説明

防滑性床材

【課題】エンボス加工を施した従来の防滑性床材と同等以上の防滑性能と、従来の防滑性床材よりも遥かに優れた掃きだし性能を併せ持ち、粒子の剥脱も生じ難い防滑性床材を提供する。
【解決手段】エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シート1の表面に、平均粒径が5〜50μmの微小粒子2aを20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる表面粗さが2〜15μmの防滑層2を一体に形成した防滑性床材10とする。特定構成の防滑層2により、従来の防滑性床材と同等以上の防滑性能と、優れた掃きだし性能を発揮させ、粒子の剥脱も防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製の防滑性床材に関し、更に詳しくは、エンボス加工を施した従来の防滑性床材と同等以上の防滑性能を備えているにも拘わらず、箒による土埃等の掃きだし性能に優れた防滑性床材に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、従来の防滑性床材には、エンボス加工によって合成樹脂製床シートの表面に防滑用の凹凸を形成したものが多い。
【0003】
また、最近では、合成樹脂製床シートの上に、平均粒径が100〜200μmの球状粒子を含んだ紫外線硬化型塗料からなる表面保護層を設けた防滑性床材であって、表面保護層が球状粒子により丸みを帯びた凹凸表面を有し、その凹部と凸部の差が50μm以上である防滑性床材が提案されている。そして、この防滑性床材において、平均粒径が5〜20μmの微細粒子を紫外線硬化型塗料に補助的に含有させ、表面保護層の丸みを帯びた凹凸表面に微細な凹凸を形成してもよいことが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−316578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンボス加工によって表面に防滑用の凹凸を形成した従来の防滑性床材は、実用上不満のない防滑性能を発揮できる反面、凹凸表面の凹部と凸部の差が通常0.3mm以上と大きいため、凹凸表面にたまった土埃等を箒で殆ど残らないように掃きだすことが容易でないという問題がある。
【0005】
一方、前記特許文献1の防滑性床材は、平均粒径が100〜200μmの球状粒子を含んだ紫外線硬化型塗料からなる表面保護層の凹凸表面の凹部と凸部の差が50μm以上であり、エンボス加工した従来の防滑性床材の凹凸表面に比べると凹部と凸部の差が小さいので、土埃等の掃きだし性能は従来の防滑性床材よりも改善されると考えられる。けれども、凹部と凸部の差が50μmもあれば、やはり土埃等が凹部に残留しやすいので、掃きだし性能の改善効果は不充分と推測される。特に、平均粒径が5〜20μmの微細粒子を紫外線硬化型塗料に補助的に含有させて表面保護層の凹凸表面に微細な凹凸を形成した場合は、保護層表面の凹凸に加えて、微細な凹凸が土埃等の掃きだしを妨げるように作用するため、掃きだし性能の改善効果は更に不充分になると推測される。
【0006】
また、特許文献1の防滑性床材のように、紫外線硬化型塗料からなる表面保護層に平均粒径が100〜200μmの比較的大きい球状粒子が含まれていると、歩行時の摩擦等によって球状粒子が剥脱しやすいという問題もある。
【0007】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、エンボス加工を施した従来の防滑性床材と同等以上の防滑性能と、従来の防滑性床材よりも遥かに優れた掃きだし性能を併せ持ち、粒子の剥脱も生じ難い防滑性床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る防滑性床材は、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シートの表面に、平均粒径が5〜50μmの微小粒子を20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる表面粗さが2〜15μmの防滑層を一体に形成したことを特徴とするものである。ここに「表面粗さ」とは、JIS B0601に準拠する表面粗さRaを意味する。
このような本発明の防滑性床材においては、防滑層の平均厚さが10〜50μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防滑性床材のように、平均粒径が5〜50μmの微小粒子を20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料によって、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シートの表面に、表面粗さが2〜15μmの防滑層を一体に形成すると、防滑層表面の微細な凹凸によって履物の底面との摩擦が高まり、後述の実験結果で裏付けられるように、従来のエンボス加工された防滑性床材と同等以上の防滑性能を発揮することができる。しかも、防滑層の表面粗さが2〜15μmであると、防滑層表面の凹部が極めて浅くなるため、アクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる防滑層の表面には土埃等がくっつきにくいことと相俟って、箒で土埃等を掃きだすときに土埃等が浅くて微細な凹部に残りにくくなり、後述の実験結果で裏付けられるように、防滑性床材の防滑層の表面に溜まった土埃等の略97%以上を箒で掃きだすことが可能になって、従来のエンボス加工された防滑性床材よりも遥かに優れた掃きだし性能を発揮することができる。
【0010】
上記のように優れた掃きだし性能が発揮されるのは、あくまでも、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シートの表面に、表面粗さが2〜15μmと極めて小さい防滑層を設けたからであり、エンボス加工によって大きい凹凸が形成された合成樹脂製床シートの凹凸表面に上記の防滑層を設けた場合には、前記特許文献1の防滑性床材の場合と同様に、土埃等が大きい凹部に残りやすくなり、防滑層表面の微細な凹凸が土埃等の掃きだしを妨げるように作用するので、充分な掃きだし性能を発揮することはできない。
【0011】
また、本発明の防滑性床材のように、平均粒径が5〜50μmの微小粒子を20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料によって表面粗さが2〜15μmの防滑層を形成すると、含まれる微小粒子の平均粒径が5〜50μmと小さいため、歩行時の摩擦等による微小粒子の剥脱が生じ難くなり、良好な防滑性能を長期に亘って維持できるようになる。そして、上記のように微小粒子の含有率が60質量%以下であると、アクリル系紫外線硬化型塗料がゲル化しないので、通常の塗布手段で塗布した後、紫外線硬化させることにより、確実に防滑層を形成することができる。
【0012】
更に、微小粒子を含んだアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる防滑層の平均厚さが10〜50μmであると、該防滑層によって合成樹脂製床シートを確実に被覆保護し、汚れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明に係る防滑性床材を模式的に示した部分断面図であって、図示のように、本発明の防滑性床材は10は、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シート1の表面に防滑層2を一体に形成したものである。
【0015】
合成樹脂製床シート1は、熱可塑性樹脂に充填材、各種添加材、顔料などを含有させたシートであって、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが単独で又は2種以上混合して使用され、また、ポリオレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系などの熱可塑性エラストマーも使用される。
【0016】
この合成樹脂製床シート1は、充填材、添加材、顔料等を配合した熱可塑性樹脂の粒状物(又は破砕片)を支持体に供給し、加熱溶融して粒状物(又は破砕片)同士を圧着することにより、シート状に成形したものでもよいし、押出成形などの成形手段でシート状に成形したものでもよい。また、単層のシートでも複層のシートでもよく、更に、寸法安定性や接着性を高めるために、シートの中間や裏面にガラス繊維や有機繊維の繊維層(不織布、織布、紙)などを積層したものでもよい。床シート1の厚みは、従来の床材と同様、2〜3mmとするのが適当である。
【0017】
この防滑性床材10の大きい特徴は、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シート1の平坦な表面に一体に形成された防滑層2にある。この防滑層2は平均粒径が5〜50μmの微小粒子2aを20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなるものであって、防滑層2の表面には浅い凹部2bと低い凸部2cが交互に形成されており、JIS B0601に準拠する表面粗さが2〜15μmと極めて小さくなっている。
【0018】
防滑層2を形成するためのアクリル系紫外線硬化型塗料は特に限定されるものではなく、例えば、光ラジカル重合型のウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのオリゴマーを主剤とする公知の塗料が使用される。これらのうちウレタンアクリレートを主剤とする塗料は、丈夫な塗膜の防滑層2を形成し、合成樹脂製床シート1を長期に亘って被覆保護できるので、特に好ましく使用される。
【0019】
アクリル系紫外線硬化型塗料に含有させる微小粒子2aは、上記のように5〜50μmの平均粒径を有するものであって、例えば、珪石粉、珪砂、湿式シリカ粉(ゲル法シリカ粉、沈殿法シリカ粉等)、乾式シリカ粉(燃焼法シリカ粉、アーク法シリカ粉等)などの無機粒子や、くるみ殻粉、樹脂パウダーなどの有機粒子が使用される。平均粒径が5μmより小さい微小粒子は、アクリル系紫外線硬化型塗料に多量に含有させなければ2μm以上の表面粗さを有する防滑層2を形成し難いという不都合があり、市場で入手することも難しいので、不適当である。一方、平均粒径が50μmより大きい粒子は、アクリル系紫外線硬化型塗料に対する含有量をかなり少なくしても、15μm以下の表面粗さを有する防滑層2を形成し難いという不都合があり、また、歩行時の摩擦等によって粒子が防滑層2から剥脱しやすいという不都合もあるので、不適当である。微小粒子2aのより好ましい平均粒径は、7〜50μmである。
【0020】
上記の微小粒子2aは、JIS K5101に準拠する吸油量が60(ml/100g)以下のものを選択してアクリル系紫外線硬化型塗料に含有させる必要があり、これより多い吸油量の微小粒子を含有させると、アクリル系紫外線硬化型塗料がゲル化して通常の塗布が困難になるという不都合を生じる。
【0021】
アクリル系紫外線硬化型塗料における微小粒子2aの含有率(換言すれば、防滑層2における微小粒子2aの含有率)は、前述したように20〜60質量%とする必要がある。つまり、アクリル系紫外線硬化型塗料100質量部に対して、微小粒子2aを25〜150質量部の割合で含有させる必要がある。微小粒子2aの含有率が20質量%より低い場合は、微小粒子2aとして平均粒径が50μmのものをアクリル系紫外線硬化型塗料に含有させても、2μm以上の表面粗さを有する防滑層2を形成しにくいという不都合が生じ、一方、含有率が60質量%より高い場合は、アクリル系紫外線硬化型塗料がゲル化して通常の塗布手段では塗布が困難になるという不都合が生じるので、いずれの場合も不適当である。微小粒子2aの更に好ましい含有率は28.5〜60質量%、つまり、アクリル系紫外線硬化型塗料100質量部に対して微小粒子が40〜150質量部の割合である
【0022】
防滑層2の平均厚さは特に限定されないが、10〜50μm程度の平均厚さを有する防滑層2を形成して、合成樹脂製床シート1を確実に被覆保護し、汚れを防止することが好ましい。10μmより薄くなると、比較的短期間で防滑層2が磨滅するという不都合が生じ、50μmより厚くしても、それに見合うだけのメリットがなく、材料の無駄使いとなるからである。
【0023】
上記のように平均粒径が5〜50μmの微小粒子2aを20〜60質量%含有させたアクリル系紫外線硬化型塗料を、エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シート1の平坦な表面に、ロールコーターなどの塗布手段で塗布し、紫外線照射により塗膜を硬化させて、表面粗さが2〜15μmの防滑層2を形成すると、防滑層2の表面の微細な凹凸によって履物の底面との摩擦が高まり、後述の実験結果で裏付けられるように、従来のエンボス加工された防滑性床材と同等以上の防滑性能を発揮することができる。また、防滑層2の表面粗さが2〜15μmであると、防滑層2表面の凹部2bが極めて浅いため、アクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる防滑層2には土埃等がくっつきにくい(固着しにくい)ことと相俟って、箒で土埃等を掃きだすときに土埃等が凹部2bに残りにくくなり、後述の実験結果で裏付けられるように、防滑性床材10の防滑層2の表面に溜まった土埃等の略97%以上を箒で掃きだすことが可能になって、従来のエンボス加工された防滑性床材よりも遥かに優れた掃きだし性能を発揮できるようになる。
【0024】
防滑層2の表面粗さが2μm未満の場合は、掃きだし性能が更に向上することになるが、防滑性能が従来のエンボス加工された防滑性床材よりも劣るという不都合が生じ、一方、表面粗さが15μmを越える場合は、防滑性能が更に向上することになるが、優れた掃きだし性能を発揮し難くなるという不都合が生じるので、いずれの場合も不適当である。防滑層2の更に好ましい表面粗さは2〜11μmである。
【0025】
尚、エンボス加工によって凹凸が形成された合成樹脂製床シートの表面に上記の防滑層2を形成した場合は、既述したように、エンボス加工で形成された大きい凹部に土埃等が残りやすくなり、防滑層の微細な凹凸が大きい凹部からの土埃等の掃きだしを妨げるように作用するので、満足な掃きだし性能を得ることはできない。
【0026】
次に、本発明の具体的な実施例と比較例について説明する。
【0027】
[実施例1〜7]
市販のアクリル系紫外線硬化型塗料用主剤(荒川化学工業(株)製のビームセット710)と光硬化剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア184)を100:4の割合で混合した。この混合塗料(以下、アクリル系紫外線硬化型塗料と記す)100質量部に対して、下記の表1に示す種々の微小粒子を、下記の表1に示す添加部数で配合した。この微小粒子を配合したアクリル系紫外線硬化型塗料を、エンボス加工が施されていない厚さ2mmの塩化ビニル樹脂製床シートの平坦な表面にロールコーターで塗布し、紫外線を照射して塗膜を硬化させることにより、平均厚さが20μmの防滑層を形成して、実施例1〜7の防滑性床材のサンプルを作製した。
得られた実施例1〜7の防滑性床材のサンプルについて、下記の試験方法で防滑層の表面粗さ、防滑性能、掃きだし性能を測定した。
【0028】
[表面粗さの測定方法]
東京精密(株)製の測定装置(SURFCOM 130A)を使用し、評価長さ5.000mm、測定速度0.6mm/s、カットオフ値0.8mmの条件でサンプルの防滑層の表面粗さを測定した。
【0029】
[防滑性能の試験方法]
塩化ビニル樹脂板に各サンプル(300×300mm)を3枚貼り付け、乾燥時とサンプルに水を散布した湿潤時に、その上を20人に歩行してもらい、防滑性能を7段階で官能評価してもらう。即ち、非常に滑りやすい場合は1点、かなり滑りやすい場合は2点、やや滑りやすい場合は3点、どちらともいえない場合は4点、やや滑りにくい場合は5点、かなり滑りにくい場合は6点、非常に滑りにくい場合は7点とし、20人の平均点を求めた。
一方、エンボス加工をした塩化ビニル樹脂製の床材であって、その表面を上記のアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜で被覆保護した厚さ2.5mm、表面の凹凸差1.0mmの床材についても、同様に防滑性能を7段階で官能評価し、20人の平均点を求めたところ、3.28点であった。
そこで、各サンプルについて求めた平均点が5.71〜7.0点の範囲にある場合はA(かなり滑りにくい)、平均点が4.41〜5.70点の範囲にある場合はB(やや滑りにくい)、平均点が3.28〜4.40点の範囲にある場合はC(エンボス加工された塩化ビニル樹脂製床材と同等)、平均点が2.11〜3.27点の範囲にある場合はD(やや滑りやすい)、平均点が1.0〜2.1点の範囲にある場合はE(かなり滑りやすい)と判定した。
【0030】
[掃きだし性能の試験方法]
図2に示すように、基台3aから立設した支柱3b,3bに、レール3cと支持板3dを15°の角度で傾斜させて固定すると共に、キャスター4b,4bの付いたL形の可動板4aに箒4c(毛の長さ40mm)を取付け、この可動板4aのキャスター4b,4bをレール3cに載せて、可動板4aが自重で矢印方向に移動するようにした試験装置を組み立てた。
そして、可動板4aを取り外して、支持板3dの上に防滑性床材10のサンプル(300×300mm)を両面テープで固定し、篩で選別した真砂土(粒径0.25mm以下)をサンプルの上に9000mg散布した後、可動板4aのキャスター4b,4bをレール3cに載せて、箒4cの毛先17mmをサンプルに接触させながら、可動板4aを0.5m/sの速度で移動させ、サンプル表面の真砂土を箒4cで掃きだした。この掃きだし操作を3回繰り返した後、サンプルを90°回転させて支持板3dに固定し、更に掃きだし操作を3回繰り返した。
次に、サンプルの表面に残った真砂土の量を計測し、下記の式(1)から、掃きだし性能を算出した。
【数1】

【0031】
上記の方法で測定した実施例1〜7のサンプルの防滑層の表面粗さ、サンプルの防滑性能、サンプルの掃きだし性能を下記の表1に示す。
【0032】
[比較例1,2]
アクリル系紫外線硬化型塗料に、微小粒子としてゲル法シリカ粉を20質量部配合し(比較例1)、微小粒子として平均粒径が100μmの塩化ビニル樹脂粉を100質量部配合した(比較例2)以外は、前記実施例1〜7と同様にして床材のサンプルを作製した。
そして、これらの比較用のサンプルについて、実施例1〜7と同様にして防滑層の表面粗さ、防滑性能、掃きだし性能を測定し、その結果を下記の表1に併記した。
【0033】
【表1】

【0034】
尚、表1において、「サイリシア780」は富士シリシア化学(株)製の平均粒径が11.3μmのゲル法シリカ粉、「MILLISIL」は白石工業(株)製の平均粒径が50μmの珪石粉、「塩ビパウダー」は信越化学工業(株)製の平均粒径が100μmの塩化ビニル樹脂粉である。
【0035】
表1における比較例1および実施例1〜6のゲル法シリカ粉の添加部数と表面粗さの測定結果を見ると、添加部数が多くなるほど防滑層の表面粗さは大きくなり、湿潤時の防滑性能が向上する傾向にあることが判る。特に、添加部数が60〜150質量部(含有率37.5〜60質量%)の範囲内で、表面粗さが略3〜略10.6μmの範囲内にある実施例2〜6のものは、湿潤時の防滑性能がB判定とA判定であり、従来のエンボス加工された塩化ビニル樹脂製床材よりも優れた防滑性能を発揮することが判る。そして、比較例1のようにゲル法シリカ粉の添加部数が20質量部(含有率17質量%)で、含有率が下限の20質量%を下回るものは、表面粗さが下限の2μm未満となり、湿潤時の防滑性能がD判定(やや滑りやすい)となるので、本発明の目的を達成できないことが判る。
【0036】
また、実施例4〜6を比較すると、ゲル法シリカ粉の添加部数が増加して表面粗さが大きくなるほど、掃きだし性能が徐々に低下する傾向にあることが判るが、実施例6のようにゲル法シリカ粉の添加部数が上限の150質量部(含有率60質量%)の場合でも、表面粗さが上限の15μm未満であれば、97%を越える優れた掃きだし性能を発揮できることが判る。実施例4〜6の掃きだし性能がいかに優れているかは、エンボス加工された塩化ビニル樹脂製床材の掃きだし性能が90.1%であることから、一目瞭然である。
【0037】
また、実施例7と比較例2を対比すると、珪石粉とPVC粉の添加部数が100質量部と同じでも、実施例7のように珪石粉の平均粒径が上限の50μmであれば、表面粗さが2〜15μmの範囲内となり、優れた防滑性能と、優れた掃きだし性能を発揮するのに対し、比較例2のようにPVC粉の平均粒径が上限を越えて100μmになると、表面粗さが上限の15μmを大幅に越え、掃きだし性能が低下して97%を下回るようになるので、本発明の目的を達成できないことが判る。
【0038】
[実施例8〜12]
前記実施例1〜7で用いたアクリル系紫外線硬化型塗料100質量部に対し、下記の表2に示す平均粒径を有するクルミ殻粉と沈殿法シリカ粉を、下記の表2に示す添加部数で配合した以外は、実施例1〜7と同様にして、5種類の防滑性床材のサンプルを作製した。
そして、これらのサンプルについて、実施例1〜7と同様にして防滑層の表面粗さと防滑性能を測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0039】
[比較例3]
比較のために、クルミ殻粉の添加部数を20質量部(含有率16.7質量%)に変更して比較用のサンプルを作製し、このサンプルについて、実施例1〜7と同様にして防滑層の表面粗さと防滑性能を測定した。その結果を下記の表2に併記する。
【0040】
【表2】

【0041】
尚、表2において、「F180」は日本ウオルナット(株)製のクルミ殻粉、「NIPSIL SS30P」、「NIPSIL LP」はいずれも東ソーシリカ (株)製の沈殿法シリカ粉である。
【0042】
この表2の比較例3,実施例8,9から、平均粒径が同じ微小粒子を配合する場合、その添加部数が多くなるほど、防滑層の表面粗さが大きくなる傾向にあることが判る。そして、表面粗さが2〜15μmの範囲内にあれば、湿潤時の防滑性能がB〜C判定であり、エンボス加工された塩化ビニル樹脂製床材と同等もしくはそれ以上の防滑性能を発揮できることが判る。また、実施例10〜12のように、平均粒径が9μm未満の微小粒子を配合する場合でも、エンボス加工された塩化ビニル樹脂製床材と同等もしくはそれ以上の防滑性能を発揮できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る防滑性床材を模式的に示した部分断面図である。
【図2】掃きだし性能を測定する試験装置の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 合成樹脂製床シート
2 防滑層
2a 微小粒子
2b 防滑層の表面の凹部
2c 防滑層の表面の凸部
10 防滑性床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス加工が施されていない合成樹脂製床シートの表面に、平均粒径が5〜50μmの微小粒子を20〜60質量%含んだアクリル系紫外線硬化型塗料の硬化塗膜からなる表面粗さが2〜15μmの防滑層を一体に形成したことを特徴とする防滑性床材。
【請求項2】
防滑層の平均厚さが10〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の防滑性床材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84391(P2010−84391A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253605(P2008−253605)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】