共重合体の調製に用いられるアゾ基含有ポリシロキサン化合物として、下記式(IV)で示される化合物が挙げられる。
【0055】
【化5】

式(IV)
【0056】
上記式(IV)中、R〜R、m、pおよびqは上記定義と同様であり、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子を表し、rは1〜20の整数である。
【0057】
上記アゾ基含有ポリシロキサン化合物は、加熱または活性エネルギー線の照射によって窒素を発生して分解し、ラジカル種を発生させるという性質を有している。そして発生したラジカル種は、各種ビニル系モノマーと容易に重合する。従って、アゾ基含有ポリシロキサン化合物および各種ビニル系モノマーの存在下で加熱または活性エネルギー線を照射することによって、アゾ基含有ポリシロキサン化合物が重合開始剤として作用すると同時に、ポリシロキサンブロックを有するラジカル種を供給することとなり、そしてこれによりポリシロキサンブロックを含む共重合体を容易に調製することができる。
【0058】
アゾ基含有ポリシロキサン化合物は、例えば、カルボキシル基を有する2,2’−アゾビスニトリルの誘導体、例えば4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)およびその同族体など、を酸クロライド化し、これと、両末端にアミノ基または水酸基を有するポリジメチルシロキサンのようなポリシロキサン鎖含有化合物とを反応させることにより、調製することができる。このアゾ基含有ポリシロキサン化合物は、特公平2−33053号公報および特開平7−18139号公報に記載されており、その構造および調製方法が公知である。また、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)をアミド結合によりポリジメチルシロキサン鎖へ結合した構造を有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物は、VPSシリーズとして和光純薬から市販されている。
【0059】
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。バランスのとれた硬化性と貯蔵安定性を示す塗料組成物を調製するためには、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0060】
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックの導入に用いることができる、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーとして、例えば2−(ペルフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−ペルフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0061】
光反応性シリコーンアクリル共重合体の調製に用いられるその他のラジカル重合性モノマーとして、例えばスチレンまたはスチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルにより置換された置換誘導体;ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等のオレフィン類;メタクリル酸またはアクリル酸の、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter―ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、トリフェニルメチル、ジシクロペンタニルまたはクミルエステル;アントラニルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等を用いることができる。なお、これらは1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0062】
好ましいその他のラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの脂環式炭化水素基を有するモノマーを挙げることができる。このような重合性モノマーを用いることによって、本発明の防汚性ハードコート用組成物に含まれる光反応性シリコーンアクリル共重合体が、脂環式炭化水素基を有するペンダント基を有する(a−5)その他のアクリルブロックを有することとなる。そしてこれにより、ハードコート層に良好な基材密着性を付与できる共重合体を提供することが可能となる。
【0063】
上記調製方法の一例においては、まず、アゾ基含有ポリシロキサン化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、そして必要に応じたフルオロアルキル基を有する不飽和モノマーおよび/またはその他のラジカル重合性モノマーと、を重合させる。これらの重合方法として、例えばバルク重合または溶液重合が挙げられる。これらの重合においてアゾ基含有ポリシロキサン化合物は、上記の通り、重合開始剤として作用すると同時に、ポリシロキサンブロックを有するラジカル種の供給源となる。一方、重合において、他の重合開始剤を併用してもよい。併用することができる重合開始剤として、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤として用いてもよい。
【0064】
重合は、例えば60〜150℃で3〜48時間撹拌することによって行うことができる。溶液重合法において、用いられる溶媒としては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。上記溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
次いで得られた共重合体と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを反応させる。この反応により、共重合体のアクリルブロックに含まれるカルボン酸と、(メタ)アクリルモノマーが有するエポキシ基とが反応し、そしてこれにより光反応性二重結合基を有するペンダント基がアクリルブロックに導入され、共重合体が(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロックを有することとなる。こうして(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を得ることができる。この反応方法として、例えばガラスフラスコを用いて60〜150℃で3〜48時間撹拌することによって行うことができる。
【0066】
この調製方法において用いられる各成分の好ましい重量部は、アゾ基含有ポリシロキサン化合物0.1〜40重量部、より好ましくは10〜40重量部、アクリル酸および/またはメタクリル酸0.2〜94.8重量部、より好ましくは15〜70重量部、そしてエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー0.2〜94.8重量部、より好ましくは5〜70重量部である。フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーを用いる場合は、4.9〜49.9重量部、より好ましくは5〜35重量部用いるのが好ましい。また、その他のラジカル重合性モノマー用いる場合は、0.1〜45.1重量部、より好ましくは0.1〜35重量部用いるのが好ましい。
【0067】
なお、この調製方法においては、用いるエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの量を調製することによって、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体に含まれる光反応性二重結合基の当量数とカルボン酸基の当量数との比率を調節することができる。いいかえれば、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの量を調節することによって、得られた共重合体中に含まれるカルボン酸基の一部のみと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーに含まれるエポキシ基とを反応させることができる。このような方法によって、光反応性二重結合基含有アクリルブロックおよびカルボキシル基含有アクリルブロックを有する共重合体を調製することができる。
【0068】
一方、上記調製方法の他の一例においては、まず、アゾ基含有ポリシロキサン化合物と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、そして必要に応じたフルオロアルキル基を有する不飽和モノマーおよび/またはその他のラジカル重合性モノマーと、を重合させる。次いで得られた共重合体と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを反応させることにより、共重合体に含まれるエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸が有するカルボン酸とが反応し、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が得られることとなる。この方法における重合方法などの反応方法は、上記と同様である。
【0069】
この調製方法において用いられる各成分の好ましい重量部は、アゾ基含有ポリシロキサン化合物0.1〜40重量部、より好ましくは10〜40重量部、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー5〜94.8重量部、より好ましくは15〜70重量部、そしてアクリル酸および/またはメタクリル酸0.2〜94.8重量部、より好ましくは5〜70重量部である。フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーを用いる場合は、4.9〜49.9重量部、より好ましくは5〜35重量部用いるのが好ましい。またその他のラジカル重合性モノマーを用いる場合は、0.1〜45.1重量部、より好ましくは0.1〜35重量部用いるのが好ましい。
【0070】
さらに他の調製方法として、まず、アゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いで、得られた共重合体中に含まれるエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを反応させる方法が挙げられる。この方法によって、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックおよび(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を調製することができる。この方法における重合方法などの反応方法および好ましい量は上記と同様である。
【0071】
これらの調製方法によって、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を好適に調製することができる。(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体は、防汚性ハードコート用組成物の固形分重量に対して0.1〜30重量%(固形分重量比)ほど用いるのが好ましい。(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体の量が0.1重量%より少ない場合は、良好な撥水性および撥油性を発現できないおそれがある。
【0072】
(B)光重合性多官能化合物
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、(B)光重合性多官能化合物を含む。(B)光重合性多官能化合物が含まれることによって、防汚性ハードコート用組成物の光硬化性が向上し、また得られるハードコート層の機械的強度が高まることとなる。(B)光重合性多官能化合物は、一分子中に2以上の光重合性基を有する化合物である。(B)光重合性多官能化合物として、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることができる。(B)光重合性多官能化合物として、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお(B)光重合性多官能化合物として、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、モノマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0073】
モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの低分子量ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキシド変成体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジまたはトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタまたはヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールポリ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキサイド変成体;イソシアヌル酸アルキレンオキシド変成体のジまたはトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0074】
オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどのオリゴマーが挙げられる。この中ではウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく用いられる。
【0075】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリオールと有機ポリイソシアナートとの反応物に、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物が挙げられる。ここで、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの低分子量ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;上記の低分子量ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸またはその無水物などの酸成分との反応物であるポリエステルポリオールなどが挙げられる。有機ポリイソシアネートしては、ジイソシアネートやこれらを重合させた多官能イソシアネートが好ましく用いられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられ、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの多官能アクリレート化合物が好ましく用いられる。なお、光重合性多官能化合物(B)として用いることができるウレタンアクリレートオリゴマーは、数平均分子量が300〜5,000であることが好ましく、500〜3,000であることがより好ましい。300より小さいと揮発性が生じ、環境衛生上好ましくない。5,000より大きいと高粘度になり、取り扱いが困難となる恐れがある。
【0076】
これらの(B)光重合性多官能化合物は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0077】
(B)光重合性多官能化合物として、一分子中に3またはそれ以上の光重合性基を有するモノマーを用いるのが好ましい。このようなモノマーを用いることによって、得られるハードコート層の機械的強度をより高めることができる。好ましい(B)光重合性多官能化合物として、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0078】
(B)光重合性多官能化合物は、防汚性ハードコート用組成物の固形分重量に対して50〜99.8重量%(固形分重量比)ほど用いるのが好ましい。(B)光重合性多官能化合物の量が50重量%より少ない場合は、耐擦傷性、表面の膜硬度などの物理的強度が劣ることとなるおそれがある。
【0079】
(C)光重合開始剤
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、(C)光重合開始剤を含む。(C)光重合開始剤が存在することによって、光反応性シリコーンアクリル共重合体および光重合性多官能化合物が活性エネルギー線の照射により重合することとなる。(C)光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0080】
上記(C)光重合開始剤のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
【0081】
(C)光重合開始剤は、防汚性ハードコート用組成物の固形分重量に対して0.1〜20重量%(固形分重量比)ほど用いるのが好ましい。(C)光重合開始剤の量が上記範囲を外れる場合は、光硬化性が不十分となり、物理的強度が劣ることとなるおそれがある。
【0082】
他の成分
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、必要に応じて、シリコーン系添加剤またはフッ素系添加剤などの添加剤を含んでもよい。これらを含めることによって、ハードコート層が設けられる光学表示装置に応じた性能を付与させることが可能となる。しかしながら、これらの添加剤は必ずしも必要とされるものではない。使用できる添加剤として、例えばTEGO(登録商標)Radシリーズ(Tego社製)、2100、2200N、2250、2500、2600、2700などのシリコーン系添加剤、また、メガファック(登録商標)Fシリーズ(大日本インキ化学工業(株)社製)F−482、F−483、F−484、F−178RM、ESM−1またはMCF−350SFなどのフッ素系添加剤を用いることができる。
【0083】
これらのシリコーン系添加剤またはフッ素系添加剤を用いる場合は、防汚性ハードコート用組成物の固形分重量に対して0.01〜10重量%ほど用いるのが好ましい。
【0084】
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、必要に応じて、エチレン性不飽和基を1個有する化合物を配合することもできる。このような化合物を含めることによって、得られるハードコート層の密着性、硬度、および柔軟性を調整することができる。エチレン性不飽和基を1個有する化合物としては、シクロヘキシルメタクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノールのアルコキシオキシド付加物の(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリップロピレングリコールモノ(メタ)アクリレーとなどのグリコールのモノ(メタ)アクリレート;N−ビニルピドリロン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物などが挙げられる。
【0085】
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、必要に応じて無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤を含むことによってハードコート層の耐擦傷性および表面の膜硬度をさらに向上させることができる。用いることができる無機充填剤として、例えば、金属または金属の酸化物の微粒子を挙げることができる。金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sb等が挙げられる。具体的な無機充填剤として、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。これらの無機充填剤は、平均粒径5〜50nm程度であるものがより好ましい。なお、無機充填剤を用いる場合は、防汚性ハードコート用組成物の固形分重量に対して0.1〜50重量%ほど用いるのが好ましい。無機充填剤の含有量が50重量%を超える場合は、得られるハードコート層の膜強度が弱くなるおそれがある。
【0086】
無機充填剤として反応性無機充填剤を用いるのが好ましい。そして反応性無機充填剤として、反応性シリカ粒子を用いるのがより好ましい。反応性シリカ粒子を用いることによって、光重合させる際にシリカ粒子を樹脂成分に良好に固定することができ、得られるハードコート層の耐擦傷性および表面の膜硬度をより高めることができる。この反応性シリカ粒子は、重合性不飽和基修飾加水分解性シランと、シリカ粒子とを加水分解反応させることによって、調製することができる。
【0087】
このような反応性無機充填剤の調製例として、特開昭57−131214号公報では、シランカップリング剤で処理されたコロイダルシリカを含有するアクリレート系組成物が提案されており、そしてこれは公知のものである。このような反応性シリカ粒子を無機充填剤として用いることによってハードコート層の耐擦傷性および表面の膜硬度をより高めることができる。
【0088】
反応性無機充填剤の一般的な調製例として、例えば、市販のシランカップリング剤と市販のコロイドシリカを、水および混和性アルコールの存在下で加水分解および縮合反応させることにより調製することができる。混和性アルコールとしては、具体的にはt−ブタノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど、またはエーテルアルコール、例えばエトキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノールなどが挙げられる。調製後、水もしくは溶剤を減圧下で留去しても良い。
【0089】
反応性無機充填剤の調製に用いることができるコロイドシリカの具体例としては、例えば、E.I.du pont de Nemours & Co.(USA)から、Ludox AM、Ludox AS、Ludox LS、Ludox HS等の商品名で、日産化学株式会社からはスノーテックスシリーズ、オルガノゾルシリーズの商品名で、Monsant Co.(USA)からはSyton C−30、Syton―200等の商品名で、またNalco Chem. Co.(USA)からはNalcoag 1030、Nalcoag 1060、Nalcoag ID−21−64等の商品名で市販されているものなどを挙げることができる。
【0090】
無機充填剤の表面処理に用いるシランカップリング剤の具体列としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ一メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ一アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社、ジーイー東芝シリコーン株式会社等より市販されているものが挙げられる。
【0091】
本発明の防汚性ハードコート用組成物が、反応性無機充填剤を含む場合、各成分は
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体0.1〜30重量%、
(B)光重合性多官能化合物50〜99.7重量%、
(C)光重合開始剤0.1〜20重量%、および
反応性無機充填剤0.1〜50重量%
(但し、上記成分の重量%は何れも組成物中の固形分重量を基準とし、各成分の固形分合計重量を100重量%とする。)の量で含むのがより好ましい。
【0092】
本発明の防汚性ハードコート用組成物はさらに、必要に応じて、希釈溶媒としての有機溶媒を含んでもよい。このような有機溶媒として、例えば、用いられる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
【0093】
本発明の防汚性ハードコート用組成物はさらに、必要に応じて、帯電防止剤、光重合開始助剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料などの通常用いられる添加剤を含んでもよい。
【0094】
防汚性ハードコート用組成物
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体、(B)光重合性多官能化合物および(C)光重合開始剤を少なくとも含有する。そして本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いることによって、単層であっても耐擦傷性、表面の膜硬度に優れ、かつ防汚性および防汚耐久性にも優れたハードコート層を、形成することができる。
【0095】
また、本発明の防汚性ハードコート用組成物は光硬化性である。そのため、ハードコート層を形成する際に、加熱重合させる必要がないという利点を有する。光学表示装置の中には、例えば樹脂フィルムなど耐熱性が低い部材を含んでいるものも多く含まれる。本発明の防汚性ハードコート用組成物は、そのような耐熱性が低い部材を含む光学表示装置に対しても、良好にハードコート層を形成することができるという利点を有する。
【0096】
本発明の防汚性ハードコート用組成物は、上記成分を混合することによって調製することができる。また、組成物の調製時に、必要に応じて、希釈に用いることができる有機溶媒を用いてもよい。なお、本発明の防汚性ハードコート用組成物は、希釈して用いてもよく、また希釈することなく用いてもよい。
【0097】
防汚性ハードコート用組成物の調製方法としては、例えば、上記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体、(B)光重合性多官能化合物および(C)光重合開始剤、そして必要に応じた添加剤および有機溶媒等を混合することによって、調製することができる。
【0098】
本発明の防汚性ハードコート用組成物を、光学表示装置の表面上に塗装することによって、光学表示装置の表面上にハードコート層を形成することができる。本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いてハードコート層を設けることができる光学表示装置として、液晶表示装置、CRT(ブラウン管)表示装置、タッチパネルディスプレーなどが挙げられる。
【0099】
防汚性ハードコート用組成物の塗装方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレー法、ローラー法、はけ塗り法などが挙げられる。そして塗装する光学表示装置の種類に応じて、適した塗装方法を選択することができる。防汚性ハードコート用組成物の塗装において、得られるハードコート層の厚さが0.1〜20μmとなるように塗装するのが好ましい。
【0100】
光学表示装置の表面上に塗装された防汚性ハードコート用組成物は、次いで活性エネルギー線の照射に曝されることによって硬化し、これによりハードコート層が形成される。ここでの照射は、200〜500nmの波長の光を用いて、5〜240秒間照射するのが好ましい。
【実施例】
【0101】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0102】
製造例1 光反応性シリコーンアクリル共重合体(1)の製造
VPS−1001(アゾ基含有ポリシロキサン化合物、和光純薬工業社製、ポリシロキサン鎖の分子量10000、式(IV)中p=2、q=3、mは約135、固形分27%)272g(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるポリシロキサン鎖の固形分重量割合が30重量%になる量)と、ビスコート3F(大阪有機化学工業(株)製)49g、アクリル酸32gからなるモノマー混合物(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるフッ素含有不飽和モノマーの含有量:20重量%)とを混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000mlのガラス容器中で、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート310gに3時間かけて等速で滴下し、その後、30分間、100℃で反応させた。
【0103】
その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液13gを30分間で等速滴下してから、さらに100℃で1.5時間反応させた。
【0104】
この反応溶液に空気バブリングしながら4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル91gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98gの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後8時間かけて更に反応させて光反応性シリコーンアクリル共重合体(1)を得た。
【0105】
製造例2 光反応性シリコーンアクリル共重合体(2)の製造
VPS−1001(アゾ基含有ポリシロキサン化合物、和光純薬工業社製、ポリシロキサン鎖の分子量10000、固形分27%)272g(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるポリシロキサン鎖の固形分重量割合が30重量%になる量)と、ビスコート8F(大阪有機化学工業(株)製)49g、メタクリル酸47gからなるモノマー混合物(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるフッ素含有不飽和モノマーの含有量:20重量%)とを混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000mlのガラス容器中で、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート310gに3時間かけて等速で滴下し、その後、30分間、100℃で反応させた。
【0106】
その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液13gを30分間で等速滴下してから、さらに100℃で1.5時間反応させた。
【0107】
この反応溶液に空気バブリングしながらグリシジルメタクリレート76gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98gの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後8時間かけて更に反応させて光反応性シリコーンアクリル共重合体(2)を得た。
【0108】
製造例3 光反応性シリコーンアクリル共重合体(3)の製造
VPS−1001(アゾ基含有ポリシロキサン化合物、和光純薬工業社製、ポリシロキサン鎖の分子量10000、固形分27%)272g(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるポリシロキサン鎖の固形分重量割合が30重量%になる量)と、アクリエステル17FE(三菱レイヨン(株)製)49g、アクリル酸42gからなるモノマー混合物(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるフッ素含有不飽和モノマーの含有量:20重量%)とを混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000mlのガラス容器中で、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート310gに3時間かけて等速で滴下し、その後、30分間、100℃で反応させた。
【0109】
その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液13gを30分間で等速滴下してから、さらに100℃で1.5時間反応させた。
【0110】
この反応溶液に空気バブリングしながらグリシジルメタクリレート81gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98gの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後8時間かけて更に反応させて光反応性シリコーンアクリル共重合体(3)を得た。
【0111】
製造例4 光反応性シリコーン−アクリルブロック共重合(4)の製造
VPS−1001(アゾ基含有ポリシロキサン化合物、和光純薬工業社製、ポリシロキサン鎖の分子量10000、固形分27%)272g(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるポリシロキサン鎖の固形分重量割合が30重量%になる量)と、アクリエステル17FE (三菱レイヨン(株)製)49g、シクロヘキシルメタクリレート74g、アクリル酸17gからなるモノマー混合物(光反応性シリコーンアクリル共重合体中におけるフッ素含有不飽和モノマーの含有量:20重量%)とを混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000mlのガラス容器中で、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート310gに3時間かけて等速で滴下し、その後、30分間、100℃で反応させた。
【0112】
その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液13gを30分間で等速滴下してから、さらに100℃で1.5時間反応させた。
【0113】
この反応溶液に空気バブリングしながらグリシジルメタクリレート32gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98gの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後8時間かけて更に反応させて光反応性シリコーンアクリル共重合体(4)を得た。
【0114】
製造例5 反応性無機充填剤の調製
イソプロパノール165重量部、IPA−ST(30%コロイドシリカ分散液、日産化学株式会社製)106重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM−503、信越化学工業株式会社製)8.1重量部、蒸留水1.0重量部の混合物を80℃に加熱して3時間撹伴させた。プロピレングリコールモノメチルエーテル165重量部を加え、次いでイソプロパノールおよび水を減圧下で留去させることにより、反応性無機充填剤を含む微白濁な溶液を得た。
【0115】
比較製造例1 シリコーンアクリル共重合体の製造
VPS−1001(アゾ基含有ポリシロキサン化合物、和光純薬工業社製、ポリシロキサン鎖の分子量10000、固形分27%)272g(シリコーンアクリル共重合体中におけるポリシロキサン鎖の固形分重量割合が30重量%になる量)と、シクロヘキシルメタクリレート49g、アクリル酸42gからなるモノマー混合物とを混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000mlのガラス容器中で、窒素雰囲気下で100℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート310gに3時間かけて等速で滴下し、その後、30分間、100℃で反応させた。
【0116】
その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液13gを30分間で等速滴下してから、さらに100℃で1.5時間反応させた。
【0117】
この反応溶液に空気バブリングしながらグリシジルメタクリレート81gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98gの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後8時間かけて更に反応させてシリコーンアクリル共重合体を得た。
【0118】
実施例1〜4 防汚性ハードコート用組成物の調製
上記製造例により得られた光反応性シリコーンアクリル共重合体(1)〜(4)を用いて、表1に示した組成に従い各成分を混合し、防汚性ハードコート用組成物を調製した。
【0119】
比較例1〜5
表2に示した組成に従い各成分を混合し、防汚性ハードコート用組成物を調製した。
【0120】
実施例および比較例により得られた防汚性ハードコート用組成物を用いて、以下の通り評価を行った。
【0121】
試験サンプルの作成
実施例および比較例により得られた防汚性ハードコート用組成物を、基材(厚さ100μmのペットフィルム、東洋紡績(株)社製、商品名コスモシャインA4100)上に、バーコーターを用いて、乾燥膜厚8μmになるように塗装した。80℃の熱風式乾燥機で180秒乾燥後、高圧水銀ランプを用いて1J/cmの光量で照射して硬化させた。その後23℃で24時間保管した後、各評価試験を行った。
【0122】
全光線透過率
ヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて、ハードコート層に対する入射光強度(T)とハードコート層を透過した全透過光強度(T)とを測定し、下記式により全光線透過率(T(%))を算出した。得られた結果について、表1および2に示す。
【0123】
【数1】

【0124】
ヘイズの測定
ヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて、ハードコート層の拡散透光率(T(%))および上記全光線透過率(T(%))を測定し、ヘイズを算出した。
【0125】
【数2】

H:ヘイズ(曇価)(%)
:拡散透光率(%)
:全光線透過率(%)
【0126】
耐擦傷性試験
スチールウール(日本スチールウール株式会社製、No.0000)により、ハードコート膜の表面をlkg/cmの荷重をかけながら10回往復し、傷の発生の有無及び傷の程度を目視により観察した。
【0127】
密着性評価
コート面にカッターナイフでlmm間隔のキズを縦11本、横11本入れ、計100個の升目を作製し、ニチバンセロテープ(登録商標)をその上から完全に密着させ、フィルムに対して90度方向に一気に引き剥がし、フィルムに完全に残存する升目数により評価した。
【0128】
防汚性評価
協和界面科学(株)製の接触角計Face Contact−Anglemeterを用いて、静止接触角を測定した。測定液として純水およびn−オクタンを用いた。測定環境は、温度20℃、相対湿度60%であった。最初に、ラビング前の接触角を測定した。
【0129】
防汚耐久性評価
次いで、エタノールラビング後の接触角を測定した。フェルト(大平理化工業株式会社製)にエタノールを含浸させ、これを荷重1kg/cmにて、各試験サンプルのハードコート表面に押し付けて100往復摺動させ、その後に、上記と同条件で接触角を測定した。ラビング後の接触角を測定することによって防汚耐久性を評価することができ、ラビング前の接触角およびラビング後の接触角の変化の差が小さいほど、防汚耐久性が高い。得られた結果について、表1および2に示す。
【0130】
鉛筆硬度試験
試験サンプルを用いて、JIS K5600−5−4(1999)、ひっかき硬度(鉛筆法)に従ってハードコート層の鉛筆硬度を測定した。得られた結果を表1および2に示す。
【0131】
【表1】

*1:東亞合成株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート
*2:東亞合成株式会社製、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート
*3:東亞合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート
*4:共栄社化学社製、単官能アクリレート化合物
*5:イルガキュア907、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン
*6:大日本インキ化学工業(株)社製、フッ素系添加剤
*7:大日本インキ化学工業(株)社製、フッ素系添加剤
*8:ビックケミー・ジャパン(株)社製、光反応性シリコーン化合物
*9:Tego社製、光反応性シリコーン化合物
*10:製造例5より調製された反応性無機充填剤
*11:溶媒
【0132】
【表2】

【0133】
表1および2に示されるとおり、本発明の防汚性ハードコート用組成物から得られたハードコート層は△ヘイズが低く、そして全光線透過率は低下することなく透明性が維持されつつ、かつ、良好な耐擦傷性を有していることがわかる。水接触角の値についても、ラビング前およびラビング後の両方共高く、撥水性およびこの撥水性の持続性に優れていることがわかる。さらに、光反応性シリコーンアクリル共重合体として、フルオロアルキル基含有アクリルブロックを含む共重合体を用いた場合は、シリコーン系添加剤およびフッ素系添加剤といった添加剤を加えていないものであっても、高いn−オクタン接触角を達成している。そしてこのn−オクタン接触角は、ラビング前およびラビング後の両方共高く、撥油性およびこの撥油性の持続性に優れていることがわかる。
【0134】
一方、光反応性シリコーンアクリル共重合体の代わりに、光反応性シリコーン化合物を用いた比較例3および4においては、水接触角は高く撥水性に優れるものの、n−オクタン接触角が低く、撥油性が劣るものであった。また、光反応性シリコーンアクリル共重合体を用いず、フッ素系化合物を加えた比較例1および2においては、初期の水接触角およびn−オクタン接触角は共に高く、撥油性および撥油性は優れるものの、ラビング後はこれらの接触角が低下してしまい、防汚耐久性が劣るものであった。また、耐擦傷性にも劣るものであった。比較例5は、ポリシロキサンブロックを有する共重合体にフッ素系添加剤を加えた、ハードコート用組成物であり、これは比較用の参考例である。この比較例5と実施例とを比較することによって、本願発明の防汚性ハードコート用組成物は、フッ素系添加剤を加えることなく、比較例5と同等またはそれ以上の防汚性等を有し、かつ防汚耐久性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いることによって、光学表示装置表面に、透明性を維持しつつ、耐擦傷性に優れ、かつ高い防汚性および防汚耐久性を有するハードコート層を、より簡便に設けることができる。本発明の防汚性ハードコート用組成物により得られるハードコート層は、単層であっても高い耐擦傷性、防汚性および防汚耐久性を有している。本発明の防汚性ハードコート用組成物を用いることによって、組成物を1回塗装することにより優れたハードコート層を形成することができ、そのため工業的生産性が非常に優れている。また本発明の防汚性ハードコート用組成物は光硬化性であるため、ハードコート層を、種々の光学表示装置の表面上により簡便に形成できるという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、
(a−1)下記式(I)で表されるポリシロキサンブロック
【化1】

式(I)
[式(I)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはニトリル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し;Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のフェニル基を表し;p及びqは、同一または異なって、0〜6の整数を表し;mは0〜600の整数を表す。]、および
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、
を有する、
防汚性ハードコート用組成物。
【請求項2】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体0.1〜30重量%、
(B)光重合性多官能化合物50〜99.8重量%、および
(C)光重合開始剤0.1〜20重量%、
(但し、上記成分(A)〜(C)の重量%は何れも組成物中の固形分重量を基準とし、各成分の固形分合計重量を100重量%とする。)
を含む、請求項1記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項3】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項4】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合し、次いでアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項5】
前記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、さらに(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックを有する、請求項1記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項6】
前記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの重量比率が、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%、および
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%
である、請求項5記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項7】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項8】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合し、次いでアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させることにより得られる共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項9】
前記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、さらに(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する、請求項5記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項10】
前記(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体を構成する各ブロックの重量比率が、
(a−1)ポリシロキサンブロック0.1〜40重量%
(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック5〜94.8重量%
(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロック4.9〜49.9重量%、および
(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロック0.1〜45.1重量%
である、請求項9記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項11】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いでエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、得られた共重合体中に含まれるカルボン酸基の一部とを反応させることにより得られる、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックおよび(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項12】
(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体;(B)光重合性多官能化合物;および(C)光重合開始剤;を含む、防汚性ハードコート用組成物であって、
該(A)光反応性シリコーンアクリル共重合体が、少なくともアゾ基含有ポリシロキサン化合物と、フルオロアルキル基を有する不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを共重合し、次いで、得られた共重合体中に含まれるエポキシ基と、アクリル酸および/またはメタクリル酸とを反応させることにより得られる、(a−1)ポリシロキサンブロック、(a−2)光反応性二重結合基含有アクリルブロック、(a−3)フルオロアルキル基含有アクリルブロックおよび(a−4)カルボキシル基含有アクリルブロックを有する共重合体である、防汚性ハードコート用組成物。
【請求項13】
さらに反応性無機充填剤を含む、請求項1〜12いずれかに記載の防汚性ハードコート用組成物。
【請求項14】
請求項1〜13いずれかに記載の防汚性防汚性ハードコート用組成物から得られるハードコート層を有する、光学表示装置。

【公開番号】特開2008−56789(P2008−56789A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234719(P2006−234719)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】