説明

防災・防火用品

【課題】長時間にわたり良好な視認性能を保持でき、暗く、光がない等の苛酷な条件のもとでもより確実なかつ長時間にわたる表示機能を発揮し得る防災・防火用品を提供すること。
【解決手段】基体とその表面に配された樹脂層を有してなり、該樹脂層は、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、蓄光材粒子および反射材粒子を含有するとともに、該ガラスビーズが表層寄りに多く偏在し、前記蓄光材が内層寄りに多く偏在している構造を有することにより再帰反射特性と蓄光特性を併せ持つ発光部を成していることを特徴とする防災・防火用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災・防火用品に関する。特に、長時間にわたり良好な視認性能を保持でき、暗く、光がない等の苛酷な条件のもとでもより確実なかつ長時間にわたる表示機能を発揮し得る防災・防火用品に関する。
【背景技術】
【0002】
火災や災害などが発生したとき、夜間の暗い闇の中や、ビルや地下街・地下道などの建造物・構造物の暗い中で消火・防火活動あるいは防災・避難救助活動などを行なう場合がある。
【0003】
そうしたとき、そうした活動者が着用する衣料、使用する用品・用具などは、活動をする立場、救助を受ける立場のいずれの立場であっても、より視認性に優れて長時間にわたり明瞭に見えることが有用である。特に、暗さだけでなく、煙や塵埃の発生など視界の邪魔がされる状況のもとでの活動・使用も多いことからなおさらである。
【0004】
従来から該要請はあり、例えば、反射材料からなるテープや蓄光材からなるテープ、あるいは、平面上に蓄光領域部分と反射材領域部分を分けて形成させている蓄光性反射シートなどが提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
しかし、活動のより確かさ・安全さ、より迅速化の要請は常にあり、該活動に際して活動者が着用する衣料など、使用する用品・用具なども、その視認性において常に改善発展と高性能化が望まれるものであった。
【特許文献1】特開2000−60638号公報
【特許文献2】特開2006−138054号公報
【特許文献3】特開平5−173008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、長時間にわたり良好な視認性能を保持でき、暗く、光がない等の苛酷な条件のもとでもより確実なかつ長時間にわたる表示機能を発揮し得る防災・防火用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成する本発明の防災・防火用品は、下記(1)の構成を有するものである。
(1)基体とその表面に配された樹脂層を有してなり、該樹脂層は、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、蓄光材粒子および反射材粒子を含有するとともに、該ガラスビーズが表層寄りに多く偏在し、前記蓄光材が内層寄りに多く偏在している構造を有することにより再帰反射特性と蓄光特性を併せ持つ発光部を成していることを特徴とする防災・防火用品。
【0008】
また、かかる本発明の上記(1)の防災・防火用品において、より具体的に好ましくは、以下の(2)〜(7)のいずれかの構成を有するものである。
(2)前記ガラスビーズの平均粒子径が前記蓄光材の平均粒子径よりも大きく、かつ該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする上記(1)記載の防災・防火用品。
(3)前記ガラスビーズの平均粒子径が前記蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径の2〜5倍であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の防災・防火用品。
(4)前記蓄光材の平均粒子径が0.5〜200μm、前記反射材の平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防災・防火用品。
(5)前記反射材粒子が、雲母粒子を含んでいることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の防災・防火用品。
(6)前記雲母粒子が、酸化チタンで白色にコーティングされてなるものであることを特徴とする上記(5)記載の防災・防火用品。
(7)前記樹脂層が、色素を含んでなることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の防災・防火用品。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる本発明によれば、長時間にわたり良好な視認性能を保持でき、暗く、光がない等の苛酷な条件のもとでもより確実なかつ長時間にわたる表示機能を発揮し得る防災・防火用品が提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、更に詳しく本発明の防災・防火用品について、説明する。
【0011】
本発明の防災・防火用品は、基体とその表面に配された樹脂層を有してなり、該樹脂層は、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、蓄光材粒子および反射材粒子を含有するとともに、該ガラスビーズが表層寄りに多く偏在し、該蓄光材が内層寄りに多く偏在している構造を有し、該構造によって再帰反射特性と蓄光特性を併せ持つ発光部を成していることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、防災・防火用品とは、防災用・防火用を意図して作成された、例えば、消防隊・消防団用の上衣あるいは下衣などの各種衣類や、さらに一般市民なども好適に使用することができる帽子・頭巾・フード類、ヘルメット類、手袋、靴、リュックサック、鞄、各種の収納用の袋、ロープ・紐類、各種のシート類などをいうものであるが、本発明の防災・防火用品とは、その全表面域に上述の樹脂層(発光部)が配されている必要はなく、一部の表面上でわりと見やすい位置に設けられていればよく、あるいは、さらには、代表的には、動かすことができるような部位、すなわち、看る者に対して効果的に合図を送ることができる位置等に特に設けられていればよいものである。
【0013】
図1は、本発明にかかる防災・防火用品の一実施態様例をモデル的に示した外観斜視図であり、特に消防隊・消防団用の防火服を示したものである。図2は、本発明にかかる防災・防火用品を構成する樹脂層部分の構造の一態様例(積層転写例)をモデル的に示した要部断面図であり、図3は、本発明にかかる防災・防火用品の樹脂層部分の構造の他の一態様例(インクによるプリント例)をモデル的に示した要部断面図である。
【0014】
図1において、本発明にかかる防災・防火用品たる防火服1は、全体的には耐熱・耐火性・防火性などに優れた素材(アラミド繊維、金属蒸着繊維など)で形成されている防火衣服であるが、その表面において、裾部、胸部、上腕部、背面部(図示せず)などの要所において、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、蓄光材粒子および反射材粒子を含有する樹脂層2が発光層として形成されている。該樹脂の層からなる発光部2においては、上述のガラスビーズが表層寄りに多く偏在し、蓄光材は内層寄りに多く偏在している構造を呈し、該樹脂層からなる発光部2は再帰反射特性と蓄光特性とを、同一箇所で重畳的に併せ持つ箇所として構成されている。
【0015】
該発光部の設置位置や大きさは、良好に視認されるように適宜の太さや色使いを呈して構成されていることが必要であるが、全体のバランスなども加味して定められればよく、また、従来の類似のものと同等程度でもよいものである。
【0016】
図2、図3は、いずれもその樹脂層2の構造の態様例を示したものであり、図2は各層を積層してそれを転写して形成させた場合の代表的構造例を示し、図3は、後述するオールインワンタイプの樹脂インクによるプリント方式で形成させた場合の代表的構造例を示したものである。
【0017】
これら図において、防災・防火用品1の表面(基体)8に、樹脂の層5が形成されていて、該樹脂の層5に担持されて、ガラスビーズ4、蓄光材6、反射材7が存在している。3は、必要に応じて設けられる接着剤層であり、該樹脂の層5を熱転写シート方式により形成する場合は、通常はホットメルト樹脂層である。該樹脂の層5は、全体が、図2のように複数の層の積層体からなって形成されていてもよく、あるいは、図3のように単層体で形成されていてもよい。
【0018】
本発明の防災・防火用品は、図2、図3に示したような構成とすることにより、樹脂の層5は再帰型の反射特性と蓄光性の両特性を併せ持つものであり、暗い中で看者がライトなどを照射すると、その反射光がその看者の方向に直接的に向いて帰ってくるものであり、該発光層を瞬時に正確に視認できるものである。
【0019】
ここで、再帰型の反射とは、図4(a)に、ガラスビーズ4の列と入射光Eとその反射光Rの関係をモデル的に示したように、入射してきた方向とほぼ同一の方向に光が反射する性質の反射をいい、正面位置あるいは斜め位置からであっても、看者が該防災・防火用品に光を照射すれば、明るい直接の反射光としてその看者に認識できる。
【0020】
この再帰型の反射は、ガラスビーズのような反射材が持つ光学的特性であるが、特に、本発明では、特定の屈折率の範囲(屈折率が1.5〜2.2)と特定の粒径の範囲(粒径が10〜250μm)のガラスビーズを使用することにより、視認性に特に優れた再帰型反射の効果を得るようにしたものであり、特に、屈折率の好ましい範囲は1.8〜2.1、ガラスビーズの径の好ましい範囲は50〜250μm、さらに最も好ましい範囲は50〜120μmである。
【0021】
なお、図4(b)は、鏡面反射での入射光Eとその反射光Rの方向を示したモデル図であり、このような反射(鏡面反射)では、看者が斜め位置から該防災・防火用品に光を照射することになる場合、該反射光では、その該防災・防火用品(縦色線または/および識別文字・記号)に示されている情報を看者に即座かつ確実に認識させる点ではほとんど寄与することができないのである。
【0022】
なお、図4(a)、(b)において、Bはベース(基体、支持体)を示しているが、このベースBに色素を含ませている場合には、該色素の色が反射光Rの色として視認されることとなり、該色によっても視認性が向上し得るものである。色素は、顔料または染料、あるいはその両方が使用され、再帰反射光に有彩色(赤、青、黄色など)の色を付けて目立たせて視認性を一層向上させることができる。
【0023】
本発明においては、特に、樹脂の層5の表層寄りにガラスビーズ4が多く偏在するようにされている。ガラスビーズ4が樹脂層5に担持されて表層寄りに多く偏在することにより、図4(a)にモデル的に示した再帰型反射がより効果的に実現される。
【0024】
ガラスビーズ4は、無色透明なものあるいは淡い有色の透明なものを使用することが肝要であり、そのようにすることによって、樹脂の層5の色あるいは入射光の色をピュアに呈したものとしてその反射光が視認されることとなる。樹脂の層5には、所望に応じて顔料もしくは染料の色素を含有させてよく、該樹脂の層は、代表的には色素と無色透明な樹脂成分からなるものであることが好ましい。
【0025】
そして、上述の再帰型反射特性を有する一方で、本発明の防災・防火用品においては、樹脂の層5は蓄光材6の粒子も含有しているものであり、ライトが照射されていない暗い状況などでは、蓄光特性により光を放つこととなり、看者の視認ができることとなる。
【0026】
ここで、蓄光機能とは、太陽光・蛍光灯などの光のエネルギーを吸収し、その蓄えたエネルギーを可視光線に変換することで光を放出する機能をいい、従来から蓄光塗料として知られているものなどを使用すればよい。すなわち、硫化物系のもの(例えば、化学組成がZnS:Cuのもの)や酸化物系のもの(例えば、化学組成がSrAl:Eu,Dyのもの)等を使用することができるが、放出する光の量(残光輝度)と残光時間をより大きくできる点や耐熱性・耐久性の点で、酸化物系のものを使用することが好ましい。また、蓄光材は、粒子状のものとして使用することが残光輝度、残光時間を大きくできる点で好ましく、その平均粒子径は、0.5〜200μmのものを使用するのが好ましく、さらに好ましくは5〜100μm、最も好ましくは10〜60μmのものを使用することである。
【0027】
この蓄光材が存在すること、そして、ガラスビーズや樹脂層が透明なもの(無色あるいは淡色の有色)で構成されていることから、特にそれらの存在により発光輝度が低下するなどの害を受けることなく、蓄光特性を良好に発揮することができる。
【0028】
本発明において、図2、図3に示した反射材7は、光の反射材(ガラスビーズとは異なるもの)であり、光をより強く反射させる機能を積極的に持たせるために、そのような反射材粒子(反射鏡)を含有させるものである。
【0029】
例えば、反射材としては、アルミニウム粒子や、天然あるいは人工の雲母粒子などが該当し、代表的にはこれら粒子を用いることができる。なお、該雲母粒子は、一般に半透明なもので、光を半ば透過させるので酸化チタンなどをコーティングして白色反射面を呈するようにして用いることが反射光の色を鮮明なものにする上で好ましい。雲母粒子は、一般に薄板状の粒子であり、本発明においては、天然品あるいは人工合成品のいずれでも使用できる。雲母粒子は、層状構造を形成し、しかも、一部の光を反射して一部の光を透過させるために、光の多重層反射を起こさせることができる。透過した光も、下側の反射材(雲母など)で反射されることとなり、中でも、特に色素が存在する場合には、該色素を介して反射されることとなり、再帰反射光としての光量、色の強さ・鮮明さ向上効果に寄与するものである。
【0030】
反射材粒子(雲母粒子など)は、平均粒子径(平均長径)は0.1〜100μm程度のもの、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜25μm程度のものを用いることであり、一般に、ガラスビーズの粒径よりも小さい径のものを用いれば、ガラスビーズの間を透過してくる光を反射する層として作用することができ好ましい。
【0031】
また、樹脂の層5に色素を含有させて構成する場合、該色素(顔料、染料)の粒子径は、極力小さいものとすべきであり、好ましくは0.01〜10μm程度、より好ましくは0.1〜1μm程度のものを使用するのがよい。色素の粒子径が0.01μmよりも小さい場合には、一般に高価格となり望ましくなく、また、10μmよりも大きい場合には、該色素が反射材粒子ないしは透過性反射材粒子としての雲母粒子などよりも大きいものである率が高くなり、その結果、該反射材や該透過性反射材粒子(雲母粒子)まで到達する光を遮る率が高くなり、反射光量を低下させることになるので好ましくない。
【0032】
樹脂の層5は、メジウムやベース樹脂(分散媒樹脂)を用いる場合、発光や発色に影響を与えない透明なもので、かつ耐熱性のあるもの、いわゆる透明インク樹脂などを用いるのがよい。該樹脂は、有機系のものや無機系のものなど、さらに水系や油性のもの等を使用できるが、扱いのしやすさなどからアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂などを使用するのが好ましい。
【0033】
ガラスビーズ4が表面寄りに多く偏在している樹脂の層5を有する本発明の防災・防火用品を製造するには、特に限定されるものではないが、代表的には、例えば、以下の(A)、(B)、(C)のうちのいずれかの方法によって製造できるものである。
【0034】
(A)転写シート方式:
転写シート方式による場合は、以下の(1)〜(5)の順に加工をして製造することができる。
(1)ガラスビーズを一面に敷き詰めたビーズ4のシート上に、蓄光インクで印刷またはコーティングして蓄光材6を含んだ蓄光樹脂層を設ける。
(2)さらに、その上から反射材7と白顔料を含む樹脂インクで印刷またはコーティングして反射層を設ける。
(3)次に、反射材層の上に、ホットメルト接着樹脂層3を印刷またはコーティングして転写シートを完成させる。
(4)この転写シートを防災・防火用品の基体8に重ね、熱プレスするとホットメルト樹脂層と基体とが接着する。
(5)十分に冷えてから、ビーズシートのベースフィルム(図示していない)を剥がし、代表的には、図2に示したような積層構造を有する本発明にかかる防災・防火用品を製造することができる。
このようにして転写して形成された防災・防火用品においては、その層5の表面にガラスビーズ4が一面にあるので、良好に再帰反射をする。そして、ガラスビーズ4は透明なので、その内側に位置する蓄光材6が発光するとその光はガラスビーズ4を通過し、外側から視認されるのである。一方で、蓄光材6を含んだ透明樹脂は遮蔽性がない。このため、さらにその内側に反射材7と白色顔料(白色顔料がコーティングされた反射材)を入れ、遮蔽性を備えた反射材層(7)を設けるのである。このような構成にすることにより、例えば、該防災・防火用品が色つきのものであっても、該防災・防火用品の色に左右されることなく蓄光や反射光が得られる。
蓄光樹脂層6は遮蔽力がなく、光を一部通過させるので、通過した光は反射層7に到達し光をはね返すことができるため、より強く再帰反射する仕組みとなっているのであり、さらに、ホットメルト樹脂接着層3には、ゴム系接着樹脂を混入することにより、何らかの理由による該防災・防火用品の脹らみ・変形などにも十分耐えることができる伸縮性を有するようにできるものである。
【0035】
また、印刷方式の場合には、スクリーン印刷法などを採用できるが、以下の(B)法または(C)法により製造することができる。
【0036】
(B)ガラスビーズ、蓄光材および反射材、場合により色素のすべてを含む樹脂インク(本発明では説明の便宜上、このような樹脂インクを「オールインワンタイプ」の樹脂インクと呼ぶ)を用いる場合:
流動性があるオールインワンタイプの樹脂インクで印刷し、反射機能と蓄光機能の両方を効率良く発現させるために、該樹脂インクを構成する各材料の粒子径を、以下のようにコントロールしてインクを作成する。
すなわち、例えば、ビーカーの中に大きい粒と小さい粒を入れて混合したとき、一応、均一に混ざるが、ビーカーに振動を与えてトントントンと叩くと、次第に粒子の大きいものは上に、小さいものは下に分布するようになるが、印刷樹脂インクでも同じようなことを起こさせることができ、ガラスビーズ6が一番上に、その次に蓄光材7、そして最後(一番下)に反射材8というように層状構造を構成するように、粒子の平均径の相互関係(さらに、必要に応じて比重の相互関係)を調整・設定することにより、代表的には、図3に示したような多層状構造を有し、反射・蓄光の両機能を持つ印刷物を製造することができる。
このような層状構造を形成する上で、使用される各粒子のそれぞれの平均粒子径は、ガラスビーズは10〜250μmの範囲のものを使用すること、好ましくは50〜250μm、最も好ましくは50〜120μmの範囲のものを使用することである。蓄光材は平均粒子径で0.5〜200μmのものを使用することが好ましく、より好ましくは5〜10μm、最も好ましくは10〜60μmのものを使用することである。反射材は平均粒子径で0.1〜100μmのものを使用することが好ましく、より好ましくは1〜50μm、最も好ましくは5〜25μmのものを使用することである。
そして、そのような範囲の中で、粒径の大小の相互の関係は、ガラスビーズの平均粒子径は蓄光材のそれよりも大きく、また蓄光材の平均粒子径は反射材のそれよりも大きいものを用いることが、蓄光材の層、反射材の層を明瞭に形成できて、蓄光性能と再帰反射性能の両者を良好に保有させることができる点で好ましく、具体的には、ガラスビーズの平均粒径が蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、蓄光材の平均粒子径が反射材の平均粒子径の2〜5倍であることが、確実に積層状に分離した層を形成させ得る点で好ましい。このそれぞれの差が2倍未満であれば、明確な積層状の構造ができにくい方向であり、また5倍を超える場合には、表面がざらつきが生じたり風合いが硬く重くなり、またそれぞれの粒子が脱落しやすくなる方向であり好ましくない。また、色素は、反射材よりもさらに小さいものを用いることが好ましいが、一般に色素の粒子は非常に小さいのでその点では問題は少ない。
【0037】
(C)多段印刷法による反射・蓄光機能を出現させるための樹脂インクの場合:
防災・防火用品の基材に直接多段印刷するには、まず基材に遮蔽層を印刷する。遮蔽層は該基材が着色しているとき、その色が表面から見えないようにするためで、反射材7と白色顔料を含む樹脂インクで印刷をすればよいものである。次に、蓄光材6を含む樹脂インクで印刷する。この樹脂インクには、反射材(層中において、より下方に位置させるために、蓄光材よりも粒径が小さい反射材)を入れてもよい。
その後、ガラスビーズ4を含む透明樹脂インクで印刷する。このようにして多段印刷して形成された防災・防火用品は、反射と蓄光の両機能を備えたものとなる。
【0038】
以上のように、本発明の防災・防火用品を製造するには、各種方法があるが、特に、転写方式、多段印刷方式による場合は、ガラスビーズ4が整然と一列に担持されている状態を形成しやすいものであり、再帰反射効果を高くかつ安定して発揮できる樹脂の層5を製造できる。オールインワンのインクを使ったプリント方式で製造する場合には、ガラスビーズ4が多少凹凸を呈して並んで存在する樹脂の層5となるので、再帰反射特性は多少劣る方向であるが、本発明者らの各種知見によれば実用に問題ないほど十分高いものである。
【0039】
なお、本発明において、発光部を形成する樹脂の層は、シート状のものでもよく、あるいはテープ状のものでもよい。あるいはドット状のものなどでもよく、さらに特定の意味のある形状・形態を構成しているものであってもよい。
【実施例】
【0040】
実施例1
前述した転写シート法により、ビーズシート上に、蓄光樹脂層、反射層、ホットメルト層の各層を印刷して、再帰反射・蓄光性能と遮蔽着色機能を有した転写シートを製造した。分散媒樹脂は耐久性と柔軟性の観点からウレタン系樹脂を使用し、ガラスビーズは屈折率が1.93で平均粒径が63μmのものを用い、蓄光材は平均粒径25μmのものを用い、反射材は酸化チタン(白色)をコーティングした平均粒径が12μmの人工の雲母を用いて、熱転写シートを製造した。
該転写シートをテープ状に裁断し、図1に示したように、消防団用防火服の2で示した胸部、上腕部、および裾部の各部分に転写し、それら各部を再帰反射・蓄光機能層で形成し本発明にかかる防災・防火用品(防火服)を製造した。
この防火服を、夜間、光を当てて再帰反射機能のレベルを確認した結果、70m離れたところからの反射光を肉眼ではっきりと視認でき、かなり遠くからでもあるいは苛酷な条件のもとでも、良好に発光部を視認できることが確認できた。また、蓄光機能についてもそのレベルを確認したところ、残光輝度が約320mcd/m、残光時間が1000分以上、耐光性が1000時間以上と、十分に高いものであった。
【0041】
なお、残光輝度、残光時間、耐光性は、それぞれ以下に記載する定義によって測定されるものである。
(1)残光輝度:
常用光源D65を用いて、200ルックスの照度で4分間照射した後、5分経過後の残光輝度である。
(2)残光時間:
常用光源D65を用いて、200ルックスの照度で4分間照射した後、残高輝度が0.32mcd/mまでに減衰する時間である。
(3)耐光性:
300Wの高圧水銀灯で照射したとき、残光輝度が初期値に対して80%以下になるまでの時間である。
【0042】
実施例2
ガラスビーズ樹脂インクと、蓄光・反射材樹脂インクと、遮蔽性インクを別々に段階的に防火服の表面に印刷する多段印刷法により、再帰反射・蓄光性能と遮蔽着色機能を有する本発明にかかる防災・防火用品(防火服)を製造した。分散媒樹脂は耐久性と柔軟性の観点からウレタン系樹脂を使用し、ガラスビーズは屈折率が1.93で平均粒径が75μmのものを用い、蓄光材は平均粒径27μmのものを用い、反射材は酸化チタン(白色)をコーティングした平均粒径が12μmの人工の雲母を用いて製造した。また、防火服における発光部位置は、実施例1の場合と同様とした。
この防火服を、夜間、光を当てて再帰反射機能のレベルを確認した結果、70m離れたところからの反射光を肉眼ではっきりと視認でき、かなり遠くからでも、また苛酷な条件のもとでも視認することができた。また、蓄光機能についてもそのレベルを確認したところ、残光輝度が約320mcd/m、残光時間が1000分以上、耐光性が1000時間以上であり、実施例1のものと同様に十分に高いものであった。
【0043】
実施例3
ガラスビーズ、蓄光材、反射材および色素の全てを一つのインクに含有させたオールインワンタイプの樹脂インクを用いて、直接的に防火服の表面に印刷するオールインワンタイプのインク使用の印刷法により、図3に示したような構成を有する再帰反射・蓄光性能と遮蔽着色機能を有する本発明にかかる防災・防火用品(防火服)を製造した。
分散媒樹脂はウレタン系樹脂を用い、ガラスビーズの屈折率は1.93、平均粒子径は53μmであり、蓄光材の平均粒子径は26μm、反射剤の平均粒子径は12μmであり酸化チタンで白色にコーティングした人工の雲母を用いたものである。
この防火服を、夜間、光を当てて再帰反射機能のレベルを確認した結果、70m離れたところからの反射光を肉眼ではっきりと視認でき、かなり遠くからでも、また苛酷な条件のもとでも、良好に発光部を視認できることが確認できた。また、蓄光機能についてもそのレベルを確認したところ、残光輝度が約320mcd/m、残光時間が1000分以上、耐光性が1000時間以上であり、実施例1、実施例2のものと同様に十分に高い満足できるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明にかかる防災・防火用品の一態様例をモデル的に示した外観斜視図である。
【図2】図2は、本発明にかかる防災・防火用品の縦色線または/および識別文字・記号を構成する樹脂層部分の構造の一態様例(積層転写方式による例)をモデル的に示した要部断面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる防災・防火用品の縦色線または/および識別文字・記号を構成する樹脂層部分の構造の他の一態様例(オールインワンタイプの樹脂インクを用いたプリント例)をモデル的に示した要部断面図である。
【図4】図4は、入射光Eとその反射光Rの関係をモデル的に示し説明するものであり、同図(a)は再帰型反射について、(b)は鏡面反射について説明したものである。
【符号の説明】
【0045】
1:防災・防火用品たる消防団用防火服
2:樹脂層からなる発光部
3:接着剤の層(ホットメルト接着剤層)
4:ガラスビーズ
5:樹脂の層
6:蓄光材
7:反射材
8:基体
E:入射光
R:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体とその表面に配された樹脂層を有してなり、該樹脂層は、屈折率1.5〜2.2で粒径10〜250μmの多数のガラスビーズ、蓄光材粒子および反射材粒子を含有するとともに、該ガラスビーズが表層寄りに多く偏在し、前記蓄光材が内層寄りに多く偏在している構造を有することにより再帰反射特性と蓄光特性を併せ持つ発光部を成していることを特徴とする防災・防火用品。
【請求項2】
前記ガラスビーズの平均粒子径が前記蓄光材の平均粒子径よりも大きく、かつ該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の防災・防火用品。
【請求項3】
前記ガラスビーズの平均粒子径が前記蓄光材の平均粒子径の2〜5倍であり、該蓄光材の平均粒子径が前記反射材の平均粒子径の2〜5倍であることを特徴とする請求項1または2記載の防災・防火用品。
【請求項4】
前記蓄光材の平均粒子径が0.5〜200μm、前記反射材の平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防災・防火用品。
【請求項5】
前記反射材粒子が、雲母粒子を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防災・防火用品。
【請求項6】
前記雲母粒子が、酸化チタンで白色にコーティングされてなるものであることを特徴とする請求項5記載の防災・防火用品。
【請求項7】
前記樹脂層が、色素を含んでなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防災・防火用品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−151213(P2009−151213A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330757(P2007−330757)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【出願人】(599056530)株式会社小松プロセス (18)
【Fターム(参考)】