説明

防火塗料

【課題】 本発明は防火塗料に関する。
【解決手段】 この課題は、断熱層を形成する防火塗料において、リン系/窒素系難燃剤および、次式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/または次式(II)のジホスフィン酸塩及び/またはこれらのポリマーを含む難燃剤混合物を含有する、上記防火塗料。
【化1】


[式中、
R1、R2は、同一かまたは異なり、線状もしくは分枝状C-C アルキル、及び/ま
たはアリールであり、
R3は、線状もしくは分枝状C-C10- アルキレン、C-C10- アリーレン、C-C10-
アルキルアリーレン、またはC-C10- アリールアルキレンであり、
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜4であり、
xは、1〜4である]
によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は本願の優先権の基礎となる2004年8月17日に出願されたドイツ特許出願第102004039758.9に記載されており、その内容をここに全て記載したものとする。
【0002】
本発明は、火災の際に発泡層及び炭化する各物質、及び成膜性バインダー、膨張剤(blowingagents)、慣用の助剤並びに添加剤に基づく、断熱層を形成する防火塗料に関する。
【背景技術】
【0003】
断熱層を形成する防火塗料(発泡性塗料とも称される)は、火災の際に発生するような温度に曝されると発泡し、そして上記の防火塗料がこのように発泡することによって、鋼製工作物、天井、壁、ケーブル、パイプ類などに熱が伝わることを防ぐかまたは少なくとも抑制する。
【0004】
米国特許第4,965,296号明細書には、難燃性被覆材及び電導性材料からなる難燃性材料を開示している。前記難燃性被覆材は、泡を生じそして炭化する各物質、ガスを発生させる化合物、成膜性バインダー及び適当な溶剤から構成されている。必要に応じて、他の慣用の成分も存在していてもよい。
【0005】
米国特許第4,879,320 号明細書には、導電性材料の代わりに、セラミック繊維材料が加えられた類似の難燃性組成物が記載されている。
【0006】
米国特許第6,096,812号明細書には、エポキシ樹脂をベースとしそして特に低い固有密度の乾燥フィルムを有する発泡性塗料が開示されている。
【0007】
これらの塗料は主として船、油田用プラットホーム(oil platforms)および貯蔵用の他の装置を保護するためにおよび燃え易い炭化水素の加工に使用される。これらの装置は一般に、金属成分を確実に適切に断熱するために多量の防火材料を必要とする。これは保護するべき構造物への負荷重量を必然的に著しく増加させる。しかしながら重量負荷金属構造物および重量無負荷金属構造物に負荷される追加的な重量にはしばしば限界がある(例えば油田用プラットホーム)。
【0008】
上記の従来技術の防火塗料の目的は、最小の適用量で最大の防火時間を達成することである。
【0009】
少ない塗布量とするための一つの解決法は乾燥塗膜の固有密度を減らすことによって達成できる(米国特許第6,096,812号明細書)。欠点はその際に防火性能をしばしば付随的に低下させてしまうことである。
【0010】
上記の防火塗料の全体的な欠点は、火災の場合に生ずるその泡構造では断熱性の向上が達成されないこと、及び温度Tが180 ℃以上に達するまで反応が開始されないことである。
【0011】
事実、多くの場合、反応はこの域より遥かに高い温度に達しない限り開始されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故、以下に記載の本発明の課題の一つは、同じ使用量でより長い防火時間を達成するか、またはより少ない適用量で従来技術に匹敵する防火時間を達成する防火塗料を提供することである。
【0013】
また、この課題は反応を<180℃(180 ℃未満)の温度Tで開始させることによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って本発明は、断熱層を形成する防火塗料において、リン系/窒素系難燃剤および次式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/または次式(II)のジホスフィン酸塩及び/またはこれらのポリマーを含む難燃剤混合物を含有する、上記防火塗料に関する:
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
R1、R2は、同一かまたは異なり、線状もしくは分枝状C-C アルキル、及び/ま
たはアリールであり、
R3は、線状もしくは分枝状C-C10- アルキレン、C-C10- アリーレン、C-C10-
アルキルアリーレン、またはC-C10- アリールアルキレンであり、
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜4であり、
xは、1〜4である]。
【0017】
リン系/窒素系難燃剤は式(NH4)y H3-y PO4または (NH4PO3)z で表される窒素含有リン酸塩であり、その際にyが1〜3でありそしてzが1〜10,000であるのが有利である。
【0018】
リン系/窒素系難燃剤はアンモニウムヒドロゲンホスファート、アンモニウムジヒドロゲンホスファートおよび/またはアンモニウムポリホスファートであるのが特に有利である。
【0019】
リン系/窒素系難燃剤は式(NH4 PO3)表されるアンモニウムポリホスファートであるのが好ましく、その際にnが10〜≦1000、好ましくは200〜≦1000である。
【0020】
リン系/窒素系難燃剤はメラミンとリン酸とのまたは縮合リン酸との反応生成物であるかまたはメラミンの縮合生成物とリン酸とのまたは縮合リン酸との反応生成物またはそれら生成物の混合物である。
【0021】
リン系/窒素系難燃剤は特に好ましくはメラム、メレム、またはメロン、ジメラミンホスファート、ジメラミンピロホスファート、メラミンホスファート、メラミンピロホスファート、メラミンポリホスファート、メラムポリホスファート、メロンポリホスファートおよび/またはメレムポリホスファート、またはこれらの種類の混合ポリ塩である。
【0022】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は0.1〜100(リン系/窒素系難燃剤):100〜0.1(ホスフィン酸塩)の重量比で、好ましくはリン系/窒素系難燃剤を含有し、式(I)のホスフィン酸塩を含有しおよび/または式(II)のジホスフィン酸塩を含有しおよび/またはこれらのポリマーを含有するのが好ましい。
【0023】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は1〜50(リン系/窒素系難燃剤):50〜1(ホスフィン酸塩)の重量比で、リン系/窒素系難燃剤を含有し、そして式(I)のホスフィン酸塩を含有しおよび/または式(II)のジホスフィン酸塩を含有しおよび/またはこれらのポリマーを含有する。
【0024】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は、好ましくは
A)1〜99重量%のエポキシ樹脂および
B)1〜99重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)0〜60重量%の他の添加物
を含有する。
【0025】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は、特に好ましくは
A)10〜90重量%のエポキシ樹脂および
B)2〜60重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)3〜45重量%の他の添加物
を含有する。
【0026】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は、中でも特に好ましくは
A)30〜85重量%のエポキシ樹脂および
B)3〜50重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)5〜40重量%の他の添加物
を含有する。
【0027】
断熱層を形成する本発明の防火塗料は特に好ましくは0〜60重量%の添加物、例えば促進剤、充填剤、助剤、膨張剤、窒素系相乗剤、炭素供与物質、顔料、可塑剤、および/または反応性希釈剤、および場合によっては他の添加物を含有する。これら成分全体の合計量は常に100重量%である。
【0028】
Mは好ましくはカルシウム、アルミニウムまたは亜鉛である。
【0029】
R1およびR2は、同一かまたは異なり、線状もしくは分枝状であり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第三−ブチル、n−ペンチル及び/またはフェニルである。
【0030】
Rは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、第三−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレンまたはn−ドデシレン;フェニレンまたはナフチレン;メチルフェニレン、エチルフェニレン、第三−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンまたは第三−ブチルナフチレン;フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレンまたはフェニルブチレンであるのが有利である。
【0031】
プロトン化された窒素塩基は好ましくはアンモニア、メラミン、トリエタノールアミンのプロトン化された塩基、特に好ましくはNH4+である。
【0032】
1およびR2 は互いに同じかまたは異なり、直鎖状のまたは枝分かれしたC1〜C6−アルキルおよび/またはフェニルであるのが好ましい。
【0033】
特にR1およびR2 は互いに同じかまたは異なり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第三ブチル、n−ペンチルおよび/またはフェニルであるのが好ましい。
【0034】
本発明に従って使用されるハロゲン不含のエポキシ化合物(以下、ポリエポキシ化合物とも言う)は飽和または不飽和化合物でもよく、脂肪族、脂環式、芳香族および/またはヘテロ環式化合物でもよい。更にこれらは混合条件または反応条件のもとで問題の如何なる副反応も生じさせない置換基を含有していてもよく、それらは例えばアルキル置換基、アリール置換基、エーテル基またはそれらの類似物である。種々のポリエポキシ化合物の混合物を使用することもできる。これらのポリエポキシ化合物の数平均分子量Mは約9000まででもよいが、一般に約150〜4000である。
【0035】
これらのポリエポキシ化合物の一例としては、多価、好ましくは二価のアルコール類、フェノール類、これらのフェノール類の水素化生成物および/またはノボラック(酸性触媒の存在下での、一価または多価フェノール類、例えばフェノールおよび/またはクレゾール類とアルデヒド類、特にホルムアルデヒドとの反応生成物)がある。これらは公知の方法で、例えば個々のポリオール類とエピクロロヒドリンとの反応によって得られる。
【0036】
ここに挙げることのできる多価フェノール類の例にはレゾルシノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−第三ブチルフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)1,1’−エーテルがある。
【0037】
ビスフェノールAおよびビスフェノールFが有利である。
【0038】
他の適するポリエポキシ化合物には多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル類がある。これら多価アルコールの挙げることのできる例には1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリアルキレングリコール類、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンおよびペンタエリスリトールがある。
【0039】
使用できる他のポリエポキシ化合物には、エピクロロヒドリンまたは類似のエポキシ化合物と脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボン酸、例えば蓚酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、またはヘキサヒドロフタル酸、またはナフタレン−2,6−ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、またはヘキサヒドロフタル酸、またはナフタレン−2、6−ジカルボン酸、または二量体化脂肪酸との反応によって得られる(ポリ)グリシジルエステルがある。これらの例にはジグリシジルテレフタレートおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレートがある。
【0040】
分子鎖にわたってエポキシ基をランダムに含有し、そしてこれらエポキシ基を含有するオレフィン性不飽和の化合物を使用して乳化共重合することによって製造できるポリエポキシ化合物、例えばアクリル酸またはメタクリル酸のグリシジルエステルを使用するのが若干の場合には有利である。
【0041】
使用できる他のポリエポキシ化合物の例にはヘテロ環系をベースとするもの、例えばヒダントインエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、および/またはそれのオリゴマー類、トルグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノジフェニルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルめたnン、テトラグリシジルジアミノジフェニルエーテル、テトラキス(4−グリシドキシフェニル)エタン、ウラゾールエポキシド類、ウラシルエポキシド類、オキサゾリジノン変性エポキシ樹脂、および芳香族アミン類、例えばアニリンをベースとするポリエポキシド類、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、ジアミノジフェニルメタンおよびN,N’−ジメチルアミノジフェニルメタンまたはN,N’−ジメチルアミノジフェニルスルホンがある。他の適するポリエポキシ化合物は"Handbook of Epoxy Resins" 、 Henry Lee およびKris Neville著、McGraw-Hill Book Company、1967; Henry Lee "Epoxy Resins" American Chemical Society、1970;Wagner/ Sarx、"Lackkunstharze" [Synthetic Paint Resins]、 Carl Hanser Verlag (1971)、第5版、第 174-196頁;"Angew. Makromol. Chemie"、第44巻 (1975)、第151-163頁;ドイツ特許出願公開第27 57 733号明細書およびヨーロッパ特許出願公開第0 384 939号明細書に記載されている(これら刊行物の内容をここに記載こととする)。
【0042】
有利なポリエポキシド樹脂はビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSをベースとするビスグリシジルエーテル(これらのビスフェノール類とエピクロロ(ハロ)ヒドリンとの反応生成物)またはそれらのオリゴマー、フェノール−ホルムアルデヒドおよび/またはクレゾール−ホルムアルデヒド−ノボラックのポリグリシジルエーテル、またはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸および/またはヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸のジグリシジルエステル類、芳香族アミン類またはヘテロ環式窒素系塩基、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレートまたはN,N,N’,N−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタンのN−グリシジル化合物、ヒダントインエポキシ樹脂またはアルアシドエポキシ樹脂(aracid epoxy resins)または多価脂肪族アルコール、例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンまたはポリアルキレングリコールのジ−またはポリグリシジル化合物がある。オキサゾリジノン変性されたエポキシ樹脂も適している。この種の化合物は既に公知である(参照: "Angew. Makromol. Chem.“、第44巻 (1975)、第151-163頁および米国特許第3,334,110号明細書)。ビスフェノールAジグリシジルエーテルとジフェニルメタンジイソシアネートとの(適当な促進剤の存在下での)反応生成物も例として挙げることができる。
【0043】
ポリエポキシ樹脂は本発明の防火塗料の製造の間、個々にまたは混合物として存在していてもよい。使用できる硬化剤成分は脂肪族および芳香族ポリアミン類である。芳香族ポリアミン類は例えばヨーロッパ特許出願公開第0,274,646号明細書に記載されている。これらは2,6−または2,4−ジイソシアネートアルキルベンゼン類の三量体化によっておよび次いで残留するイソシアネート基の加水分解によって製造される。これらの硬化剤成分は個々にもまたは混合状態でも使用することができる。これらの混合物は工業的に入手することができ、硬化剤成分を低コストで製造することを許容する。
【0044】
尿素基を持つヘテロ環式ポリアミン類は別の添加用硬化剤成分として(即ち実際の硬化剤の他に)使用できる。硬化剤混合物は30%より多くない他の芳香族ポリアミン類、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、および/または他のヘテロ環式ポリアミン類も使用してもよい。
【0045】
本発明の防火塗料中に存在する有利な添加物は促進剤、充填剤、助剤、膨張剤、窒素系相乗剤、炭素供与物質、顔料、可塑剤、および/または反応性希釈剤がある。
【0046】
使用できる促進剤には特にイミダゾール誘導体、例えば2−メチルイミダゾール2−フェニルイミダゾール、および2−ヘプタデシルイミダゾール;ホスフィン類、第三アミン類、例えばベンジルメチルアミンおよびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、および金属石けんおよびアセチルアセトナート類がある。
【0047】
充填剤および助剤の例には膨張性グラファイト、硼酸、リン酸エステル、石英、チャイナクレー、チョーク、ケイ灰石、タルク、三酸化アンチモン、ガラス繊維、鉱物繊維、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、沈降珪酸、珪酸塩および/または粉末セルロースがある。
【0048】
膨張剤および窒素系相乗剤にはメラミンおよび/またはグアニジンおよびこれらの塩および/またはジシアンジアミド類がある。メラミン塩はこのメラミンホスファート、メラミンポリホスファート、メラミンシアヌレート、メラミンボラート、メラミンシリケートがあり、グアニジン塩は好ましくはグアニジンホスファートがある。
【0049】
上記の通り、断熱層を形成する本発明の防火塗料は0〜60重量%の添加物を含有していてもよい。0〜60重量%の範囲内には、以下の添加物が分布していてもよい:
促進剤:0〜25重量%、
充填剤および助剤:0〜100重量%、
膨張剤および窒素系相乗剤:0〜100重量%、
炭素供与物質:0〜100重量%、
顔料:0〜50重量%、
可塑剤:0〜50重量%、
反応性希釈剤:0〜25重量%。
【0050】
それ故に、各添加物の百分率表示は総量としての上記の0〜60重量%を基準とする。
【0051】
本発明によれば、他の有利な相乗剤には好ましくは式(III) 〜(VII) のそれら
【0052】
【化2】

【0053】
[式中、R 〜R が水素原子;水酸基またはC 〜C −ヒドロシキアルキル基で置換されたまたは置換されていないC 〜C −アルキル、C 〜C16−シクロアルキルまたは−アルキルシクロアルキル基; C 〜C −アルケニル、C 〜C −アルコキシ、−アシル、または−アシルオキシ、C 〜C12−アリールまたは−アリールアルキル、−OR および−N(R )R 、並びにN−脂環式系またはN−芳香族系であり、
は水素原子;水酸基またはC 〜C −ヒドロキシアルキル基で置換されたまたは置換されていないC 〜C −アルキル、C 〜C16−シクロアルキルまたは−アルキルシクロアルキル;C 〜C −アルケニル、C 〜C −アルコキシ、−アシルまたは−アシルオキシ;またはC 〜C12−アリールまたは−アリールアルキルであり、
〜R13 はRまたは−O−R について規定した基であり、
mおよびnは互いに無関係に1,2,3または4であり、
Xはトリアジン化合物(III) と付加物を形成し得る酸である。]
またはそれらの混合物が有利である。
【0054】
窒素含有相乗剤がベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ウレアシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジンであるのが有利である。
【0055】
窒素系相乗剤がメラミンの縮合物であるのが有利である。メラミンの縮合物の例にはメレム、メラムまたはメロン、または更に高い縮合水準のこの種の化合物、またはそれらの混合物および一例には国際特許出願公開第96/16948号明細書に記載された方法で製造できるものが有利である。
【0056】
断熱層を形成する防火塗料は好ましくは炭化性物質としての炭水化物を含有する。
【0057】
有利に使用される炭水化物はペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよび/またはペンタエリスリトールの重縮合体である。
【0058】
使用できる顔料はカーボンブラック、フタロシアニン顔料、および金属酸化物がある。二酸化チタンが金属酸化物として有利に使用される。
【0059】
防火塗料の強靱性を改善するためには、ブタジエン−アクリロニトリルゴムおよび他の脂肪族ポリマーも可塑剤として使用できる。
【0060】
使用できる反応性希釈剤の例にはエピクロロヒドリンと反応する一価または多価の低分子量アルコールがある。
【0061】
本発明の防火塗料に使用されるエポキシ樹脂は一般にエポキシ樹脂成分と硬化剤成分とで構成されている。
【0062】
ビスフェノールA,ビスフェノールFまたはこれらの混合物がエポキシ樹脂成分として有利でありそして脂肪族アミン類が硬化剤成分として有利である。
【0063】
本発明の課題は同様に、エポキシ樹脂および上記の難燃剤混合物よりなる防火塗料の製造方法において、エポキシ樹脂と難燃剤混合物とを反応させそして次にそれを硬化剤で防火塗料に転化することを特徴とする、上記方法によって達成される。
【0064】
この方法では場合によっては溶剤および希釈剤も使用してもよい。非プロトン性極性溶剤がこの場合、有利である。それらの例にはN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、エーテル類、 例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、炭素原子数1〜6の直鎖状のまたは分岐したアルキル基を持つエチルグリコールエーテル類、プロピレングリコールエーテル類およびブチルグリコールエーテル類がある。
【0065】
使用できる他の溶剤の例にはケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等、およびエーテル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテートおよびメトキシプロピルアセテートがある。他の適する溶剤にはハロゲン化炭化水素、および脂環式および/または芳香族炭化水素があり、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンおよびジキシレン類が有利である。これらの溶剤は単独でまたは混合状態で使用することができる。
【0066】
エポキシ樹脂の難燃剤混合物(成分A+B)とのおよび硬化剤との反応は−10〜+150℃の温度で行うのが好ましい。
【0067】
本発明は同様に上記の防火塗料の用途にも関する。本発明の防火塗料は負荷および非負荷金属構造物または形状物を被覆するのに有利に使用される。本発明の防火塗料は温度に起因するストレスから床、壁または成形体を保護するのにも使用できる。
【0068】
本発明の防火塗料は良好な難燃性を有しそして簡単に加工できる。この方法は、エポキシ樹脂と硬化剤成分またはそれらを含む各成分を塗布直前に混合するのに有利である。別の有利な方法においては、エポキシ樹脂を含有する系および硬化剤成分を含有する系を、粘度を下げるために僅かに加熱する。これは好ましくはエアレス法によって噴霧塗装するのが簡単である。一般に加熱すべきこれらの系は50〜75℃に加熱しそして加熱すべき系の温度を塗布直前に好ましくは65℃〜70℃にするべきである。
【0069】
以下の実施例において、発泡性防火塗料を製造しそしてその性能を試験する。発泡性防火塗料の断熱能力はDIN4102 第8章(1986)と同様にして小試験用リングで、ISO 834(1975)と同様に加熱曲線を使用して試験した。難燃剤混合物の熱重力分析評価を“NETZSCH STA 409C”熱天秤を使用する分析法によって実施した。
【0070】
実施例1〜5:
以下の例では次の製品を使用した。
【0071】
(R)Exolit AP422(クラリアントGmbH):
(R)Exolit AP422は式(NH4PO3)(n=20〜1000、特に200 〜1000)で表される、自由流動性の粉末状でかつ水に対する溶解性の低いポリリン酸アンモニウムである。
(R)Exolit AP750(クラリアントGmbH):ポリマーのアンモニウムポリホスファートをトリス(2−ヒドロキシエチル)−イソシアネートの芳香族カルボン酸エステルと一緒に相乗剤として含有するハロゲン不含の難燃剤混合物である。
(R)Exolit OP1230(クラリアントGmbH):(R)Exolit OP1230は、有機ホスフィン酸塩をベースとしそして水に不溶でそして慣用の有機溶剤に不溶の微粒で非吸湿性の粉末である。
(R)Beckopox EP140 (UCB-Surface Specialties):これはビスフェノールAとエピクロロヒドリンとよりなる1.16g/mL(25℃)の密度および180〜190のエポキシ当量を有する低分子縮合体である。
(R)Beckopox EH624 (UCB-Surface Specialties):これは活性H当量が80g/モルであり2300〜3800mPa.s(23℃)の動粘度を有する脂肪族ポリアミンである。
Tronox(R) R-KB-5 (Kerr Mc-Gee Chemical LLC):これはAlで安定化されているルチル型二酸化チタンでありそして表面をAl成分およびZr成分で処理されている。
Optibor(R) 硼酸 (Deutsche Borax GmbH):これは式 (H3BO3)で表される純粋な硼酸である。
【0072】
例1(比較例):
100部の Beckopox EP 140、25部の硼酸、2部のTiO、および100部の Exolit AP422 を攪拌機付き容器中に相前後して導入しそして十分に混合した後に43部の Beckopox EH 624と反応させる。得られる防火塗料を280×280×6mmの寸法のスチール製板(St37)の片面にローラーを用いて塗布する。この塗膜を室温で1日間硬化させそしてその層厚を3.5mmとする。塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0073】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で33分の防火性を示す。反応はT =240℃で開始する。
【0074】
例2(比較例):
使用した防火塗料は例1で用いたのと同じものであるが、Exolit AP750 を Exolit AP422の代わりに使用した。 得られる防火塗料を280×280×6mmの寸法のスチール製板(St37)の片面にローラーを用いて塗布する。この塗膜を室温で1日間硬化させそしてその層厚を3.5mmとする。
【0075】
塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0076】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で41分の防火性を示す。反応はT =220℃で開始する。
【0077】
例3(実施例):
100部の Beckopox EP 140、25部の硼酸、9部のトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、2部のTiO、および Exolit AP422および Exolit OP1230 よりなる5部の不均一な難燃剤混合物を攪拌機付き容器中に相前後して導入しそして十分に混合した後に43部の Beckopox EH 624と反応させる。得られる防火塗料を280×280×6mmの寸法のスチール製板(St37)の片面にローラーを用いて塗布する。この塗膜を室温で1日間硬化させそしてその層厚を3.5mmとする。
【0078】
塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0079】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で44分の防火性を示す。反応はT =179℃で開始する。
【0080】
例4(実施例):
100部の Beckopox EP 140、25部の硼酸、9部のトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、2部のTiO、および Exolit AP422および Exolit OP1230 よりなる60部の不均一な難燃剤混合物を攪拌機付き容器中に相前後して導入しそして十分に混合した後に43部の Beckopox EH 624と反応させる。得られる防火塗料を280×280×6mmの寸法のスチール製板(St37)の片面にローラーを用いて塗布する。この塗膜を室温で1日間硬化させそしてその層厚を3.5mmとする。
【0081】
塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0082】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で49分の防火性を示す。反応はT =175℃で開始する。
【0083】
例5(実施例):
100部の Beckopox EP 140、25部の硼酸、9部のトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、2部のTiO、および Exolit AP422および Exolit OP1230 よりなる140部の不均一な難燃剤混合物を攪拌機付き容器中に相前後して導入しそして十分に混合した後に43部の Beckopox EH 624と反応させる。得られる防火塗料を280×280×6mmの寸法のスチール製板(St37)の片面にローラーを用いて塗布する。この塗膜を室温で1日間硬化させそしてその層厚を3.5mmとする。
【0084】
塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0085】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で59分の防火性を示す。反応はT =164℃で開始する。
【0086】
例6(実施例):
製造した防火塗料は例5で製造したのと同じものであるが、塗膜厚は2.0mmである。塗膜の表面は滑らかでそしてクラックを有していない。
【0087】
塗装された板をDIN4102に従う耐炎試験で42分の防火性を示す。反応はT =166℃で開始する。
【0088】
例7(実施例):
例3および4からの難燃剤混合物並びにそれに含まれる個々の成分Exolit AP422および Exolit OP1230を熱重量分析によって比較する。この難燃剤混合物の反応が著しく早く開始されることが、個々の成分を用いた場合と比較して相乗効果を証明している(図1参照)。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は実施例7の熱重量分析の結果をグラフ化したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層を形成する防火塗料において、リン系/窒素系難燃剤および、次式(I)で表されるホスフィン酸塩及び/または次式(II)のジホスフィン酸塩及び/またはこれらのポリマーを含む難燃剤混合物を含有する、上記防火塗料。
【化1】

[式中、
R1、R2は、同一かまたは異なり、線状もしくは分枝状C-C アルキル、及び/ま
たはアリールであり、
R3は、線状もしくは分枝状C-C10- アルキレン、C-C10- アリーレン、C-C10-
アルキルアリーレン、またはC-C10- アリールアルキレンであり、
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K及び/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜4であり、
xは、1〜4である]
【請求項2】
リン系/窒素系難燃剤が式(NH4)y H3-y PO4または (NH4PO3)z で表される窒素含有リン酸塩であり、その際にyが1〜3でありそしてzが1〜10,000である、請求項1に記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項3】
リン系/窒素系難燃剤がアンモニウムヒドロゲンホスファート、アンモニウムジヒドロゲンホスファートおよび/またはアンモニウムポリホスファートである、請求項1または2に記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項4】
リン系/窒素系難燃剤が式(NH4 PO3)表されるアンモニウムポリホスファートであり、その際にnが10〜≦1000、好ましくは200〜≦1000である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項5】
リン系/窒素系難燃剤がメラミンとリン酸とのまたは縮合リン酸との反応生成物であるかまたはメラミンの縮合生成物とリン酸とのまたは縮合リン酸との反応生成物またはそれら生成物の混合物である、請求項1に記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項6】
リン系/窒素系難燃剤がメラム、メレム、またはメロン、ジメラミンホスファート、ジメラミンピロホスファート、メラミンホスファート、メラミンピロホスファート、メラミンポリホスファート、メラムポリホスファート、メロンポリホスファートおよび/またはメレムポリホスファート、またはこれらの種類の混合ポリ塩である、請求項5に記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項7】
リン系/窒素系難燃剤を含有し、式(I)のホスフィン酸塩を含有しおよび/または式(II)のジホスフィン酸塩を含有しおよび/またはこれらのポリマーを0.1〜100(リン系/窒素系難燃剤):100〜0.1(ホスフィン酸塩)の重量比で含有する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項8】
リン系/窒素系難燃剤を含有し、式(I)のホスフィン酸塩を含有しおよび/または式(II)のジホスフィン酸塩を含有しおよび/またはこれらのポリマーを1〜50(リン系/窒素系難燃剤):50〜1(ホスフィン酸塩)の重量比で含有する、請求項1〜7のずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項9】
A)1〜99重量%のエポキシ樹脂および
B)1〜99重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)0〜60重量%の他の添加物
を含有する請求項1〜8のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項10】
A)10〜90重量%のエポキシ樹脂および
B)2〜60重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)3〜45重量%の他の添加物
を含有する請求項1〜9のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項11】
A)30〜85重量%のエポキシ樹脂および
B)3〜50重量%の、リン系/窒素系難燃剤および式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩および/またはこれらのポリマーを含有する難燃剤混合物、
C)5〜40重量%の他の添加物
を含有する請求項1〜10のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項12】
0〜60重量%の添加物、例えば促進剤、充填剤、助剤、膨張剤、窒素系相乗剤、炭素供与物質、顔料、可塑剤、および/または反応性希釈剤、および場合によっては他の添加物を含有する請求項1〜11のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火塗料。
【請求項13】
Mが、カルシウム、アルミニウムまたは亜鉛である、請求項1〜12のいずれか一つに記載の断熱層を形成する防火性塗料。
【請求項14】
R1およびR2が、同一かまたは異なり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第三−ブチル、n−ペンチル及び/またはフェニルである、請求項1〜13のいずれか一つの断熱層を形成する防火塗料。
【請求項15】
Rが、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、第三−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレンまたはn−ドデシレン;フェニレンまたはナフチレン;メチルフェニレン、エチルフェニレン、第三−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンまたは第三−ブチルナフチレン;フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレンまたはフェニルブチレンである、請求項1〜13のいずれか一つの断熱層を形成する防火塗料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−57091(P2006−57091A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235928(P2005−235928)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(597109656)クラリアント・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】